(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042165
(43)【公開日】2023-03-27
(54)【発明の名称】座屈拘束ブレース
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20230317BHJP
【FI】
E04B1/58 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149323
(22)【出願日】2021-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】薮田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】吉田 文久
(72)【発明者】
【氏名】中川 学
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA33
2E125AC13
2E125AC23
2E125AG03
2E125AG12
(57)【要約】
【課題】木造建築物等の架構内に組み込んで使用するのに好適であり、例えば大地震時に架構と座屈拘束ブレースが構面外に変形し、座屈拘束ブレースを形成する芯材が木製拘束材を形成する拘束板を押し込み、拘束板に引っ張られた側板に割れが生じることを解消できる、座屈拘束ブレースを提供すること。
【解決手段】鋼製でプレート状の芯材10と、芯材10の有する二つの広幅面11aに対向するように配設されている木製で一対の拘束板21と、芯材10の有する二つの狭幅面11bに対向するように配設され、一対の拘束板21に接続されている木製で一対の側板22とにより形成される木製拘束材20とを備え、側板22と拘束板21は芯材10よりも軸方向の長さが短く、木製拘束材20の端部には、一対の拘束板21の外側に配設されて、相互にボルト締めされることにより一対の拘束板21を拘束する、一対の第1鋼材30Aが設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製でプレート状の芯材と、
前記芯材の有する二つの広幅面に対向するように配設されている木製で一対の拘束板と、前記芯材の有する二つの狭幅面に対向するように配設され、前記一対の拘束板に接続されている木製で一対の側板と、により形成される木製拘束材と、を備え、
前記側板と前記拘束板は前記芯材よりも軸方向の長さが短く、
前記木製拘束材の端部には、前記一対の拘束板の外側に配設されて、相互にボルト締めされることにより該一対の拘束板を拘束する、一対の第1鋼材が設けられていることを特徴とする、座屈拘束ブレース。
【請求項2】
前記第1鋼材は、その長手方向に直交する断面形状が、中央のコの字部と、該コの字部の両端から張り出す二つの張り出し部とを備えたハット形であり、
一対の前記第1鋼材の対応する前記張り出し部同士が当接し、双方の該張り出し部の備えるボルト孔にボルトが挿通されてボルト締めされ、
一対の前記コの字部が、前記一対の側板の端部を外側から拘束していることを特徴とする、請求項1に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項3】
前記第1鋼材は平鋼により形成され、一対の該平鋼がボルト締めされており、
別途の平鋼により形成されている一対の第2鋼材が、前記芯材の端部における二つの狭幅面に対して前記広幅面に直交するように接続されており、
一対の前記第2鋼材が、前記一対の側板の端部を外側から拘束していることを特徴とする、請求項1に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項4】
前記第1鋼材は平鋼により形成され、
一対の前記平鋼の間には、前記芯材と前記木製拘束材を挟む一対の第2鋼材が配設され、該第2鋼材は、その長手方向に直交する断面形状が、中央のウェブ部と、該ウェブ部の両端において直交する二つのフランジ部とを備えたコの字形であり、
一対の前記第1鋼材と、その間にある前記二つのフランジ部のそれぞれが備えるボルト孔にボルトが挿通されてボルト締めされ、
一対の前記ウェブ部が、前記一対の側板の端部を外側から拘束していることを特徴とする、請求項1に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項5】
前記芯材は、その長手方向の中央側において前記広幅面の幅が相対的に狭い狭幅部を有し、その長手方向の端部側において前記広幅面の幅が相対的に広い広幅部を有しており、
前記側板の長さは、前記芯材の前記狭幅部の長さ以下に設定されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項6】
前記側板の端部には、前記芯材の前記広幅部の端部が接触しない凹部が設けられていることを特徴とする、請求項5に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項7】
前記狭幅部には、前記芯材の中で最も塑性化し易い塑性化領域が設けられており、
