(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042164
(43)【公開日】2023-03-27
(54)【発明の名称】座屈拘束ブレース
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20230317BHJP
【FI】
E04B1/58 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149322
(22)【出願日】2021-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 文久
(72)【発明者】
【氏名】中川 学
(72)【発明者】
【氏名】薮田 智裕
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA33
2E125AC13
2E125AC23
2E125AG03
2E125AG12
(57)【要約】
【課題】木造建築物等の架構内に組み込んで使用するのに好適であり、木製拘束材を形成する拘束板や側板を相互に接続するボルトの本数を低減することのできる、座屈拘束ブレースを提供すること。
【解決手段】座屈拘束ブレース100は、鋼製でプレート状の芯材10と、芯材10の有する二つの広幅面11aに対向するように配設されている木製で一対の拘束板21、芯材10の有する二つの狭幅面11bに対向するように配設されて一対の拘束板21をそれらの長手方向に亘って接続する複数の第1鎹29A、により形成される木製拘束材20と、を備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製でプレート状の芯材と、
前記芯材の有する二つの広幅面に対向するように配設されている木製で一対の拘束板と、前記芯材の有する二つの狭幅面に対向するように配設され、前記一対の拘束板をそれらの長手方向に亘って接続する複数の第1鎹と、により形成される木製拘束材と、を備えていることを特徴とする、座屈拘束ブレース。
【請求項2】
前記第1鎹が、前記木製拘束材の長手方向に亘って、ハの字状もしくは逆ハの字状に配設されて、鎹トラスを形成していることを特徴とする、請求項1に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項3】
前記木製拘束材の長手方向の中央側には、前記鎹トラスが形成され、
前記木製拘束材の端部側には、前記広幅面に直交する方向に延びる複数の第2鎹が前記一対の拘束板の端部を接続していることを特徴とする、請求項2に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項4】
前記芯材の長手方向の端部の前記広幅面には、該広幅面に直交する補強リブが接合されて断面十字状を呈しており、
前記拘束板のうち、前記補強リブに対応する位置には該補強リブに干渉しないスリットが設けられており、
前記拘束板において、前記スリットを跨ぐように複数の第3鎹が取り付けられていることを特徴とする、請求項3に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項5】
前記第1鎹と前記第2鎹を目隠しする、化粧板が前記一対の拘束板の側面に取り付けられていることを特徴とする、請求項3又は4に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項6】
前記拘束板に対して、前記第1鎹と前記第2鎹と前記第3鎹のそれぞれの二本の突き刺し部が打ち込み固定されている、もしくは、前記拘束板に開設されている固定孔に対して前記第1鎹と前記第2鎹と前記第3鎹のそれぞれの二本の突き刺し部が挿通され、接着固定されていることを特徴とする、請求項4、請求項4に従属する請求項5に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項7】
前記拘束板の端部には、前記芯材の前記広幅面と接触しない非接触溝が設けられており、
前記拘束板の前記非接触溝以外の領域と前記芯材の前記広幅面が接触していることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項8】
前記芯材は、その長手方向の中央側において前記広幅面の幅が相対的に狭い狭幅部を有し、その長手方向の端部側において前記広幅面の幅が相対的に広い広幅部を有しており、
前記非接触溝は、前記拘束板の端縁から、前記芯材における前記広幅部と前記狭幅部の境界に対応する位置まで延設していることを特徴とする、請求項7に記載の座屈拘束ブレース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座屈拘束ブレースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物の架構(柱・梁架構、屋根架構等)を形成するブレースとして、座屈防止措置が講じられた座屈拘束ブレースが適用されている。座屈拘束ブレースとしては、鋼製の芯材の周囲を鋼板のみで補剛した形態、鋼製の芯材の周囲をRC(Reinforced Concrete:鉄筋コンクリート)で補剛した形態、鋼製の芯材の周囲を鋼材とモルタルで被覆した形態など、多様な補剛形態が存在する。
