(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043860
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】仮保護材
(51)【国際特許分類】
H01L 21/50 20060101AFI20230322BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20230322BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20230322BHJP
C09J 129/04 20060101ALI20230322BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
H01L21/50 Z
C09J7/38
C09J11/04
C09J129/04
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145343
(22)【出願日】2022-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2021151024
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】米田 義和
(72)【発明者】
【氏名】山田 佑
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5F131
【Fターム(参考)】
4J004AA08
4J004AB01
4J004BA02
4J004FA04
4J004FA08
4J040DD021
4J040HA326
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA16
4J040LA01
4J040MA04
4J040MA10
4J040MB05
4J040MB09
4J040NA20
5F131AA04
5F131BA54
5F131CA09
5F131CA12
5F131EC32
5F131EC52
5F131EC62
5F131EC72
(57)【要約】 (修正有)
【課題】半導体基板の実装工程において部品実装面を保護し得る耐水性を有し、かつ、温水により容易に去除できる仮保護材を提供する。
【解決手段】ポリビニルアルコール系樹脂及びホウ酸を含有し、前記仮保護材中の前記ホウ酸の含有量C(重量%)が下記式(1)を満たす、仮保護材。
[数1]
式(1)中、Aはポリビニルアルコール系樹脂のケン化度(モル%)、Bはポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量、Cはホウ酸の含有量(重量%)を表し、Guは70、Gdは5である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造時の保護材として使用される仮保護材であって、
ポリビニルアルコール系樹脂及びホウ酸を含有し、
前記仮保護材中の前記ホウ酸の含有量C(重量%)が下記式(1)及び(2)を満たす、仮保護材。
【数1】
【数2】
式(1)及び(2)中、Aはポリビニルアルコール系樹脂のケン化度(モル%)、Bはポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量、Cはホウ酸の含有量(重量%)を表し、Guは70、Gdは5である。
【請求項2】
仮保護材におけるホウ酸の含有量が0.025重量%以上15重量%以下である、請求項1に記載の仮保護材。
【請求項3】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度が70.0モル%以上100モル%以下である、請求項1又は2に記載の仮保護材。
【請求項4】
ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量が8000~150000である、請求項1又は2に記載の仮保護材。
【請求項5】
加熱後に35℃の水中にて15分間超音波振動を印加した際のゲル分率が70重量%以上である、請求項1又は2に記載の仮保護材。
【請求項6】
加熱後に80℃の水中に15分間浸漬した際のゲル分率が5重量%以下である、請求項1又は2に記載の仮保護材。
【請求項7】
加熱後に35℃の水中にて15分間超音波振動を印加した際のゲル分率が70重量%以上であり、かつ、加熱後に80℃の水中に15分間浸漬した際のゲル分率が5重量%以下である、請求項1又は2に記載の仮保護材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮保護材に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体等の電子部品の加工時においては、電子部品の取扱いを容易にし、破損しないようにするために、粘着剤組成物を介して電子部品を支持板に固定したり、粘着テープを電子部品に貼付したりして保護することが行われている。例えば、高純度なシリコン単結晶等から切り出した厚膜ウエハを所定の厚さにまで研削して薄膜ウエハとする場合に、粘着剤組成物を介して厚膜ウエハを支持板に接着することが行われる。
【0003】
このように電子部品に用いる粘着剤組成物や粘着テープには、加工工程中に電子部品を強固に固定できるだけの高い接着性とともに、工程終了後には電子部品を損傷することなく剥離できることが求められる(以下、「高接着易剥離」ともいう。)。
