(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043191
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】分析機器の管理装置、分析機器の管理システム、及び、分析機器の管理方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/00 20060101AFI20230320BHJP
【FI】
G01N3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147404
(22)【出願日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2021149852
(32)【優先日】2021-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩原 大輔
(72)【発明者】
【氏名】西村 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】松浦 融
(72)【発明者】
【氏名】牧 翔太
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA20
2G061BA20
2G061DA20
2G061EB07
2G061EC05
(57)【要約】
【課題】分析機器の状態を管理するためのユーザの負担を軽減する。
【解決手段】分析機器の管理装置は、分析機器本体を撮影した撮影画像、及び、分析機器本体に分析を実行させる制御装置を撮影した撮影画像の少なくともいずれかを取得する取得部512と、撮影画像を、分析機器本体に対応付けて画像記憶部に記憶させるデータ処理部513と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析機器本体を撮影した撮影画像、及び、前記分析機器本体に分析を実行させる制御装置を撮影した撮影画像の少なくともいずれかを取得する取得部と、
前記撮影画像を、前記分析機器本体に対応付けて画像記憶部に記憶させるデータ処理部と、を備える、
分析機器の管理装置。
【請求項2】
前記制御装置は表示画面を備え、前記分析機器本体による分析の実行状態を前記表示画面に表示させ、
前記取得部は、前記制御装置の前記表示画面を撮影範囲に含むカメラの撮影画像を取得する、請求項1に記載の分析機器の管理装置。
【請求項3】
前記分析機器本体は第1の分析機器本体及び第2の分析機器本体を含み、前記制御装置は第1の制御装置及び第2の制御装置を含み、
前記取得部は、
前記第1の分析機器本体を撮影した撮影画像、及び、前記第1の制御装置を撮影した撮影画像の少なくともいずれかを取得し、
前記第2の分析機器本体を撮影した撮影画像、及び、前記第2の制御装置を撮影した撮影画像の少なくともいずれかを取得する、請求項1に記載の分析機器の管理装置。
【請求項4】
前記画像記憶部は、前記管理装置にローカルネットワークを介して接続された第1記憶装置または前記管理装置が備える第1画像記憶部と、前記管理装置に広域通信ネットワークを介して接続された第2記憶装置が備える第2画像記憶部と、を含み、
前記データ処理部は、前記撮影画像を前記分析機器本体に対応付けて前記第1画像記憶部に記憶させる第1データ処理、及び、前記分析機器本体の識別情報と前記撮影画像とを前記第2記憶装置に送信する第2データ処理を実行する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の分析機器の管理装置。
【請求項5】
前記第2記憶装置への送信が許可されない送信制限情報を設定する設定部を備え、
前記データ処理部は、前記第2データ処理において、前記送信制限情報を含まない前記撮影画像を前記第2記憶装置に送信する、請求項4に記載の分析機器の管理装置。
【請求項6】
前記撮影画像に対し、前記送信制限情報の判読性を低下させる画像処理を実行する画像処理部を備え、
前記データ処理部は、前記画像処理部によって前記画像処理が施された前記撮影画像を前記第2記憶装置に送信する、請求項5に記載の分析機器の管理装置。
【請求項7】
前記データ処理部は、前記取得部によって取得された前記撮影画像のうち、前記送信制限情報を含む前記撮影画像を前記第2記憶装置に送信しない、請求項5に記載の分析機器の管理装置。
【請求項8】
分析機器本体を撮影する第1カメラ、及び、前記分析機器本体に分析を実行させる制御装置を撮影する第2カメラの少なくともいずれかを含む撮影部と、
前記撮影部から撮影画像を取得する取得部と、
画像記憶部と、
前記取得部によって取得された前記撮影画像を、前記分析機器本体に対応付けて前記画像記憶部に記憶させるデータ処理部と、を備え、
端末装置の要求に応じて、前記画像記憶部に記憶された前記撮影画像を前記端末装置に送信する、分析機器の管理システム。
【請求項9】
分析機器本体を撮影した撮影画像、及び、前記分析機器本体に分析を実行させる制御装置を撮影した撮影画像の少なくともいずれかを取得し、
前記撮影画像を、前記分析機器本体に対応付けて画像記憶部に記憶し、
端末装置と通信を実行し、前記端末装置の要求に応じて、前記画像記憶部に記憶された前記撮影画像を前記端末装置に送信する、分析機器の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析機器の管理装置、分析機器の管理システム、及び、分析機器の管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分析機器の動作状態や分析データをコンピュータによって管理する技術が提案されている。例えば、特許文献1は、分析機器である分析デバイスと通信を行うことによって、分析デバイスのステータスに関するデータや分析データを取得する遠隔プラットフォームを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された構成では、データ通信機能が必要である。つまり、通信機能を持たない分析機器を遠隔で管理することはできなかった。このような分析機器の動作状態や試験データを確認するためには、ユーザが分析機器の設置場所に出向く必要があった。また、通信機能を持つ装置であっても、通信で送られる情報だけではユーザの所望する情報が不足する場合があり、この場合にも、ユーザが分析機器の設置場所に出向く必要があった。また、ネットワークから送られる情報を閲覧する場合、専用のアプリケーションが必要になるが、閲覧用アプリケーションの課題は、ネットワークに複数の分析機器が接続されている場合、それぞれ異なるアプリケーションや異なるバージョンのアプリケーションが必要となる場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、分析機器の状態を管理するためのユーザの負担を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る分析機器の管理装置は、分析機器本体を撮影した撮影画像、及び、前記分析機器本体に分析を実行させる制御装置を撮影した撮影画像の少なくともいずれかを取得する取得部と、前記撮影画像を、前記分析機器に対応付けて画像記憶部に記憶させるデータ処理部と、を備える。
