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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043265
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】樹脂管用接続装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 47/14 20060101AFI20230322BHJP
   F16L 23/10 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
F16L47/14
F16L23/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150779
(22)【出願日】2021-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】東 総介
(72)【発明者】
【氏名】秋山 尚文
【テーマコード(参考)】
3H016
【Fターム(参考)】
3H016CA01
(57)【要約】
【課題】 強度低下を伴わずに構成を簡略化できる樹脂管の接続装置を提供する。
【解決手段】
2本の樹脂管1,2同士をフランジ部1a,2aを突合せた状態で接続する接続装置は、樹脂製の第1、第2分割体10,20を備えている。第1、第2分割体1,20は、フランジ部1a,1bを収容する嵌合溝12,22が形成された第1、第2本体部11,21を有している。第1本体部11の一端部には、係合穴16を有するヒンジ受部15が設けられ、第2本体部21の一端部には、係合穴16に挿入されるヒンジ突起25が設けられている。第1、第2本体部11,21の他端部には第1、第2の締結受部18,28が設けられ、締付手段30により互いに近付く方向に締め付けられるようになっている。ヒンジ受部15の外面には、ヒンジ受部15より狭い幅の隆起部40が形成されている。隆起部40はヒンジ受部15の延出方向に延びて係合穴の外側を塞いでいる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部に環状のフランジ部を有する2本の樹脂管同士を、前記フランジ部を突合せた状態で接続する接続装置において、
樹脂製の第1、第2分割体を備え、前記第1、第2分割体は、前記フランジ部を収容する円弧状の嵌合溝が内周に形成された第1、第2本体部をそれぞれ有し、
前記第1本体部の一端部には、前記第2分割体側に延出されるとともに係合穴を有するヒンジ受部が一体に設けられ、前記第2本体部の一端部には、径方向外側に突出して前記係合穴に挿入されるヒンジ突起が一体に設けられ、前記ヒンジ受部と前記ヒンジ突起により、前記第1、第2本体部の一端部を前記樹脂管の軸線と直交する平面に沿って回動可能に連結するヒンジ手段が構成され、前記第1、第2本体部の他端部同士が締付手段により互いに近付く方向に締め付けられるようになっており、
前記ヒンジ受部の外面には、前記ヒンジ受部の幅より狭い幅の隆起部が形成され、前記隆起部は前記ヒンジ受部の延出方向に延びて前記係合穴の外側を塞ぐことを特徴とする樹脂管用接続装置。
【請求項2】
前記隆起部は、前記ヒンジ受部の先端まで延びていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂管用接続装置。
【請求項3】
前記ヒンジ受部が径方向外側に向かって突出する突出部と、この突出部の先端部から前記第2分割体側に延びる延出部とを有して略L字形をなし、前記延出部に前記係合穴が形成されており、
前記隆起部は、前記突出部の外面から前記延出部の外面まで連続して形成されていることを特徴とする請求項2に記載の樹脂管用接続装置。
【請求項4】
前記隆起部のヒンジ受部の外面からの高さが、前記ヒンジ受部の肉厚の10%以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の樹脂管用接続装置。
【請求項5】
前記第1、第2分割体が、ガラス繊維入りの樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の樹脂管用接続装置。
