IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝エネルギーシステムズ株式会社の特許一覧

特開2023-43514マイクログリッドシステム及びマイクログリッドシステムの制御方法
<>
  • 特開-マイクログリッドシステム及びマイクログリッドシステムの制御方法 図1
  • 特開-マイクログリッドシステム及びマイクログリッドシステムの制御方法 図2
  • 特開-マイクログリッドシステム及びマイクログリッドシステムの制御方法 図3
  • 特開-マイクログリッドシステム及びマイクログリッドシステムの制御方法 図4
  • 特開-マイクログリッドシステム及びマイクログリッドシステムの制御方法 図5
  • 特開-マイクログリッドシステム及びマイクログリッドシステムの制御方法 図6
  • 特開-マイクログリッドシステム及びマイクログリッドシステムの制御方法 図7
  • 特開-マイクログリッドシステム及びマイクログリッドシステムの制御方法 図8
  • 特開-マイクログリッドシステム及びマイクログリッドシステムの制御方法 図9
  • 特開-マイクログリッドシステム及びマイクログリッドシステムの制御方法 図10
  • 特開-マイクログリッドシステム及びマイクログリッドシステムの制御方法 図11
  • 特開-マイクログリッドシステム及びマイクログリッドシステムの制御方法 図12
  • 特開-マイクログリッドシステム及びマイクログリッドシステムの制御方法 図13
  • 特開-マイクログリッドシステム及びマイクログリッドシステムの制御方法 図14
  • 特開-マイクログリッドシステム及びマイクログリッドシステムの制御方法 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043514
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】マイクログリッドシステム及びマイクログリッドシステムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20230322BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20230322BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
H02J3/00
H02J13/00 301A
H02J13/00 311S
H02J3/38 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151191
(22)【出願日】2021-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 悠生
(72)【発明者】
【氏名】河内 駿介
(72)【発明者】
【氏名】秋山 雪菜
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 廣次
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 高弘
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AC08
5G064CB06
5G064CB11
5G064CB19
5G066AA09
5G066HB04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】インバータ電源を主体とし構成されるマイクログリッドシステムが自立運転をしている場合に、事故区間を特定するマイクログリッドシステム及びマイクログリッドシステムの制御方法を提供する。
【解決手段】マイクログリッドシステム1は、複数のインバータ電源4a~4nが接続された配電系統2と、配電系統を複数の区間に分ける複数の開閉器3a~3mと、複数のインバータ電源の電力の出力を停止する停止制御部を有するインバータ電源と、複数の開閉器を開制御する第1制御部、複数の開閉器が開制御されてから、複数のインバータ電源のうち予め指定した代表インバータ電源が電力の出力を再開した場合、開制御された複数の開閉器を予め指定した順序で閉制御する第2制御部及び系統電圧が閾値を下回った場合、第2制御部により閉制御された開閉器と対応する区間を事故区間と判定する第1判定部を有する開閉制御装置と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のインバータ電源が接続された配電系統と、
前記複数のインバータ電源の間に設けられ、前記配電系統を複数の区間に分ける複数の開閉器と、
系統電圧が閾値を下回った場合に前記複数のインバータ電源の電力の出力を停止する停止制御部と、
系統電圧が閾値を下回った場合に前記複数の開閉器を開制御する第1制御部と、
前記複数の開閉器が開制御されてから、前記複数のインバータ電源のうち予め指定した代表インバータ電源が電力の出力を再開した場合、開制御された前記複数の開閉器を予め指定した順序で閉制御する第2制御部と、
系統電圧が閾値を下回った場合、前記第2制御部により閉制御された開閉器と対応する区間を事故区間と判定する第1判定部と、
を備えるマイクログリッドシステム。
【請求項2】
前記事故区間と判定された区間に対応する開閉器をロックする第3制御部を更に備え、
前記第2制御部は、ロックされた開閉器を閉制御しない、
請求項1に記載のマイクログリッドシステム。
【請求項3】
前記代表インバータ電源は、マイクログリッドの両端のうち、何れかの区間に連系している、
請求項1又は2に記載のマイクログリッドシステム。
【請求項4】
前記配電系統内における前記事故区間の位置に基づいて、給電できる可能性がある区間が存在するか否かを判定する第2判定部と、
給電できる可能性がある区間が存在する場合、新たに代表インバータ電源を指定する指定部と、
新たに指定された代表インバータ電源に応じて、前記複数の開閉器を閉制御するタイミングを変更する第1変更部と、を更に備え、
前記第2制御部は、記複数の開閉器が開制御されてから、前記複数のインバータ電源のうち新たに指定した代表インバータ電源が電力の出力を再開した場合、開制御された前記複数の開閉器を変更したタイミングで閉制御する、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のマイクログリッドシステム。
【請求項5】
前記指定部は、前記配電系統内における前記事故区間の位置と予め定めた優先順位とに基づいて、前記代表インバータ電源を指定する、
請求項4に記載のマイクログリッドシステム。
【請求項6】
前記指定部は、前記代表インバータ以外のインバータ電源のうち、自身が接続されている区間の電圧が閾値を下回った状態が、前記インバータ電源毎に設定された設定時間を超えて継続された場合、前記代表インバータ電源として新たに指定する、
請求項4に記載のマイクログリッドシステム。
【請求項7】
上位出力系統と、
フィーダ遮断器と、
前記上位出力系統に事故が発生した場合、前記フィーダ遮断器を開制御して前記上位出力系統との接続を遮断する遮断部と、
前記上位出力系統の事故が解消された後に、前記フィーダ遮断器を閉制御して前記上位出力系統と接続する接続部と、
上位系統と接続されている場合と遮断されている場合とで、前記複数の開閉器を閉制御する順序を必要に応じて変更する第2変更部と、を更に備える、
請求項1乃至6の何れか1項に記載のマイクログリッドシステム。
【請求項8】
複数のインバータ電源が接続された配電系統と、前記複数のインバータ電源の間に設けられ、前記配電系統を複数の区間に分ける複数の開閉器と、を備えるマイクログリッドシステムの制御方法であって、
系統電圧が閾値を下回った場合に前記複数のインバータ電源の電力の出力を停止する停止制御ステップと、
系統電圧が閾値を下回った場合に前記複数の開閉器を開制御する第1制御ステップと、
前記複数の開閉器が開制御されてから、前記複数のインバータ電源のうち予め指定した代表インバータ電源が電力の出力を再開した場合、開制御された前記複数の開閉器を予め指定した順序で閉制御する第2制御ステップと、
系統電圧が閾値を下回った場合、前記第2制御ステップで閉制御された開閉器と対応する区間を事故区間と判定する第1判定ステップと、
を含むマイクログリッドシステムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、マイクログリッドシステム及びマイクログリッドシステムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、災害時や大規模停電時の電力供給や分散電源の効率的運用を目的としてマイクログリッドシステムの導入が進められている。マイクログリッドシステムは、回転機型発電機やインバータ電源などの分散電源により構成された小規模の電力システムである。