前記塑性化領域が、前記一対の第1鋼材の内部に設定されていることを特徴とする、請求項5又は6に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項8】
前記芯材の長手方向の端部の前記広幅面には、該広幅面に直交する補強リブが接合されて断面十字状を呈しており、
前記拘束板のうち、前記補強リブに対応する位置には該補強リブに干渉しない凹部が設けられていることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の座屈拘束ブレース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座屈拘束ブレースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物の架構(柱・梁架構、屋根架構等)を形成するブレースとして、座屈防止措置が講じられた座屈拘束ブレースが適用されている。座屈拘束ブレースとしては、鋼製の芯材の周囲を鋼板のみで補剛した形態、鋼製の芯材の周囲をRC(Reinforced Concrete:鉄筋コンクリート)で補剛した形態、鋼製の芯材の周囲を鋼材とモルタルで被覆した形態など、多様な補剛形態が存在する。
【0003】
ところで、昨今、木造建築物(木造住宅、木造の倉庫、木造の競技場など)の耐火性能や耐震性能の向上が図られている。木造住宅は本来的に、間取りやデザインの自由度の高さ、自然物の木材による癒し効果、木材の有する調湿効果、住宅などの建物用途によっては鉄骨造やRC造に比べて建設費用が一般に安価であるといった利点を備えているが、上記する耐火性や耐震性の向上が木造住宅をはじめとする木造建築物の注目度を高めている一つの要因である。このような木造住宅の架構内に上記する従来の座屈拘束ブレースを組み込む場合、木製の柱や梁と、金属製もしくはコンクリート製の補剛材を有する座屈拘束ブレースとが混在することになり、不釣合いな外観となることが否めない。
【0004】
そこで、座屈拘束ブレースの全体を木製もしくは紙製のパネル等で覆うことにより、金属製もしくはコンクリート製の補剛材を外部から視認できないようにする方策が考えられるが、この方策には多大な作業手間を要することから建設費の増加が懸念される。また、従来の座屈拘束ブレースは、金属やコンクリート、モルタル等が多用されていることから、重量が重くなる傾向にあり、木造住宅を構成する軽量な木製の梁や柱の中に重量のある座屈拘束ブレースを取り付けることは構造的にも不釣合いである。
【0005】
ここで、特許文献1には、木造住宅をはじめとする木造建築物の架構内に組み込んで使用するのに適した座屈拘束ブレースが提案されている。具体的には、芯材と、芯材の両面に沿って配置した一対の拘束材とを有する座屈拘束ブレースであり、芯材を鋼材にて形成し、一対の拘束材を木材にて形成し、この拘束材に集成材を適用し、集成材は芯材と平行にラミナが積層されたものとした座屈拘束ブレースである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
座屈拘束ブレースを形成する鋼製の芯材を包囲する木製拘束材は、芯材の二つの広幅面に対向する一対の拘束板と、一対の拘束板の端部同士を繋ぐ一対の側板とにより構成されるが、座屈拘束ブレースに対して、例えば大地震時に架構と架構に組み込まれた座屈拘束ブレースが大きく構面外に変形した際に、芯材が拘束板を押し込み、芯材に押し込まれた拘束板が側板を引っ張ることにより、側板に割れが生じるといった課題がある。特許文献1には、このように座屈拘束ブレースの構面外の変形の際に、芯材に押し込まれた拘束板が側板を引っ張ることにより側板に割れが生じることを防止する措置についての言及がない。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、木造建築物等の架構内に組み込んで使用するのに好適であり、例えば大地震時に架構と座屈拘束ブレースが構面外に変形し、座屈拘束ブレースを形成する芯材が木製拘束材を形成する拘束板を押し込み、拘束板に引っ張られた側板に割れが生じることを解消できる、座屈拘束ブレースを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明による座屈拘束ブレースの一態様は、
鋼製でプレート状の芯材と、
前記芯材の有する二つの広幅面に対向するように配設されている木製で一対の拘束板と、前記芯材の有する二つの狭幅面に対向するように配設され、前記一対の拘束板に接続されている木製で一対の側板と、により形成される木製拘束材と、を備え、
前記側板と前記拘束板は前記芯材よりも軸方向の長さが短く、
前記木製拘束材の端部には、前記一対の拘束板の外側に配設されて、相互にボルト締めされることにより該一対の拘束板を拘束する、一対の第1鋼材が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、木製拘束材の端部において、一対の拘束板の外側に配設されて相互にボルト締めされることにより一対の拘束板を拘束する、一対の第1鋼材が設けられていることにより、架構と座屈拘束ブレースが構面外に変形した際に、芯材から最も強い押し込み力を受ける一対の拘束板の端部近傍に接続されている側板の端部に生じ得る割れ(割裂)を抑制することができる。
