IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スズキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-車両用ドアの構造 図1
  • 特開-車両用ドアの構造 図2
  • 特開-車両用ドアの構造 図3
  • 特開-車両用ドアの構造 図4
  • 特開-車両用ドアの構造 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042950
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】車両用ドアの構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20230320BHJP
【FI】
B60J5/00 Q
B60J5/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150388
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】平野 達也
(72)【発明者】
【氏名】中込 陽彦
(72)【発明者】
【氏名】宮本 鉄平
(57)【要約】
【課題】衝撃荷重を受けたときに、車両用ドアが誤開放することを抑制可能にする。
【解決手段】車両用のサイドドア1のドアインナパネ2ルとドアアウタパネル7との間には、ドアラッチ20と、オープンロッド30と、リンフォースメント10と、が配置され、リンフォースメント10の前部及び後部は、ドアインナパネル2に接合され、ドアラッチ20には、レバー軸22の周り回動するラッチレバー23が設けられ、ラッチレバー23は、車両上方に回動するとオープンロッド30が上方に移動してサイドドア1が閉止状態になる。リンフォースメント10の後部には、凸部12が設けられ、凸部12の下部は、ラッチレバー23の下方に配置され、凸部12の外側端から内側に向かうに従い下方に傾斜する下側傾斜面13を有している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアインナパネルと、前記ドアインナパネルの車両外側に設けられるドアアウタパネルと、を備え、
前記ドアインナパネルと前記ドアアウタパネルとの間には、ドアラッチと、該ドアラッチに係合するロッドと、前記ドアインナパネルの長手方向に沿って延びるリンフォースメントと、が配置されており、
前記リンフォースメントの前記長手方向の両端部は、前記ドアインナパネルの前記長手方向の両端部にそれぞれ接合されている、車両用ドアの構造において、
前記ドアラッチには、レバー軸の周り回動するラッチレバーが設けられ、前記ラッチレバーは、車両上方に回動すると前記ロッドが車両上方に移動し、前記車両用ドアが閉止状態になるように構成されており、
前記リンフォースメントの後部には、車両外側に突出する凸部が設けられ、
前記凸部における下部は、前記ラッチレバーの車両下方に配置され、前記凸部の車両外側端から車両内側に向かうに従い車両下方に傾斜する下側傾斜面を有していることを特徴とする、車両用ドアの構造。
【請求項2】
前記凸部の下部における後部には、車両下方に向かうに従い車両前方且つ車両内側に傾斜する後方傾斜面が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の車両ドア構造。
【請求項3】
前記ロッドの車両上下方向の中間部には、車両外側に突出する係止部が設けられ、
前記凸部の車両上方側には、前記係止部が挿入可能な係止孔が設けられていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の車両用ドアの構造。
【請求項4】
前記凸部の車両後方に位置する前記リンフォースメントには、前記ドアインナパネルに溶接される溶接部が設けられていることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の車両用ドアの構造。
【請求項5】
前記凸部の車両下方側には、車両内側に凹む凹部が設けられ、
前記凹部の前記長手方向の長さは、前記凸部の前記長手方向の長さに比べて長く設定されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の車両ドア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
小型の車両においては、例えば車幅方向外側からの衝撃荷重(側突による衝撃荷重)を受けた場合に、車両上下方向において、上方から下方に向かう衝撃荷重がサイドドアに入力されることがある。この場合、サイドドアに設けられたドアラッチのラッチレバーが車両下方に移動する可能性がある。