【0003】
ところで、昨今、木造建築物(木造住宅、木造の倉庫、木造の競技場など)の耐火性能や耐震性能の向上が図られている。木造住宅は本来的に、間取りやデザインの自由度の高さ、自然物の木材による癒し効果、木材の有する調湿効果、住宅などの建物用途によっては鉄骨造やRC造に比べて建設費用が一般に安価であるといった利点を備えているが、上記する耐火性や耐震性の向上が木造住宅をはじめとする木造建築物の注目度を高めている一つの要因である。このような木造住宅の架構内に上記する従来の座屈拘束ブレースを組み込む場合、木製の柱や梁と、金属製もしくはコンクリート製の補剛材を有する座屈拘束ブレースとが混在することになり、不釣合いな外観となることが否めない。
【0004】
そこで、座屈拘束ブレースの全体を木製もしくは紙製のパネル等で覆うことにより、金属製もしくはコンクリート製の補剛材を外部から視認できないようにする方策が考えられるが、この方策には多大な作業手間を要することから建設費の増加が懸念される。また、従来の座屈拘束ブレースは、金属やコンクリート、モルタル等が多用されていることから、重量が重くなる傾向にあり、木造住宅を構成する軽量な木製の梁や柱の中に重量のある座屈拘束ブレースを取り付けることは構造的にも不釣合いである。
【0005】
ここで、特許文献1には、木造住宅をはじめとする木造建築物の架構内に組み込んで使用するのに適した座屈拘束ブレースが提案されている。具体的には、芯材と、芯材の両面に沿って配置した一対の拘束材とを有する座屈拘束ブレースであり、芯材を鋼材にて形成し、一対の拘束材を木材にて形成し、この拘束材に集成材を適用し、集成材は芯材と平行にラミナが積層されたものとした座屈拘束ブレースである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の座屈拘束ブレースを形成する鋼製の芯材を包囲する木製拘束材は、芯材の二つの広幅面に対向する一対の拘束板と、一対の拘束板の端部同士を繋ぐ一対の側板とにより構成されるが、芯材の拘束効果を高めるべく木製拘束材を強固な閉合構造に形成しようとすると、一対の拘束板同士を繋ぐボルトや一対の側板同士を拘束板とともに繋ぐボルトの本数が往々にして多くならざるを得ない。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、木造建築物等の架構内に組み込んで使用するのに好適であり、木製拘束材を形成する一対の拘束板を相互に接続するボルトの本数を低減することのできる、座屈拘束ブレースを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明による座屈拘束ブレースの一態様は、
鋼製でプレート状の芯材と、
前記芯材の有する二つの広幅面に対向するように配設されている木製で一対の拘束板と、前記芯材の有する二つの狭幅面に対向するように配設され、前記一対の拘束板をそれらの長手方向に亘って接続する複数の第1鎹と、により形成される木製拘束材と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、木製拘束材を形成する一対の拘束板同士を、それらの長手方向に亘って配設されている複数の第1鎹が接続することにより、拘束板を相互に接続するボルトの本数を低減する、もしくはボルトを不要にしながら、一対の拘束板を強固に接続することができる。
【0011】
本態様においては、一対の拘束板による木製拘束材により鋼製の芯材が包囲されている。この構成により、本態様の座屈拘束ブレースを木造建築物の架構に適用した場合でも、架構構成部材と不釣合いな外観を与える恐れはない。ここで、拘束板は、無垢材により形成されてもよいし、ラミナが積層された集成材により形成されてもよい。
【0012】
さらに、本態様においては、木製拘束材が、例えば板状の一対の拘束板により形成されることから、木製拘束材の加工が容易になる。例えば、特許文献1に記載の座屈拘束ブレースは、集成材を加工して断面L型の二つの木製拘束材を製作し、これらを相互に逆さまにして、芯材を挟んだ状態で接続する加工を要する。これに対して、本態様の座屈拘束ブレースは、例えば板状の一対の拘束板の間に芯材を介在させた状態で拘束板同士を第1鎹にて接続することにより木製拘束材を製作し、同時に座屈拘束ブレースを製作することができる。そのため、座屈拘束ブレースの製作がより一層容易になる。
【0013】
本態様では、一対の拘束板の対応する側面(端面)に対して第1鎹が打ち込み等されることにより、第1鎹の二つの突き刺し部が一対の拘束板の内部に貫入して一対の拘束板を接続する。ここで、一対の拘束板同士を別途ボルトにて接続してもよいが、このボルトは、従来の木製拘束材の製作に必須のボルトではなく、例えば大地震時に一対の拘束板が分離しないためのフェールセーフとして適用されるものであり、従ってボルトを適用する場合でも従来の座屈拘束ブレースに比べてボルトの本数は格段に少なくてよい。
【0014】
また、本発明による座屈拘束ブレースの他の態様において、
