(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044491
(43)【公開日】2023-03-30
(54)【発明の名称】船舶推進機および船舶推進機セット
(51)【国際特許分類】
B63H 20/02 20060101AFI20230323BHJP
B63H 20/14 20060101ALI20230323BHJP
B63H 20/32 20060101ALI20230323BHJP
B63H 20/00 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
B63H20/02 100
B63H20/14 100
B63H20/32 100
B63H20/00 710
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152544
(22)【出願日】2021-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】金原 匡利
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 卓弥
(57)【要約】
【課題】船舶推進機本体に対する推進モジュールの着脱を容易に行うことができるようにする。
【解決手段】船外機セット1は、船外機本体11、プロペラ型推進モジュール51、およびウォータジェット型推進モジュール81を備え、プロペラ型推進モジュール51およびウォータジェット型推進モジュール81のいずれか一方を選択して船外機本体11に取り付けて用いることができる。船外機本体11は、動力源としての電動モータ、および電動モータ等を冷却する冷却装置を備えている。プロペラ型推進モジュール51は、ドライブシャフト52およびプロペラ型推進装置54を備えている。ウォータジェット型推進モジュール81は、ドライブシャフト82およびウォータジェット型推進装置84を備えている。冷却装置のほぼすべての構成要素が船外機本体11に設けられているので、冷却装置が船外機本体11と推進モジュール51、81との着脱の妨げにならない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶推進機本体と、
前記船舶推進機本体により生成された動力を用いて船舶の推進力を生成する推進モジュールとを備え、
前記船舶推進機本体は、
動力源と、
前記動力源を冷却する冷却液を貯えるタンクと、
前記冷却液を冷却するヒートシンクと、
前記動力源と前記ヒートシンクとの間を前記冷却液が循環するように前記動力源と前記ヒートシンクとの間を接続する冷却液通路と、
前記冷却液通路内に前記冷却液を流すポンプと、
前記動力源、前記タンクおよび前記ポンプを支持するマウントと、
前記マウントの下方に配置され、前記ヒートシンクを収容する第1の収容部とを備え、
前記推進モジュールは、
上下方向に伸長し、前記動力源の動力により回転するドライブシャフトと、
前記ドライブシャフトの下端側が接続され、前記ドライブシャフトの回転を前記船舶の推進力に変換する推進装置とを備え、
前記第1の収容部には、前記ドライブシャフトを挿抜可能に挿入するシャフト挿入部が設けられ、
前記動力源、および前記ドライブシャフトの上端側には、前記動力源の出力軸と前記ドライブシャフトとを分離可能に接続する接続機構が設けられ、
前記第1の収容部および前記推進装置には、前記推進モジュールを前記第1の収容部の下部に着脱可能に取り付ける取付機構が設けられていることを特徴とする船舶推進機。
【請求項2】
前記推進装置は、
前記ドライブシャフトの下端側が接続されたギヤ機構と、
前記ギヤ機構に接続されたプロペラシャフトと、
前記プロペラシャフトに取り付けられたプロペラと、
前記ギヤ機構および前記プロペラシャフトを収容する第2の収容部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の船舶推進機。
【請求項3】
前記推進装置は、
ダクトと、
前記ダクト内に設けられ、前記ドライブシャフトの回転により回転して噴流を生成するインペラとを備えていることを特徴とする請求項1に記載の船舶推進機。
【請求項4】
船舶推進機本体と、
前記船舶推進機本体により生成された動力を用いて船舶の推進力を生成するプロペラ型推進モジュールと、
前記船舶推進機本体により生成された動力を用いて船舶の推進力を生成するウォータジェット型推進モジュールとを備え、
前記プロペラ型推進モジュールおよび前記ウォータジェット型推進モジュールのいずれか一方を選択して前記船舶推進機本体に取り付けて用いる船舶推進機セットであって、
前記船舶推進機本体は、
動力源と、
前記動力源を冷却する冷却液を貯えるタンクと、
前記冷却液を冷却するヒートシンクと、
前記動力源と前記ヒートシンクとの間を前記冷却液が循環するように前記動力源と前記ヒートシンクとの間を接続する冷却液通路と、
前記冷却液通路内に前記冷却液を流すポンプと、
前記動力源、前記タンクおよび前記ポンプを支持するマウントと、
前記マウントの下方に配置され、前記ヒートシンクを収容する第1の収容部とを備え、
前記プロペラ型推進モジュールは、
上下方向に伸長し、前記動力源の動力により回転する第1のドライブシャフトと、
前記第1のドライブシャフトの下端側が接続されたギヤ機構と、
前記ギヤ機構に接続されたプロペラシャフトと、
前記プロペラシャフトに取り付けられたプロペラと、
前記ギヤ機構および前記プロペラシャフトを収容する第2の収容部とを備え、
前記ウォータジェット型推進モジュールは、
上下方向に伸長し、前記動力源の動力により回転する第2のドライブシャフトと、
ダクトと、
前記ダクト内に設けられ、前記第2のドライブシャフトの回転により回転して噴流を生成するインペラとを備え、
前記第1の収容部には、前記第1のドライブシャフトおよび前記第2のドライブシャフトを択一的に挿入可能なシャフト挿入部が設けられ、
前記動力源、前記第1のドライブシャフトの上端側および前記第2のドライブシャフトの上端側には、前記第1のドライブシャフトおよび前記第2のドライブシャフトを択一的に前記動力源の出力軸に接続可能な接続機構が設けられ、
前記第1の収容部、前記第2の収容部および前記ダクトには、前記プロペラ型推進モジュールおよび前記ウォータジェット型推進モジュールを前記第1の収容部の下部に択一的に取付可能な取付機構が設けられていることを特徴とする船舶推進機セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶推進機、および複数種類の推進モジュールを船舶推進機本体に択一的に取り付けて用いることができる船舶推進機セットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、船舶の推進力を生成する方式には、プロペラを用いるプロペラ方式、およびウォータジェット推進装置を用いるウォータジェット方式がある。プロペラ方式を採用した船舶推進機も、ウォータジェット方式を採用した船舶推進機もいずれも広く普及している。
