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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042431
(43)【公開日】2023-03-27
(54)【発明の名称】発電システム及び移動住宅
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20230317BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20230317BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20230317BHJP
   H01M 8/04313 20160101ALI20230317BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20230317BHJP
   F24H 1/00 20220101ALI20230317BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20230317BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20230317BHJP
【FI】
H01M8/04 J
H01M8/04 Z
H01M8/0432
H01M8/04746
H01M8/04313
H01M8/00 Z
F24H1/00 631A
H01M8/10 101
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149723
(22)【出願日】2021-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】原田 真宏
(72)【発明者】
【氏名】黒田 宏
(72)【発明者】
【氏名】山本 義徳
【テーマコード(参考)】
3L122
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
3L122AA02
3L122AA03
3L122AA28
3L122AA73
3L122AB29
5H126BB06
5H127AA06
5H127AA07
5H127AB02
5H127AB04
5H127AB23
5H127AB29
5H127BA01
5H127DB98
5H127DC93
5H127GG03
5H127GG09
(57)【要約】
【課題】断水が生じた場合であっても、燃料電池の発電の継続を図ることができる発電システム及び移動住宅を提供する。
【解決手段】水を貯留可能な貯水タンク10と、燃料を用いて発電可能であり、貯水タンク10から供給される水を利用して、発電に伴って生じる排熱を温水として外部に排出可能な燃料電池20と、燃料電池20から排出された温水を貯留可能なバッファータンク30と、バッファータンク30から貯水タンク10に水を供給可能に形成された配管40と、を具備する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を貯留可能な貯水タンクと、
燃料を用いて発電可能であり、前記貯水タンクから供給される水を利用して、発電に伴って生じる排熱を温水として外部に排出可能な燃料電池と、
前記燃料電池から排出された温水を貯留可能なバッファータンクと、
前記バッファータンクから前記貯水タンクに水を供給可能に形成された流路と、
を具備する、
発電システム。
【請求項2】
前記バッファータンクから前記貯水タンクへの水の供給の可否を切り替える第一切替部を具備する、
請求項1に記載の発電システム。
【請求項3】
前記バッファータンク内の温水が所定温度まで低下したときに、前記バッファータンクから前記貯水タンクへの水の供給を可能とするように前記第一切替部を制御する制御部を具備する、
請求項2に記載の発電システム。
【請求項4】
前記貯水タンクは、上水道と接続されている、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の発電システム。
【請求項5】
前記発電システムは、
当該燃料電池から排出される温水を利用して給湯先に給湯可能であり、
前記上水道から前記貯水タンクに上水を供給可能な場合、前記燃料電池から前記給湯先への温水の供給を可能とするとともに前記燃料電池から前記バッファータンクへの温水の供給を不可とし、前記上水道から前記貯水タンクに上水を供給不可な場合、前記燃料電池から前記給湯先への温水の供給を不可とするとともに前記燃料電池から前記バッファータンクへの温水の供給を可能とする第二切替部を具備する、
