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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042383
(43)【公開日】2023-03-27
(54)【発明の名称】車両用内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 11/00 20060101AFI20230317BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20230317BHJP
   B60W 50/04 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
F01N11/00
F02D45/00 345
B60W50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149652
(22)【出願日】2021-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川俣 博
【テーマコード(参考)】
3D241
3G091
3G384
【Fターム(参考)】
3D241BA00
3D241CC02
3D241CE04
3D241DA03Z
3D241DA05Z
3D241DB02Z
3G091AA17
3G091AB01
3G091BA31
3G091EA01
3G091EA05
3G091EA07
3G091EA34
3G091EA39
3G384AA01
3G384BA31
3G384CA25
3G384DA02
3G384DA14
3G384DA42
3G384FA01Z
3G384FA04Z
3G384FA37Z
3G384FA58Z
3G384FA79Z
(57)【要約】
【課題】車両用内燃機関の自己診断を中断させずに完了させる確率を高めることができ、排気ガスの浄化性能の低下や燃費の悪化を防止することができる車両用内燃機関の制御装置を提供すること。
【解決手段】所定の診断条件が成立すると、排気ガス浄化装置の自己診断を行う車両用内燃機関の制御装置は、車両の走行中、他の地点と比べて診断条件が成立する頻度の高い地点を診断好適地としたとき、ナビゲーション装置により診断好適地を通過する走行経路が設定された場合、車両の走行中、診断好適地に到達する前に診断条件が成立しても車両が診断好適地に到達するまで自己診断を保留し、診断好適地に到達すると自己診断を実施する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の診断条件が成立すると、排気ガス浄化装置の自己診断を行う車両用内燃機関の制御装置であって、
車両の走行中、他の地点と比べて前記診断条件が成立する頻度の高い地点を診断好適地としたとき、
ナビゲーション装置により前記診断好適地を通過する走行経路が設定された場合、前記車両の走行中、前記診断好適地に到達する前に前記診断条件が成立しても前記車両が前記診断好適地に到達するまで前記自己診断を保留し、前記診断好適地に到達すると前記自己診断を実施する自己診断部を備えることを特徴とする車両用内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記車両が走行した所定地点の位置情報を前記ナビゲーション装置から取得し、当該所定地点の位置情報と前記診断条件が成立した地点の位置情報とに基づいて、前記所定地点が前記診断好適地であるか否かを判定する診断好適地判定部を、さらに備えることを特徴する請求項1に記載の車両用内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記診断好適地判定部は、前記車両が前記所定地点を走行した回数を積算した走行回数積算値が所定値より小さい所定地点を前記診断好適地から除外することを特徴とする請求項2に記載の車両用内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記所定地点にて前記診断条件が成立した回数を積算した値を診断条件成立回数積算値としたとき、
前記診断好適地判定部は、前記走行回数積算値に対する前記診断条件成立回数積算値の割合が所定の割合より大きい所定地点を前記診断好適地と判定することを特徴とする請求項3に記載の車両用内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記自己診断部は、前記車両用内燃機関が始動してから第1の時間が経過するまでに前記ナビゲーション装置による目的地の設定が完了しない場合、前記診断条件が成立した時点にて前記自己診断を実施することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両用内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記自己診断部は、前記ナビゲーション装置による目的地