【0003】
プロペラ方式とウォータジェット方式とを比較すると、推進効率を高めるという点では、プロペラ方式の方が有利である。しかしながら、プロペラ方式は、水深が浅い場所では、プロペラのブレードが水底に当たってしまい、利用することができない場合がある。この点、ウォータジェット方式は、噴流を生成するダクトが水面に近い位置にあるので、水深が浅い場所でも利用することができる。
【0004】
また、船舶推進機は、動力源として、内燃機関または電動モータを備えている。このような動力源は作動中に発熱する。そこで、多くの船舶推進機は、動力源を冷却する冷却装置を備えている。
【0005】
下記の特許文献1には、このような冷却装置を備えた船外機が記載されている。特許文献1に記載された船外機における冷却装置は、水面よりも上側に配置された動力源としての電動モータの周囲に設けられたウォータジャケットと、水面下に配置されたロアケース内に設けられた冷却液ポンプと、ウォータジャケットと冷却液ポンプとを接続する冷却液パイプとを備えている。また、ロアケースには、外部の水を取り込む取水口が設けられている。当該冷却装置において、冷却液ポンプは、取水口から外部の水を冷却液として取り込み、この冷却液を、冷却液パイプを介してウォータジャケットへ圧送する。この冷却液がウォータジャケット内を流れることにより、電動モータが冷却される。電動モータを冷却した後の冷却液は外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、船舶推進機において、動力源を含む部分からなる船舶推進機本体に対し、動力源の動力を用いて船舶の推進力を生成する部分からなる推進モジュールを着脱可能にし、推進モジュールとして、プロペラ方式を採用したプロペラ型推進モジュールと、ウォータジェット方式を採用したウォータジェット型推進モジュールとを用意し、プロペラ型推進モジュールおよびウォータジェット型推進モジュールのいずれか一方を選択して船舶推進機本体に取り付けることができるようにすれば、船舶推進機の利便性を高めることができる。例えば、当該船舶推進機を、通常は、推進効率の高いプロペラ型推進モジュールが船舶推進機本体に取り付けられた状態で用い、浅瀬を航行する場合には、プロペラ型推進モジュールに代えて、ウォータジェット型推進モジュールが船舶推進機本体に取り付けられた状態で用いることができる。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載された船外機のように、水面下に配置されたロアケース内に冷却液ポンプが設けられた船舶推進機において、船舶推進機本体に対して推進モジュールを着脱可能にすることとした場合、次のような問題がある。
【0009】
プロペラ方式を採用した船舶推進機において、動力源の動力を用いて船舶の推進力を生成する部分、すなわち、プロペラシャフトおよびプロペラ等は、船舶推進機のロアケースに設けられている。したがって、プロペラシャフトおよびプロペラが設けられたロアケース全体を推進モジュールとすることが好ましい。このようにすれば、ロアケース全体を船舶推進機本体に着脱可能に取り付ける構造を船舶推進機に設けることで、船舶推進機本体に対する推進モジュールの着脱が実現する。しかしながら、ロアケース内に冷却液ポンプが設けられている場合、船舶推進機本体からロアケースを分離すると、船舶推進機本体側に設けられているウォータジャケットと、ロアケース側に設けられている冷却液ポンプとを接続する冷却液パイプが分断されてしまう。それゆえ、船舶推進機本体から分離した推進モジュールを、船舶推進機本体に取り付ける際に、船舶推進機本体側の冷却液パイプと推進モジュール側の冷却液パイプとを接続する作業が必要になり、船舶推進機本体に対する推進モジュールの着脱作業が煩雑になるおそれがある。
【0010】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、船舶推進機本体に対する推進モジュールの着脱を容易に行うことができる船舶推進機および船舶推進機セットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の船舶推進機は、船舶推進機本体と、前記船舶推進機本体により生成された動力を用いて船舶の推進力を生成する推進モジュールとを備え、前記船舶推進機本体は、動力源と、前記動力源を冷却する冷却液を貯えるタンクと、前記冷却液を冷却するヒートシンクと、前記動力源と前記ヒートシンクとの間を前記冷却液が循環するように前記動力源と前記ヒートシンクとの間を接続する冷却液通路と、前記冷却液通路内に前記冷却液を流すポンプと、前記動力源、前記タンクおよび前記ポンプを支持するマウントと、前記マウントの下方に配置され、前記ヒートシンクを収容する第1の収容部とを備え、前記推進モジュールは、上下方向に伸長し、前記動力源の動力により回転するドライブシャフトと、前記ドライブシャフトの下端側が接続され、前記ドライブシャフトの回転を前記船舶の推進力に変換する推進装置とを備え、前記第1の収容部には、前記ドライブシャフトを挿抜可能に挿入するシャフト挿入部が設けられ、前記動力源、および前記ドライブシャフトの上端側には、前記動力源の出力軸と前記ドライブシャフトとを分離可能に接続する接続機構が設けられ、前記第1の収容部および前記推進装置には、前記推進モジュールを前記第1の収容部の下部に着脱可能に取り付ける取付機構が設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の船舶推進機セットは、船舶推進機本体と、前記船舶推進機本体により生成された動力を用いて船舶の推進力を生成するプロペラ型推進モジュールと、前記船舶推進機本体により生成された動力を用いて船舶の推進力を生成するウォータジェット型推進モジュールとを備え、前記プロペラ型推進モジュールおよび前記ウォータジェット型推進モジュールのいずれか一方を選択して前記船舶推進機本体に取り付けて用いる船舶推進機セットであって、前記船舶推進機本体は、動力源と、前記動力源を冷却する冷却液を貯えるタンクと、前記冷却液を冷却するヒートシンクと、前記動力源と前記ヒートシンクとの間を前記冷却液が循環するように前記動力源と前記ヒートシンクとの間を接続する冷却液通路と、前記冷却液通路内に前記冷却液を流すポンプと、前記動力源、前記タンクおよび前記ポンプを支持するマウントと、前記マウントの下方に配置され、前記ヒートシンクを収容する第1の収容部とを備え、前記プロペラ型推進モジュールは、上下方向に伸長し、前記動力源の動力により回転する第1のドライブシャフトと、前記第1のドライブシャフトの下端側が接続されたギヤ機構と、前記ギヤ機構に接続されたプロペラシャフトと、前記プロペラシャフトに取り付けられたプロペラと、前記ギヤ機構および前記プロペラシャフトを収容する第2の収容部とを備え、前記ウォータジェット型推進モジュールは、上下方向に伸長し、前記動力源の動力により回転する第2のドライブシャフトと、ダクトと、前記ダクト内に設けられ、前記第2のドライブシャフトの回転により回転して噴流を生成するインペラとを備え、前記第1の収容部には、前記第1のドライブシャフトおよび前記第2のドライブシャフトを択一的に挿入可能なシャフト挿入部が設けられ、前記動力源、前記第1のドライブシャフトの上端側および前記第2のドライブシャフトの上端側には、前記第1のドライブシャフトおよび前記第2のドライブシャフトを択一的に前記動力源の出力軸に接続可能な接続機構が設けられ、前記第1の収容部、前記第2の収容部および前記ダクトには、前記プロペラ型推進モジュールおよび前記ウォータジェット型推進モジュールを前記第1の収容部の下部に択一的に取付可能な取付機構が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、船舶推進機本体に対する推進モジュールの着脱を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の船舶推進機セットの実施例である船外機セットを示す説明図であり、(A)は船外機セットの構成を示し、(B)は船外機セットの利用態様を示す。
【
図2】本発明の実施例におけるプロペラ型推進モジュールが取り付けられた船外機本体をその左側から見た状態を示す説明図である。
【
図3】本発明の実施例における船外機本体の冷却構造を模式的に示す説明図である。
【
図4】
図2中の切断線IV-IVに沿って切断したスイベルブラケット、ドライブシャフトハウジング、冷却液パイプ、ヒートシンクケースおよびヒートシンクの断面をその前側から見た状態を示す断面図である。
【
図5】
図4中のヒートシンクケースおよびヒートシンクを拡大して示す断面図である。
【
図6】
図5中の切断線VI-VIに沿って切断したヒートシンクケースおよびヒートシンクの断面をその左側から見た状態を示す断面図である。
【
図7】本発明の実施例において、船外機本体に取り付けられたプロペラ型推進モジュールを示す説明図である。
【
図8】本発明の実施例において、船外機本体の電動モータおよびモータケース等を、電動モータの出力軸の軸心を含む上下方向および前後方向に拡がる平面で切断した断面を、その左側から見た状態を示す断面図である。
【
図9】本発明の実施例おけるウォータジェット型推進モジュールを示す説明図であり、(A)は、ウォータジェット型推進モジュールを、ドライブシャフトの軸心を含む上下方向および前後方向に拡がる平面で切断した断面を、その左側から見た状態を示し、(B)は、ウォータジェット型推進モジュールをその下側から見た状態を示す。
【
図10】本発明の実施例における他の推進モジュールを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態の船舶推進機は、船舶推進機本体と、船舶推進機本体により生成された動力を用いて船舶の推進力を生成する推進モジュールとを備えている。船舶推進機本体は、動力源と、動力源を冷却する冷却液を貯えるタンクと、冷却液を冷却するヒートシンクと、動力源とヒートシンクとの間を冷却液が循環するように動力源とヒートシンクとの間を接続する冷却液通路と、冷却液通路内に冷却液を流すポンプと、動力源、タンクおよびポンプを支持するマウントと、マウントの下方に配置され、ヒートシンクを収容する第1の収容部とを備えている。推進モジュールは、上下方向に伸長し、動力源の動力により回転するドライブシャフトと、ドライブシャフトの下端側が接続され、ドライブシャフトの回転を船舶の推進力に変換する推進装置とを備えている。第1の収容部には、ドライブシャフトを挿抜可能に挿入するシャフト挿入部が設けられている。また、動力源、およびドライブシャフトの上端側には、動力源の出力軸とドライブシャフトとを分離可能に接続する接続機構が設けられている。また、第1の収容部および推進装置には、推進モジュールを第1の収容部の下部に着脱可能に取り付ける取付機構が設けられている。
【0016】
また、本発明の実施形態の船舶推進機セットは、船舶推進機本体と、船舶推進機本体により生成された動力を用いて船舶の推進力を生成するプロペラ型推進モジュールと、船舶推進機本体により生成された動力を用いて船舶の推進力を生成するウォータジェット型推進モジュールとを備えている。船舶推進機セットは、プロペラ型推進モジュールおよびウォータジェット型推進モジュールのいずれか一方を選択して船舶推進機本体に取り付けることにより用いられる。船舶推進機本体は、上記本発明の実施形態の船舶推進機の船舶推進機本体と同様に、動力源、タンク、ヒートシンク、冷却液通路、ポンプ、マウント、および第1の収容部を備えている。プロペラ型推進モジュールは、上下方向に伸長し、動力源の動力により回転する第1のドライブシャフトと、第1のドライブシャフトの下端側が接続されたギヤ機構と、ギヤ機構に接続されたプロペラシャフトと、プロペラシャフトに取り付けられたプロペラと、ギヤ機構およびプロペラシャフトを収容する第2の収容部とを備えている。ウォータジェット型推進モジュールは、上下方向に伸長し、動力源の動力により回転する第2のドライブシャフトと、ダクトと、ダクト内に設けられ、第2のドライブシャフトの回転により回転して噴流を生成するインペラとを備えている。第1の収容部には、第1のドライブシャフトおよび第2のドライブシャフトを択一的に挿入可能なシャフト挿入部が設けられている。また、動力源、第1のドライブシャフトの上端側および第2のドライブシャフトの上端側には、第1のドライブシャフトおよび第2のドライブシャフトを択一的に動力源の出力軸に接続可能な接続機構が設けられている。また、第1の収容部、第2の収容部およびダクトには、プロペラ型推進モジュールおよびウォータジェット型推進モジュールを第1の収容部の下部に択一的に取付可能な取付機構が設けられている。
【0017】
本発明の実施形態の船舶推進機または船舶推進機セットによれば、利用者は、プロペラ型推進モジュールを船舶推進機本体に取り付けることにより、プロペラ型船舶推進機を形成することができ、また、ウォータジェット型推進モジュールを船舶推進機本体に取り付けることにより、ウォータジェット型船舶推進機を形成することができる。例えば、航行する領域が水深の深い領域である場合、利用者は、プロペラ型推進モジュールを船舶推進機本体に取り付けることによってプロペラ型船舶推進機を形成し、そのプロペラ型船舶推進機を船舶のトランサムに取り付けて航行する。これにより、利用者は、プロペラ型推進装置の高い推進効率に依拠して、速い速度で航行することができる。一方、航行する領域が水深の浅い領域である場合には、利用者は、プロペラ型推進モジュールに代えて、ウォータジェット型推進モジュールを船舶推進機本体に取り付けることによってウォータジェット型船舶推進機を形成し、そのウォータモジュール型船舶推進機を船舶のトランサムに取り付けて航行する。これにより、利用者は、プロペラ型推進装置を用いた場合にはプロペラのブレードが水底に当たってしまうほどに水深が浅い領域においても航行することができる。
