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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044363
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】超伝導回転電機の回転子
(51)【国際特許分類】
   H02K 55/04 20060101AFI20230323BHJP
【FI】
H02K55/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152357
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】淵本 遼
(72)【発明者】
【氏名】松崎 晃大
(72)【発明者】
【氏名】青木 宏信
(72)【発明者】
【氏名】矢野 哲平
(57)【要約】
【課題】 簡易な構成で軸長を短くすることを可能にする超伝導回転電機の回転子を提供すること。
【解決手段】 実施形態によれば、超電導線を界磁巻線として用いる超電導回転電機の回転子において、前記界磁巻線と電気的に接続され、回転中心の周りにらせん状に巻かれた複数本の電流リードを具備する超伝導回転電機の回転子が提供される。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導線を界磁巻線として用いる超電導回転電機の回転子において、
前記界磁巻線と電気的に接続され、回転中心の周りにらせん状に巻かれた複数本の電流リードを具備する、
超電導回転電機の回転子。
【請求項2】
前記複数本の電流リードの各々は、一端が所定の部材を通じて前記界磁巻線と電気的に接続されるとともに当該回転子内の低温部に熱伝導的に接続される、
請求項1に記載の超電導回転電機の回転子。
【請求項3】
前記複数本の電流リードの各々は、一端が平板状の部材を通じて前記界磁巻線と電気的に接続されるとともに当該回転子内の低温部に熱伝導的に接続され、
前記平板状の部材と前記低温部との間に、一定以上の熱伝導性を有する絶縁部材が介在するように設けられている、
請求項1に記載の超電導回転電機の回転子。
【請求項4】
前記複数本の電流リードは、直流電流のプラス側に対応する1本の電流リードとマイナス側に対応する1本の電流リードとを含み、双方が互いに当該回転子の周方向に180°ずれた形で配置されている、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超電導回転電機の回転子。
【請求項5】
前記プラス側に対応する1本の電流リードと前記マイナス側に対応する1本の電流リードとの対が複数設けられている、
請求項4に記載の超電導回転電機の回転子。
【請求項6】
個々の電流リードが当該回転子の周方向に均等間隔を保ちながららせん形状をなすように配置されている、
請求項5に記載の超電導回転電機の回転子。
【請求項7】
個々の電流リードを周囲から覆うように支持する筒状の絶縁部材をさらに具備する、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の超電導回転電機の回転子。
【請求項8】
電流リード間に絶縁部材が取り付けられている、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の超電導回転電機の回転子。
【請求項9】
前記平板状の部材に取り付けられ、前記複数本の電流リードの各々の一端がそれぞれ差し込まれる複数の電流リード差込み部材をさらに具備し、
個々の電流リード差込み部材は、対応する電流リードの一端が差し込まれる部分にはんだを鋳込むための穴を備えている、
請求項3に記載の超電導回転電機の回転子。
【請求項10】
前記複数の電流リード差込み部材による個々の電流リードと前記平板状の部材との電気的接続に、ボルト締結もしくはEBW(Electron Beam Welding)溶接が適用されている、
請求項9に記載の超電導回転電機の回転子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超伝導回転電機の回転子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超電導導体を界磁巻超として用いたいわゆる超電導回転電機が開発されている。超電導導体、例えば高温超電導線(HTS)などの超電導線を用いた超電導回転電機の回転子は、超電導性を維持するために、臨界温度以下に冷却しなければならず、運転中も低温状態を維持する、超電導線への浸入熱を極力小さくする必要がある。
【0003】