【0003】
自立運転をしているマイクログリッドシステムにおいて地絡事故や短絡事故などの系統事故が発生した場合、事故の発生を検出し、事故区間を特定・分離したうえで、事故区間以外の健全区間には給電を継続することが望ましい。
【0004】
従来、一般的な配電系統で系統事故が発生した場合、配電系統内に配置された区分開閉器を利用した順送式故障区間検出方式を用いて事故区間を特定・分離する技術が知られている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】電気事業講座編集幹事会編纂 「電気事業事典」 エネルギーフォーラム 2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、自立運転をしているマイクログリッドシステムは、上位系統およびフィーダ遮断器と接続されていないため、順送式故障区間検出方式を用いて事故区間を特定することはできない。
【0007】
上記を鑑みて各実施形態が解決する課題は、インバータ電源を主体とし構成されるマイクログリッドシステムが自立運転をしている場合に、事故区間を特定することを可能とする新たな手法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態のマイクログリッドシステムは、複数のインバータ電源が接続された配電系統と、前記複数のインバータ電源の間に設けられ、前記配電系統を複数の区間に分ける複数の開閉器と、系統電圧が閾値を下回った場合に前記複数のインバータ電源の電力の出力を停止する停止制御部と、系統電圧が閾値を下回った場合に前記複数の開閉器を開制御する第1制御部と、前記複数の開閉器が開制御されてから、前記複数のインバータ電源のうち予め指定した代表インバータ電源が電力の出力を再開した場合、開制御された前記複数の開閉器を予め指定した順序で閉制御する第2制御部と、系統電圧が閾値を下回った場合、前記第2制御部により閉制御された開閉器と対応する区間を事故区間と判定する第1判定部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係るマイクログリッドシステムの全体構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、第1実施形態に係るマイクログリッドシステムの各装置の構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、第1実施形態に係る開閉制御装置の制御部の機能構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、第1実施形態に係る電力変換装置の制御部の機能構成の一例を示すブロック図である。
図5図5は、第1実施形態に係るEMSの制御部の機能構成の一例を示すブロック図である。
図6図6は、第1実施形態に係る開閉制御装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、第3実施形態に係るマイクログリッドシステムの全体構成の一例を示すブロック図である。
図8図8は、第3実施形態に係るマイクログリッドシステムの各装置の構成の一例を示すブロック図である。
図9図9は、第3実施形態に係る開閉制御装置の制御部の機能構成の一例を示すブロック図である。
図10図10は、第3実施形態に係るEMSの制御部の機能構成の一例を示すブロック図である。
図11図11は、第3実施形態に係るEMSの処理の一例を示すフローチャートである。
図12図12は、第4実施形態に係るEMSの処理の一例を示すフローチャートである。
図13図13は、第5実施形態に係るマイクログリッドシステムの全体構成の一例を示すブロック図である。
図14図14は、第5実施形態に係る開閉制御装置の制御部の機能構成の一例を示すブロック図である。
図15図15は、第5実施形態に係るEMSの制御部の機能構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るマイクログリッドシステムの実施例について図面を参照して説明する。
【0011】
(第1実施形態)
<第1実施形態に係るマイクログリッドシステムの全体構成>
第1実施形態に係るマイクログリッドシステム1について説明する。図1は、第1実施形態に係るマイクログリッドシステム1の全体構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、マイクログリッドシステム1は、配電系統2、開閉器3a~3m、開閉制御装置30a~30m、インバータ電源4a~4n、昇圧トランス5a~5n、及びEMS(エネルギーマネジメントシステム)6を有する。
【0012】
配電系統2は、電力供給の系統である。配電系統2には、複数のインバータ電源4が接続される。第1実施形態では、配電系統2は、開閉器3a~3mにより区間2a~2nまでの14個の区間に分けられる。なお、区間の数は一例であり、14個に限定されるものではない。配電系統2には負荷(図示しない)が接続される。負荷は、電力を消費する装置や機器である。
【0013】
開閉器3a~3mは、配電系統2を複数の区間に分ける。開閉器3a~3mは、電路を開閉する装置である。以下、3a~3nを区別しない場合には、単に開閉器3という。開閉制御装置30a~30mは、開閉器3a~3mの開制御及び閉制御等の制御を行う装置である。以下、30a~30mを区別しない場合には、単に開閉制御装置30という。開閉制御装置30についての詳細は後述する。
【0014】
インバータ電源4a~4nは、直流電圧を高周波でオン・オフして入力又は負荷出力制御を行う方式の電源である。以下、4a~4nを区別しない場合には、単にインバータ電源4という。インバータ電源4は、配電系統2を介し、負荷に対して電力を供給する。
【0015】
第1実施形態では、インバータ電源4aが代表インバータ電源として予め指定されている。代表インバータ電源は、インバータ電源4a~4nのうち、配電系統2に系統事故が生じインバータ電源4a~4nの出力が停止した場合に最も早く電力の出力を再開するインバータ電源である。代表インバータ電源の第2演算部243(図4参照)は、自身が電圧及び周波数を確立する制御を行う。
【0016】
また、第1実施形態では、代表インバータ電源は、マイクログリッドシステム1が構成するマイクログリッド(以下、単にマイクログリッドともいう)の端部に接続されているインバータ電源4のうち、何れかのインバータ電源4である。
【0017】
したがって、図1の例では、インバータ電源4nが代表インバータ電源として指定されていてもよい。また、図1の例で、インバータ電源4a又はインバータ電源4nの何れを代表インバータ電源として指定するかを切り替えられるように構成してもよい。
【0018】
また、各インバータ電源4とEMS6とは、通信線7bにより接続される。インバータ電源4の第2演算部25は、通信線7bを介してEMS6の制御部61(図2参照)から送信される出力電力目標値TVを受信する。インバータ電源4の詳細については、後述する。
【0019】
昇圧トランス5a~5nは、インバータ電源4a~4nから出力された交流電圧を高電圧に昇圧する。以下、5a~5nを区別しない場合には、単に昇圧トランス5という。インバータ電源4の交流端は、昇圧トランス5を介して配電系統2に接続される。
【0020】
EMS6は、電力の使用状況を管理する。EMS6は、電力出力目標値を設定し、電力変換装置20の制御部24へ送信する。EMS6の詳細については後述する。
【0021】
<第1実施形態に係るマイクログリッドシステムの各装置の構成>
次に、第1実施形態に係るマイクログリッドシステム1の各装置の構成について説明する。図2は、第1実施形態に係るマイクログリッドシステムの各装置の構成の一例を示すブロック図である。
【0022】
まず、開閉制御装置30の構成について説明する。開閉制御装置30は、図2に示すように、制御部31を備える。
【0023】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有する。ROMは、CPUが実行する各種プログラムや各種データを記憶する。RAMは、CPUがプログラムを実行する際に一時的にデータやプログラムを記憶する。制御部31は、CPUがROMから読み出したプログラムをRAMに展開して実行することにより、開閉制御装置30を統括的に制御する。
【0024】
