(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004195
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】無線電力伝送装置
(51)【国際特許分類】
H02J 50/80 20160101AFI20230110BHJP
H02J 50/05 20160101ALI20230110BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
H02J50/80
H02J50/05
H02J7/00 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105745
(22)【出願日】2021-06-25
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「IoE 社会のエネルギーシステム」委託研究(管理法人:JST)、産業技術力強化法第17条の適用の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】小幡 賢三
(72)【発明者】
【氏名】塚本 悟司
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA11
5G503GB09
(57)【要約】
【課題】移動体の重量の増加を招くことなく、蓄電部における充電の開始から終了まで整合を図り、充電の効率が高い無線電力伝送装置を提供する。
【解決手段】無線電力伝送装置10は、電力伝送部13、高周波生成部14、整流回路部15、蓄電部16、電圧測定部17、通信部18および電力制御部19を備え、送電ユニット11から移動体12へ、電界結合を用いた非接触で電力を供給する。高周波生成部14から送電電極部21へ供給された高周波の電力は、整流回路部15で整流され、蓄電部16に蓄えられる。電圧測定部17は、整流回路部15における電圧を電圧値として測定する。通信部18は、電圧測定部17で測定した電圧値を、送電ユニット11へ伝達する。電力制御部19は、通信部18で伝達された電圧値に基づいて、高周波生成部14から生成する高周波の出力を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電側から受電側の移動体へ、電界結合を用いた非接触で電力を供給する無線電力伝送装置であって、
送電側の送電電極部、および前記移動体に設けられ前記送電電極部との間に空間を形成して対向する受電電極部を有する電力伝送部と、
前記送電電極部へ高周波の電力を供給する高周波生成部と、
前記移動体に設けられ、前記受電電極部で受け取った電力を整流する整流回路部と、
前記移動体に設けられ、前記整流回路部で整流された電力を蓄える蓄電部と、
前記整流回路部における電圧を電圧値として測定する電圧測定部と、
前記電圧測定部で測定した前記電圧値を、前記送電側へ伝達する通信部と、
前記通信部で伝達された前記電圧値に基づいて、前記高周波生成部から生成する高周波の出力を制御する電力制御部と、
を備える無線電力伝送装置。
【請求項2】
前記電力制御部は、前記電圧値が予め設定した規定値未満のとき、前記高周波生成部から生成する高周波の出力を増大するとともに、前記電圧値が前記規定値以上になると、前記高周波生成部から生成する高周波の出力を低減する請求項1記載の無線電力伝送装置。
【請求項3】
送電側から受電側の移動体へ、電界結合を用いた非接触で電力を供給する無線電力伝送装置であって、
送電側の送電電極部、および前記移動体に設けられ前記送電電極部との間に空間を形成して対向する受電側の受電電極部を有する電力伝送部と、
前記送電電極部へ高周波の電力を供給する高周波生成部と、
前記移動体に設けられ、前記受電電極部で受け取った電力を蓄える蓄電部と、
前記送電側における定在波を検出する定在波検出部と、
前記定在波検出部で検出した定在波に基づいて、前記高周波生成部から出力された高周波の電圧と前記送電電極部で反射する高周波の電圧との比である定在波比を算出する算出部と、
前記算出部で算出した前記定在波比が予め設定した設定値以上のとき、前記高周波生成部から生成する高周波の出力を低減する電力制御部と、
を備える無線電力伝送装置。
【請求項4】
前記高周波生成部から前記蓄電部へ電力を供給する電力よりも小さな検出電力を用いて前記送電側から前記移動体へ電力を伝達し、前記送電電極部から前記高周波生成部へ反射する前記検出電力の反射に基づいて、前記移動体が受電可能な状態にあるか否かを判断する判断部をさらに備える請求項3記載の無線電力伝送装置。
【請求項5】
送電側から受電側の移動体へ、電界結合を用いた非接触で電力を供給する無線電力伝送装置であって、
送電側の送電電極部、および前記移動体に設けられ前記送電電極部との間に空間を形成して対向する受電側の受電電極部を有する電力伝送部と、
前記送電電極部へ高周波の電力を供給する高周波生成部と、
前記移動体に設けられ、前記受電電極部で受け取った電力を蓄える蓄電部と、
前記蓄電部に固有の充電率と充電抵抗との関係を、予め設定された関係値として記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶した前記関係値を、前記蓄電部への充電の開始から経時的に読み取る読取部と、
前記読取部で読み取った前記関係値に基づいて、前記高周波生成部から生成する高周波の出力を制御する電力制御部と、
を備える無線電力伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線電力伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばドローンやAGVなどの移動体は、バッテリなどの蓄電部に蓄えた電力を用いて駆動される。このような移動体は、運用時間の延長が要求され、搭載する蓄電部の容量がその性能を左右する。一方、蓄電部の容量の増加は、重量の増大を招き、移動体に本来要求される運搬性能の低下に繋がる。そのため、移動体は、比較的容量および重量の小さな蓄電部を搭載し、頻繁な充電によって運用時間の延長が図られている。そのため、移動体では、煩雑な作業を招くことなく頻繁な充電を行なうために、電界結合を利用した無線による電力の伝送が用いられている(特許文献1参照)。電界結合を利用する高周波の電力の伝送は、インピーダンスの整合がその効率に影響する。そのため、電界結合の場合、送電側から負荷である蓄電部までの間におけるインピーダンスの整合を図る必要がある。一般に、このインピーダンスの整合は、すみやかな充電を実行するために、蓄電部における充電開始時、つまり蓄電部における充電量が0に近い状態におけるインピーダンスにあわせて設定される。