請求項4に記載の発電システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の発電システムを具備する移動住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池を具備する発電システム及び移動住宅の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池を具備する発電システムの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、燃料を用いて発電可能な燃料電池を具備するシステムが記載されている。前記システムにおいては、燃料電池で発電された電力を、家庭内負荷に供給することができる。
【0004】
一方で、燃料電池の発電を継続させるためには、排熱利用のための水の供給が必要であり、また排熱が満蓄になった場合の当該排熱の定期的な排出が必要である。しかしながら、災害時には、上水道が断水して燃料電池に水が供給できなくなることで、燃料電池の発電を継続できない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-48992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、断水が生じた場合であっても、燃料電池の発電の継続を図ることができる発電システム及び移動住宅を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、水を貯留可能な貯水タンクと、燃料を用いて発電可能であり、前記貯水タンクから供給される水を利用して、発電に伴って生じる排熱を温水として外部に排出可能な燃料電池と、前記燃料電池から排出された温水を貯留可能なバッファータンクと、前記バッファータンクから前記貯水タンクに水を供給可能に形成された流路と、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記バッファータンクから前記貯水タンクへの水の供給の可否を切り替える第一切替部を具備するものである。
【0010】
請求項3においては、前記バッファータンク内の温水が所定温度まで低下したときに、前記バッファータンクから前記貯水タンクへの水の供給を可能とするように前記第一切替部を制御する制御部を具備するものである。
【0011】
請求項4においては、前記貯水タンクは、上水道と接続されているものである。
【0012】
請求項5においては、前記発電システムは、当該燃料電池から排出される温水を利用して給湯先に給湯可能であり、前記上水道から前記貯水タンクに上水を供給可能な場合、前記燃料電池から前記給湯先への温水の供給を可能とするとともに前記燃料電池から前記バッファータンクへの温水の供給を不可とし、前記上水道から前記貯水タンクに上水を供給不可な場合、前記燃料電池から前記給湯先への温水の供給を不可とするとともに前記燃料電池から前記バッファータンクへの温水の供給を可能とする第二切替部を具備するものである。
【0013】
請求項6においては、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の発電システムを具備する移動住宅であるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
請求項1においては、断水が生じた場合であっても、燃料電池の発電の継続を図ることができる。
【0016】
請求項2においては、断水が生じた場合において、燃料電池の発電の継続を図り易くすることができる。
【0017】
請求項3においては、断水が生じた場合において、燃料電池の発電の継続を図り易くすることができる。
【0018】
請求項4においては、通常時においては、上水を利用して燃料電池の排熱を取り除くことにより、燃料電池の発電を継続することができる。
【0019】
請求項5においては、燃料電池の排熱の利用を図りつつ、燃料電池の発電の継続を図ることができる。
【0020】
請求項6においては、断水が生じた場合であっても、燃料電池の発電の継続を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る発電システムの構成を示したブロック図。
図2】制御部等の構成を示したブロック図。
図3】制御部による制御を示したフローチャート。
図4】通常時の水の流れを示したブロック図。
図5】断水時の水の流れを示したブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、図1及び図2を用いて、本発明の一実施形態に係る発電システム1について説明する。