【請求項6】
前記第1、第2本体部の他端部には、径方向外側に突出する第1、第2締結受部がそれぞれ一体に設けられ、これら第1、第2締結受部が前記締結手段により互いに近づく方向に締め付けられるようになっており、
前記ヒンジ受部の先端面と前記ヒンジ突起の先端面と前記第1、第2締結受部の先端面には、凸部が形成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の樹脂管用接続装置。
【請求項7】
請求項1~5のいずれかに記載の樹脂管用接続装置を製造する方法において、
前記第1分割体を成形するための第1金型は、前記第1本体部を成形するための第1本体部成形空間と、前記ヒンジ受部を成形するためのヒンジ受部成形空間と、前記隆起部を成形するための隆起部成形空間とを有しており、
前記第1分割体の射出成形に際して、前記第1本体部成形空間に連なるゲートから樹脂が注入され、この樹脂が前記第1本体部成形空間を経て前記ヒンジ受部成形空間および前記隆起部成形空間に流れ込むことを特徴とする樹脂管用接続装置の製造方法。
【請求項8】
前記樹脂管用接続装置の前記第1、第2本体部の他端部には、前記締結手段により互いに締め付けられる第1、第2締結受部が、径方向外側に突出して形成されており、
前記第1金型は、前記第1締結受部を成形するための第1締結受部成形空間をさらに有し、前記ゲートが前記第1本体部の外周面の周方向中央かつ前記軸線方向中央に対応する位置に配置され、
前記第1分割体の射出成形に際して、前記ゲートから前記第1本体部成形空間に注入された樹脂が、前記ヒンジ受部成形空間および前記隆起部成形空間に向かって流れるとともに、反対側の前記第1締結受部成形空間に向かって流れ、
前記第2分割体を成形するための第2金型は、前記第2本体部を成形するための第2本体部成形空間と、前記ヒンジ突起を成形するためのヒンジ突起成形空間と、前記第2締結受部を成形するための第2締結受部成形空間を有し、前記ゲートが、前記第2本体部の外周面の周方向中央かつ前記軸線方向中央に対応する位置に配置され、
前記第2分割体の射出成形に際して、前記ゲートから前記第2本体部成形空間に注入された樹脂が、前記ヒンジ突起成形空間に向かって流れるとともに、反対側の前記第2締結受部成形空間に流れ込むことを特徴とする請求項7に記載の樹脂管用接続装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1金型はさらに、前記ヒンジ受部の先端面に第1凸部を成形するための第1凸部成形空間と、前記第1締結受部の先端面に第2凸部を成形するための第2凸部成形空間を有し、
前記第1分割体の射出成形に際して、前記ヒンジ受部成形空間と前記隆起部成形空間を経た樹脂が、最終的に前記第1凸部成形空間に充填されるとともに、前記第1締結受部成形空間を経た樹脂が、最終的に前記第2凸部成形空間に充填され、
前記第2金型はさらに、前記ヒンジ突起の先端面に第3凸部を成形するための第3凸部成形空間と、前記第2締結受部の先端面に第4凸部を成形するための第4凸部成形空間を有し、
前記第2分割体の射出成形に際して、前記ヒンジ突起成形空間を経た樹脂が、最終的に前記第3凸部成形空間に充填されるとともに、前記第2締結受部成形空間を経た樹脂が、最終的に前記第4凸部成形空間に充填されることを特徴とする請求項8に記載の樹脂管用接続装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一端部にフランジ部を有する2本の樹脂管を融着せずに接続する装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
給水配管の施工現場で融着作業をせずに樹脂管同士を接続することが求められる場合には、工場でフランジ部付きの短管を樹脂管本体にバット融着することにより、端部にフランジ部を有する樹脂管を製造する。フランジ部は先端側に樹脂管の軸線と直交する突き合わせ面とを有し、反対側のテーパ面を有している。施工現場では接続装置を用い、2本の樹脂管のフランジ部を突き合わせるようにして接続する。
【0003】