【0018】
また、本実施形態の船舶推進機または船舶推進機セットによれば、冷却装置のすべての構成要素が船舶推進機本体に設けられているので、利用者は、船舶推進機本体に対する推進モジュールの着脱を容易に行うことができる。すなわち、船舶推進機本体から推進モジュールを分離することによって、冷却装置の構成要素が、船舶推進機本体側と推進モジュール側とに分断されることがない。したがって、例えば、利用者は、船舶推進機本体から分離した推進モジュールを船舶推進機本体に取り付ける際に、船舶推進機本体側に設けられた冷却液パイプと、推進モジュール側に設けられた冷却液パイプとを接続するといった煩雑な作業を行う必要がない。
【実施例0019】
以下、本発明の船舶推進機の実施例である船外機、および本発明の船舶推進機セットの実施例である船外機セットにつき、図面を参照しながら説明する。なお、実施例において、前(Fd)、後(Bd)、左(Ld)、右(Rd)、上(Ud)、下(Dd)の方向を述べる際には、
図2~10中の右下に描いた矢印に従う。
【0020】
(船外機セット)
図1(A)は本発明の実施例の船外機セット1を示している。船外機セット1は、
図1(A)に示すように、船外機本体11と、船外機本体11により生成された動力を用いて船舶の推進力を生成するプロペラ型推進モジュール51と、船外機本体11により生成された動力を用いて船舶の推進力を生成するウォータジェット型推進モジュール81とを有している。
【0021】
船外機本体11は、動力源としての電動モータ12と、電動モータ12等を冷却する冷却装置(タンク32、ヒートシンク33、冷却液通路40、およびポンプ48等)とを備えている。
【0022】
プロペラ型推進モジュール51は、電動モータ12の動力により回転するドライブシャフト52と、プロペラ57を用いてドライブシャフト52の回転を船舶の推進力に変換するプロペラ型推進装置54と、プロペラ型推進モジュール51を船外機本体11に取り付けるための取付ボルト79とを備えている。
【0023】
ウォータジェット型推進モジュール81は、電動モータ12の動力により回転するドライブシャフト82と、ダクト85およびインペラ95を用いてドライブシャフト82の回転を船舶の推進力に変換するウォータジェット型推進装置84と、ウォータジェット型推進モジュール81を船外機本体11に取り付けるための取付ボルト99とを備えている。
【0024】
図1(B)は船外機セット1の利用態様を示している。船外機セット1は、プロペラ型推進モジュール51およびウォータジェット型推進モジュール81のいずれか一方を選択して船外機本体11に取り付けることにより用いられる。
図1(B)に示すように、利用者は、プロペラ型推進モジュール51を船外機本体11に取り付けることにより、プロペラ型船外機2を形成することができる。また、利用者は、ウォータジェット型推進モジュール81を船外機本体11に取り付けることにより、ウォータジェット型船外機3を形成することができる。
【0025】
(船外機本体)
図2は、プロペラ型推進モジュール51が取り付けられた船外機本体11をその左側から見た状態を示している。船外機本体11は、
図2に示すように、電動モータ12、インバータ15、および冷却装置31を備えている。
【0026】
電動モータ12は例えばブラシレスモータである。インバータ15は、電動モータ12の駆動を制御する回路である。冷却装置31は、電動モータ12およびインバータ15を冷却する装置である。
【0027】
また、船外機本体11は、マウント16、モータケース17、インバータケース18、ドライブシャフトハウジング19、およびヒートシンクケース21を備えている。
【0028】
マウント16は、電動モータ12、インバータ15、並びに冷却装置31におけるタンク32およびポンプ48等を支持する部材であり、船外機本体11の上部に配置されている。電動モータ12はマウント16上に固定されている。モータケース17は、マウント16の上方に位置し、マウント16に取り付けられ、電動モータ12を覆っている。インバータ15は電動モータ12の上方に配置されている。インバータケース18は、モータケース17の上方に位置し、モータケース17に取り付けられ、インバータ15を覆っている。タンク32はインバータケース18の後部に取り付けられ、ポンプ48はモータケース17の後部に取り付けられている。
【0029】
ドライブシャフトハウジング19は、上下方向に伸長した筒状の部材である。ドライブシャフトハウジング19は、マウント16の下方に配置され、マウント16の下部に連結されている。ドライブシャフトハウジング19の内部には、ドライブシャフト52(またはドライブシャフト82)を挿入することができるシャフト挿入部20(
図7を参照)が形成されている。
【0030】
また、ドライブシャフトハウジング19は、スイベルブラケット26に水平方向に回転可能に支持されている。また、スイベルブラケット26はクランプブラケット27に連結されている。利用者は、クランプブラケット27を船舶のトランサムに取り付けることにより、船外機本体11を船舶に取り付けることができる。また、ドライブシャフトハウジング19がスイベルブラケット26に水平方向に回転可能に支持されているので、利用者は、船外機本体11の船舶に対する左右方向の向きを変えることができる。
【0031】
ヒートシンクケース21は、上下方向に伸長した筒状の部材である。ヒートシンクケース21は、ドライブシャフトハウジング19の下方に配置され、ドライブシャフトハウジング19の下部に連結されている。また、ヒートシンクケース21の内部には、ドライブシャフト52(またはドライブシャフト82)を挿入することができるシャフト挿入部22(
図7を参照)が形成されている。シャフト挿入部22は、ドライブシャフトハウジング19のシャフト挿入部20と連通している。また、ヒートシンクケース21の下部の後ろ側には、アンチキャビテーションプレート28が設けられている。なお、ドライブシャフトハウジング19およびヒートシンクケース21は「第1の収容部」の具体例である。
【0032】
(冷却装置)
