(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042102
(43)【公開日】2023-03-27
(54)【発明の名称】農作業装置、農作業方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B25J 13/08 20060101AFI20230317BHJP
A01D 45/00 20180101ALI20230317BHJP
【FI】
B25J13/08 A
A01D45/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149209
(22)【出願日】2021-09-14
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センター、「イノベーション創出強化研究推進事業」、「アスパラガス生産に働き方改革を!「枠板式高畝式栽培」を基盤とした省力安定栽培システムの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】519404090
【氏名又は名称】inaho株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】唐子 征久
(72)【発明者】
【氏名】松島 丈弘
(72)【発明者】
【氏名】道心 雄大
【テーマコード(参考)】
2B075
3C707
【Fターム(参考)】
2B075AA10
2B075GA01
2B075GA05
2B075JJ05
3C707AS22
3C707BS09
3C707CS08
3C707DS01
3C707ES03
3C707ET08
3C707EV21
3C707KS16
3C707KT01
3C707KT02
3C707KV09
3C707KX05
3C707LS15
3C707LV12
3C707LV14
3C707NS26
3C707WA16
(57)【要約】
【課題】対象に対して適切に農作業を実行可能とする農作業技術を提供すること。
【解決手段】農作業装置1は、対象に対して農作業を実行するハンド装置33を備えるアーム装置3と、対象を撮像する第1撮像装置と、第1撮像装置が対象を撮像することにより得られる画像情報に基づいて対象の位置を推定する対象位置推定部22と、位置の推定結果に基づいてアーム装置3を対象に対して移動させるアーム装置制御部24と、ハンド装置33の接触動作に基づいて基準位置RPを検出する基準位置検出部23と、基準位置RPに応じた位置で農作業を実行するためにハンド装置33を制御するハンド装置制御部25と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象に対して農作業を実行するハンド装置を備えるアーム装置と、
前記対象を撮像する第1撮像装置と、
前記第1撮像装置が前記対象を撮像することにより得られる画像情報に基づいて前記対象の位置を推定する対象位置推定部と、
前記位置の推定結果に基づいて前記アーム装置を前記対象に対して移動させるアーム装置制御部と、
前記ハンド装置の接触動作に基づいて基準位置を検出する基準位置検出部と、
前記基準位置に応じた位置で前記農作業を実行するために前記ハンド装置を制御するハンド装置制御部と、を備える、
農作業装置。
【請求項2】
前記ハンド装置は、前記対象を把持する把持部を更に備え、
前記ハンド装置制御部は、前記把持部が前記対象を把持する際に、前記アーム装置の制御ゲインに基づいて前記ハンド装置の前記対象との接触度合いを制御する、
請求項1に記載の農作業装置。
【請求項3】
前記ハンド装置は、前記対象を切断する切断部を更に備え、
前記アーム装置制御部は、前記切断部が前記対象を切断する際に、前記アーム装置の制御ゲインを調整し、又は、
前記ハンド装置制御部は、前記切断部が前記対象を切断する際に、前記ハンド装置の制御ゲインを調整する、
請求項1又は2に記載の農作業装置。
【請求項4】
前記ハンド装置は、前記対象を把持する把持部と、前記対象を切断する切断部と、を更に備え、
前記把持部が把持する前記対象に対する前記切断部による切断動作後における前記ハンド装置の所定動作の結果に基づいて、前記対象の切断の成否を判断する成否判断部を更に備える、
請求項1~3のいずれか一項に記載の農作業装置。
【請求項5】
前記所定動作は、少なくとも前記把持部の回転動作を含む、
請求項4に記載の農作業装置。
【請求項6】
前記成否判断部は、前記切断動作後における前記把持部の回転量が所定値以上であるか否かに基づいて前記成否を判断する、
請求項5に記載の農作業装置。
【請求項7】
前記農作業装置を予め定められた経路に沿って移動させる駆動装置と、
前記農作業装置の移動方向である第1方向とは異なる第2方向を撮像するように前記農作業装置に配置された第2撮像装置と、
前記第2撮像装置が前記第2方向を撮像することにより得られる画像情報に基づいて前記農作業装置が前記経路に沿って移動するように前記駆動装置を制御する駆動装置制御部と、を更に備える、
請求項1~6のいずれか一項に記載の農作業装置。
【請求項8】
前記第2方向は、前記第1方向に対して略垂直である、
請求項7に記載の農作業装置。
【請求項9】
前記第2撮像装置は、前記対象が配置された畝における所定面を撮像する、
請求項7又は8に記載の農作業装置。
【請求項10】
前記第1撮像装置は、前記アーム装置に配置される、
請求項1~9のいずれか一項に記載の農作業装置。
【請求項11】
対象に対して農作業を実行するハンド装置を備えるアーム装置と、前記対象を撮像する撮像装置と、を備える農作業装置が実行する農作業方法であって、
前記撮像装置が前記対象を撮像することにより得られる画像情報に基づいて前記対象の位置を推定するステップと、