前記第1鎹が、前記木製拘束材の長手方向に亘って、ハの字状もしくは逆ハの字状に配設されて、鎹トラスを形成していることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、木製拘束材の長手方向に亘って、第1鎹がハの字状もしくは逆ハの字状に配設されて鎹トラスを形成していることにより、強固に一体化された木製拘束材を形成でき、木製拘束材における芯材の強軸方向と弱軸方向の双方の断面剛性を高めることができる。
【0016】
また、本発明による座屈拘束ブレースの他の態様において、
前記木製拘束材の長手方向の中央側には、前記鎹トラスが形成され、
前記木製拘束材の端部側には、前記広幅面に直交する方向に延びる複数の第2鎹が前記一対の拘束板の端部を接続していることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、木製拘束材の端部側において、芯材の広幅面に直交する方向に延びる複数の第2鎹が一対の拘束板の端部を接続していることにより、一対の拘束板の端部が複数の第2鎹によって補強されることから、架構と座屈拘束ブレースが構面外に変形した際に、芯材から最も強い押し込み力を受ける一対の拘束板の端部に生じ得る割れ(割裂)を抑制することができる。
【0018】
また、本発明による座屈拘束ブレースの他の態様において、
前記芯材の長手方向の端部の前記広幅面には、該広幅面に直交する補強リブが接合されて断面十字状を呈しており、
前記拘束板のうち、前記補強リブに対応する位置には該補強リブに干渉しないスリットが設けられており、
前記拘束板において、前記スリットを跨ぐように複数の第3鎹が取り付けられていることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、芯材の長手方向の端部においては、芯材の広幅面に直交する補強リブが接合されることにより断面十字状を呈していることから、芯材の広幅面が建物の構面に平行に配設されるようにして座屈拘束ブレースがガセットプレートに取り付けられる場合、芯材が構面に平行な広幅面に直交する補強リブを有することにより、芯材の端部において構面外方向の剛性を高めることができる。このように断面十字状の芯材が取り付けられる構面のガセットプレートにおいては、ガセットプレートに対してフィンスチフナが取り付けられ、座屈拘束ブレースの芯材とガセットプレート、補強リブとフィンスチフナがそれぞれスプライスプレートを介してハイテンションボルト等により接合される。本態様においては、木製拘束材の補強リブに対応する位置においてスリットが設けられ、このスリットにより木製拘束材と補強リブが干渉しないように構成されている。
【0020】
また、本態様によれば、スリットを跨ぐように複数の第3鎹が取り付けられていることにより、拘束板において補強リブとの干渉防止用に設けられているスリットの周囲を複数の第3鎹にて補強することができ、架構と座屈拘束ブレースが構面外に変形した際に、拘束板のスリットの周囲に生じ得る割れを抑制することが可能になる。
【0021】
また、本発明による座屈拘束ブレースの他の態様において、
前記第1鎹と前記第2鎹を目隠しする、化粧板が前記一対の拘束板の側面に取り付けられていることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、化粧板が一対の拘束板の側面に取り付けられて、第1鎹と第2鎹を目隠しすることにより、座屈拘束ブレースの外観意匠性をより一層向上させることができる。この化粧板は、従来の座屈拘束ブレースにおける側板と同様に一対の拘束板の側面に取り付けられるものであるが、従来の側板のように強度を要求される部材でないことから、化粧板の厚みは薄厚でよい。
【0023】
また、本発明による座屈拘束ブレースの他の態様において、
前記拘束板に対して、前記第1鎹と前記第2鎹と前記第3鎹のそれぞれの二本の突き刺し部が打ち込み固定されている、もしくは、前記拘束板に開設されている固定孔に対して前記第1鎹と前記第2鎹と前記第3鎹のそれぞれの二本の突き刺し部が挿通され、接着固定されていることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、拘束板に対する鎹の固定形態として、鎹の突き刺し部が打ち込み固定されている形態と、拘束板に開設されている固定孔に突き刺し部が挿通されて接着固定されている形態のいずれか一方が適用されることにより、いずれの固定形態であっても拘束板に対して鎹を強固に固定することができる。
【0025】
例えば、鎹の突き刺し部が打ち込み固定される形態では、拘束板の側面やスリットの周囲に対して鎹を簡単に固定することができる。
【0026】
一方、拘束板に開設されている固定孔に突き刺し部が挿通されて接着固定される形態では、鎹を打ち込む際の打ち込み力によって拘束板の側面等を破損させるといった恐れが無く、鎹による固定箇所周辺の拘束板の初期の剛性を保持することができる。すなわち、一対の拘束板の側面やスリット周囲には固定孔が開設され、固定孔に鎹の突き刺し部が挿通されて接着固定されることにより、突き刺し部は拘束板に接着固定され、一対の拘束板の側面同士が第1鎹や第2鎹を介して固定され、拘束板のスリット周囲が第3鎹にて補強される。
