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特開2023-43861接着用プライマー、電子部品の製造方法
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  • 特開-接着用プライマー、電子部品の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043861
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】接着用プライマー、電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 129/04 20060101AFI20230322BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20230322BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20230322BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230322BHJP
   C09J 129/04 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
C09D129/04
C09D5/00 D
C09D7/61
C09J7/38
C09J129/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145344
(22)【出願日】2022-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2021151029
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】米田 義和
(72)【発明者】
【氏名】山田 佑
【テーマコード(参考)】
4J004
4J038
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA08
4J004AB01
4J004CC02
4J004FA04
4J004FA08
4J038CE021
4J038GA09
4J038HA476
4J038KA03
4J038KA06
4J038MA08
4J038MA09
4J038NA12
4J038PA07
4J038PB09
4J038PC08
4J040DD021
4J040JA09
4J040JB01
4J040MA02
4J040MA10
4J040MB05
4J040MB09
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とした保護シートにより電子基板を保護する際、電子基板の部品実装面を保護し得る耐水性を発揮させつつ、接着性を向上できる接着用プライマーを提供する。
【解決手段】ポリビニルアルコール系樹脂用の接着用プライマーであって、ポリビニルアルコール系樹脂及び水を含む溶媒を含有し、前記ポリビニルアルコール系樹脂は極性基を有する構成単位を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂を含有し、前記溶媒の含有量が70重量%以上である、接着用プライマー。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系樹脂用の接着用プライマーであって、
ポリビニルアルコール系樹脂及び水を含む溶媒を含有し、
前記ポリビニルアルコール系樹脂は極性基を有する構成単位を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂を含有し、
前記溶媒の含有量が70重量%以上である、接着用プライマー。
【請求項2】
極性基が、アミノ基及びアミド基から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の接着用プライマー。
【請求項3】
不揮発成分の含有量が5重量%以上30重量%以下である、請求項1又は2に記載の接着用プライマー。
【請求項4】
更にホウ酸を含有し、不揮発成分中における前記ホウ酸の含有量が0.025重量%以上15重量%以下である、請求項1又は2に記載の接着用プライマー。
【請求項5】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度が70モル%以上100モル%以下である、請求項1又は2に記載の接着用プライマー。
【請求項6】
ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量が8000以上150000以下である、請求項1又は2に記載の接着用プライマー。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の接着用プライマーを電子基板及びポリビニルアルコール系樹脂を含む電子基板保護シートの少なくとも一方に塗布した後、前記電子基板と前記電子基板保護シートとを貼り合わせることによって前記電子基板上に保護膜を形成する工程を有する、電子部品の製造方法。
【請求項8】
保護膜を形成する工程の後、更に、保護膜を除去する工程を有する、請求項7に記載の電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着用プライマー、電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体等の電子部品の加工時においては、電子部品の取扱いを容易にし、破損しないようにするために、粘着剤組成物を介して電子部品を支持板に固定したり、粘着テープを電子部品に貼付したりして保護することが行われている。例えば、高純度なシリコン単結晶等から切り出した厚膜ウエハを所定の厚さにまで研削して薄膜ウエハとする場合に、粘着剤組成物を介して厚膜ウエハを支持板に接着することが行われる。
【0003】
このように電子部品に用いる粘着剤組成物や粘着テープには、加工工程中に電子部品を強固に固定できるだけの高い接着性とともに、工程終了後には電子部品を損傷することなく剥離できることが求められる(以下、「高接着易剥離」ともいう。)。
高接着易剥離の実現手段として、例えば特許文献1には、ウエハの表面にポリビニルアルコール、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム及びα-オレフィンスルホン酸ナトリウムを混合した液体で覆って形成される保護層を配する構成が開示されている。
また、特許文献2には、重合度100~3000、ケン化度70~99モル%のポリビニルアルコール系重合体を含むフィルムを半導体ウエハに貼り合わせるウエハの分割方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3221770号公報
【特許文献2】特許第5563341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、集積回路の高密度化と歩留まり向上を目的として、電子部品の実装では3D実装が行われている。3D実装では、集積回路以外にコンデンサ、半田ボール等の周辺素子がチップ型電子部品の上面、背面等のいたるところに実装される。
3D実装では、工程上の都合等により、上面に集積回路を実装するよりも先に背面側に周辺素子が配置される場合がある。このような場合、上面に集積回路を実装する際に背面側の素子がステージに接触すること等により、チップ型電子部品に傷や破損が生じる恐れがある。このため、背面に先に実装される素子を保護する目的で保護シートが用いられるが、このような保護シートは表面側に集積回路を多層にわたって配置した後に取り除かれる必要がある。
特許文献1及び2のようにポリビニルアルコール系樹脂を用いた場合、温水で容易に除去できるものの、基板との接着性が低く、水への浸漬時や、剥離の力がかかった際に容易に剥離してしまうという問題がある。
このため、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする保護シートを用いた場合でも充分な耐水性と接着性とを発揮できる方法が求められている。
【0006】
本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする保護シートにより電子基板を保護する際、電子基板の部品実装面を保護し得る耐水性を発揮させつつ、接着性を向上できる接着用プライマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示(1)は、ポリビニルアルコール系樹脂用の接着用プライマーであって、ポリビニルアルコール系樹脂及び水を含む溶媒を含有し、前記ポリビニルアルコール系樹脂は極性基を有する構成単位を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂を含有し、前記溶媒の含有量が70重量%以上である、接着用プライマーである。
本開示(2)は、極性基が、アミノ基及びアミド基から選択される少なくとも1種である、本開示(1)の接着用プライマーである。
本開示(3)は、不揮発成分の含有量が5重量%以上30重量%以下である、本開示(1)又は(2)の接着用プライマーである。
本開示(4)は、更にホウ酸を含有し、不揮発成分中における前記ホウ酸の含有量が0.025重量%以上15重量%以下である、本開示(1)~(3)のいずれかとの任意の組み合わせの接着用プライマーである。
本開示(5)は、ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度が70モル%以上100モル%以下である、本開示(1)~(4)のいずれかとの任意の組み合わせの接着用プライマーである。
本開示(6)は、ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量が8000以上150000以下である、本開示(1)~(5)のいずれかとの任意の組み合わせの接着用プライマーである。
本開示(7)は、本開示(1)~(6)のいずれかの接着用プライマーを電子基板及びポリビニルアルコール系樹脂を含む電子基板保護シートの少なくとも一方に塗布した後、前記電子基板と前記電子基板保護シートとを貼り合わせることによって前記電子基板上に保護膜を形成する工程を有する、電子部品の製造方法である。
本開示(8)は、保護膜を形成する工程の後、更に、保護膜を除去する工程を有する、本開示(7)の電子部品の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする保護シートにより電子基板を保護する際に、電子基板の部品実装面にプライマーを塗布して接着性を向上させることを検討した。本発明者らは、極性基を有する構成単位を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂と所定量の水を含む溶媒とを含有する接着用プライマーを用いることにより、半導体基板の実装工程において部品実装面を保護するのに充分な耐水性を維持しつつ、接着性を向上できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
<ポリビニルアルコール系樹脂>
本発明の接着用プライマーは、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する。
上記ポリビニルアルコール系樹脂は、極性基を有する構成単位を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂を含有する。