高接着易剥離の実現手段として、例えば特許文献1には、仮保持基板の表面に接着剤を塗布して仮接着層を形成し、この仮接着層内にバンプの先端部を埋め込むようにして半導体ウエハを接着固定し、その後、溶剤により仮接着層を溶解させることでチップ型電子部品を仮保持基板から離脱させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、集積回路の高密度化と歩留まり向上を目的として、電子部品の実装では3D実装が行われている。3D実装では、集積回路以外にコンデンサ、半田ボール等の周辺素子がチップ型電子部品の上面、背面等のいたるところに実装される。
3D実装では、工程上の都合等により、上面に集積回路を実装するよりも先に背面側に周辺素子が配置される場合がある。このような場合、上面に集積回路を実装する際に背面側の素子がステージに接触すること等により、チップ型電子部品に傷や破損が生じる恐れがある。このため、背面に先に実装される素子を保護する目的で保護シートが用いられるが、このような保護シートは表面側に集積回路を多層にわたって配置した後に取り除かれる必要がある。特許文献1のように有機溶剤や他の薬品を使用して除去する場合、環境負荷の増大や保護シートの残渣が発生するという問題がある。
そこで、半導体基板の実装工程時には部品実装面を保護し得る程度の耐水性を有しつつ、最終的には温水により容易に除去できる等、環境負荷が低く、また、保護シートの残渣が発生し難い保護シートが求められている。
【0006】
本発明は、半導体基板の実装工程において部品実装面を保護し得る耐水性を有し、かつ、温水により容易に去除できる仮保護材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示(1)は、半導体製造時の保護材として使用される仮保護材であって、ポリビニルアルコール系樹脂及びホウ酸を含有し、前記仮保護材中の前記ホウ酸の含有量C(重量%)が下記式(1)及び(2)を満たす仮保護材である。
本開示(2)は、仮保護材におけるホウ酸の含有量が0.025重量%以上15重量%以下である、本開示(1)の仮保護材である。
本開示(3)は、ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度が70.0モル%以上100モル%以下である、本開示(1)又は(2)の仮保護材である。
本開示(4)は、ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量が8000~150000である、本開示(1)~(3)のいずれかとの任意の組み合わせの仮保護材である。
本開示(5)は、加熱後に35℃の水中にて15分間超音波振動を印加した際のゲル分率が70重量%以上である、本開示(1)~(4)のいずれかとの任意の組み合わせの仮保護材である。
本開示(6)は、加熱後に80℃の水中に15分間浸漬した際のゲル分率が5重量%以下である、本開示(1)~(5)のいずれかとの任意の組み合わせの仮保護材である。
本開示(7)は、加熱後に35℃の水中にて15分間超音波振動を印加した際のゲル分率が70重量%以上であり、かつ、加熱後に80℃の水中に15分間浸漬した際のゲル分率が5重量%以下である、本開示(1)~(6)のいずれかとの任意の組み合わせの仮保護材である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
【0009】
【0010】
式(1)及び(2)中、Aはポリビニルアルコール系樹脂のケン化度(モル%)、Bはポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量、Cはホウ酸の含有量(重量%)を表し、Guは70、Gdは5である。
【0011】
本発明者らは、ポリビニルアルコール系樹脂とホウ酸とを含む仮保護材を検討した。本発明者らは、ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度及び重量平均分子量に対して所定の関係を満たすように仮保護材中のホウ酸の含有量を調整することで、半導体基板の実装工程において部品実装面を保護するのに充分な耐水性、耐熱性を有する仮保護材とできることを見出した。更に、このような仮保護材は有機溶剤なしで温水により容易に除去でき、環境負荷の少ない仮保護材とできることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明の仮保護材は、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する。
ポリビニルアルコール系樹脂を含有することで、温水により容易に除去可能な仮保護材とすることができる。
【0013】
上記ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、70.0モル%以上であることが好ましく、100モル%以下であることが好ましい。
上記範囲とすることで、耐水性を充分に高めることができる。
上記ケン化度は、80.0モル%以上であることがより好ましく、85.0モル%以上であることが更に好ましく、95.0モル%以上であることが特に好ましく、99.5モル%以下であることがより好ましく、99.0モル%以下であることが更に好ましい。
上記ケン化度は、例えば、JIS K6726に準拠した方法により測定することができる。ケン化度は、ケン化によりビニルアルコール単位に変換され得るビニルエステル単位のうち、実際にビニルアルコール単位に変換されている単位の割合を示す。