ここで、開閉制御装置30の制御部31の機能構成について説明する。図3は、開閉制御装置30の制御部31の機能構成の一例を示す図である。制御部31は、第1制御部311、第2制御部312、第1判定部313、及び第3制御部314を機能構成として備える。
【0025】
より詳細には、開閉制御装置30は、制御部31のCPUと制御部31のROM等に記憶されたプログラムとの協働により、上記機能構成をソフトウェア構成として備える。なお、上記機能構成の一部又は全ては、制御部31のCPU又は専用回路等のハードウェア構成により実現されてもよい。
【0026】
開閉制御装置30は、電圧センサ等により、対応する開閉器(例えば、開閉制御装置30aの場合は、開閉器3a)の両端の電圧を計測している。また、両端の電圧のうちどちらかを参照する。(なお、どちらの電圧値を参照するかは予め設定されている。)
【0027】
第1制御部311は、開閉器3の開制御を制御する。具体的には、第1制御部311は、参照している電圧値が予め定めた閾値未満になる状態が所定時間を超えて継続した場合に、対応する開閉器3に制御信号CSを送信し、開閉器3を開制御する。
【0028】
第2制御部312は、対応する開閉器3が開制御されてから、参照している電圧値が回復した場合、開制御された開閉器3を閉制御する。具体的には、第2制御部312は、参照している電圧値が、閾値以上になる状態が所定時間を超えて継続した場合に、対応する開閉器3に制御信号CSを送信し、開閉器3を閉制御する。
【0029】
ここで、開閉制御装置30が対応する開閉器の両端の電圧のうち、どちらの電圧を参照するかは開閉器3の閉制御順序に従い、予め定められる。例えば、第1実施形態では、開閉器3a、開閉器3b、開閉器3c・・・開閉器3mの順で閉制御される場合、全ての開閉制御装置30について、対応する開閉器3の左端の電圧値を参照するよう予め定められる。これにより、代表インバータ電源との距離が近い順に開閉器3が順次閉制御されることになる。
【0030】
第1判定部313は、対応する区間が事故区間であるか否かを判定する。具体的には、第1判定部313は、対応する開閉器3の閉制御後一定時間以内に、参照している電圧値が閾値未満となった場合、対応する区間(対応する開閉器3を閉制御することにより、新たに接続される区間)が事故区間であると判定する。
【0031】
なお、例えば、開閉器3a、開閉器3b・・・開閉器3nの順で閉制御される場合には、開閉器3a(開閉制御装置30a)に対応する区間は、区間2bである。また、例えば、開閉器3n、開閉器3m・・・開閉器3aの順で閉制御される場合には、開閉器3aに対応する区間は、区間2aである。このように、開閉器3の閉制御を行う順序によって、対応する区間は変化する。
【0032】
第3制御部314は、対応する開閉器3をロックする。具体的には、第3制御部314は、対応する区間が第1判定部313により事故区間と判定された場合に、対応する開閉器3(例えば、区間2bが事故区間と判定された場合は、開閉器3a)に制御信号CSを送信し、開閉器3をロックする。ロックされた開閉器3は、ロックが解除されるまで、閉制御されることがなくなる。これにより、事故区間に電力が供給されることがなくなるため、事故区間を分離することができる。
【0033】
次に、図2に戻り、インバータ電源4の構成について説明する。インバータ電源4は、図2に示すように、電源10及び電力変換装置20を備える。電源10は、直流電力を発電し電力変換装置20に供給する。例えば、電源10は、太陽光発電設備や風力発電設備等の再生可能エネルギー電源により構成される。
【0034】
また、例えば、電源10は蓄電池により構成されるものであってもよい。この場合、電源10は、配電系統2の交流電力が電力変換装置20により直流電力に変換され充電される。また、この場合、電源10は直流電力を出力し、電力変換装置20に供給する。
【0035】
電力変換装置20は、電源10から出力された直流電力を交流電力に変換して配電系統2に供給する。電力変換装置20は、昇圧トランス5及び電源10と接続されている。電力変換装置20は、電力変換部21、電圧電流計測部22、ゲートパルス生成部23、及び制御部24を備える。
【0036】
電力変換部21は、ゲートパルス生成部23が生成するゲート信号に基づいて、電源10から出力された直流電力を交流電力に変換する。
【0037】
電圧電流計測部22は、電圧計測値VV及び電流計測値CVを計測する。具体的には、電圧電流計測部22は、電力変換部21から出力される電力の電圧計測値VV及び電流計測値CVを測定する。
【0038】
ゲートパルス生成部23は、EMS6から送信された出力電力目標値TVに応じたゲート信号GSを生成する。
【0039】
制御部24は、CPU、ROM、RAMを有する。ROMは、CPUが実行する各種プログラムや各種データを記憶する。RAMは、CPUがプログラムを実行する際に一時的にデータやプログラムを記憶する。制御部24は、CPUがROMから読み出したプログラムをRAMに展開して実行することにより、電力変換装置20を統括的に制御する。
【0040】
ここで、電力変換装置20の制御部24の機能構成について説明する。図4は、電力変換装置20の制御部24の機能構成の一例を示す図である。制御部24は、通信部241、第1演算部242、及び第2演算部243を機能構成として備える。
【0041】
より詳細には、電力変換装置20は、制御部24のCPUと制御部24のROM等に記憶されたプログラムとの協働により、上記機能構成をソフトウェア構成として備える。なお、上記機能構成の一部又は全ては、制御部24のCPU又は専用回路等のハードウェア構成により実現されてもよい。
【0042】
通信部241は、EMS6との間の通信を制御する。具体的には、通信部241は、通信線7bを介してEMS6から送信される出力電力目標値TVを受信する。
【0043】
第1演算部242は、インバータ電源4を保護するための保護信号を生成し、ゲートパルス生成部23に送信する。具体的には、第1演算部242は、電圧電流計測部22で計測された電圧計測値VV及び電流計測値CVを受信し、電圧計測値VVが予め定めた上限値を超えた場合または予め定めた下限値未満になった場合、または電流計測値CVが予め定めた上限値を超えた場合に、保護信号を生成し、ゲートパルス生成部23に送信する。
【0044】
これにより、ゲートパルス生成部23からゲートをブロックさせるゲート信号GSが電力変換部21に送信される。そして、電力変換部21は、電力の出力を停止する。したがって、第1演算部242は、インバータ電源4の出力の停止を制御しているため、第1演算部242は、停止制御部の一例であると言える。
【0045】
第2演算部243は、電力変換部21が出力する電力を調整するための参照値を生成し、ゲートパルス生成部23に送信する。具体的には、第2演算部243は、通信部241により受信された出力電力目標値TV、並びに、電圧電流計測部22から受信した電圧計測値VV及び電流計測値CVに基づいて、参照値を生成し、ゲートパルス生成部23に送信する。
【0046】
これにより、ゲートパルス生成部23から、参照値に基づくゲート信号GSが電力変換部21に送信される。そして、電力変換部21は、ゲート信号GSに基づいて、直流電力を交流電力に変換し、配電系統2に出力する。
【0047】
解除部244は、電力変換部21のゲートブロックを解除する制御を行う。第1演算部242から保護信号がゲートパルス生成部23に送信されたことにより、インバータ電源4の出力が停止された場合、代表インバータ電源の解除部244は、出力が停止してから所定時間経過後に、解除信号を生成してゲートパルス生成部23に送信する。
【0048】
なお、代表インバータ電源以外のインバータ電源4(第1実施形態では、インバータ電源4b~4n)の解除部244は、電圧値が正常に回復した場合に、解除信号を生成してゲートパルス生成部23に送信する。
【0049】
これにより、ゲートパルス生成部23は、ゲートブロックを解除するゲート信号GSを生成し、電力変換部21に送信する。そして、電力変換部21は、ゲート信号GSに基づいて、ゲートブロックを解除する。ゲートブロックが解除されたことで、第2演算部243の制御により、インバータ電源4による電力の出力が再開される。
【0050】
次に、図2に戻り、EMS6の構成について説明する。EMS6は、図2に示すように、制御部61を備える。
【0051】
制御部61は、CPU、ROM、RAMを有する。ROMは、CPUが実行する各種プログラムや各種データを記憶する。RAMは、CPUがプログラムを実行する際に一時的にデータやプログラムを記憶する。制御部61は、CPUがROMから読み出したプログラムをRAMに展開して実行することにより、EMS6を統括的に制御する。