【0007】
本発明の第2態様に係る分析機器の管理システムは、分析機器本体を撮影する第1カメラ、及び、前記分析機器本体に分析を実行させる制御装置を撮影する第2カメラの少なくともいずれかを含む撮影部と、前記撮影部から撮影画像を取得する取得部と、画像記憶部と、前記取得部によって取得された前記撮影画像を、前記分析機器本体に対応付けて前記画像記憶部に記憶させるデータ処理部と、端末装置と通信する通信部と、前記端末装置の要求に応じて、前記画像記憶部に記憶された前記撮影画像を前記端末装置に送信する画像送信制御部と、を備える。
【0008】
本発明の第3態様に係る分析機器の管理方法は、分析機器本体を撮影した撮影画像、及び、前記分析機器本体に分析を実行させる制御装置を撮影した撮影画像の少なくともいずれかを取得し、前記撮影画像を、前記分析機器本体に対応付けて画像記憶部に記憶し、端末装置と通信を実行し、前記端末装置の要求に応じて、前記画像記憶部に記憶された前記撮影画像を前記端末装置に送信する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1態様に係る分析機器の管理装置、第2態様に係る分析機器の管理システム、及び、第3態様に係る分析機器の管理方法によれば、分析機器本体または制御装置の撮影画像を利用して、分析機器の管理を可能とする。
このため、分析機器を管理するユーザが、分析機器の設置場所に出向く必要性を低減させ、分析機器を管理するための負担を軽減できる。また、ユーザは画像から情報を確認するため閲覧用アプリケーションを必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】疲労試験機の管理システムの概略構成の例を示す図である。
【
図3】管理システムの一例を示すブロック図である。
【
図7】ユーザ端末により表示される管理画面の一例を示す図である。
【
図8】管理装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図9】サーバ装置及びユーザ端末の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[1.管理システムの構成]
図1は、本発明の実施形態に係る疲労試験機(分析機器)の管理システム100の概略構成の例を示す図である。
管理システム100は、複数の疲労試験機1を管理対象とするシステムである。なお、疲労試験機1は分析機器の一例に対応し、本願発明は疲労試験機に限らず、分析機器全般に係わる発明である。
図1には、管理システム100が2台の疲労試験機1A、1Bを管理対象とする構成を例示する。疲労試験機1の数に制限はなく、管理システム100が1台の疲労試験機1を管理する構成であってもよいし、疲労試験機1が3台以上の疲労試験機1を管理することも可能である。
【0012】
疲労試験機1は、試験機本体(分析機器本体)10、及び、制御装置20を備える。疲労試験機1は、試験機本体10を制御装置20によって制御することにより、試験片SPの疲労試験を行う。例えば、疲労試験機1は、試験片SPに引張応力σを繰り返し印加する。引張応力σ及び繰り返し回数は、予め設定される。繰り返し回数は、例えば、102回~108回である。
【0013】
疲労試験機1は、試験機本体10、及び、試験機本体10に試験を実行させる制御装置20を備える。疲労試験機1A、1Bは、互いに略同一の構成を有する。本実施形態では、疲労試験機1A、1Bを区別しない場合に疲労試験機1と記載する。同様に、試験機本体10A、10Bを区別しない場合に試験機本体10と記載し、制御装置20A、20Bを区別しない場合に制御装置20と記載する。試験機本体10は分析機器本体の一例に対応する。試験機本体10Aは第1の分析機器本体の一例に対応し、試験機本体10Bは第2の分析機器本体の一例に対応する。制御装置20Aは第1の制御装置の一例に対応し、制御装置20Bは第2の制御装置の一例に対応する。
【0014】
試験機設置エリアA1は、情報セキュリティの観点において、疲労試験機1が設置された場所、及び、その場所と同等と見なすことが可能な領域である。試験機設置エリアA1は、物理的な場所のみを指す概念ではなく、情報の保護を可能とする論理的な領域である。例えば、疲労試験機1が設置された建物等において人の出入りが管理されている場合、疲労試験機1が設置された建物等を試験機設置エリアA1とすることができる。この場合、試験機設置エリアA1は、疲労試験機1の設置場所を含む限られた区域であり、1つの建物の内部において区切られたエリアであってもよいし、1つの建物の全体であってもよいし、複数の建物を含んでもよい。試験機設置エリアA1は物理的に離れた複数の場所を含んでもよい。これらの場所を接続する情報ネットワークは、クローズドネットワーク、或いは、プライベートネットワークであることが求められる。この情報ネットワークは、専用線や、VPN(Virtual Private Network)を含んでもよい。
【0015】
管理システム100は、複数のカメラ3、管理装置5、及び、サーバ装置6を備える。
管理システム100が備えるカメラ3の数は制限されないが、管理システム100は、管理対象の1台の疲労試験機1につき、少なくとも1つのカメラ3を備える。
【0016】
図1に示す例では、管理システム100は、疲労試験機1Aを撮影するカメラ3A、3B、及び、疲労試験機1Bを撮影するカメラ3C、3Dを備える。カメラ3Aは試験機本体10Aを含む範囲を撮影し、カメラ3Bは制御装置20Aを含む範囲を撮影する。カメラ3Cは試験機本体10Bを含む範囲を撮影し、カメラ3Dは制御装置20Bを含む範囲を撮影する。カメラ3は、撮影部の一例に対応する。試験機本体10を撮影するカメラ3A、3Cは第1カメラの一例に対応し、制御装置20を撮影するカメラ3B、3Dは第2カメラの一例に対応する。
【0017】
カメラ3A、3B、3C、3Dは、所定の撮影範囲を撮影するデジタルカメラである。カメラ3A、3B、3C、3Dは、静止画像を撮影するデジタルスチルカメラであってもよいし、動画像を撮影するデジタルビデオカメラであってもよい。カメラ3A、3B、3C、3Dは、互いに略同一の構成であってもよい。本実施形態では、カメラ3A、3B、3C、3Dを区別しない場合にカメラ3と記載する。
【0018】
カメラ3は、通信機能を有し、ネットワークNW1を介したデータ通信を実行する。カメラ3は、疲労試験機1を撮影した場合、ネットワークNW1を介して管理装置5に撮影画像データを送信する。
【0019】
カメラ3が通信機能を有しない構成であってもよい。この場合、カメラ3は、不図示のコンピュータに接続される。カメラ3に接続されるコンピュータは、ネットワークNW1を介してデータ通信を実行可能な通信機能、および、カメラ3を制御する機能を有するコンピュータである。例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット型コンピュータ、スマートフォンである。この場合、カメラ3は、コンピュータの制御に従って撮影を実行し、このコンピュータがカメラ3の撮影画像データを管理装置5に送信する。
【0020】
