(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043007
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】燃料電池スタック
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0258 20160101AFI20230320BHJP
H01M 8/0267 20160101ALI20230320BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20230320BHJP
【FI】
H01M8/0258
H01M8/0267
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150467
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】中森 洋二
(72)【発明者】
【氏名】菊池 勇
(72)【発明者】
【氏名】小林 昌平
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA08
5H126AA11
5H126BB06
5H126DD02
5H126DD05
5H126EE03
5H126EE04
5H126EE11
5H126EE24
5H126EE27
5H126EE31
5H126EE33
5H126EE35
(57)【要約】
【課題】冷却媒体が滞留することを抑制できる燃料電池スタックを提供する。
【解決手段】実施の形態によるカソード側冷却媒体流路は、分岐して第1方向に延びて終端するカソード側終端溝と、カソード側終端溝の周囲で折り返すカソード側折り返し溝と、を含んでいる。アノード側冷却媒体流路は、分岐して第1方向に延びて終端するアノード側終端溝と、アノード側終端溝の周囲で折り返すアノード側折り返し溝と、を含んでいる。カソード側終端溝は、アノード側折り返し溝に対向するとともに、アノード側終端溝は、カソード側折り返し溝に対向している。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに積層された複数の燃料電池セルを備え、
前記燃料電池セルは、
カソード電極とアノード電極とを含む膜電極接合体と、
前記カソード電極に隣接したカソード側セパレータと、
前記アノード電極に隣接したアノード側セパレータと、を含み、
前記カソード側セパレータは、前記カソード電極に対向する酸化剤ガス流路と、前記アノード側セパレータに対向するカソード側冷却媒体流路と、を含み、
前記カソード側冷却媒体流路は、並列に配列された第1カソード側流路溝および第2カソード側流路溝と、前記カソード電極に重なる位置に設けられたカソード側折り返し流路部と、を含み、
前記カソード側折り返し流路部において、前記第1カソード側流路溝は、分岐して第1方向に延びて終端するカソード側終端溝を含み、前記第2カソード側流路溝は、前記カソード側終端溝の周囲で折り返すカソード側折り返し溝を含み、
前記アノード側セパレータは、前記アノード電極に対向する燃料ガス流路と、前記カソード側セパレータに対向するアノード側冷却媒体流路と、を含み、
前記アノード側冷却媒体流路は、並列に配列された第1アノード側流路溝および第2アノード側流路溝と、前記アノード電極に重なる位置に設けられたアノード側折り返し流路部と、を含み、
前記アノード側折り返し流路部において、前記第1アノード側流路溝は、分岐して前記第1方向に延びて終端するアノード側終端溝を含み、前記第2アノード側流路溝は、前記アノード側終端溝の周囲で折り返すアノード側折り返し溝を含み、
前記カソード側終端溝は、前記アノード側折り返し溝に対向するとともに、前記アノード側終端溝は、前記カソード側折り返し溝に対向している、燃料電池スタック。
【請求項2】
前記第1カソード側流路溝と前記第2カソード側流路溝は、互いに隣り合っており、
前記第1アノード側流路溝と前記第2アノード側流路溝は、互いに隣り合っている、請求項1に記載の燃料電池スタック。
【請求項3】
前記アノード側冷却媒体流路の平面形状は、前記カソード側冷却媒体流路の平面形状と同一である、請求項1または2に記載の燃料電池スタック。
【請求項4】
前記酸化剤ガス流路は、複数の酸化剤ガス流路溝を含み、
互いに隣り合う前記酸化剤ガス流路溝の間に、前記カソード電極に向かって突出して前記カソード電極に隣接するカソード側凸部が形成され、
前記第1カソード側流路溝および前記第2カソード側流路溝はそれぞれ、前記カソード側凸部の裏側で凹状に形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の燃料電池スタック。
【請求項5】
前記燃料ガス流路は、複数の燃料ガス流路溝を含み、
互いに隣り合う前記燃料ガス流路溝の間に、前記アノード電極に向かって突出して前記アノード電極に隣接するアノード側凸部が形成され、
前記第1アノード側流路溝および前記第2アノード側流路溝はそれぞれ、前記アノード側凸部の裏側で凹状に形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の燃料電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池スタックのカソード側セパレータに、カソード電極に供給する酸化剤ガス流路が形成され、アノード側セパレータに、アノード電極に供給する燃料ガス流路が形成されている。カソード側セパレータとアノード側セパレータとは隣接しており、カソード側セパレータとアノード側セパレータとの間に冷却水流路が形成されている。