図3は船外機本体11における冷却構造を模式的に示している。船外機本体11は、上述したように、電動モータ12およびインバータ15を冷却する冷却装置31を備えている。冷却装置31は、冷却液を貯えるタンク32と、冷却液を冷却するヒートシンク33と、インバータ15、電動モータ12およびヒートシンク33を通って冷却液が循環するようにインバータ15、電動モータ12およびヒートシンク33をそれぞれ接続する冷却液通路40と、冷却液通路40内に冷却液を流すポンプ48とを備えている。冷却液は、例えば、エチレングリコールを主成分とする不凍液である。
【0033】
タンク32は、例えば樹脂材料により箱状に形成されている。タンク32の上部には、冷却液を注入するための注入口が形成されている。また、タンク32の上部には、注入口を閉塞するタンクキャップ32Aが着脱可能に取り付けられている。ポンプ48はタンク32の下方に配置されている。ヒートシンク33はヒートシンクケース21内に設けられている。
【0034】
冷却液通路40は、ポンプ48からインバータ15へ冷却液を送る移送通路41と、インバータ15を冷却するためにインバータ15の周囲または内部に冷却液を流す内部通路42と、インバータ15から電動モータ12へ冷却液を送る移送通路43と、電動モータ12を冷却するために電動モータ12の周囲または内部に冷却液を流す内部通路44と、電動モータ12からヒートシンク33へ冷却液を送る冷却液パイプ45と、ヒートシンク33からポンプ48に冷却液を送る冷却液パイプ46と、冷却液が不足状態となった場合にタンク32から移送通路41に冷却液を供給する供給通路47とを有している。冷却液通路40は、全体的に見て、移送通路41、内部通路42、移送通路43、内部通路44、冷却液パイプ45、ヒートシンク33内、および冷却液パイプ46からなる閉ループ構造を有している。
【0035】
移送通路41、43および供給通路47はそれぞれ例えばパイプまたはホースにより形成されている。内部通路42は、例えばインバータ15の外郭を形成する壁部に形成された通路(ウォータジャケット)等により形成されている。内部通路44は、例えば電動モータ12の外郭を形成する壁部に形成された通路(ウォータジャケット)等により形成されている。冷却液パイプ45、46はそれぞれ例えば樹脂製または金属製のパイプである。
【0036】
タンク32内に貯えられた冷却液は、重力により移送通路41等に流れ込む。ポンプ48が作動すると、冷却液は、移送通路41、内部通路42、移送通路43、内部通路44、冷却液パイプ45、ヒートシンク33内、および冷却液パイプ46をこの順序で循環する。
【0037】
また、冷却装置31は、冷却液通路40内の空気を冷却液通路40外に逃がすためのエア抜き通路49を有している。エア抜き通路49の一端側は、冷却液通路40において、最も高い位置に配置された部分、例えば、移送通路41の途中に接続されている。また、エア抜き通路49の他端側は、タンク32の上部に接続され、タンク32内において、タンク32内に貯えられている冷却液の水面よりも上側の空間に開口している。エア抜き通路49は例えばパイプまたはホースにより形成されている。冷却液通路40内の空気は、エア抜き通路49を通って、タンク32内の上側の空間に放出される。
【0038】
(冷却液パイプ)
図4は、
図2中の切断線IV-IVに沿って切断したスイベルブラケット26、ドライブシャフトハウジング19、冷却液パイプ45、46、ヒートシンクケース21およびヒートシンク33の断面をその前側(
図2においては左側)から見た状態を示している。冷却液パイプ45、46は、
図4に示すように、上下方向に伸長する長いパイプにより形成されている。冷却液パイプ45、46は、ドライブシャフトハウジング19内を貫通している。ドライブシャフトハウジング19内において、冷却液パイプ45、46は、左右方向に平行に並んでおり、ドライブシャフトハウジング19内の後ろ寄りの領域に配置されている。
【0039】
(ヒートシンク)
図5は、
図4中のヒートシンクケース21およびヒートシンク33を拡大して示している。
図6は、
図5中の切断線VI-VIに沿って切断したヒートシンクケース21およびヒートシンク33の断面をその左側(
図5においては右側)から見た状態を示している。また、
図6は、ドライブシャフト52が挿入されていない状態を示している。
【0040】
ヒートシンク33はヒートシンクケース21内に収容されている。本実施例において、ヒートシンク33は、
図5に示すように、ヒートシンクケース21と一体形成されている。ヒートシンク33およびヒートシンクケース21は、例えばアルミニウム等の放熱性に優れた材料により形成されており、ヒートシンク33のみならず、ヒートシンクケース21も優れた放熱機能を有している。また、
図6に示すように、ヒートシンク33は、ヒートシンクケース21内における後ろ寄りの領域に配置されている。
【0041】
また、
図5に示すように、ヒートシンク33の内部には冷却管路34が設けられている。冷却管路34は、左右方向に並び、それぞれ上下方向に伸長した2本の管路のそれぞれの下端側が互いに接続された構造を有し、全体視略U字状に形成されている。また、冷却管路34の一端には冷却液流入口34Aが形成され、冷却管路34の他端には冷却液流出口34Bが形成されている。なお、冷却管路34の下部には、成形の都合上、穴35が形成されているが、その穴35は、シール機能を有する閉塞部材36により液密に閉塞されている。
【0042】
また、冷却液流入口34Aには、冷却液パイプ45の下端部が接続されている。具体的には、冷却液流入口34Aには、冷却液パイプ45の下端部が挿入され、冷却液流入口34Aと冷却液パイプ45の下端部との間は、例えばOリング等のシール37により液密にシールされている。また、冷却液流出口34Bには、冷却液パイプ46の下端部が接続されている。具体的には、冷却液流出口34Bには、冷却液パイプ46の下端部が挿入され、冷却液流出口34Bと冷却液パイプ46の下端部との間は、例えばOリング等のシール37により液密にシールされている。
【0043】
冷却液は、内部通路44から冷却液パイプ45内を通り、冷却液流入口34Aから冷却管路34内に流入する。冷却管路34内に流入した冷却液は、冷却管路34内を流通し、冷却液流出口34Bから流出して冷却液パイプ46内に入り、冷却液パイプ46を通ってポンプ48に至る。
【0044】
また、ヒートシンクケース21は、船舶の周囲の水(海水、湖水等)を内部に流通させ、その水によりヒートシンク33を冷却する構造を有している。すなわち、
図6に示すように、ヒートシンクケース21内において、ヒートシンク33と、ヒートシンクケース21の外壁部との間には、水を流通させる空間である流通室23が形成されている。
【0045】
また、ヒートシンクケース21の下部は、プロペラ型推進モジュール51がヒートシンクケース21に取り付けられることにより、全体的に見て、プロペラ型推進モジュール51のギヤケース58により閉塞される。しかしながら、ギヤケース58には、ヒートシンクケース21の流通室23内に水を取り込む水取込通路60が設けられている。水取込通路60の一端側は、ギヤケース58の前部に開口した水取込口59に接続されており、水取込通路60の他端側は流通室23内と連通している。