【0052】
ここで、EMS6の制御部61の機能構成について説明する。図5は、EMS6の制御部61の機能構成の一例を示す図である。制御部61は、設定部611及び通信部612を機能構成として備える。
【0053】
より詳細には、EMS6は、制御部61のCPUと制御部61のROM等に記憶されたプログラムとの協働により、上記機能構成をソフトウェア構成として備える。なお、上記機能構成の一部又は全ては、制御部61のCPU又は専用回路等のハードウェア構成により実現されてもよい。
【0054】
設定部611は、出力電力目標値TVを設定する。設定部611は、例えば、マイクログリッド内の電力消費に関するデータ等を蓄積し、蓄積したデータに基づいて、出力電力目標値TVを設定する。
【0055】
通信部612は、インバータ電源4との通信を制御する。具体的には、通信部612は、通信線7bを介して、設定部611が設定した出力電力目標値TVをインバータ電源4に送信する。
【0056】
<第1実施形態に係るマイクログリッドシステムの処理>
次に、第1実施形態に係るマイクログリッドシステムの処理について説明する。図6は、第1実施形態に係るマイクログリッドシステム1の開閉制御装置30の処理の一例を示すフローチャートである。
【0057】
前提として、マイクログリッド内で系統事故が発生し、電力変換装置20の制御部24の第1演算部242により保護信号が生成されたものとする。これにより、インバータ電源4の電力変換装置20の電力変換部21のゲートがブロックされる。そして、ゲートがブロックされたことで、全てのインバータ電源4の電力変換部21は、電力の出力を停止する。
【0058】
まず、開閉制御装置30の制御部31の第1制御部311は、参照している電圧値が閾値未満の状態が所定時間を超えて継続しているか否かを確認する(ステップS1)。参照している電圧値が閾値未満の状態が所定時間を超えて継続していない場合(ステップS1:No)、ステップS1の処理に戻る。
【0059】
一方、参照している電圧値が閾値未満の状態が所定時間を超えて継続している場合(ステップS1:Yes)、第1制御部311は、対応する開閉器3に制御信号CSを送信し、開閉器3を開制御する(ステップS2)。なお、全ての開閉制御装置30で同様の処理が行われるため、マイクログリッド内の全ての開閉器3が開制御される。
【0060】
その後、電力変換部21からの電力の出力が停止されてから所定時間が経過し、代表インバータ電源であるインバータ電源4aの電力変換装置20の制御部24の解除部244により、解除信号が生成される。これにより、インバータ電源4aの電力変換装置20の電力変換部21のゲートブロックが解除される。そして、電力変換部21は、電力の出力を再開する。
【0061】
各開閉制御装置の第2制御部312は、参照している電圧値が、閾値以上の状態が所定時間を超えて継続しているか否かを確認する(ステップS3)。
【0062】
参照している電圧値が閾値以上の状態が所定時間を超えて継続していない場合(ステップS3:No)、ステップS3の処理に戻る。一方、参照している電圧値が閾値以上の状態が所定時間を超えて継続している場合(ステップS3:Yes)、第2制御部312は、対応する開閉器3に制御信号CSを送信し、開閉器3を閉制御する(ステップS4)。
【0063】
なお、開閉制御装置30毎に、第2制御部312が参照する電圧は異なり、この例では、各開閉制御装置は対応する開閉器の左側の電圧を参照する。このため、インバータ電源4aとの距離が近い順に開閉器3が閉制御されることになる。
【0064】
第1判定部313は、自身を機能構成として備える開閉制御装置30と対応する区間が事故区間であるか否かを判定する(ステップS5)。具体的には、第1判定部313は、対応する開閉器3を閉制御した後、一定時間以内に参照している電圧値が閾値未満となるか否かにより、対応する区間が事故区間であるか否かを判定する。
【0065】
第1判定部313は、対応する開閉器3を閉制御した後、一定時間以内に参照している電圧値が閾値未満にならない場合、対応する区間が事故区間ではないと判定する。一定時間以内に参照している電圧値が閾値未満になった場合、対応する区間が事故区間であると判定する。
【0066】
対応する区間が事故区間でない場合(ステップS5:No)、新たに接続された区間の電圧値が回復し、その区間の電圧値が閾値以上の状態が所定時間を超えて継続することにより、次の開閉制御装置30が対応する開閉器3を閉制御する。一方、対応する区間が事故区間である場合(ステップS5:Yes)、第3制御部314は、対応する開閉器3に制御信号CSを送信し、開閉器3をロックし、ステップS1の処理に移行する(ステップS6)。
【0067】
なお、例えば、区間2mで系統事故が発生した場合、開閉制御装置30b、開閉制御装置30a、開閉制御装置30c、開閉制御装置30d、開閉制御装置30e・・・開閉制御装置30lの順で処理が行われる。
【0068】
この場合、開閉制御装置30kまでの開閉制御装置30では、対応する開閉器3を閉制御しても系統電圧は低下しない。開閉制御装置30lでは、対応する開閉器3を閉制御したときに系統電圧が低下する。開閉制御装置30lは、区間2mが事故区間であると判断し、開閉器3lをロックする。これにより、事故区間である区間2mを含む区間2m及び区間2nが分離される。
【0069】
このように、事故区間である区間2mを含む区間が分離されることで、マイクログリッドシステム1は、健全区間である区間2a~区間2lに対しては、電力の供給を継続することができる。
【0070】
<第1実施形態に係るマイクログリッドシステムの効果>
次に、第1実施形態に係るマイクログリッドシステム1の効果について説明する。第1実施形態に係るマイクログリッドシステム1は、系統事故が発生した場合にインバータ電源4全てを停止し、全ての開閉器3が参照している電圧値が閾値を下回った場合に開制御し、所定時間経過後に、予め指定した代表インバータ電源の電力の出力再開後、開制御された開閉器3を予め指定した順序で順次閉制御し、新たに区間が接続されたことにより電圧値が閾値を下回った場合、閉制御された開閉器3と対応する区間を事故区間と判定する。
【0071】
系統事故が発生した場合に、全てのインバータ電源4の出力を停止することにより、系統事故を検出できる。また、事故を検出してから所定時間経過後に、代表インバータ電源による電力の出力を再開させ、開閉器3を順次閉制御することにより、事故区間を特定することができる。
【0072】
したがって、第1実施形態に係るマイクログリッドシステム1によれば、複数のインバータ電源で構成されるマイクログリッド内における事故区間を特定することができる。
【0073】
また、第1実施形態に係るマイクログリッドシステム1は、事故区間と対応する開閉器3をロックする。これにより、事故区間と対応する開閉器3が閉制御されることがなくなり、特定した事故区間を含む区間を分離することができる。事故区間を含む区間を分離することにより、事故区間を含まない区間には給電を継続することができる。
【0074】
なお、上述した第1実施形態は、マイクログリッドシステム1の各装置が有する構成又は機能の一部を変更することで、適宜に変形して実施することも可能である。そこで、以下では、上述した第1実施形態に係る変形例を他の実施形態として説明する。なお、以下では、上述した第1実施形態と異なる点を主に説明することとし、既に説明した内容と共通する点については詳細な説明を省略する。また、以下で説明する変形例は、個別に実施されてもよいし、適宜組み合わせて実施されてもよい。
【0075】
<第1実施形態に係るマイクログリッドシステムの変形例1>
上述の第1実施形態では、各区間に1のインバータ電源4が設けられる形態について説明した。しかしながら、インバータ電源4が設けられない区間があってもよい。例えば、マイクログリッドシステム1は、区間2aにインバータ電源4aが設けられ、区間2bにはインバータ電源4が設けられず、区間2cにインバータ電源4bが設けられ、区間2dにはインバータ電源4が設けられないような構成であってもよい。
【0076】
本変形例によれば、マイクログリッド内をインバータ電源4の数よりも多い数の区間に区分けすることが可能になる。
【0077】
<第1実施形態に係るマイクログリッドシステムの変形例2>
上述の第1実施形態では、1の開閉制御装置30が1の開閉器3の開閉を制御する形態について説明した。しかしながら、1の開閉制御装置30が複数の開閉器3の開閉を制御してもよい。本変形例によれば、1の開閉制御装置30で複数の開閉器3の開閉を統括的に制御することができる。
【0078】
(第2実施形態)