上記接続装置は、一対の分割体と、一対の分割体の一端部を互いに回動可能に連結するヒンジ手段と、一対の分割体の他端部同士を近付けるように締め付ける締結手段とを備えている。一対の分割体の内周には、半円をなして延びる嵌合溝がそれぞれ形成されている。嵌合溝の両側には上記フランジ部のテーパ面と等しいテーパ角をなすテーパ面が形成されている。
【0004】
上記接続装置による樹脂管の接続工程を簡単に説明すると、一対の分割体を開き状態にし、2本の樹脂管のフランジ部を下側の分割体の嵌合溝に乗せる。次に、上側の分割体を、ヒンジ手段を中心に閉じ方向に回動させて、嵌合溝に2本の樹脂管のフランジ部を緩く嵌合させる。最後に、締付手段により締め付けると、嵌合溝の両側のテーパ面と2本の樹脂管のフランジ部のテーパ面が当たり、締付力が2本の樹脂管のフランジ部同士を近づける軸方向の力に変換される。その結果、フランジ部の突合せ面が当たった状態で2本の樹脂管が接続される。
【0005】
特許文献1は、ヒンジ手段の構成を簡略化した接続装置を提案している。すなわち、第1分割体の周方向一端部の径方向外側には、第2分割体側に延出されたヒンジ受部が設けられている。このヒンジ受部には係合穴が形成されている。第2分割体の一端部には、径方向外側に向かって突出するヒンジ突起が設けられている。第2分割体のヒンジ突起が第1分割体の係合穴に挿入されることにより、第1、第2分割体が回動可能に連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021ー50789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の製造装置では、第1分割体のヒンジ受部、特にヒンジ受部において係合穴より先端側の部位は、大きな荷重を受けるにも関わらず機械的強度が弱く、そのため長期にわたって接続性能を維持するのに限界があった。本発明者はこの機械的強度の低下の原因がウエルドおよびボイド発生にあることを見出した。すなわち、第1分割体を射出成形する際、本体部からの樹脂の流れは係合穴の両側部に分かれ、ヒンジ受部の先端部で再び合流するため、この合流部にウエルドが生じるとともに空気巻き込みによるボイドが生じるのである。特にガラス繊維強度樹脂の場合にはこのウエルドでガラス繊維の配向が乱れるため、20~50%の強度低下を招く。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、一端部に環状のフランジ部を有する2本の樹脂管同士を、前記フランジ部を突合せた状態で接続する接続装置において、
樹脂製の第1、第2分割体を備え、前記第1、第2分割体は、前記フランジ部を収容する円弧状の嵌合溝が内周に形成された第1、第2本体部をそれぞれ有し、前記第1本体部の一端部には、前記第2分割体側に延出されるとともに係合穴を有するヒンジ受部が一体に設けられ、前記第2本体部の一端部には、径方向外側に突出して前記係合穴に挿入されるヒンジ突起が一体に設けられ、前記ヒンジ受部と前記ヒンジ突起により、前記第1、第2本体部の一端部を前記樹脂管の軸線と直交する平面に沿って回動可能に連結するヒンジ手段が構成され、前記第1、第2本体部の他端部同士が締付手段により互いに近付く方向に締め付けられるようになっており、前記ヒンジ受部の外面には、前記ヒンジ受部の幅より狭い幅の隆起部が形成され、前記隆起部は前記ヒンジ受部の延出方向に延びて前記係合穴の外側を塞ぐことを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、第1分割体を射出成形する際に、第1本体部からの樹脂はヒンジ受部に流れ込む際に係合穴の両側部に流れるだけでなく、係合穴の両側部に跨る隆起部を流れてヒンジ受部の先端部に供給されるので、ヒンジ受部の先端部において係合穴の両側部に分流された樹脂が再合流することによるウエルドの発生および空気巻き込みよるボイド発生を抑制することができる。隆起部はヒンジ受部の幅より狭いので、係合穴の両側部の樹脂流を大きく増大させずに中間流の流れを確保することができ、この点からもヒンジ受部の先端部でのウエルドおよびボイドの発生を確実に抑制することができる。その結果、ヒンジ受部の先端部の強度低下を軽減できる。また、隆起部は係合穴の外側を塞いでいるので、ヒンジ受部全体の強度を高めることができる。