【0003】
酸化剤ガス流路は、複数の流路溝によって構成されている。これらの流路溝は、カソード電極に隣接する面に凹状に形成されている。互いに隣り合う流路溝の間に、カソード電極に向かって突出してカソード電極に隣接するカソード側凸部が形成されている。カソード側凸部の裏側に、冷却水流路を構成する流路溝が凹状に形成されている。同様に、燃料ガス流路は、複数の流路溝によって構成されている。これらの流路溝は、アノード電極に隣接する面に凹状に形成されている。互いに隣り合う流路溝の間に、アノード電極に向かって突出してアノード電極に隣接するアノード側凸部が形成されている。アノード側凸部の裏側に、冷却水流路を構成する流路溝が凹状に形成されている。カソード側セパレータに形成された冷却水の流路溝と、アノード側セパレータに形成された冷却水の流路溝とは対向している。
【0004】
酸化剤ガス流路および燃料ガス流路に、流路長を増大させて流路の圧力損失を増やすためにサーペンタイン流路構造を採用する場合がある。このことにより、ガスの流れの均一化を図ることができる。サーペンタイン流路構造は、流路溝が折り返す折り返し流路部を含む構造である。
【0005】
酸化剤ガス流路を構成する全ての流路溝は、折り返し流路部において折り返すように形成され、酸化剤ガスは各溝を並行に流れる。しかしながら、カソード側セパレータに形成された冷却水流路は、酸化剤ガス流路と反転した形状を有している。このため、冷却水流路は、途中で分岐して終端する終端溝を含む。終端溝において、冷却水が滞留し、冷却水に含まれるイオンなどの不純物の量が増大する問題が考えられる。この場合、カソード側セパレータに局所的に電位差が生じ、局部電池の現象が発生し得る。カソード側セパレータが金属で形成されている場合には、局所的な腐食が生じ得る。
【0006】
カソード側セパレータと同様に、アノード側セパレータにおいても、冷却水流路が終端溝を含み、同様の問題が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、冷却媒体が滞留することを抑制できる燃料電池スタックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施の形態による燃料電池スタックは、互いに積層された複数の燃料電池セルを備えている。燃料電池セルは、カソード電極とアノード電極とを含む膜電極接合体と、カソード電極に隣接したカソード側セパレータと、アノード電極に隣接したアノード側セパレータと、を含んでいる。カソード側セパレータは、カソード電極に対向する酸化剤ガス流路と、アノード側セパレータに対向するカソード側冷却媒体流路と、を含んでいる。カソード側冷却媒体流路は、並列に配列された第1カソード側流路溝および第2カソード側流路溝と、カソード電極に重なる位置に設けられたカソード側折り返し流路部と、を含んでいる。カソード側折り返し流路部において、第1カソード側流路溝は、分岐して第1方向に延びて終端するカソード側終端溝を含み、第2カソード側流路溝は、カソード側終端溝の周囲で折り返すカソード側折り返し溝を含んでいる。アノード側セパレータは、アノード電極に対向する燃料ガス流路と、カソード側セパレータに対向するアノード側冷却媒体流路と、を含んでいる。アノード側冷却媒体流路は、並列に配列された第1アノード側流路溝および第2アノード側流路溝と、アノード電極に重なる位置に設けられたアノード側折り返し流路部と、を含んでいる。アノード側折り返し流路部において、第1アノード側流路溝は、分岐して第1方向に延びて終端するアノード側終端溝を含み、第2アノード側流路溝は、アノード側終端溝の周囲で折り返すアノード側折り返し溝を含んでいる。カソード側終端溝は、アノード側折り返し溝に対向するとともに、アノード側終端溝は、カソード側折り返し溝に対向している。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、冷却媒体が滞留することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施の形態における燃料電池スタックを示す部分断面図である。
【
図3】
図3は、
図1のカソード側セパレータのカソード側冷却水流路を示す平面図である。
【
図4】
図4は、
図1のアノード側セパレータのアノード側冷却水流路を示す平面図である。
【
図5】
図5は、カソード側冷却水流路とアノード側冷却水流路との重なりを示す平面図である。
【
図6】
図6は、
図5のA-A線断面を含む、カソード側セパレータおよびアノード側セパレータの斜視図である。
【
図7】
図7は、本実施の形態における冷却水流路の数値流体解析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態における燃料電池スタックについて説明する。なお、図面においては、理解のし易さの便宜上、適宜縮尺及び縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0013】
まず、