上記ケン化度は、例えば、ケン化条件、すなわち加水分解条件を調整することで制御できる。
【0014】
上記ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、8000以上であることが好ましく、150000以下であることが好ましい。
上記範囲とすることで、高い耐水性を発揮できるという利点がある。また、架橋剤の種類を適切に選択することによって、温水に対する易溶解性をも同時に発現することが出来る。
上記重量平均分子量は、9000以上であることがより好ましく、10000以上であることが更に好ましく、100000以下であることがより好ましく、50000以下であることが更に好ましく、40000以下であることが特に好ましい。
【0015】
上記ポリビニルアルコール系樹脂の数平均分子量(Mn)は、4000以上であることが好ましく、4500以上であることがより好ましく、5000以上であることが更に好ましく、90000以下であることが好ましく、60000以下であることがより好ましく、30000以下であることが更に好ましい。
【0016】
上記ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.2以上であることが好ましく、1.4以上であることがより好ましく、1.6以上であることが更に好ましく、5.0以下であることが好ましく、3.5以下であることがより好ましく、2.0以下であることが更に好ましい。
上記重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定すること、ケン化前のポリビニルエステルをGPC法により測定すること、ポリビニルアルコール樹脂を再エステル化して得られたポリビニルエステルをGPC法により測定すること、JIS K6726に準拠して水溶液の粘度を測定すること等により求めることができる。例えば、ポリスチレンを標準とし、TSKgel(東ソー社)、PLgel(AMR社)、KF-806、KF-807(Shodex社)等のカラムを使用することができる。
【0017】
上記ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、180以上であることが好ましく、200以上であることがより好ましく、220以上であることが更に好ましく、3400以下であることが好ましく、2300以下であることがより好ましく、1200以下であることが更に好ましく、700以下であることが特に好ましい。
上記平均重合度は、例えば、ケン化前のポリ酢酸ビニル樹脂をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定することやJIS K6726に準拠して水溶液の粘度を測定することで求めることができる。
【0018】
上記ポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルエスエル単位、ビニルアルコール単位以外の他の構成単位を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂であってもよい。
上記変性ポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、スルホン酸基、ピロリドン環基、アミノ基、カルボキシル基等の親水性基等の変性基によって変性されたものが挙げられる。なお、これらの親水性基は、上記官能基に加えて、これらのナトリウム塩、カリウム塩等の塩も含む。
【0019】
上記ポリビニルアルコール系樹脂における変性基を有する構成単位の含有量は、1モル%以上であることが好ましく、3モル%以上であることがより好ましく、5モル%以上であることが特に好ましく、20モル%以下であることが好ましく、15モル%以下であることがより好ましく、12モル%以下であることが特に好ましい。
【0020】
本発明の仮保護材における上記ポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、85重量%以上であることが更に好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂の含有量の上限は特に限定されるものではないが、目的に応じて貯蔵安定剤、力学特性改良剤、増粘剤、防腐剤、防カビ剤、分散安定化剤、スペーサー(ギャップ調整材)、他のポリマー等のその他成分を含有させることによって明示的に決定される。上限としては、通常100重量%未満であるが、例えば、99.975重量%以下が好ましく、99.9重量%以下がより好ましい。
【0021】
上記ポリビニルアルコール系樹脂は、従来公知の方法に従って、ビニルエステルを重合してポリマーを得た後、ポリマーをケン化、すなわち加水分解することにより得られる。ケン化触媒としては、一般にアルカリ又は酸が用いられる。
【0022】
上記ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル及び安息香酸ビニル等が挙げられる。
【0023】
ビニルエステルの重合方法は特に限定されないが、例えば、溶液重合法、塊状重合法及び懸濁重合法等が挙げられる。
【0024】
上記ビニルエステルを重合する際に用いる重合触媒としては、例えば、2-エチルヘキシルペルオキシジカーボネート(Tianjin McEIT社製「TrigonoxEHP」)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート、ジ-n-ブチルペルオキシジカーボネート、ジ-セチルペルオキシジカーボネート及びジ-s-ブチルペルオキシジカーボネート等が挙げられる。上記重合触媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0025】