前記位置の推定結果に基づいて前記アーム装置を前記対象に対して移動させるステップと、
前記ハンド装置の接触動作に基づいて基準位置を検出するステップと、
前記基準位置に応じた位置で前記農作業を実行するために前記ハンド装置を制御するステップと、を含む、
農作業方法。
【請求項12】
対象に対して農作業を実行するハンド装置を備えるアーム装置と、前記対象を撮像する撮像装置と、を備える農作業装置を、
前記撮像装置が前記対象を撮像することにより得られる画像情報に基づいて前記対象の位置を推定する対象位置推定部と、
前記位置の推定結果に基づいて前記アーム装置を前記対象に対して移動させるアーム装置制御部と、
前記ハンド装置の接触動作に基づいて基準位置を検出する基準位置検出部と、
前記基準位置に応じた位置で前記農作業を実行するために前記ハンド装置を制御するハンド装置制御部と、
して機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業装置、農作業方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アスパラガス等の農作物を自動的に収穫するために、農作物を把持して切断することが可能な収穫ロボットが知られている。
【0003】
これに関して、特許文献1には、被収穫物を挟持する挟持手段と、被収穫物を切断する切断手段と、を備えた収穫ロボットのハンド装置が記載されている。ハンド装置が備える切断手段は、2本の挟持部材の下方に位置し、ハンド装置の基端側に保持された初期位置からコイルバネの弾性力で直進運動して、アスパラガスを切断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のハンド装置は、撮影装置によって検出されたアスパラガスを挟持し切断することができる。しかしながら、従来のハンド装置は、アスパラガスの適切な切断位置及び収穫位置を把握することができないため、アスパラガスの収穫を適切に実行できないおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、対象に対して適切に農作業を実行可能とする農作業技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る農作業装置は、対象に対して農作業を実行するハンド装置を備えるアーム装置と、対象を撮像する第1撮像装置と、第1撮像装置が対象を撮像することにより得られる画像情報に基づいて対象の位置を推定する対象位置推定部と、位置の推定結果に基づいてアーム装置を対象に対して移動させるアーム装置制御部と、ハンド装置の接触動作に基づいて基準位置を検出する基準位置検出部と、基準位置に応じた位置で農作業を実行するためにハンド装置を制御するハンド装置制御部と、を備える。
【0008】
本発明の一実施形態に係る農作業方法は、対象に対して農作業を実行するハンド装置を備えるアーム装置と、対象を撮像する撮像装置と、を備える農作業装置が実行する農作業方法であって、撮像装置が対象を撮像することにより得られる画像情報に基づいて対象の位置を推定するステップと、位置の推定結果に基づいてアーム装置を対象に対して移動させるステップと、ハンド装置の接触動作に基づいて基準位置を検出するステップと、基準位置に応じた位置で農作業を実行するためにハンド装置を制御するステップと、を含む。
【0009】
本発明の一実施形態に係るプログラムは、対象に対して農作業を実行するハンド装置を備えるアーム装置と、対象を撮像する撮像装置と、を備える農作業装置を、撮像装置が対象を撮像することにより得られる画像情報に基づいて対象の位置を推定する対象位置推定部と、位置の推定結果に基づいてアーム装置を対象に対して移動させるアーム装置制御部と、ハンド装置の接触動作に基づいて基準位置を検出する基準位置検出部と、基準位置に応じた位置で農作業を実行するためにハンド装置を制御するハンド装置制御部と、して機能させるためのプログラム。
【0010】
なお、各実施形態において、「部」、「装置」、「システム」とは、単に物理的手段を意味するものではなく、その「部」、「装置」、「システム」が有する機能をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つの「部」、「装置」、「システム」が有する機能が2つ以上の物理的手段や装置により実現されても、2つ以上の「部」、「装置」、「システム」の機能が1つの物理的手段や装置により実現されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、対象に対して適切に農作業を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る農作業装置が圃場において実行する農作業の一例を示す概要図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る農作業装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る農作業装置の一例を示す外観構成図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係る農作業装置の画像認識処理の一例を示す図である。
図4(A)は、アームカメラがアスパラガスを含むように撮像することによって得られたRGB画像の一例である。
図4(B)は、
図4(A)に示すRGB画像に対してセグメンテーション処理を実行した結果であるセグメンテーション画像の一例である。
図4(C)は、
図4(A)に示すRGB画像に対して深度情報を重ねた画像認識結果を示す画像の一例である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係る農作業装置の接触動作及び収穫動作の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、