【0003】
ところが、蓄電部は、充電の進行にともなって、充電電流が減少する。すなわち、蓄電部におけるインピーダンスは、充電開始時に最も小さく、充電の進行とともに増大する。そのため、送電側と移動体との間のインピーダンスの整合は、充電の進行とともに変化する。そこで、インピーダンスの変化にあわせて受電側で電力を調整するために、蓄電部と直列または並列に素子を含む保護回路を挿入し、過剰な電力を吸収する必要がある。
【0004】
しかしながら、このような保護回路を挿入すると、電力の吸収にともなう発熱を招き、放熱および冷却のための機構を必要とする。そして、これらの電力を調整するための保護回路、放熱および冷却のための機構などは、いずれも蓄電部の充電時のみに使用され、移動体の運用時には不要である。そのため、これらの機構の追加は、移動体の重量の増加を招き、移動体の性能の向上を妨げるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、移動体の重量の増加を招くことなく、蓄電部における充電の開始から終了まで整合を図り、充電の効率が高い無線電力伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態の無線電力伝送装置は、通信部および電力制御部を備えている。高周波生成部で生成した高周波の電力は、電力伝送部の送電電極部から受電電極部へ非接触で伝送される。移動体へ伝送された高周波の電力は、整流回路部で整流され、蓄電部に蓄えられる。電圧測定部は、整流回路部における電圧を電圧値として測定する。通信部は、この電圧測定部で測定された電圧値を、送電側へ伝達する。電力制御部は、この電圧値に基づいて、高周波生成部から生成する高周波の電力を制御する。蓄電部は、充電量に応じてインピーダンスが変化する。蓄電部におけるインピーダンスが変化すると、整流回路部から充電部に印加される電圧も変化する。そのため、整流回路部における電圧は、この蓄電部のインピーダンスに応じて変化する。電力制御部は、通信部を通して伝達される電圧値に基づいて、高周波生成部から出力される電力を制御する。これにより、高周波生成部は、蓄電部のインピーダンスに応じた電力を出力する。その結果、送電側から移動体へ過剰な電力が出力されることがなく、移動体は過剰な電力に対応するための保護回路およびこれらの冷却機構などの追加の機構が不要となる。したがって、移動体の重量の増加を招くことなく、蓄電部における充電の開始から終了まで整合を図ることができ、充電の効率を高めることができる。
【0008】
他の実施形態の無線電力伝送装置は、定在波検出部、算出部および電力制御部を備えている。高周波生成部で生成した高周波の電力は、電力伝送部の送電電極部から受電電極部へ非接触で伝送される。移動体へ伝送された高周波の電力は、蓄電部に蓄えられる。定在波検出部は、送電側における定在波を検出する。算出部は、検出した定在波に基づいて、定在波比を算出する。定在波比は、高周波生成部から出力された高周波の電圧と送電電極部で反射する高周波の電圧との比である。電力制御部は、この定在波比に基づいて、高周波生成部から生成する高周波の電力を制御する。蓄電部は、充電量に応じてインピーダンスが変化する。蓄電部におけるインピーダンスが変化すると、送電電極部で反射する高電圧の電圧も変化する。そのため、定在波比は、この蓄電部のインピーダンスに応じて変化する。電力制御部は、算出部で算出される定在波比に基づいて、高周波生成部から出力される電力を制御する。すなわち、電力制御部は、定在波比が予め設定した設定値以上のとき、高周波生成部から生成する高周波の出力を低減する。これにより、高周波生成部は、蓄電部のインピーダンスに応じた電力を出力する。その結果、送電側から移動体へ過剰な電力が出力されることがなく、移動体は過剰な電力に対応するための保護回路およびこれらの冷却機構などの追加の機構が不要となる。また、蓄電部のインピーダンスの変化にあわせた電力の制御は送電側で完結する。したがって、移動体の重量の増加を招くことなく、蓄電部における充電の開始から終了まで整合を図ることができ、充電の効率を高めることができる。
【0009】
他の実施形態の無線電力伝送装置は、記憶部、読取部および電力制御部を備えている。高周波生成部で生成した高周波の電力は、電力伝送部の送電電極部から受電電極部へ非接触で伝送される。移動体へ伝送された高周波の電力は、蓄電部に蓄えられる。蓄電部は、個体ごとに固有の充電率と充電抵抗との関係を有している。記憶部は、この固有の充電率と充電抵抗との間の関係を関係値として記憶する。読取部は、蓄電部に充電が開始されると、この開始から経時的に、記憶部に記憶された関係値を読み取る。電力制御部は、この読み取られた関係値に基づいて、高周波生成部から生成する高周波の電力を制御する。蓄電部は、充電量に応じてインピーダンスが変化する。電力制御部は、読み取られた関係値に基づいて、高周波生成部から出力される電力を制御する。これにより、高周波生成部は、蓄電部のインピーダンスに応じた電力を出力する。その結果、送電側から移動体へ過剰な電力が出力されることがなく、移動体は過剰な電力に対応するための保護回路およびこれらの冷却機構などの追加の機構が不要となる。また、蓄電部のインピーダンスの変化にあわせた電力の制御は送電側で完結する。したがって、移動体の重量の増加を招くことなく、蓄電部における充電の開始から終了まで整合を図ることができ、充電の効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態による無線電力伝送装置を示すブロック図