【0010】
好ましくは、前記隆起部は、前記ヒンジ受部の先端まで延びている。
好ましくは、前記ヒンジ受部が径方向外側に向かって突出する突出部と、この突出部の先端部から前記第2分割体側に延びる延出部とを有して略L字形をなし、前記延出部に前記係合穴が形成されており、前記隆起部は、前記突出部の外面から前記延出部の外面まで連続して形成されている。
好ましくは、前記隆起部のヒンジ受部の外面からの高さが、前記ヒンジ受部の肉厚の10%以上である。
上記構成によれば、隆起部を経る樹脂の流れを円滑かつ十分にヒンジ部の先端部まで円滑に供給できるので、より一層ウエルドの発生およびボイド発生を抑制できる。
【0011】
軽量化と高強度化を図るために前記第1、第2分割体が、ガラス繊維入りの樹脂により形成されている場合に、樹脂合流部でのガラス繊維の乱れを抑制できるので、ヒンジ受部の先端部での大幅な強度低下を回避することができる。
【0012】
射出成形直後の前記第1、第2本体部の他端部には、径方向外側に突出する第1、第2締結受部がそれぞれ一体に設けられ、これら第1、第2締結受部が前記締結手段により互いに近づく方向に締め付けられるようになっており、前記ヒンジ受部の先端面と前記ヒンジ突起の先端面と前記第1、第2締結受部の先端面には、凸部が形成されている。
上記構成によれば、樹脂管接続の役割を担わない凸部を、樹脂の最終充填箇所とすることができる。
【0013】
本発明の他の態様は、樹脂管用接続装置を製造する方法において、前記第1分割体を成形するための第1金型は、前記第1本体部を成形するための第1本体部成形空間と、前記ヒンジ受部を成形するためのヒンジ受部成形空間と、前記隆起部を成形するための隆起部成形空間とを有しており、前記第1分割体の射出成形に際して、前記第1本体部成形空間に連なるゲートから樹脂が注入され、この樹脂が前記第1本体部成形空間を経て前記ヒンジ受部成形空間および前記隆起部成形空間に流れ込むことを特徴とする。
【0014】
好ましくは、前記樹脂管用接続装置の前記第1、第2本体部の他端部には、前記締結手段により互いに締め付けられる第1、第2締結受部が、径方向外側に突出して形成されており、
前記第1金型は、前記第1締結受部を成形するための第1締結受部成形空間をさらに有し、前記ゲートが前記第1本体部の外周面の周方向中央かつ前記軸線方向中央に対応する位置に配置され、前記第1分割体の射出成形に際して、前記ゲートから前記第1本体部成形空間に注入された樹脂が、前記ヒンジ受部成形空間および前記隆起部成形空間に向かって流れるとともに、反対側の前記第1締結受部成形空間に向かって流れ、前記第2分割体を成形するための第2金型は、前記第2本体部を成形するための第2本体部成形空間と、前記ヒンジ突起を成形するためのヒンジ突起成形空間と、前記第2締結受部を成形するための第2締結受部成形空間を有し、前記ゲートが、前記第2本体部の外周面の周方向中央かつ前記軸線方向中央に対応する位置に配置され、前記第2分割体の射出成形に際して、前記ゲートから前記第2本体部成形空間に注入された樹脂が、前記ヒンジ突起成形空間に向かって流れるとともに、反対側の前記第2締結受部成形空間に流れ込む。
上記方法によれば、第1、第2分割体の両端近傍を樹脂の最終充填箇所とすることができ、第1、第2本体部が最終充填箇所となるのを回避することができ、第1、第2本体部の強度を確保することができる、
【0015】
好ましくは、前記第1金型はさらに、前記ヒンジ受部の先端面に第1凸部を成形するための第1凸部成形空間と、前記第1締結受部の先端面に第2凸部を成形するための第2凸部成形空間を有し、前記第1分割体の射出成形に際して、前記ヒンジ受部成形空間と前記隆起部成形空間を経た樹脂が、最終的に前記第1凸部成形空間に充填されるとともに、前記第1締結受部成形空間を経た樹脂が、最終的に前記第2凸部成形空間に充填され、
前記第2金型はさらに、前記ヒンジ突起の先端面に第3凸部を成形するための第3凸部成形空間と、前記第2締結受部の先端面に第4凸部を成形するための第4凸部成形空間を有し、前記第2分割体の射出成形に際して、前記ヒンジ突起成形空間を経た樹脂が、最終的に前記第3凸部成形空間に充填されるとともに、前記第2締結受部成形空間を経た樹脂が、最終的に前記第4凸部成形空間に充填される。