図5における破線丸DC部分を拡大した拡大図である。
図6(A)は、ハンド装置が高畝表面に接触する直前の状態を示す図である。
図6(B)は、ハンド装置が高畝表面に接触した直後の状態を示す図である。
図6(C)は、ハンド装置が本体部から切断部を出した状態を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態に係る農作業装置のサーボモータにおける逆駆動性の利用の一例を示す概念図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態に係る農作業処理フローの一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態に係るアーム装置の移動時における接触検出処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態に係るハンド装置が農作業の対象を把持する際のハンド装置の差込動作の一例を説明する説明図である。
【
図11】
図11は、本発明の一実施形態に係るハンド装置が農作業の対象を切断する際の切断部の押込動作の一例を説明する説明図である。
【
図12】
図12は、本発明の一実施形態に係る農作業の成否判断処理の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、本発明の一実施形態に係る農作業装置が圃場において実行する駆動処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、一実施形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、一連の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付して表している。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る農作業装置が圃場において実行する農作業の一例を示す概要図である。
図1に示すように、農作業装置1は、圃場FFにおいて農作業を実行する装置である。
【0015】
「農作業」は、農業での生産のための作業をいう。農作業は、例えば高畝HCに配置されているアスパラガスA(対象)の把持、切断、及び収穫の少なくとも一つを含む。また、農作業は、圃場FFに対する薬剤散布、圃場FFにおける除草、葉かき、又は、受粉等を含む。農作業の「対象」は、アスパラガスAのような「農作物」に限られず、圃場FF内に形成される畝等の地面部分、及び、圃場FF内の所定の空間を含んでもよい。なお、農作物は、アスパラガスA、トマト、キュウリ、及びピーマン等の野菜の他、果物、穀物等を含んでもよい。以下では、農作業を実行する農作業装置1の概要を説明する。
【0016】
農作業装置1は、農作業装置1を管理するユーザによって予め設定された農作業内容に基づいて自動的に農作業を実行する。ユーザは、当該ユーザが操作する携帯端末(不図示)を介して、農作業装置1が実行するための農作業の内容を設定する。
【0017】
なお、以下では、農作業装置1は、自動的に農作業を実行する農作業装置として説明するが、ユーザは、農作業装置が自動的に動作している間に適宜、マニュアル操作を行うことが可能である。
【0018】
ユーザは、農作業内容として、例えば、農作業の対象(例えば、アスパラガスA)、の作業の範囲(例えば、圃場FF内の少なくとも一部の領域)、及び、農作業装置1の移動経路(例えば、農作業装置1が圃場FFにおいて移動する経路、及び、農作業装置1が農作業を開始するスタート地点及び農作業を終了するエンド地点)を設定する。
【0019】
農作業装置1は、圃場FF内の予め設定された経路Lに沿って移動する。農作業装置1は、例えば、アスパラガスAが栽培されている高畝HCを構成する側壁SWに並行に移動する。農作業装置1は、例えば20cm程度移動したら停止し、後述する農作業を実行する。そして、農作業が完了すると、農作業装置1は、経路Lに沿って再度20cm程度移動し、農作業を実行するということを繰り返す。
【0020】
農作業装置1は、アーム装置3Bに配置されたアームカメラ31(第1撮像装置)からの画像情報に含まれるすべてのアスパラガスAに対して収穫処理を実行するか否かを判断した(例えば、規格外品等を除く収穫可能なアスパラガスAを収穫した)後に、移動を再開する。
【0021】
農作業装置1の移動量に関して、上記では20cm程度と説明したが、これに限られず、当該移動量については、収穫対象物の大きさや配置位置、及び、アームカメラ31のレンズのサイズ等に基づいて適宜変更されてよい。
【0022】
農作業装置1は、アームカメラ31からの画像情報に基づいて、収穫対象であるアスパラガスAの位置を推定する。農作業装置1は、収穫対象であるアスパラガスAまでのアーム装置3A及び3Bの進入経路、例えば、アーム装置3A及び3Bのそれぞれの現在の三次元座標位置から高畝HCにおけるアスパラガスAが配置されている三次元座標位置までの進入経路を設定する。ただし、以下の説明において、これらアーム装置3A及び3Bを区別することなく説明する場合には、符号を一部省略して、単に「アーム装置3」と呼ぶ。
【0023】
農作業装置1は、設定した進入経路に基づいて、アーム装置3Bに接続されたハンド装置33を収穫対象であるアスパラガスAに接触させる。農作業装置1は、ハンド装置33を用いてアスパラガスAを把持、切断、及び、収穫する。農作業装置1は、ハンド装置33を用いて収穫したアスパラガスAを収納箱SBに格納する。なお、農作業装置1の接触動作、及び、収穫動作の詳細については後述する。
【0024】