の設定が完了した後、前記診断好適地に到達する前に前記車両用内燃機関が始動してから前記第1の時間より長い第2の時間が経過した場合、前記診断条件が成立した時点にて前記自己診断を実施することを特徴とする請求項5に記載の車両用内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記自己診断部は、前記ナビゲーション装置による走行経路案内中に、前記ナビゲーション装置により設定された走行経路を前記車両が逸脱することによって走行経路の自動修正が所定回数以上実施された場合、前記診断条件が成立した時点にて前記自己診断を実施することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の車両用内燃機関の制御装置。
【請求項8】
前記自己診断部は、前記第1の時間と前記第2の時間との間に前記車両が走行する走行経路上に前記診断好適地がない場合、前記診断条件が成立した時点にて前記自己診断を実施することを特徴とする請求項6に記載の車両用内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両に搭載され、エンジンの自己診断を行なう自己診断手段と、エンジンにかかる負荷を制御する負荷制御手段と、自己診断手段による自己診断実行中に負荷制御手段である、電動アクチュエータ、モータ、CVT、VTCの少なくとも1つを作動させることによって、エンジンの負荷変動が抑制された定常運転状態に制御する定常運転制御手段であるECUとを備えた内燃機関の制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-271695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような負荷制御手段を備えていない車両にあっては、エンジンの自己診断中にエンジンを安定した運転状態に維持することが困難となる。このため、エンジンの自己診断の中断が発生しやすく、再診断を繰り返すこととなってしまう。この結果、排気ガスの浄化性能が低下したり、燃費が悪化したりしてしまう。
【0005】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたもので、車両用内燃機関の自己診断を中断させずに完了させる確率を高めることができ、排気ガスの浄化性能の低下や燃費の悪化を防止することができる車両用内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため、所定の診断条件が成立すると、排気ガス浄化装置の自己診断を行う車両用内燃機関の制御装置であって、車両の走行中、他の地点と比べて前記診断条件が成立する頻度の高い地点を診断好適地としたとき、ナビゲーション装置により前記診断好適地を通過する走行経路が設定された場合、前記車両の走行中、前記診断好適地に到達する前に前記診断条件が成立しても前記車両が前記診断好適地に到達するまで前記自己診断を保留し、前記診断好適地に到達すると前記自己診断を実施する自己診断部を備える構成を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両用内燃機関の自己診断を中断させずに完了させる確率を高めることができ、排気ガスの浄化性能の低下や燃費の悪化を防止することができる車両用内燃機関の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施例に係る車両用内燃機関の制御装置を備えた車両の概略構成図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係る車両用内燃機関の制御装置によって診断好適地割合を算出する処理の流れを示すフローチャートである。
図3図3は、本発明の一実施例に係る車両用内燃機関の制御装置によって実行される診断好適地判定処理の流れを示すフローチャートである。
図4図4は、本発明の一実施例に係る車両用内燃機関の制御装置によって実行される自己診断処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施の形態に係る車両用内燃機関の制御装置は、所定の診断条件が成立すると、排気ガス浄化装置の自己診断を行う車両用内燃機関の制御装置であって、車両の走行中、他の地点と比べて診断条件が成立する頻度の高い地点を診断好適地としたとき、ナビゲーション装置により診断好適地を通過する走行経路が設定された場合、車両の走行中、診断好適地に到達する前に診断条件が成立しても車両が診断好適地に到達するまで自己診断を保留し、診断好適地に到達すると自己診断を実施する自己診断部を備えることを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係る車両用駆動装置の制御装置は、車両用内燃機関の自己診断を中断させずに完了させる確率を高めることができ、排気ガスの浄化性能の低下や燃費の悪化を防止することができる。
【実施例0010】
