(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042182
(43)【公開日】2023-03-27
(54)【発明の名称】荷吊り装置
(51)【国際特許分類】
B66C 1/12 20060101AFI20230317BHJP
【FI】
B66C1/12 G
B66C1/12 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149349
(22)【出願日】2021-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】512105598
【氏名又は名称】日立建機日本株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 豊
(72)【発明者】
【氏名】久保田 一輝
(72)【発明者】
【氏名】進藤 晋一郎
【テーマコード(参考)】
3F004
【Fターム(参考)】
3F004EA21
3F004EA29
3F004LC01
(57)【要約】
【課題】荷の中に含まれる物質の種類に左右されることなく、オペレータによる操作装置の操作のみで荷を吊り上げることが可能な荷吊り装置を提供する。
【解決手段】荷Xの取っ手21に設けられた被吸引部材22,23と、被吸引部材22,23を吸引して取っ手21と荷Xの上部2Aとの間に引っ掛け孔120を形成する吸引装置5と、引っ掛け孔120に挿入されて取っ手21を引っ掛ける鉤状のフック41を有する吊り具4と、吊り具4に掛けられた荷Xを吊り上げる吊り上げ装置としての油圧ショベル3と、を備えた荷吊り装置1において、フック41は、第1支持ピン43を中心として上下方向に回動することにより先端部が上方を向く閉位置と先端部が下方を向く開位置との間を移動し、吸引装置5は、吸引力によって被吸引部材22,23を吸引し、閉位置におけるフック41に対向して配置されて下方向に開口した吸引口52Aを有する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷に取り付けられた可撓性を有する線条の取っ手に設けられた被吸引部材と、
前記被吸引部材を吸引して倒伏状態の前記取っ手を引き上げて前記取っ手と前記荷の上部との間に引っ掛け孔を形成する吸引装置と、
前記引っ掛け孔に挿入されて前記取っ手を引っ掛ける鉤状のフックを有する吊り具と、
前記吊り具に掛けられた前記荷を吊り上げる吊り上げ装置と、
を備えた荷吊り装置において、
前記フックは、
水平方向に軸を有する支持ピンによって基端部が前記吊り具の本体部に回動可能に支持され、前記支持ピンを中心として前記本体部に対して上下方向に回動することにより先端部が上方を向く閉位置と先端部が下方を向く開位置との間を移動し、
前記吸引装置は、
吸引力によって前記被吸引部材を吸引し、
前記閉位置における前記フックに対向して配置されて下方向に開口した吸引口を有する
ことを特徴とする荷吊り装置。
【請求項2】
請求項1に記載の荷吊り装置において、
前記吸引口は、
前記閉位置における前記フックの前記基端部と前記先端部との並び方向の中央部に向かって開口している
ことを特徴とする荷吊り装置。
【請求項3】
請求項1に記載の荷吊り装置において、
前記吸引装置は、
前記吸引口側を負圧にすることにより、前記吸引口を介して前記吸引装置の外部から内部に向かって吸引する吸引力を発生させる
ことを特徴とする荷吊り装置。
【請求項4】
請求項3に記載の荷吊り装置において、
前記吸引装置は、
圧縮空気を生成するエアコンプレッサと、
前記エアコンプレッサから供給された圧縮空気を噴射するエアガンと、を有し、
前記エアガンは、
前記エアコンプレッサが接続されて圧縮空気が供給される給気口および前記給気口から流入した圧縮空気を噴射する噴射口が形成されたボディと、
前記ボディにおける前記噴射口とは反対側に接続されて先端に前記吸引口が形成されたチューブと、を含み、
前記エアコンプレッサが作動した場合には、
前記吸引口を介して外部空気が前記チューブ内に向かって吸引され、
前記吸引口を介して前記チューブ内に吸引された外部空気が、前記給気口を介して前記ボディ内に流入した圧縮空気と共に前記噴射口を介して外部に噴射される
ことを特徴とする荷吊り装置。
【請求項5】