図2は、本発明の一実施形態に係る農作業装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、農作業装置1は、例示的に、対象に対して農作業を実行するアーム装置3と、本体カメラ4(第2撮像装置)と、不図示のGPS衛星から送信されたGPS信号に基づいて農作業装置1の位置を検出するGPSセンサ5と、農作業装置1が実行する各処理に必要な情報及び当該各処理で生成された情報を記録する記録装置6と、ユーザが操作する携帯端末と各種情報を送受信する通信装置7と、農作業装置1を予め定められた経路に沿って移動させる駆動装置8と、上記各構成要素と接続された中央処理装置2と、を備える。なお上記各構成要素は、それぞれが単一の構成要素であってもよいし、複数の構成要素を含む構成要素であってもよい。
【0025】
図3は、本発明の一実施形態に係る農作業装置の一例を示す外観構成図である。
図1及び
図3に示すように、アーム装置3は、例示的に、アーム装置3A及び3Bを備える。後述する、中央処理装置2のアーム装置制御部24(
図2参照)は、アーム装置3及びアームカメラ31の動作を制御する。
【0026】
図3に示すように、アーム装置3Aは、農作業装置1の支持部Sにジョイント(関節)JT1を介して接続される。アーム装置3Aは、ジョイントJT1を介して、支持部Sにおいて破線矢印DA1で示す方向でスライド可能である。また、アーム装置3Aは、ジョイントJT1を介して、破線矢印DA3で示す方向で回転可能である。
【0027】
アーム装置3Bは、アーム装置3AとジョイントJT2を介して接続される。アーム装置3Bは、ジョイントJT2を介して、破線矢印DA5で示す方向で回転可能である。
【0028】
アーム装置3Bは、例示的に、アームカメラ31と、ハンド装置33とを備える。アームカメラ31は、農作業の対象を撮像する。ハンド装置33は、対象に対して農作業を実行する。後述する、中央処理装置2のハンド装置制御部25(
図2参照)は、ハンド装置33の動作を制御する。
【0029】
ハンド装置33は、アーム装置3BとジョイントJT3を介して接続される。ハンド装置33は、ジョイントJT3を介して、破線矢印DA7で示す方向で回転可能であり、また、破線矢印DA9で示す方向で回転可能である。
【0030】
図1に示すように、本体カメラ4は、農作業装置1の側面側に配置され、例えば、農作業装置1の移動方向である経路Lの方向(第1方向)と異なる、側壁SWが配置されている方向(第2方向)を撮像する。第2方向は、例えば、第1方向に対して略90度(垂直)の向きである。
【0031】
農作業装置1は、圃場FF内の予め設定された経路Lに沿って移動する際に、本体カメラ4(測距センサ)によって側壁SWの2点以上を計測する。農作業装置1は、計測結果に基づいて農作業装置1と側壁SWとの距離を測定する。農作業装置1は、農作業装置1と側壁SWとの間において一定の距離を保ちながら、農作業装置1の進行方向を制御することによって、経路Lに沿って適切に走行可能である。
【0032】
アームカメラ31は、例えば、耐外乱光性能を有する、パルスレーザを使用するTOF(Time Of Flight)型距離画像センサ、及び、CCD(Charge-Coupled Device)を備える撮像装置である。
【0033】
また、本体カメラ4は、例えば、耐外乱光性能を有する、パルスレーザを使用するTOF型距離画像センサを備える撮像装置である。
【0034】
なお、アームカメラ31及び本体カメラ4のそれぞれは、単一のカメラでもよいし、複数のカメラを備えてもよい。
【0035】
中央処理装置2は、農作業装置1が農作業を実行するために上記各構成要素を制御する。中央処理装置2は、例えばCPU、MPU等であって、記録装置6に格納されたプログラムに従って動作する。
【0036】
中央処理装置2は、機能的に、画像情報取得部21と、対象位置推定部22と、基準位置検出部23と、アーム装置制御部24と、ハンド装置制御部25と、成否判断部26と、駆動装置制御部27と、を備える。
【0037】
画像情報取得部21は、アームカメラ31が農作業の対象を撮像することにより得られる画像情報をアームカメラ31から取得する。画像情報取得部21は、本体カメラ4が農作業装置1の周囲を撮像することにより得られる画像情報を本体カメラ4から取得する。
【0038】
対象位置推定部22は、アームカメラ31が農作業対象を撮像することにより得られる画像情報に基づいて農作業対象の位置を推定する。対象位置推定部22は、画像情報を取得して所定の画像認識処理を実行する。
【0039】
図4は、本発明の一実施形態に係る農作業装置の画像認識処理の一例を示す図である。
図4(A)は、アームカメラ31がアスパラガスAを含むように撮像することによって得られたRGB画像の一例である。
図4(B)は、
図4(A)に示すRGB画像に対してセグメンテーション処理を実行した結果であるセグメンテーション画像の一例である。
図4(C)は、
図4(A)に示すRGB画像に対して深度情報を重ねた画像認識結果を示す画像の一例である。
【0040】
対象位置推定部22は、
図4(A)に示すRGB画像に対して、例えば、インスタンス・セグメンテーション処理(例えば、RGB画像における各物体インスタンスを区別しながら推定する処理)を実行する。
図4(B)に示すように、対象位置推定部22は、画像内の高畝HCの地面領域、複数のアスパラガスAごとの若茎領域、及び、他の領域を判別する。
【0041】
また、対象位置推定部22は、
図4(C)に示すように、RGB画像に対して深度情報を用いた画像認識処理を実行する。対象位置推定部22は、深度画像により地面領域をマスキングすることによって点群情報に変換等することによって地面を推定する。対象位置推定部22は、深度画像により複数の若茎領域をマスキングすることによって点群情報に変換等することによって各若茎を推定する。対象位置推定部22は、各若茎の点群情報に基づいて各若茎の根元位置(例えば切断位置)を推定する。対象位置推定部22は、各若茎の点群情報に基づいて、点群の最高点と根元位置との距離を長さとして算出して、各若茎の長さを推定可能である。