以下、本発明の一実施例に係る車両用内燃機関の制御装置を備えた車両について図面を参照して説明する。
【0011】
図1に示すように、車両1は、車両用内燃機関としてのエンジン2と、吸気管3と、排気管4と、制御装置10と、を含んで構成されている。
【0012】
エンジン2には、気筒としてのシリンダ21が形成されている。シリンダ21には、このシリンダ21内を上下に往復動可能なピストン22が収納されている。また、シリンダ21の上部には、燃焼室23が設けられている。
【0013】
エンジン2は、シリンダ21内でピストン22が2往復する間に、吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程からなる一連の4行程を行なう、いわゆる4サイクルのガソリンエンジンである。
【0014】
ピストン22は、コネクティングロッド24を介してクランクシャフト2aと連結している。コネクティングロッド24は、ピストン22の往復運動をクランクシャフト2aの回転運動に変換するようになっている。エンジン2は、車両1の駆動源として構成されている。
【0015】
エンジン2には、点火プラグ25と、吸気ポート26と、排気ポート27とが設けられている。点火プラグ25は、燃焼室23内に電極を突出させた状態でシリンダヘッドに固定され、制御装置10によってその点火時期が調整されるようになっている。
【0016】
吸気ポート26には、インジェクタ28が設けられている。インジェクタ28は、図示しない燃料タンクから燃料ポンプによって供給された燃料を燃焼室23内に噴射する、いわゆるポート噴射式の燃料噴射弁である。
【0017】
吸気ポート26には、後述する吸気管3内の吸気通路3aが連通している。吸気ポート26には、吸気バルブ26aが設けられている。吸気バルブ26aは、吸気通路3aと燃焼室23とを連通または遮断するように開閉されるようになっている。
【0018】
排気ポート27には、後述する排気管4内の排気通路4aが連通している。排気ポート27には、排気バルブ27aが設けられている。排気バルブ27aは、排気通路4aと燃焼室23とを連通または遮断するように開閉されるようになっている。
【0019】
吸気管3は、エンジン2に接続されており、内部に吸気通路3aが形成されている。吸気管3には、空気の吸入方向上流側から順に、エアクリーナ31、エアフロセンサ32、スロットルバルブ33が取り付けられている。
【0020】
エアクリーナ31は、吸気に含まれる塵などの不純物を濾過する。エアフロセンサ32は、制御装置10に電気的に接続され、吸気通路3aを流れる吸気の流量である吸入空気量を検出して、その検出結果を制御装置10に出力する。スロットルバルブ33は、制御装置10に電気的に接続され、制御装置10からの指令信号に応じてスロットル開度が制御されることで、エンジン2への吸気量を調整する。
【0021】
排気管4は、エンジン2に接続されており、内部に排気通路4aが形成されている。排気管4には、排気の流れる排気方向上流側から順に、フロント空燃比センサ41、第1触媒42、リア空燃比センサ43、及び第2触媒44が取り付けられている。フロント空燃比センサ41とリア空燃比センサ43とは、排気管4において第1触媒42を挟むように配置されている。
【0022】
フロント空燃比センサ41は、第1触媒42よりも排気方向上流側における排気中の空燃比を検出するセンサであり、例えばO2センサ又はA/Fセンサによって構成されている。第1触媒42は、排気ガスを浄化する三元触媒からなる。
【0023】
リア空燃比センサ43は、第1触媒42よりも排気方向下流側における排気中の空燃比を検出するセンサであり、例えばO2センサ又はA/Fセンサによって構成されている。第2触媒44は、排気ガスを浄化する三元触媒からなる。
【0024】
本実施例において、フロント空燃比センサ41、第1触媒42、リア空燃比センサ43及び第2触媒44は、排気ガス浄化装置40を構成する。排気ガス浄化装置40の構成としては、前述した構成に限らず、例えば車両1がEGR装置を備える場合には、当該EGR装置が有するEGRバルブを排気ガス浄化装置40の構成に含めてもよい。
【0025】
制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0026】
コンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットを制御装置10として機能させるためのプログラムが格納されている。すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、当該コンピュータユニットは、本実施例における制御装置10として機能する。
【0027】
制御装置10には、上述したエアフロセンサ32、フロント空燃比センサ41及びリア空燃比センサ43に加えて、スロットルセンサ11、クランク角センサ12及び車速センサ13等の各種センサ類が接続されている。
【0028】