【0027】
また、本発明による座屈拘束ブレースの他の態様において、
前記拘束板の端部には、前記芯材の前記広幅面と接触しない非接触溝が設けられており、
前記拘束板の前記非接触溝以外の領域と前記芯材の前記広幅面が接触していることを特徴とする。
【0028】
本態様によれば、拘束板の端部に芯材の広幅面と接触しない非接触溝が設けられ、拘束板の非接触溝以外の領域と芯材の広幅面が接触していることにより、架構と座屈拘束ブレースが構面外に変形した際に、芯材から最も強い押し込み力を受ける拘束板の端部に非接触溝が設けられていることによって、芯材と拘束板の接触が解消もしくは緩和され、この拘束板の端部に生じ得る割れを抑制することが可能になる。特に、既述する、一対の拘束板の端部が複数の第2鎹により補強されている構成と、拘束板の端部において芯材の広幅面と接触しない非接触溝が設けられている構成が相俟って、拘束板の端部に生じ得る割れの抑制効果が一層高められる。ここで、芯材の二つの広幅面に対向する一対の拘束板のそれぞれの端部において、座屈拘束ブレースの構面外への変形時に芯材が拘束板に当接し得る領域に非接触溝が設けられる。
【0029】
拘束板の端部にある非接触溝により、拘束板の端部と芯材の当接が解消もしくは緩和(強く当接しないこと)される一方で、拘束板における非接触溝以外の領域は芯材と当接することにより、拘束板による芯材の座屈防止性能が保証される。
【0030】
また、本発明による座屈拘束ブレースの他の態様において、
前記芯材は、その長手方向の中央側において前記広幅面の幅が相対的に狭い狭幅部を有し、その長手方向の端部側において前記広幅面の幅が相対的に広い広幅部を有しており、
前記非接触溝は、前記拘束板の端縁から、前記芯材における前記広幅部と前記狭幅部の境界に対応する位置まで延設していることを特徴とする。
【0031】
本態様によれば、芯材がその長手方向の中央側において広幅面の幅が相対的に狭い狭幅部を有し、その長手方向の端部側において広幅面の幅が相対的に広い広幅部を有していることにより、中央側の狭幅部を塑性化し易い領域とすることができ、さらに、塑性化領域を中央側の狭幅部に限定させることができる。また、広幅部と狭幅部の境界領域は芯材の平面積及び断面積が変化する変化領域であることから、芯材に作用する付加曲げモーメントをこの変化領域にて吸収することができる。付加曲げモーメント(あるいは、単に、付加曲げ)とは、例えば大地震時に架構と座屈拘束ブレースが大きく変形した際に、この変形に起因して木製拘束材に作用し得る曲げモーメントのことである。このように、本態様においては、芯材に作用する付加曲げモーメントを、芯材の広幅部と狭幅部の境界領域にて効果的に吸収することができる。
【0032】
芯材が広幅部と狭幅部を有しながら、拘束板においては、その端縁から、芯材における広幅部と狭幅部の境界に対応する位置までの範囲に亘って非接触溝が設けられていることにより、拘束板の端部に対する芯材の当接(押し込み)を高い確度で解消することが可能になる。
【0033】
また、本発明による座屈拘束ブレースの他の態様は、
平面視において、前記スリットと前記補強リブとの間に隙間を有していることを特徴とする。
【0034】
本態様によれば、スリットと補強リブとの間に隙間が存在することにより、構面の変形に応じて芯材が伸縮した際に、この芯材の伸縮を隙間が吸収することができ、伸縮する芯材がスリットの壁面に接触して木製拘束材が破損に至るといった課題を解消することができる。ここで、この隙間の設定は設計者の裁量に委ねられ、設定された層間変形角に基づいて芯材の伸縮量が算定され、例えば隙間が芯材の伸縮量以上に設定される。尚、ここでの「隙間」は、スリットの長手方向の端部と補強リブの間の隙間の他、スリットの側面と補強リブの間の隙間が含まれる。また、その他、拘束板に設けられている非接触溝により、芯材と拘束板との間にも別途の隙間が形成されることになるが、この隙間も、大地震時の座屈拘束ブレースの変形の際に芯材が拘束板を強く押圧しない、もしくは当接しない大きさの隙間に設定される。
【0035】
また、本態様による座屈拘束ブレースの他の態様は、
前記芯材の前記広幅面と前記拘束板の間に内挿板が介在していることを特徴とする。
【0036】
本態様によれば、芯材の高次の座屈変形により、芯材から拘束板に局所的に圧縮力等が作用し、この局所的な力に起因して拘束板が破損することを抑制することができる。芯材の広幅面と拘束板の間に内挿板を介在させることにより、芯材の高次の座屈変形の凸部から作用する力は内挿板にまず伝達され、伝達された力は内挿板内に広がり、内挿板内に拡散された力が木製の拘束板に作用することになる。このことにより、芯材から作用する複数の局所的な力による木製の拘束板の破損が効果的に抑制される。
【発明の効果】
【0037】