上記方法によれば、第1、第2分割体の射出成形の際に、樹脂管接続の役割を担わない凸部を最終充填箇所とすることができ、他の部位でのウエルド発生を確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、射出成形時のウエルドに起因する第1分割体のヒンジ受部の強度低下を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る樹脂管用接続装置により、2本の樹脂管を接続する工程を順に示す縦断面図であり、(A)は接続工程の途中の状態を示し、(B)は接続工程が完了した状態を示す。
図2】同接続装置による樹脂管の接続工程を順に示す横断面図であり、(A)は接続工程の途中の状態を示し、(B)は接続工程が完了した状態を示す。
図3】同接続装置の射出成形直後の上下一対の分割体を、樹脂管の軸線方向から見た正面図である。
図4】同射出成形直後の上下一対の分割体を示す側面図である。
図5】(A)は上側分割体の平面図、(B)は下側分割体の底面図である。
図6】(A)、(B)は、上側分割体を異なる方向から見た斜視図である。
図7】(A)、(B)は、下側分割体を異なる方向から見た斜視図である。
図8】上側分割体を射出成形する際の樹脂の流れを示す側面図である。
図9】比較例となる公知の上側分割体を射出成形する際の樹脂の流れを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照しながら説明する。
≪樹脂管の構成≫
最初に図1を参照しながら接続対象となる樹脂管1,2について説明する。樹脂管1,2はポリエチレン等の樹脂からなり、一端部に環状のフランジ部1a,2aを有している。フランジ部1a,2aの先端面が軸線Lと直交する突き合わせ面1x、2xとなっており、反対側の面がテーパ面1y、2yとなっている。樹脂管1,2は、上記フランジ部1a,2aを有する短管と樹脂管本体とをバット融着することにより製造されている。一方の樹脂管1のフランジ部1aの突き合わせ面1xには、環状溝1zが形成され、この環状溝1zにOリング3が嵌められている。
【0019】
樹脂管1,2の一端部内周には、短筒形状をなすインコア4がそれぞれ配置されている。インコア4はSUS304等のステンレス鋼からなり、その一端には径方向、外方向に突出する環状の鍔4aが形成されている。この鍔4aが樹脂管1,2の先端内周に形成された環状の凹部1b、2bに係合することにより、インコア4は軸方向の移動が制限された状態で、樹脂管1,2に装着されている。鍔4aは凹部1b、2bに収容されているため、後述するフランジ部1a,2aの突き合わせの支障にはならない。
【0020】
≪接続装置の構成≫
次に、上記樹脂管1,2を接続するための接続装置5について図1図2を参照しながら説明する。接続装置5は、上下一対の分割体すなわち上側分割体10(第1分割体)と下側分割体20(第2分割体)を備えている。
分割体10、20は、例えばガラス繊維強化樹脂(ナイロン、ポリプロピレン、ポリアセタール等)からなり、それぞれ略半円筒形状の本体部11、21(第1、第2本体部)を有している。本体部11、21の内径は樹脂管1,2の外径と略等しい。
【0021】
分割体10,20の本体部11,21は、完全な半円筒より周方向寸法が僅かに短い。すなわち、上側分割体10の本体部11の周方向の端面11a,11bは、本体部11の内周の半径中心を通る平面より僅かに後退しており、この平面と平行をなしている。同様に、下側分割体20の本体部21の周方向の端面21a,21bは、本体部21の内周の半径中心を通る平面より僅かに後退しており、この平面と平行をなしている。
【0022】
分割体10,20の本体部11,21の内周には、周方向に略半円をなして延びる嵌合溝12,22が形成されている。嵌合溝12,22の両側にはテーパ面12a、22aが形成されている。このテーパ面12a、22aのテーパ角度は、樹脂管1,2のフランジ部1a,2aのテーパ面1y、2yと等しい。嵌合溝12,22の断面形状は、後述するようにフランジ部1a,2aの突き合わせ面1x、2xが接した状態でのフランジ部1a、2aの断面形状と略等しい。