請求項1に記載の荷吊り装置において、
前記被吸引部材は、
球体であって、
前記取っ手のうち前記荷の上部との間に前記引っ掛け孔を形成する領域の長手方向の中央部に取り付けられている
ことを特徴とする荷吊り装置。
【請求項6】
請求項5に記載の荷吊り装置において、
前記球体は、弾性部材で形成されている
ことを特徴とする荷吊り装置。
【請求項7】
請求項1に記載の荷吊り装置において、
前記被吸引部材は、
線条体であって、
前記取っ手のうち前記荷の上部との間に前記引っ掛け孔を形成する領域の長手方向の中央部に取り付けられている
ことを特徴とする荷吊り装置。
【請求項8】
請求項7に記載の荷吊り装置において、
前記線条体は、結び目が前記取っ手の短手方向の中央部に配置されている
ことを特徴とする荷吊り装置。
【請求項9】
請求項1に記載の荷吊り装置において、
前記吊り上げ装置は、
先端部に前記吊り具が取り付けられたアーム部材を有する作業装置を備えた作業機械であって、前記作業装置を動作させることにより前記荷を吊り上げる
ことを特徴とする荷吊り装置。
【請求項10】
請求項4に記載の荷吊り装置において、
前記吊り上げ装置は、
路面を走行するための走行体と、
前記走行体の上方に旋回可能に設けられた旋回体と、
前記旋回体の前部に取り付けられ、先端部に前記吊り具が連結されたアーム部材を有する作業装置と、
を備えた作業機械であって、
前記エアコンプレッサは、
前記走行体の前部または前記旋回体の後端部に配置されている
ことを特徴とする荷吊り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷を吊り上げる荷吊り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、土砂、セメント、および穀物といった粉粒体や、除染で取り除かれた放射性廃棄物などの荷は、フレキシブルコンテナバッグや土嚢袋といった袋状の収容体の中に収容されて保管および運搬される。これらの荷を運搬する際には、油圧ショベルやクレーンなどの作業機械に取り付けられた吊り具に収容体を引っ掛けて吊り上げる。このとき、作業者は、収容体に設けられた一対の吊り紐やロープを吊り具に玉掛けする玉掛け作業を行う。
【0003】
ただし、玉掛け作業では、作業機械が作動する際に作業者が吊り具に接触したり、収容体の下敷きになったりするリスクや、収容体の中に放射性廃棄物が収容されている場合に作業者が被ばくするリスクがある。したがって、作業者による玉掛け作業を行わず作業機械の操作のみによって、一対の吊り紐やロープを吊り具に引っ掛けて収容体を吊り上げることが求められる。
【0004】
例えば、特許文献1には、バックホウのバケットには吸引手段としての磁石が、荷が収容された袋の持ち手には被吸引手段としての鉄が、それぞれ設けられており、磁石で鉄を吸引することにより、袋の持ち手が倒伏した状態であっても持ち手をバケットの先端に引っ掛けて袋を吊り上げることが可能な袋吊り装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の袋吊り装置の場合、袋の倒伏した状態の持ち手を引き上げる手段として磁石を用いているため、袋に収容されている荷の中に金属が含まれていると、磁石がその金属を吸引してしまう可能性がある。その場合、袋の持ち手に設けられた鉄を磁石で吸引することにより、袋の持ち手を引き上げてバケットの先端に引っ掛けるという本来の目的を達成しにくくなる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、荷の中に含まれる物質の種類に左右されることなく、オペレータによる操作装置の操作のみで荷を吊り上げることが可能な荷吊り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、荷に取り付けられた可撓性を有する線条の取っ手に設けられた被吸引部材と、前記被吸引部材を吸引して倒伏状態の前記取っ手を引き上げて前記取っ手と前記荷の上部との間に引っ掛け孔を形成する吸引装置と、前記引っ掛け孔に挿入されて前記取っ手を引っ掛ける鉤状のフックを有する吊り具と、前記吊り具に掛けられた前記荷を吊り上げる吊り上げ装置と、を備えた荷吊り装置において、前記フックは、水平方向に軸を有する支持ピンによって基端部が前記吊り具の本体