以上の説明から理解できるように、本発明の座屈拘束ブレースによれば、木造建築物等の架構内に組み込んで使用するのに好適であり、木製拘束材を形成する一対の拘束板を相互に接続するボルトの本数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】実施形態に係る座屈拘束ブレースを形成する芯材の一例をスペーサーとともに示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る座屈拘束ブレースを形成する木製拘束材の一例の斜視図である。
【
図3】実施形態に係る座屈拘束ブレースの一例の斜視図である。
【
図9】実施形態に係る座屈拘束ブレースが木造建物等の架構に組み込まれた状態を示す図である。
【
図10】大地震時における架構の変形態様と、架構の変形に起因する座屈拘束ブレース接合部における付加曲げモーメントを説明する図である。
【
図11】座屈拘束ブレースの全体座屈曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、実施形態に係る座屈拘束ブレースについて添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0040】
[実施形態に係る座屈拘束ブレース]
<芯材>
はじめに、
図1を参照して、実施形態に係る座屈拘束ブレースを形成する芯材の一例について説明する。ここで、
図1は、実施形態に係る座屈拘束ブレースを形成する芯材の一例をスペーサーとともに示す斜視図である。
【0041】
芯材10は、細長でプレート状の平鋼により形成されており、その長手方向の中央側において広幅面11aの幅が相対的に狭い狭幅部13を有し、その長手方向の端部側において広幅面11aの幅が相対的に広い広幅部12を有している。また、芯材10の長手方向の端部の広幅面11aには、広幅面11aに直交する補強リブ14が溶接にて接合されて断面十字状を呈している。ここで、広幅部は、端部に向かって幅が大きくなる多段状の形態であってもよい。
【0042】
芯材10がその長手方向の中央側に狭幅部13を有し、長手方向の端部側に広幅部12を有することにより、中央側の狭幅部13を塑性化し易い領域とすることができ、さらに、塑性化領域を中央側の狭幅部13に限定させることができる。
【0043】
また、広幅部12と補強リブ14にはそれぞれ、以下で説明するように、構面に設けられているガセットプレートやガセットプレートに取り付けられているフィンスチフナ(
図9参照)にスプライスプレートを介してボルト接合されるためのボルト孔12a、14aが開設されている。芯材10の広幅面11aが建物の構面に平行に配設されるようにして座屈拘束ブレース100がガセットプレートに取り付けられる場合、芯材10が構面に平行な広幅面11aに直交する補強リブ14を有することにより、芯材10の端部において構面外方向の剛性を高めることができる。
【0044】
芯材10は、SN材(建築構造用圧延鋼材)や、LYP材(極低降伏点鋼材)等の降伏点の低い鋼材にて形成されているのが好ましく、芯材10の降伏による地震エネルギー吸収性が良好になる。
【0045】
狭幅部13の左右の側方に対して、細長の四角柱状のスペーサー16がX1方向に配設され、狭幅部13の左右の側方にスペーサー16が配設された状態で芯材10が以下に示す木製拘束材の内部に収容される。スペーサー16は、鋼製部材と木製部材のいずれであってもよい。また、スペーサー16は、円柱状等、図示例以外の形態であってもよい。尚、スペーサー16には、以下に示すボルトが挿通される複数のボルト孔16aが、その長手方向に間隔を置いて開設されている。
【0046】
<木製拘束材>
次に、
図2を参照して、第1実施形態に係る座屈拘束ブレースを形成する木製拘束材の一例について説明する。ここで、
図2は、第1実施形態に係る座屈拘束ブレースを形成する木製拘束材の一例の斜視図である。
【0047】
木製拘束材20は、一対の拘束板21を有し、一対の拘束板21の間の隙間25に芯材10が配設されるようになっている。木製で一対の拘束板21は、芯材10の有する二つの広幅面11a(
図1参照)に対向するように配設されている。一方、一対の拘束板21に接着される木製で一対の化粧板22は、芯材10の有する二つの狭幅面11b(
図1参照)に対向するように配設されている。
【0048】
一対の拘束板21の対応する側面21aには、それらの長手方向に亘って接続する複数の第1鎹29Aが打ち込まれるようになっている。
【0049】
より具体的には、第1鎹29Aは、木製拘束材20の長手方向に亘って、ハの字状に配設されて鎹トラスを形成する。ここで、第1鎹29Aは、逆ハの字状に配設されてもよい。
【0050】
木製拘束材20の長手方向の中央側には、複数の第1鎹29Aによる上記鎹トラスが形成される。一方、木製拘束材20の端部側には、芯材10の広幅面11aに直交する方向に延びる複数の第2鎹29Bが一対の拘束板21の端部を接続している。
【0051】
木製拘束材20を構成する一対の拘束板21同士が、それらの左右の側面21a同士をハの字状に配設されて鎹トラスを形成する複数の第1鎹29Aにて接続されることにより、一対の拘束板21同士を繋ぐボルトの本数を低減もしくは省略しながら、強固に接続することができる。
【0052】