図1を参照して、本実施の形態による燃料電池スタックについて説明する。本実施の形態においては、固体高分子形燃料電池を一例とする燃料電池1を構成する燃料電池スタック2を例にとって説明する。燃料電池1は、酸化剤ガスと燃料ガスとを用いて発電を行うように構成されている。
【0014】
図1に示すように、燃料電池1は、燃料電池スタック2と、燃料電池スタック2に取り付けられた、図示しない酸化剤ガスマニホールド、燃料ガスマニホールド、および冷却水マニホールドを備えている。酸化剤ガスマニホールドは、後述する酸化剤ガス流路30に対する酸化剤ガスの給排を行う。燃料ガスマニホールドは、後述する燃料ガス流路60に対する燃料ガスの給排を行う。冷却水マニホールドは、後述するカソード側冷却水流路40およびアノード側冷却水流路70に対する冷却水の給排を行う。
【0015】
燃料電池スタック2は、互いに積層された複数の燃料電池セル3を備えている。燃料電池セル3は、電極構造体10と、カソード側セパレータ20と、アノード側セパレータ50と、を含んでいる。
【0016】
電極構造体10は、膜電極接合体11(MEA)と、電極枠15(
図2参照)と、を含んでいてもよい。
【0017】
膜電極接合体11は、カソード電極12と、アノード電極13と、電解質膜14と、を含んでいる。カソード電極12は、酸化剤極とも称される。アノード電極13は、燃料極とも称される。電解質膜14は、カソード電極12とアノード電極13との間に介在されている。膜電極接合体11は、薄板状に形成されていてもよい。
【0018】
カソード電極12に、後述する酸化剤ガス流路30から酸化剤ガスが供給される。酸化剤ガスは、酸素を含有しているガスであり、例えば、空気であってもよい。アノード電極13に、後述する燃料ガス流路60から燃料ガスが供給される。燃料ガスは、例えば、水素を含有するガスであってもよい。酸化剤ガスと燃料ガスが供給されることにより、膜電極接合体11において、以下に示す電気化学反応が生じる。この結果、電気エネルギーを取り出すことができる。
燃料極反応:H2 → 2H+ + 2e-
酸化剤極反応:2H+ +2e- + (1/2)O2 → H2O
【0019】
電極枠15は、
図2に示すように、燃料電池セル3の積層方向(
図1に示すZ軸方向)で見たときに、膜電極接合体11の周囲に設けられていてもよい。膜電極接合体11は、電極枠15に固定されている。電極枠15は薄板状に形成されていてもよい。電極枠15は、酸化剤ガスおよび燃料ガスに対する不透過性を有していてもよい。
【0020】
図2に示すように、電極枠15に、酸化剤ガス供給口15a、燃料ガス供給口15b、冷却水供給口15c、酸化剤ガス排出口15d、燃料ガス排出口15eおよび冷却水排出口15fが設けられている。これらの供給口15a~15cおよび排出口15d~15fは、電極枠15を貫通している。各供給口15a~15cは、膜電極接合体11の一側に位置し、各排出口15d~15fは、膜電極接合体11の他側に位置している。
図2に示すようにX軸およびY軸を定義した場合、各供給口15a~15cは、膜電極接合体11のX軸負側に位置し、各排出口15d~15fは、膜電極接合体11のX軸正側に位置している。言い換えると、X軸方向において、各供給口15a~15cと各排出口15d~15fとの間に、膜電極接合体11が位置している。各供給口15a~15cおよび各排出口15d~15fは、同一平面形状を有していてもよい。
【0021】
次に、カソード側セパレータ20について、
図1および
図3を用いて説明する。
図3は、
図1に示す積層状態で上方から見た場合のカソード側冷却水流路40を示している。後述のカソード側冷却水流路面22を見た場合には、カソード側冷却水流路40を含むカソード側セパレータ20は、上下反転した形状または左右反転した形状となる。
図3においては、便宜上、流路溝を1本の太線で示している。
【0022】
図1に示すように、カソード側セパレータ20は、カソード電極12に対向する酸化剤ガス流路30と、アノード側セパレータ50に対向するカソード側冷却水流路40と、を含んでいる。冷却水は、冷却媒体の一例である。カソード側セパレータ20は、酸化剤ガスおよび冷却水に対する不透過性を有していてもよい。
【0023】
酸化剤ガス流路30は、カソード電極12に隣接する酸化剤ガス流路面21に設けられている。酸化剤ガス流路30を流れる酸化剤ガスは、カソード電極12に供給される。酸化剤ガス流路30は、所定のピッチで並列に配列された複数の酸化剤ガス流路溝31を含んでいる。酸化剤ガス流路溝31は、等間隔に配列されていてもよい。酸化剤ガス流路溝31は、酸化剤ガス流路面21に凹状に形成されている。酸化剤ガス流路30は、サーペンタイン流路構造を有しており、各酸化剤ガス流路溝31が折り返すように形成されている。酸化剤ガス流路溝31は、カソード電極12に対向する部分において、折り返すように形成されている。
【0024】
カソード側冷却水流路40は、アノード側セパレータ50に隣接するカソード側冷却水流路面22に設けられている。カソード側冷却水流路面22は、酸化剤ガス流路面21とは反対側に位置している。
【0025】
図3に示すように、カソード側セパレータ20に、酸化剤ガス供給口25a、燃料ガス供給口25b、冷却水供給口25c、酸化剤ガス排出口25d、燃料ガス排出口25eおよび冷却水排出口25fが設けられている。これらの供給口25a~25cおよび排出口25d~25fは、カソード側セパレータ20を貫通している。各供給口25a~25cは、カソード側冷却水流路40の一側に位置し、各排出口25d~25fは、カソード側冷却水流路40の他側に位置している。より具体的には、