【0023】
上側分割体10の本体部11の一端部には、ヒンジ受部15が本体部11と一体をなして設けられている。このヒンジ受部15は、本体部11の一端部から径方向外側に突出する突出部15aと、この突出部15aの先端部から端面11aを越え端面11aと直交して下方に(下側分割体20に向かって)延びる延出部15bを有して、略L字形をなしている。
【0024】
ヒンジ受部15の延出部15bには係合穴16が形成されている。係合穴16は略矩形をなしている。ヒンジ受部15の先端部すなわち係合穴16の下側の部位15xは荷重受部として提供される。
【0025】
下側分割体20の本体部21の一端部には、径方向外方向に突出するヒンジ突起25が本体部21と一体に形成されている。ヒンジ突起25の断面形状は矩形をなし、その上面は本体部21の端面21aと面一をなしている。ヒンジ突起25の縦寸法、横寸法は、上側分割体10の係合穴16の縦寸法、横寸法より若干短い。
後述するように下側分割体20のヒンジ突起25が上側分割体10の係合穴16に挿入されることにより、ヒンジ手段Hが構成される。このヒンジ手段Hは、上側分割体10を下側分割体20に対し、樹脂管1,2の軸線Lと直交する平面に沿って相対回動可能に連結する。
【0026】
分割体10、20の本体部11,21の他端部には、径方向外側に突出する締結受部18、28(第1、第2締結受部)が、それぞれ本体部11,21と一体をなして形成されている。締結受部18の下面は本体部11の端面11bと面一をなし、締結受部28の上面は本体部21の端面21bと面一をなしている。締結受部18、28には、貫通穴18a,28aが形成されている。締結受部28の下面には、貫通穴28aを囲む回り止め用凸部29が形成されている。
図2(B)に示すように、上記締結受部18,28を締結するための締結手段30は、ボルト31とナット32を有している。
【0027】
本実施形態では、ヒンジ受部15の外面に、突出部15aの基端から延出部15の先端にわたり、ヒンジ受部15の全長にわたって連続して延びる隆起部40が形成されている。この隆起部40は、係合穴16の外側を塞いでいる。図2(B)参照に示すように、隆起部40の高さT40は、ヒンジ受部15の延出部15bの厚さT15の10%以上である。図4に示すように、隆起部40の幅W40(樹脂管1,2の軸線L方向の寸法)は、係合穴16の幅W16より大きくヒンジ受部15の幅W15より狭い。より具体的には、隆起部40の両側縁は、ヒンジ受部15の両側縁から遠く、係合穴16の両側縁に近い位置にある。
【0028】
≪接続装置による樹脂管の接続工程≫
上記接続装置5による樹脂管1,2の接続工程について説明する。図1(A)、図2(A)に示すように、最初に樹脂管1,2のフランジ部1a,2aを、Oリング3が樹脂管2の突き合わせ面2xに軽く接する程度に近づけた状態で、下側分割体20に乗せる。フランジ部1a,2aが嵌合溝22に位置合わせされ、その一部が嵌合溝22に収容される。
【0029】
次に、上側分割体10を下側分割体20に対して傾斜姿勢のまま横方向から近づけ、ヒンジ受部15の係合穴16にヒンジ突起25を挿入する。
次に、上側分割体10を下側分割体20に近づけるように支点Fを中心として回動させることにより、上側分割体10の締結受部18が下側分割体20の締結受部28に近づき対峙する。この状態で、上側分割体10の嵌合溝12内にもフランジ部1a,2aの一部が収容される。
【0030】
次に、回り止め用凸部29間にナット32を回動不能に嵌めた状態で、図2(B)に示すようにボルト31を分割体10、20の締結受部18、28の貫通穴18a,28aに通してナット32に螺合させ、締付方向に回す。これにより、下側分割体20と上側分割体10により樹脂管1,2のフランジ部1a,2aを挟んだ状態で締め付ける。この径方向内側への締め付け力は、嵌合溝12,22の両側のテーパ面12a,22aとフランジ部1a,2aのテーパ面1y、2yの作用により、フランジ部1a,2aを互いに近づける軸方向の力に変換される。その結果、図1(B)に示すように、フランジ部1a,2aの突き合わせ面1x、2x同士がOリング3の弾性変形を伴って面接触する。このようにして接続工程が完了する。