【0011】
本態様においては、一対の拘束板同士は一対の側板にて接続されて、四つの面材による閉合構造を有する木製拘束材が形成され、鋼製の芯材が木製拘束材にて包囲されている。この構成により、本態様の座屈拘束ブレースを木造建築物の架構に適用した場合でも、架構構成部材と不釣合いな外観を与える恐れはない。ここで、拘束板と側板は、無垢材により形成されてもよいし、ラミナが積層された集成材により形成されてもよい。
【0012】
さらに、本態様においては、木製拘束材が、一対の拘束板に対して一対の側板が接続される構成を有していることから、木製拘束材の加工が容易になる。例えば、特許文献1に記載の座屈拘束ブレースは、集成材を加工して断面L型の二つの木製拘束材を製作し、これらを相互に逆さまにして、芯材を挟んだ状態で接続する加工を要する。これに対して、本態様の座屈拘束ブレースは、一対の拘束板の間に芯材を配設した状態で、一対の側板を一対の拘束板に対して接着等により接続して木製拘束材を製作することにより、座屈拘束ブレースを製作することができる。そのため、座屈拘束ブレースの製作がより一層容易になる。
【0013】
また、本発明による座屈拘束ブレースの他の態様において、
前記第1鋼材は、その長手方向に直交する断面形状が、中央のコの字部と、該コの字部の両端から張り出す二つの張り出し部とを備えたハット形であり、
一対の前記第1鋼材の対応する前記張り出し部同士が当接し、双方の該張り出し部の備えるボルト孔にボルトが挿通されてボルト締めされ、
一対の前記コの字部が、前記一対の側板の端部を外側から拘束していることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、断面形状がハット形の第1鋼材を適用し、一対の第1鋼材の張り出し部同士を当接させてボルト締めすることにより、一対の拘束板の端部を外側から強固に拘束することができる。また、一対の第1鋼材のコの字部が、一対の側板の端部を外側から拘束していることも相俟って、木製拘束材の端部の拘束効果が一層高められる。
【0015】
また、本発明による座屈拘束ブレースの他の態様において、
前記第1鋼材は平鋼により形成され、一対の該平鋼がボルト締めされており、
別途の平鋼により形成されている一対の第2鋼材が、前記芯材の端部における二つの狭幅面に対して前記広幅面に直交するように接続されており、
一対の前記第2鋼材が、前記一対の側板の端部を外側から拘束していることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、一対の拘束板の端部を外側から拘束する一対の第1鋼材と、一対の側板の端部を外側から拘束する一対の第2鋼材がいずれも平鋼により形成されていることから、シンプルな構造の端部の補強構造にて木製拘束材の端部を強固に拘束することができる。
【0017】
また、本発明による座屈拘束ブレースの他の態様において、
前記第1鋼材は平鋼により形成され、
一対の前記平鋼の間には、前記芯材と前記木製拘束材を挟む一対の第2鋼材が配設され、該第2鋼材は、その長手方向に直交する断面形状が、中央のウェブ部と、該ウェブ部の両端において直交する二つのフランジ部とを備えたコの字形であり、
一対の前記第1鋼材と、その間にある前記二つのフランジ部のそれぞれが備えるボルト孔にボルトが挿通されてボルト締めされ、
一対の前記ウェブ部が、前記一対の側板の端部を外側から拘束していることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、一対の拘束板の端部を外側から拘束する一対の平鋼からなる第1鋼材と、断面形状がコの字形で一対の側板の端部を外側から拘束する一対の第2鋼材が相互にボルト締めされて一体となっていることにより、第1鋼材と第2鋼材による鋼材の閉合構造にて、木製拘束材の端部を強固に拘束することができる。
【0019】
また、本発明による座屈拘束ブレースの他の態様において、
前記芯材は、その長手方向の中央側において前記広幅面の幅が相対的に狭い狭幅部を有し、その長手方向の端部側において前記広幅面の幅が相対的に広い広幅部を有しており、
前記側板の長さは、前記芯材の前記狭幅部の長さ以下に設定されていることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、側板の長さが、芯材の狭幅部の長さ以下に設定されていることにより、側板の端部が芯材の広幅部の端部に接触し、例えば地震時の架構及び座屈拘束ブレースの変形の際に芯材の広幅部の端部から側板が押圧されて破損することを防止できる。
【0021】
また、本発明による座屈拘束ブレースの他の態様において、
前記側板の端部には、前記芯材の前記広幅部の端部が接触しない凹部が設けられていることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、芯材の広幅部の端部が接触しない凹部が側板の端部に設けられていることにより、地震時の架構及び座屈拘束ブレースの変形の際に芯材の広幅部の端部が側板に接触することを確実に防止できるため、広幅部の端部が側板に接触して側板が押圧され、押圧に起因して側板が破損することを確実に防止できる。