侵入熱は輻射伝熱,希薄気体伝熱,伝導伝熱等に分類されるが、従来はこれらを抑制するために低温ロータの周囲を真空圧力の小さい真空層とし、機械的に低温部と常温部とを接続する部材(トルクチューブや電流リードなど)を、低温ロータ内で気化した気体の冷媒により冷却するようにしている。すなわち、低温ロータ内で気化した冷媒は、単に排出・回収されるのではなく、トルクチューブや電流リードなどの熱伝導による低温ロータへの侵入熱を抑制するために、これらの部材を冷却する媒体として有効に利用されつつ回収されるようにしている。
【0004】
従来技術では、例えば電流リードの内部の冷却パスを低温冷媒が流れて当該電流リードを冷却する。電流リードを介しての低温部への侵入熱を抑制するためには、冷却パスの構成を検討し、熱交換性能を向上させること、冷却長を長くすること、電流リード断面積を小さくすることが一般的である。
【0005】
近年では、30K程度で超電導特性が得られるHTSを用いた超電導回転電機が開発されており、冷媒は液体ヘリウムだけではなくて、ヘリウムガスや液体水素、水素ガスなども利用できるようになってきた。
【0006】
また、超電導回転電機は、小さなコイルで高磁場を発生することができることから、高出力密度を実現でき、様々な分野(例えば船舶や航空機、電車、発電分野、産業分野など)での活用が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2529981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
超電導線を界磁巻線として用いる超電導回転電機では、高出力密度が求められる。例えば直接冷媒を電流リード内部に流して冷却するタイプ(直接冷却型)の電流リードでは、冷媒のシール性、熱絶縁性、低侵入熱性および高い熱交換性能が求められるため、接続部が複雑な構造を必要とし、かつ細く長い導電性のパイプを用いる必要があり、回転子の軸長が長くなる要因となる。さらに、細く長い銅帯を回転体内部に用いる場合、回転による遠心力に対する剛性が低いため、サポート構造も必要になってくる。また、低温による熱収縮で生じる熱応力を緩和するための機能を有する構造物(例えばベローズなど)が必要となる。このように、直接冷却型の電流リードを用いると、超伝導回転電機の構造の複雑化および体格の大型化を招いてしまう。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、簡易な構成で軸長を短くすることを可能にする超伝導回転電機の回転子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態によれば、超電導線を界磁巻線として用いる超電導回転電機の回転子において、前記界磁巻線と電気的に接続され、回転中心の周りにらせん状に巻かれた複数本の電流リードを具備する超伝導回転電機の回転子が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明よれば、簡易な構成で軸長を短くすることを可能にする超伝導回転電機の回転子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る超伝導回転電機の回転子の構成の一例を示す構成図。
図2図1に示される超伝導回転電機の回転子に搭載されるらせん構造の電流リードの周辺部の一部の構造を示す斜視図。
図3A】電流リード差込み部材41A,41Bにボルトを取り付けると共にはんだを鋳込むための穴32を設けた構造の例を示す斜視図。
図3B図3Aに示される電流リード差込み部材41Aの矢視A-Aにおける断面形状の例を示す断面図。
図4】筒状の電流リードサポート部材35A,35Bおよびテープ材36を用いて電流リード1を支持する構造の例を示す斜視図。
図5】ブロック状の電流リードサポート部材37およびテープ材36を用いて電流リード1を支持する構造の例を示す斜視図。
図6】プラス側に対応する1本の電流リード1とマイナス側に対応する1本の電流リード1との対が3つある場合(並列回路数が3の場合)の配置の例を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、実施形態に係る超伝導回転電機の回転子の構成の一例を示す構成図である。また、図2は、図1に示される超伝導回転電機の回転子に搭載されるらせん構造の電流リードの周辺部の一部の構造を示す斜視図である。
【0015】
図1に示されるものは、例えば高温超電導線(HTS)などの超電導線を界磁巻線として用いる超伝導回転電機の回転子であり、周囲に配置される固定子(図示せず)とともに超伝導回転電機を構成する。この超伝導回転電機の回転子は、超電導性を維持するために、臨界温度以下に冷却される低温部を含み、運転中も低温状態を維持するために、超電導線への浸入熱が極力小さくなるように構成されている。
【0016】