部に回動可能に支持され、前記支持ピンを中心として前記本体部に対して上下方向に回動することにより先端部が上方を向く閉位置と先端部が下方を向く開位置との間を移動し、前記吸引装置は、吸引力によって前記被吸引部材を吸引し、前記閉位置における前記フックに対向して配置されて下方向に開口した吸引口を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、荷の中に含まれる物質の種類に左右されることなく、オペレータによる操作装置の操作のみで荷を吊り上げることができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る荷吊り装置の一構成例を示す外観図である。
【
図3】エアコンプレッサの配置に係る他の第1の例を示す図である。
【
図4】エアコンプレッサの配置に係る他の第2の例を示す図である。
【
図5】エアガンが取り付けられた吊り具の一構成例を示す正面図である。
【
図6】エアガンが取り付けられた吊り具の一構成例を示す側面図である。
【
図7】吊り具を移動させて吸引口を球体に近づけている状態を示す図である。
【
図8】球体が吸引口に吸引されている状態を示す図である。
【
図9】フックが引っ掛け孔に挿入された状態を示す図である。
【
図11】荷吊り装置の変形例を示し、吊り具を移動させて吸引口を紐体に近づけている状態の図である。
【
図12】荷吊り装置の変形例を示し、紐体が吸引口に吸引されている状態の図である。
【
図13】荷吊り装置の変形例を示し、フックが引っ掛け孔に挿入された状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る荷吊り装置の一態様として、油圧ショベルを用いて荷を吊り上げる荷吊り装置について説明する。
【0012】
(荷吊り装置1の全体構成)
まず、本発明の実施形態に係る荷吊り装置1の全体構成について、
図1~4を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る荷吊り装置1の一構成例を示す外観図である。
図2は、走行体31の一構成例を示す上面模式図である。
図3は、エアコンプレッサ51の配置に係る他の第1の例を示す図である。
図4は、エアコンプレッサ51の配置に係る他の第2の例を示す図である。
【0014】
荷吊り装置1は、
図1に示すように、フレキシブルコンテナバッグや土嚢袋といった袋体2の中に収容された土砂や穀物、放射性廃棄物などの荷Xを油圧ショベル3によって吊り上げる。
【0015】
袋体2には、一対の取っ手21が上部2Aを跨いで取り付けられている。一対の取っ手21はそれぞれ、例えばロープや紐などの可撓性を有する線条の部材で形成されており、引っ張られていない場合には袋体2の上部2Aで倒伏状態となる。これにより、複数個の荷Xを上に積み重ねる場合であっても嵩張らずにすむ。
【0016】
油圧ショベル3は、自走可能な走行体31と、走行体31の上方に旋回装置32を介して旋回可能に取り付けられた旋回体33と、により車体が構成され、旋回体33の前部に作業装置34が取り付けられている。
【0017】
走行体31は、
図2に示すように、ベースとなるシャーシフレーム311の左右に一対のクローラ312L,312Rを備えたクローラ式であって、一対の走行モータ(不図示)の駆動力により左右一対のクローラ312L,312Rを地面に接触させた状態で回転させて旋回体33を移動させる。なお、
図1では、左右一対のクローラ312L,312Rのうち、左側のクローラ312Lのみを示している。
【0018】
シャーシフレーム311は、車体の中央部分に位置するセンターフレーム311Cと、センターフレーム311Cの左右に連結された一対のサイドフレーム311L,311Rと、を含んで構成され、左側のサイドフレーム311Lに左側のクローラ312Lが、右側のサイドフレーム311Rに右側のクローラ312Rが、それぞれ取り付けられている。
【0019】
一対の走行モータは、左右それぞれのクローラ312L,312Rに対応して左右のサイドフレーム311L,311Rのそれぞれに搭載されており、互いに独立して駆動することで左右のクローラ312L,312Rをそれぞれ独立して正逆回転させる。
【0020】