【0023】
図1に示す発電システム1は、後述する燃料電池20等により発電を行うものである。本実施形態においては、発電システム1の一部の構成は、移動住宅2に設けられる。移動住宅2は、居住空間を有し、移動可能に構成される。移動住宅2は、自ら移動可能に構成されるものであってもよく、他の運搬手段(トラック等)によって運搬されることにより移動可能なものであってもよい。移動住宅2の例としては、例えばトレーラーハウス等が挙げられる。発電システム1によって発電された電力は、移動住宅2の電力負荷(例えば、照明やエアコン)に供給される。
【0024】
発電システム1は、以下に示すように構成されることにより、災害時であっても発電を継続できるように構成されている。発電システム1は、主として貯水タンク10、燃料電池20、バッファータンク30、配管40、切替部50、排水検知センサ60、温度センサ70及び制御部80を具備する。
【0025】
図1に示す貯水タンク10は、水を貯留可能なものである。貯水タンク10は、必ずしも移動住宅2に設けられる必要はなく、任意の場所に設けることができ、例えば防災拠点の施設などに設けられる。貯水タンク10は、上水道Aと接続され、上水道Aから供給される上水を貯留することができるように形成されている。より詳細には、貯水タンク10は、その中身が定期的に入れ替わるように、上水道Aから上水が供給されると同時に、供給された上水と同量の上水を排出するように構成されている。このため、貯水タンク10には、常に一定量の上水が貯留されていることとなる。
【0026】
貯水タンク10は、後述する配管40(第一配管41)を介して、移動住宅2内に設けられた水道Bと接続される。このように貯水タンク10が設けられることにより、上水道Aから供給される上水を、貯水タンク10を介して水道Bに供給することができる。
【0027】
また、貯水タンク10は、上水道Aと接続された部分とは別に給水口を備えている。これにより、貯水タンク10内の上水が不足した場合に、当該給水口から貯水タンク10に水(支援物資の水など)を給水することができる。
【0028】
図1に示す燃料電池20は、水素等のガス燃料を用いて発電する装置である。本実施形態においては、燃料電池20は、移動住宅2に設けられる。ガス燃料としてはLPガスが用いられる。燃料電池20は、発電ユニット21及び貯湯タンク22を具備する。
【0029】
発電ユニット21は、燃料電池20の発電部である。発電ユニット21は、固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)又は固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)や制御部等により構成される。
【0030】
貯湯タンク22は、発電ユニット21の発電時に発生する熱(排熱)を、温水として蓄熱するものである。貯湯タンク22は、後述する配管40(第一配管41及び第二配管42)を介して、貯水タンク10と接続される。貯水タンク10から供給された水は、貯湯タンク22内において、発電ユニット21の発電時に発生する熱(排熱)によって加熱される。貯湯タンク22は、加熱された当該水(温水)を貯湯する。貯湯タンク22は、後述する配管40(第三配管43)を介して、移動住宅2内に設けられた給湯部C(シャワーや風呂等の給湯を行うところ)と接続される。これにより、貯湯タンク22に貯留される温水を、給湯部Cに供給することができる。
【0031】
このように構成された燃料電池20は、貯湯タンク22の貯湯量が最大容量に達すると(貯湯タンク22が満タンになり、これ以上蓄熱ができない状態となると)、発電ユニット21による発電ができなくなる。よって、燃料電池20は、貯湯タンク22の貯湯量が最大容量に達すると、貯湯タンク22から温水を排出するように構成されている。このようにして、燃料電池20は、貯水タンク10から供給される水を利用して、発電に伴って生じる排熱を温水として外部に排出することで、発電を継続している。
【0032】
図1に示すバッファータンク30は、燃料電池20から排出された温水を貯留可能なものである。バッファータンク30は、必ずしも移動住宅2に設けられる必要はなく、任意の場所に設けることができ、例えば防災拠点の施設などに設けられる。バッファータンク30は、後述する配管40(第三配管43及び第四配管44)を介して、貯湯タンク22と接続される。これにより、貯湯タンク22から排出される温水をバッファータンク30に供給することができる。また、バッファータンク30は、後述する配管40(第五配管45)を介して、貯水タンク10と接続される。これにより、バッファータンク30から排出される水を貯水タンク10に供給することができる。