ネットワークNW1は、試験機設置エリアA1に敷設されたローカルネットワークである。ネットワークNW1は、LAN(Local Area Network)等により構成されるプライベートネットワークである。ネットワークNW1は、例えば、Ethernet(登録商標)規格のケーブル、不図示のサーバ装置、ルータ、ゲートウェイ等を含む。ネットワークNW1は、Wi-Fi(登録商標)等の無線通信回線を含んでもよい。
【0021】
ネットワークNW2は、試験機設置エリアA1以外の地域から接続可能な広域通信ネットワークであり、いわゆるWAN(Wide Area Network)である。ネットワークNW2は、インターネット等のグローバルネットワークであってもよいし、インターネットに接続される1または複数のネットワークを含んでもよい。ネットワークNW2と、ネットワークNW1とは、不図示のルータやゲートウェイ、或いは他の通信ネットワークを介して接続される。
【0022】
管理装置5は、通信機能を有するコンピュータであり、試験機設置エリアA1に設置される。管理装置5は、カメラ3及びサーバ装置6とデータ通信を実行する。
【0023】
サーバ装置6は、通信機能を有するサーバコンピュータであり、管理装置5とデータ通信を実行する。サーバ装置6は、複数のサーバコンピュータによって構成されてもよく、例えば、クラウドサーバであってもよい。サーバ装置6は、第2画像記憶部63を備える。第2画像記憶部63は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等で構成され、データを不揮発的に記憶する。サーバ装置6は、管理装置5からデータを受信し、受信したデータを第2画像記憶部63に記憶させる。サーバ装置6は、第2記憶装置の一例に対応する。
【0024】
サーバ装置6は、ユーザ端末7と通信を実行可能である。ユーザ端末7は、管理システム100のユーザが使用する端末装置である。具体的には、ユーザ端末7は通信機能を有するコンピュータであり、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット型コンピュータ、スマートフォンである。ユーザ端末7は、ユーザの操作に従ってサーバ装置6とデータ通信を実行する。ユーザ端末7は、端末装置の一例に対応する。
【0025】
[2.疲労試験機の構成]
図2は、疲労試験機1の構成の一例を示す図である。
図2の構成は、疲労試験機1A、及び、疲労試験機1Bにおいて共通である。
試験機本体10は、制御装置20からの指示に従って、試験片SPの疲労試験を実行する。制御装置20は、試験機本体10の動作を制御する。
【0026】
図2に示すように、試験機本体10は、基台11上に、一対の支柱12a,12bと、ヨーク13と、によって負荷枠を形成し、支柱12a,12bに、クロスヘッド14を固定して構成される。
【0027】
基台11には、油圧アクチュエータ15が配置され、油圧アクチュエータ15のピストンロッド15aには、試験片SPの下端を固定する下部治具16aが取り付けられる。また、クロスヘッド14には、ロードセル17を介して、試験片SPの上端を固定する上部治具16bが取り付けられる。下部治具16a、及び、上部治具16bは、それぞれ、試験片SPを把持するチャック機構を備える。
ロードセル17は、試験片SPに作用する試験力を検出する。
【0028】
油圧アクチュエータ15は、サーボ弁18によって、圧油方向と圧油量とが制御されて、ピストンロッド15aが伸縮する。その結果、上部治具16bと下部治具16aとの間に固定された試験片SPに試験力が印加される。油圧アクチュエータ15のストローク、すなわち試験片SPの変位は、油圧アクチュエータ15に取り付けられた差動トランス19によって検出される。
【0029】
試験機本体10には、不図示の電力源及び油圧源が設けられる。電力源は、試験機本体10の各部に電力を供給する。電力源は、例えば各種モータに電力を供給し、駆動する。油圧源は、試験機本体10を構成する油圧装置に油圧を供給する。油圧源は、例えば、油圧アクチュエータ15に油圧を供給し、油圧アクチュエータ15を駆動する。すなわち、油圧アクチュエータ15は、油圧源から供給される油圧によって駆動され、ピストンロッド15aが伸縮される。油圧源は、例えば、油圧ポンプ及び油圧制御弁を備え、油圧ポンプを駆動することによって油圧を発生する。油圧制御弁は、油圧源から出力する油圧を調整する。油圧ポンプ及び油圧制御弁には、電力源から電力が供給される。
【0030】
制御装置20は、ロードセル17から出力される試験力信号FSを取得し、試験力信号FSをA/D変換して試験力情報を生成する。制御装置20は、差動トランス19から出力される変位信号DSを取得し、変位信号DSをA/D変換して変位情報を生成する。制御装置20は、試験力情報、及び、変位情報に基づいて、指令情報を生成する。制御装置20は、指令情報をD/A変換することによって指令信号CSを生成し、生成した指令信号CSをサーボ弁18に出力する。
【0031】
サーボ弁18は、制御装置20から出力される指令信号CSに従って、油圧アクチュエータ15に対して、圧油方向と圧油量とを制御する。
【0032】
制御装置20は、ディスプレイ21を有する。ディスプレイ21は、LCD(Liquid Crystal Display)表示パネル等により構成される表示画面である。制御装置20は、試験機本体10から取得した試験力情報及び変位情報に基づくデータや、試験機本体10に出力した指令情報に基づくデータを、ディスプレイ21に表示する。
【0033】
図2の構成において、試験機本体10と制御装置20の間に、試験力信号FS、変位信号DS、及び指令信号CSをそれぞれ増幅する増幅器を配置してもよい。
【0034】
試験機本体10を撮影するカメラ3は、撮影範囲PA1、或いは、撮影範囲PA2を撮影する。撮影範囲PA1は、試験機本体10のほぼ全体を含む。撮影範囲PA1は試験機本体10の下部を含まない範囲であってもよい。撮影範囲PA2は、試験機本体10に装着された試験片SPを含む。より詳細には、撮影範囲PA2は、上部治具16b、下部治具16a、及び、試験片SPを含む。制御装置20を撮影するカメラ3は、例えば、撮影範囲PA3を撮影する。撮影範囲PA3は、少なくともディスプレイ21を含み、制御装置20の筐体においてディスプレイ21が設けられた面の全体を含んでもよい。
【0035】
撮影範囲PA1、PA2、PA3のうちの複数を1台のカメラ3で撮影してもよい。例えば、撮影範囲PA1を撮影するカメラ3が、光学ズーム機能またはデジタルズーム機能によって、撮影範囲PA2の撮影画像を生成してもよい。
【0036】
本実施形態において、制御装置20は、ディスプレイ21及び後述する各種スイッチが配置された筐体を有する装置として説明するが、制御装置20は、例えば、パーソナルコンピュータで構成されてもよい。この場合、ディスプレイ21は、パーソナルコンピュータに接続されたディスプレイ、或いは、パーソナルコンピュータが備えるディスプレイである。
【0037】
[3.管理装置の構成]
図3は、管理システム100の例を示すブロック図であり、特に、管理装置5の構成を詳細に示す。
管理装置5は、プロセッサ51、メモリ52、入力部54、表示部55、及び、通信インターフェース56を備える。
【0038】
管理装置5は、パーソナルコンピュータ、或いは、サーバコンピュータで構成される。管理装置5は、ICチップやLSIなどの集積回路といった1つ又は複数の適宜の回路によって構成されてもよい。また、管理装置5は、例えば、タブレット端末、又はスマートフォン等で構成されてもよい。