【0046】
また、ヒートシンクケース21の左右両側の外壁部には、流通室23内を流通した水を流通室23外へ排出する排出口24がそれぞれ形成されている。各排出口24はヒートシンクケース21の上部に配置されている。
【0047】
船舶の航行時には、ポンプ48を作動させる。これにより、冷却液が冷却液通路40内を流通し、インバータ15、電動モータ12およびヒートシンク33をそれぞれ通りながら、循環する。その結果、冷却液により、インバータ15および電動モータ12が冷却される。また、プロペラ型推進モジュール51のギヤケース58の水取込口59は、水面下に沈んでいるので、船舶の航行時には、船舶の周囲の水が、水取込口59および水取込通路60を介して流通室23内に取り込まれ、流通室23内を流通した後、各排出口24から流通室23外へ排出される。流通室23内に取り込まれた水がヒートシンク33に当たることにより、ヒートシンクが冷却される。また、インバータ15および電動モータ12から熱を受けた冷却液は、ヒートシンク33の冷却管路34内を流通することにより冷却される。また、ヒートシンクケース21が水面下に沈んでいるときには、ヒートシンクケース21の外面に水が当たることにより、ヒートシンクケース21およびヒートシンク33が冷却される。
【0048】
(プロペラ型推進モジュール)
図7は、船外機本体11に取り付けられたプロペラ型推進モジュール51を示している。プロペラ型推進モジュール51は、上述したように、ドライブシャフト52、プロペラ型推進装置54、および取付ボルト79を備えている。
図7において、ドライブシャフト52は、上下方向に伸長し、電動モータ12の動力により回転する。プロペラ型推進装置54は、ドライブシャフト52の下端側が接続されたギヤ機構55と、前後方向に伸長し、ギヤ機構55に接続されたプロペラシャフト56と、プロペラシャフト56の後端側部分に取り付けられたプロペラ57と、ギヤ機構55およびプロペラシャフト56の前端側部分を収容するギヤケース58とを備えている。また、ギヤケース58には上述した水取込口59および水取込通路60が設けられている。なお、ギヤケースはロアケースと呼ばれることがある。また、ドライブシャフト52は「第1のドライブシャフト」の具体例であり、ギヤケース58は「第2の収容部」の具体例である。
【0049】
ドライブシャフト52の下端側部分は、ギヤケース58に設けられたシャフト装着部61内に軸受62を介して回転可能に装着されている。また、ドライブシャフト52の下端側部分とシャフト装着部61の上端側部分との間はシール63によりシールされている。
【0050】
また、プロペラ型推進モジュール51は、船外機本体11のヒートシンクケース21の下部にギヤケース58の上部を取り付けることにより、船外機本体11に取り付けられる。ヒートシンクケース21およびギヤケース58には、ヒートシンクケース21の下部にギヤケース58の上部を着脱可能に取り付けることができる取付機構71、76がそれぞれ設けられている。ヒートシンクケース21側の取付機構71は、ドライブシャフトハウジング19の下部の前部および後部にそれぞれ形成されたボルト挿通孔72、74と、ヒートシンクケース21の前部および後部にそれぞれ形成されたボルト挿通孔73、75とを有している。ギヤケース58側の取付機構76は、ギヤケース58の上部の前部および後部にそれぞれ形成されたボルト穴77、78を有している。ギヤケース58は、2本の取付ボルト79のうちの1本が、ボルト挿通孔72および73に挿入されてボルト穴77に締結され、もう1本の取付ボルト79が、ボルト挿通孔74および75に挿入されてボルト穴78に締結されることにより、ヒートシンクケース21に取り付けられ、固定される。
【0051】
また、ギヤケース58のシャフト装着部61内に装着されたドライブシャフト52は、ヒートシンクケース21の内部に形成されたシャフト挿入部22内、およびドライブシャフトハウジング19の内部に形成されたシャフト挿入部20内に挿入され、シャフト挿入部22、20内において前後方向および左右方向の略中央の領域(冷却液パイプ45、46およびヒートシンク33の前方の位置)に配置される。また、ドライブシャフト52の上端部は、電動モータ12の出力軸13に接続される。
図8は、船外機本体11の電動モータ12およびモータケース17等を、電動モータ12の出力軸13の軸心を含む上下方向および前後方向に拡がる平面で切断した断面を、その左側から見た状態を示している。
図8において、電動モータ12の出力軸13の下端部、およびドライブシャフト52の上端部には、出力軸13とドライブシャフト52とを分離可能に接続する接続機構がそれぞれ設けられている。すなわち、ドライブシャフト52の上端部には、ドライブシャフト52側の接続機構としてのスプライン53が形成されている。出力軸13の下端部には、出力軸側の接続機構としてのスプライン穴14が形成されている。ドライブシャフト52のスプライン53を、出力軸13のスプライン穴14に嵌合することにより、ドライブシャフト52と出力軸13とが互いに接続される。これにより、出力軸13の回転に伴ってドライブシャフト52が回転するようになる。
【0052】
利用者は、プロペラ型推進モジュール51を船外機本体11に次のように取り付けることができる。まず、利用者は、ギヤケース58に支持されたドライブシャフト52を、ヒートシンクケース21の下から、ヒートシンクケース21のシャフト挿入部22内に挿入し、さらに、そのドライブシャフト52を、ドライブシャフトハウジング19のシャフト挿入部20内へ進入させる。次に、利用者は、ドライブシャフト52のスプライン53を電動モータ12の出力軸13のスプライン穴14に嵌合させる。次に、利用者は、2本の取付ボルト79のうちの1本を、ボルト挿通孔72および73に通してボルト穴77に締結し、もう1本の取付ボルト79を、ボルト挿通孔74および75に通してボルト穴78に締結することにより、ギヤケース58をヒートシンクケース21に取り付ける。
【0053】
また、利用者は、プロペラ型推進モジュール51を船外機本体11から次のように取り外すことができる。まず、利用者は、2本の取付ボルト79を緩めてボルト穴77、78から外す。次に、利用者は、プロペラ型推進モジュール51を船外機本体11から少し引き離す。これにより、ドライブシャフト52のスプライン53がスプライン穴14から外れる。次に、利用者は、プロペラ型推進モジュール51を船外機本体11から、さらに引き離し、ドライブシャフト52をシャフト挿入部22、20から引き出す。
【0054】
(ウォータジェット型推進モジュール)