【
図2】第1実施形態による無線電力伝送装置における処理の流れを示す概略図
【
図3】第2実施形態による無線電力伝送装置を示すブロック図
【
図4】第2実施形態による無線電力伝送装置において、定在波検出部の一例として適用する方向性結合器を示す概略図
【
図5】第2実施形態による無線電力伝送装置における処理の流れを示す概略図
【
図6】第3実施形態による無線電力伝送装置を示すブロック図
【
図7】第3実施形態による無線電力伝送装置における関係値である充電パターンの一例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、無線電力伝送装置の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
図1に示す無線電力伝送装置10は、送電側の送電ユニット11から受電側の移動体12へ電界結合を用いて非接触で電力を供給する。送電ユニット11は、例えば地上に設置された設備である。送電ユニット11は、地上や建造物に固定する構成、または運搬可能な構成としてもよい。移動体12は、例えばドローンやAGVなどのように電力で駆動される物体である。移動体12は、送電ユニット11に対して相対的に移動可能である。例えば移動体12をドローンに適用する場合、送電ユニット11は地上に設けられ、この送電ユニットにドローンが着陸することにより、ドローンは送電ユニット11から電力の供給を受ける。また、例えば移動体12をAGVに適用する場合、送電ユニット11は設備の特定の位置に設けられ、この送電ユニット11にAGVが進入することにより、AGVは送電ユニット11から電力の供給を受ける。
【0012】
無線電力伝送装置10は、電力伝送部13、高周波生成部14、整流回路部15、蓄電部16、電圧測定部17、通信部18および電力制御部19を備えている。電力伝送部13は、送電電極部21および受電電極部22を有している。送電電極部21と受電電極部22とは、電力の伝送時、空間を形成して非接触で対向する。送電電極部21と受電電極部22との間には、誘電体である空気が存在する。送電電極部21は送電ユニット11に設けられており、受電電極部22は移動体12に設けられている。送電電極部21および受電電極部22は、例えば板状の部材や平面コイルで形成されている。
【0013】
高周波生成部14は、送電ユニット11に設けられている。高周波生成部14は、例えば図示しないインバータを有しており、電源23から供給される電力を用いて高周波を生成する。高周波生成部14で生成した高周波は、整合回路部24を通して送電電極部21へ供給される。整合回路部24は、例えば図示しないコイルおよびコンデンサからなるLC回路などを有しており、高周波生成部14と移動体12との間のインピーダンスの整合を図る。
【0014】
整流回路部15は、移動体12に設けられている。整流回路部15は、移動体12が受電電極部22で受け取った高周波の電力を直流に整流する。蓄電部16は、移動体12に設けられている。蓄電部16は、例えば充放電が可能な二次電池であるバッテリを有している。また、蓄電部16は、バッテリに代えてキャパシタなどを有していてもよい。蓄電部16は、整流回路部15で整流された電力を蓄える。移動体12は、蓄電部16に蓄えられた電力を用いて駆動部25を駆動する。駆動部25は、例えばドローンの場合、プロペラを駆動するモータを有している。また、駆動部25は、例えばAGVの場合、車輪を駆動するモータを有している。移動体12は、蓄電部16に蓄えられた電力を利用して、駆動部25に限らず、各部の機能を実現する。
【0015】
移動体12は、移動体制御部26を有している。移動体制御部26は、蓄電部16への充電を制御するとともに、駆動部25を制御する。移動体制御部26は、例えばCPU、RAMおよびROMを有するマイクロコンピュータで構成されている。移動体制御部26は、ROMに記憶されたコンピュータプログラムをCPUで実行することにより、蓄電部16における充電の制御、および駆動部25の制御をソフトウェア的に実現する。なお、移動体制御部26は、ソフトウェア的に限らず、ハードウェア的、またはソフトウェアとハードウェアとの協働によって蓄電部16における充電の制御、および駆動部25の制御を実現する構成としてもよい。
【0016】
電圧測定部17は、整流回路部15における電圧を電圧値として測定する。整流回路部15で整流された電力は、蓄電部16に蓄えられる。このとき、蓄電部16へ供給される電力の電圧Vdは、蓄電部16の状態、すなわち蓄電部16の充電率によって変化する。充電率とは、蓄電部16の満充電時を基準としたときの電力量の比である。蓄電部16は、充電時における端子電圧Vtの変化が小さいものの、充電率が増大するにつれて充電される電流が減少する。これは、蓄電部16の端子電圧Vtと蓄電部16に充電される電流から算出されるインピーダンスが充電率の増大とともに増大するためである。そのため、電界結合を利用した電力の伝送の場合、受電側である移動体12における電圧Vdは、受電電力および蓄電部16のインピーダンスに相関する。すなわち、蓄電部16における充電時のインピーダンスが増大すると、蓄電部16で発生する電圧Vdが上昇する。この電圧Vdは、蓄電部16に印加されるものであり、整流回路部15の出力電圧として現れる。電圧測定部17は、この整流回路部15の出力電圧である電圧Vdを電圧値Vvとして検出する。具体的には、送電ユニット11の整合回路部24は、蓄電部16の充電を開始する状態すなわち充電率が低い状態のとき損失を小さくするように設定されている。そのため、整合回路部24のインピーダンスは、負荷に相当する蓄電部16の充電抵抗Zrに基づいて設定される。この充電抵抗Zrは、充電率が上昇するにしたがって増大する。ここで、充電抵抗Zrは、充電開始からの蓄電部16の充電率に依存する。このとき、整流回路部15から出力され蓄電部16に印加される電圧Vdは、Vd=(Pr×Zr)1/2である。Prは、移動体12が送電ユニット11から受け取る受電電力である。
【0017】