第2実施形態に係るマイクログリッドシステム1について説明する。第2実施形態では、マイクログリッドの両端部に位置するインバータ電源4以外のインバータ電源4(例えば、図1では、インバータ電源4b~4m)についても代表インバータ電源として指定可能な構成について説明する。なお、第2実施形態の説明において、上述の第1実施形態と同様の動作を示す箇所には、図面等において同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0079】
<第2実施形態に係るマイクログリッドシステムの構成>
第2実施形態に係るマイクログリッドシステム1の構成は、第1実施形態の構成と同様であるが、例えば、第2実施形態に係るマイクログリッドシステム1では、マイクログリッドの端部ではない場所に位置するインバータ電源4cが予め代表インバータ電源として指定される。
【0080】
この場合、開閉制御装置30a、30bは対応する開閉器3の右側の電圧値を参照し、その他の開閉制御装置は、対応する開閉器3の左側の電圧を参照する。また、開閉器3cの左側の電圧値が回復してから開閉制御装置30cが開閉器3cの閉制御を行うまでの時間を、その他の開閉制御装置より長く設定する。
【0081】
これにより、図1の例で、インバータ電源4cが代表インバータ電源として指定される場合、開閉制御装置30により、開閉器3b、開閉器3a、開閉器3c、開閉器3d、開閉器3e・・・開閉器3mの順で順次閉制御される。
【0082】
なお、例えば、区間2mで系統事故が発生した場合、開閉制御装置30b、開閉制御装置30a、開閉制御装置30c、開閉制御装置30d、開閉制御装置30e・・・開閉制御装置30lの順で処理が行われる。
【0083】
この場合、開閉制御装置30kまでの開閉制御装置30では、対応する開閉器3を閉制御しても系統電圧は低下しない。開閉制御装置30lでは、対応する開閉器3を閉制御したときに系統電圧が低下する。開閉制御装置30lは、区間2mが事故区間であると判断し、開閉器3lをロックする。これにより、事故区間である区間2mを含む区間2m及び区間2nが分離される。
【0084】
<第2実施形態に係るマイクログリッドシステムの効果>
第2実施形態に係るマイクログリッドシステム1は、第1実施形態と同様の効果を有する。さらに、代表インバータ電源がマイクログリッドの両端の区間以外に連系している場合でも事故区間を特定することができる。
【0085】
(第3実施形態)
第3実施形態に係るマイクログリッドシステム1について説明する。第3実施形態では、EMS6と開閉器3とが通信線7により接続される構成について説明する。なお、第3実施形態の説明において、上述の第1実施形態及び第2実施形態と同様の動作を示す箇所には、図面等において同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0086】
<第3実施形態に係るマイクログリッドシステムの全体構成>
第3実施形態に係るマイクログリッドシステム1について説明する。図7は、第3実施形態に係るマイクログリッドシステム1の全体構成の一例を示すブロック図である。第3実施形態に係るマイクログリッドシステム1は、開閉制御装置30とEMS6とが通信線7で接続されている点で第1実施形態と異なる。
【0087】
<第3実施形態に係るマイクログリッドシステムの各装置の構成>
次に、第3実施形態に係るマイクログリッドシステム1の各装置の構成について説明する。図8は、第3実施形態に係るマイクログリッドシステム1の各装置の構成の一例を示すブロック図である。
【0088】
まず、第3実施形態に係る開閉制御装置30について説明する。図9は、第3実施形態に係る開閉制御装置30の制御部31の機能構成の一例を示す図である。制御部31は、通信部315を備える点が第1実施形態と異なる。
【0089】
通信部315は、EMS6との間の通信を制御する。具体的には、通信部315は、第1判定部313が対応する区間が事故区間であると判定した場合、通信線7を介してEMS6に、事故検出信号ADを送信する。事故検出信号ADには、事故区間と判定された区間の情報が含まれる。
【0090】
また、通信部315は、通信線7を介してEMS6から設定要求信号SDを受信する。そして、設定要求信号SDを受信した場合、通信部315は、通信線7を介してEMS6へ設定情報信号SIを送信する。設定情報信号SIには、電圧値が回復してから開閉制御装置30が対応する開閉器3の閉制御を行うまでの時間の設定、及び、対応する開閉器3のどちら側の電圧値を参照するか等の開閉器3の設定に関する情報が含まれる。
【0091】
また、通信部315は、通信線7を介してEMS6から設定変更信号CCを受信する。設定変更信号CCには、電圧値が回復してから開閉制御装置30が対応する開閉器3の閉制御を行うまでの時間の設定、及び、対応する開閉器3のどちら側の電圧値を参照するか等の開閉器3の設定の変更を指示する情報が含まれる。通信部315により、設定変更信号CCが受信されると、当該設定変更信号CCの内容に従い、対応する開閉器3の設定が必要に応じて変更される。
【0092】
次に、第3実施形態に係るインバータ電源4について説明する。第3実施形態でも、マイクログリッドシステム1が備えるインバータ電源4のうち、何れかのインバータ電源4が予め代表インバータ電源として指定されている。しかし、EMS6から代表インバータ電源指令RCが送信された場合、代表インバータ電源指令RCを受信したインバータ電源4が新たに代表インバータ電源として指定される点で第1実施形態と異なる。
【0093】
なお、代表インバータ電源指令RCは、電力変換装置20の制御部24の通信部241により受信される。
【0094】
次に、第3実施形態に係るEMS6について説明する。EMS6は、系統事故が発生した場合に、新たに代表インバータ電源を指定する処理を行う点が第1実施形態と異なる。さらに、EMS6は、新たに代表インバータ電源を指定する処理が行われた場合、開閉器3の閉制御順序を変更する処理を行う点も第1実施形態と異なる。以下、第3実施形態のEMS6の制御部61の機能構成について詳細に説明する。
【0095】
図9は、第3実施形態に係るEMS6の制御部61の機能構成の一例を示すブロック図である。制御部61は、設定部611、通信部612、第2判定部613、指定部614、及び変更部615を機能構成として備える。
【0096】
設定部611は、第1実施形態と同様のため詳細な説明を省略する。通信部612は、通信線7を介して開閉制御装置30から、事故検出信号ADを受信する。そして、通信部612は、事故検出信号ADを受信した場合、通信線7を介して全ての開閉制御装置30に設定要求信号SDを送信する。その後、通信線7を介して開閉制御装置30から、設定情報信号SIを受信する。
【0097】
また、通信部612は、通信線7を介して開閉制御装置30に、後述する変更部615により生成される設定変更信号CCを送信する。
【0098】
第2判定部613は、各開閉制御装置30から情報を受信し、給電できる可能性がある区間が存在するか否かを判定する。
【0099】
具体的には、まず、第2判定部613は、通信部612により、事故検出信号ADが受信された場合、通信部612と協働し、全ての開閉制御装置30に設定要求信号SDを送信する。その後、第2判定部613は、通信部612と協働し、設定要求信号SDに応答して各開閉制御装置30から送信される設定情報信号SIを受信する。第2判定部613は、設定情報信号SIに基づいて、事故区間であるか否かの判定が行われていない区間があるか否かを判定する。
【0100】
ここで、設定情報信号SIには、電圧値が回復してから開閉制御装置30が対応する開閉器3の閉制御を行うまでの時間の設定、及び、対応する開閉器3のどちら側の電圧値を参照するかの設定の情報が含まれる。このため、第2判定部613は、各開閉制御装置30からこれらの情報を受信し、代表インバータ電源の位置と合わせて解析することで、開閉器3の閉制御順序を把握できる。
【0101】
なお、代表インバータ電源の位置は、例えば、代表インバータ電源指令RCの送信履歴等から取得することが可能である。
【0102】
また、第2判定部613は、事故検出信号ADにより事故区間の位置が把握できるため、事故区間の位置の情報と開閉器3の閉制御順序の情報と合わせて解析することにより、各開閉制御装置30が、対応する区間について、事故区間であるか否かの判定を行ったか否かを判定することができる。
【0103】
そして、第2判定部613は、事故区間であるか否かの判定が行われていない区間がある場合、給電できる可能性がある区間があると判定する。一方、事故区間であるか否かの判定が行われていない区間がない場合、第2判定部613は、給電できる可能性がある区間が存在しないと判定する。