図示例では、一対の拘束板21の対応する位置に、それぞれ座ぐりを有するボルト孔21bが開設されており、ボルト孔21bの座ぐりに座金32が配設され、座金32を介してボルト31が挿通され、他方のボルト孔21bの座ぐりに座金34が配設され、座金34から外側に張り出したボルト31の先端の螺子溝にナット33が締付けられるようになっている。このボルトによる接続は、大地震時に一対の拘束板21同士が分離するのを防止するフェールセーフとして機能するものであり、一対の拘束板21同士の主たる接続手段は複数の第1鎹29Aである。
【0053】
鉛直方向の第2鎹29Bは、第1鎹29Aよりも狭いピッチ間隔で配設され、木製拘束材20の端部を可及的に密な配置の第2鎹29Bにより拘束するようになっている。
【0054】
さらに、拘束板21の端部のうち、隙間25に芯材10が収容された際に補強リブ14に対応する位置には、補強リブ14に干渉しないスリット24が設けられている。そして、このスリット24の周囲を補強するための複数の第3鎹29Cがさらに打ち込まれるようになっている。
【0055】
第1鎹29A、第2鎹29B,及び第3鎹29Cはいずれも、全体がコの字状を呈した金具であり、直線状の繋ぎ部29aと、その両端において繋ぎ部29aが直角に折り曲げ加工されている二つの突き刺し部29bとを有する。
【0056】
ここで、第1鎹29A、第2鎹29B,及び第3鎹29Cの固定方法は、打ち込み固定する形態の他に、拘束板21の側面21aやスリット24の周囲に開設されている不図示の固定孔に対して、突き刺し部29bを挿通し、接着剤にて接着固定する形態であってもよい。ここで、固定孔に充填される接着剤には、ウレタン系接着剤やエポキシ系接着剤が適用される。
【0057】
また、拘束板21の両端部には、隙間25に収容される芯材10の広幅面11aと接触しない非接触溝23が設けられており、拘束板21における非接触溝23以外の領域(中央側の領域)と芯材10の広幅面11aは接触している。この構成とこの構成により奏される効果については、以下で詳説する。
【0058】
拘束板21は、無垢材、又は、ラミナが積層された集成材を含む木質材料のいずれにより形成されてもよい。以下で詳説するように、座屈拘束ブレースの全体座屈を防止できるように、木製拘束材20の断面積や断面剛性、ヤング係数等が設定される。そして、このヤング係数は木材の材質により決定される。木材の材質としては、ヒノキやアカマツ、カラマツ、モミ、エゾマツ等が挙げられる。
【0059】
一対の拘束板21同士を、複数の第1鎹29Aと第2鎹29Bにより接続した後、第1鎹29Aと第2鎹29Bを目隠しする、一対の化粧板22が一対の拘束板21の側面21aに接着されるようになっている。ここで、化粧板22は、例えば拘束板21と同材質の木材により形成される。また、化粧板22と拘束板21の側面21aとを接着する接着剤には、ウレタン系接着剤やエポキシ系接着剤が適用される。
【0060】
化粧板22にて第1鎹29Aと第2鎹29Bが目隠しされることにより、木製拘束材20の外観意匠性を一層向上させることができる。尚、化粧板22の設置は任意であり、外観意匠性を問題にしない場合は化粧板22の設置は不要である。
【0061】
<座屈拘束ブレース>
次に、
図3乃至
図8を参照して、これまでに説明した芯材10と木製拘束材20にて形成される、実施形態に係る座屈拘束ブレースの一例について説明する。ここで、
図3は、実施形態に係る座屈拘束ブレースの一例の斜視図である。また、
図4、
図5、
図6,
図7、及び
図8はそれぞれ、
図3のIV方向矢視図、
図3のV-V矢視図、
図3のVI-VI矢視図、
図3のVII-VII矢視図、及び
図3のVIII-VIII矢視図である。
【0062】
座屈拘束ブレース100は、芯材10の狭幅部13と広幅部12の一部を包囲するように木製拘束材20が配設され、広幅部12の端部の十字状の部分が木製拘束材20の端部から張出すようにしてその全体が構成されており、外側に張り出している広幅部12と補強リブ14の有するボルト孔12a、14aが外部に臨んでいる。
【0063】
一対の拘束板21の間の隙間25に芯材10が配設され、一対の拘束板21の対応する側面21a同士を第1鎹29Aと第2鎹29Bが接続し、さらに、ボルト31がボルト孔21bに挿通されてナット33にて締付けられることにより、座屈拘束ブレース100が形成される。
【0064】
座屈拘束ブレース100によれば、一対の拘束板21同士が鎹トラスを形成する複数の第1鎹29Aにより接続されて、断面剛性の高い木製拘束材20にて芯材10が包囲されていることから、座屈強度の高い座屈拘束ブレースとなる。また、一対の拘束板21の端部同士が密に配置された複数の第2鎹29Bにて強固に繋がれることにより、端部における強固な閉合構造を有する座屈拘束ブレースとなる。さらに、鋼製の芯材10が木製拘束材20にて包囲されていることにより、座屈拘束ブレース100を木造建築物の架構に適用した場合でも、架構構成部材と不釣合いな外観を与えない。
【0065】
芯材10の広幅部12の側面と木製拘束材20の間には、幅t1の隙間G1が設けられている。
【0066】
また、拘束板21の端部には、拘束板21が芯材10の広幅部12に当接しないように非接触溝23が形成されており、非接触溝23と広幅部12の間には高さt2の隙間G3が設けられている。この非接触溝23は、