【0023】
また、本発明による座屈拘束ブレースの他の態様において、
前記狭幅部には、前記芯材の中で最も塑性化し易い塑性化領域が設けられており、
前記塑性化領域が、前記一対の第1鋼材の内部に設定されていることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、芯材の狭幅部にある塑性化領域が一対の第1鋼材の内部に設定されていることにより、芯材が塑性化領域にて座屈した場合でも、その周囲にある一対の拘束板がそれらの外側にある一対の第1鋼材にて拘束されていることから、芯材の座屈した領域を強固に拘束することができる。
【0025】
芯材における広幅部と狭幅部の境界領域は、芯材の平面積及び断面積が変化する変化領域であることから、この変化領域における狭幅部側の領域には、塑性化し易い塑性化領域が形成され、芯材に作用する付加曲げモーメントをこの変化領域にて吸収することができる。付加曲げモーメント(あるいは、単に、付加曲げ)とは、例えば大地震時に架構と座屈拘束ブレースが大きく変形した際に、この変形に起因して木製拘束材に作用し得る曲げモーメントのことである。このように、本態様においては、芯材に作用する付加曲げモーメントを、芯材の広幅部と狭幅部の境界領域における狭幅部側の領域にて効果的に吸収することができる。
【0026】
尚、芯材が、端部に向かって多段状に幅が大きくなる2以上の広幅部を有していてもよい。例えば二段の広幅部を有している形態では、狭幅部側の広幅面(相対的に幅の狭い広幅部)と狭幅部との境界領域の狭幅部側の領域において、塑性化領域が形成される。
【0027】
また、本発明による座屈拘束ブレースの他の態様において、
前記芯材の長手方向の端部の前記広幅面には、該広幅面に直交する補強リブが接合されて断面十字状を呈しており、
前記拘束板のうち、前記補強リブに対応する位置には該補強リブに干渉しない凹部が設けられていることを特徴とする。
【0028】
本態様によれば、芯材の長手方向の端部においては、芯材の広幅面に直交する補強リブが接合されることにより断面十字状を呈していることから、芯材の広幅面が建物の構面に平行に配設されるようにして座屈拘束ブレースがガセットプレートに取り付けられる場合、芯材が構面に平行な広幅面に直交する補強リブを有することにより、芯材の端部において構面外方向の剛性を高めることができる。このように断面十字状の芯材が取り付けられる構面のガセットプレートにおいては、ガセットプレートに対してフィンスチフナが取り付けられ、座屈拘束ブレースの芯材とガセットプレート、補強リブとフィンスチフナがそれぞれスプライスプレートを介してハイテンションボルト等により接合される。本態様においては、拘束板の補強リブに対応する位置に凹部が設けられ、この凹部により木製拘束材と補強リブが干渉しないように構成されている。
【0029】
また、本発明による座屈拘束ブレースの他の態様は、
平面視において、前記拘束板の備える前記凹部と前記補強リブとの間に隙間を有していることを特徴とする。
【0030】
本態様によれば、拘束板の凹部と補強リブとの間に隙間が存在することにより、構面の変形に応じて芯材が伸縮した際に、この芯材の伸縮を隙間が吸収することができ、伸縮する芯材が拘束板の凹部の壁面に接触して木製拘束材が破損に至るといった課題を解消することができる。ここで、この隙間の設定は設計者の裁量に委ねられ、設定された層間変形角に基づいて芯材の伸縮量が算定され、例えば隙間が芯材の伸縮量以上に設定される。尚、ここでの「隙間」は、凹部の長手方向の端部と補強リブの間の隙間の他、凹部の側面と補強リブの間の隙間が含まれる。
【0031】
また、本態様による座屈拘束ブレースの他の態様は、
前記芯材の前記広幅面と前記拘束板の間に内挿板が介在していることを特徴とする。
【0032】
本態様によれば、芯材の高次の座屈変形により、芯材から拘束板に局所的に押圧力等が作用し、この局所的な力に起因して拘束板が破損することを抑制できる。芯材の広幅面と拘束板の間に内挿板を介在させることにより、芯材の高次の座屈変形の際に凸部から作用する力は内挿板にまず伝達され、伝達された力は内挿板の内部に広がり、内挿板の内部に拡散された力が木製の拘束板に作用することになる。このことにより、芯材から作用する複数の局所的な力による木製の拘束板の破損が効果的に抑制される。
【発明の効果】
【0033】
以上の説明から理解できるように、本発明の座屈拘束ブレースによれば、木造建築物等の架構内に組み込んで使用するのに好適であり、例えば大地震時に架構と座屈拘束ブレースが構面外に変形し、座屈拘束ブレースを形成する芯材が木製拘束材を形成する拘束板を押し込み、拘束板に引っ張られた側板に割れが生じることを解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】第1実施形態に係る座屈拘束ブレースを形成する芯材の一例の斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る座屈拘束ブレースを形成する木製拘束材の一例を、第1鋼材の一例とともに示す分解斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係る座屈拘束ブレースの一例の斜視図である。