【0031】
上記ボルト31の締め付けにより、分割体10,20の締結受部18,28同士が近づき、反対側が互いに離れる方向に力が作用する。そのため、ヒンジ突起25は、ヒンジ受部15の先端部15xに強く当たる。これにより、下側分割体20と上側分割体10が、フランジ部1a,2aを強く締め付けることができる。
【0032】
≪射出成形直後の第1、第2分割体の形状≫
図3図7は、射出成形直後の分割体10,20の形状を示している。射出成形直後の上側分割体10のヒンジ受部15の先端面(下端面)には、捨てリブ51(第1凸部)が形成されている。この捨てリブ51は、ヒンジ受部15の先端面の幅方向(樹脂管1,2の軸線L方向)の中央に形成され、ヒンジ受部15の厚み方向に延びている。上側分割体10の締結受部18の幅方向中央にも、締結受部18の厚み方向に延びる捨てリブ52(第2凸部)が形成されている。
【0033】
射出成形直後の下側分割体20のヒンジ突起25の先端面の幅方向中央には、ヒンジ突起の厚み方向に延びる捨てリブ53(第3凸部)が形成されており、締結受部28の先端面の幅方向中央にもその厚み方向に延びる捨てリブ54(第4凸部)が形成されている。
【0034】
上記捨てリブ51~54は、樹脂管1,2を接続する際に何の役割も果たさないので、成形後に除去され、これにより、分割体10,20は図1図2に示すように捨てリブ51~54を有さない最終製品形状となる。ただし、捨てリブ51~54が接続装置5の機能において支障がなければ、そのまま除去せずに残しておいてもよい。なお、捨てリブ51~54はそれぞれ幅方向中央の1箇所に形成したが、例えば幅方向中央を挟んだ対称位置にある2箇所に形成してもよい。
【0035】
図5図7に示すように、分割体10,20の本体部11,21の外周面には、周方向中央かつ幅方向中央にゲート痕60、70がそれぞれ残されている。
【0036】
≪接続装置の製造方法≫
次に、接続装置5の製造方法、特に分割体10,20の射出成形工程について説明する。以下、分割体10,20をそれぞれ射出成形するための金型および成形空間について説明するが、その形状は図3図7に示す分割体10,20の成形直後の形状から容易に理解できるので、図示を省略する。
【0037】
上側分割体10の射出成形に用いられる第1金型は、本体部11を成形するための本体部成形空間(第1本体部成形空間)と、ヒンジ受部15を成形するためのヒンジ受部成形空間と、締結受部18を成形するための締結受部成形空間(第1締結受部成形空間)と、隆起部40を成形するための隆起部成形空間と、捨てリブ51,52をそれぞれ成形するための捨てリブ成形空間(第1、第2凸部成形空間)とを備えている。ゲートは、上記本体部成形空間に連なり、上述したゲート痕60に対応する位置にある。
【0038】
上側分割体10の射出成形の際、ゲートから注入された樹脂は、本体部成形空間を満たしながらヒンジ受部成形空間と隆起部成形空間に流れ込み、最終的に捨てリブ成形空間に充填されるとともに、反対側の締結受部成形空間に流れ込み、最終的に捨てリブ成形空間に充填される。これにより、本体部11とヒンジ受部15と隆起部40と捨てリブ51が成形されるとともに、反対側で締結受部18と捨てリブ52が成形される。
【0039】
ヒンジ受部15での樹脂の流れについて説明する。最初に、図9を参照しながら比較例となる公知の接続装置(特許文献1に開示されている接続装置)のヒンジ受部での樹脂の流れについて説明する。なお、図9の比較例において本実施形態に対応する構成部には図において同番号を付す。この比較例では、ヒンジ受部15に係合穴16を塞ぐ隆起部が形成されていない。そのため、本体部成形空間からの樹脂は、図9の矢印で示すように、ヒンジ受部成形空間の両側部(係合穴16を挟んだ両側部)に分流し、ヒンジ受部成形空間の先端部で再合流する。その結果、ウエルドやボイドが発生しやすい。
【0040】
これに対して本実施形態では、図8の矢印で示すように、樹脂は本体部成形空間からヒンジ受部成形空間の両側部を流れるとともに、中央の隆起部成形空間にも流れてヒンジ受部成形空間の先端部に供給されるので、ヒンジ受部成形空間の両側部を流れた樹脂がヒンジ受部成形空間の先端部で合流する際のウエルドの発生を抑制することができ、この合流に伴う空気巻き込みによるボイドの発生も抑制することができる。