図7に詳細に示すように、拘束板21の端縁から、芯材10の付加曲げ吸収エリアA(広幅部12と狭幅部13の境界領域A)に対応する位置までの範囲に設けられている。
【0067】
図7及び
図8に示すように、広幅部12と狭幅部13の境界領域Aは芯材10の平面積及び断面積が変化する変化領域であることから、芯材10に作用する付加曲げモーメントをこの変化領域にて吸収することができる付加曲げ吸収エリアとなっている。このように、芯材10に作用する付加曲げモーメントを芯材10の広幅部12と狭幅部13の境界領域Aにて効果的に吸収し、芯材10と木製拘束材20の端部の間に設けられた隙間G1により、芯材10に作用する付加曲げモーメントを木製拘束材20の端部に作用させないようにすることができる。
【0068】
また、補強リブ14と木製拘束材20の拘束板21の有するスリット24の間には、補強リブ14の長手方向に幅t3であり、補強リブ14の側方に幅t1の隙間G2が設けられている。このように、広幅部12の側面と木製拘束材20の間に隙間G1を有していることにより、座屈拘束ブレース100が取り付けられている構面が大きく変形した場合に、この隙間G1にて芯材10の変形を吸収し、所謂付加曲げモーメントが木製拘束材20に作用することを解消できる。一方、スリット24と補強リブ14との間に隙間G2が存在することにより、構面の変形に応じて芯材10が伸縮した際に、この芯材10の伸縮を隙間G2が吸収することができ、伸縮する芯材10がスリット24の壁面に接触して木製拘束材20が破損に至るといった課題を解消できる。
【0069】
座屈拘束ブレース100では、
図4及び
図5に示すように、拘束板21において、その端縁から、芯材10の付加曲げ吸収エリアAに対応する位置までの範囲に亘り非接触溝23が設けられている。一方、
図6に示すように、拘束板21の非接触溝23以外の領域と芯材10の狭幅部13は接触している。
【0070】
上記構成により、架構S(
図9参照)と座屈拘束ブレース100が構面外に変形した際に、芯材10から最も強い押し込み力を受け得る拘束板21の端部では、非接触溝23により、芯材10と拘束板21の接触が解消もしくは緩和(強く当接しないこと)される。
【0071】
このように、拘束板21に対する芯材10からの押し込みが解消もしくは緩和されることにより、拘束板21の端部に生じ得る割れを抑制することが可能になる。
【0072】
図示例では、一対の拘束板21の端部同士が側面21aの外側から打ち込まれた鎹29Bにて繋がれている(補強されている)ことから、この補強構造と、非接触溝23にて芯材10と拘束板21の接触の解消や緩和が相俟って、拘束板21の端部における割れの抑制効果が一層高くなる。
【0073】
また、拘束板21の端部にある非接触溝23により、拘束板21の端部と芯材10の当接が解消もしくは緩和される一方で、拘束板21における非接触溝23以外の領域(中央側の領域)は芯材10と当接することにより、拘束板21による芯材10の座屈防止性能が保証される。
【0074】
図7及び
図8に示すように、芯材10の中央側に狭幅部13を設けたことにより、狭幅部13の側方に存在する比較的大きな隙間G4(芯材10の端部側の広幅部12の側方の隙間G1よりも大きな隙間)に対して、この隙間G4にスペーサー16を介在させて隙間G4を閉塞することにより、芯材10の強軸方向(芯材10の広幅面11aに平行な方向)の座屈を防止することができる。そのため、座屈拘束ブレース100の全体座屈が抑制され、座屈拘束ブレース100の圧縮耐力が向上することにより、座屈拘束ブレース100が組み込まれた架構とこの架構を含む建築物に対して優れた耐震補強効果を付与できる。
【0075】
ここで、図示を省略するが、座屈拘束ブレース100において、芯材10の広幅面11aと拘束板21の内面との間に内挿板が介在していてもよい。内挿板は、鋼製プレート、木製プレートのいずれを適用してもよく、木製プレートとしては、例えばLVL(Laminated Veneer Lumber:単板積層材)が適用できる。
【0076】
芯材10の高次の座屈変形により、芯材10から拘束板21の内面に局所的に押圧力が作用し、この局所的な押圧力に起因して拘束板21が破損する恐れがある。これに対して、芯材10と拘束板21の間に内挿板が介在していることにより、芯材10の高次の座屈変形の際に凸部から作用する押圧力は内挿板にまず伝達され、伝達された押圧力は内挿板の内部に広がり、内挿板の内部に拡散された押圧力が木製の拘束板21に分散力として作用することになる。このことにより、芯材10から作用する複数の局所的な押圧力による、木製の拘束板21の破損が効果的に抑制される。
【0077】
<架構への座屈拘束ブレースの適用例>
次に、
図9及び
図10を参照して、架構への座屈拘束ブレースの適用例について説明する。ここで、
図9は、実施形態に係る座屈拘束ブレースが木造建物等の架構に組み込まれた状態を示す図である。また、