【0104】
指定部614は、給電できる可能性がある区間が存在する場合、新たに代表インバータ電源を指定する。具体的には、指定部614は、第2判定部613により、給電できる可能性がある区間が存在すると判定された場合、インバータ電源4に代表インバータ電源指令RCを送信することにより、新たに代表インバータ電源を指定する。
【0105】
どのインバータ電源4に代表インバータ電源指令RCを送信するかは、マイクログリッド内における事故区間の位置に基づいて定められる。事故区間の位置は、例えば、指定部614は、事故区間であるか否かの判定が行われていない区間に接続されたインバータ電源4のうち、優先順位が最も高いインバータ電源4に代表インバータ電源指令RCを送信する。
【0106】
なお、優先順位は予め定められている。例えば、インバータ電源4aが予め代表インバータ電源として指定されている場合には、インバータ電源4b、インバータ電源4c、インバータ電源4d・・・インバータ電源4nのように定められる。ここで、この状態で、区間2dで系統事故が発生した場合を例に、指定部614の処理について説明する。
【0107】
この場合、区間2a~区間2dについては、各開閉制御装置30により、当該区間が事故区間であるか否かの判定が行われており、区間2e~区間2nについては、各開閉制御装置30により、事故区間であるか否かの判定が行われていないことになる。
【0108】
したがって、指定部614は、インバータ電源4e~インバータ電源4nの中で、最も優先順位が高いインバータ電源4(例えば、インバータ電源4e)を新たに代表インバータ電源として指定する。
【0109】
これにより、区間2e~区間2nの中に事故区間がなければ、開閉器3e~開閉器3mが閉制御される。マイクログリッドシステム1は、事故区間である区間2dのみを分離し、それ以外の区間には電力の出力を継続することが可能となる。
【0110】
なお、指定部614は、2以上のインバータ電源4に対して代表インバータ電源指令RCを送信してもよい。例えば、インバータ電源4cが代表インバータ電源として指定され、区間2cで系統事故が発生した場合に、インバータ電源4aとインバータ電源4dとに夫々代表インバータ電源指令RCを送信してもよい。
【0111】
これは、区間2cが事故区間であると判定された時点で、区間2a~区間2b及び区間2d~区間2nについては、事故区間であるか否かが判定されていないためである。
【0112】
変更部615は、新たに指定された代表インバータ電源に応じて、開閉器3の閉制御順序を変更する。変更部615は、第1変更部の一例である。具体的には、変更部615は、新たに指定された代表インバータ電源に応じて、電圧値が回復してから、各開閉制御装置30が対応する開閉器3の閉制御を行うまでの時間の設定、及び、各開閉制御装置30が対応する開閉器3のどちら側の電圧値を参照するかという設定を必要に応じて変更する。
【0113】
具体的には、変更部615は、新たに指定された代表インバータ電源に応じて、各開閉器3に対応する設定変更信号CCを生成する。通信部612は、変更部615により生成された複数の設定変更信号CCを、夫々対応する開閉制御装置30に対して送信する。これにより、開閉器3の閉制御順序が変更される。
【0114】
例えば、開閉制御装置30cにより、区間2dが事故区間であると判定され、その後、指定部614により、インバータ電源4eが新たにインバータ電源として指定された場合について考える。この場合、変更部615は、開閉器3e・・・開閉器3mの順で順次閉制御されるように、開閉器3の閉制御順序を変更する。なお、開閉器3の閉制御順序は、新たに指定された代表インバータ電源の位置に応じて予め定められているものとする。
【0115】
上記の例では、開閉器3a~開閉器3dの設定は変更部615により変更されない。また、開閉制御装置30cの第3制御部314により、開閉器3cはロックされるため、開閉器3cが閉制御されることはない。開閉器3cが閉制御されないため、区間2dの電圧が回復することはない。したがって、開閉器3dが閉制御されることもなくなる。
【0116】
これにより、開閉器3c及び開閉器3dが閉制御されることがなくなるため、事故区間である区間2dのみを配電系統2から分離することができる。
【0117】
<第3実施形態に係るマイクログリッドシステムの処理>
次に、第3実施形態に係るマイクログリッドシステムの処理について説明する。図10は、第3実施形態に係るマイクログリッドシステム1のEMS6の処理の一例を示すフローチャートである。
【0118】
前提として、マイクログリッド内で系統事故が発生し、開閉制御装置30の制御部31の第1制御部311により、特定の区間が事故区間であると判定されたものとする。これにより、EMS6へ事故検出信号ADが送信され、EMS6の通信部612は、事故検出信号ADを受信する。
【0119】
まず、第2判定部613は、各開閉制御装置30から情報を受信する(ステップS31)。具体的には、第2判定部613は、通信部612と協働し、事故検出信号ADを受信した場合、設定要求信号SDを各開閉制御装置30に送信する。そして、第2判定部613は、通信部612と協働し、設定要求信号SDに対する応答である設定情報信号SIを受信する。
【0120】
次いで、第2判定部613は、事故区間であるか否かの判定が行われていない区間の有無に基づいて、給電可能な区間があるか否かを確認する(ステップS32)。給電可能な区間がない場合(ステップS32:No)、本処理を終了する。
【0121】
一方、給電可能な区間がある場合(ステップS32:Yes)、指定部614は、インバータ電源4に代表インバータ指令を送信する(ステップS33)。具体的には、指定部614は、予め定めたインバータ電源4の優先順位と事故区間の位置とに基づいて定められるインバータ電源4に代表インバータ指令を送信する。
【0122】
次いで、変更部615は、開閉器3の設定変更信号CCを生成する(ステップS34)。具体的には、変更部615は、新たに指定された代表インバータ電源の位置に基づいて、開閉器3の夫々について、電圧値が回復してから、各開閉制御装置30が対応する開閉器3の閉制御を行うまでの時間の設定、及び、各開閉制御装置30が対応する開閉器のどちら側の電圧値を参照するかという設定を変更するための設定変更信号CCを生成する。
【0123】
そして、変更部615は、通信部612と協働し、生成した複数の設定変更信号CCを、夫々対応する開閉制御装置30へ送信し、本処理を終了する(ステップS35)。
【0124】
なお、例えば、区間2dのみで系統事故が発生した場合、開閉器3cが閉制御されたときに、開閉制御装置30cの第3制御部により、開閉器3cがロックされる。次いで、EMS6の第2判定部613により、給電可能な区間があると判定される。
【0125】
次いで、インバータ電源4eに代表インバータ電源指令RCが送信され、インバータ電源4eが新たに代表インバータ電源として指定される。そして、変更部615により、開閉器3e、開閉器3f・・・開閉器3mの順で閉制御されるように閉制御順序が変更される。
【0126】
その後、区間2a~区間2cについては、インバータ電源4aを代表インバータ電源として処理が繰り返される。一方、区間2e~区間2nについては、インバータ電源4eを代表インバータ電源とした処理が、夫々独立して行われることになる。これにより、事故区間である区間2dのみが分離される。
【0127】
このように、事故区間である区間2dのみが分離されることで、マイクログリッドシステム1は、健全区間である区間2a~区間2c及び区間2e~区間2nに対しては、電力の供給を継続することができる。
【0128】
<第3実施形態に係るマイクログリッドシステムの効果>
第3実施形態に係るマイクログリッドシステム1について説明する。第3実施形態に係るマイクログリッドシステム1は、事故区間であると判定された区間があった場合、当該区間の位置に基づいて、新たに代表インバータ電源を指定し、新たに指定された代表インバータ電源に応じて、開閉器3の閉制御順序を変更する。
【0129】
新たに代表インバータ電源が追加で指定されることにより、特定の区間が事故区間であると判定された時点では、事故区間であるか否かが判定されていなかった区間についても、事故区間であるか否か判定することができる。したがって、第3実施形態に係るマイクログリッドシステム1によれば、事故区間と判定された区間のみを分離して、健全区間には電力供給を継続することができる。
【0130】
(第4実施形態)