通信部18は、送電ユニット11と移動体12との間を通信可能に接続する。通信部18は、送電ユニット11に設けられている送電側通信機27、および移動体12に設けられている受電側通信機28を有している。通信部18は、送電側通信機27と受電側通信機28との間を、例えば電波を用いた無線通信、または光を用いた無線通信など任意の方法で通信可能に接続する。例えば移動体12としてドローンに適用する場合、地上設備とドローンとの間は、操縦などの遠隔操作のために通信可能な装備を有している。そこで、通信部18は、送電ユニット11および移動体12に設けられている通信のための既存の装備を用いることができる。この場合、通信部18は、送電側通信機27と受電側通信機28との間の双方向で通信可能である。通信部18は、電圧測定部17で測定した電圧Vdの電圧値Vvを、送電ユニット11に伝達する。すなわち、通信部18は、電圧値Vvを、電気信号として受電側通信機28から送電側通信機27へ伝達する。
【0018】
電力制御部19は、送電ユニット11に設けられている。電力制御部19は、通信部18を通して移動体12から伝達された電圧値Vvに基づいて、高周波生成部14を制御する。具体的には、電力制御部19は、電圧値Vvに基づいて、高周波生成部14から生成する高周波の電力の出力Woを制御する。電力制御部19は、例えばCPU、RAMおよびROMを有するマイクロコンピュータで構成されている。電力制御部19は、ROMに記憶されたコンピュータプログラムをCPUで実行することにより、高周波生成部14の制御をソフトウェア的に実現する。なお、電力制御部19は、ソフトウェア的に限らず、ハードウェア的、またはソフトウェアとハードウェアとの協働によって高周波生成部14の制御を実現する構成としてもよい。
【0019】
以下、上記の構成の第1実施形態による無線電力伝送装置10の作動の流れについて
図2に基づいて説明する。
電力制御部19は、移動体12が送電ユニット11から充電可能な状態になると、高周波生成部14の制御処理を開始する(S101)。例えば移動体12がドローンの場合、移動体12が送電ユニット11に着陸すると、電力制御部19は制御処理を開始する。また、例えば移動体12がAGVの場合、移動体12が送電ユニット11の特定領域に進入すると、電力制御部19は制御処理を開始する。移動体12が送電ユニット11から充電可能な状態とは、例えば送電ユニット11の送電電極部21と移動体12の受電電極部22とが対向した状態である。第1実施形態の場合、移動体12が送電ユニット11との間で電力の伝送が可能な状態となると、通信部18を通してその旨の信号を受け取るようにしてもよい。
【0020】
電力制御部19は、制御処理が開始されると、初期設定を実施する(S102)。初期設定において、電力制御部19は、高周波生成部14から生成する高周波の電力を初期電力に設定する。初期電力は、例えば電力が0または電力伝送部13を通した無線による電力の伝送が生じない程度の小さな電力である。これにより、S102における初期設定では、高周波生成部14から送電電極部21へ出力される電力は0または小さな値となる。
【0021】
電力制御部19は、初期設定を実施した後、移動体12から受電開始信号を受信したか否かを判断する(S103)。移動体制御部26は、蓄電部16が充電可能な状態になると、通信部18を通して送電ユニット11へ受電開始信号を送信する。電力制御部19は、この受電開始信号を受信したか否かを判断する。電力制御部19は、受電開始信号を受信していないと判断すると(S103:No)、受電開始信号を受信するまで待機する。
【0022】
電力制御部19は、受電開始信号を受信したと判断すると(S103:Yes)、移動体12から電圧値Vvを取得する(S104)。電圧値Vvは、電圧測定部17で測定した整流回路部15における電圧Vdの値である。通信部18は、電圧測定部17で測定した電圧Vdの電圧値Vvを、移動体12から送電ユニット11へ送信する。電力制御部19は、通信部18を通して移動体12から電圧値Vvを取得する。
【0023】
電力制御部19は、S104で取得した電圧値Vvに基づいて、高周波生成部14から生成する高周波の電力の出力Woを制御する(S105)。具体的には、電力制御部19は、予め設定された時間間隔で移動体12から電圧値Vvを取得する。電力制御部19は、取得した電圧値Vvに応じて、高周波生成部14から生成する電力の出力Woを増減する。すなわち、電力制御部19は、取得した電圧値Vvと予め設定した規定値V1とを比較する。そして、電力制御部19は、電圧値Vvが既定値V1以上になると、高周波生成部14から生成する高周波の電力の出力Woを低減する。一方、電力制御部19は、電圧値Vvが既定値V1未満であるとき、高周波生成部14から生成する高周波の電力の出力Woを増大する。既定値V1は、蓄電部16に印加される電力の電圧Vdが過大とならないような値に設定されている。電力制御部19が増減する電力の出力幅は、取得した電圧値Vvに応じた値として設定してもよく、予め設定された増減値で段階的に増減する構成としてもよい。また、増減する電力の出力幅は、蓄電部16の性能に応じて設定される。
【0024】
蓄電部16に供給される電圧Vdは、蓄電部16の充電率に対応するインピーダンスに応じて変化する。蓄電部16の充電が進み充電率が上昇すると、蓄電部16のインピーダンスは増大する。そのため、整流回路15から蓄電部16へ出力される電力の電圧Vdは、充電の進展とともに増大する蓄電部16のインピーダンスに応じて増大する。そこで、電力制御部19は、高周波生成部14を制御し、高周波生成部14から生成する電力の出力Woを、取得した電圧値Vvに基づいて調整する。これにより、送電ユニット11から移動体12には、蓄電部16の充電率の上昇とともに変化するインピーダンスに応じ、蓄電部16に印加される電圧Vdが過大とならない程度の電力が供給される。また、高周波生成部14で生成する電力の出力Woを蓄電部16のインピーダンスに応じて制御することにより、送電ユニット11と移動体12との間の電気的な整合は維持される。電力制御部19は、電圧値Vvを取得する場合、上記のように予め設定した時間間隔で取得するだけでなく、任意の時期に通信部18を通して移動体12に電圧値Vvの送信を要求して取得する構成としてもよい。