図3に示すように、各供給口25a~25cは、カソード側冷却水流路40のX軸負側に位置し、各排出口25d~25fは、カソード側冷却水流路40のX軸正側に位置している。言い換えると、X軸方向(後述する第1方向に直交する第2方向)において、各供給口25a~25cと各排出口25d~25fとの間に、カソード側冷却水流路40が位置している。各供給口25a~25cおよび各排出口25d~25fは、同一平面形状を有していてもよい。
【0026】
酸化剤ガス供給口25aは、電極枠15の酸化剤ガス供給口15aに重なり、連通している。燃料ガス供給口25bは、電極枠15の燃料ガス供給口15bに重なり、連通している。冷却水供給口25cは、電極枠15の冷却水供給口15cに重なり、連通している。酸化剤ガス排出口25dは、電極枠15の酸化剤ガス排出口15dに重なり、連通している。燃料ガス排出口25eは、電極枠15の燃料ガス排出口15eに重なり、連通している。冷却水排出口25fは、電極枠15の冷却水排出口15fに重なり、連通している。
【0027】
カソード側冷却水流路40は、カソード電極12に重なるカソード側電極流路部41と、供給側流路部42と、排出側流路部43と、を含んでいる。供給側流路部42は、冷却水供給口25cとカソード側電極流路部41との間に位置しており、冷却水供給口25cから、供給側流路部42を通ってカソード側電極流路部41に冷却水が供給される。排出側流路部43は、カソード側電極流路部41と冷却水排出口25fとの間に位置しており、カソード側電極流路部41から、排出側流路部43を通って冷却水排出口25fに冷却水が排出される。
【0028】
カソード側電極流路部41は、カソード側折り返し流路部44を含んでいる。カソード側折り返し流路部44は、カソード電極12に重なる位置に位置している。カソード側折り返し流路部44において、カソード側冷却水流路40を構成するカソード側流路溝が折り返すように形成されている。酸化剤ガス流路30がサーペンタイン流路構造を有していることにより、カソード側折り返し流路部44が形成されている。
【0029】
カソード側冷却水流路40は、第1カソード側流路溝45と、第2カソード側流路溝46と、を含んでいる。第1カソード側流路溝45および第2カソード側流路溝46は、所定の配列ピッチTで並列に配列されている。カソード側冷却水流路40は、第1カソード側流路溝45および第2カソード側流路溝46以外のカソード側流路溝を含んでいてもよい。第1カソード側流路溝45および第2カソード側流路溝46を含む全てのカソード側流路溝は、所定の配列ピッチTで並列に配列されていてもよい。この配列ピッチTは、上述した酸化剤ガス流路溝31のピッチと同一であってもよい。第1カソード側流路溝45および第2カソード側流路溝46を含むカソード側流路溝の本数は、2本以上であれば任意である。カソード側冷却水流路40を構成するカソード側流路溝は、カソード側冷却水流路面22に凹状に形成されている。
【0030】
カソード側折り返し流路部44において、第1カソード側流路溝45は、分岐して第1方向に延びて終端するカソード側終端溝45aを含んでいる。
図3に示すように、カソード側終端溝45aは、Y軸方向に延びている。
【0031】
第1カソード側流路溝45は、X軸方向に延びるカソード側基端溝45bを含んでいる。カソード側終端溝45aは、カソード側基端溝45bから分岐して接続されている。第1カソード側流路溝45は、カソード側折り返し流路部44において、T字状に形成されている。カソード側基端溝45bは、供給側流路部42を介して冷却水供給口25cに連通しているとともに、排出側流路部43を介して冷却水排出口25fに連通している。
【0032】
カソード側折り返し流路部44において、第2カソード側流路溝46は、カソード側終端溝45aの周囲で折り返すカソード側折り返し溝46aを含んでいる。カソード側折り返し溝46aは、
図3に示すように、カソード側終端溝45aに沿ってY軸方向に折り返すように、矩形U字状に形成されている。カソード側折り返し溝46aのうち、Y軸方向に延びている部分は、カソード側終端溝45aと平行になっている。
【0033】
本実施の形態においては、第1カソード側流路溝45と第2カソード側流路溝46は、互いに隣り合っている。カソード側折り返し溝46aの外側周囲には、他のカソード側流路溝を構成する折り返し溝が形成されていてもよい。
【0034】
カソード側冷却水流路40は、複数のカソード側折り返し流路部44を含んでいてもよい。
図3においては、3つのカソード側折り返し流路部44が形成されている例が示されているが、カソード側折り返し流路部44の個数は任意である。
図3に示す例において、カソード側冷却水流路40は、2つの第1カソード側流路溝45と、2つの第2カソード側流路溝46と、を含んでいる。
【0035】
図3に示すように、X軸方向両側(左右両側)に位置するカソード側折り返し流路部44において、カソード側終端溝45aを構成する第1カソード側流路溝45は、最もY軸正側に位置している。X軸方向中央に位置するカソード側折り返し流路部44において、カソード側終端溝45aを構成する第1カソード側流路溝45は、最もY軸負側に位置している。このカソード側終端溝45aの周囲に、第2カソード側流路溝46のカソード側折り返し溝46aが形成されている。2つの第2カソード側流路溝46の間に、配列ピッチTで並列した他のカソード側流路溝が配列されていてもよい。あるいは、2つの第2カソード側流路溝46は、共通の1つのカソード側流路溝で構成されていてもよい。この場合、カソード側冷却水流路40は、3つのカソード側流路溝で構成されていてもよい。