【0033】
また、バッファータンク30は、できるだけ放熱し易い材料で形成され、例えばアルミニウム製とされる。また、バッファータンク30は、できるだけ放熱し易い構造を有するように形成され、例えば放熱フィンを有するように形成される。すなわち、バッファータンク30は、当該バッファータンク30内の温水の冷却を促進するように形成されている。
【0034】
図1に示す配管40は、水の流路を構成するものである。配管40は、第一配管41、第二配管42、第三配管43、第四配管44及び第五配管45を具備する。
【0035】
第一配管41は、貯水タンク10と水道Bとを接続するように設けられる。このように第一配管41が設けられることにより、貯水タンク10に貯留された水を、移動住宅2内に設けられた水道Bに供給することができる。したがって、移動住宅2内で上水を使用することができる。
【0036】
第二配管42は、第一配管41の中途部と燃料電池20とを接続するように設けられる。このように第二配管42が設けられることにより、貯水タンク10に貯留された水を、燃料電池20に供給することができる。
【0037】
第三配管43は、燃料電池20の貯湯タンク22と給湯部Cとを接続するように設けられる。このように第三配管43が設けられることにより、貯湯タンク22から排出される温水を、移動住宅2内に設けられた給湯部Cに供給することができる。したがって、移動住宅2内で湯を使用することができる。
【0038】
第四配管44は、第三配管43の中途部とバッファータンク30とを接続するように設けられる。このように第四配管44が設けられることにより、燃料電池20から排出される温水を、バッファータンク30に供給することができる。
【0039】
第五配管45は、バッファータンク30と貯水タンク10とを接続するように設けられる。これにより、第五配管45を介して、バッファータンク30に貯留される水を、貯水タンク10に供給することができる。
【0040】
このように形成された配管40には、当該配管40内に水を流通させるためのポンプ(不図示)が適宜設けられており、当該ポンプを動作させることにより、配管40を介して、貯水タンク10、燃料電池20(貯湯タンク22)、バッファータンク30の間で水を循環させることができる。
【0041】
図1及び図2に示す切替部50は、配管40における水の流通の可否を切り替えるものである。切替部50は、第一バルブ51、第二バルブ52、第三バルブ53及び第四バルブ54を具備する。
【0042】
第一バルブ51は、第一配管41の中途部に設けられる。第一バルブ51は、貯水タンク10から水道Bへの水の供給の可否を切替え可能に設けられる。具体的には、第一バルブ51を開くことで、貯水タンク10から水道Bへの水の供給を可能とする。一方、第一バルブ51を閉じることで、貯水タンク10から水道Bへの水の供給を不可とする。
【0043】
第二バルブ52は、第三配管43の中途部に設けられる。第二バルブ52は、燃料電池20から給湯部Cへの水(温水)の供給の可否を切替え可能に設けられる。具体的には、第二バルブ52を開くことで、燃料電池20から給湯部Cへの水の供給を可能とする。一方、第二バルブ52を閉じることで、燃料電池20から給湯部Cへの水の供給を不可とする。
【0044】
第三バルブ53は、第四配管44の中途部に設けられる。第三バルブ53は、燃料電池20からバッファータンク30への水の供給の可否を切替え可能に設けられる。具体的には、第三バルブ53を開くことで、燃料電池20からバッファータンク30への水の供給を可能とする。一方、第三バルブ53を閉じることで、燃料電池20からバッファータンク30への水の供給を不可とする。
【0045】
第四バルブ54は、第五配管45の中途部に設けられる。第四バルブ54は、バッファータンク30から貯水タンク10への水の供給の可否を切替え可能に設けられる。具体的には、第四バルブ54を開くことで、バッファータンク30から貯水タンク10への水の供給を可能とする。一方、第四バルブ54を閉じることで、バッファータンク30から貯水タンク10への水の供給を不可とする。
【0046】
図1及び図2に示す排水検知センサ60は、燃料電池20の貯湯タンク22からの排水を検出するものである。排水検知センサ60は、第三配管43に設けられる。より詳細には、排水検知センサ60は、第三配管43と第四配管44とが接続される部分と、貯湯タンク22との間に設けられる。
【0047】
図1及び図2に示す温度センサ70は、バッファータンク30に貯留される水の温度を検知(計測)するものである。温度センサ70は、バッファータンク30の内部に設けられる。
【0048】