スロットルセンサ11は、スロットルバルブ33の開度であるスロットル開度を検出する。クランク角センサ12は、エンジン2のクランクシャフト2aの回転角(以下、「クランク角」という)を検出する。制御装置10は、クランク角センサ12から入力されたクランク角を示す情報に基づきエンジン2の回転数であるエンジン回転数を算出する。車速センサ13は、車両1の速度である車速を検出する。
【0029】
制御装置10には、点火プラグ25、インジェクタ28、スロットルバルブ33及びナビゲーション装置15等の各種機器類が接続されている。
【0030】
制御装置10は、所定の診断条件が成立すると、排気ガス浄化装置40の自己診断を行う自己診断部101としての機能を有する。所定の診断条件としては、エンジン回転数とエンジン負荷とで定義されるエンジン運転領域が、安定した燃焼を確保できる安定領域にあることが規定される。この他、エンジン回転数及びエンジン負荷それぞれの時間的変化率が一定量以下であることを所定の診断条件として規定してもよい。または、前述した2つの規定を満たすことを所定の診断条件として規定してもよい。
【0031】
制御装置10は、排気ガス浄化装置40の自己診断においては、診断の精度を上げるため、排気ガス浄化装置40に流入する排気の空燃比を意図的にリッチ側又はリーン側に変更するようエンジン2の運転状態を制御する。
【0032】
ここで、排気ガス浄化装置40の自己診断が開始されると、空燃比が意図的にリッチ側又はリーン側に変更されるので、当該自己診断の実行中は排気ガスに含まれる有害成分が増加したり、燃費が悪化したりする。
【0033】
例えば、排気ガス浄化装置40の自己診断が開始された後に、エンジン2の運転状態が変化してエンジン運転領域が安定領域を外れてしまうと、当該自己診断が中断されてしまう。このため、自己診断が中断される度に再診断が行われることとなる。このように、再診断が繰り返されると、排気ガスに含まれる有害成分の増加や燃費悪化が必要以上に発生してしまう。
【0034】
したがって、排気ガスの浄化性能の低下や燃費の悪化を防止するには、排気ガス浄化装置40の自己診断を中断させずに完了させる確率を高めることが望ましい。
【0035】
そこで、本実施例においては、排気ガス浄化装置40の自己診断を中断させずに完了させる確率を高めるために、診断好適地を設定し、当該診断好適地において当該自己診断を実行することとし、車両1が当該診断好適地に到達するまでは診断条件が成立しても当該自己診断を保留するようにしている。
【0036】
具体的には、制御装置10は、ナビゲーション装置15により診断好適地を通過する走行経路が設定された場合、車両1の走行中、当該診断好適地に到達する前に所定の診断条件が成立しても車両1が当該診断好適地に到達するまで排気ガス浄化装置40の自己診断を保留し、当該診断好適地に到達すると当該自己診断を実施する。
【0037】
診断好適地とは、車両1の走行中、他の地点と比べて所定の診断条件が成立する頻度の高い地点をいい、制御装置10が有する次の機能により設定される。
【0038】
制御装置10は、車両1が走行した所定地点の位置情報をナビゲーション装置15から取得し、当該所定地点の位置情報と所定の診断条件が成立した地点の位置情報とに基づいて、当該所定地点が診断好適地であるか否かを判定する診断好適地判定部103としての機能を有する。
【0039】
所定地点の位置情報としては、例えば、ナビゲーション装置15から得られるGPS位置情報を用いることができる。本実施例において、「所定地点」は、例えば車両1の走行中、所定距離間隔で通過する地点であり、または所定時間ごとに通過する地点であってもよい。また、既に記録されている所定地点に対して所定距離内の地点を「所定地点」として扱ってもよい。
【0040】
制御装置10は、各所定地点にて所定の診断条件が成立した回数を積算した値を診断条件成立回数積算値として求め、車両1が各所定地点を走行した回数を積算した値を走行回数積算値として求め、当該走行回数積算値に対する当該診断条件成立回数積算値の割合である診断好適地割合を算出する診断好適地割合算出部102としての機能を有する。
【0041】
制御装置10は、車両1が各所定地点を通過するごとに、各所定地点に対応した走行回数カウンタを1カウントアップすることにより、車両1が各所定地点を走行した回数を所定地点ごとに積算する。これにより、制御装置10は、走行回数カウンタの値を走行回数積算値として求めることができる。
【0042】
本実施例において、走行回数カウンタは、制御装置10に設けられている。なお、走行回数カウンタは、ナビゲーション装置15に設けられていてもよい。この場合、当該ナビゲーション装置15は、制御装置10に走行回数カウンタの値を送信する構成であるのが望ましい。
【0043】
制御装置10は、各所定地点にて所定の診断条件が成立するたびに、各所定地点に対応した条件成立カウンタを1カウントアップすることにより、各所定地点にて所定の診断条件が成立した回数を所定地点ごとに積算する。これにより、制御装置10は、条件成立カウンタの値を診断条件成立回数積算値として求めることができる。