【
図4】第2実施形態に係る座屈拘束ブレースを形成する芯材の一例の斜視図である。
【
図5】第2実施形態に係る座屈拘束ブレースを形成する木製拘束材の一例を、第1鋼材の他の例とともに示す分解斜視図である。
【
図6】第2実施形態に係る座屈拘束ブレースの一例の斜視図である。
【
図7】第3実施形態に係る座屈拘束ブレースを形成する木製拘束材の一例を、第1鋼材のさらに他の例とともに示す分解斜視図である。
【
図8】第3実施形態に係る座屈拘束ブレースの一例の斜視図である。
【
図9】第1実施形態に係る座屈拘束ブレースが木造建物等の架構に組み込まれた状態を示す図である。
【
図10】大地震時における架構の変形態様と、架構の変形に起因する座屈拘束ブレース接合部における付加曲げモーメントを説明する図である。
【
図11】座屈拘束ブレースの全体座屈曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、各実施形態に係る座屈拘束ブレースについて添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0036】
[第1実施形態に係る座屈拘束ブレース]
はじめに、
図1乃至
図3を参照して、第1実施形態に係る座屈拘束ブレースの一例について説明する。ここで、
図1は、第1実施形態に係る座屈拘束ブレースを形成する芯材の一例の斜視図であり、
図2は、第1実施形態に係る座屈拘束ブレースを形成する木製拘束材の一例を、第1鋼材の一例とともに示す分解斜視図である。また、
図3は、第1実施形態に係る座屈拘束ブレースの一例の斜視図である。
【0037】
図1に示すように、芯材10は、細長でプレート状の平鋼により形成されており、その長手方向の中央側において広幅面11aの幅が相対的に狭い狭幅部13を有し、その長手方向の端部側において広幅面11aの幅が相対的に広い二段の広幅部12A,12B(広幅部12Aの幅よりも端部にある広幅部12Bの幅が広い)を有している。また、芯材10の長手方向の端部の広幅面11aには、広幅面11aに直交する補強リブ14が溶接にて接合されて断面十字状を呈している。
【0038】
芯材10がその長手方向の中央側に狭幅部13を有し、長手方向の端部側に広幅部12を有することにより、中央側の狭幅部13を塑性化し易い領域(塑性化領域A)とすることができ、さらに、塑性化領域Aを中央側の狭幅部13に限定させることができる。
【0039】
芯材10において、広幅部12Aと狭幅部13の境界領域のうち、狭幅部13側の領域では、芯材10の平面積及び断面積が変化してともに小さくなる変化領域であることから、塑性化し易い塑性化領域Aが形成される。また、図示例では、特に広幅部12に補強リブ14が取り付けられ、広幅部12の剛性がより一層高くなっていることによっても、この狭幅部13側の境界領域において塑性化領域Aが形成され易くなる。芯材10に作用する付加曲げモーメントは、この塑性化領域Aにおいて効果的に吸収される。
【0040】
芯材10の全長t1は、以下で説明する木製拘束材20を形成する拘束板21や側板22の全長t2,t3よりも長く設定されている。
【0041】
また、広幅部12と補強リブ14にはそれぞれ、以下で説明するように、構面に設けられているガセットプレートやガセットプレートに取り付けられているフィンスチフナ(
図9参照)にスプライスプレートを介してボルト接合されるためのボルト孔12a、14aが開設されている。芯材10の広幅面11aが建物の構面に平行に配設されるようにして座屈拘束ブレース100がガセットプレートに取り付けられる場合、芯材10が構面に平行な広幅面11aに直交する補強リブ14を有することにより、芯材10の端部において構面外方向の剛性を高めることができる。
【0042】
芯材10は、SN材(建築構造用圧延鋼材)や、LYP材(極低降伏点鋼材)等の降伏点の低い鋼材にて形成されているのが好ましく、芯材10の降伏による地震エネルギー吸収性が良好になる。
【0043】
芯材10の二段の広幅部12A,12Bのうち、相対的に狭幅の広幅部12Aの左右の狭幅面11bには、平鋼により形成される一対の第2鋼材40Aが、芯材10の広幅面11aに直交する態様で溶接接合されている。
【0044】
一対の第2鋼材40Aは、以下で説明する一対の第1鋼材30A(
図2参照)とともに鋼材の閉合構造を形成して木製拘束材20の端部を拘束する。
【0045】
また、第2鋼材40Aは、広幅部12Aの狭幅面11bから芯材10の狭幅部13側へ張り出し、狭幅部13の狭幅面11bとの間に隙間G1を形成する。この隙間G1には、以下で説明する木製拘束材20の側板22(
図2参照)の端部が遊嵌されるようになっている。
【0046】
図2に示すように、木製拘束材20は、一対の拘束板21と、一対の拘束板21を繋ぐ一対の側板22とを有し、一対の拘束板21の間に芯材10が配設されるようになっている。拘束板21の全長t2と側板22の全長t3の間には、t2>t3の関係があり、芯材10の全長t1を含めて、t1>t2>t3の関係がある。