図2に示す制御部80は、切替部50の動作を制御するものである。制御部80は、排水検知センサ60及び温度センサ70の検出結果を入力(受信)可能に設けられる。制御部80は、排水検知センサ60及び温度センサ70の検出結果に基づいて、切替部50の動作を制御する。
【0049】
このように構成された発電システム1において、通常時(上水道Aの断水が生じていない場合。災害時であっても上水道Aから貯水タンク10に上水を供給可能な場合も含む)、燃料電池20には、上水道Aから貯水タンク10を介して上水が供給される。燃料電池20は、発電に伴って生じる排熱及び供給された上水によって生成される温水を、貯湯タンク22に貯留する。燃料電池20は、給湯部Cからの給湯需要に応じて貯湯タンク22から温水を排出し、当該温水を当該給湯部Cに供給する。そして、上述の如く、燃料電池20は、貯湯タンク22の貯湯量が最大容量に達した場合にも(貯湯タンク22が満タンになり、これ以上蓄熱ができない状態となると)、貯湯タンク22内の温水を排出する。この場合、燃料電池20から排出された温水は、給湯部Cで適宜利用され、例えば風呂に湯をためるのに利用される。このように、通常時、燃料電池20は、上水道Aから供給された上水を利用して、発電に伴って生じる排熱を外部に排出し、これにより発電を継続している。
【0050】
しかしながら、災害時には、上水道Aの断水が起こる場合がある。そうすると、上水道Aから燃料電池20に上水を供給できなくなるため、上水を利用した排熱の除去ができなくなり、発電を継続できなくなるおそれがある。
【0051】
ここで、発電システム1においては、上述の如く貯水タンク10内に常に一定量の上水が貯留されているため、断水時においても当該一定量の水が確保されている。さらに、発電システム1においては、燃料電池20から排出された温水を一時的に貯留可能なバッファータンク30を設けている。これにより、バッファータンク30内で温水の温度をある程度低下させた後、再び燃料電池20に戻すことが可能となる。よって、災害時など断水が生じた場合であっても、貯水タンク10に貯留された水を利用して(循環させて)、燃料電池20の排熱を取り除くことができる。これにより、燃料電池20の発電を継続させることができる。
【0052】
また、本実施形態に係る発電システム1においては、制御部80によって水の流れを制御している。以下、図3から図5を用いて、制御部80による制御について説明する。なお、図3に示す制御の開始時点においては、第一バルブ51及び第二バルブ52は開いており(水の流通を可能としており)、第三バルブ53及び第四バルブ54は閉じている(水の流通を不可能としている)ものとする。
【0053】
ステップS11において、制御部80は、上水道Aが断水しているか否かを判定する。
【0054】
制御部80は、図5に示すように上水道Aが断水していると判定した場合(ステップS11で「YES」)、ステップS12に移行する。一方、制御部80は、図4に示すように上水道Aが断水していないと判定した場合(ステップS11で「NO」)、図3に示す制御を終了する。
【0055】
ステップS12において、制御部80は、第一バルブ51及び第二バルブ52を閉じる。これにより、貯水タンク10から水道B及び給湯部Cへの水の供給を不可とする(図5参照)。
【0056】
制御部80は、当該ステップS12の処理を行った後、ステップS13に移行する。
【0057】
ステップS13において、制御部80は、燃料電池20から排水があったか否かを判定する。この処理において、制御部80は、排水検知センサ60の検出結果に基づいて当該判定を行う。
【0058】
ステップS14において、制御部80は、第三バルブ53を開く。これにより、燃料電池20から排出される温水が、バッファータンク30に供給される(図5参照)。
【0059】
制御部80は、当該ステップS14の処理を行った後、ステップS15に移行する。
【0060】
ステップS15において、制御部80は、バッファータンク30内の水温が所定温度以下であるか否かを判定する。前記所定温度は、燃料電池20の貯湯タンク22から排出される温水の温度(約40~50℃)よりも低い温度に設定される。また、燃料電池20に供給される水の温度が低いほど排熱を取り除き易いため、前記所定温度は、できるだけ低い温度(雰囲気温度に近い温度)に設定されることが好ましく、例えば30℃に設定される。この処理において、制御部80は、温度センサ70の検出結果に基づいて当該判定を行う。
【0061】
制御部80は、バッファータンク30内の水温が所定温度以下であると判定した場合(ステップS15で「YES」)、ステップS16に移行する。一方、制御部80は、バッファータンク30内の水温が所定温度以下でないと判定した場合(ステップS15で「NO」)、ステップS17に移行する。