【0041】
隆起部40の幅がヒンジ受部15の幅より狭いため、ヒンジ受部成形空間の両側部の樹脂流量を大幅に増やすことなく、隆起部成形空間の樹脂の流れを確保ことができるので、この点からもウエルドおよびボイドの発生を抑制できる。また、隆起部40は、突出部15aと延出部15bにわたり、ヒンジ受部15の全長に形成されていること、および隆起部40の高さがヒンジ受部15の厚さの10%以上であることにより、十分な樹脂量を隆起部成形空間からヒンジ受部成形空間の先端部に供給することができ、この点からもウエルド発生、ボイド発生を確実に抑制することができる。その結果、ヒンジ受部15の強度の低下を軽減できる。特にガラス繊維強化樹脂で成形する場合には、合流による樹脂繊維配向の乱れを抑制でき、大幅な強度低下を回避することができる。
【0042】
樹脂注入は、本体部成形空間の周方向中央かつ幅方向中央から開始されるため、最終充填箇所は上側分割体10の成形空間の末端となり、本体部11が最終充填箇所になるのを確実に回避できるので、本体部11がウエルドによって強度の低下を招く不都合を回避できる。
【0043】
また、接続装置5の本来の機能に寄与しない捨てリブ51,52が最終充填箇所になり、ヒンジ受部15や締結受部18が最終充填箇所にならないため、ヒンジ受部15、締結受部18の強度低下を免れることができる。
【0044】
下側分割体20の射出成形に用いられる第2金型は、本体部21を成形するための本体部成形空間(第2本体部成形空間)と、ヒンジ突起25を成形するためのヒンジ突起成形空間と、締結受部28を成形するための締結受部成形空間(第2締結受部成形空間)と、捨てリブ53,54をそれぞれ成形するための捨てリブ成形空間(第3、第4凸部成形空間)とを備えている。ゲートは、上記本体部成形空間に連なり、上述したゲート痕70に対応する位置にある。
【0045】
下側分割体20の射出成形の際、ゲートから注入された樹脂は、本体部成形空間を満たしながらヒンジ突起成形空間に流れ込み、最終的に捨てリブ成形空間に充填されるとともに、反対側の締結受部成形空間に流れ込み、最終的に捨てリブ成形空間に充填される。これにより、本体部21とヒンジ突起25と捨てリブ53が成形されるとともに、反対側で締結受部28と捨てリブ54が成形される。
【0046】
樹脂注入は、本体部成形空間の周方向中央かつ幅方向中央から開始されるため、最終充填箇所は下側分割体20の成形空間の末端となり、本体部21が最終充填箇所になるのを確実に回避できるので、本体部21がウエルドによって強度の低下を招く不都合を回避できる。
【0047】
また、接続装置5の本来の機能に寄与しない捨てリブ53,54が最終充填箇所になり、ヒンジ突起25や締結受部28が最終充填箇所にならないため、ヒンジ突起25、締結受部28の強度低下を免れることができる。
【0048】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨に反しない限りにおいて種々の改変をなすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、端部にフランジ部を有する樹脂管を接続する装置及びその製造方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1、2 樹脂管
1a,2a フランジ部
1x、2x 突き合わせ面
1y、2y テーパ面
5 接続装置
10 上側分割体(第1分割体)
11 本体部(第1本体部)
12 嵌合溝
12a テーパ面
15 ヒンジ受部
15a 突出部
15b 延出部
16 係合穴
18 締結受部(第1締結受部)
20 下側分割体(第2分割体)
21 本体部(第2本体部)
22 嵌合溝
22a テーパ面
25 ヒンジ突起
28 締結受部(第2締結受部)
30 締結手段
31 ボルト
32 ナット
40 隆起部
51~54 捨てリブ(第1~第4凸部)
H ヒンジ手段
L 樹脂管の軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9