図9(A)は、ウォータジェット型推進モジュール81を、ドライブシャフト82の軸心を含む上下方向および前後方向に拡がる平面で切断した断面を、その左側から見た状態を示している。
図9(B)は、ウォータジェット型推進モジュール81をその下側から見た状態を示している。
【0055】
ウォータジェット型推進モジュール81は、上述したように、ドライブシャフト82、ウォータジェット型推進装置84、および取付ボルト99を備えている(
図1(A)を参照)。
図9(A)および
図9(B)において、ドライブシャフト82は、上下方向に伸長し、電動モータ12の動力により回転する。ウォータジェット型推進装置84は、ダクト85と、ダクト85を支持するダクト支持部89と、ダクト85内に設けられ、ドライブシャフト82の回転により回転して噴流を生成するインペラ95とを備えている。なお、ドライブシャフト82は「第2のドライブシャフト」の具体例である。
【0056】
ダクト支持部89は例えば円柱状の外形を有し、ダクト85と一体的に形成されている。ダクト85は管状に形成されている。ダクト85は、ダクト支持部89の下方から上方に伸長した後、ダクト85をその下側から見たときにダクト支持部89の周りを時計回り方向に円弧を描くように伸長し、その後、後方に伸長している。また、ダクト85の下端側部分は拡径し、ダクト85の下端部には吸水口86が形成されている。また、ダクト85の後端部には排水口87が形成されている。また、ダクト85の後端側部分には返し板88が取り付けられ、返し板88は排水口87の上方を覆っている。
【0057】
また、ダクト支持部89には、ダクト支持部89の中心を上下方向に貫通するシャフト装着部92が設けられている。ドライブシャフト82の下端側部分は、シャフト装着部92内に軸受93を介して回転可能に装着されている。また、ドライブシャフト52の下端側部分とシャフト装着部92の上端部との間、およびドライブシャフト52の下端側部分とシャフト装着部92の下端部との間はそれぞれシール94によりシールされている。
【0058】
また、シャフト装着部92の下端はダクト85内と連通している。ドライブシャフト82の下端部はダクト85内に配置され、ドライブシャフト82の下端部にはインペラ95が取り付けられている。
【0059】
また、ダクト支持部89には、ヒートシンクケース21の流通室23内に水を取り込む水取込通路91が設けられている。水取込通路91の一端側は、ダクト支持部89の前部に開口した水取込口90に接続されている。また、水取込通路91の他端側は、ウォータジェット型推進モジュール81が船外機本体11に取り付けられたときに、流通室23内と連通する。
【0060】
また、ウォータジェット型推進モジュール81は、船外機本体11のヒートシンクケース21の下部にダクト支持部89の上部を取り付けることにより、船外機本体11に取り付けられる。ダクト支持部89には、ヒートシンクケース21の下部にダクト支持部89の上部を着脱可能に取り付けることができる取付機構96が設けられている。取付機構96は、ダクト支持部89の上部の前部および後部にそれぞれ形成されたボルト穴97、98を有している。取付機構96は、プロペラ型推進モジュール51における取付機構76と同一の構成を有している。すなわち、取付機構96におけるボルト穴97、98の個数、配置および内径等は、プロペラ型推進モジュール51の取付機構76におけるボルト穴77、78の個数、配置および内径等と同じである。また、取付ボルト99は、プロペラ型推進モジュール51の取付ボルト79と同じものが用いられる。また、ダクト支持部89をヒートシンクケース21に取り付ける方法は、プロペラ型推進モジュール51のギヤケース58をヒートシンクケース21に取り付ける方法と同じである。すなわち、ダクト支持部89は、2本の取付ボルト99のうちの1本が、ドライブシャフトハウジング19のボルト挿通孔72およびヒートシンクケース21のボルト挿通孔73に挿入されてボルト穴97に締結され、もう1本の取付ボルト99が、ドライブシャフトハウジング19のボルト挿通孔74およびヒートシンクケース21のボルト挿通孔75に挿入されてボルト穴98に締結されることにより、ヒートシンクケース21に取り付けられ、固定される。
【0061】
また、ダクト支持部89のシャフト装着部92内に装着されたドライブシャフト82は、プロペラ型推進モジュール51におけるドライブシャフト52と同様に、ヒートシンクケース21の内部に形成されたシャフト挿入部22内、およびドライブシャフトハウジング19の内部に形成されたシャフト挿入部20内に挿入される。また、ドライブシャフト82の上端部は、電動モータ12の出力軸13に接続される。ドライブシャフト82において、ダクト支持部89から上方に突出している部分の長さは、プロペラ型推進モジュール51のドライブシャフト52において、ギヤケース58から上方に突出している部分の長さと同じである。また、ドライブシャフト82の上端部には、プロペラ型推進モジュール51のドライブシャフト52の上端部に形成されたスプライン53と同じスプライン83(
図1(A)を参照)が形成されている。
【0062】
利用者は、プロペラ型推進モジュール51を船外機本体11に取り付ける方法と同じ方法により、ウォータジェット型推進モジュール81を船外機本体11に取り付けることができる。また、利用者は、プロペラ型推進モジュール51を船外機本体11から取り外す方法と同じ方法により、ウォータジェット型推進モジュール81を船外機本体11から取り外すことができる。
【0063】
以上説明した通り、本発明の実施例の船外機2、3または船外機セット1によれば、利用者は、プロペラ型推進モジュール51を船外機本体11に取り付けることにより、プロペラ型船外機2を形成することができ、また、ウォータジェット型推進モジュール81を船外機本体11に取り付けることにより、ウォータジェット型船外機3を形成することができる。例えば、航行する領域が水深の深い領域である場合、利用者は、プロペラ型推進モジュール51を船外機本体11に取り付けることによってプロペラ型船外機2を形成し、そのプロペラ型船外機2を船舶のトランサムに取り付けて航行する。これにより、利用者は、プロペラ型推進装置54の高い推進効率に依拠して、速い速度で航行することができる。一方、航行する領域が水深の浅い領域である場合には、利用者は、プロペラ型推進モジュール51に代えて、ウォータジェット型推進モジュール81を船外機本体11に取り付けることによってウォータジェット型船外機3を形成し、そのウォータジェット型船外機3を船舶のトランサムに取り付けて航行する。これにより、利用者は、プロペラ型推進装置54を用いた場合にはプロペラのブレードが水底に当たってしまうほどに水深が浅い領域においても航行することができる。
【0064】