上記変性ポリビニルアルコール系樹脂を含有することで、接着性を向上させることができる。
【0010】
上記ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、70モル%以上であることが好ましく、100モル%以下であることが好ましい。
上記範囲とすることで、耐水性を充分に高めることができる。
上記ケン化度は、80モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることが更に好ましく、95モル%以上であることが特に好ましく、99.9モル%以下であることがより好ましく、99.7モル%以下であることが更に好ましく、99モル%以下であることが特に好ましい。
上記ケン化度は、例えば、JIS K6726に準拠した方法により測定することができる。ケン化度は、ケン化によりビニルアルコール単位に変換され得るビニルエステル単位のうち、実際にビニルアルコール単位に変換されている単位の割合を示す。
上記ケン化度は、例えば、ケン化条件、すなわち加水分解条件を調整することで制御できる。
【0011】
上記ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、8000以上であることが好ましく、150000以下であることが好ましい。
上記範囲とすることで、溶媒に溶解してプライマーとして使用する場合に最適な塗工性を得られる。
上記重量平均分子量は、10000以上であることがより好ましく、14000以上であることが更に好ましく、25000以上であることが特に好ましく、100000以下であることがより好ましく、60000以下であることが更に好ましい。
【0012】
上記ポリビニルアルコール系樹脂の数平均分子量(Mn)は、5000以上であることが好ましく、5500以上であることがより好ましく、6000以上であることが更に好ましく、100000以下であることが好ましく、70000以下であることがより好ましく、40000以下であることが更に好ましい。
【0013】
上記ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.2以上であることが好ましく、1.4以上であることがより好ましく、1.6以上であることが更に好ましく、6.5以下であることが好ましく、5.5以下であることがより好ましく、4.5以下であることが更に好ましい。
上記重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定すること、ケン化前のポリビニルエステルをGPC法により測定すること、ポリビニルアルコール樹脂を再エステル化して得られたポリビニルエステルをGPC法により測定すること、JIS K6726に準拠して水溶液の粘度を測定すること等により求めることができる。例えば、ポリスチレンを標準とし、TSKgel(東ソー社)、PLgel(AMR社)、KF-806、KF-807(Shodex社)等のカラムを使用することができる。
【0014】
上記ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、180以上であることが好ましく、220以上であることがより好ましく、320以上であることが更に好ましく、560以上であることが特に好ましく、3400以下であることが好ましく、2300以下であることがより好ましく、1360以下であることが更に好ましい。
上記平均重合度は、例えば、ケン化前のポリ酢酸ビニル樹脂をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定することやJIS K6726に準拠して水溶液の粘度を測定することで求めることができる。
【0015】
上記ポリビニルアルコール系樹脂は、上記変性ポリビニルアルコール系樹脂を含有していればよく、組成が異なる複数の変性ポリビニルアルコール系樹脂の混合樹脂であってもよく、変性ポリビニルアルコール系樹脂と無変性ポリビニルアルコール系樹脂との混合樹脂であってもよい。
上記ポリビニルアルコール系樹脂が組成の異なる複数のポリビニルアルコール系樹脂の混合樹脂である場合、上記ケン化度は、ポリビニルアルコール系樹脂中の各ポリビニルアルコール系樹脂の含有量(重量%)とケン化度(モル%)とを掛け合わせ100で除したものを合計することで求めることができる。
また、上記混合樹脂の重量平均分子量、数平均分子量、平均重合度についても同様に、ポリビニルアルコール系樹脂中の各ポリビニルアルコール系樹脂の含有量(重量%)とそれぞれの値を掛け合わせ100で除したものを合計することで求めることができる。
【0016】
上記ポリビニルアルコール系樹脂は、極性基を有する構成単位を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂を含有する。
上記極性基としては、アミノ基、アミド基、スルホン酸基、カルボキシル基等が挙げられる。なかでも、アミノ基、アミド基が好ましく、アミノ基がより好ましい。
【0017】
上記極性基がアミノ基である場合、上記アミノ基を有する構成単位としては、下記式(1)で表される構成単位が挙げられる。
【0018】
【化1】
【0019】
上記式(1)中、Rは単結合又は炭素数1~10のアルキレン基、R及びRは水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を表す。
【0020】
上記炭素数1~10のアルキレン基としては、直鎖状アルキレン基、分岐鎖状アルキレン基、環状アルキレン基が挙げられる。
上記直鎖状アルキレン基としては、メチレン基、ビニレン基、n-プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基等が挙げられる。