【0039】
プロセッサ51は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)等で構成される。メモリ52は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等で構成される。
【0040】
管理装置5は、撮影制御部511、取得部512、データ処理部513、設定部514、及び、画像処理部515を備える。具体的には、管理装置5のプロセッサ51が、メモリ52に記憶された制御プログラム521を実行することによって、撮影制御部511、取得部512、データ処理部513、設定部514、及び、画像処理部515として機能する。
【0041】
メモリ52は、制御プログラム521、及び、送信設定データ522を記憶する。また、メモリ52は、第1画像記憶部53を有する。詳細には、プロセッサ51が制御プログラム521を実行することによって、メモリ52を、第1画像記憶部53として機能させる。
【0042】
入力部54は、ユーザが使用する各種スイッチやキーを備える。入力部54は、ユーザが使用する入力デバイスに接続され、入力デバイスに対する操作を検出することによって、ユーザの入力を受け付ける構成であってもよい。入力デバイスは、例えば、マウスやトラックパッド等のポインティングデバイス、及び、キーボードが挙げられる。
【0043】
表示部55は、LCD表示パネル等のディスプレイを備える。表示部55は、プロセッサ51の制御に従って、カメラ3の撮影画像に関する処理の状況や設定内容を表示する。入力部54は、表示部55の表示面に重畳配置されたタッチセンサを備えてもよい。
【0044】
通信インターフェース56は、ネットワークNW1に接続され、ネットワークNW1を介してカメラ3と通信を実行する。通信インターフェース56は、例えば、通信ケーブルを接続可能なコネクタ、及び、通信回路を備える。通信インターフェース56は、無線通信インターフェースを備え、無線通信を実行する構成であってもよい。また、通信インターフェース56は、ネットワークNW1、及び、ネットワークNW2を経由するデータ通信を実行する。
【0045】
撮影制御部511は、ネットワークNW1を通じてカメラ3と通信を実行し、カメラ3に対して撮影実行を要求する。カメラ3が、予め設定された周期あるいは設定されたタイミングで撮影を実行する機能を有する場合、管理装置5は撮影制御部511を有していない構成であってもよい。
【0046】
取得部512は、カメラ3の撮影画像を取得する。詳細には、取得部512は、通信インターフェース56によってカメラ3と通信を実行し、カメラ3が出力する撮影画像データを取得する。
【0047】
管理システム100の管理対象である疲労試験機1には試験機IDが付与されている。試験機IDは、各々の疲労試験機1を識別可能な情報である。また、管理システム100が備えるカメラ3にはカメラIDが付与されている。カメラIDは、各々のカメラ3を識別可能な情報である。取得部512は、カメラ3から、カメラ3のカメラID、及び、カメラ3が撮影した疲労試験機1の試験機IDを、撮影画像とともに取得する。取得部512は、カメラ3から撮影画像を取得する際に、取得する撮影画像が、試験機本体10を撮影した撮影画像か制御装置20を撮影した撮影画像かを識別してもよい。また、取得部512は、カメラ3から撮影画像を取得する際に、取得する撮影画像が、撮影範囲PA1、PA2、PA3のうちのどの撮影範囲を撮影した撮影画像かを識別してもよい。
【0048】
データ処理部513は、送信設定データ522に基づいて、取得部512によって取得された撮影画像を、第1画像記憶部53、及び、第2画像記憶部63のうちの少なくともいずれかに記憶させる。
【0049】
設定部514は、撮影画像を第1画像記憶部53及び第2画像記憶部63に記憶する処理に関する設定を行う。設定部514は、例えば、ユーザが設定を行うために利用する設定画面を表示部55によって表示させ、設定画面を利用して入力される内容に基づいて送信設定データ522を生成する。
【0050】
図4は、送信設定データ522の一例を示す模式図である。
図4に例示するように、送信設定データ522は、画像保存先、及び、送信制限情報を指定する。
画像保存先は、取得部512が撮影画像を記憶させる記憶部である。本実施形態では、画像保存先は第1画像記憶部53及び第2画像記憶部63である。
図4の送信設定データ522は、カメラIDに対応付けて画像保存先を指定する。
図4の例ではカメラID001、002に対応付けて、画像保存先として第1画像記憶部53が指定される。送信設定データ522は、画像保存先を、試験機IDに対応付けて指定してもよい。
【0051】
送信制限情報は、サーバ装置6への送信が制限される情報である。これらの場合、第2画像記憶部63に記憶される情報は、情報セキュリティの観点で保護される必要がある。第2画像記憶部63に記憶される情報を保護するためには、第1画像記憶部53に記憶される情報よりも高いセキュリティレベルを確保するための対策が必要である。言い換えれば、情報セキュリティの観点で保護を必要とする情報をネットワークNW1からサーバ装置6に送信しないようにすれば、情報の秘匿性の低下やセキュリティ面における懸念を生じることなく、情報保護のための処理の必要性を軽減できる。そこで、管理システム100は、特定の種類の情報を、管理装置5がサーバ装置6に送信しないように制限する。この制限の対象となる情報は、送信設定データ522で送信制限情報として定義される。
図4の送信設定データ522は、送信制限情報を、試験機IDに対応付けて指定する。これは一例であり、送信制限情報は管理システム100の全体に対して設定されてもよいし、カメラIDに対応付けて指定されてもよい。
【0052】
図4の例で、送信制限情報は、疲労試験機1における試験条件、及び、疲労試験機1が試験片SPの試験を行うことにより得られた試験データである。取得部512がカメラ3から取得した撮影画像に、送信制限情報が含まれる場合、この撮影画像をサーバ装置6に送信することが制限される。送信制限情報の種類、及び、数について制限はない。
【0053】
図5は、設定画面551の一例を示す図である。設定画面551は、設定部514の制御によって表示部55に表示される。
設定画面551には、試験機ID表示部552、及び、項目表示部553が配置される。試験機ID表示部552は、設定対象の疲労試験機1の試験機IDを表示する。項目表示部553は、送信制限情報の候補を表示する。
図5に示す例において、送信制限情報の候補は、情報の種類を表す項目である。項目表示部553においては、各々の項目に対応付けて、チェックボックス554が配置される。設定部514は、設定画面551の表示中に入力部54が受け付ける入力に基づき、チェックボックス554にチェックマークを表示する。
【0054】
図5の例では、項目表示部553に表示される項目に、サーバ装置6にデータを送信することが含まれる。この項目のチェックボックス554にチェックマークが付された場合、データ処理部513が撮影画像をサーバ装置6に送信することが許可される。この場合、送信設定データ522の画像送信先として第1画像記憶部53及び第2画像記憶部63が設定される。