具体的には、超伝導回転電機の回転子は、図1に示されるように、電流リード1、低温ロータ3、コレクタリング4A,4B、界磁巻線(超電導線)5A,5B、トルクチューブ6、常温ダンパ13、真空断熱空間15、接続銅帯16A,16B、冷媒供給管21、冷媒回収管22、電流リードサポート部材26、間接冷却らせん溝27、低温フランジ28、平板状冷却銅板29A,29B、口出し銅帯30A,30B、中心孔銅帯31A,31B、絶縁部材34、低温リング38、電流リード差込み部材41A,41B、42A,42Bなどを備えている。ここでは、直流電流のプラス側に対応する要素には、Aを添えた符号を付し、直流電流のマイナス側に対応する要素には、Bを添えた符号を付している。
【0017】
この回転子の低温部と常温部との間には、双方を真空断熱空間15にて接続する電流リード1やトルクチューブ6が設けられている。特に本実施形態の電流リード1は、回転中心の周りにらせん状に巻かれた複数本の電流リードからなるものであり、らせん構造を成していることにより、回転子の軸長を短くすることを可能にしている。ここでは、電流リード1が2本である場合が例示されているが、この例に限定されるものではなく、この例よりも多い本数としても構わない。
【0018】
電流リード1は、直流電流のプラス側に対応する1本の電流リードとマイナス側に対応する1本の電流リードとを含み、双方が互いに当該回転子の周方向に180°ずれた形で離間して配置される。このように180°ずれた形で配置することにより、回転子が回転する際の重量の不釣り合いを極力低減させることができる。
【0019】
電流リードサポート部材26は、個々の電流リードを周囲から覆うように支持する筒状の絶縁部材であり、回転子が回転する際の遠心力によって電流リードが変形したり振動したりすることを防ぐ。但し、電流リードサポート部材26は、必ずしも必要とされるものではない。他の部材で個々の電流リードを支持してもよい。
【0020】
複数本の電流リード1の各々は、一端が導電性の電流リード差込み部材41Aまたは41Bに差し込まれ、他端が導電性の電流リード差込み部材42Aまたは42Bに差し込まれる。電流リード差込み部材41Aは、平板状冷却銅板29Aに取り付けられるか又は平板状冷却銅板29Aの一部として形成されており、電流リード差込み部材41Bは、平板状冷却銅板29Bに取り付けられるか又は平板状冷却銅板29Bの一部として形成されている。
【0021】
直流電流のプラス側に対応する電流リード1は、一方の端部が、電流リード差込み部材41A、平板状冷却銅板29A、および口出し銅帯30Aを通じて界磁巻線5Aと電気的に接続されるとともに、電流リード差込み部材41A、平板状冷却銅板29A、および絶縁部材34を通じて低温フランジ28および低温リング38を備えた低温部と熱伝導的に接続される。平板状冷却銅板29Aと低温フランジ28との間には、一定以上の熱伝導性を有する絶縁部材34(例えば高い熱伝導率を有する窒化アルミ)が介在するように設けられており、両者間の絶縁性を保ちつつ低温フランジ28が平板状冷却銅板29Aを冷却することができるようになっている。また、直流電流のプラス側に対応する電流リード1は、他方の端部が、電流リード差込み部材42A、中心孔銅帯31A、および接続銅帯16Aを通じてコレクタリング4Aに電気的に接続される。このコレクタリング4Aにはブラシを介して界磁電流が供給されるようになっている。
【0022】
同様に、直流電流のマイナス側に対応する電流リード1は、一方の端部が、電流リード差込み部材41B、平板状冷却銅板29B、および口出し銅帯30Bを通じて界磁巻線5Bと電気的に接続されるとともに、電流リード差込み部材41B、平板状冷却銅板29B、および絶縁部材34を通じて低温フランジ28および低温リング38を備えた低温部と熱伝導的に接続される。平板状冷却銅板29Bと低温フランジ28との間には、一定以上の熱伝導性を有する絶縁部材34(例えば高い熱伝導率を有する窒化アルミ)が介在するように設けられており、両者間の絶縁性を保ちつつ低温フランジ28が平板状冷却銅板29Aを冷却することができるようになっている。また、直流電流のマイナス側に対応する電流リード1は、他方の端部が、電流リード差込み部材42B、中心孔銅帯31B、および接続銅帯16Bを通じてコレクタリング4Bに電気的に接続される。このコレクタリング4Bにはブラシを介して界磁電流が供給されるようになっている。
【0023】
図1の例では、個々の電流リード1をらせん構造にするために、電流リード差込み部材41A,41Bから電流リード差込み部材42A,42Bに至るまでに個々の電流リード1を2周回だけ巻回した例が示されているが、この例に限定されるものではない。巻回数は、3周回以上にしてもよい。そのほか、巻回数は、2.5周回や3.5周回などとすることも可能である。その場合、例えば常温部側において、直流電流のプラス側に対応する部材(電流リード差込み部材42A、中心孔銅帯31A、接続銅帯16A、コレクタリング4A)の配置場所とマイナス側に対応する部材(電流リード差込み部材42B、中心孔銅帯31B、接続銅帯16B、コレクタリング4B)の配置場所とを相互に入れ替えるように構成してもよい。