上記ポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルエステルと他の不飽和モノマーとの重合体をケン化したものであってもよい。
他の不飽和モノマーとしては、上記ビニルエステル以外のモノマーであって、ビニル基等の不飽和二重結合を有するモノマーが挙げられる。具体的には、例えば、オレフィン類、(メタ)アクリル酸及びその塩、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸以外の不飽和酸類、その塩及びエステル、(メタ)アクリルアミド類、N-ビニルアミド類、ビニルエーテル類、ニトリル類、ハロゲン化ビニル類、アリル化合物、ビニルシリル化合物、酢酸イソプロペニル、スルホン酸基含有化合物、アミノ基含有化合物等が挙げられる。
【0026】
オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン及びイソブテン等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル類としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸i-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、及び(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸以外の不飽和酸類、その塩及びエステルとしては、マレイン酸及びその塩、マレイン酸エステル、イタコン酸及びその塩、イタコン酸エステル、メチレンマロン酸及びその塩、メチレンマロン酸エステルなどが挙げられる。
(メタ)アクリルアミド類としては、アクリルアミド、n-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド等が挙げられる。
N-ビニルアミド類としては、N-ビニルピロリドン等が挙げられる。
ビニルエーテル類としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、i-プロピルビニルエーテル及びn-ブチルビニルエーテル等が挙げられる。
ニトリル類としては、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
ハロゲン化ビニル類としては、塩化ビニル及び塩化ビニリデン等が挙げられる。
アリル化合物としては、酢酸アリル及び塩化アリル等が挙げられる。
ビニルシリル化合物としては、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
スルホン酸基含有化合物としては、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸などの(メタ)アクリルアミドアルカンスルホン酸及びその塩、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩などが挙げられる。
アミノ基含有化合物としては、アリルアミン、ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン、ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン等が挙げられる。
【0027】
本発明の仮保護材は、ホウ酸を含有する。
上記ホウ酸を含有することにより、加熱することによってポリビニルアルコール系樹脂に架橋構造が形成され、充分な耐水性、耐熱性を有する仮保護材とすることができる。
【0028】
ホウ酸としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、テトラホウ酸等が挙げられる。
また、上記ホウ酸には、ホウ酸の塩も含まれる。上記ホウ酸の塩としては、ホウ砂、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン等の有機アミン塩等が挙げられる。
これらのホウ酸は、1種を単語句で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
本発明の仮保護材における上記ホウ酸の含有量は、0.025重量%以上であることが好ましく、15重量%以下であることが好ましい。
上記範囲とすることで、加熱により充分な耐水性と耐熱性とを付与することができる。
上記ホウ酸の含有量は、0.25重量%以上であることがより好ましく、0.4重量%以上であることが更に好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、5重量%以下であることが更に好ましい。
【0030】
本発明の仮保護材における上記ホウ酸の含有量は、上記ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、0.025重量部以上であることが好ましく、0.25重量部以上であることがより好ましく、0.4重量部以上であることが更に好ましく、17.6重量部以下であることが好ましく、11.1重量部以下であることがより好ましく、5.3重量部以下であることが更に好ましい。
【0031】