【0003】
ドアの前部がヒンジを介して回動することにより開閉するタイプのサイドドアは、ドアの後部にドアラッチが設けられている。ドアラッチのラッチレバーが上下に回動することにより、上下に延びるオープンロッドが上下方向に移動し、これによりサイドドアが開放状態または閉止状態になるように構成される。一般に、ラッチレバーが上方に回動すると、サイドドアは閉止状態になる。
【0004】
上記した衝撃荷重に対して、サイドドアの剛性を向上させるために、例えば特許文献1に開示されているように、車両前後方向に延びるリンフォースメントが設けられる構造が知られている。この例におけるリンフォースメントは、膨出部と挿入孔とを有している。膨出部は、車外側に膨出し車両前後方向に帯状に延びている。この例では、側突時にドアアウタパネルが車内側に向かって変形すると、変形したドアアウタパネルによってリンフォースメントが車両内側に向かって押され移動する。このとき側面視で挿入孔に重なっているロッドの一部が、挿入孔に挿入することにより、ロッドの移動を阻み、側突時の車両用ドアの開放を防止しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-15327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記例の構造では、例えば、側突により衝撃荷重を受けたとき、リンフォースメントが意図する方向に移動しない可能性がある。リンフォースメントが意図する方向に変形しない場合、ロッドの一部分が、挿入孔に入らない可能性がある。そのため、ドアの意図しない開放を防ぐ上で、上記例の構造には改善の余地があった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、衝撃荷重を受けたときに、車両用ドアの誤開放を防止することが可能な車両用ドアの構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る車両用ドアの構造は、ドアインナパネルと、前記ドアインナパネルの車両外側に設けられるドアアウタパネルと、を備え、前記ドアインナパネルと前記ドアアウタパネルとの間には、ドアラッチと、該ドアラッチに係合するロッドと、前記ドアインナパネルの長手方向に沿って延びるリンフォースメントと、が配置されており、前記リンフォースメントの前記長手方向の両端部は、前記ドアインナパネルの前記長手方向の両端部にそれぞれ接合されている。車両用ドアの構造において、前記ドアラッチには、レバー軸の周り回動するラッチレバーが設けられ、前記ラッチレバーは、車両上方に回動すると前記ロッドが車両上方に移動し、前記車両用ドアが閉止状態になるように構成されており、前記リンフォースメントの後部には、車両外側に突出する凸部が設けられ、前記凸部における下部は、前記ラッチレバーの車両下方に配置され、前記凸部の車両外側端から車両内側に向かうに従い車両下方に傾斜する下側傾斜面を有している。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、衝撃荷重を受けたときに、車両用ドアの誤開放を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る車両用ドアの構造における一実施形態を示す正面図である。
図2図1のリンフォースメントの後部を拡大して示す拡大正面図である。
図3図2のA‐A矢視の断面図である。
図4図3の概略断面図である。
図5図2のB‐B矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る車両の車両用ドアの構造の一実施形態について、図面(図1図5)を参照しながら説明する。なお、図において、矢印Fr方向は車両前後方向における前方を示す。実施形態の説明における「前部(前端)及び後部(後端)」は、車両前後方向における前部及び後部に対応する。また、矢印Out及び矢印Inは、車幅方向外側(車両外側)及び車幅方向内側(車両内側)を示している。また、矢印Uは、車両上方を示している。
【0012】
本実施形態の車両用ドアの構造は、図1図5に示すように、車体側部に設けられたサイドドア1の構造として説明する。本実施形態のサイドドア1は、ドアインナパネル2と、ドアアウタパネル7と、リンフォースメント10と、ドアラッチ20と、オープンロッド(ロッド)30と、を備えている。当該サイドドア1の前部は、車体側部に設けられたドア開口部(図示せず)の前部に、ヒンジ(図示せず)等を介して連結されている。サイドドア1は、ヒンジに設けられた軸の周りを回動することで、車体側部に設けられたドア開口部を開閉可能に構成されている。