【0025】
電力制御部19は、S105において高周波生成部14を制御するとともに、蓄電部16の充電が終了したか否かを判断する(S106)。電力制御部19は、電圧測定部17から取得した電圧値Vvから蓄電部16の充電の終了を判断する。電力制御部19は、例えば電圧測定部17から取得した電圧値Vvと、予め設定した満充電電圧Vxとを比較し、電圧値Vvが満充電電圧Vxに到達すると蓄電部16の充電が終了したと判断する。また、移動体12に整流回路部15から出力される電流Idを電流値Ivとして測定する電流測定部を設け、電力制御部19は、通信部18を通して電流値Ivを取得する構成としてもよい。蓄電部16における充電率が100%、または任意に設定した満充電に到達としたとき、電圧値Vvは満充電電圧Vxに到達し、電流値Ivはほぼ0に近い値となる。電力制御部19は、これら電圧値Vvおよび電流値Ivから蓄電部16における充電の終了を判断することができる。
【0026】
電力制御部19は、S106において蓄電部16における充電が終了したと判断すると(S106:Yes)、高周波生成部14からの高周波の電力の出力を停止する(S107)。すなわち、電力制御部19は、高周波生成部14からの高周波の電力の出力を停止し、蓄電部16の充電を終了する。一方、電力制御部19は、S106において蓄電部16における充電が終了していないと判断すると(S106:No)、S104にリターンし、S104以降の処理を繰り返す。すなわち、電力制御部19は、取得した電圧値Vvに基づく高周波生成部14の制御を継続する。
【0027】
第1実施形態の無線電力伝送装置10は、通信部18および電力制御部19を備えている。蓄電部16へ供給される電力の電圧Vdは、整流回路部15における電圧Vdを測定することにより、電圧値Vvとして測定される。通信部18は、電圧測定部17で測定された電圧値Vvを、送電ユニット11へ伝達する。電力制御部19は、この電圧値Vvに基づいて、高周波生成部14から生成する高周波の電力の出力Woを制御する。すなわち、電力制御部19は、通信部18を通して移動体12から伝達される電圧値Vvに基づいて、高周波生成部14から生成される電力の出力Woを制御する。これにより、高周波生成部14は、蓄電部16のインピーダンスに応じた電力を出力する。その結果、送電ユニット11から移動体12へ過剰な電力が出力されることがなく、移動体12は過剰な電力に対応するための保護回路およびこれらの冷却機構などの追加の機構が不要となる。したがって、移動体12の重量の増加を招くことなく、蓄電部16における充電の開始から終了まで整合を図ることができ、蓄電部16の充電の効率を高めることができる。
【0028】
第1実施形態では、電力制御部19は、移動体12から取得した電圧値Vvが予め設定した規定値V1未満のとき、高周波生成部14から生成する高周波の電力の出力Woを増大する。一方、電力制御部19は、電圧値Vvが規定値V1に到達すると、高周波から生成する高周波の電力の出力Woを低減する。これにより、蓄電部16は、過剰な電力が加わることなく、迅速に充電される。したがって、蓄電部16の迅速な充電と蓄電部16の破壊や損傷の防止とを両立することができる。
【0029】
(第2実施形態)
第2実施形態による無線電力伝送装置10を
図3に示す。
第2実施形態による無線電力伝送装置10は、電力伝送部13、高周波生成部14および蓄電部16を備えている。電力伝送部13、高周波生成部14、整流回路部15、蓄電部16、整合回路部24、駆動部25および移動体制御部26は、第1実施形態と同一の構成である。第2実施形態の場合、無線電力伝送装置10は、上記に加え、定在波検出部31、算出部32および電力制御部33を備えている。定在波検出部31は、送電ユニット11に設けられており、送電側における定在波を検出する。具体的には、定在波検出部31は、例えば
図4に示すように電力の損失が小さい方向性結合器34が用いられる。方向性結合器34は、高周波生成部14と送電電極部21との間に設けられている。方向性結合器34により、高周波生成部14から出力される進行波の電圧Vfが検出されるとともに、インピーダンスの不整合にともなう定在波によって送電電極部21から高周波生成部14へ反射する反射波の電圧Vrが検出される。算出部32は、これらの進行波の電圧Vfおよび反射波の電圧Vrに基づいて、定在波比Rを算出する。
【0030】
電力制御部33は、送電ユニット11に設けられている。電力制御部33は、算出部32で算出された定在波比Rに基づいて、高周波生成部14を制御する。電力制御部33は、例えばCPU、RAMおよびROMを有するマイクロコンピュータで構成されている。電力制御部33は、ROMに記憶されたコンピュータプログラムをCPUで実行することにより、高周波生成部14の制御をソフトウェア的に実現する。なお、電力制御部33は、ソフトウェア的に限らず、ハードウェア的、またはソフトウェアとハードウェアとの協働によって高周波生成部14の制御を実現する構成としてもよい。また、算出部32は、例えば電力制御部33を構成するマイクロコンピュータによってソフトウェア的に実現してもよく、専用の電子回路によりハードウェア的に実現、またはハードウェアとソフトウェアとの協働によって実現してもよい。また、算出部32は、電力制御部33の1つの要素として組み込んでもよく、電力制御部33とは別個独立した単独の構成としてもよい。
【0031】
算出部32は、進行波の電圧Vfおよび反射波の電圧Vrから、以下の式(1)に基づいて電圧反射係数pを算出する。これとともに、算出部32は、算出した電圧反射係数pを用いて、式(2)に基づいて定在波比Rを算出する。
p=(Z-Z0)/(Z+Z0)=Vr/Vf 式(1)
R=(1+|p|)/(1-|p|) 式(2)
p:電圧反射係数
Vf:進行波の電圧
Vr:反射波の電圧
Z:受電側インピーダンス
Z0:高周波生成部による出力インピーダンス
【0032】