【0042】
基準位置検出部23は、ハンド装置33の接触動作に基づいて、農作業を実行するための基準位置を検出する。アーム装置制御部24は、上述したとおり、アーム装置3A及び3B並びにアームカメラ31の動作を制御する。ハンド装置制御部25は、上述したとおり、ハンド装置33の動作を制御する。
【0043】
図5は、本発明の一実施形態に係る農作業装置の接触動作及び収穫動作の一例を示す図である。
図5に示すように、まず、(1)アーム装置制御部24及びハンド装置制御部25は、ハンド装置33がアスパラガスAに近づき、かつ、ハンド装置33が備える把持部GU1及びGU2の間にアスパラガスAが配置されるように、アーム装置3及びハンド装置33を制御する。また、アーム装置制御部24及びハンド装置制御部25は、ハンド装置33をアスパラガスAに接触させるように、アーム装置3及びハンド装置33を制御する。
【0044】
(2)アーム装置制御部24及びハンド装置制御部25は、ハンド装置33をアスパラガスAに接触させつつ、下方向にハンド装置33を移動させる。
図5における(3)については、
図6を参照して以下説明する。ただし、以下の説明において、これら把持部GU1及びGU2を区別することなく説明する場合には、符号を一部省略して、単に「把持部GU」と呼ぶ。
【0045】
図6は、
図5における破線丸DC部分を拡大した拡大図である。
図6(A)は、ハンド装置が高畝表面に接触する直前の状態を示す図である。
図6(B)は、ハンド装置が高畝表面に接触した直後の状態を示す図である。
図6(C)は、ハンド装置が本体部から切断部を出した状態を示す図である。なお、
図6では、便宜のため、収穫対象であるアスパラガスAは図示していない。
【0046】
図6(A)に示すように、アーム装置制御部24及びハンド装置制御部25は、破線矢印DAに示すように、ハンド装置33が高畝HCの表面に接触するまでハンド装置33を降下させる。
図6(B)に示すように、基準位置検出部23は、ハンド装置33の接触検知部335の高畝HCの地表への接触動作に基づいて、収穫を実行するための基準位置RPを検出する。基準位置RPは、例えば、高畝HCの地表のうちハンド装置33の接触検知部335が実際に接触した位置を含む。
【0047】
ハンド装置33は、例えばいわゆるリンク式の切断方式を採用する。
図6(B)の矢印Aに示すように、ハンド装置33が高畝HCの地表へ接触すると、地表に対して接触検知部335が上方向に持ちあがる。接触検知部335が上方向に持ちあがることにともない、本体部331に収納された切断部CUをスライド(本体部331から突き出させる)させるためのスライド装置337が、スイッチ装置339を押下する。切断部CUは、アスパラガスA等の農作物を切断できるような任意の部材で構成される。切断部CUは、例えば、カッター、ナイフ、及びハサミ等を含む。
【0048】
切断部CUは、ハンド装置33が移動している場合には、本体部331に収納されており、切断処理の際に本体部331から突き出る。この構成によれば、ハンド装置33が収穫対象であるアスパラガスAに接近し接触する際にアスパラガスAを切断部CUで傷つけることを防止可能である。
【0049】
図6(C)に示すように、スイッチ装置339が押下されると、スライド装置337が右方向にスライドするとともに、スライド装置337と連動する切断部CUが把持部GUの下側に突き出る。このように、ハンド装置制御部25は、基準位置RPから所定の高さhの切断位置CP(基準位置RPに応じた位置)でアスパラガスAを把持部GU1及びGU2で挟み込むように把持し、アスパラガスAを切断部CUによって切断するためにハンド装置33を制御する。
【0050】
上記のとおり、一実施形態に係る農作業装置の接触動作及び収穫動作によれば、農作業装置1は、アスパラガスAの適切な切断位置及び収穫位置を把握することができる。したがって、対象に対して適切に農作業を実行可能である。
【0051】
ここで、
図6に示すように、ハンド装置33においては、下側から、接触検知部335、切断部CU、及び、把持部GUの順で配置されている。よって、アスパラガスAを把持する把持位置は、アスパラガスAを切断する切断位置CPよりもアスパラガスAにおいて上側に設定される。
【0052】
アスパラガスAを把持する把持位置、及び、切断する切断位置CPの少なくとも一方は、適宜変更可能である。例えば、ハンド装置33の本体部331における切断部CUの配置位置(配置高さ)を適宜変更可能である。また、ハンド装置33における把持部GUの配置位置(配置高さ)も適宜変更可能である。
【0053】
なお、把持部GU1及びGU2によってアスパラガスAを把持するタイミングは、任意であるが、安定的な切断が可能となるように、切断部CUが本体部331から送出される前であることが好ましい。ハンド装置制御部25は、例えば、ハンド装置33が高畝HCの表面に接触した直後にアスパラガスAを把持してもよいし、切断部CUが本体部331から送出される直前(切断処理の直前)であってもよい。
【0054】
図5及び
図6の例では、切断部CUは、高畝HCの地表と並行となるように本体部331から送出される。しかしながら、切断部CUの送出角度は、アスパラガスAを切断可能であれば、任意である。さらにまた、本実施形態では、把持部GUと切断部CUとは別体の構成として説明したが、これに限られず、両者は一体の構成でもよい。
【0055】