また、チェックボックス554にチェックが付されていない場合、撮影画像をサーバ装置6に送信すること自体が制限される。この場合、送信設定データ522の画像送信先として第1画像記憶部53のみが設定される。
【0055】
項目表示部553には、送信制限情報の候補として、試験条件、試験データ、ステータスが表示される。ステータスは疲労試験機1の動作状態を示す。項目表示部553の各項目のうち、チェックボックス554にチェックマークが付された項目は、サーバ装置6に送信することが許可される。つまり、チェックボックス554にチェックマークが付されない項目は、送信制限情報となる。
【0056】
設定部514は、設定画面551におけるチェックマークの付与状態に基づいて、試験機ID表示部552を生成し、或いは、試験機ID表示部552を更新する。
【0057】
画像処理部515は、取得部512が取得した撮影画像に対する画像処理を実行する。詳細には、画像処理部515は、データ処理部513がサーバ装置6に送信する撮影画像に、送信設定データ522により指定される送信制限情報が含まれる場合に、送信制限情報の判読性を低下させる画像処理を実行する。送信制限情報の判読性を低下させる画像処理は、例えば、撮影画像において送信制限情報が写っている部分を抽出する抽出処理を含む。さらに、この画像処理は、抽出処理で抽出された部分をモザイク化するモザイク処理、抽出された部分を単色または複数の色で塗りつぶす処理、抽出された部分にマスク画像を重畳して合成するマスク処理等を含む。
【0058】
図6は、撮影画像301の一例を示す図であり、画像処理部515によって処理された撮影画像の例である。
撮影画像301は、
図2に示す撮影範囲PA3を撮影した撮影画像であり、制御装置20の前面パネル201が写っている。前面パネル201には、ディスプレイ21が配置され、ディスプレイ21には、試験状態画面210が表示されている。
【0059】
試験状態画面210は、試験データ表示部211、時刻表示部212、試験時間表示部213、ステータス表示部214、表示切替部215、及び、表示切替ボタン216を含む。試験データ表示部211には、試験片SPの試験で検出されたデータが表示される。時刻表示部212には現在時刻が表示される。試験時間表示部213には、実行中の試験の残り時間が表示される。ステータス表示部214には、疲労試験機1の動作状態が表示される。表示切替部215には、ディスプレイ21に表示される画面を試験状態画面210から他の画面に切り替えさせるための表示切替ボタン216等が表示される。ディスプレイ21には、ユーザのタッチ操作を検出する不図示のタッチセンサが重畳配置されている。制御装置20は、表示切替ボタン216に対するタッチ操作を検出した場合に、試験状態画面210全体、または、試験データ表示部211の表示を切り替える。
【0060】
試験データ表示部211に表示される情報は、試験データに該当する。試験時間表示部213に表示される残り時間は試験条件に該当する。ステータス表示部214に表示される情報はステータスに該当する。
【0061】
図6の例では、試験状態画面210に表示される情報のうち、試験データ表示部211に表示される試験データ、及び、試験時間表示部213に表示される試験条件に、マスク画像311が重畳されている。マスク画像311は撮影画像301の一部を構成しているので、撮影画像301からマスク画像311が除去されても、試験データ及び試験条件は判読不可能な状態を保つ。
【0062】
図6に示したように、取得部512が取得した撮影画像に含まれる送信制限情報を判読困難とする画像処理を行うことによって、送信制限情報を含まない撮影画像301が得られる。
【0063】
撮影画像301には、前面パネル201に配置される各種のスイッチ等が写っている。例えば、前面パネル201には、疲労試験機1の電源をオン/オフするための電源スイッチ231、制御装置20に特定の機能の実行を指示するファンクションキー232、設定値の変更等の操作に利用されるダイヤル233が配置される。また、前面パネル201には、制御装置20の動作を設定する設定キー234、疲労試験機1による試験の開始を指示する試験操作キー235、疲労試験機1の試験の停止を指示する試験操作キー236、数値を入力するためのテンキー237が配置される。また、前面パネル201には、試験機本体10に接続された油圧源を操作するパワーユニット操作キー238、及び、疲労試験機1を非常停止させる非常停止スイッチ239が配置される。前面パネル201に配置されたスイッチ等の一部はLED(Light Emitting Diode)インジケータを備える。これらLEDインジケータの点灯状態が、疲労試験機1の動作状態や試験条件を示す場合もある。
【0064】
撮影画像301において、画像処理部515の画像処理の対象は、ディスプレイ21の画像に限定されない。例えば、画像処理部515は、前面パネル201のスイッチ等にマスク画像311を重畳する画像処理を行ってもよい。この場合、画像処理部515は、前面パネル201のLEDインジケータを判読困難とすることができる。これにより、LEDインジケータが示す情報が送信制限情報に該当する場合に、送信制限情報を含まない撮影画像301を得ることができる。
【0065】
上述のように、データ処理部513は、取得部512が取得した撮影画像を、送信設定データ522が定める画像保存先に記憶させる。画像保存先に第2画像記憶部63が含まれる場合、データ処理部513は、撮影画像と、撮影画像を第2画像記憶部63に記憶することを指示するコマンドとをサーバ装置6に送信する。サーバ装置6は、管理装置5から撮影画像を受信し、受信した撮影画像を第2画像記憶部63に記憶させる。
【0066】
取得部512が取得した撮影画像が送信制限情報を含む場合、この撮影画像を取得部512がサーバ装置6に送信することはできない。この場合、管理装置5は、画像処理部515によって、撮影画像に対して画像処理を実行する。画像処理によって送信制限情報が判読困難となった撮影画像は、実質的に、送信制限情報を含まないと見なすことが可能である。取得部512は、画像処理後の撮影画像をサーバ装置6に送信する。
【0067】
サーバ装置6に送信された撮影画像は、例えば、試験機IDに対応付けて第2画像記憶部63に記憶される。第2画像記憶部63に記憶された撮影画像は、ユーザ端末7によって閲覧可能である。
【0068】
図7は、ユーザ端末7により表示される管理画面701の一例を示す図である。
管理画面701には、試験機情報表示部711、及び、1または複数の撮影画像が配置される。
図7の例では、撮影画像301、302、303が管理画面701に配置される。撮影画像302は、撮影範囲PA1を撮影した画像である。撮影画像303は、撮影範囲PA2を撮影した画像である。撮影画像301は、画像処理部515によって画像処理された後の画像であり、試験データ及び試験条件がマスク処理されている。
【0069】