【0013】
ドアインナパネル2は、図1に示すように、サイドドア1を構成する金属製のパネル部材である。ドアインナパネル2は、本体部3と、窓開口部4と、ベルトライン部5と、を有している。本体部3は、複数の穴が形成された板状の部分である。本体部3には、例えば、ドアガラス(図示せず)を昇降させる装置や、ドアラッチ20等の複数の装置が取り付けられている。窓開口部4は、本体部3の車両上方側に設けられる部分であり、窓開口の周囲には、窓枠4aが設けられている。ベルトライン部5は、本体部3の上部に設けられ、車両前後方向に延びている。
【0014】
ドアアウタパネル7は、サイドドア1の最外を構成する部材で、金属材料により形成されている。ドアアウタパネル7のパネル本体の上側における後部で、ベルトライン部5のやや下方には、ドアハンドル8が設けられている。ドアハンドル8を操作することによって、車両外部からサイドドア1を開くことができる。
【0015】
リンフォースメント10は、ドアインナパネル2とドアアウタパネル7との間で、本体部3の車両上下方向の中心よりもやや上方に配置されている。当該リンフォースメント10は、図1に示すように、車両上下方向に所定の幅を有し、車両前後方向(ドアインナパネル2の長手方向)に延びている部材で、金属材料により形成されている。リンフォースメント10の前部及び後部のそれぞれは、ドアインナパネル2の本体部3の前部及び後部に接合されている。リンフォースメント10の後部は、図2に示すように、車両上下方向に延び、車両内側を臨むフランジ16が設けられており、この例では、フランジ16が、ドアインナパネル2の本体部3の後部に設けられた平面部6に、溶接されている。
【0016】
図2に示すように、フランジ16には、複数の溶接部17が設けられている。複数の溶接部17は、本体部3の平面部6に、スポット溶接される部分で、車両上下方向に互いに間隔を空けて配置されてる。この例の溶接部17は、リンフォースメント10の後部の上端から下方に3個の溶接部17が互いに間隔を空けて上下方向に並んで配置され、1つの溶接列を構成している。また、リンフォースメント10の後部の下端から下方に3個の溶接部17が互いに間隔を空けて上下方向に並んで配置され、1つの溶接列を構成している。すなわち、リンフォースメント10の後部における上部及び下部のそれぞれに溶接列が設けられ、上下の溶接列は、間隔を空けて配置されている。なお、リンフォースメント10の前部について、図示による詳細な説明は省略しているが、後部と同様に、本体部3にスポット溶接等により接合されている。
【0017】
続いて、ドアラッチ20について説明する。ドアラッチ20は、ドアインナパネル2とドアアウタパネル7との間に配置され、サイドドア1を開閉するための装置であり、この例では、ドアインナパネル2とリンフォースメント10との間に配置されている。ドアラッチ20は、ラッチ本体21と、レバー軸22と、ラッチレバー23と、を備えている。ラッチ本体21は、サイドドア1を開閉させるための機構が収容されているケースを有している。ここでは、ラッチ本体21の詳細な説明は省略している。
【0018】
レバー軸22は、ラッチ本体21に設けられており、車両前後方向に延びる軸である。詳細な説明は省略するが、レバー軸22には、ラッチレバー23が連結されており、ラッチレバー23は、レバー軸22の周りを回動するように構成されている。ラッチレバー23は、レバー軸22に対し径方向に延びる部材であり、例えば、図3及び図4に示す状態では、車幅方向(水平方向)に対して、やや上方に傾いている。すなわち、レバー軸22から車幅方向外側に向かうに従いやや車両上方に傾斜している。
【0019】
続いて、オープンロッド30について簡単に説明する。オープンロッド30は、詳細な説明は省略しているが、ドアハンドル8とドアラッチ20とを連結するように車両上下方向に延びており、オープンロッド30の車両上下方向中間部には、屈曲部31が設けられている。この例では、当該中間部において車両後方側に屈曲し、車両後方に延び、さらに、車両下方側に屈曲している。屈曲部31の車両後方に延びている部分は、ラッチレバー23に係合可能に構成されている。
【0020】
また、オープンロッド30の車両上下方向の中間部には、車両外側に突出する係止部材(係止部)33が設けられている。係止部材33は、図3に示すように、屈曲部31よりも車両上方に配置されており、この例では、オープンロッド30の外周面に取り付けられる取付部35と、該取付部35から車幅方向外側の延びている爪部34と、を有している。係止部材33の爪部34は、リンフォースメント10の後述する係止孔19に挿入可能である。
【0021】