本実施形態では、基準位置RPは、高畝HCの地表の特定の位置である旨説明したがこれに限られず、基準位置RPは、圃場FFにおける他の所定面の特定の位置であってもよい。また、収穫対象物がトマトであるような場合は、農作業装置1は、トマトの上部(へた部分)を基準位置RPとして、へた部分から出ている「つる」部分の所定箇所を切断位置CPとして切断してトマトを収穫可能である。
【0056】
成否判断部26は、ハンド装置33が把持する農作業の対象に対する、ハンド装置33による切断動作後におけるハンド装置33の所定動作の結果に基づいて、対象の切断の成否を判断する。なお、成否判断処理の詳細については、
図13を参照しながら後述する。
【0057】
駆動装置制御部27は、農作業装置1が所定の経路に沿って移動するように駆動装置8を制御する。
【0058】
記録装置6は、ユーザによって設定された農作業装置1が実行する農作業内容に関する情報を記録する。記録装置6は、農作業の結果に関する情報をさらに記録してもよい。例えば、記録装置6は、アスパラガスAの収穫の有無及び収穫量を含む農作業情報を、アスパラガスAが収穫された位置を含む農作業位置と、農作業位置が測定された日時と、に関連づけて記録する。
【0059】
農作業位置は、
図2に示すGPSセンサ5が検出する農作業装置1の位置であってもよい。農作業位置は、複数の対象のそれぞれの位置であってもよい。複数の対象のそれぞれの位置は、例えば、高畝HCにおいて、アスパラガスAが農作業装置1に対してより近くに(手前に)配置されているか、又は、より遠くに(奥に)配置されているかを示す情報であってもよい。
【0060】
なお、記録装置6は、例えばROMやRAM、ハードディスク等の情報記録媒体で構成され、中央処理装置2によって実行されるプログラムを保持する情報記録媒体である。また、記録装置6は、中央処理装置2のワークメモリとしても動作する。なお、記録装置6に格納されたプログラムは、例えば、ネットワークを介して、農作業装置1の外部からダウンロードされて提供されてもよいし、又は、CD-ROMやDVD-ROM等のコンピュータで読み取り可能な各種の情報記録媒体によって提供されてもよい。
【0061】
通信装置7は、例えば、所定の通信ネットワークを介して、ユーザが操作する携帯端末から農作業を実行するための指示、及び、農作業装置1が実行する農作業の内容を示す情報を受信する。なお、所定の通信ネットワークは、有線又は無線の通信ネットワークを含む。
【0062】
駆動装置8は、例えば、左右の車軸に支持された移動用車輪であり、移動用車輪を回転させることにより前後に移動でき、旋回することができる。
【0063】
ここで、農作業装置1は、アーム装置3に関して、ハンド装置33と他の物体等との接触をある程度許容しつつ、適切に農作業を実行するために、ハンド装置33を所望の位置へ安全に移動させる必要がある。そこで、アーム装置3においては、サーボモータにおける逆駆動性を利用している。すなわち、アーム装置3は、サーボモータにおける逆駆動性を利用することによって、アーム装置3の各ジョイントの関節剛性を低下させること(柔らかさを得ること)ができ、かつ、接触の検出に関して外部センサを用いることなく簡便に実装可能である。
【0064】
図7は、本発明の一実施形態に係る農作業装置のサーボモータにおける逆駆動性の利用の一例を示す概念図である。
図7に示すように、
図2に示すアーム装置制御部24は、アーム装置3に対して、例えばPD制御(比例微分制御)を実行する。PD制御とは、制御システムの出力値q
actと目標値q
refとの偏差について、P制御で用いた比例ゲインK
pに加えて微分ゲインK
dを用いて行うフィードバック制御をいう。なお、K
d・sの「s」は微分を示す。
【0065】
アーム装置制御部24は、上記PD制御を採用することによって、目標電流irefを取得して、当該電流を用いてアーム装置3を制御可能である。アーム装置制御部24は、偏差を監視することによって、偏差の大きさが所定値以上になった場合は、アーム装置3が接触したとみなしてもよい。
【0066】
また、アーム装置制御部24は、比例ゲインKpを調整することによって、各ジョイントの固さ(関節剛性)を調整可能である。例えば、比例ゲインKpを増大させることによってジョイントの関節剛性が強化される一方で、比例ゲインKpを減少させることによってジョイントの関節剛性が低下する。また、アーム装置制御部24は、アーム装置3の制御の安定性を向上させるために、微分ゲインKdを適宜調整することも可能である。なお、アーム装置制御部24は、PID制御等の他の制御手法を採用してもよい。
【0067】
図8は、本発明の一実施形態に係る農作業処理フローの一例を示すフローチャートである。
図8に示すように、農作業装置1は、
図1~
図3に示すアームカメラ31を用いて農作業の対象であるアスパラガスAを含むように周囲を撮像する(ステップS1)。農作業装置1は、アスパラガスAを撮像することにより得られる画像情報に基づいてアスパラガスAの位置を推定する(ステップS3)。
【0068】
農作業装置1は、アスパラガスAの位置の推定結果に基づいてアーム装置3をアスパラガスAに対して移動させる(ステップS5)。農作業装置1は、
図1~
図3に示すハンド装置33の接触動作に基づいて基準位置RP(
図5及び
図6を参照)を検出する(ステップS7)。農作業装置1は、基準位置RPに応じた切断位置CPでアスパラガスAを把持、切断及び収穫を実行するためにハンド装置33を制御する(ステップS9)。なお、ステップS7におけるハンド装置33の接触動作に関して、
図9を参照して説明する。
【0069】
図9は、本発明の一実施形態に係るアーム装置の移動時における接触検出処理の一例を示すフローチャートである。前提として、軸jは、
図7に示すPD制御が実装されたサーボモータに対応する。例えば、各サーボモータは、本実施形態では、