ユーザ端末7が管理画面701を表示することによって、ユーザは、疲労試験機1による試験の様子を管理できる。ネットワークNW2は広域通信ネットワークであるため、ユーザ端末7を使用するユーザは、試験機設置エリアA1から離れた場所で、疲労試験機1による試験の状態を管理できる。また、第2画像記憶部63が撮影画像を所定期間、記憶する構成とすれば、過去に撮影された撮影画像をユーザ端末7から閲覧可能である。従って、第2画像記憶部63が記憶する撮影画像を、疲労試験機1が過去に実行した試験の記録として活用できる。例えば、ユーザは、撮影画像301のステータス表示部214やスイッチのLEDインジケータの状態から、疲労試験機1の動作状態を確認できる。また、ユーザは、撮影画像302、303をもとに、試験片SPの状態を確認できる。これらの確認を、ユーザが疲労試験機1の設置場所に出向くことなく行うことができる。これにより、疲労試験機1の管理に要するユーザの労力を軽減できる。
【0070】
また、管理システム100において、サーバ装置6がユーザ端末7に提供する情報は、カメラ3の撮影画像である。撮影画像は、疲労試験機1が実行する試験や疲労試験機1のステータスに関する数値データと比較して、流用や改竄が容易でない。このため、数値データを試験機設置エリアA1の外からアクセス可能とする場合に比べて、セキュリティ面における懸念が小さいという利点がある。さらに、管理システム100は、カメラ3の撮影画像を利用することによって、制御装置20をネットワークNW1に接続することなく、疲労試験機1の管理を実現できる。従って、疲労試験機1が、ネットワークNW1に接続する機能を有しない場合であっても、管理システム100の管理対象とする事が可能である。
【0071】
[4.管理システムの動作]
図8は、管理装置5の動作の一例を示すフローチャートである。
ステップST11において、管理装置5は、取得部512によって、カメラ3から撮影画像を取得する。管理装置5は、取得部512によって取得した撮影画像を、例えばメモリ52に一時的に記憶する。
【0072】
ステップST12において、管理装置5は、データ処理部513によって、送信設定データ522により指定されている画像保存先を特定する。ステップST13で、管理装置5は、ステップST12で特定した画像保存先に基づき、ネットワークNW2を経由して撮影画像を送信するか否かをデータ処理部513によって判定する。
【0073】
ネットワークNW2を経由して撮影画像を送信しない場合(ステップST13;NO)、管理装置5は、後述するステップST18に移行する。
【0074】
ネットワークNW2を経由して撮影画像を送信する場合(ステップST13;YES)、管理装置5は、ステップST14に移行する。ステップST14で、管理装置5は、データ処理部513によって撮影画像を解析する。この解析の結果をもとに、管理装置5は、ステップST15において、撮影画像が送信制限情報を含むか否かを判定する。
【0075】
撮影画像が送信制限情報を含まない場合(ステップST15;NO)、管理装置5は、後述するステップST17に移行する。
撮影画像が送信制限情報を含む場合(ステップST15;YES)、管理装置5は、ステップST16に移行する。ステップST16において、管理装置5は、画像処理部515によって撮影画像に対する画像処理を実行する。ステップST16の画像処理は、送信制限情報の判読性を低下させる画像処理である。画像処理を実行した後、管理装置5はステップST17に移行する。
【0076】
ステップST17で、管理装置5は、ステップST15で送信制限情報を含まないと判定された撮影画像、または、ステップST16で画像処理が施された撮影画像を、データ処理部513によってサーバ装置6に送信する。ステップST17で、データ処理部513は、撮影画像と、撮影された疲労試験機1の試験機IDとをサーバ装置6に送信し、第2画像記憶部63に、試験機IDに対応付けて撮影画像を記憶させる。
【0077】
また、管理装置5は、ステップST18において、ステップST11で取得された撮影画像を、データ処理部513によって第1画像記憶部53に記憶させる。第1画像記憶部53はネットワークNW1に接続された管理装置5に設けられるため、送信制限情報を秘匿する必要がない。
【0078】
図8に示した動作において、管理装置5は、ステップST16の画像処理を省略してもよい。具体的には、ステップST15において、撮影画像が送信制限情報を含むと判定された場合(ステップST15;YES)、管理装置5は、ステップST16及びステップST17の処理を行わず、ステップST18に移行する。この場合、送信制限情報を含む撮影画像は、ネットワークNW1の外に送信されないので、送信制限情報の秘匿性を確保できる。また、撮影画像に対する画像処理を行わないので、管理装置5の処理負荷を軽減できる。
【0079】
図9は、サーバ装置6及びユーザ端末7の動作の一例を示すフローチャートである。ステップST21~ST23はユーザ端末7の動作であり、ステップST31~ST34はサーバ装置6の動作である。
【0080】
ステップST21で、ユーザ端末7は、ユーザの操作に応じてサーバ装置6にアクセスし、試験機IDを指定して、疲労試験機1に関する情報を要求する。
ステップST31で、サーバ装置6は、ユーザ端末7の要求を受け付ける。ステップST32において、サーバ装置6は、ユーザ端末7により指定された試験機IDを特定する。ステップST33において、サーバ装置6は、特定した試験機IDに対応するデータを、第2画像記憶部63から取得する。ステップST33でサーバ装置6が取得するデータは、例えば、撮影画像301、302、303のデータである。
【0081】
ステップST34において、サーバ装置6は、ステップST33で取得したデータを含む管理画面701を、ユーザ端末7によって表示するための表示データを生成し、ユーザ端末7に送信する。
【0082】
ユーザ端末7は、ステップST22において、サーバ装置6が送信する表示データを受信する。ステップST23において、ユーザ端末7は、ステップST22で受信した表示データに基づき管理画面701を表示する。
【0083】
このように、管理システム100によれば、カメラ3によって疲労試験機1を撮影し、撮影画像を第1画像記憶部53、及び第2画像記憶部63の少なくともいずれかに記憶させる。このため、ユーザは、第1画像記憶部53または第2画像記憶部63に記憶された撮影画像を参照することによって、ユーザが疲労試験機1の設置場所に出向くことなく、疲労試験機1の動作状態、試験の進捗状態、試験片SPの状態等を目視によって確認できる。従って、疲労試験機1の管理に要するユーザの負担を軽減できる。
【0084】
第1画像記憶部53に記憶された撮影画像は、ネットワークNW1に接続される他の機器から閲覧可能である。例えば、管理装置5は、ネットワークNW1に接続されたパーソナルコンピュータやタブレット型コンピュータ、或いはスマートフォン等の機器からのアクセスに応じて、第1画像記憶部53に記憶された撮影画像を、通信インターフェース56によって上記機器に送信する。これにより、疲労試験機1を管理するユーザは、ネットワークNW1に接続可能な機器を利用して、疲労試験機1の設置場所に出向くことなく、疲労試験機1の状態を目視によって管理できる。
【0085】
第1画像記憶部53は、試験機設置エリアA1に設置された閉鎖された通信ネットワークである。このため、カメラ3の撮影画像を第1画像記憶部53に記憶させた状態では、疲労試験機1に関する情報の秘匿性を維持できる。従って、情報セキュリティを確保した上で、カメラ3の撮影画像を利用した疲労試験機1の管理を実現できる。