また、シャーシフレーム311のセンターフレーム311Cには、相対回転可能な外側継手と内側継手とで構成された回転継手としてのセンタジョイント313が中央部分に設けられている。センタジョイント313は、走行体31と旋回体33とに亘って配策される配管が、旋回体33の旋回によって捩じれるのを防ぐ。
【0021】
旋回体33は、ベースとなる旋回フレーム331と、オペレータが搭乗する運転室332と、車体が傾倒しないように作業装置34とのバランスを保つカウンタウェイト333と、エンジンなどの油圧ショベル3の駆動に必要な各種機器を内部に収容する機械室334と、を備える。旋回フレーム331上において、運転室332は全部左側に、カウンタウェイト333は後端部に、機械室334は運転室332とカウンタウェイト333との間に、それぞれ載置されている。
【0022】
作業装置34は、基端部が旋回フレーム331に回動可能に取り付けられたブーム341と、ブーム341を駆動するブームシリンダ342と、ブーム341の先端部に回動可能に取り付けられたアーム343(アーム部材)と、アーム343を駆動するアームシリンダ344と、アーム343の先端部に取り付けられた吊り具4と、を備える。
【0023】
ブームシリンダ342は、旋回フレーム331とブーム341とを連結し、ロッドが伸縮することによりブーム341を旋回体33に対して上下方向に回動(俯仰)させる。アームシリンダ344は、ブーム341とアーム343とを連結し、ロッドが伸縮することによりアーム343をブーム341に対して前後方向に回動させる。
【0024】
吊り具4は、荷Xを吊り下げ保持する作業具であって、オペレータの操作により作動して袋体2の一対の取っ手21を引っ掛ける鉤状のフック41を有する。荷Xは、袋体2の一対の取っ手21がフック41に引っ掛けられることによって吊り具4に掛けられた状態(吊り下げられた状態)となる。
【0025】
そして、吊り具4に掛けられた荷Xは、オペレータが作業装置34(ブーム341およびアーム343)を操作することによって吊り上げられて移動される。このように、本実施形態では、吊り具4に掛けられた荷Xを吊り上げる吊り上げ装置として、油圧ショベル3が用いられている。なお、吊り上げ装置は、必ずしも作業装置34を備えた油圧ショベル3のような作業機械である必要はなく、吊り具4に掛けられた荷Xを吊り上げることが可能な機構を有した装置であればよい。
【0026】
前述したように、一対の取っ手21は袋体2の上部2Aで倒伏状態となっていることから、フック41に一対の取っ手21が引っ掛かりにくい場合がある。そこで、荷吊り装置1では、一対の取っ手21に被吸引部材としての球体22を設け、球体22を吸引装置5で吸引することにより倒伏状態の一対の取っ手21を引き上げてフック41に引っ掛かりやすくしている。
【0027】
吸引装置5は、走行体31に設置されたエアコンプレッサ51と、吊り具4に取り付けられたエアガン52と、エアコンプレッサ51とエアガン52とを接続するホース53と、を含んで構成され、エアガン52に設けられた吸引口52Aから球体22を吸引する。
【0028】
本実施形態では、エアコンプレッサ51は、
図2に示すように、シャーシフレーム311のセンターフレーム311Cの前方であって左右のサイドフレーム311L,311Rの間に形成された空間に設けられた載置台314上に載置されている。この場合、エアコンプレッサ51から導出されたホース53は、旋回体33の旋回によって捩じれないように、センタジョイント313を介して旋回体33側に導かれる。そして、旋回体33側に導かれたホース53は、ブーム341およびアーム343の側面部を這わせて吊り具4まで配策される。
【0029】
なお、エアコンプレッサ51は、必ずしも走行体31に設置されている必要はなく、例えば、
図3に示すように、旋回体33の後端部、すなわちカウンタウェイト333の背面部に設置されていてもよい。この場合、エアコンプレッサ51から導出されたホース53は、作業装置34側に向かって旋回体33上を導かれた後、ブーム341およびアーム343の側面部を這わせて吊り具4まで配策される。
【0030】
また、エアコンプレッサ51は、必ずしも油圧ショベル3に搭載されている必要はなく、例えば、