【0047】
木製で一対の拘束板21の内面21aは、芯材10の有する二つの広幅面11a(
図1参照)に対向するように配設されており、一対の拘束板21の側面21bに対して接着剤により接続される木製で一対の側板22は、芯材10の有する二つの狭幅面11b(
図1参照)に対向するように配設されている。ここで、拘束板21と側板22を接続する接着剤には、ウレタン系接着剤とエポキシ系接着剤等がある。また、拘束板21と側板22は、接着剤による接続に加えて、木ネジや木ダボ、ビス、釘等の被打ち込み材や被ねじ込み材が側板22の側方から拘束板21の内部に亘って打ち込まれたりねじ込まれることにより、大地震等の際に拘束板21と側板22が接合界面において分離されることを抑制したり、側板22の割裂防止効果を高めるフェールセーフとして機能する。
【0048】
拘束板21の内面21aの両端部には、一対の拘束板21の間に芯材10が配設された際に、芯材10の端部に設けられている補強リブ14が拘束板21と当接しないように、補強リブ14を収容する凹部21cが設けられている。
【0049】
図示を省略するが、凹部21cに補強リブ14が収容された状態において、双方の間には所定の隙間が形成されるように、補強リブ14の凹部21cに収容される長さと凹部21cの長さt4が設定されている。補強リブ14と凹部21cの間に隙間があることにより、地震時に架構に組み込まれた座屈拘束ブレースが変形した際に、補強リブ14が凹部21cに当接し、さらに凹部21cが押圧されることに起因して拘束板21が破損することを防止できる。また、凹部21cと補強リブ14の双方の幅方向においても、所定幅の隙間が設けられているのが望ましい。
【0050】
また、側板22の両端部にも、別途の凹部22aが設けられている。この凹部22aは、側板22が芯材10の狭幅部13の側方に配設された際に、芯材10の広幅部12Aと対応する位置に設けられている。
【0051】
第2鋼材40Aと、狭幅部13の狭幅面11bとの間にある隙間G1(
図1参照)に側板22の端部が遊嵌された状態では、広幅部12Aの端部と側板22の端部は当接しない、もしくは相互に押圧しない状態で当接している。この状態から、地震時に座屈拘束ブレースが変形した際に、広幅部12Aの端部が側板22の端部を押圧して側板22が破損する恐れがあるが、側板22の端部に凹部22aが設けられていることにより、地震時に座屈拘束ブレースが変形した場合でも、例えば凹部22a内に広幅部12Aの端部が収容されることにより、広幅部12Aからの押圧による側板22の破損を防止することができる。
【0052】
木製拘束材20の製作は、一対の拘束板21の間に芯材10を配設した後、一対の拘束板21の双方の側面21bと一対の側板22を接着剤を介して接続することにより、芯材10を挟んだ状態で木製拘束材20が製作される。また、上記するように、さらに、複数の木ネジや木ダボ、ビス、釘等を側板22の側方から拘束板21の内部に亘って打ち込んだりねじ込むことでフェールセーフ機構を形成してもよい。
【0053】
拘束板21と側板22は、無垢材、又は、ラミナが積層された集成材を含む木質材料のいずれにより形成されてもよい。以下で詳説するように、座屈拘束ブレースの全体座屈を防止できるように、木製拘束材20の断面積や断面剛性、ヤング係数等が設定される。そして、このヤング係数は木材の材質により決定される。木材の材質としては、ヒノキやアカマツ、カラマツ、モミ、エゾマツ等が挙げられる。
【0054】
架構に座屈拘束ブレースが組み込まれた状態において、地震時に座屈拘束ブレースが構面外に変形した際に、芯材10から最も強い押し込み力を受ける一対の拘束板21の端部に対応する位置に接続されている側板22の端部には、割れ(割裂)が生じ得る。
【0055】
そこで、
図2に示すように、一対の拘束板21の端部を外側から拘束する一対の第1鋼材30Aを配設する。
【0056】
図示例の第1鋼材30Aは平鋼により形成されており、左右にそれぞれ複数(図示例は3つ)のボルト孔30aが開設されている。一対の拘束板21の端部の外側に一対の第1鋼材30Aを位置合わせし、双方の対応するボルト孔30aにボルト35を挿通し、ナット36にて締め付けることにより、一対の拘束板21が外側から一対の第1鋼材30Aにより強固に拘束される。ここで、
図2には、一組のボルトナットのみを図示しているが、各ボルト孔30aに対応する六組のボルトナットが適用される。
【0057】
図3に示すように、木製拘束材20に組み込まれた芯材10に接続されている一対の第2鋼材40Aに対して、一対の第1鋼材30Aを係止させ、一対の第1鋼材30A同士を複数組(図示例は6本)のボルト35とナット36にて締め付けることにより、一対の第1鋼材30Aと一対の第2鋼材40Aによる鋼材の閉合構造が形成される。第2鋼材40Aの端面と拘束板21の端面は例えば面一となっており、従って、第2鋼材40Aに第1鋼材30Aが係止された際に、第1鋼材30Aは拘束板30Aの端面に当接する。ボルト35とナット36による締め付けにより、一対の拘束板21がそれらの外側から一対の第1鋼材30Aにより拘束された座屈拘束ブレース100が形成される。