上記分岐鎖状アルキレン基としては、メチルメチレン基、メチルエチレン基、1-メチルペンチレン基、1,4-ジメチルブチレン基等が挙げられる。
上記環状アルキレン基としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられる。
なかでも、直鎖状アルキレン基が好ましく、メチレン基、ビニレン基、n-プロピレン基がより好ましく、メチレン基、ビニレン基が更に好ましい。
【0021】
上記炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等の直鎖状アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、2,2-ジメチルプロピル基、1,1,3,3-テトラメチルブチル基、2-エチルヘキシル基等の分岐状アルキル基、シクロプロピル基、シクロプロピルメチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基等が挙げられる。
【0022】
上記極性基がアミド基である場合、上記アミド基を有する構成単位としては、下記式(2)で表される構成単位が挙げられる。
【0023】
【化2】
【0024】
上記式(2)中、Rは炭素数1~10のアルキレン基、Rは炭素数1~10のアルキル基を表す。
炭素数1~10のアルキレン基、炭素数1~10のアルキル基としては、上記式(1)中のR~Rと同様のものが挙げられる。
【0025】
上記変性ポリビニルアルコール系樹脂における上記極性基を有する構成単位の含有量は、1モル%以上であることが好ましく、3モル%以上であることがより好ましく、5モル%以上であることが特に好ましく、20モル%以下であることが好ましく、15モル%以下であることがより好ましく、12モル%以下であることが特に好ましい。
上記極性基を有する構成単位の含有量は、例えば、NMRにより測定することができる。
【0026】
上記変性ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、70モル%以上であることが好ましく、100モル%以下であることが好ましい。
上記範囲とすることで、耐水性を充分に高めることができる。
上記ケン化度は、80モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることが更に好ましく、95モル%以上であることが特に好ましく、99.9モル%以下であることが好ましく、99.7モル%以下であることが更に好ましく、99モル%以下であることが特に好ましい。
【0027】
上記変性ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、8000以上であることが好ましく、150000以下であることが好ましい。
上記範囲とすることで、溶媒に溶解してプライマーとして使用する場合に最適な塗工性を得られる。
上記重量平均分子量は、10000以上であることがより好ましく、14000以上であることが更に好ましく、25000以上であることが特に好ましく、100000以下であることがより好ましく、60000以下であることが更に好ましい。
【0028】
上記変性ポリビニルアルコール系樹脂の数平均分子量(Mn)は、5000以上であることが好ましく、5500以上であることがより好ましく、6000以上であることが更に好ましく、100000以下であることが好ましく、70000以下であることがより好ましく、40000以下であることが更に好ましい。
【0029】
上記変性ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.2以上であることが好ましく、1.4以上であることがより好ましく、1.6以上であることが更に好ましく、6.5以下であることが好ましく、5.5以下であることがより好ましく、4.5以下であることが更に好ましい。
【0030】
上記ポリビニルアルコール系樹脂における上記極性基を有する構成単位の含有量は、1モル%以上であることが好ましく、3モル%以上であることがより好ましく、5モル%以上であることが特に好ましく、20モル%以下であることが好ましく、15モル%以下であることがより好ましく、12モル%以下であることが特に好ましい。
上記ポリビニルアルコール系樹脂が組成の異なる複数のポリビニルアルコール系樹脂の混合樹脂である場合、上記極性基を有する構成単位の含有量は、ポリビニルアルコール系樹脂中の各ポリビニルアルコール系樹脂の含有量(重量%)と極性基を有する構成単位の含有量(モル%)とを掛け合わせ100で除したものを合計することで求めることができる。
【0031】
上記ポリビニルアルコール系樹脂における、上記変性ポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、5重量%以上であることが好ましく、25重量%以上であることがより好ましく50重量%以上であることが更に好ましく、85モル%以上であることが特に好ましい。上限は100重量%以下であるが、含有量の上限は特に限定されるものではなく、目的に応じて貯蔵安定剤、力学特性改良剤、増粘剤、防腐剤、防カビ剤、分散安定化剤、スペーサー(ギャップ調整材)、他のポリマー等のその他成分を含有させることによって明示的に決定される。
【0032】
本発明の接着用プライマーにおける上記ポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、5重量%以上であることが好ましく、8重量%以上であることがより好ましく、10重量%以上であることが更に好ましく、30重量%以下であることが好ましく、25重量%以下であることがより好ましく、20重量%以下であることが更に好ましい。
【0033】