図10は、大地震時における架構の変形態様と、架構の変形に起因する座屈拘束ブレース接合部における付加曲げモーメントを説明する図である。尚、図示例の座屈拘束ブレースは、木造建物の架構以外にも、S造(S:Steel)建物の架構、RC造建物の架構、SRC造(SRC:Steel Reinforced Concrete)建物の架構に組み込まれてもよい。
【0078】
図9に示す架構Sは、木造建築物等を構成する木製の柱Cと梁Bにより形成されている。対角線位置にある二つの隅角部には、平鋼により形成されるガセットプレートGPが取付けられている。ガセットプレートGPの表面には、該表面に直交するようにフィンスチフナFSが溶接にて接合されている。柱Cの柱芯L1と梁Bの梁芯L2の交点Oに対して、フィンスチフナFSの芯L3が交差するようにしてフィンスチフナFSがガセットプレートGPに接合される。そして、座屈拘束ブレース100も、対角位置にある双方の交点Oを通る線状に配設される。
【0079】
ガセットプレートGPと芯材10の広幅部12は、スプライスプレートSPを介してハイテンションボルトにより接合され、フィンスチフナFSと補強リブ14は、スプライスプレートSPを介してハイテンションボルトにより接合される。
【0080】
図10に示すように、大地震時において構面が変形することにより、座屈拘束ブレース接合部においては、接合部を剛と見なした場合に、以下の式(1)に示す付加曲げモーメントが作用し得る。
【0081】
【0082】
座屈拘束ブレース100によれば、芯材10の広幅部12の側面に幅t1の隙間G1が設けられていることにより、座屈拘束ブレース100が取り付けられている構面が大きく変形した場合に、この隙間G1にて芯材10の変形を吸収し、付加曲げモーメントが木製拘束材20に作用することを解消できる。また、補強リブ14と木製拘束材20の拘束板21の有するスリット24の間において、補強リブ14の長手方向に幅t2であり、補強リブ14の側方に幅t1の隙間G2が設けられていることにより、構面の変形に応じて芯材10が伸縮した際に、この芯材10の伸縮を隙間G2が吸収することができ、伸縮する芯材10がスリット24の壁面に接触して木製拘束材20が破損に至るといった課題を解消できる。さらに、芯材10から最も強い押し込み力を受け得る拘束板21の端部同士が複数の第2鎹29Bにて繋がれ、当該端部にある非接触溝23によって隙間G3が形成され、隙間G3により芯材10と拘束板21の接触が解消もしくは緩和されることにより、拘束板21の端部に生じ得る割れを、効果的に抑制することができる。
【0083】
[全体座屈の検討]
次に、座屈拘束ブレースの全体座屈を防止するための設計方法について説明する。
【0084】
座屈拘束ブレースの設計においては、以下の式(2)を満足して座屈拘束ブレースの全体座屈が生じないように設計する。
【0085】
【0086】
ここで、拘束板の中央に作用する曲げモーメントは、以下の式(3)で示すことができる。
【0087】
【0088】
木製拘束材の全体座屈を防止する条件は、以下の式(4)を満足することとなる。
【0089】
【0090】
式(4)を座屈拘束ブレースの全体座屈曲線として
図11に示す。
図11において、全体座屈曲線の上側は安全域であり、下側は危険域であり、安全域に入るように木製拘束材の設計用軸力、オイラー荷重、芯材の一般部の長さ、及び木製拘束材の降伏曲げ耐力が設定される。尚、
図11に示す座屈拘束ブレースの全体座屈曲線は、芯材の弱軸方向の全体座屈、強軸方向の全体座屈の双方に妥当する。
【0091】
上記する木製拘束材の降伏曲げ耐力と作用する曲げモーメントとの関係を照査することの他にも、短期の木製拘束材の許容曲げ耐力が芯材降伏時に作用する曲げモーメントよりも大きくなることも合せて照査するのがよい(数式は省略)。
【0092】
<木製拘束材のめり込み破壊の検討>
次に、木製拘束材のめり込み破壊の検討方法について説明する。芯材が木製拘束材に対してめり込むことにより、木製拘束材が破壊することを防止するには、以下の式(5)を満足することを検証する。
【0093】
【0094】
尚、上記する拘束板のめり込み耐力と作用する補剛力との関係を照査することの他にも、短期の拘束板の許容めり込み耐力が芯材降伏時に作用する補剛力よりも大きくなることも合せて照査するのがよい(数式は省略)。
【0095】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0096】
10:芯材
11a:広幅面
11b:狭幅面
12:広幅部
12a:ボルト孔
13:狭幅部
14:補強リブ
14a:ボルト孔
15:突起
16:スペーサー
16a:ボルト孔
17:内挿板
17a:ボルト孔
20,20A,20B,20C,20D,20E:木製拘束材
21:拘束板
21a:側面
21b:ボルト孔
22:化粧板
23:非接触溝
24:スリット
25:隙間
29A:第1鎹
29B:第2鎹
29C:第3鎹
29a:繋ぎ部
29b:突き刺し部
31:ボルト
32:座金
33:ナット
34:座金
100:座屈拘束ブレース
G1,G2、G3,G4,G5:隙間
A:付加曲げ吸収エリア(境界領域)
S:架構(構面)
C:柱
B:梁
GP:ガセットプレート
FS:フィンスチフナ
SP:スプライスプレート