例えば、高周波生成部14における出力インピーダンスを50Ωとし、受電側である移動体12のインピーダンス、つまり蓄電部16のインピーダンスをZとしたとき、Z=50Ωであれば整合が図られており、送電電極部21における反射は生じない。そのため、定在波比Rは、R=1となる。一方、受電側のインピーダンスZが増大するにつれて、定在波比Rは増大する。また、受電側のインピーダンスZが減少しても定在波比Rは増大する。しかし、蓄電部16への充電を実施する場合、受電側のインピーダンスZは、増大するだけである。そのため、受電側のインピーダンスZが整合した状態よりも小さくなることを考慮する必要はない。
【0033】
電力制御部33は、算出部32で算出した定在波比Rを用いて高周波生成部14から出力する高周波の電力を制御する。具体的には、電力制御部33は、算出した定在波比Rと予め設定した設定値Dとを比較する。そして、電力制御部33は、算出した定在波比Rが設定値D未満であるとき、高周波生成部14から生成する高周波の出力を増大する。一方、電力制御部33は、算出した定在波比Rが設定値D以上のとき、高周波生成部14から生成する高周波の出力を低減する。ここで、電力制御部33が増大する電力は、一定の電力量を段階的に増大する構成としてもよく、定在波比Rに応じて設定された電力量を増大する構成としてもよい。同様に、電力制御部33が減少する電力も、一定の電力量を段階的に減少する構成としてもよく、定在波比Rに応じて設定された電力量を減少する構成としてもよい。
【0034】
第2実施形態の場合、無線電力伝送装置10は、上記に加え、判断部35を備えている。判断部35は、例えば電力制御部33を構成するマイクロコンピュータによってソフトウェア的に実現してもよく、専用の電子回路によりハードウェア的に実現、またはハードウェアとソフトウェアとの協働によって実現してもよい。また、判断部35は、算出部32と同様に、電力制御部33の1つの要素として組み込んでもよく、電力制御部33とは別個独立した単独の構成としてもよい。
【0035】
判断部35は、移動体12が送電ユニット11から受電可能な状態にあるか否かを判断する。第2実施形態の場合、判断部35は、高周波生成部14から検出電力P1を出力する。検出電力P1は、送電ユニット11と移動体12との間で電力の伝達が可能な最小限の電力である。つまり、検出電力P1は、蓄電部16の充電時に高周波生成部14から出力される電力に比較して十分に小さく設定されている。判断部35は、高周波生成部14
から検出電力P1を出力し、送電電極部21から高周波生成部14へ反射する電力に基づいて、移動体12が受電可能な状態にあるか否かを判断する。送電ユニット11が設けられている領域に移動体12が位置することにより、移動体12が電力を受け取り可能な状態にあるとき、高周波生成部14から出力された検出電力P1は電力伝送部13を通して移動体12へ伝送される。そのため、電力伝送部13から高周波生成部14へ反射する電力は小さくなる。すなわち、移動体12が電力を受け取り可能な状態にあるとき、検出電力P1の出力によって送電電極部21から高周波生成部14へ反射する電力は、予め設定した検出設定値D1よりも小さくなる。一方、移動体12が電力を受け取り可能な状態にないとき、高周波生成部14から出力された検出電力P1は、一部が電力伝送部13の送電電極部21において高周波生成部14へ反射する。そのため、電力伝送部13から高周波生成部14へ反射する電力は大きくなる。すなわち、移動体12が電力を受け取り可能な状態にないとき、検出電力P1の出力によって送電電極部21から高周波生成部14へ反射する検出電力は、検出設定値D1よりも大きくなる。そこで、判断部35は、検出電力P1の出力によって送電電極部21で反射する電力と検出設定値D1とを比較して、移動体12が受電可能な状態にあるか否かを判断する。検出設定値D1は、送電ユニット11および移動体12の性能などに応じて任意に設定することができる。判断部35は、例えば予め設定された時間間隔で移動体12が受電可能な状態にあるか否か、すなわち移動体12の有無を判断する。
【0036】
なお、判断部35は、例えば機械的、電気的あるいは光学的など任意の手段で移動体12を検出する構成としてもよい。例えば、送電ユニット11が設けられている位置に移動体12があることを、機械的または電気的なスイッチで検出する構成としてもよい。また、例えば、カメラやセンサなどを用いて、送電ユニット11が設けられている位置に移動体12があることを、光学的に検出する構成としてもよい。
【0037】
次に、第2実施形態による無線電力伝送装置10の作動の流れについて説明する。
電力制御部33は、制御処理を開始すると(S201)、初期設定を実施する(S202)。初期設定において、電力制御部33は、高周波生成部14から生成する高周波の電力を初期電力P0に設定する。第2実施形態の場合、送電ユニット11は、例えば移動体12から受電開始の信号などを受け取ることがない。そのため、電力制御部33は、初期設定において、高周波生成部14から出力する初期電力P0を、P0=0に設定する。
【0038】
電力制御部33は、初期設定を実施した後、移動体検出処理を実施する(S203)。電力制御部33は、判断部35を通して移動体12が送電ユニット11から受電可能な状態にあるか否かを判断する。判断部35は、高周波生成部14から検出電力P1を出力し、このときの反射電力と検出設定値D1とを比較する。これにより、判断部35は、送電ユニット11が設けられている位置に移動体12が存在しているか、および移動体12が受電可能な状態であるかを判断する(S204)。電力制御部33は、移動体検出処理において移動体12を検出しないと判断すると(S204:No)、S203の移動体検出処理を継続し、移動体12を検出するまで待機する。
【0039】
電力制御部33は、移動体検出処理において移動体12を検出したと判断すると(S204:Yes)、高周波生成部14から初期電力W1を出力する(S205)。すなわち、電力制御部33は、移動体12を検出すると、高周波生成部14から初期電力W1の高周波を出力する。この初期電力W1は、検出電力P1と同一であっても異なっていてもよい。
【0040】