【0036】
本実施の形態におけるカソード側セパレータ20は、金属板のプレス加工、またはカーボン材料の射出成型などによって作製されていてもよい。このことにより、カソード側セパレータ20は、
図1に示すような概略的には波状の断面を有している。
【0037】
より具体的には、上述したように、酸化剤ガス流路溝31は、酸化剤ガス流路面21に凹状に形成されている。互いに隣り合う酸化剤ガス流路溝31の間に、カソード電極12に向かって突出してカソード電極12に隣接するカソード側凸部32が形成されている。第1カソード側流路溝45および第2カソード側流路溝46を含むカソード側流路溝はそれぞれ、カソード側凸部32の裏側で凹状に形成されている。
【0038】
次に、アノード側セパレータ50について、
図1および
図4を用いて説明する。
図4は、アノード側冷却水流路面52を見た場合のアノード側冷却水流路70を示している。
図4においては、便宜上、流路溝を1本の太線で示している。
【0039】
図1に示すように、アノード側セパレータ50は、アノード電極13に対向する燃料ガス流路60と、カソード側セパレータ20に対向するアノード側冷却水流路70と、を含んでいる。アノード側セパレータ50は、燃料ガス及び冷却水に対する不透過性を有していてもよい。
【0040】
燃料ガス流路60は、アノード電極13に隣接する燃料ガス流路面51に設けられている。燃料ガス流路60を流れる燃料ガスは、アノード電極13に供給される。燃料ガス流路60は、所定のピッチで並列に配列された複数の燃料ガス流路溝61を含んでいる。このピッチは、上述した酸化剤ガス流路溝31のピッチと同一であってもよい。燃料ガス流路溝61は、等間隔に配列されていてもよい。燃料ガス流路溝61は、燃料ガス流路面51に凹状に形成されている。燃料ガス流路60は、サーペンタイン流路構造を有しており、各燃料ガス流路溝61が折り返すように形成されている。燃料ガス流路溝61は、アノード電極13に対向する部分において、折り返すように形成されている。
【0041】
アノード側冷却水流路70は、カソード側セパレータ20に隣接するアノード側冷却水流路面52に設けられている。アノード側冷却水流路面52は、燃料ガス流路面51とは反対側に位置している。
【0042】
図4に示すように、アノード側セパレータ50に、酸化剤ガス供給口55a、燃料ガス供給口55b、冷却水供給口55c、酸化剤ガス排出口55d、燃料ガス排出口55eおよび冷却水排出口55fが設けられている。これらの供給口55a~55cおよび排出口55d~55fは、アノード側セパレータ50を貫通している。各供給口55a~55cは、アノード側冷却水流路70の一側に位置し、各排出口55d~55fは、アノード側冷却水流路70の他側に位置している。より具体的には、
図4に示すように、各供給口55a~55cは、アノード側冷却水流路70のX軸負側に位置し、各排出口55d~55fは、アノード側冷却水流路70のX軸正側に位置している。言い換えると、X軸方向(第2方向)において、各供給口55a~55cと各排出口55d~55fとの間に、アノード側冷却水流路70が位置している。各供給口55a~55cおよび各排出口55d~55fは、同一平面形状を有していてもよい。
【0043】
酸化剤ガス供給口55aは、電極枠15の酸化剤ガス供給口15aに重なり、連通している。燃料ガス供給口55bは、電極枠15の燃料ガス供給口15bに重なり、連通している。冷却水供給口55cは、電極枠15の冷却水供給口15cに重なり、連通している。酸化剤ガス排出口55dは、電極枠15の酸化剤ガス排出口15dに重なり、連通している。燃料ガス排出口55eは、電極枠15の燃料ガス排出口15eに重なり、連通している。冷却水排出口55fは、電極枠15の冷却水排出口15fに重なり、連通している。
【0044】
アノード側冷却水流路70は、アノード電極13に重なるアノード側電極流路部71と、供給側流路部72と、排出側流路部73と、を含んでいる。供給側流路部72は、冷却水供給口55cとアノード側電極流路部71との間に位置しており、冷却水供給口55cから、供給側流路部72を通ってアノード側電極流路部71に冷却水が供給される。排出側流路部73は、アノード側電極流路部71と冷却水排出口55fとの間に位置しており、アノード側電極流路部71から、排出側流路部73を通って冷却水排出口55fに冷却水が排出される。
【0045】
アノード側電極流路部71は、アノード側折り返し流路部74を含んでいる。アノード側折り返し流路部74は、アノード電極13に重なる位置に位置している。アノード側折り返し流路部74において、アノード側冷却水流路70を構成するアノード側流路溝が折り返すように形成されている。燃料ガス流路60がサーペンタイン流路構造を有していることにより、アノード側折り返し流路部74が形成されている。
【0046】