【0086】
管理システム100が、制御装置20のディスプレイ21を含む撮影範囲PA3を撮影した撮影画像を第1画像記憶部53や第2画像記憶部63に記憶させる場合、ユーザは、第1画像記憶部53や第2画像記憶部63に記憶された撮影画像によって、制御装置20が表示する内容を知ることができる。従って、ユーザが制御装置20の設置場所に出向くことなく、疲労試験機1の状態を細かく管理できる。また、画像データであるため閲覧用のアプリケーションを必要としない。加えて、試験実行時の制御画面の情報と、データとして取得された試験結果を比較することで試験エラーの特定や結果改竄の特定にも利用できる。この場合、試験結果と試験結果が求められた直前・直後の画像とを対応付ける機能を設けることが好適である。
【0087】
管理システム100は、疲労試験機1を管理するための情報としてカメラ3の撮影画像を利用する。このため、疲労試験機1の動作状態等に関するデータを疲労試験機1から直接、取得する必要がない。従って、データ通信によって疲労試験機1に関する情報を送信する機能を有しない疲労試験機1に対し、本実施形態の管理システム100を適用して、管理を行うことができる。また、カメラ3の撮影画像は、疲労試験機1に関する数値やテキストデータに比べて流用や改竄が難しい。従って、疲労試験機1の管理に際して、セキュリティ面における懸念がないという利点がある。
【0088】
管理システム100は、カメラ3の撮影画像を第2画像記憶部63に記憶させることができる。管理システム100が第2画像記憶部63に記憶させる撮影画像には、画像処理部515によって、送信制限情報の判読性を低下させる画像処理が施されている。従って、情報セキュリティを確保した上で、撮影画像を、試験機設置エリアA1の外からもアクセス可能な第2画像記憶部63に記憶させることができる。これによって、試験機設置エリアA1の外から、疲労試験機1の管理を行うことができる。
【0089】
管理システム100は、送信制限情報を設定部514によって設定できる。設定部514は、例えば、設定画面551を利用して、試験機IDやカメラIDに対応付けて、送信制限情報を設定し、設定された内容を送信設定データ522とする。このため、ネットワークNW2を経由して試験機設置エリアA1の外に送信される情報を、疲労試験機1ごと、或いは、カメラ3ごとに、きめ細かく管理できる。
【0090】
[5.態様と効果]
上述した本実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0091】
(第1項)
第1態様に関わる分析機器の管理装置は、分析機器本体を撮影した撮影画像、及び、前記分析機器本体に分析を実行させる制御装置を撮影した撮影画像の少なくともいずれかを取得する取得部と、前記撮影画像を、前記分析機器本体に対応付けて画像記憶部に記憶させるデータ処理部と、を備える。
【0092】
第1項に記載の分析機器の管理装置によれば、分析機器本体または制御装置を撮影した撮影画像を記憶するので、ユーザが撮影画像を見て分析機器の状態を確認できる。このため、ユーザは、分析機器の設置場所に出向くことなく、分析機器の状態を管理できる。従って、分析機器の管理に要するユーザの負担を軽減できる。
【0093】
(第2項)
第1項に記載の分析機器の管理装置において、前記制御装置は表示画面を備え、前記分析機器本体による分析の実行状態を前記表示画面に表示させ、前記取得部は、前記制御装置の前記表示画面を撮影範囲に含むカメラの撮影画像を取得する。
【0094】
第2項に記載の分析機器の管理装置によれば、分析機器を制御する制御装置の表示画面を撮影した撮影画像を、画像記憶部に記憶させる。このため、ユーザは、制御装置が表示する内容を、画像記憶部に記憶された撮影画像から知ることができる。従って、表示画面を撮影した撮影画像を利用することによって、ユーザが制御装置の設置場所に出向くことなく、分析機器の状態を細かく管理できる。
【0095】
(第3項)
第1項に記載の分析機器の管理装置において、前記分析機器本体は第1の分析機器本体及び第2の分析機器本体を含み、前記制御装置は第1の制御装置及び第2の制御装置を含み、前記取得部は、前記第1の分析機器本体を撮影した撮影画像、及び、前記第1の制御装置を撮影した撮影画像の少なくともいずれかを取得し、前記第2の分析機器本体を撮影した撮影画像、及び、前記第2の制御装置を撮影した撮影画像の少なくともいずれかを取得する。
【0096】
第3項に記載の分析機器の管理装置によれば、複数の分析機器のそれぞれについて、分析機器本体または制御装置を撮影した撮影画像が、画像記憶部に記憶される。このため、ユーザが、管理システムを利用することによって、複数の分析機器を少ない労力で管理できる。
【0097】
(第4項)
第1項から第3項のいずれか1項に記載の分析機器の管理装置において、前記画像記憶部は、前記管理装置にローカルネットワークを介して接続された第1記憶装置または前記管理装置が備える第1画像記憶部と、前記管理装置に広域通信ネットワークを介して接続された第2記憶装置が備える第2画像記憶部と、を含み、前記データ処理部は、前記撮影画像を前記分析機器本体に対応付けて前記第1画像記憶部に記憶させる第1データ処理、及び、前記分析機器本体の識別情報と前記撮影画像とを前記第2記憶装置に送信する第2データ処理を実行する。
【0098】
第4項に記載の分析機器の管理装置によれば、分析機器本体を撮影した撮影画像を、ローカルネットワークに接続された装置が有する第1画像記憶部と、広域通信ネットワークに接続された装置が有する第2画像記憶部とに記憶させる。これにより、ユーザは、ローカルネットワークに接続可能な場所に加え、広域通信ネットワークに接続可能な場所から、撮影画像を見て、分析機器を管理できる。従って、分析機器を管理するユーザの地理的制約を緩和し、ユーザの負担をより一層軽減できる。
【0099】
(第5項)
第4項に記載の分析機器の管理装置において、前記第2記憶装置への送信が許可されない送信制限情報を設定する設定部を備え、前記データ処理部は、前記第2データ処理において、前記送信制限情報を含まない前記撮影画像を前記第2記憶装置に送信する。
【0100】
第5項に記載の分析機器の管理装置によれば、広域通信ネットワークを介して送信することが許可されない送信制限情報を設定できる。送信制限情報を含まない撮影画像が、広域通信ネットワークを通じて送信され、第2画像記憶部に記憶される。これにより、撮影画像に含まれる情報を指定して秘匿性を確保することができる。また、送信制限情報を含まない撮影画像を第2画像記憶部に記憶させて、分析機器の管理に利用できる。
【0101】
(第6項)
第5項に記載の分析機器の管理装置において、前記撮影画像に対し、前記送信制限情報の判読性を低下させる画像処理を実行する画像処理部を備え、前記データ処理部は、前記画像処理部によって前記画像処理が施された前記撮影画像を前記第2記憶装置に送信する。
【0102】
第6項に記載の分析機器の管理装置によれば、広域通信ネットワークを介して送信することが許可されない送信制限情報を、画像処理によって秘匿できる。これにより、送信制限情報を含む撮影画像を、送信制限情報の秘匿性を維持して、広域通信ネットワークを通じて送信できる。従って、情報セキュリティを確保した上で、広域通信ネットワークを利用した分析機器の管理を実現できる。