電力制御部33は、初期電力W1の出力を開始すると、算出部32から定在波比Rを取得する(S206)。定在波比Rは、定在波検出部31で検出した進行波の電圧Vfおよび反射波の電圧Vrを用いて、算出部32で算出される。電力制御部33は、定在波比Rを算出部32から取得する。電力制御部33は、取得した定在波比Rと予め設定された設定値Dとを比較し、定在波比Rが設定値D未満であるか否かを判断する(S207)。
【0041】
電力制御部33は、定在波比Rが設定値D未満であるとき(S207:Yes)、高周波生成部14から生成する高周波の電力の出力を増大する(S208)。電力制御部33は、例えば初期電力W1に増分量Wiを加えたW1+Wiの電力を、増加後出力Waとして高周波生成部14から出力する。そして、電力制御部33は、増加後出力Waが最大出力Wmaxであるか否かを判断する(S209)。電力制御部33は、増加後出力Waが最大出力Wmaxでないとき(S209:No)、S206へリターンし、以降の処理を繰り返す。すなわち、電力制御部33は、増加後出力Waが最大出力Wmaxに到達するまで、増分量Wiを加えた増加後出力Waを繰り返し設定し、高周波生成部14から出力する電力を増大する。
【0042】
送電ユニット11と移動体12との間では、蓄電部16のインピーダンスが小さいつまり充電率が0に近い状態で整合回路部24における整合が図られている。これにより、蓄電部16の充電率が0に近い充電の初期においては、蓄電部16のインピーダンスは十分に小さい。そのため、送電電極部21における電力の反射が小さく、定在波比Rも小さい。蓄電部16の充電は可能な限り迅速であることが好ましいことから、送電ユニット11から移動体12へ伝送される電力は大きくすることが好ましい。そこで、電力制御部33は、定在波比Rが設定値D未満であるとき、増分量Wiを繰り返し加えることにより、送電ユニット11から移動体12へ伝送する電力を迅速に増大する。一方、送電ユニット11から移動体12へ伝送する電力が大きくなると、整流回路部15および蓄電部16における電圧が増大する。そこで、電力制御部33は、送電ユニット11から移動体12へ伝送する電力の上限が最大出力Wmaxとなるように、高周波生成部14から出力する電力を制御する。
【0043】
電力制御部33は、増加後出力Waが最大出力Wmaxであると判断すると(S209:Yes)、定在波比Rを取得し(S210)、取得した定在波比Rが設定値D未満であるか否かを判断する(S211)。また、電力制御部33は、S206において取得した定在波比Rが設定値D以上であるとき(S207:No)、S210へ移行して定在波比Rを取得し、S211において、S210で取得した定在波比Rが設定値D未満であるか否かを判断する。
【0044】
電力制御部33は、S210で取得した定在波比Rが設定値D未満であるとき(S211:Yes)、定在波比Rが設定値D以上になるまでS210およびS211の処理を繰り返す。これにより、電力制御部33は、定在波比Rが設定値D以上になるまで、高周波生成部14における高周波の電力を最大出力Wmaxに維持する。その結果、移動体12の蓄電部16および整流回路部15に過電圧が生じることなく、蓄電部16は迅速に充電される。
【0045】
電力制御部33は、S210で取得した定在波比Rが設定値D以上になると(S211:No)、高周波生成部14から生成する高周波の電力の出力を低減する(S212)。電力制御部33は、例えば最大出力Wmaxから減分量Wdを減じたWmax-Wdの電力を、低減後出力Wbとして高周波生成部14から出力する。そして、電力制御部33は、低減後出力Wbが終了出力Wfinであるか否かを判断する(S213)。電力制御部33は、低減後出力Wbが終了出力Wfinでないとき(S213:No)、S210にリターンし、以降の処理を繰り返す。すなわち、電力制御部33は、低減後出力Wbが終了出力Wfinに到達するまで、減分量Wdを減じた低減後出力Wbを繰り返し設定し、高周波生成部14から出力する電力を低減する。そして、電力制御部33は、低減後出力Wbが終了出力Wfinに到達すると(S213:Yes)、高周波生成部14からの電力の出力を停止する(S214)。
【0046】
蓄電部16の充電率が上昇するにつれて、蓄電部16のインピーダンスは増大する。蓄電部16のインピーダンスが増大すると、定在波が大きくなり、送電電極部21から高周波生成部14へ反射する電力が増大する。そのため、定在波比Rは、蓄電部16の充電率の上昇にともなって増大する。電力の反射によって定在波比Rが大きくなると、高周波生成部14の電気的な負担は増大する。そこで、電力制御部33は、蓄電部16の充電のために電力の伝送を維持しつつ、定在波比Rを監視する。そして、電力制御部33は、定在波比Rに応じて高周波生成部14から出力する電力を増減する。これにより、移動体12の整流回路部15および蓄電部16における過電圧の発生を抑制しつつ、高周波生成部14の負担の低減が図られる。
【0047】
S210~S214の処理では、充電率の上昇にともなって蓄電部16のインピーダンスが上昇すると、高周波生成部14で生成する高周波の出力を低減する。これにより、蓄電部16における過大な電圧の発生は抑制される。そして、高周波生成部14で生成する高周波の出力が終了出力Wfinに到達すると、高周波生成部14からの電力の出力は停止される。
【0048】
第2実施形態の無線電力伝送装置10は、定在波検出部31、算出部32および電力制御部33を備えている。定在波検出部31は、送電ユニット11における定在波を検出する。算出部32は、検出した定在波に基づいて、定在波比Rを算出する。電力制御部33は、この定在波比Rに基づいて、高周波生成部14から生成する高周波の電力を制御する。電力制御部33は、定在波比Rが予め設定した設定値D以上のとき、高周波生成部14から生成する高周波の出力を低減する。これにより、高周波生成部14は、蓄電部16のインピーダンスに応じた電力を出力する。その結果、送電ユニット11から移動体12へ過大な電力が出力されることがなく、移動体12は過剰な電力に対応するための保護回路およびこれらの冷却機構などの追加の機構が不要となる。また、蓄電部16のインピーダンスの変化にあわせた電力の制御は送電ユニット11で完結する。したがって、移動体12の重量の増加を招くことなく、蓄電部に16おける充電の開始から終了まで整合を図ることができ、充電の効率を高めることができる。