また、本実施例の船外機2、3または船外機セット1によれば、水取込通路60および水取込口59(または水取込通路91および水取込口90)を除く冷却装置31のすべての構成要素が船外機本体11に設けられているので、利用者は、船外機本体11に対する推進モジュール51または81の着脱を容易に行うことができる。すなわち、船外機本体11から推進モジュール51または81を分離することによって、水取込通路60および水取込口59(または水取込通路91および水取込口90)を除く冷却装置31の構成要素が、船外機本体11側と推進モジュール51または81側とに分断されることがない。したがって、例えば、利用者は、船外機本体11から分離した推進モジュール51または81を船外機本体11に取り付ける際に、船外機本体側に設けられた冷却液パイプと、推進モジュール51または81側に設けられた冷却液パイプとを、両者の位置を互いに正確に合わせて慎重に接続するといった煩雑な作業を行う必要がない。また、本実施例の船外機2、3または船外機セット1において、冷却装置31の構成要素である水取込通路60および水取込口59はプロペラ型推進モジュール51に設けられているが、プロペラ型推進モジュール51を船外機本体11に取り付けるだけで、水取込通路60の他端側がヒートシンクケース21内の流通室23と連通する構成になっているので、水取込通路60および水取込口59がプロペラ型推進モジュール51に設けられていることによって、利用者によるプロペラ型推進モジュール51の船外機本体11への取付作業が複雑化または困難化することはない。同様に、冷却装置31の構成要素である水取込通路91および水取込口90はウォータジェット型推進モジュール81に設けられているが、ウォータジェット型推進モジュール81を船外機本体11に取り付けるだけで、水取込通路91の他端側がヒートシンクケース21内の流通室23と連通する構成になっているので、水取込通路91および水取込口90がウォータジェット型推進モジュール81に設けられていることによって、利用者によるウォータジェット型推進モジュール81の船外機本体11への取付作業が複雑化または困難化することはない。
【0065】
また、本実施例の船外機2、3または船外機セット1は、電動モータ12の出力軸13とドライブシャフト52または82とを分離可能に接続する接続機構(スプライン穴14、スプライン53、スプライン83)を有している。また、本実施例の船外機2、3または船外機セット1は、推進モジュール51または81を船外機本体11のヒートシンクケース21の下部に着脱可能に取り付ける取付機構71、76、96を有している。さらに、本実施例の船外機2、3または船外機セット1は、ドライブシャフト52または82を挿抜可能に挿入するシャフト挿入部20、22を有している。これらの構成により、利用者は、推進モジュール51または81を船外機本体11に容易に着脱することができる。
【0066】
なお、上記実施例では、プロペラ型推進モジュール51における取付機構76と、ウォータジェット型推進モジュール81における取付機構96とを互いに同一の構成を有するものとし、また、プロペラ型推進モジュール51における取付ボルト79と、ウォータジェット型推進モジュール81における取付ボルト99とを互いに同一のものとしている。しかしながら、プロペラ型推進モジュール51およびウォータジェット型推進モジュール81を船外機本体11に択一的に取り付けることが可能であれば、両者の取付機構、または両者の取付ボルトが互いに相違していてもよい。例えば、プロペラ型推進モジュール51の取付機構76および取付ボルト79は上記実施例の通りとし、一方、ウォータジェット型推進モジュール81の取付機構96として、ダクト支持部89を上下方向に貫通する2つのボルト挿通孔を形成し、取付ボルト99として、プロペラ型推進モジュール51の取付ボルト79よりも長いボルトを採用し、ダクト支持部89をヒートシンクケース21に取り付ける際には、2本の取付ボルト99のうちの1本を、ドライブシャフトハウジング19のボルト挿通孔72、ヒートシンクケース21のボルト挿通孔73およびダクト支持部89の一方のボルト挿通孔に通した後、当該取付ボルト99にナットを締着し、もう1本の取付ボルト99を、ドライブシャフトハウジング19のボルト挿通孔74、ヒートシンクケース21のボルト挿通孔75およびダクト支持部89の他方のボルト挿通孔に通した後、当該取付ボルト99にナットを締着するようにしてもよい。
【0067】
また、
図1に示すプロペラ型推進モジュール51およびウォータジェット型推進モジュール81に、
図10に示すウォータジェット型推進モジュール101を追加してもよく、あるいは、
図1に示すプロペラ型推進モジュール51およびウォータジェット型推進モジュール81のいずれか一方を、
図10に示すウォータジェット型推進モジュール101に置き換えてもよい。
図10に示すウォータジェット型推進モジュール101は、
図1に示すウォータジェット型推進モジュール81と同様に、電動モータ12の動力により回転し、上端部にスプライン103が形成されたドライブシャフト102と、ダクト105およびインペラ108を用いてドライブシャフト102の回転を船舶の推進力に変換するウォータジェット型推進装置104と、ウォータジェット型推進モジュール101を船外機本体11に取り付けるための取付ボルト109とを備えている。しかしながら、ダクト105の構成が、ウォータジェット型推進モジュール81のダクト85の構成と異なる。具体的には、ウォータジェット型推進モジュール81のダクト85においては、吸水口86が下を向いているが、ウォータジェット型推進モジュール101のダクト105においては、吸水口106が前を向いている。なお、排水口107は後ろを向いている。ウォータジェット型推進モジュール101によれば、吸水口106が前を向いているので、インペラ108を逆回転させて逆方向の噴流を生成することにより、船舶を後進させる推進力を得ることができる。
【0068】
また、船外機セット1に、さらに別の構成を有する推進モジュールを追加してもよいし、船外機セット1の上記推進モジュール51、81、101のいずれかを、別の構成を有する推進モジュールに置き換えてもよい。
【0069】
また、本発明において、動力源の出力軸とドライブシャフトとを分離可能に接続する接続機構は、上記実施例で述べたスプライン穴およびスプラインに限らず、例えば、動力源の出力軸に取り付けられた歯車とドライブシャフトの上端側に取り付けられた歯車でもよい。
【0070】
また、本発明は、内燃機関を動力源とした船外機にも適用することができる。また、本発明は、船外機に限らず、船内外機等、他の種類の船舶推進機にも適用することができる。
【0071】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う船舶推進機および船舶推進機セットもまた本発明の技術思想に含まれる。