アノード側冷却水流路70は、第1アノード側流路溝75と、第2アノード側流路溝76と、を含んでいる。第1アノード側流路溝75および第2アノード側流路溝76は、所定の配列ピッチTで並列に配列されている。アノード側冷却水流路70は、第1アノード側流路溝75および第2アノード側流路溝76以外のアノード側流路溝を含んでいてもよい。第1アノード側流路溝75および第2アノード側流路溝76を含む全てのアノード側流路溝は、所定の配列ピッチTで並列に配列されていてもよい。この配列ピッチTは、上述した燃料ガス流路溝61のピッチと同一であってもよい。第1アノード側流路溝75および第2アノード側流路溝76を含むアノード側流路溝の本数は、2本以上であれば任意である。アノード側冷却水流路70を構成するアノード側流路溝は、アノード側冷却水流路面52に凹状に形成されている。
【0047】
アノード側折り返し流路部74において、第1アノード側流路溝75は、分岐して第1方向に延びて終端するアノード側終端溝75aを含んでいる。
図4に示すように、アノード側終端溝75aは、Y軸方向に延びている。
【0048】
第1アノード側流路溝75は、X軸方向に延びるアノード側基端溝75bを含んでいる。アノード側終端溝75aは、アノード側基端溝75bから分岐して接続されている。第1アノード側流路溝75は、アノード側折り返し流路部74において、T字状に形成されている。アノード側基端溝75bは、供給側流路部72を介して冷却水供給口55cに連通しているとともに、排出側流路部73を介して冷却水排出口55fに連通している。
【0049】
アノード側折り返し流路部74において、第2アノード側流路溝76は、アノード側終端溝75aの周囲で折り返すアノード側折り返し溝76aを含んでいる。アノード側折り返し溝76aは、
図4に示すように、アノード側終端溝75aに沿ってY軸方向に折り返すように、矩形U字状に形成されている。アノード側折り返し溝76aのうち、Y軸方向に延びている部分は、アノード側終端溝75aと平行になっている。
【0050】
本実施の形態においては、第1アノード側流路溝75と第2アノード側流路溝76は、互いに隣り合っている。アノード側折り返し溝76aの外側周囲には、他のアノード側流路溝を構成する折り返し溝が形成されていてもよい。
【0051】
アノード側冷却水流路70は、複数のアノード側折り返し流路部74を含んでいてもよい。
図4においては、3つのアノード側折り返し流路部74が形成されている例が示されているが、アノード側折り返し流路部74の個数は任意である。
図4に示す例において、アノード側冷却水流路70は、2つの第1アノード側流路溝75と、2つの第2アノード側流路溝76と、を含んでいる。
【0052】
図4に示すように、X軸方向両側(左右両側)に位置するアノード側折り返し流路部74において、アノード側終端溝75aを構成する第1アノード側流路溝75は、最もY軸正側に位置している。X軸方向中央に位置するアノード側折り返し流路部74において、アノード側終端溝75aを構成する第1アノード側流路溝75は、最もY軸負側に位置している。このアノード側終端溝75aの周囲に、第2アノード側流路溝76のアノード側折り返し溝76aが形成されている。2つの第2アノード側流路溝76の間に、配列ピッチTで並列した他のアノード側流路溝が配列されていてもよい。あるいは、2つの第2アノード側流路溝76は、共通の1つのアノード側流路溝で構成されていてもよい。この場合、アノード側冷却水流路70は、3つのアノード側流路溝で構成されていてもよい。
【0053】
本実施の形態におけるアノード側セパレータ50は、金属板のプレス加工、またはカーボン材料の射出成型などによって作製されていてもよい。このことにより、アノード側セパレータ50は、
図1に示すような概略的には波状の断面を有している。
【0054】
より具体的には、上述したように、燃料ガス流路溝61は、燃料ガス流路面51に凹状に形成されている。互いに隣り合う燃料ガス流路溝61の間に、アノード電極13に向かって突出してアノード電極13に隣接するアノード側凸部62が形成されている。第1アノード側流路溝75および第2アノード側流路溝76を含むアノード側流路溝はそれぞれ、アノード側凸部62の裏側で凹状に形成されている。
【0055】
燃料電池セル3の積層方向(
図1に示すZ軸方向)で見たときに、第2方向(X軸方向)において、各アノード側折り返し流路部74は、対応するカソード側折り返し流路部44に対して配列ピッチTだけずれている。
図3および
図4に示す例においては、各アノード側折り返し流路部74は、対応するカソード側折り返し流路部44に対して、X軸負側に配列ピッチTだけずれている。
図3に示すように、最も左側に位置するカソード側終端溝45aと冷却水供給口25cとの距離をC1とし、最も右側に位置するカソード側終端溝45aと冷却水排出口25fとの距離をC2としたとき、C1>C2となっている。C1とC2の差は、上述した配列ピッチTの半分の値になっている。同様に、
図4に示すように、最も左側に位置するアノード側終端溝75aと冷却水供給口55cとの距離をA1とし、最も右側に位置するアノード側終端溝75aと冷却水排出口55fとの距離をA2としたとき、A2>A1となっている。A2とA1の差は、上述した配列ピッチTの半分の値になっている。
【0056】
アノード側冷却水流路70の平面形状は、カソード側冷却水流路40の平面形状と同一になっている。アノード側冷却水流路70の各流路溝の断面形状と、カソード側冷却水流路40の各流路溝の断面形状も同一になっている。
図3に示すカソード側冷却水流路40を、X軸方向に反転させることにより、