【0044】
本実施例において、条件成立カウンタは、制御装置10に設けられている。なお、条件成立カウンタは、ナビゲーション装置15に設けられていてもよい。この場合、当該ナビゲーション装置15は、制御装置10に条件成立カウンタの値を送信する構成であるのが望ましい。
【0045】
制御装置10は、当該走行回数積算値に対する当該診断条件成立回数積算値の割合(以下、「診断好適地割合」という)が所定の割合より大きい所定地点を診断好適地と判定する。
【0046】
ただし、制御装置10は、複数の所定地点のうち、走行回数積算値が所定値より小さい所定地点を診断好適地から除外する、すなわち、診断好適地でないと判定する。
【0047】
(診断好適地割合の算出)
次に、図2を参照して、本実施例の制御装置10によって診断好適地割合を算出する処理の流れについて説明する。
【0048】
図2に示すように、制御装置10は、位置情報(x(n),y(n))で示される所定地点を車両1が通過したか否かを判定する(ステップS1)。位置情報(x(n),y(n))は、ナビゲーション装置15又は制御装置10に記録された複数の所定地点のうちのいずれかの位置情報である。つまり、制御装置10は、ステップS1において、既に記録済みの複数の所定地点のうちのいずれかを通過したか否かを判定している。
【0049】
ただし、車両1が上記記録済みの複数の所定地点のいずれでもない地点を通過する場合には、制御装置10は、ステップS1において、現在の車両1の位置が、車両1の走行中、所定距離間隔で通過する地点に該当するか否か、つまり、前回所定地点として記録された地点から所定距離を移動した地点であるか否かを判定する。そして、ナビゲーション装置15又は制御装置10は、ステップS1において前回所定地点として記録された地点から所定距離を移動した地点を新たな所定地点として記録する。
【0050】
制御装置10は、ステップS1において位置情報(x(n),y(n))で示される所定地点を車両1が通過していないと判定した場合には、処理をステップS1に戻す。
【0051】
制御装置10は、ステップS1において位置情報(x(n),y(n))で示される所定地点を車両1が通過したと判定した場合には、走行回数カウンタMpDen(x(n),y(n))を1カウントアップする(ステップS2)。すなわち、制御装置10は、車両1が通過した位置情報(x(n),y(n))に対応する走行回数カウンタMpDen(x(n),y(n))を1カウントアップする。走行回数カウンタMpDenは、記録された所定地点に対応するように各所定地点分、設けられている。
【0052】
次いで、制御装置10は、ステップS1において通過したと判定された位置情報(x(n),y(n))で示される所定地点にて、所定の診断条件が成立しているか否かを判定する(ステップS3)。
【0053】
制御装置10は、ステップS3において所定の診断条件が成立していないと判定した場合には、条件成立カウンタMpNum(x(n),y(n))をカウントアップせずに前回値に維持して(ステップS4)、ステップS6の処理に移行する。
【0054】
制御装置10は、ステップS3において所定の診断条件が成立していると判定した場合には、条件成立カウンタMpNum(x(n),y(n))を1カウントアップして(ステップS5)、ステップS6の処理に移行する。
【0055】
ステップS6において、制御装置10は、条件成立カウンタMpNum(x(n),y(n))の値すなわち診断条件成立回数積算値を、走行回数カウンタMpDen(x(n),y(n))の値すなわち走行回数積算値で除算することにより、ステップS1において通過したと判定された位置情報(x(n),y(n))で示される所定地点における診断好適地割合MpRat(x(n),y(n))を算出して(ステップS6)、本処理を終了する。
【0056】
(診断好適地判定処理)
次に、図3を参照して、本実施例の制御装置10によって実行される診断好適地判定処理の流れについて説明する。
【0057】
図3に示すように、制御装置10は、走行回数カウンタMpDen(x(n),y(n))の値が所定値Npas以上か否かを判定する(ステップS11)。
【0058】
制御装置10は、ステップS11において走行回数カウンタMpDen(x(n),y(n))の値が所定値Npas以上でないと判定した場合には、当該位置情報(x(n),y(n))で示される所定地点が診断好適地でないとして、診断好適地判定を不成立にして(ステップS12)、本処理を終了する。
【0059】
制御装置10は、ステップS11において走行回数カウンタMpDen(x(n),y(n))の値が所定値Npas以上であると判定した場合には、診断好適地割合MpRat(x(n),y(n))が所定の割合Rdgn以上であるか否かを判定する(ステップS13)。
【0060】
制御装置10は、ステップS13において診断好適地割合MpRat(x(n),y(n))が所定の割合Rdgn以上でないと判定した場合には、当該位置情報(x(n),y(n))で示される所定地点が診断好適地でないとして、診断好適地判定を不成立にして(ステップS12)、本処理を終了する。