【0049】
また、第2実施形態では、判断部35を備えている。判断部35は、送電ユニット11が設けられている位置に充電の対象となる移動体12が存在するか否かを判断する。第2実施形態の場合、判断部35は、蓄電部16を充電するときの電力に比較して小さな検出電力P1を用いて、移動体12の有無を判断する。これにより、例えば機械的、電気的あるいは光学的な検出装置を追加することなく、移動体12を検出することができる。また、微小な検出電力を用いることにより、不要な電界の形成を低減することができるとともに、移動体12の未検出時における電力の反射による高周波生成部14への影響を低減することができる。
【0050】
(第3実施形態)
第3実施形態による無線電力伝送装置10を
図6に示す。
第3実施形態による無線電力伝送装置10は、電力伝送部13、高周波生成部14および蓄電部16を備えている。電力伝送部13、高周波生成部14、整流回路部15、蓄電部16、整合回路部24、駆動部25および移動体制御部26は、第1実施形態と同一の構成である。第3実施形態の場合、無線電力伝送装置10は、上記に加え、記憶部41、読取部42および電力制御部43を備えている。記憶部41は、送電ユニット11に設けられており、蓄電部16の関係値を記憶している。記憶部41は、例えば不揮発性のメモリなどを有している。記憶部41は、電力制御部43を構成するマイクロコンピュータのROMと兼用してもよい。読取部42は、記憶部41に記憶した関係値を、蓄電部16への充電の開始から経時的に読み取る。
【0051】
電力制御部43は、送電ユニット11に設けられている。電力制御部43は、読取部42で読み取った関係値に基づいて、高周波生成部14を制御する。電力制御部43は、例えばCPU、RAMおよびROMを有するマイクロコンピュータで構成されている。電力制御部43は、ROMに記憶されたコンピュータプログラムをCPUで実行することにより、高周波生成部14の制御をソフトウェア的に実現する。なお、電力制御部43は、ソフトウェア的に限らず、ハードウェア的、またはソフトウェアとハードウェアとの協働によって高周波生成部14の制御を実現する構成としてもよい。
【0052】
読取部42は、例えば電力制御部43を構成するマイクロコンピュータによってソフトウェア的に実現してもよく、専用の電子回路によりハードウェア的に実現、またはハードウェアとソフトウェアとの協働によって実現してもよい。また、読取部42は、電力制御部43の1つの要素として組み込んでもよく、電力制御部43とは別個独立した単独の構成としてもよい。
【0053】
蓄電部16は、型番ごとまたは個体ごとに、充電率と充電抵抗との間に固有の関係を有している。この充電抵抗Zrは、充電率が上昇するにしたがって増大し、
図7の充電抵抗Zrに示すような経時的な変化曲線となる。ここで、充電抵抗Zrは、充電開始からの経過時間tつまり蓄電部16の充電率に依存する。このとき、整流回路部15から出力され蓄電部16に印加される電圧Vdは、上述のようにVd=(Pr×Zr)
1/2である。
【0054】
受電電力Prが充電当初の状態から変化しない場合、電圧Vdは充電抵抗Zrの増大とともに増加することになる。そこで、充電抵抗Zrの増大に応じて受電電力Prを減少させることにより、電圧Vdの増大は抑制される。記憶部41は、この充電抵抗Zrの変化特性を、充電率との充電パターンとして記憶している。充電パターンは、関係値に相当する。
【0055】
電力制御部43は、読取部42を通して記憶部41に記憶された充電パターンを読み取り、読み取られた充電パターンに基づいて高周波生成部14で生成する高周波の出力を制御する。すなわち、電力制御部43は、充電パターンに示されている充電抵抗Zrに反比例するように高周波の出力を制御する。これにより、インピーダンスが小さな領域では送電ユニット11から移動体12へ伝送される電力は大きくなり、インピーダンスが大きな領域では伝送される電力を小さくすることができる。その結果、蓄電部16における充電率の上昇によってインピーダンスが大きくなると、送電ユニット11から移動体12へ伝送される電力が減少し、移動体12の整流回路部15および蓄電部16における電圧Vdの上昇は抑制される。電圧Vdの上昇を抑制することにより、蓄電部16に過大な電圧が印加されるのを回避することができる。
【0056】
記憶部41は、移動体12に適用される蓄電部16に応じて、複数の充電パターンを記憶することが好ましい。これにより、記憶部41から蓄電部16に応じた適切な充電パターンを読み取り、多様な蓄電部16への対応が可能となる。
【0057】
第3実施形態の無線電力伝送装置10は、記憶部41、読取部42および電力制御部43を備えている。記憶部41は、蓄電部16の特性である関係値を充電パターンとして記憶する。読取部42は、蓄電部16に充電が開始されると、この開始から経時的に記憶部41に記憶された充電パターンを読み取る。電力制御部43は、この読み取られた充電パターンに基づいて、高周波生成部14から生成する高周波の電力を制御する。その結果、送電ユニット11から移動体12へ過剰な電力が出力されることがなく、移動体12は過剰な電力に対応するための保護回路およびこれらの冷却機構などの追加の機構が不要となる。また、蓄電部16のインピーダンスの変化にあわせた電力の制御は送電ユニット11側で完結する。したがって、移動体12の重量の増加を招くことなく、蓄電部16における充電の開始から終了まで整合を図ることができ、充電の効率を高めることができる。
【0058】
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
図面中、10は無線電力伝送装置、11は送電ユニット(送電側)、12は移動体、13は電力伝送部、14は高周波生成部、15は整流回路部、16は蓄電部、17は電圧測定部、18は通信部、19、33、43は電力制御部、21は送電電極部、22は受電電極部、31は定在波検出部、32は算出部、35は判断部、41は記憶部、42は読取部を示す。