図3に示す各ジョイントJT1、JT2、及びJT3にそれぞれ採用される。また、各軸jの現在位置は、不図示のエンコーダ等によって取得可能である。
【0070】
農作業装置1は、手先(例えばハンド装置33)の目標座標に関する情報、例えば、目標位置(r)及び目標姿勢(θ)に関する情報に基づいてハンド装置33の進入経路を計画する(ステップS11,S13)。農作業装置1は、計画された進入経路に基づいて、ハンド装置33に関する時刻i及び軸jの目標位置[qij,ref]を算出する(ステップS15)。
【0071】
農作業装置1は、時刻ごと(例えば、5msごと)に、軸jの目標位置[qij,ref]を更新して設定する(ステップS17,S19,S21,S23)。農作業装置1は、エンコーダ等から出力された軸jの現在位置[qij,act]を取得する(ステップS25,S27)。農作業装置1は、PD制御における現在位置[qij,act]と目標位置[qij,ref]との偏差[qij,dev]を計算する(ステップS29)。
【0072】
農作業装置1は、軸jの許容偏差[εj]を取得して、現在位置と目標位置との偏差が許容範囲であるか否かを判定する(ステップS31,S33)。現在位置と目標位置との偏差が許容範囲でない場合(ステップS33においてNoの場合)は、農作業装置1は、ハンド装置33が他の物体と接触したことを検出し、アーム装置3及びハンド装置33の移動を停止する(ステップS35)。
【0073】
他方で、現在位置と目標位置との偏差が許容範囲である場合(ステップS33においてYesの場合)は、農作業装置1は、各軸のループ処理及び各時刻のループ処理を実行する(ステップS37,S39)。
【0074】
以上、本発明の一実施形態に係るアーム装置の移動時における接触検出処理によれば、農作業装置1は、現在位置と目標位置との偏差が許容範囲でない場合に、ハンド装置33が他の物体と接触したことを検出し、アーム装置3及びハンド装置33の移動を停止する。したがって、ハンド装置33が他の物体に接触しても、農作業装置1のアーム装置3が搭載するサーボモータ等に過負荷がかかることを防止可能である。
【0075】
図10は、本発明の一実施形態に係るハンド装置が農作業の対象を把持する際のハンド装置の差込動作の一例を説明する説明図である。ハンド装置33は、アスパラガスAを把持する把持部GU1及びGU2を備える。ここで、把持部GU1及びGU2によってアスパラガスAを把持する際のハンド装置33の差込量が適切ではない場合、アスパラガスAの把持や切断を失敗するおそれがある。
【0076】
具体的には、ハンド装置制御部25がハンド装置33をアスパラガスAに対して差し込み過ぎた場合は、アスパラガスAを倒してしまうことでアスパラガスAの把持を失敗するおそれがある。他方で、ハンド装置33のアスパラガスAへの差し込みが足らない場合は、切断部CUがアスパラガスAに対して十分に挿入されず、アスパラガスAの切断を失敗するおそれがある。
【0077】
そこで、
図2に示すハンド装置制御部25は、把持部GU1及びGU2がアスパラガスAを把持する際に、アーム装置3の制御ゲインに基づいてハンド装置33のアスパラガスAとの接触度合いを制御する。例えば、ハンド装置制御部25は、ハンド装置33のアスパラガスAへの差込動作の際に、アーム装置3の比例ゲインK
pを設定値よりも小さい値に調整する。つまり、アーム装置3の各ジョイントの関節剛性を低下させる(関節を柔らかくする)。なお、設定値は、適宜変更可能である。
【0078】
ハンド装置制御部25は、推定されたアスパラガスAの位置よりも一定程度差込量を増加させた差込の目標位置を設定する。ハンド装置制御部25は、設定した差込の目標位置まで移動させるようにハンド装置33を制御する場合に、ハンド装置33がアスパラガスAに接触するときに、アーム装置3の各ジョイントの逆駆動が働く。よって、ハンド装置33がアスパラガスAに衝突する等して、ハンド装置33がアスパラガスAを倒してしまうことを防止可能である。
【0079】
図11は、本発明の一実施形態に係るハンド装置が農作業の対象を切断する際の切断図の押込動作の一例を説明する説明図である。ハンド装置33は、アスパラガスAを切断する切断部CUを備える。ここで、切断部CUによってアスパラガスAを切断する際に、アスパラガスAが切断部CUによって押されてしまい、切断部CUの挿入方向に動く(逃げる)場合がある。特に、アスパラガスAの動きが大きい(逃げ量が大きい)場合は、切断部CUがアスパラガスAに十分に挿入されず、切断処理が失敗となるおそれがある。
【0080】
そこで、アーム装置制御部24は、切断部CUがアスパラガスAを切断する際に、アーム装置3の制御ゲインを調整する。例えば、アーム装置制御部24は、ハンド装置33のアスパラガスAへの押込動作の際に、アーム装置3の比例ゲインKpを設定値よりも大きい値に設定する。なお、設定値は、適宜変更可能である。
【0081】
つまり、アーム装置3の各ジョイントの関節剛性を強化させる(関節を固くする)ことによって、ハンド装置33から切断部CUをアスパラガスAに対して突き出す際の、ハンド装置33のアスパラガスAへの押込量が増加する。よって、アスパラガスAが切断部CUによって押されてしまい、切断部CUの挿入方向に動く(逃げる)場合であっても、切断部CUがアスパラガスAに対して十分に挿入されるため、アスパラガスAを適切に切断し収穫可能である。
【0082】
なお、ハンド装置制御部24は、切断部CUがアスパラガスAを切断する際に、ハンド装置33(切断部CU)の制御ゲインを調整してもよい。例えば、ハンド装置制御部24は、まず、切断部CUを所定のゲインAでアスパラガスAの切断を試みる。仮に、切断部CUが目標位置まで到達しなかった場合、ハンド装置制御部24は、切断部CUのゲインを大きくすることによって、再度、目標位置に到達してアスパラガスAの切断を試みる。