また、本発明の接着用プライマーにおいて、不揮発成分における上記ポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、85重量%以上であることが更に好ましい。上記ポリビニルアルコール系樹脂の含有量の上限は特に限定されるものではないが、目的に応じて貯蔵安定剤、力学特性改良剤、増粘剤、防腐剤、防カビ剤、分散安定化剤、スペーサー(ギャップ調整材)、他のポリマー等のその他成分を含有させることによって明示的に決定される。
【0034】
上記ポリビニルアルコール系樹脂は、従来公知の方法に従って、ビニルエステルを重合してポリマーを得た後、ポリマーをケン化、すなわち加水分解することにより得られる。ケン化触媒としては、一般にアルカリ又は酸が用いられる。
【0035】
上記ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル及び安息香酸ビニル等が挙げられる。
【0036】
ビニルエステルの重合方法は特に限定されないが、例えば、溶液重合法、塊状重合法及び懸濁重合法等が挙げられる。
【0037】
上記ビニルエステルを重合する際に用いる重合触媒としては、例えば、2-エチルヘキシルペルオキシジカーボネート(Tianjin McEIT社製「TrigonoxEHP」)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート、ジ-n-ブチルペルオキシジカーボネート、ジ-セチルペルオキシジカーボネート及びジ-s-ブチルペルオキシジカーボネート等が挙げられる。上記重合触媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0038】
また、上記変性ポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルエステルと極性基を有する他の不飽和モノマーとの重合体をケン化することで作製することができる。
他の不飽和モノマーとしては、上記ビニルエステル以外のモノマーであって、ビニル基等の不飽和二重結合を有するモノマーが挙げられる。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸及びその塩、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸以外の不飽和酸類、その塩及びエステル、(メタ)アクリルアミド類、N-ビニルアミド類、ビニルエーテル類、ニトリル類、ハロゲン化ビニル類、アリル化合物、ビニルシリル化合物、酢酸イソプロペニル、スルホン酸基含有化合物、アミノ基含有化合物等が挙げられる。
【0039】
(メタ)アクリル酸エステル類としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸i-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、及び(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸以外の不飽和酸類、その塩及びエステルとしては、マレイン酸及びその塩、マレイン酸エステル、イタコン酸及びその塩、イタコン酸エステル、メチレンマロン酸及びその塩、メチレンマロン酸エステルなどが挙げられる。
(メタ)アクリルアミド類としては、アクリルアミド、n-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド等が挙げられる。N-ビニルアミド類としては、N-ビニルピロリドン等が挙げられる。ビニルエーテル類としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、i-プロピルビニルエーテル及びn-ブチルビニルエーテル等が挙げられる。
ニトリル類としては、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。ハロゲン化ビニル類としては、塩化ビニル及び塩化ビニリデン等が挙げられる。アリル化合物としては、酢酸アリル及び塩化アリル等が挙げられる。ビニルシリル化合物としては、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
スルホン酸基含有化合物としては、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸などの(メタ)アクリルアミドアルカンスルホン酸及びその塩、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩などが挙げられる。
アミノ基含有化合物としては、アリルアミン、ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン、ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン等が挙げられる。
【0040】
<ホウ酸>
本発明の接着用プライマーは、ホウ酸を含有することが好ましい。
上記ホウ酸を含有することにより、加熱することによってポリビニルアルコール系樹脂に架橋構造が形成され、充分な耐水性を有する保護層を形成することができる。
【0041】
ホウ酸としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、テトラホウ酸等が挙げられる。
また、上記ホウ酸には、ホウ酸の塩も含まれる。上記ホウ酸の塩としては、ホウ砂、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン等の有機アミン塩等が挙げられる。
これらのホウ酸は、1種を単語句で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
本発明の接着用プライマーにおいて、不揮発成分における上記ホウ酸の含有量は、0.025重量%以上であることが好ましく、15重量%以下であることが好ましい。