【0062】
ステップS16において、制御部80は、第四バルブ54を開く。これにより、バッファータンク30内の水が、貯水タンク10に供給される(図5参照)。
【0063】
制御部80は、当該ステップS16の処理を行った後、ステップS15に処理を戻す。
【0064】
一方、ステップS17において、制御部80は、第四バルブ54を閉じる。これにより、バッファータンク30から貯水タンク10への水の供給を不可とする(図4参照)。
【0065】
なお、第四バルブ54を閉じると、貯湯タンク22から供給される温水によって、バッファータンク30内の水は増加し、一方、貯水タンク10内の水は貯湯タンク22に供給されるため、貯水タンク10内の水は減少する。このように、バッファータンク30内の水温が所定温度以下となるまでは貯水タンク10内の水が減少するため、貯水タンク10の容量は、貯水タンク10内の水がなくならない程度の容量とすることが好ましい。また、貯水タンク10内の水が不足する場合は、貯水タンク10の給水口から支援物資の水などを別途給水することができる。
【0066】
制御部80は、当該ステップS17の処理を行った後、図3に示す制御を終了する。
【0067】
このようにして切替部50等を制御することにより、貯水タンク10、燃料電池20及びバッファータンク30の間で水を循環させることができる。これにより、上水道Aが断水した場合であっても燃料電池20の発電を継続することができる。
【0068】
具体的には、本実施形態に係る発電システム1においては、図4に示すように、通常時は(図3のステップS11でNO)、第一バルブ51及び第二バルブ52を開いているので、移動住宅2内で上水やお湯の利用が可能となる。
【0069】
一方、上水道Aの断水時には(ステップS11でYES)、図5に示すように、第三バルブ53を開くことで(ステップS14)、燃料電池20から排出される温水を一旦バッファータンク30に貯留し、バッファータンク30内の水の温度が所定温度まで低下した後に(ステップS15でYES)第四バルブ54を開き(ステップS16)、当該水を貯水タンク10に戻すようにしている。このように水を循環させることにより、災害時などに断水が生じた場合であっても、当該水を利用して燃料電池20の排熱を取り除くことが可能となり、ひいては燃料電池20の発電を継続することができる。
【0070】
以上の如く、本実施形態に係る発電システム1は、
水を貯留可能な貯水タンク10と、
燃料を用いて発電可能であり、前記貯水タンク10から供給される水を利用して、発電に伴って生じる排熱を温水として外部に排出可能な燃料電池20と、
前記燃料電池20から排出された温水を貯留可能なバッファータンク30と、
前記バッファータンク30から前記貯水タンク10に水を供給可能に形成された配管40(流路)と、
を具備するものである。
【0071】
このように構成されることにより、断水が生じた場合であっても、燃料電池20の発電の継続を図ることができる。
具体的には、燃料電池20から排出された温水をバッファータンク30内に一時的に貯留することで、水温を低下させた後、(貯水タンク10を介して)再び燃料電池20に戻すことが可能となるので、災害時など断水が生じた場合であっても、貯水タンク10に貯留された水を利用して(循環させて)燃料電池20の排熱を取り除くことができる。これにより、燃料電池20の発電を継続させることができる。
【0072】
また、本実施形態に係る発電システム1は、前記バッファータンク30から前記貯水タンク10への水の供給の可否を切り替える第四バルブ54(第一切替部)を具備するものである。
【0073】
このように構成されることにより、燃料電池20の発電の継続を図り易くすることができる。
具体的には、第四バルブ54(第一切替部)によって、適切なタイミングとなるまで(例えば、バッファータンク30内の水温が所定温度(例えば30℃)以下となるまで)バッファータンク30から貯水タンク10への供給を不可とし、適切なタイミングとなったときにバッファータンク30から貯水タンク10への供給を可能とすることができる。このように、第四バルブ54(第一切替部)によってバッファータンク30から貯水タンク10への水の供給の可否を切り替えることで、燃料電池20の発電を継続させることができる。
【0074】
また、本実施形態に係る発電システム1は、前記バッファータンク30内の温水が所定温度まで低下したときに(図3のステップS15でYES)、前記バッファータンク30から前記貯水タンク10への水の供給を可能とするように前記第四バルブ54を制御する(図3のステップS16)制御部80を具備するものである。