第4実施形態に係るマイクログリッドシステム1について説明する。第4実施形態では、EMS6から代表インバータ電源指令RCを受信することなく、自動的に代表インバータ電源が追加で指定される形態について説明する。なお、第4実施形態の説明において、上述の第1実施形態乃至第3実施形態と同様の動作を示す箇所には、図面等において同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0131】
<第4実施形態に係るマイクログリッドシステムの構成>
第4実施形態に係るマイクログリッドシステム1は、第3実施形態に係るマイクログリッドシステム1と略同様であるが、EMS6が指定部614を機能構成として備えていない点で第3実施形態と異なる。第4実施形態では、代表インバータ電源は、自動的に指定される。以下、第4実施形態に係るインバータ電源4について説明する。
【0132】
第4実施形態のインバータ電源4は、自身が接続された区間の電圧が、所定時間を超えて閾値未満の状態を継続した場合に、代表インバータ電源となるよう構成される。この所定時間の設定は、インバータ電源4毎に異なっている。例えば、インバータ電源4aの所定時間が最も短く、インバータ電源4nの所定時間が最も長く設定される。
【0133】
例えば、区間2dで系統事故が発生した場合について考える。この場合、まず、各インバータ電源4の第1演算部242が保護信号を生成することにより、全てのインバータ電源4の電力の出力が停止する。これにより、各開閉制御装置が参照している電圧値が閾値未満の状態となり、全ての開閉制御装置は対応する開閉器3を開制御する。
【0134】
その後、区間2aの電圧値が、インバータ電源4aに設定された所定時間を超えて閾値未満の状態を継続した場合、インバータ電源4aが代表インバータ電源となり、電力の出力を再開する。
【0135】
インバータ電源4aが電力の出力を再開することにより、区間2aの電圧値が閾値以上の状態となる。この状態が、開閉器3aが閉制御されるまでの所定時間を超えて継続した場合、開閉制御装置30aは、開閉器3aを閉制御する。これにより、区間2bの電圧が回復し、区間2bの電圧値は閾値以上の状態になる。
【0136】
したがって、インバータ電源4bの所定時間を、インバータ電源4aに設定された所定時間に、電力の出力が再開されてから区間2bの電圧値が閾値以上の状態になるために必要な時間を加えた時間よりも長い時間に設定すれば、インバータ電源4bが代表インバータ電源となることはなくなる。
【0137】
区間2bの電圧が回復し、区間2bの電圧値は閾値以上の状態になるため、開閉制御装置30bは、開閉器3bを閉制御する。同様に、区間2cも事故区間でないため、開閉制御装置30cは、開閉器3cを閉制御する。
【0138】
区間2dは事故区間であるため、各インバータ電源4の第1演算部242が保護信号を生成することにより、全てのインバータ電源4の電力の出力が停止する。これにより、開閉制御装置30cが参照している電圧値が閾値未満の状態となり、開閉制御装置30cの第1判定部は、区間2dが事故区間であると判定する。次いで、第3制御部は、開閉器3cをロックする。
【0139】
EMS6の第2判定部613は、各開閉制御装置30から情報を受信し、事故区間であるか否かを判定していない区間があるため、給電できる可能性がある区間があると判定する。変更部615は、事故区間の位置に応じて、閉制御順序を変更する。具体的には、変更部615は、各開閉器3の閉制御を行うまでの所定時間の設定、及び、各開閉制御装置が対応する各開閉器の両端の電圧のうちどちらの電圧を参照するかという設定を、必要に応じて変更する。
【0140】
インバータ電源4aが代表インバータ電源となり、電力の出力を再開しても、開閉器3cがロックされて閉制御されることがないため、区間2dの電圧が回復することはない。したがって、区間2dの電圧が、所定時間を超えて閾値未満の状態を継続することになるため、インバータ電源4dは、代表インバータ電源となる。
【0141】
しかし、区間2dが事故区間であるため、区間2dの電圧が閾値以上になることはない。したがって、開閉器3dが閉制御されることもなく、区間2eの電圧は回復しない。したがって、区間2eの電圧が、所定時間を超えて閾値未満の状態を継続することになるため、インバータ電源4eは、代表インバータ電源となる。
【0142】
区間2eは事故区間でないため、区間2eの電圧が回復することから、開閉制御装置30eは、開閉器3eを閉制御する。その後、区間2f~区間2nについても同様の処理が行われることにより、事故区間である区間2dが分離され、区間2d以外の区間に対しては給電を継続することができる。
【0143】
<第4実施形態に係るマイクログリッドシステムの処理>
次に、第4実施形態に係るマイクログリッドシステム1の処理について説明する。図11は、第4実施形態に係るマイクログリッドシステム1のEMS6の処理の一例を示すフローチャートである。
【0144】
第4実施形態では、事故区間が特定された後で、給電可能な区間がある場合、代表インバータ指令RCを送信することなく、新たな代表インバータ電源が自動的に指定される。
【0145】
なお、例えば、区間2dのみで系統事故が発生した場合、開閉器3cが閉制御されたときに、開閉制御装置30cの第3制御部により、開閉器3cがロックされる。次いで、EMS6の第2判定部613により、給電可能な区間があると判定される。
【0146】
そして、変更部615により、事故区間である区間2dの位置に応じた、開閉器3e、開閉器3f・・・開閉器3mの順で閉制御されるように閉制御順序が変更される。また、開閉器3cがロックされることにより、区間2dは代表インバータ電源と接続されることがなくなる。
【0147】
これにより、インバータ電源4dに設定された設定時間を超えて、区間2dの電圧値が閾値未満の状態が継続することになる。したがって、インバータ電源4dが新たに代表インバータ電源となることになる。しかしながら、区間2dは、事故区間であるため、インバータ電源4dの第1演算部242により、保護信号が生成され、インバータ電源4dの出力は停止する。
【0148】
このため、開閉器3eが閉制御されるまでの所定時間を超えて、区間2dの電圧値が、閾値以上になる状態が継続することはない。したがって、開閉器3dが閉制御されることもない。これにより、インバータ電源4eに設定された設定時間を超えて、区間2eの電圧値が、閾値未満になる状態が継続することになる。したがって、インバータ電源4eが新たに代表インバータ電源となることになる。
【0149】
その後、区間2a~区間2cについては、インバータ電源4aを代表インバータ電源として処理が繰り返される。一方、区間2e~区間2nについては、インバータ電源4eを代表インバータ電源とした処理が行われることになる。これにより、事故区間である区間2dのみが分離される。
【0150】
<第4実施形態に係るマイクログリッドシステムの効果>
第4実施形態に係るマイクログリッドシステム1について説明する。第4実施形態に係るマイクログリッドシステム1の効果は、第3実施形態と略同様であるが、第3実施形態とは異なり、EMS6が代表インバータ指令を送信する必要がない。このため、第4実施形態に係るマイクログリッドシステム1によれば、EMS6の処理負担を軽減することができる。
【0151】
(第5実施形態)
第5実施形態に係るマイクログリッドシステム1について説明する。第5実施形態では、配電系統2が上位系統と接続可能な形態について説明する。なお、第5実施形態の説明において、上述の第1実施形態乃至第4実施形態と同様の動作を示す箇所には、図面等において同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0152】
<第5実施形態に係るマイクログリッドシステムの全体構成>
第5実施形態に係るマイクログリッドシステム1について説明する。図12は、第5実施形態に係るマイクログリッドシステム1の全体構成の一例を示すブロック図である。第5実施形態に係るマイクログリッドシステム1は、上位系統8及びフィーダ遮断器9を備える点で第3実施形態と異なる。
【0153】
上位系統8は、配電系統2に電力を供給する電力の供給源である。上位系統8は、例えば、発電所、変電所等を含む商用系統としての交流電源である。フィーダ遮断器9は、上位系統8と配電系統2との間の配線を遮断又は接続する。図12の例では、フィーダ遮断器9により、継続的に上位系統8と配電系統2との接続が遮断され、第3実施形態と同様のマイクログリッドが形成される。
【0154】
また、上位系統8は、上位系統8で停電が検出された場合、EMS6に停電検出信号を送信する。また、上位系統8は、上位系統8の停電が解消された場合、EMS6に停電解消信号を送信する。
【0155】