上記範囲とすることで、加熱により充分な耐水性と耐熱性とを付与することができる。
上記ホウ酸の含有量は、0.025重量%以上であることがより好ましく、0.05重量%以上であることが更に好ましく、0.1重量%以上であることが特に好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、5重量%以下であることが更に好ましく、1重量%以下であることが特に好ましい。
【0043】
本発明の接着用プライマーにおける上記ホウ酸の含有量は、0.025重量%以上であることが好ましく、0.05重量%以上であることがより好ましく、0.1重量%以上であることが更に好ましく、15重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがより好ましく、1重量%以下であることが更に好ましい。
【0044】
<溶媒>
本発明の接着用プライマーは、水を含む溶媒を含有する。
本発明の接着用プライマーにおける上記溶媒の含有量は70重量%以上である。
上記溶媒の含有量が70重量%以上であると、ポリビニルアルコール系樹脂を溶解し、プライマーとして基板上に容易に塗布することができる。
上記溶媒の含有量は、75重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、95重量%以下であることが好ましく、90重量%以下であることがより好ましく、85重量%以下であることが更に好ましい。
【0045】
上記溶媒における水の含有量は50重量%以上であることが好ましい。
水の含有量が50重量%以上であると、ポリビニルアルコールを溶解し、プライマーとして基板上に容易に塗布することができる。
上記水の含有量は、60重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることが特に好ましく、上限は100重量%である。
【0046】
本発明の接着用プライマーは、水以外の他の溶剤を含んでいてもよい。より低環境負荷とするためには有機溶剤等を含まないことが好ましいが、電子基板への濡れ性や、塗布時の流動性向上を目的として他の有機溶剤を一定量含むことができる。
上記他の溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール等の多価アルコール類等が挙げられる。
【0047】
本発明の接着用プライマーにおける上記他の溶剤の含有量は、0重量%以上であることが好ましく、15重量%以上であることがより好ましく、25重量%以上であることが更に好ましく、50重量%以下であることが好ましく、35重量%以下であることがより好ましく、20重量%以下であることが更に好ましい。
【0048】
本発明の接着用プライマーは、不揮発成分として、必要に応じて、貯蔵安定剤、力学特性改良剤、増粘剤、防腐剤、防カビ剤、分散安定化剤、スペーサー(ギャップ調整材)等のその他の成分を含んでいてもよいが、不揮発成分がポリビニルアルコール系樹脂及びホウ酸からなることが好ましい。
【0049】
本発明の接着用プライマーにおける不揮発成分の含有量は5重量%以上であることが好ましく、30重量%以下であることが好ましい。
上記範囲とすることで電子基板へ塗布する際に良好な流動性を得るとともに、接着性を向上させるために必要な塗布厚みを得ることができる。
上記不揮発成分の含有量は、10重量%以上であることがより好ましく、15重量%以上であることが更に好ましく、25重量%以下であることがより好ましく、20重量%以下であることが更に好ましい。
【0050】
本発明の接着用プライマーを製造する方法は特に限定されず、例えば、極性基を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂を含むポリビニルアルコール系樹脂、水を含む溶媒、ホウ酸等の添加剤を混合する方法が挙げられる。
【0051】
本発明の接着用プライマーは、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする保護シートと電子基板とを貼り合わせるための、ポリビニルアルコール系樹脂用の接着用プライマーとして用いられる。
また、本発明の接着用プライマーは、半導体装置、表示装置等の電子部品の製造工程に用いることができる。
【0052】
電子基板に、本発明の接着用プライマーを塗布した後、ポリビニルアルコール系樹脂を含む電子基板保護シートを貼り合わせることで電子基板を保護することができる。また、電子基板保護シートに本発明の接着用プライマーを塗布した後、電子基板と電子基板保護シートとを貼り合わせることで電子基板を保護することができる。本発明の接着用プライマーは電子基板側、ポリビニルアルコール系樹脂を含む電子基板保護シート側のいずれか又はその両方に塗布することにより効果を発揮する。
本発明の接着用プライマーを電子基板及びポリビニルアセタール系樹脂を含む電子基板保護シートの少なくとも一方に塗布した後、前記電子基板と前記電子基板保護シートとを貼り合わせることによって前記電子基板上に保護膜を形成する工程を有する電子部品の製造方法もまた本発明の1つである。
【0053】
上記電子基板としては、半導体素子を内蔵する半導体基板であってもよいが、必ずしも半導体素子を内蔵する必要はなく、半導体チップ等の外部デバイスの搭載領域に外部デバイスが搭載されていない電子基板であってもよい。
【0054】
上記電子基板保護シートを作製する方法は特に限定されず、例えば、以下のような方法を用いることができる。
まず、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する溶液を調製する。次いで、基材上にポリビニルアルコール系樹脂を含有する溶液を塗布し、乾燥させて電子基板保護シートを作製する。
上記ポリビニルアルコール系樹脂を含む溶液を用いることで、温水により容易に除去できる保護膜を形成することができる。