本発明の仮保護材における上記ホウ酸の含有量C(重量%)は、下記式(1)及び(2)を満たす。
【0032】
【0033】
【0034】
式(1)及び(2)中、Aはポリビニルアルコール系樹脂のケン化度(モル%)、Bはポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量、Cはホウ酸の含有量(重量%)を表すし、Guは70、Gdは5である。
また、上記式(1)及び(2)中、Guは、180℃で30分間加熱した後の仮保護材を35℃の水中に浸漬した際の仮保護材のゲル分率について、所望の耐水性を発揮し得るのに充分なゲル分率の値を意味し、好ましくは80、より好ましくは90である。Gdは、180℃で30分間加熱した後の仮保護材を80℃の水中に浸漬した際の仮保護材のゲル分率について、所望の温水除去性を発揮し得るのに充分なゲル分率の値を意味し、好ましくは3.5、より好ましくは2である。
【0035】
上記式(1)及び(2)を満たすことで、半導体基板の実装工程において部品実装面を保護し得る耐水性、耐熱性を有し、かつ、温水により容易に去除できる仮保護材とすることができる。
【0036】
また、本発明の仮保護材における上記ホウ酸の含有量C(重量%)は、下記式(3)及び(4)を満たすことが好ましい。
【0037】
【0038】
【0039】
上記式(3)及び(4)において、Kaは好ましくは-1.360、より好ましくは-0.8686、更に好ましくは-0.5646である。また、Kbは好ましくは、15.45、より好ましくは10.85、更に好ましくは7.429である。更に、Kcは好ましくは-9.935、より好ましくは-8.942、更に好ましくは-7.948である。なお、Ka、Kb、Kcは実験結果から上記式(3)及び(4)を導出する際、実験結果に含まれるであろう実験誤差の影響を補完するために導入した係数である。
【0040】
本発明の仮保護材は、必要に応じて、貯蔵安定剤、力学特性改良剤、増粘剤、防腐剤、防カビ剤、分散安定化剤、スペーサー(ギャップ調整材)等のその他の成分を含んでいてもよいが、ポリビニルアルコール系樹脂及びホウ酸からなることが好ましい。
【0041】
本発明の仮保護材は、加熱後に35℃の水中にて15分間超音波振動を印加した際のゲル分率が70重量%以上であることが好ましい。
上記ゲル分率が70重量%以上であると、半導体基板の実装工程において、部品実装面を保護する機能を充分に果たすことができる。
上記ゲル分率は、80重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましく、通常100重量%以下である。
上記加熱条件としては、例えば、180℃で30分間加熱することが好ましく、具体的には、温度180℃の温風循環式オーブンに仮保護材を30分間静置する方法を用いることができる。
上記ゲル分率は、例えば、フィルム状に成形した本発明の仮保護材を180℃で30分間加熱した後、35℃の水中に浸漬して超音波洗浄機等を用いて攪拌して溶解し、次いで、未溶解成分の重量を測定して、浸漬前の仮保護材の重量に対する未溶解成分の重量の割合を算出することで求めることができる。なお、印加する超音波の周波数は洗浄性や洗浄対象物へのダメージ等を考慮して適宜選択される。一例として45kHzが挙げられる。より低い周波数では、洗浄力は向上するものの、被洗浄物への負荷が増大し、逆により高い周波数では洗浄力はやや低下するものの被洗浄物への負荷は減少する。
【0042】
本発明の仮保護材は、加熱後に80℃の水中に15分間浸漬した際のゲル分率が5重量%以下であることが好ましい。
上記ゲル分率が5重量%以下であると、有機溶剤を用いることなく、温水により容易に仮保護材を除去できる。
上記ゲル分率は、3.5重量%以下であることがより好ましく、2重量%以下であることが更に好ましく、通常0重量%以上である。
上記加熱条件としては、例えば、180℃で30分間加熱することが好ましく、具体的には、温度180℃の温風循環式オーブンに仮保護材を30分間静置する方法を用いることができる。
上記ゲル分率は、例えば、フィルム状に成形した本発明の仮保護材を180℃で30分間加熱した後、80℃の水中に15分間浸漬して溶解し、次いで、未溶解成分の重量を測定して、浸漬前の仮保護材の重量に対する未溶解成分の重量の割合を算出することで求めることができる。
【0043】
本発明の仮保護材の形状は特に限定されず、例えば、フィルム状、シート状、板状、粉状、粒上、フレーク状、ペレット状等が挙げられる。
【0044】
本発明の仮保護材の厚みは特に限定されないが、100μm以上であることが好ましく、150μm以上であることがより好ましく、200μm以上であることがさらに好ましく、300μm以上であることが特に好ましく、1000μm以下であることが好ましく、700μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることが更に好ましい。本件の仮保護材の厚みが厚いと、貼り合わせ時の作業性や温水での易溶解性が低下する傾向にあり、薄いと被保護材の凸部が突出してしまい保護性能自体が低下するため、本発明の仮保護材の厚みや形状は、被保護材の形状、凹凸の大きさ等も考慮して適宜決定される。
【0045】
本発明の仮保護材は、SUS板に貼り付けて100℃で30分間加熱した後の90°方向剥離力が100N/m以上であることが好ましく、200N/m以上であることがより好ましく、350N/m以上であることが更に好ましい。
上記90°方向剥離力は、例えば、以下の方法により測定できる。