【0024】
低温ロータ3には、超電導線である界磁巻線5A,5Bが組み込まれている。低温リング38は、この低温ロータ3を間接的に冷却するように構成されている。例えば、低温リング38は、その内部に冷媒を流す流路を有し、流路の一部としてらせん状の間接冷却らせん溝27を備えている。冷媒は、図1中の矢印に示されるように冷媒供給管21を通じて、低温リング38の内部に供給される。低温リング38の内部に供給された冷媒は、低温リング38の外径側に送られ、低温リング38の端から間接冷却らせん溝27に沿って流れ、低温ロータ3を間接的に冷却しながら冷却銅板29側へと向かい、さらに冷却銅板29を冷却した後、冷媒回収管22を通じて回収される。
【0025】
らせん構造の電流リード1は例えば銅帯からなり、下記の式(1)から、界磁電流、常温部側の温度(高温端温度)および低温部側の温度(低温端温度)に基づき、侵入熱量が最小になるように銅帯断面積および銅帯長さを決めることができる。
【0026】
L/A=(λ/I√L)cos-1(T/T) ・・・(1)
ここで、
L:銅帯長さ
A:銅帯断面積
λ:熱伝導率
I:界磁電流
:ローレンツ数
:低温端温度
:高温端温度
また、電流リード1は、らせんピッチを調整することで、電流リード1そのものの軸長を自由に調整することができる。さらに、低温にした際の熱収縮による電流リード1の熱応力緩和は、らせん構造のスプリング効果により得られるため、断面積とらせん長を調整することでスプリング力を調整することができる。
【0027】
また、電流リード1は銅帯をらせん構造にしていることから、円環構造化による耐フープ剛性が大きくなるため、遠心力に対しても耐えやすくなり、断面積とらせん長を調整することで、剛性を調整することができる。
【0028】
電流リード1の材料としては、銅帯の中でも熱伝導率が低いリン脱酸銅を用いることで、侵入熱の抑制がしやすくなる。
【0029】
電流リード1の低温部側の端部は、電流リード差込み部材41A,41Bを通じて広い面積を有する平板状冷却銅板29A,29Bに接続され、かつ、平板状冷却銅板29A,29Bは、熱伝導率の良い窒化アルミなどの絶縁部材34を介して低温フランジ28に例えばボルト締結にて取り付けられている。このため、低温部で冷却された低温フランジ28による平板状冷却銅板29A,29Bの冷却をより効率良く行うことができると共に、電流リード1から低温ロータ3への侵入熱を抑制する効果を高めることができる。
【0030】
また、低温リング38の内部に流れる冷媒の流路を構成する間接冷却らせん溝27は、らせん形状を成していることから、伝熱面積が大きく、低温ロータ3や低温フランジ28、ひいては平板状冷却銅板29A,29Bをより効率良く冷却することができる。
【0031】
電流リード差込み部材41A,41Bによる電流リード1と平板状冷却銅板29A,29Bとの電気的接続には、例えば、ボルト締結もしくはEBW(Electron Beam Welding)溶接が適用されてもよい。これにより、部材同士が確実に接続される。また、電気的接続をより確実にするため、電流リード差込み部材41A,41Bの各々において、電流リード1の一端が差し込まれる部分にはんだを鋳込むための穴を設け、その穴からはんだを鋳込むことで固定させる構造を採用してもよい。その場合の構造の例を図3Aおよび図3Bに示す。
【0032】
図3Aは、電流リード差込み部材41A,41Bにボルトを取り付けると共にはんだを鋳込むための穴32を設けた構造の例を示す斜視図である。図3Bは、図3Aに示される電流リード差込み部材41Aの矢視A-Aにおける断面形状の例を示す断面図である。
【0033】
図3Aに示されるように、電流リード差込み部材41A,41Bには、ボルトが取り付けられ、はんだを鋳込むための穴32が設けられている。
【0034】
また、図3Bに示されるように、電流リード差込み部材41Aには、挿入される電流リード1の端部と噛合する段差部が内部に設けられると共に、ボルト33を通すためのボルト穴が設けられている。一方、電流リード1の内側にはボルト33の挿入を受け入れるためのねじが切られている。
【0035】
ボルト33を電流リード差込み部材41Aのボルト穴を通じて電流リード1の内側にねじを通し、ボルト33を回すと、電流リード1が電流リード差込み部材41Aの段差部側に引き寄せられ、締め付けられる。このようにしてボルト締結を行った後、はんだを鋳込むための穴32からはんだを鋳込み、はんだを隙間に行き渡らせる。はんだが凝固すると、電流リード1と電流リード差込み部材41Aと平板状冷却銅板29Aとの電気的接続が確実なものとなる。