【0061】
制御装置10は、ステップS13において診断好適地割合MpRat(x(n),y(n))が所定の割合Rdgn以上であると判定した場合には、当該位置情報(x(n),y(n))で示される所定地点が診断好適地であるとして、診断好適地判定を成立にして(ステップS14)、本処理を終了する。
【0062】
(自己診断処理)
次に、図4を参照して、本実施例の制御装置10によって実行される自己診断処理の流れについて説明する。エンジンが始動してから停止するまでを1ドライビングサイクルとした場合、図4の自己診断処理は、例えば、車両1の1ドライビングサイクルごとに少なくとも1回実行される。
【0063】
制御装置10は、エンジン2の始動(以下、「エンジン始動」という)から所定時間T1[sec]が経過したか否かを判定する(ステップS21)。
【0064】
制御装置10は、ステップS21においてエンジン始動から所定時間T1[sec]が経過していないと判定した場合には、ナビゲーション装置15への目的地設定が完了したか否かを判定する(ステップS22)。
【0065】
制御装置10は、ステップS22においてナビゲーション装置15への目的地設定が完了していないと判定した場合には、ステップS21に処理を戻す。これにより、制御装置10は、エンジン始動から所定時間T1[sec]するまでにナビゲーション装置15への目的地設定が完了したか否かを監視している。
【0066】
制御装置10は、ステップS22においてナビゲーション装置15への目的地設定が完了したと判定した場合には、すなわち、エンジン始動から所定時間T1[sec]するまでにナビゲーション装置15への目的地設定が完了した場合には、処理をステップS26に移行する。
【0067】
これに対し、制御装置10は、ナビゲーション装置15への目的地設定が行われずに、ステップS21においてエンジン始動から所定時間T1[sec]が経過したと判定した場合には、運転者がナビゲーション装置15による経路案内を使用する意思がないものと判断して処理をステップS23に移行する。
【0068】
所定時間T1[sec]は、車両1の1ドライビングサイクルにおいて確実な診断を確保する目的で設けられた時間制限であり、例えば、診断頻度算出のためのドライビングサイクル定義の最小時間に設定されるのが好ましい。所定時間T1[sec]は、第1の時間に相当する。
【0069】
ステップS23において、制御装置10は、所定の診断条件が成立したか否かを判定する。制御装置10は、ステップS23において所定の診断条件が成立していないと判定した場合には、再度、ステップS23の処理を行う。すなわち、制御装置10は、所定の診断条件が成立するまでステップS23の処理を繰り返す。
【0070】
制御装置10は、ステップS23において所定の診断条件が成立したと判定した場合には、排気ガス浄化装置40の自己診断を行う(ステップS24)。
【0071】
次いで、制御装置10は、ステップS24で開始された自己診断が完了したか否かを判定する(ステップS25)。制御装置10は、ステップS25において自己診断が完了していないと判定した場合には、処理をステップS23に戻す。制御装置10は、ステップS25において自己診断が完了したと判定した場合には、自己診断処理を終了する。
【0072】
このように、制御装置10は、ステップS23からステップS25において、車両1が診断好適地にあるか否かに関わらず、所定の診断条件が成立した時点で排気ガス浄化装置40の自己診断を行う。
【0073】
一方、ステップS26において、制御装置10は、エンジン始動から所定時間T2[sec]が経過したか否かを判定する。制御装置10は、ステップS26においてエンジン始動から所定時間T2[sec]が経過したと判定した場合には、処理をステップS23に移行する。
【0074】
これにより、制御装置10は、ナビゲーション装置15による目的地の設定が完了した後、診断好適地に到達する前にエンジン始動から所定時間T2[sec]が経過した場合、車両1が診断好適地にあるか否かに関わらず、所定の診断条件が成立した時点で排気ガス浄化装置40の自己診断を行う。所定時間T2[sec]は、所定時間T1[sec]より長い時間であり、第2の時間に相当する。
【0075】
制御装置10は、ステップS26においてエンジン始動から所定時間T2[sec]が経過していないと判定した場合には、ナビゲーション装置15による経路案内中であるか否かを判定する(ステップS27)。
【0076】
制御装置10は、ステップS27においてナビゲーション装置15による経路案内中でないと判定した場合には、ナビゲーション装置15による経路案内がキャンセルされたものと判断して、処理をステップS23に移行する。
【0077】
これにより、制御装置10は、ナビゲーション装置15による目的地の設定が完了した後、診断好適地に到達する前にナビゲーション装置15による経路案内がキャンセルされた場合、車両1が診断好適地にあるか否かに関わらず、所定の診断条件が成立した時点で排気ガス浄化装置40の自己診断を行う。