【0083】
図12は、本発明の一実施形態に係る農作業の成否判断処理の一例を示す図である。ここで、農作業装置1は、アスパラガスAの切断に失敗する場合に、把持部GUでアスパラガスAを把持したまま持ち上げると、ハンド装置33及びアーム装置3等の構造部材に過負荷がかかる可能性がある。そこで、上記の問題を解消するために、農作業装置1では、例えば、アスパラガスAを
図1に示す収納箱SBに移動させる運搬動作に移行する前に、アスパラガスAの切断処理の成否を判断する。
【0084】
図2に示す成否判断部26は、ハンド装置33の把持部GUが把持するアスパラガスAに対する切断部CUによる切断動作後におけるハンド装置33の所定動作の結果に基づいて、アスパラガスAの切断の成否を判断する。所定の動作は、例えば、(1)把持部GUがアスパラガスAを把持した状態で持ち上げる挙上動作と、(2)アスパラガスAを把持した把持部GUの回転動作と、を含む。
【0085】
成否判断部26は、例えば、切断動作後において、(1)把持部GUがアスパラガスAを所定の高さ分、持ち上げることができ、かつ、(2)把持部GUのロール回転角θ(回転量)が所定値β以上である場合に、切断部CUによるアスパラガスAの切断が成功したと判断する(
図12における(A))。成否判断部26が、切断処理が成功したと判断する場合は、農作業装置1は、アスパラガスAを
図1に示す収納箱SBに移動させる運搬動作に移行する。なお、所定の高さ、及び、所定値βは、適宜変更可能である。
【0086】
他方で、成否判断部26は、例えば、切断動作後において、(1)把持部GUがアスパラガスAを所定の高さ分、持ち上げることができないこと、及び、(2)把持部GUのロール回転角θ(回転量)が所定値βより小さいことの少なくとも一方に該当する場合に、切断部CUによるアスパラガスAの切断が失敗したと判断する(
図12における(B))。成否判断部26が、切断処理が失敗したと判断する場合は、農作業装置1は、リカバリ動作として、例えば、把持部GUのアスパラガスAの把持を解除し、アーム装置3を所定の待機姿勢へ移行させる。
【0087】
図13は、本発明の一実施形態に係る農作業装置が圃場において実行する駆動処理の一例を示す図である。
図13に示すように、本体カメラ4は、農作業装置1の側面側に配置され、例えば、農作業装置1の予め設定された経路の方向(破線矢印DA11の方向)と異なる、側壁SWが配置されている方向(破線矢印DA10の方向)を撮像する。破線矢印DA10の方向は、例えば、破線矢印DA11の方向に対して略90度(垂直)の向きである。なお、本体カメラ4の撮像方向は、破線矢印DA11の方向に対して略90度(垂直)の向きに限られず、後述するとおり、高畝HC1を形成する側壁SW1の2点以上を計測することが可能な方向を含む。
【0088】
農作業装置1は、圃場FF内の予め設定された経路の方向(破線矢印DA11)に沿って移動する際に、本体カメラ4によって高畝HC1を形成する側壁SW1の2点以上を計測する。農作業装置1は、計測結果に基づいて農作業装置1と側壁SW1の各点からの距離を測定し、農作業装置1の進行方向を制御することによって、経路に沿って適切に走行できる。なお、農作業装置1は、農作業装置1と側壁SW1の各点からの距離に加えて、農作業装置1の進行方向と側壁SW1が形成されている方向(破線矢印DA17)とに基づく角度をさらに踏まえて農作業装置1の進行方向を制御することが可能である。
【0089】
例えば、本体カメラ4によって側壁SW1の計測点を検出できなくなった場合に、駆動装置制御部27は、農作業装置1が経路の折り返し地点TPに到着したことを検出してもよい。また、例えば、本体カメラ4、又は、
図1~
図3に示す農作業装置1のアームカメラ31が圃場FFの端の地点に配置されたマーカを検出することによって、駆動装置制御部27は、農作業装置1が経路の折り返し地点TPに到着したことを検出してもよい。マーカは、農作業装置1が経路の折り返し地点TPを検出可能であればよく任意であるが、例えば、QRコード(登録商標)等のコードを含む。
【0090】
駆動装置制御部27は、農作業装置1が経路の折り返し地点TPに到着したことを検出すると、
図2に示す駆動装置8を制御して、農作業装置1を破線矢印DA13の向きに旋回させ、破線矢印DA15で示す経路に沿って移動させる。その後、農作業装置1は、高畝HC2で栽培されているアスパラガスAに対して収穫作業を再開する。
【0091】
農作業装置1は、圃場FF内の予め設定された経路の方向(破線矢印DA15の方向)に沿って移動する際に、本体カメラ4によって高畝HC2を形成する側壁SW2の2点以上を計測する。農作業装置1は、計測結果に基づいて農作業装置1と側壁SW2との距離を測定し、農作業装置1の進行方向を制御することによって、経路に沿って適切に走行が可能となる。その後、農作業装置1が設定された経路のエンド地点に到着すると、農作業装置1は農作業を終了する。
【0092】
なお、上記各実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。また、本発明は、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の開示を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素は削除してもよい。さらに、異なる実施形態に構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1…農作業装置、2…中央処理装置、3,3A,3B…アーム装置、4…本体カメラ、5…GPSセンサ、6…記録装置、7…通信装置、8…駆動装置、31…アームカメラ、33…ハンド装置、CP…切断位置、CU…切断部、GU,GU1,GU2…把持部、RP…基準位置