まず、25mm幅の仮保護材の表面を軽く水で湿らせた後、室温23℃、相対湿度50%の環境下、2kgの圧着ゴムローラーを用いて10mm/secの速度でSUS板に貼り付ける。次いで、100℃、30分間の加熱処理を1回行う。ここで、100℃、30分間の加熱処理とは、100℃下のオーブンに測定サンプルを入れて30分間静置することを指す。放冷後、JIS Z0237に準拠し、仮保護材を5mm/minの速度で引き剥がして90°方向剥離力を測定する。
【0046】
本発明の仮保護材を製造する方法は特に限定されず、例えば、以下のような方法が挙げられる。
まず、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液とホウ酸水溶液とを調製し、これらをホウ酸濃度が所定の範囲となるように混合して、仮保護材水溶液を作製する。次いで、基材上に仮保護材水溶液を塗工し、乾燥させて仮保護材を作製する。
【0047】
上記基材を構成する材料は特に限定されないが、耐熱性を有する材料であることが好ましい。耐熱性を持つ材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂、液晶ポリマー等が挙げられる。乾燥後、本発明の仮保護材を剥離する必要があるため、基材表面には必要に応じて弱い離型処理を施しておくことが好ましい。
【0048】
上記塗工する方法としては、例えば、キャスト法、ロールコーティング法、リップコーティング法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法等が挙げられる。
【0049】
上記乾燥する方法としては、例えば、自然乾燥する方法、溶媒の発泡等により気泡が発生しない温度で加熱乾燥する方法等が挙げられる。
【0050】
上記基材の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は20μm、より好ましい下限は25μmである。基材が薄いと加熱乾燥時に基材が変形してしまい一定の厚みの仮保護材を得ることが難しい。
【0051】
本発明の仮保護材の用途は特に限定されないが、半導体装置、表示装置等の電子部品の製造工程に用いることが好ましい。
本発明の仮保護材は、半導体基板の実装工程において、高温でも剥離が生じにくく、実装工程終了度には、温水により容易に除去でき、電子部品の汚染を防止できる。
【0052】
本発明の仮保護材は、半導体基板の実装工程において部品実装面に貼り付けることで部品実装面を保護することができる。
また、本発明の仮保護材は、半導体基板の実装工程において部品実装面に貼り付けた後、加熱処理することによって架橋を促進し、耐水性を向上させることができる。
上記加熱条件について、加熱処理温度は130℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましく、160℃以上が更に好ましく、190℃以下が好ましく、185℃以下がより好ましく、180℃以下が更に好ましい。また、加熱処理時間は5分以上が好ましく、15分以上がより好ましく、60分以下が好ましく、45分以下がより好ましく、30分以下が更に好ましい。
但し、処理温度が低い場合は加熱処理時間を長めにすることが好ましく、処理温度が高い場合は加熱処理時間を短めにすることが好ましい。
加熱処理温度及び加熱処理時間は被保護物の形状や熱容量、耐熱性等や必要とされる耐水性、耐熱性、易溶解性を考慮して適宜設定することができる。
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、半導体基板の実装工程において部品実装面を保護し得る耐水性を有し、かつ、温水により容易に去除できる仮保護材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0055】
(合成例1)
[PVA1(ケン化度98.4モル%、重量平均分子量15000)]
温度計、攪拌機及び冷却管を備えた反応器内に、酢酸ビニルモノマー2000重量部及びメタノール200重量部を加え、窒素ガスを30分間吹き込んで窒素置換した後、反応器を60℃にて30分間加熱した。次いで、重合開始剤である2,2’-アゾビスイソブチロニトリル456.5重量部を添加した後、60℃にて4時間反応させた。反応時間終了後、反応液を冷却した。冷却後に1H-NMR測定によって重合率を測定したところ、重合率は99%であった。次いで、減圧下で、残留する酢酸ビニルモノマーをメタノールとともに除去する操作を、メタノールを追加しながら行い、ポリ酢酸ビニル50重量%を含むメタノール溶液を得た。このメタノール溶液に、酢酸ビニルに対して0.07モル%の水酸化ナトリウム量となるように水酸化ナトリウムのメタノール溶液を加え、40℃でケン化を行った。得られた固形分を粉砕し、メタノールによる洗浄を行った後、乾燥することによりPVA1を得た。得られたPVA1のケン化度をJIS K6726に準拠した方法により測定した。また、ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量は、カラムとしてLF-804(SHOKO社製)を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、ポリスチレン換算による重量平均分子量を測定することにより求めた。その結果、ケン化度及び重量平均分子量はそれぞれ98.4モル%及び15000であった。
【0056】
(合成例2)
[PVA2(ケン化度88.0モル%、重量平均分子量30000)]