サイドドア1が閉状態のときに、ドアハンドル8が操作されると、オープンロッド30が車両下方に平行移動する。そして、ラッチレバー23は屈曲部31により車両下方に押圧され、レバー軸22の周りを回動する。この例では、図3における反時計回りに回動する。ラッチレバー23が回動することにより、ドアラッチ20と、車体側のストライカ(図示せず)との噛合が解除され、サイドドア1は、開放状態になる。
【0022】
ここで、リンフォースメント10の形状及びについて説明する。リンフォースメント10の後部には、凸部12が設けられ、凸部12における下部は、下側傾斜面13を有している。さらに、リンフォースメント10の凸部12の下部における後部には、車両下方に向かうに従い車両後方且つ車両内側に傾斜している後方傾斜面14が設けられている。以下、凸部12、下側傾斜面13、及び後方傾斜面14について説明する。
【0023】
凸部12は、リンフォースメント10の後端に設けられたフランジ16よりも、車両前方側に間隔を空けて配置されている。この例では、フランジ16内の6カ所に設けられた溶接部17のうち、下方に配置される3箇所の溶接部17(下方側の溶接列)に対して、車両前方側に間隔を空けて配置されている。
【0024】
フランジ16の車両前方側には、フランジ16の車幅方向外側面に対して、車幅方向外側の膨出し、車両上下方向に延びる外側膨出部11が設けられている。外側膨出部11の車幅方向内側には、ドアラッチ20が設置されている。凸部12は、外側膨出部11の下部に設けられている。
【0025】
凸部12は、リンフォースメント10の車幅方向外側面の一部が、車幅方向外側に向かって突出することによって形成されている。この例では、凸部12は、例えばフランジ16の車幅方向外側面及び外側膨出部11の車幅方向外側面に対して、車幅方向外側に突出している。凸部12の縦断面形状は、図4に示すように、車両外側に湾曲した凸形状となっている。また、凸部12は、リンフォースメント10の車幅方向内側面が車幅方向外側に向かって凹むことにより形成される部分である(図4)。
【0026】
続いて、下側傾斜面13について説明する。下側傾斜面13は、図2及び図3に示すように、凸部12における下部に設けられる傾斜面であり、ラッチレバー23の車両下方に配置されている。下側傾斜面13は、凸部12の先端12a、すなわち、車幅方向外側端(車両外側端)から車幅方向内側(車両内側)に向かうに従い車両下方に傾斜している。なお、本実施形態における下側傾斜面13は、凸部12の車幅方向内側の面である。
【0027】
また、リンフォースメント10の外側膨出部11の車幅方向外側面を基準(図4の仮想線X)としたときに、下側傾斜面13の下端13bは、車幅方向外側面(基準X)よりも車幅方向内側に配置されている。また、下側傾斜面13の下端13bは、下側傾斜面13の下方に位置するリンフォースメント10の下側主面10aに接続されている。ここで、当該下端13bは、車幅方向内側に凸となるように湾曲して下側主面10aに滑らかに接続されている。
【0028】
一方で、ラッチレバー23の先端における下部は、下側傾斜面13の車幅方向内側端よりも車両上方側で、且つ、車幅方向内側に位置している。また、ラッチレバー23の先端における下部は、車幅方向外側に向かうに従い車両上方に傾斜する下側面23aを有している。すなわち、この例では、ラッチレバー23の下側面23aの傾斜方向と、下側傾斜面13の傾斜方向とは、同じ方向に傾斜している。
【0029】
続いて、後方傾斜面14について説明する。図2図3及び図5に示すように、後方傾斜面14は、凸部12の下部における後部に設けられており、車両下方に向かうに従い車両後方且つ車幅方向内側(車両内側)に傾斜している。後方傾斜面14は、下側傾斜面13と同様に、凸部12の車幅方向内側の面である。後方傾斜面14の後端は、下側傾斜面13の前端に接続されており、車両下方に向かうに従い車両後方且つ車両内側に傾斜し、滑らかに下側傾斜面13に接続されている。
【0030】
車体側部のサイドドア1が閉状態のときに、側突等の衝撃荷重を受けると、ドアアウタパネル7は車両内側に変形する場合がある。このような変形が起こると、リンフォースメント10は、ドアラッチ20に近づく方向に変形する。このとき、凸部12の下側傾斜面13及びラッチレバー23の位置関係により、ラッチレバー23の先端を、凸部12の車両内側の下側傾斜面13に当接させることが可能となる。
【0031】