【0103】
(第7項)
第5項に記載の分析機器の管理装置において、前記データ処理部は、前記取得部によって取得された前記撮影画像のうち、前記送信制限情報を含む前記撮影画像を前記第2記憶装置に送信しない。
【0104】
第7項に記載の分析機器の管理装置によれば、送信制限情報を含む撮影画像を、広域通信ネットワークを通じて送信しないので、より確実に、情報の秘匿性を確保できる。
【0105】
(第8項)
第2態様に関わる材料試験機の管理システムは、 分析機器本体を撮影する第1カメラ、及び、前記分析機器本体に分析を実行させる制御装置を撮影する第2カメラの少なくともいずれかを含む撮影部と、前記撮影部から撮影画像を取得する取得部と、画像記憶部と、前記取得部によって取得された前記撮影画像を、前記分析機器本体に対応付けて前記画像記憶部に記憶させるデータ処理部と、を備え、端末装置の要求に応じて、前記画像記憶部に記憶された前記撮影画像を前記端末装置に送信する。
【0106】
第8項に記載の分析機器の管理システムによれば、第1項に記載の分析機器の管理装置と同様の作用効果を奏する。さらに、第8項に記載の分析機器の管理システムは、端末装置の要求に応じて、画像記憶部に記憶した撮影画像を端末装置に提供する。
これにより、ユーザは、端末装置を利用することによって、より少ない労力で分析機器の管理を行うことができる。
【0107】
(第9項)
第3態様に関わる分析機器の管理方法は、分析機器本体を撮影した撮影画像、及び、前記分析機器本体に分析を実行させる制御装置を撮影した撮影画像の少なくともいずれかを取得し、前記撮影画像を、前記分析機器本体に対応付けて画像記憶部に記憶し、端末装置と通信を実行し、前記端末装置の要求に応じて、前記画像記憶部に記憶された前記撮影画像を前記端末装置に送信する。
【0108】
第9項に記載の分析機器の管理方法によれば、第1項に記載の分析機器の管理装置と同様の作用効果を奏する。さらに、第9項に記載の分析機器の管理方法は、端末装置の要求に応じて、画像記憶部に記憶した撮影画像を端末装置に提供する。
これにより、ユーザは、端末装置を利用することによって、より少ない労力で分析機器の管理を行うことができる。
【0109】
[6.その他の実施形態]
なお、本実施形態に係る管理システム100は、あくまでも本発明に係る分析機器の管理システムの態様の例示であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲において任意に変形および応用が可能である。
【0110】
例えば、上記実施形態では、管理装置5が第1画像記憶部53を備える構成を説明したが、これは一例である。管理装置5とは異なる第1記憶装置をネットワークNW1上に設置して、この第1記憶装置が第1画像記憶部53を備える構成であってもよい。この場合、管理装置5は、カメラ3の撮影画像を、ネットワークNW1を経由して第1記憶装置に送信し、第1画像記憶部53に記憶させる。第1記憶装置は、例えば、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、NAS(Network Attached Storage)などが挙げられる。
【0111】
また、例えば、疲労試験機1は、分析機器の一つの例示であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲において任意に変形および応用が可能である。例えば、疲労試験機に代えて、或いは、疲労試験機に加えて、万能試験機、引張試験機、圧縮試験機、曲げ試験機、ねじり試験機、クリープ試験機、ばね試験機、衝撃試験機、摩擦試験機、摩耗試験機、発熱試験機等を管理対象とすることができる。また、分析機器には、物質の組成、性質、構造、状態等を定性的、定量的に測定する機械、器具又は装置が含まれ、用途別には、ラボラトリー用、環境用、プロセス・現場用、保安・作業環境用、医用検査装置、自動化関連機器・情報処理システム、バイオ関連分析機器、その他に大別されるが、本発明は、いずれの分析機器も管理対象とすることが可能である。
【0112】
また、
図3に示した各機能部は機能的構成を示すものであって、具体的な実装形態は特に制限されない。つまり、必ずしも各機能部に個別に対応するハードウェアが実装される必要はなく、一つのプロセッサがプログラムを実行することで複数の機能部の機能を実現する構成とすることも勿論可能である。また、上記実施形態においてソフトウェアで実現される機能の一部をハードウェアで実現してもよく、或いは、ハードウェアで実現される機能の一部をソフトウェアで実現してもよい。
【0113】
また、
図8に示すフローチャートの処理単位は、管理装置5による処理を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものである。
図8のフローチャートに示す処理単位の分割の仕方や名称によって制限されることはなく、処理内容に応じて、さらに多くの処理単位に分割することもできるし、1つの処理単位がさらに多くの処理を含むように分割することもできる。また、上記のフローチャートの処理順序も、図示した例に限られるものではない。
【0114】
管理装置5がプロセッサ51に実行させる制御プログラム521は、コンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体に記録しておくことも可能である。記録媒体としては、磁気的、光学的記録媒体又は半導体メモリデバイスを用いることができる。具体的には、フレキシブルディスク、HDD、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD、Blu-ray(登録商標) Disc、光磁気ディスク、フラッシュメモリ、カード型記録媒体等の可搬型、或いは固定式の記録媒体が挙げられる。また、記録媒体は、管理装置5が備える内部記憶装置であるRAM、ROM、HDD等の不揮発性記憶装置であってもよい。また、制御プログラム521をサーバ装置等に記憶させておき、サーバ装置から管理装置5に、制御プログラム521をダウンロードしてもよい。
【符号の説明】
【0115】
1、1A、1B 疲労試験機(分析機器)
3 カメラ(撮影部)
3A、3C カメラ(撮影部、第1カメラ)
3B、3D カメラ(撮影部、第2カメラ)
5 管理装置
6 サーバ装置(第2記憶装置)
7 ユーザ端末(端末装置)
10 試験機本体(分析機器本体)
10A 試験機本体(第1の分析機器本体)
10B 試験機本体(第2の分析機器本体)
20 制御装置
20A 制御装置(第1の制御装置)
20B 制御装置(第2の制御装置)
21 ディスプレイ
51 プロセッサ
52 メモリ
53 第1画像記憶部
54 入力部
56 通信インターフェース
63 第2画像記憶部
100 管理システム
201 前面パネル
210 試験状態画面
301、302、303 撮影画像
311 マスク画像
511 撮影制御部
512 取得部
513 データ処理部
514 設定部
515 画像処理部
521 制御プログラム
522 送信設定データ
551 設定画面
701 管理画面
A1 試験機設置エリア
NW1 ネットワーク(ローカルネットワーク)
NW2 ネットワーク(広域通信ネットワーク)
PA1、PA2、PA3 撮影範囲
SP 試験片