【0036】
電流リード1は、らせんピッチやらせん巻き数次第では、コイルばね特有の軸直角方向の剛性が低いため、振動が大きくなる可能性がある。それを防ぐには、前述した電流リードサポート部材26と同様な形状の支持部材やその他テープ材等を用いて電流リード1を支持することが望ましい。
【0037】
図4は、電流リード1を支持するための構造の例を示す斜視図である。
【0038】
図4に示される電流リードサポート部材35A,35Bは2つ合わせて筒状をなす絶縁性の部材であり、電流リード1を周囲から覆うように支持する。例えば電流リードサポート部材35Aは平板状冷却銅板29A側に固定され、電流リードサポート部材35Bは平板状冷却銅板29B側に固定される。筒状の電流リードサポート部材35A,35Bには、テープ材を巻くための凹状の窪みが複数箇所(例えば、冷却銅板側の端部および中央部)にある。その窪みに絶縁性のテープ材36を巻いて締め付けることで、電流リード1が、筒状の電流リードサポート部材35A,35Bにより強固に支持される。このように構成することにより、らせん状の電流リード1の剛性を高め、振動抑制効果を高めることができる。
【0039】
なお、図4のように筒状の電流リードサポート部材35A,35Bおよびテープ材36を用いる代わりに、図5に示されるようにブロック状の電流リードサポート部材37およびテープ材36を用いて電流リード1を支持するようにしてもよい。この場合、ブロック状の電流リードサポート部材37は、直流電流のプラスに対応する電流リード1とマイナスに対応する電流リード1との間に挟まれるように取り付けられる。このブロック状の電流リードサポート部材37および両側にある電流リード1に絶縁性のテープ材36で巻いて締め付けることで、電流リード1が強固に支持される。このように構成することによっても、らせん状の電流リード1の剛性を高め、振動抑制効果を高めることができる。
【0040】
また、前述の説明では、直流電流のプラス側に対応する1本の電流リード1とマイナス側に対応する1本の電流リード1との対が1つだけである場合を例示したが、直流電流のプラス側に対応する1本の電流リード1とマイナス側に対応する1本の電流リード1との対が複数設けられるように構成してもよい。すなわち、プラス側に対応する電流リード1を複数本にして並列回路を構成すると共に、マイナス側に対応する電流リード1とを複数本にして並列回路を構成するようにしてもよい。その場合、個々の電流リード1が回転子の周方向に均等間隔を保ちながららせん形状をなすように配置される。並列回路数をNとした場合、隣り合う電流リード間のピッチは、360/N/2(度)とする。このように配置することで、プラス側とマイナス側の両方で回転に対するバランスをとることができる。
【0041】
例えば、プラス側に対応する1本の電流リード1とマイナス側に対応する1本の電流リード1との対が3つある場合(並列回路数が3の場合)は、図6に示されるように、平板状冷却銅板29A,29Bには前述した電流リード差込み部材41A,41Bに加え、さらに電流リード差込み部材41C,41D、および電流リード差込み部材41E,41Fが配置され、それぞれから電流リード1が回転子の周方向に均等間隔を保ちながららせん状に延出するようにする。この場合、隣り合う電流リード間のピッチは、60度である。平板状冷却銅板29A側の電流リード差込み部材41A,41C,41Eのそれぞれから延出する電流リード1は、プラス側の並列回路を形成し、平板状冷却銅板29B側の電流リード差込み部材41B,41D,41Fのそれぞれから延出する電流リード1は、マイナス側の並列回路を形成する。
【0042】
このように構成することにより、電流リード1本あたりの発熱量を減らすとともに熱を分散させることができるので、低温ロータ3への侵入熱を抑制する効果を高めることができる。
【0043】
以上詳述したように、実施形態によれば、簡易な構成で軸長を短くすることを可能にする超伝導回転電機の回転子を提供することができる。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1…電流リード、3…低温ロータ、4A,4B…コレクタリング、5A,5B…界磁巻線(超電導線)、6…トルクチューブ、13…常温ダンパ、15…真空断熱空間、16A,16B…接続銅帯、21…冷媒供給管、22…冷媒回収管、26…電流リードサポート部材、27…間接冷却らせん溝、28…低温フランジ、29A,29B…平板状冷却銅板、30A,30B…口出し銅帯、31A,31B…中心孔銅帯、32…はんだを鋳込むための穴、33…ボルト、34…絶縁部材、38…低温リング、41A,41B,41C,41D,41E,41F,42A,42B…電流リード差込み部材。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6