また、ラッチレバー23の先端の下側面23aが、下側傾斜面13に対応するように傾斜しているため、ラッチレバー23の端部は、上記のような変形が生じたときに、凸部12の下部(下側傾斜面13)に当接しやすくなる。また、下側傾斜面13の下端13bは、ラッチレバー23の車両下方に位置するため、上記変形が生じたとき、凸部12の内側にラッチレバー23が入り込みやすい。凸部12の下部にラッチレバー23の先端が当接することにより、レバー軸22が車両上方へ傾き(外側が上昇)、ラッチレバー23は、車両下方に回動することが抑制される。すなわち、上記のように構成することにより、側突等による衝撃荷重が作用したときに、サイドドア1の誤開放の発生を抑制することができる。本実施形態では、ラッチレバー23の端部が下側傾斜面13に当接するとき、当該端部は、例えば、図2図3及び図5に示す破線Aで示す軌跡Aのように、下側傾斜面13に対して相対的に移動する。
【0032】
また、サイドドア1に、例えば側突等による衝撃荷重が作用した場合、車幅方向内側に直線的に変形せずに、比較的剛性の高いリンフォースメント10の後端を中心として、凸部12が回り込むように変形する可能性がある。車体側部に衝突する物体が、ドアアウタパネル7に当接し、該ドアアウタパネル7を押圧すると、比較的剛性の低いドア中央部が周端部に比べて、車両内側に凹みやすい。そのため、上記のような凸部12が回り込むような変形が生じる可能性がある。
【0033】
このような場合には、ラッチレバー23が凸部12に当接する位置が、下側傾斜面13に対して、後方にずれる可能性がある。このような場合であっても、リンフォースメント10が、後方傾斜面14を有しているため、すなわち、凸部12の下側だけでなく車両後方側も前後方向へ傾斜する形状であるため、ラッチレバー23の先端が最初に下側傾斜面13に当接し、その後、後方傾斜面14に当接することで、結果的にラッチレバー23を凸部12の下部に沿うように当接させることが可能となる。したがって、後方傾斜面14を設けることにより、側突時のサイドドア1の誤開放を、より確実に抑制することが可能となる。図2図3及び図5には、ラッチレバー23の端部が下側傾斜面13と後方傾斜面14に当接するときの軌跡Bを、破線Bで示している。軌跡Bから明らかなように後方傾斜面14は車両下方に向かうに従い、車両前方側かつ車両内側へ向け傾斜している。なお、衝突部位や衝突速度により、最初に後方傾斜面14に当接してもよい。
【0034】
また、本実施形態では、リンフォースメント10には、上記した係止部材33が挿入可能な係止孔19が設けられている。係止孔19は、凸部12の車両上方側に配置され、車両上下方向位置が、係止部材33にほぼ対応している。この例では、係止孔19は、外側膨出部11の平面に形成されている。
【0035】
このように係止部材33を設けることにより、オープンロッド30及びラッチレバー23が、リンフォースメント10に係止及び持ち上げられる精度が向上する。係止孔19は、平面に形成されるため、係止部材33が確実に係合する位置に形成することが容易である。
【0036】
また、本実施形態では、上記したように、凸部12が、複数の溶接部17の車両前方側に設けられているため、溶接部17が折れ変形の起点となり、凸部12の下部にラッチレバー23をより確実に当接させることが可能となる。
【0037】
また、本実施形態のリンフォースメント10の凸部12の車両下方側には、車両内側に凹む凹部15が設けられている。この例では、凹部15の上部は、凸部12の下部に対応している。すなわち、下側傾斜面13の反対面は、凹部15の上面になっている。また、凹部15の車幅方向内側部(凹部15の底部)は、リンフォースメント10の下側主面10aとなっている。凹部15の車両前後方向(ドアインナパネル2の長手方向)の長さは、図2のL2で示すように、凸部12の車両前後方向の長さ(図2のL1)に比べて長く長く設定されている。このような凹部15を構成することによって、車両下方への荷重を支持することができ、その結果、凸部12の上下方向の剛性を向上させることができる。
【0038】
本実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0039】
本実施形態では、サイドドア1について説明しているが、これに限らない。例えば、ヒンジを介して開閉するバックドアの誤開放抑制にも、適用することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 サイドドア
2 ドアインナパネル
3 本体部
4 窓開口部
5 ベルトライン部
6 平面部
7 ドアアウタパネル
8 ドアハンドル
10 リンフォースメント
10a 下側主面
11 外側膨出部
12 凸部
12a 先端
13 下側傾斜面
13b 下端
14 後方傾斜面
15 凹部
16 フランジ
17 溶接部
19 係止孔
20 ドアラッチ
21 ラッチ本体
22 レバー軸
23 ラッチレバー
30 オープンロッド
31 屈曲部
33 係止部材
34 爪部
35 取付部
A 軌跡
B 軌跡
図1
図2
図3
図4
図5