上記ポリビニルアルコール系樹脂を含む溶液は、ホウ酸等の添加剤を含んでいてもよい。
【0055】
上記基材を構成する材料は特に限定されないが、耐熱性を有する材料であることが好ましい。耐熱性を持つ材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂、液晶ポリマー等が挙げられる。なかでも、耐熱性に優れることから、ポリイミドが好ましい。
【0056】
上記塗布する方法としては、例えば、キャスト法、ロールコーティング法、リップコーティング法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法等が挙げられる。
【0057】
上記乾燥する方法としては、例えば、自然乾燥する方法、ポリビニルアルコール系樹脂のガラス転移温度以下の温度で加熱乾燥する方法等が挙げられる。
【0058】
上記基材の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は25μm、好ましい上限は250μmである。上記基材の厚みが上記範囲内であれば、取扱い性に優れる粘着テープとすることができる。上記基材の厚みのより好ましい下限は50μm、より好ましい上限は125μmである。
【0059】
上記接着用プライマーを塗布する方法としては、例えば、キャスト法、ロールコーティング法、リップコーティング法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法等が挙げられる。
【0060】
上記電子部品の製造方法は、更に、上記保護膜を形成する工程の後、上記保護膜を除去する工程を有することが好ましい。
上記保護膜を除去する方法としては、例えば、温水により洗浄する方法が挙げられる。
上記保護膜はポリビニルアルコール系樹脂を主成分とするため、温水により容易に除去することができる。
【0061】
また、上記電子部品の製造方法において、加熱処理する工程を行ってもよい。上記加熱処理する工程を有することで、耐水性を向上させることができる。特に、本発明の接着用プライマーがホウ酸を含有する場合、上記加熱処理を行うことによって架橋を促進し、耐水性をより向上させることができる。
上記加熱処理する工程において、加熱処理温度は130℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましく、160℃以上が更に好ましく、190℃以下が好ましく、185℃以下がより好ましく、180℃以下が更に好ましい。また、加熱処理時間は5分以上が好ましく、15分以上がより好ましく、60分以下が好ましく、45分以下がより好ましく、30分以下が更に好ましい。
但し、加熱処理温度が低い場合は加熱処理時間を長めにすることが好ましく、加熱処理温度が高い場合は加熱処理時間を短めにすることが好ましい。
加熱処理時間及び加熱処理時間は被保護物の形状や熱容量、耐熱性等や必要とする耐水性、耐熱性、易溶解性等を考慮して適宜選択することができる。
【発明の効果】
【0062】
本発明によれば、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とした保護シートにより電子基板を保護する際、電子基板の部品実装面を保護し得る耐水性を発揮させつつ、接着性を向上できる接着用プライマーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】接着強度の測定方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0065】
(実施例1)
ポリビニルアルコール系樹脂100重量部を水500重量部に溶解して接着用プライマーを作製した。
ポリビニルアルコール系樹脂としては、上記式(1)で表されるアミノ基を有する構成単位を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂PVA-A(ケン化度98.5モル%、重量平均分子量38000、式(1)中、Rは単結合、RおよびRは水素原子、アミノ基を有する構成単位の含有量8.0モル%)を用いた。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、JIS K6726に準拠した方法により測定した。また、ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量は、カラムとしてLF-804(SHOKO社製)を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、ポリスチレン換算による重量平均分子量を測定することにより求めた。
【0066】
(実施例2)
ポリビニルアルコール系樹脂として、上記式(1)で表されるアミノ基を有する構成単位を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂PVA-B(ケン化度98.5モル%、重量平均分子量35000、式(1)中、Rは単結合、RおよびRは水素原子、アミノ基を有する構成単位の含有量4.0モル%)を用いた以外は実施例1と同様にして接着用プライマーを作製した。
【0067】
(実施例3)
更に、ホウ酸(B(OH))0.108重量部を添加した以外は実施例1と同様にして接着用プライマーを作製した。
【0068】
(実施例4)
ホウ酸の添加量を0.324重量部とした以外は実施例3と同様にして接着用プライマーを作製した。
【0069】
(実施例5)
更に、ホウ酸(B(OH))0.117重量部を添加した以外は実施例2と同様にして接着用プライマーを作製した。
【0070】
(実施例6)
ホウ酸の添加量を0.352重量部とした以外は実施例5と同様にして接着用プライマーを作製した。
【0071】
(実施例7)