フィーダ遮断器9は、事故電流(予め定めた閾値を超える電流値を示す電流)を検知した場合に自身の開制御を行う。上位系統8及びフィーダ遮断器9は、EMS6と通信線7bを介して接続される。また、フィーダ遮断器9は、EMS6から送信される制御信号に従い、自身の閉制御を行う。
【0156】
また、フィーダ遮断器9は、自身の開制御を行った場合、EMS6に開信号を送信する。また、フィーダ遮断器9は、自身の閉制御を行った場合、EMS6に閉信号を送信する。
【0157】
<第5実施形態に係るマイクログリッドシステムの各装置の構成>
次に、第5実施形態に係るマイクログリッドシステム1の各装置の構成について説明する。まず、開閉制御装置30について説明する。
【0158】
第5実施形態に係るマイクログリッドシステム1では、マイクログリッドシステム1が自立運転をしている場合(以下、自立運転モードともいう)と自立運転をしていない場合(以下、非自立運転モードともいう)とで、開閉制御装置30による処理が異なる。自立運転をしている場合には、第3実施形態と同様の処理が実行されるため、詳細な説明を省略する。なお、マイクログリッドシステム1が自立運転するのは、上位系統8で停電が起こった場合である。
【0159】
次に、開閉制御装置30の制御部31の機能構成について説明する。図13は、第5実施形態に係る開閉制御装置30の制御部31の機能構成の一例を示すブロック図である。第5実施形態に係る開閉制御装置30の制御部31は、第3実施形態に係る開閉制御装置30の制御部31が備える機能構成に加えて、切替部316を備える。
【0160】
通信部315は、通信線7aを介してEMS6から送信されるフィーダ遮断器の開信号及び閉信号を受信する。
【0161】
切替部316は、非自立運転モードと自立運転モードとを切替える。具体的には、切替部316は、非自立運転モード時に、通信部315が、EMS6から送信されるフィーダ遮断器の開信号を受信した場合、非自立運転モードから自立運転モードに切替える。
【0162】
また、切替部316は、自立運転モード時に、通信部315が、EMS6から送信されるフィーダ遮断器の閉信号を受信した場合、自立運転モードから非自立運転モードに切替える。
【0163】
次に、電力変換装置20の制御部24の機能構成について説明する。通信部241は、通信線7bを介してEMS6から送信されるフィーダ遮断器の開信号及び閉信号を受信する。
【0164】
第1演算部242及び第2演算部243は、第3実施形態と同様の処理を行う。ただし、非自立モードの場合、上位系統8から配電系統2に給電される電力を利用して事故区間の検出を行うため、複数のインバータ電源4の中から、代表インバータ電源を指定する必要がない。
【0165】
次に、EMS6の制御部61の機能構成について説明する。図15は、第5実施形態に係るEMS6の制御部61の機能構成の一例を示すブロック図である。第5実施形態に係るEMS6の制御部61は、第3実施形態に係るEMS6の制御部61が備える機能構成に加えて、接続部616、切替部617を備える。
【0166】
通信部612は、通信線7cを介して上位系統8から停電検出信号及び停電解除信号を受信する。また、通信部612は、通信線7cを介してフィーダ遮断器9から開信号及び閉信号を受信する。
【0167】
第2判定部613、指定部614、及び変更部615については、第3実施形態と略同様であるが、指定部614は、非自立運転モードの場合、代表インバータ電源を指定する必要がないため、特定のインバータ電源4に代表インバータ指令RCを送る処理は実行しない。
【0168】
また、変更部615は、自立運転モードから、非自立運転モードに切替わった場合、開閉器3の設定を非自立運転モードに対応した設定に変更する。この場合の変更部615は、第2変更部の一例である。
【0169】
接続部616は、フィーダ遮断器9に、閉制御を実行させる。具体的には、接続部616は、自立運転モード時に、上位系統8から停電解除信号を受信した場合にフィーダ遮断器9に閉制御を実行させる制御信号を生成する。接続部616が生成した制御信号は、通信部612により、通信線7bを介してフィーダ遮断器9へ送信される。
【0170】
これにより、フィーダ遮断器9は、事故電流を検出したことにより自身を開制御してから、上位系統の停電が解除された場合、自身を閉制御することになる。
【0171】
切替部617は、非自立運転モードと自立運転モードとを切替える。具体的には、切替部617は、非自立運転モード時に、通信部612が、フィーダ遮断器9から送信される開信号を受信した場合、非自立運転モードから自立運転モードに切替える。また、切替部617は、自立運転モード時に、通信部612が、フィーダ遮断器9から送信される閉信号を受信した場合、自立運転モードから非自立運転モードに切替える。
【0172】
<第5実施形態に係るマイクログリッドシステムの効果>
第5実施形態に係るマイクログリッドシステム1の効果について説明する。第5実施形態に係るマイクログリッドシステム1は、第3実施形態と同様の効果を奏する。また、各開閉器3が閉制御される条件を第3実施形態と同様の設定に変更することで、上位系統8と配電系統2とが接続されている場合には、順送式故障区間検出方式による事故区間の検出のために用いられる開閉器3を、マイクログリッドシステム1がインバータ電源4により自立運転している場合の事故区間の検出にも利用することができる。
【0173】
これにより、マイクログリッドシステム1がインバータ電源4により自立運転している場合であっても、新たに開閉器3を追加することなく、事故区間を検出することができる。
【0174】
<第5実施形態に係るマイクログリッドシステムの変形例1>
上述の第5実施形態では、第3実施形態のマイクログリッドシステム1が、上位系統8及びフィーダ遮断器9を更に備える構成について説明した。しかしながら、マイクログリッドシステム1は、第4実施形態のマイクログリッドシステム1が、上位系統8及びフィーダ遮断器9を更に備える構成としてもよい。
【0175】
この場合、非自立運転モードの場合は、代表インバータ電源の指定は不要のため、自立運転モードの場合のみ、自動的に代表インバータ電源が指定される処理が行われる。本変形例に係るマイクログリッドシステム1によれば、第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0176】
<第5実施形態に係るマイクログリッドシステムの変形例2>
上述の第5実施形態では、第3実施形態のマイクログリッドシステム1が、上位系統8及びフィーダ遮断器9を更に備える構成について説明した。しかしながら、マイクログリッドシステム1は、第1実施形態又は第2実施形態のマイクログリッドシステム1が、上位系統8及びフィーダ遮断器9を更に備える構成としてもよい。
【0177】
本変形例に係るマイクログリッドシステム1によれば、第1実施形態又は第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0178】
また、上記実施形態の各装置で実行されるプログラムは、各装置が備える記憶媒体(ROM又は記憶部)に予め組み込んで提供するものとするが、これに限らず、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。さらに、記憶媒体は、コンピュータ或いは組み込みシステムと独立した媒体に限らず、LANやインターネット等により伝達されたプログラムをダウンロードして記憶又は一時記憶した記憶媒体も含まれる。
【0179】
また、上記実施形態の各装置で実行されるプログラムをインターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよく、インターネット等のネットワーク経由で提供又は配布するように構成してもよい。
【0180】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0181】
1 マイクログリッドシステム
2 配電系統
3a~3m 開閉器
30a~30m 開閉制御装置
31 制御部
311 第1制御部
312 第2制御部
313 第1判定部
314 第3制御部
315 通信部
316 切替部
10 電源
20 電力変換装置
21 電力変換部
22 電圧電流計測部
23 ゲートパルス生成部
24 制御部
241 通信部
242 第1演算部
243 第2演算部
244 解除部
4a~4n インバータ電源
5a~5n 昇圧トランス
6 EMS
61 制御部
611 設定部
612 通信部
613 第2判定部
614 指定部
615 変更部
616 接続部
617 切替部
7、7a、7b 通信線
8 上位系統
9 フィーダ遮断器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15