【0078】
制御装置10は、ステップS27においてナビゲーション装置15による経路案内中であると判定した場合には、ナビゲーション装置15による走行経路案内中に、ナビゲーション装置15により設定された走行経路である設定経路を車両1が逸脱することによって走行経路の自動修正が所定回数Np[回]以上実施されたか否かを判定する(ステップS28)。
【0079】
制御装置10は、ステップS28において走行経路の自動修正が所定回数Np[回]以上実施されたと判定した場合には、運転者がナビゲーション装置15による経路案内に従っていないものと判断して、処理をステップS23に移行する。
【0080】
これにより、制御装置10は、ナビゲーション装置15による目的地の設定が完了した後、運転者がナビゲーション装置15による経路案内に従っていない場合には一定時間以内に診断好適地に到達できない可能性が高いと判断して、車両1が診断好適地にあるか否かに関わらず、所定の診断条件が成立した時点で排気ガス浄化装置40の自己診断を行う。
【0081】
制御装置10は、ステップS28において走行経路の自動修正が所定回数Np[回]以上実施されていないと判定した場合には、出発地点からの推定経過時間である所定時間T1からT2[sec]の間の経路上に診断好適地があるか否かを判定する(ステップS29)。すなわち、制御装置10は、ステップS29において所定時間T1からT2[sec]の間に診断好適地に到達可能か否かを判定する。
【0082】
制御装置10は、ステップS29において出発地点からの推定経過時間である所定時間T1からT2[sec]の間の経路上に診断好適地がないと判定した場合には、処理をステップS23に移行する。
【0083】
これにより、制御装置10は、ナビゲーション装置15による目的地の設定が完了した後、出発地点からの推定経過時間である所定時間T1からT2[sec]の間の経路上に診断好適地がないと判定した場合には、交通渋滞や経路変更などにより一定時間以内に診断好適地に到達できない可能性が高いと判断して、車両1が診断好適地にあるか否かに関わらず、所定の診断条件が成立した時点で排気ガス浄化装置40の自己診断を行う。
【0084】
制御装置10は、ステップS29において出発地点からの推定経過時間である所定時間T1からT2[sec]の間の経路上に診断好適地があると判定した場合には、車両1が診断好適地に到達したか否かを判定する(ステップS30)。
【0085】
制御装置10は、ステップS30において車両1が診断好適地に到達していないと判定した場合には、処理をステップS26に戻す。これにより、車両1が診断好適地に到達するまでは排気ガス浄化装置40の自己診断の実施が保留される。
【0086】
制御装置10は、ステップS30において車両1が診断好適地に到達したと判定した場合には、所定の診断条件が成立したか否かを判定する(ステップS31)。制御装置10は、ステップS31において所定の診断条件が成立していないと判定した場合には、処理をステップS26に戻す。
【0087】
制御装置10は、ステップS31において所定の診断条件が成立したと判定した場合には、排気ガス浄化装置40の自己診断を行う(ステップS32)。
【0088】
次いで、制御装置10は、ステップS32で開始された自己診断が完了したか否かを判定する(ステップS33)。制御装置10は、ステップS33において自己診断が完了していないと判定した場合には、処理をステップS31に戻す。制御装置10は、ステップS33において自己診断が完了したと判定した場合には、自己診断処理を終了する。
【0089】
以上のように、本実施例に係る車両用内燃機関の制御装置は、ナビゲーション装置15により診断好適地を通過する走行経路が設定された場合、車両1の走行中、診断好適地に到達する前に診断条件が成立しても車両1が診断好適地に到達するまで排気ガス浄化装置40の自己診断を保留し、診断好適地に到達すると排気ガス浄化装置40の自己診断を実施する自己診断部101としての機能を有する構成である。
【0090】
この構成により、本実施例に係る車両用内燃機関の制御装置は、エンジン2の運転状況が安定しており、確実に排気ガス浄化装置40の自己診断を完了できる可能性の高い診断好適地にて自己診断を実施することができる。
【0091】
これにより、自己診断が未完了となる回数を減少させて、自己診断を中断させずに完了させる確率を高めることができ、排気ガスの浄化性能の低下や燃費の悪化を防止することができる。
【0092】
また、本実施例に係る車両用内燃機関の制御装置は、車両1が走行した所定地点の位置情報をナビゲーション装置15から取得し、当該所定地点の位置情報と所定の診断条件が成立した地点の位置情報とに基づいて、当該所定地点が診断好適地であるか否かを判定する診断好適地判定部103としての機能を有する構成である。
【0093】
この構成により、本実施例に係る車両用内燃機関の制御装置は、排気ガス浄化装置40の自己診断を完了できる可能性の高い所定地点を、診断好適地として把握することができる。