図4に示すアノード側冷却水流路70が得られる。すなわち、本実施の形態においては、カソード側セパレータ20の形状と、アノード側セパレータ50の形状は同一となっている。
【0057】
次に、冷却水流路の構成について、
図5を用いてより詳細に説明する。冷却水流路は、カソード側冷却水流路40とアノード側冷却水流路70とにより構成される。
図5では、カソード側冷却水流路40が実線で示され、アノード側冷却水流路70が破線で示されている。カソード側冷却水流路40とアノード側冷却水流路70は、多くの部分で重なり合っていてもよいが、
図5では、便宜上、X軸方向およびY軸方向にずらして示している。また、図面を明瞭にするために、カソード側冷却水流路面22に、ハッチングを施している。
【0058】
上述したように、アノード側折り返し流路部74は、カソード側折り返し流路部44に対して配列ピッチTだけずれている。このため、
図5および
図6に示すように、第1カソード側流路溝45のカソード側終端溝45aは、対向位置P1において、第2アノード側流路溝76のアノード側折り返し溝76aに対向している。このことにより、カソード側終端溝45aとアノード側折り返し溝76aとが連通し、カソード側終端溝45aとアノード側折り返し溝76aとの間で冷却水が通流可能になっている。このため、カソード側終端溝45a内の冷却水が滞留することを抑制できる。本実施の形態においては、カソード側終端溝45aとアノード側終端溝75aとは対向していない。
【0059】
カソード側冷却水流路40の各カソード側流路溝は、アノード側冷却水流路70の各アノード側流路溝と対向し、連通している。例えば、第2カソード側流路溝46のカソード側折り返し溝46aは、対向位置P2において、第2アノード側流路溝76のアノード側折り返し溝76aと対向している。このことにより、カソード側折り返し溝46aとアノード側折り返し溝76aとが連通し、カソード側折り返し溝46aとアノード側折り返し溝76aとの間で冷却水が通流可能になっている。
【0060】
カソード側流路溝は、アノード側流路溝の間に位置するアノード側冷却水流路面52に対向するカソード側対向部47を含んでいる。カソード側対向部47の流路断面積は、カソード側流路溝とアノード側流路溝とが対向している部分の流路断面積の約半分になっている。しかしながら、カソード側流路溝は連続して形成されているため、冷却水は各流路溝をスムースに流れることができる。
【0061】
また、
図5に示すように、第1アノード側流路溝75のアノード側終端溝75aは、対向位置P3において、第2カソード側流路溝46のカソード側折り返し溝46aに対向している。このことにより、アノード側終端溝75aとカソード側折り返し溝46aとが連通し、アノード側終端溝75aとカソード側折り返し溝46aとの間で冷却水が通流可能になっている。このため、アノード側終端溝75a内の冷却水が滞留することを抑制できる。
【0062】
アノード側冷却水流路70の各流路溝は、カソード側冷却水流路40の各流路溝と対向し、連通している。例えば、第2アノード側流路溝76のアノード側折り返し溝76aは、対向位置P2において、第2カソード側流路溝46のカソード側折り返し溝46aと対向している。このことにより、アノード側折り返し溝76aとカソード側折り返し溝46aとが連通し、アノード側折り返し溝76aとカソード側折り返し溝46aとの間で冷却水が通流可能になっている。
【0063】
図5および
図6に示すように、アノード側流路溝は、カソード側流路溝の間に位置するカソード側冷却水流路面22に対向するアノード側対向部77を含んでいる。アノード側対向部77の流路断面積は、アノード側流路溝とカソード側流路溝とが対向している部分の流路断面積の約半分になっている。しかしながら、アノード側流路溝は連続して形成されているため、冷却水は各流路溝をスムースに流れることができる。
【0064】
図7に、上述のようにして構成された冷却水流路における冷却水の流れの数値流体解析結果を示す。
図7には、代表的に、アノード側冷却水流路の数値流体解析結果を示している。
【0065】
図7に示すように、アノード側終端溝75a内の冷却水が流速を持っていることが示されている。このことにより、アノード側終端溝75aにおいても冷却水が流れて、冷却水が滞留していないことが確認できる。カソード側終端溝45a内の冷却水も同様に流速を持つことができると言える。
図7において、冷却水流速が小さいとは、ゼロではないある値を持った流速を意味しており、比較的流速が小さいことを意味している。
【0066】
また、アノード側冷却水流路70は全体的に、冷却水が流れていることが示されている。このことにより、アノード電極13を効果的に冷却することができることが確認できる。カソード側冷却水流路40においても、同様に冷却水が全体的に流れることができると言える。
【0067】
このように本実施の形態によれば、カソード側冷却水流路40のカソード側終端溝45aが、アノード側冷却水流路70のアノード側折り返し溝76aに対向している。このことにより、カソード側終端溝45aを、アノード側折り返し溝76aに連通することができ、カソード側終端溝45aとアノード側折り返し溝76aとの間で冷却水を通流することができる。このため、カソード側終端溝45a内の冷却水が滞留することを抑制できる。この場合、カソード側セパレータ20に局所的に電位差が生じて局部電池の現象が発生することを抑制できる。この結果、局所的な腐食が生じることを抑制でき、品質を向上させることができる。