図4に示すように、油圧ショベル3(吊り上げ装置)の周辺領域に位置する所定の載置場所に載置されていてもよい。ただし、この場合には、吊り具4の移動範囲、すなわち荷Xの運搬範囲に対してホース53の長さが足りなくならないようにエアコンプレッサ51の載置場所を決める必要がある。
【0031】
(吊り具4の構成)
次に、吊り具4の具体的な構成について、
図5~9を参照して説明する。
【0032】
図5は、エアガン52が取り付けられた吊り具4の一構成例を示す正面図である。
図6は、エアガン52が取り付けられた吊り具4の一構成例を示す側面図である。
図7は、吊り具4を移動させて吸引口52Aを球体22に近づけている状態を示す図である。
図8は、球体22が吸引口52Aに吸引されている状態を示す図である。
図9は、フック41が引っ掛け孔120に挿入された状態を示す図である。
【0033】
吊り具4は、フック41と、アーム343の先端部に取り付けられた本体部42と、を有する。フック41は、
図6に示すように、水平方向に軸を有する支持ピンとしての第1支持ピン43によって、基端部が本体部42の下端部分に回動可能に支持されている。フック41は、オペレータの操作に応じて、第1支持ピン43を中心として本体部42に対して上下方向に回動し、先端部が上方を向く閉位置(
図5および
図9に示す位置)と、先端部が下方を向く開位置(
図7および
図8に示す位置)との間を移動する。
【0034】
なお、本実施形態では、本体部42は、第1支持ピン43の軸方向が油圧ショベル3の車幅方向(左右方向)となるように、アーム343の先端部に上部側が取り付けられている。したがって、フック41は、本体部42に対して上方向に回動すると、旋回体33に近づく方向に動くことになり、他方、本体部42に対して下方向に回動すると、前方に向かって旋回体33から離れる方向に動くことになる。
【0035】
また、フック41は、本体部42の下端部の一側(旋回体33側)において第1支持ピン43によって支持されており、本体部42の下端部の他側には、オペレータの操作に応じてフック41と連動する棒状のストッパ44が第2支持ピン45によって支持されている。
【0036】
第2支持ピン45は、第1支持ピン43と同様に、水平方向(本実施形態では、油圧ショベル3の車幅方向)に軸を有しており、ストッパ44は、第2支持ピン45を中心として本体部42に対して上下方向に回動する。
【0037】
具体的には、フック41が開位置から閉位置に向かうように本体部42に対して下方向(前方に向かって旋回体33から離れる方向)に回動すると、ストッパ44は、フック41に近づくように本体部42に対して下方向(旋回体33に近づく方向)に回動する。すなわち、この場合、フック41とストッパ44とは、互いに近づく方向に回動し、閉位置では、
図5および
図9に示すように、互いの先端部が接触した状態となる。これにより、フック41に引っ掛けられた一対の取っ手21が、フック41の先端部側から外れ落ちてしまうことを防ぐことができる。
【0038】
他方、フック41が閉位置から開位置に向かうように本体部42に対して上方向(旋回体33に近づく方向)に回動すると、ストッパ44は、フック41から離れていくように本体部42に対して上方向(前方に向かって旋回体33から離れる方向)に回動する。すなわち、この場合、フック41とストッパ44とは、互いに離れる方向に回動し、開位置では、
図7および
図8に示すように、互いの先端部が最も離れた状態となる。
【0039】
なお、フック41およびストッパ44は、必ずしも油圧ショベル3の前後方向に沿った方向に回動する必要はなく、例えば、油圧ショベル3の車幅方向に沿った方向に回動してもよく、荷吊り装置1が使用される現場の環境や荷Xの仕様(一対の取っ手21の取り付け状態など)に応じた鉛直面内で回動すればよい。
【0040】
(吸引装置5の構成)
次に、吸引装置5の具体的な構成について、
図5~
図10を参照して説明する。
【0041】
図10は、吸引装置5の一構成例を示す模式図である。
【0042】
吸引装置5は、一対の取っ手21に設けられた球体22を吸引力によって吸引し、袋体2の上部2Aで倒伏状態となっていた一対の取っ手21を引き上げて、一対の取っ手21と袋体2の上部2Aとの間に引っ掛け孔120を形成する(
図8および
図9参照)。
【0043】