【0094】
また、本実施例に係る車両用内燃機関の制御装置は、車両1が所定地点を走行した回数を積算した走行回数積算値が所定値より小さい所定地点を診断好適地から除外するので、車両1が走行する頻度の高い地点を診断好適地に設定でき、診断好適地にて自己診断が実施される頻度を高くすることができる。
【0095】
また、本実施例に係る車両用内燃機関の制御装置は、診断好適地割合が所定の割合より大きい所定地点を診断好適地と判定するので、診断好適地を選定する際の信頼性を向上することができる。
【0096】
また、本実施例に係る車両用内燃機関の制御装置は、エンジン始動か所定時間T1[sec]が経過するまでにナビゲーション装置15による目的地の設定が完了しない場合、車両1が診断好適地にあるか否かに関わらず、所定の診断条件が成立した時点で排気ガス浄化装置40の自己診断を行うよう構成されている。
【0097】
この構成により、本実施例に係る車両用内燃機関の制御装置は、所定の診断条件が成立すれば自己診断を行うため、自己診断を所定の時間毎に実施することができる。
【0098】
また、本実施例に係る車両用内燃機関の制御装置は、ナビゲーション装置15による目的地の設定が完了した後、診断好適地に到達する前にエンジン始動から所定時間T2[sec]が経過した場合、車両1が診断好適地にあるか否かに関わらず、所定の診断条件が成立した時点で排気ガス浄化装置40の自己診断を行うよう構成されている。
【0099】
この構成により、本実施例に係る車両用内燃機関の制御装置は、所定の診断条件が成立すれば自己診断を行うため、自己診断を所定の時間毎に実施することができる。
【0100】
また、本実施例に係る車両用内燃機関の制御装置は、ナビゲーション装置15による走行経路案内中に、ナビゲーション装置15による走行経路の自動修正が所定回数Np[回]以上実施された場合、車両1が診断好適地にあるか否かに関わらず、所定の診断条件が成立した時点で排気ガス浄化装置40の自己診断を行うよう構成されている。
【0101】
この構成により、本実施例に係る車両用内燃機関の制御装置は、運転者がナビゲーション装置15による経路案内に従っていないため一定時間以内に診断好適地に到達できない可能性が高い場合には、所定の診断条件が成立した時点で自己診断を行うため、自己診断を所定の時間毎に実施することができる。
【0102】
また、本実施例に係る車両用内燃機関の制御装置は、出発地点からの推定経過時間である所定時間T1からT2[sec]の間の経路上に診断好適地がない場合には、車両1が診断好適地にあるか否かに関わらず、所定の診断条件が成立した時点で排気ガス浄化装置40の自己診断を行うよう構成されている。
【0103】
この構成により、本実施例に係る車両用内燃機関の制御装置は、交通渋滞や経路変更などにより一定時間以内に診断好適地に到達できない可能性が高い場合には、所定の診断条件が成立した時点で自己診断を行うため、自己診断を所定の時間毎に実施することができる。
【0104】
なお、本実施例においては、制御装置10の一機能として診断好適地割合算出部102を設けた例について説明したが、これに限らず、ナビゲーション装置15が診断好適地割合算出部102としての機能を有する構成であってもよい。この場合、走行回数カウンタ及び条件成立カウンタは、ナビゲーション装置15に設けられているのが望ましい。
【0105】
また、車両1は、車車間通信機能や、インターネットへの常時接続機能を有する車両で構成されていてもよい。この場合、制御装置10は、車車間通信機能やインターネットへの常時接続機能を利用して、他車から診断好適地の情報を取得したり、他車に対し診断好適地の情報を送信したりすることができる。これにより、走行経験のない経路を走行する場合や新規購入した車両で走行する場合であっても、診断好適地の設定が可能となる。
【0106】
また、診断好適地判定処理において、有料道路や高速道路、交通信号等の地図情報を追加で利用して診断好適地判定を行ってもよい。この場合、診断好適地判定の精度を向上させることができる。
【0107】
また、図2のステップS3において診断好適地判定のための用いられる所定の診断条件は、通常の診断条件(例えば、図4のステップS23で用いられる診断条件)と異なる診断条件であってもよい。例えば、診断好適地判定のための用いられる所定の診断条件は、通常の診断条件と比べて診断精度向上に重点を置いた領域に設定される。これに対し、通常の診断条件は、診断頻度と診断精度との両方を確保できるような領域に設定される。
【0108】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0109】
1 車両
2 エンジン(車両用内燃機関)
10 制御装置
15 ナビゲーション装置
41 フロント空燃比センサ
42 第1触媒
43 リア空燃比センサ
44 第2触媒
101 自己診断部
102 診断好適地割合算出部
103 診断好適地判定部
図1
図2
図3
図4