【0058】
座屈拘束ブレース100によれば、一対の拘束板21同士が一対の側板22にて接続されて、四つの面材による閉合構造を有する木製拘束材20が形成され、鋼製の芯材10が木製拘束材20にて包囲される。この構成により、座屈拘束ブレース100を木造建築物の架構に適用した場合でも、架構構成部材と不釣合いな外観を与える恐れはない。
【0059】
さらに、木製拘束材20の端部において、一対の拘束板21の外側に配設されて相互にボルト締めされることにより一対の拘束板21を拘束する、一対の第1鋼材30Aが設けられていることにより、架構と座屈拘束ブレース100が構面外に変形した際に、芯材10から最も強い押し込み力を受ける一対の拘束板21の端部近傍に接続されている側板22の端部に生じ得る割れを抑制することができる。
【0060】
[第2実施形態に係る座屈拘束ブレース]
次に、
図4乃至
図6を参照して、第2実施形態に係る座屈拘束ブレースの一例について説明する。ここで、
図4は、第2実施形態に係る座屈拘束ブレースを形成する芯材の一例の斜視図であり、
図5は、第2実施形態に係る座屈拘束ブレースを形成する木製拘束材の一例を、第1鋼材の他の例とともに示す分解斜視図である。また、
図6は、第2実施形態に係る座屈拘束ブレースの一例の斜視図である。
【0061】
図4に示す芯材10Aは、一対の第2鋼材40Aを備えていない点において、
図1に示す芯材10と相違する。
【0062】
図5に示すように、木製拘束材20の端部を拘束する鋼材に関し、一対の拘束板21を外側から拘束する一対の第1鋼材30Aは、
図2及び
図3に示す第1鋼材と同様である。一方、第2鋼材40Bは、中央のウェブ部41と、ウェブ部41の両端において直交する二つのフランジ部42とを備え、断面形状がコの字形を呈している鋼材である。
【0063】
一対の第1鋼材30Aのボルト孔30aと、その間にある第2鋼材40Bの備える二つのフランジ部42のボルト孔42aに対して、ボルト35が挿通され、ナット36にて締め付けられることにより、一対の拘束板21が外側から一対の第1鋼材30Aにより強固に拘束される。
【0064】
ここで、図示を省略するが、第2鋼材40Bのウェブ部41が、
図1における第2鋼材40Aのごとく芯材10の広幅部12Aの狭幅面11bに溶接接合される形態であってもよい。
【0065】
図6に示すように、木製拘束材20の両端部において、一対の第1鋼材30Aと一対の第2鋼材40Bによる鋼材の閉合構造を形成することにより、一対の拘束板21がそれらの外側から一対の第1鋼材30Aにより拘束された座屈拘束ブレース100Aが形成される。
【0066】
座屈拘束ブレース100Aによっても、座屈拘束ブレース100と同様の効果が奏される。
【0067】
[第3実施形態に係る座屈拘束ブレース]
次に、
図7及び
図8を参照して、第3実施形態に係る座屈拘束ブレースの一例について説明する。ここで、
図7は、第3実施形態に係る座屈拘束ブレースを形成する木製拘束材の一例を第1鋼材のさらに他の例とともに示す分解斜視図である。また、
図8は、第3実施形態に係る座屈拘束ブレースの一例の斜視図である。
【0068】
本実施形態では、第2実施形態と同様の芯材10Aを適用する。
【0069】
図7に示すように、木製拘束材20の端部を拘束する鋼材は一対の第1鋼材30Bであり、中央のコの字部31と、コの字部31の両端から張り出す二つの張り出し部32とを備え、断面形状がハット形を呈している鋼材である。
【0070】
一対の第1鋼材30Bの対応する張り出し部32同士が当接され、双方の張り出し部32のボルト孔32aに対してボルト35が挿通され、ナット36にて締め付けられることにより、一対の拘束板21が外側から一対の第1鋼材30Bにより強固に拘束される。
【0071】
図8に示すように、木製拘束材20の両端部において、一対の第1鋼材30Bによる鋼材の閉合構造を形成することにより、一対の拘束板21がそれらの外側から一対の第1鋼材30Bにより拘束された座屈拘束ブレース100Bが形成される。
【0072】
座屈拘束ブレース100Bによっても、座屈拘束ブレース100,100Aと同様の効果が奏される。
【0073】
ここで、図示を省略するが、座屈拘束ブレース100、100A,100Bにおいて、芯材10の広幅面11aと拘束板21の内面21aとの間に内挿板が介在していてもよい。内挿板は、鋼製プレート、木製プレートのいずれを適用してもよく、木製プレートとしては、例えばLVL(Laminated Veneer Lumber:単板積層材)が適用できる。
【0074】
芯材10の高次の座屈変形により、芯材10から拘束板21の内面21aに局所的に押圧力が作用し、この局所的な押圧力に起因して拘束板21が破損する恐れがある。これに対して、芯材10と拘束板21の間に内挿板が介在していることにより、芯材10の高次の座屈変形の際に凸部から作用する押圧力は内挿板にまず伝達され、伝達された押圧力は内挿板の内部に広がり、内挿板の内部に拡散された押圧力が木製の拘束板21に分散力として作用することになる。このことにより、芯材10から作用する複数の局所的な押圧力による、木製の拘束板21の破損が効果的に抑制される。