本実施形態では、袋体2に取っ手21が一対取り付けられているため、球体22は、一対の取っ手21が互いに重なり合う重なり領域上に設けられている。この重なり領域は、それぞれの取っ手21のうち、袋体2の上部2Aとの間に引っ掛け孔120を形成する領域(すなわち、袋体2の上部2Aと対向する領域)の長手方向の中央部に相当する。これにより、吊り具4は、荷Xをバランスが取れた状態で吊り下げ保持することができる。
【0044】
本実施形態に係る吸引装置5では、
図10に示すように、圧縮空気を生成するエアコンプレッサ51と、エアコンプレッサ51から供給された圧縮空気を噴射するエアガン52と、によって吸引力を発生させる。
【0045】
エアガン52は、エアコンプレッサ51が接続されて圧縮空気が供給される給気口521Aおよび給気口521Aから流入した圧縮空気を噴射する噴射口521Bが形成されたボディ521と、ボディ521における噴射口521Bとは反対側に接続されて吸引口52Aが形成された筒状のチューブ522と、を含んで構成される。噴射口521Bは、給気口521Aおよび吸引口52Aのそれぞれと連通している。
【0046】
エアガン52は、バキューム機能を有しており、エアコンプレッサ51が作動した場合には、ボディ521内に圧縮空気が流れ込んで吸引口52A側が負圧となり、外部空気が吸引口52Aを介してチューブ522内に向かって吸引される。そして、吸引口52Aを介してチューブ522内に吸引された外部空気は、給気口521Aを介してボディ521内に流入した圧縮空気と共に噴射口521Bを介して外部に噴射される。このようにして、吸引装置5は、吸引口52A側を負圧にすることにより、球体22を吸引するための吸引力を発生させる。
【0047】
なお、吸引装置5は、必ずしもエアコンプレッサ51およびエアガン52によって吸引口52A側を負圧にすることで吸引力を発生させるものである必要はなく、例えば、バキュームで吸引力を発生させるものなどであってもよい。ただし、バキュームで吸引力を発生させる場合には、バキュームが目詰まりを起こす可能性があるため、負圧を利用して吸引力を発生させた方が好ましい。
【0048】
吸引口52Aは、
図5~9に示すように、閉位置におけるフック41に対向して配置されて下方に向かって開口している。すなわち、フック41は、閉位置において吸引口52Aの開口方向の延長上に配置される部分を含む。
【0049】
なお、吸引口52Aは、閉位置におけるフック41の基端部と先端部との並び方向(本実施形態では、油圧ショベル3の前後方向に相当)の中央部に向かって開口していることが望ましい。これにより、吸引口52Aに吸引された球体22が閉位置におけるフック41の中央部分に位置することになるため、フック41に対する一対の取っ手21の引っ掛かりをより確実なものとすることができる。
【0050】
荷Xを吊り上げる際には、まず、
図7に示すように、オペレータは、作業装置34を操作して吸引口52Aを球体22に近づけて、フック41を開位置まで回動させる。次に、
図8に示すように、オペレータは、エアコンプレッサ51を作動させて吸引口52Aで球体22を吸引する。これに伴って、一対の取っ手21が引き上がって引っ掛け孔120が形成される。
【0051】
なお、本実施形態では、チューブ522が伸縮自在な蛇腹状に形成されており、吸引口52Aで球体22を吸引するとチューブ522が噴射口521B側に向かって収縮する。これにより、球体22および一対の取っ手21が、チューブ522の収縮分さらに引き上がって、より大きな引っ掛け孔120を形成することができる。
【0052】
また、被吸引部材が球体22であることから、360度いずれの方向からの形状も同様であり、球体22のうちのいずれの部位を吸引しても、確実に球体22を吸引することが可能となっている。さらに、本実施形態では、球体22は、例えばゴムなどの弾性部材で形成されており、球体22によって袋体2が破損したり、球体22が吸引口52Aやその周辺部材に衝突して損傷したりといった事態を防ぐことができる。
【0053】
なお、
図8および
図9に示すように、球体22は、吸引口52Aの外径よりも大きく形成されているが、これに限らず、吸引口52Aの外径以下の大きさに形成されていてもよく、吸引口52Aで吸引可能であれば球体22の大きさについては特に制限はない。
【0054】
そして、