【0068】
また、本実施の形態によれば、アノード側冷却水流路70のアノード側終端溝75aが、カソード側冷却水流路40のカソード側折り返し溝46aに対向している。このことにより、アノード側終端溝75aを、カソード側折り返し溝46aに連通することができ、アノード側終端溝75aとカソード側折り返し溝46aとの間で冷却水を通流することができる。このため、アノード側終端溝75a内の冷却水が滞留することを抑制できる。この場合、アノード側セパレータ50に局所的に電位差が生じて局部電池の現象が発生することを抑制できる。この結果、局所的な腐食が生じることを抑制でき、燃料電池スタック2の品質を向上させることができる。
【0069】
また、本実施の形態によれば、カソード側終端溝45aを含む第1カソード側流路溝45と、カソード側折り返し溝46aを含む第2カソード側流路溝46とが、互いに隣り合っている。アノード側終端溝75aを含む第1アノード側流路溝75と、アノード側折り返し溝76aを含む第2アノード側流路溝76とが、互いに隣り合っている。この場合、アノード側折り返し流路部74は、カソード側折り返し流路部44に対して配列ピッチTだけずれる。このことにより、カソード側折り返し流路部44とアノード側折り返し流路部74とのずれ量を小さくすることができる。このため、酸化剤ガス流路30がカソード電極12に対してずれることを抑制でき、カソード電極12への酸化剤ガスの供給を均一化することができる。同様に、燃料ガス流路60がアノード電極13に対してずれることを抑制でき、アノード電極13への燃料ガスの供給を均一化することができる。この結果、燃料電池スタック2の品質を向上させることができる。
【0070】
また、本実施の形態によれば、カソード側冷却水流路40の平面形状は、アノード側冷却水流路70の平面形状と同一になっている。このことにより、カソード側セパレータ20の形状と、アノード側セパレータ50の形状を同一とすることができ、セパレータを共通化することができる。このため、部品種類数を削減することができる。また、セパレータをプレス加工で作製する場合には、共通の金型で、カソード側セパレータ20とアノード側セパレータ50を作製することができ、作製コストを低減することができる。
【0071】
また、本実施の形態によれば、互いに隣り合う酸化剤ガス流路溝31の間に、カソード電極12に向かって突出してカソード電極12に隣接するカソード側凸部32が形成され、第1カソード側流路溝45および第2カソード側流路溝46はそれぞれ、カソード側凸部32の裏側で凹状に形成されている。このことにより、カソード側セパレータ20を、プレス加工で作製することができ、カソード側セパレータ20の作製コストを低減することができる。
【0072】
また、本実施の形態によれば、互いに隣り合う燃料ガス流路溝61の間に、アノード電極13に向かって突出してアノード電極13に隣接するアノード側凸部62が形成され、第1アノード側流路溝75および第2アノード側流路溝76はそれぞれ、アノード側凸部62の裏側で凹状に形成されている。このことにより、アノード側セパレータ50を、プレス加工で作製することができ、アノード側セパレータ50の作製コストを低減することができる。
【0073】
なお、上述した本実施の形態においては、第1カソード側流路溝45と第2カソード側流路溝46とが互いに隣り合っているとともに、第1アノード側流路溝75と第2アノード側流路溝76とが互いに隣り合っている例について説明した。この場合、アノード側折り返し流路部74が、カソード側折り返し流路部44に対して配列ピッチTだけずれている。しかしながら、このことに限られることはない。例えば、アノード側折り返し流路部74とカソード側折り返し流路部44とのずれ量は、配列ピッチTの2倍以上の整数倍であってもよい。この場合、第1カソード側流路溝45と第2カソード側流路溝46との間に、1本以上の他のカソード流路溝が介在されるとともに、第1アノード側流路溝75と第2アノード側流路溝76との間に、1本以上の他のアノード側流路溝が介在されていてもよい。
【0074】
以上述べた実施の形態によれば、冷却媒体が滞留することを抑制できる。
【0075】
本発明の実施形態といくつかの変形例を説明したが、これらの実施形態および変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内で、これらの実施の形態および変形例を、部分的に適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0076】
1:燃料電池、2:燃料電池スタック、3:燃料電池セル、11:膜電極接合体、12:カソード電極、13:アノード電極、20:カソード側セパレータ、30:酸化剤ガス流路、31:酸化剤ガス流路溝、32:カソード側凸部、40:カソード側冷却水流路、44:カソード側折り返し流路部、45:第1カソード側流路溝、45a:カソード側終端溝、46:第2カソード側流路溝、46a:カソード側折り返し溝、50:アノード側セパレータ、60:燃料ガス流路、61:燃料ガス流路溝、62:アノード側凸部、70:アノード側冷却水流路、74:アノード側折り返し流路部、75:第1アノード側流路溝、75a:アノード側終端溝、76:第2アノード側流路溝、76a:アノード側折り返し溝