【0075】
[座屈拘束ブレースが組み込まれた架構]
次に、
図9及び
図10を参照して、第1実施形態の座屈拘束ブレースが組み込まれた建物の架構の一例について説明する。ここで、
図9は、第1実施形態に係る座屈拘束ブレースが木造建物等の架構に組み込まれた状態を示す図である。また、
図10は、大地震時における架構の変形態様と、架構の変形に起因する座屈拘束ブレース接合部における付加曲げモーメントを説明する図である。尚、図示例の座屈拘束ブレースは、木造建物の架構以外にも、S造(S:Steel)建物の架構、RC造建物の架構、SRC造(SRC : Steel Reinforced Concrete)建物の架構に組み込まれてもよい。
【0076】
図9に示す架構Sは、木造建築物等を構成する木製の柱Cと梁Bにより形成されている。対角線位置にある二つの隅角部には、平鋼により形成されるガセットプレートGPが取付けられている。ガセットプレートGPの表面には、該表面に直交するようにフィンスチフナFSが溶接にて接合されている。柱Cの柱芯L1と梁Bの梁芯L2の交点Oに対して、フィンスチフナFSの芯L3が交差するようにしてフィンスチフナFSがガセットプレートGPに接合される。そして、座屈拘束ブレース100も、対角位置にある双方の交点Oを通る線状に配設される。
【0077】
ガセットプレートGPと芯材10の広幅部12は、スプライスプレートSPを介してハイテンションボルトにより接合され、フィンスチフナFSと補強リブ14は、スプライスプレートSPを介してハイテンションボルトにより接合される。
【0078】
図10に示すように、大地震時において構面が変形することにより、座屈拘束ブレース接合部においては、接合部を剛と見なした場合に、以下の式(1)に示す付加曲げモーメントが作用し得る。
【0079】
【0080】
座屈拘束ブレース100によれば、芯材10から最も強い押し込み力を受け得る拘束板21の端部同士が、一対の第1鋼材30Aと一対の第2鋼材40Bによる閉合構造にて包囲され、一対の拘束板21が外側から一対の第1鋼材30Aにて拘束されていることにより、座屈拘束ブレース100が取り付けられている構面Sが大地震時に大きく変形した際に、芯材10から最も強い押し込み力を受ける一対の拘束板21の端部近傍に接続されている側板22の端部に生じ得る割れを抑制することができる。
【0081】
[全体座屈の検討]
次に、座屈拘束ブレースの全体座屈を防止するための設計方法について説明する。
【0082】
座屈拘束ブレースの設計においては、以下の式(2)を満足して座屈拘束ブレースの全体座屈が生じないように設計する。
【0083】
【0084】
ここで、拘束板の中央に作用する曲げモーメントは、以下の式(3)で示すことができる。
【0085】
【0086】
木製拘束材の全体座屈を防止する条件は、以下の式(4)を満足することとなる。
【0087】
【0088】
式(4)を座屈拘束ブレースの全体座屈曲線として
図11に示す。
図11において、全体座屈曲線の上側は安全域であり、下側は危険域であり、安全域に入るように木製拘束材の設計用軸力、オイラー荷重、芯材の一般部の長さ、及び木製拘束材の降伏曲げ耐力が設定される。尚、
図11に示す座屈拘束ブレースの全体座屈曲線は、芯材の弱軸方向の全体座屈、強軸方向の全体座屈の双方に妥当する。
【0089】
上記する木製拘束材の降伏曲げ耐力と作用する曲げモーメントとの関係を照査することの他にも、短期の木製拘束材の許容曲げ耐力が芯材降伏時に作用する曲げモーメントよりも大きくなることも合せて照査するのがよい(数式は省略)。
【0090】
<木製拘束材のめり込み破壊の検討>
次に、木製拘束材のめり込み破壊の検討方法について説明する。芯材が木製拘束材に対してめり込むことにより、木製拘束材が破壊することを防止するには、以下の式(5)を満足することを検証する。
【0091】
【0092】
ここで、上記する拘束板のめり込み耐力と作用する補剛力との関係を照査することの他にも、短期の拘束板の許容めり込み耐力が芯材降伏時に作用する補剛力よりも大きくなることも合せて照査するのがよい(数式は省略)。
【0093】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0094】
10,10A:芯材
11a:広幅面
11b:狭幅面
12,12A,12B:広幅部
12a:ボルト孔
13:狭幅部
14:補強リブ
14a:ボルト孔
15:第2鋼板
15A:第2鋼板(平鋼)
17:内挿板
17a:ボルト孔
20:木製拘束材
21:拘束板
21a:内面
21b:側面
21c:凹部
22:側板
22a:凹部
30:第1鋼材
30A:第1鋼材(平鋼)
30B:第1鋼材
30a:ボルト孔
31:コの字部
32:張り出し部
32a:ボルト孔
35:ボルト
36:ナット
40:第2鋼材
40A:第2鋼材(平鋼)
40B:第2鋼材
41:ウェブ部
42:フランジ部
42a:ボルト孔
100,100A,100B:座屈拘束ブレース
A:塑性化領域
S:架構(構面)
C:柱
B:梁
GP:ガセットプレート
FS:フィンスチフナ
SP:スプライスプレート