図9に示すように、オペレータは、一対の取っ手21が引き上がって引っ掛け孔120が形成された状態で吊り具4を操作して、フック41を開位置から閉位置まで回動させる。これにより、フック41が引っ掛け孔120に挿入され、荷Xは、吊り具4によって吊り下げ保持される。
【0055】
このように、荷吊り装置1では、袋体2の上部2Aで倒伏状態となっている一対の取っ手21を吸引力により引き上げて吊り具4のフック41に引っ掛けることができるため、作業者が吊り具4のフック41に一対の取っ手21を玉掛けする玉掛け作業を行う必要がなく、さらに、袋体2に収容されている荷Xの中に含まれる物質の種類に左右されることなく、オペレータによる作業装置34の操作のみで荷Xを吊り上げることが可能である。
【0056】
(変形例)
次に、本発明の実施形態に係る荷吊り装置1の変形例について、
図11~13を参照して説明する。なお、
図11~13において、実施形態に係る荷吊り装置1について説明したものと共通する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0057】
図11は、荷吊り装置1の変形例を示し、吊り具4を移動させて吸引口52Aを紐体23に近づけている状態の図である。
図12は、荷吊り装置1の変形例を示し、紐体23が吸引口52Aに吸引されている状態の図である。
図13は、荷吊り装置1の変形例を示し、フック41が引っ掛け孔120に挿入された状態を示す図である。
【0058】
本変形例では、袋体2の一対の取っ手21には、被吸引部材の他の一態様として紐体23が設けられている。紐体23は、例えばビニール製の細い紐などで成っており、一対の取っ手21が互いに重なり合う重なり領域上に固く結び付けられている。
【0059】
吸引装置5は、実施形態における球体22の場合と同様に、吸引力によって紐体23を吸引する。紐体23は、球体22と比べて軽いものが多いため、球体22のときよりも小さい吸引力でチューブ522内に吸い込むことができる。また、
図11および
図12に示すように、紐体23において結び目23Aから端部23Bを引き出しておくことにより、吸引口52Aを介してチューブ522内に吸引された端部23Bに導かれて紐体23の全体が吸引されやすくなる(
図13参照)。
【0060】
このように、被吸引部材が紐体23であっても、実施形態における作用および効果と同様の作用および効果を奏することができる。なお、
図11および
図12に示すように、紐体23は、結び目23Aが、一対の取っ手21の重なり領域における短手方向の中央部に配置されていることが望ましい。これにより、一対の取っ手21は、フック41にバランスよく引っ掛けられる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、本実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。またさらに、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0062】
例えば、上記実施形態では、袋体2に一対の取っ手21が取り付けられていたが、必ずしも取っ手21は一対(2本)でなくともよく、取っ手21を形成している部材の耐久性や荷Xの重さに応じて本数を適宜変更することが可能である。ただし、複数の取っ手21を袋体2に取り付ける場合には、上記実施形態のように、複数の取っ手21は、袋体2の上部2Aと対向する領域における長手方向の中央部が互いに重なり合うことが望ましい。
【0063】
また、上記実施形態では、荷Xが袋体2内に収容されていたため、袋体2に一対の取っ手21が取り付けられていたが、これに限らず、例えば、袋体2が不要な荷Xの場合には、荷X自体に取っ手21が取り付けられていてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1:荷吊り装置
2A:上部
3:油圧ショベル(作業機械、吊り上げ装置)
4:吊り具
5:吸引装置
21:取っ手
22:球体(被吸引部材)
23:紐体(線条体、被吸引部材)
23A:結び目
31:走行体
33:旋回体
34:作業装置
41:フック
43:第1支持ピン(支持ピン)
51:エアコンプレッサ
52:エアガン
52A:吸引口
120:引っ掛け孔
343:アーム(アーム部材)
521:ボディ
521A:給気口
521B:噴射口
522:チューブ
X:荷