【0075】
このように構成されることにより、燃料電池20の発電の継続を図り易くすることができる。
具体的には、燃料電池20から排出された温水を、所定温度まで低下した状態で自動的に燃料電池20に戻すことができるため、燃料電池20の排熱を取り除くことが可能となり、ひいては燃料電池20の発電を継続させることができる。
【0076】
また、前記貯水タンク10は、上水道Aと接続されているものである。
【0077】
このように構成されることにより、通常時においては、上水を利用して燃料電池20の排熱を取り除くことにより、燃料電池20の発電を継続することができる。
【0078】
また、本実施形態に係る発電システム1は、
前記燃料電池20から排出される温水を利用して給湯部C(給湯先)に給湯可能であり、
前記上水道Aから前記貯水タンク10に上水を供給可能な場合(図3のステップS11でNO)、前記燃料電池20から前記給湯部Cへの温水の供給を可能とするとともに前記燃料電池20から前記バッファータンク30への温水の供給を不可とし、前記上水道Aから前記貯水タンク10に上水を供給不可な場合(図3のステップS11でYES)、前記燃料電池20から前記給湯部Cへの温水の供給を不可とするとともに(図3のステップS12)前記燃料電池20から前記バッファータンク30への温水の供給を可能とする(図3のステップS14)第二切替部(第二バルブ52及び第三バルブ53)を具備するものである。
【0079】
このように構成されることにより、燃料電池20の排熱の利用を図りつつ、燃料電池20の発電の継続を図ることができる。
具体的には、通常時(上水道Aから貯水タンク10に上水を供給可能な場合)には、燃料電池20の排熱を給湯部C(給湯)で利用することができ、一方、断水時(上水道Aから貯水タンク10に上水を供給不可な場合)には、貯水タンク10に戻すべき水が給湯に用いられてしまうのを防止し、これにより、断水時においても燃料電池20の発電を継続することができる。
【0080】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0081】
例えば、本実施形態においては、発電システム1は、トレーラーハウス等の移動住宅2に設けられるものとしたが、これに限定されるものではなく、通常の住宅等の任意の建物に設けることができる。
【0082】
また、本実施形態においては、燃料電池20は燃料としてLPガスを使用するものとしたが、発電システム1が通常の住宅に設けられる場合、燃料電池20は燃料として都市ガスを使用するものとしてもよい。
【0083】
また、燃料電池20の貯湯タンク22とバッファータンク30との間に床暖房を設け、貯湯タンク22から排出された温水を床暖房に利用した後に、バッファータンク30に供給するようにしてもよい。これにより、バッファータンク30に供給される時点で水温は低下しているので、バッファータンク30内の水温が所定温度まで低下する時間を短くすることができる。
【0084】
また、本実施形態においては、バッファータンク30を放熱し易い材料や構造としたが、さらに貯湯タンク22とバッファータンク30とを繋ぐ第三配管43を、放熱し易い材料や構造とするようにしてもよい。
【0085】
また、本実施形態においては、1台の移動住宅2(燃料電池20)で1つの貯水タンク10及びバッファータンク30を使用するものとしたが、複数台の移動住宅2(燃料電池20)で1つの貯水タンク10及びバッファータンク30を使用するものであってもよい。
【0086】
また、発電システム1が設けられる移動住宅2(トレーラーハウス)は、発電を行う構成として、燃料電池20の他に太陽光発電部を備えていてもよい。また、移動住宅2は、燃料電池20や前記太陽光発電部で発電した電力を充放電可能な蓄電池を備えていてもよい。また、移動住宅2は、空調、冷蔵庫、照明、換気設備等を備えていてもよく、これによりグランピング等に使用することができる。また、災害が生じた場合には、移動住宅2を防災拠点とすることができる。
【0087】
また、本実施形態においては、貯水タンク10及びバッファータンク30は、防災拠点の施設に設けられるものとしたが、移動住宅2に設けられていてもよい。
【0088】
以上の如く、本実施形態に係る移動住宅2は、発電システム1を具備するものである。
【0089】
このように構成されることにより、断水が生じた場合であっても、燃料電池20の発電の継続を図ることができる。
【符号の説明】
【0090】
1 発電システム
2 移動住宅
10 貯水タンク
20 燃料電池
30 バッファータンク
40 配管
50 切替部
52 第二バルブ
53 第三バルブ
54 第四バルブ
80 制御部
図1
図2
図3
図4
図5