2,2’-アゾビスイソブチロニトリルの添加量を4.2重量部に、水酸化ナトリウムのメタノール溶液の添加量を酢酸ビニルに対して0.02モル%の水酸化ナトリウム量となるように変更した以外は合成例1と同様の操作を行うことにより、ケン化度及び重量平均分子量がそれぞれ88.0モル%及び30000であるPVA2を得た。
【0057】
(合成例3)
[PVA3(ケン化度98.4モル%、重量平均分子量22000)]
2,2’-アゾビスイソブチロニトリルの添加量を22.9重量部に、水酸化ナトリウムのメタノール溶液の添加量を酢酸ビニルに対して0.07モル%の水酸化ナトリウム量となるように変更した以外は合成例1と同様の操作を行うことにより、ケン化度及び重量平均分子量がそれぞれ98.4モル%及び22000であるPVA3を得た。
【0058】
(実施例1)
ポリビニルアルコール系樹脂を90℃以上の温水に溶解した後、常温まで冷却することで濃度20重量%のポリビニルアルコール系樹脂水溶液を作製した。なお、ポリビニルアルコール系樹脂としては、PVA1を用いた。
また、ホウ酸(B(OH)3)を水に溶解して、濃度3重量%のホウ酸水溶液を得た。
ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対してホウ酸0.412重量部となるようにポリビニルアルコール系樹脂水溶液とホウ酸水溶液とを混合し、脱泡することにより仮保護材水溶液を得た。
【0059】
得られた仮保護材水溶液を片面に離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルムの非離型処理面上に、乾燥後の厚みが70μmとなるようにベーカー式アプリケーターを用いて塗工し、80℃の温風循環式オーブンで乾燥して水分を除去し、フィルム状の仮保護材を得た。
【0060】
得られた仮保護材をポリエチレンテレフタレートフィルムから剥離し、テフロン(登録商標)シートの上に載せ、温度180℃の温風循環式オーブンに30分間静置することで加熱処理を行った。
【0061】
(実施例2~11、比較例1~4)
ポリビニルアルコール系樹脂として表1に示すポリビニルアルコール系樹脂を用い、表1に示す配合比となるようにポリビニルアルコール系樹脂水溶液とホウ酸水溶液とを混合し、脱泡して仮保護材水溶液を得た。
得られた仮保護材水溶液を用いた以外は実施例1と同様にしてフィルム状の仮保護材を得た。
得られた仮保護材について、表1に示す条件で加熱処理を行った。
【0062】
(評価)
実施例及び比較例で得られた仮保護材について、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0063】
(1)ホウ酸の含有量
得られた仮保護材中のホウ酸の含有量について、下記式(1)及び(2)の関係を確認し、以下の基準で評価した。
【0064】
【0065】
【0066】
<式(1):Gu=70、Gd=5>
〇:式(1)を満たす。
×:式(1)を満たさない。
<式(2):Gu=70、Gd=5>
〇:式(2)を満たす。
×:式(2)を満たさない。
<式(1)及び(2):Gu=70、Gd=5>
◎:式(1)と式(2)との両方を満たす。
×:少なくとも式(1)又は式(2)のいずれかを満たさない。
【0067】
また、式(1)及び式(2)について、Gu=80、Gd=3.5とした場合、Gu=90、Gd=2とした場合についても同様に評価した。
【0068】
(2)ゲル分率の測定(45kHz超音波溶解試験)
加熱後の仮保護材を5cm×5cmにカットして試験片を作製し、初期重量を測定した。
500mlビーカーに純水200mlを入れ、上記試験片を浸漬した後、ビーカーを超音波洗浄機にセットした。
ビーカー内の水温を35℃として45kHzにて15分間超音波洗浄機にかけた後、200メッシュのステンレス金網にて濾過し、金網ごと80℃のオーブンにて乾燥した。
濾過前の金網の重量と濾過、乾燥後の金網の重量との差から未溶解成分の重量を算出した。試験片の初期重量に対する未溶解成分の重量の割合を算出することによりゲル分率(重量%)を求め、以下の基準で評価した。
45kHz超音波試験によるゲル分率が高いと、耐水性に優れているといえる。
〇:ゲル分率が70重量%以上であった。
×:ゲル分率が70重量%未満であった。
【0069】
(3)ゲル分率の測定(80℃温水溶解試験)
加熱後の仮保護材を5cm×5cmにカットして試験片を作製し、初期重量を測定した。
300mlビーカーに純水200mlと撹拌子を入れた後、スターラー付きのウォーターバスにセットした。
ウォーターバスにセットしたビーカー内の水温が80℃となるように加熱し、水温が80℃で安定した時点で、試験片を投入した。
試験片投入から15分後、ウォーターバスからビーカーを取り出し、200メッシュのステンレス金網にて濾過し、金網ごと80℃のオーブンにて乾燥した。
濾過前の金網の重量と濾過、乾燥後の金網の重量との差から未溶解成分の重量を算出した。
試験片の初期重量に対する未溶解成分の重量の割合を算出することによりゲル分率(重量%)を求め、以下の基準で評価した。
80℃温水溶解試験でのゲル分率が低いと温水による除去性が高いといえる。
〇:ゲル分率が5重量%以下であった。
×:ゲル分率が5重量%を超えていた。
【0070】
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、半導体基板の実装工程において部品実装面を保護し得る耐水性を有し、かつ、温水により容易に去除できる仮保護材を提供できる。