ポリビニルアルコール系樹脂としては、PVA-A50重量%とポリビニルアルコール系樹脂PVA-C(ケン化度98.4モル%、重量平均分子量15000)50重量%とを含む混合樹脂を用い、ホウ酸の添加量を0.412重量部とした以外は実施例3と同様にして接着用プライマーを作製した。
【0072】
(実施例8)
水の添加量を900重量部とした以外は実施例3と同様にして接着用プライマーを作製した。
【0073】
(実施例9)
水の添加量を400重量部とした以外は実施例3と同様にして接着用プライマーを作製した。
【0074】
(実施例10)
更に、メタノール100重量部を添加した以外は実施例9と同様にして接着用プライマーを作製した。
【0075】
(比較例1)
ポリビニルアルコール系樹脂としてPVA-Cを用いた以外は実施例1と同様にして接着用プライマーを作製した。
【0076】
(比較例2)
ポリビニルアルコール系樹脂として、ポリビニルアルコール系樹脂PVA-D(ケン化度88モル%、重量平均分子量30000)を用いた以外は実施例1と同様にして接着用プライマーを作製した。
【0077】
(比較例3)
更に、ホウ酸(B(OH))0.825重量部を添加した以外は比較例1と同様にして接着用プライマーを作製した。
【0078】
(比較例4)
ホウ酸の添加量を0.412重量部とした以外は比較例3と同様にして接着用プライマーを作製した。
【0079】
(比較例5)
ホウ酸の添加量を0.324重量部とした以外は比較例3と同様にして接着用プライマーを作製した。
【0080】
(比較例6)
水の添加量を400重量部とし、更に、メタノール100重量部を添加した以外は比較例3と同様にして接着用プライマーを作製した。
【0081】
(比較例7)
更に、ホウ酸(B(OH))2.061重量部を添加した以外は比較例2と同様にして接着用プライマーを作製した。
【0082】
(比較例8)
ホウ酸の添加量を0.412重量部とした以外は比較例7と同様にして接着用プライマーを作製した。
【0083】
(比較例9)
ポリビニルアルコール系樹脂として、ポリビニルアルコール系樹脂PVA-E(ケン化度98.4モル%、重量平均分子量22000)を用い、更に、ホウ酸(B(OH))0.281重量部を添加した以外は実施例1と同様にして接着用プライマーを作製した。
【0084】
(評価)
実施例及び比較例で得られた接着用プライマーについて、以下の評価を行った。結果を表1及び2に示した。
【0085】
(1)耐水性
(保護シートの作製)
ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して水400重量部を加えて混合し、液温を90℃以上に昇温しながら2時間攪拌した後、40℃まで冷却し、更に、ホウ酸(B(OH))0.5重量部を加えて混合することによって保護シート用水溶液を作製した。
得られた水溶液を、片面に離型処理が施されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの非離型処理面上に乾燥後の厚みが70μmとなるように塗工し、80℃のオーブンにて乾燥して水分を除去して、PETフィルム上に厚み70μmの保護シートを作製した。なお、一度に所定の厚みを得ることが難しいため、塗工と乾燥を数回繰り返し所定の厚みとした。
【0086】
(測定用サンプルの作製)
電子基板として、ETT Co., LTD.(Thailand)製基板ET-PCB-LQFP48を用意した。
得られた保護シートを45mm×45mmのサイズにカットし、基板上の保護シートと張り合わせる面に実施例・比較例で得られた接着用プライマーを刷毛で塗布した後、用意した基板上にセットし、ゴムローラーで圧着して積層した。
電子基板と保護シートとを積層したものを100℃×30分、0.5MPaの条件にて圧着した。更に、0.05MPaの面荷重をかけた状態で、180℃オーブンにて30分間熱処理を行った。なお、面荷重は予め180℃に加熱したものを用いた。
熱処理後、取り出した保護シートを貼り付けた基板をデシケーター内で徐冷した。
500mlビーカーに純水200mlを入れた後、常温まで徐冷された保護シートを貼り付けた基板をビーカー内に浸漬し、45kHzの超音波洗浄機内に10分間静置した。
10分後、ビーカー内から基板を取り出し、軽く水をふき取ったのち、表面の保護シートの状態を目視確認して、以下の基準で耐水性を評価した。
○:基板端部に浮き、剥がれがなく、問題となる変化は確認されなかった。
△:基板端部の浮き、剥がれ、及び、保護シートの亀裂等が見られた。
×:亀裂、剥がれが進行し、保護シートの一部に脱落が見られた。
【0087】
(2)接着強度
電子基板として、ETT Co., LTD.(Thailand)製基板ET-PCB-LQFP48を用意した。
「(1)耐水性」で得られた保護シートを45mm×45mmのサイズにカットし、基板上の保護シートと張り合わせる面に実施例・比較例で得られた接着用プライマーを刷毛で塗布した後、用意した基板上にセットして積層した。
電子基板と保護シートとを積層したものを100℃×30分、0.5MPaの条件にて圧着し、更に、温度23℃、相対湿度50%の環境下で72時間静置し、調湿した。
図1に示すように電子基板に接着された保護シートを1cm幅で切断し、5mm/分の速度で90°剥離試験を行った。同様の試験を3回行い、その平均値を算出することで接着強度を求めた。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明によれば、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とした保護シートにより電子基板を保護する際、電子基板の部品実装面を保護し得る耐水性を発揮させつつ、接着性を向上できる接着用プライマーを提供できる。
【符号の説明】
【0091】
1 保護シート
2 基板
図1