IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 山洋電気株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004452
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】電力変換装置および無停電電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20230110BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02M7/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106109
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000180025
【氏名又は名称】山洋電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】降幡 賢
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 実
【テーマコード(参考)】
5H006
5H770
【Fターム(参考)】
5H006CA01
5H006CB01
5H006CB08
5H006DB02
5H006DC04
5H770BA15
5H770CA02
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA01
5H770EA21
5H770EA27
5H770HA05Z
5H770KA01Y
(57)【要約】
【課題】大型化せずに二相変調方式を採用可能で、電力変換効率を向上可能な電力変換装置を提供する。
【解決手段】コンバータ回路Cと、平滑回路Sと、インバータ回路Iと、位相検出部11と、コンバータ制御部12と、インバータ制御部13とを備える。コンバータ回路C及びインバータ回路Iは3相のフルブリッジ回路で構成される。フィルタF1を構成する入力フィルタコンデンサ2a~2cとフィルタF2を構成する出力フィルタコンデンサ8a~8cが接続され、平滑回路Sの平滑コンデンサ5は、入力フィルタコンデンサ及び出力フィルタコンデンサに接続されない。コンバータ制御部12及びインバータ制御部13は、位相検出部11によって検出されるコンバータ交流電圧とインバータ交流電圧との位相差θが所定値以上になった場合、コンバータ回路C及びインバータ回路Iの変調方式を二相変調方式から三相変調方式に切り替える。
【選択図】図1(a)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流電源に接続され、前記三相交流電源からの交流を直流に変換するコンバータ回路と、
前記コンバータ回路の直流出力端子に接続された平滑コンデンサからなる平滑回路と、
前記平滑回路の直流端子に接続され、前記平滑回路からの直流を交流に変換して交流負荷に出力するインバータ回路と、
前記コンバータ回路に入力される交流電圧と前記インバータ回路から出力される交流電圧との位相差を検出する位相検出部と、
前記位相検出部の検出結果に基づいて、前記コンバータ回路および前記インバータ回路の変調方式を二相変調方式または三相変調方式に切り替える制御部と、
を備え、
前記コンバータ回路およびインバータ回路は、スイッチング素子からなる三相のフルブリッジ回路で構成され、前記コンバータ回路側のフィルタを構成する入力フィルタコンデンサと前記インバータ回路側のフィルタを構成する出力フィルタコンデンサが接続されており、
前記平滑回路の平滑コンデンサは、前記入力フィルタコンデンサ及び前記出力フィルタコンデンサに接続されておらず、
前記制御部は、前記位相検出部によって検出される位相差が所定値以上になった場合に、前記コンバータ回路および前記インバータ回路の変調方式を前記二相変調方式から前記三相変調方式に切り替える、
電力変換装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記位相検出部によって検出される位相差が所定値未満になった場合に、前記コンバータ回路および前記インバータ回路の変調方式を前記三相変調方式から前記二相変調方式に切り替える、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記位相検出部は、前記コンバータ回路とインバータ回路との位相差を検出する場合、前記コンバータ回路に入力される交流電圧と前記制御部で使用されるインバータ基準正弦波との位相差を検出する、
請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記コンバータ回路および前記インバータ回路と並列にバイパス回路をさらに備え、
前記制御部は、所定条件に応じて、前記インバータ回路から前記交流負荷への給電と、前記バイパス回路から前記交流負荷への給電とを切り替える、
請求項1から3のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項5】
三相交流電源に接続され、前記三相交流電源からの交流を直流に変換するコンバータ回路と、
前記コンバータ回路の直流出力端子に接続された平滑コンデンサからなる平滑回路と、
前記平滑回路の直流端子に接続され、前記平滑回路からの直流を交流に変換して交流負荷に出力するインバータ回路と、
前記コンバータ回路および前記インバータ回路と並列に接続されるバイパス回路と、
前記コンバータ回路および前記インバータ回路を二相変調方式でPWM制御する制御部と、
を備え、
前記コンバータ回路およびインバータ回路は、スイッチング素子からなる3相のフルブリッジ回路で構成され、前記コンバータ回路側のフィルタを構成する入力フィルタコンデンサと前記インバータ回路側のフィルタを構成する出力フィルタコンデンサが接続されており、
前記平滑回路の平滑コンデンサは、前記入力フィルタコンデンサ及び前記出力フィルタコンデンサに接続されておらず、
前記制御部は、所定条件に応じて、前記インバータ回路から前記交流負荷への給電と、前記バイパス回路から前記交流負荷への給電とを切り替える、
無停電電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置および無停電電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1などにより、非絶縁型の無停電電源装置として機能する電力変換装置が知られている。特許文献1に記載の電力変換装置では、三相交流電源からの交流をコンバータ回路により直流に変換し、更に、この直流をインバータ回路により交流に変換した交流電力と、三相交流電源から直接供給される交流電力とを切り替えることで電力変換装置を無停電電源装置として機能させている。
【0003】
また、特許文献2などにより、電力の変換効率を向上可能な変調方式として二相変調方式が知られている。二相変調方式では、三相のうちの二相にのみパルス幅変調信号を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-253262号公報
【特許文献2】特開昭59-139871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の電力変換装置では,変換器により出力されたPWM波形を平滑して正弦波を生成するために,リアクトルおよびコンデンサを用いてACフィルタを作り、このACフィルタの中点と直流部の中点を接続している。したがって、例えば、特許文献1に記載の電力変換装置で二相変調を行うと、二相変調の波形がそのままACフィルタに印加されるため、コンバータ側、インバータ側それぞれのACフィルタのリアクトルおよびコンデンサに多大な電流が流れる。このため、部品が大型化しコストも大きなものとなってしまう。よって、電力変換装置で二相変調方式を行う場合には、これらの点に関して改善の余地がある。
【0006】
そこで、本発明は、装置を大型化せずに二相変調方式を採用可能で、電力変換の効率を向上させることが可能な電力変換装置および無停電電源装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る電力変換装置は、
三相交流電源に接続され、前記三相交流電源からの交流を直流に変換するコンバータ回路と、
前記コンバータ回路の直流出力端子に接続された平滑コンデンサからなる平滑回路と、
前記平滑回路の直流端子に接続され、前記平滑回路からの直流を交流に変換して交流負荷に出力するインバータ回路と、
前記コンバータ回路に入力される交流電圧と前記インバータ回路から出力される交流電圧との位相差を検出する位相検出部と、
前記位相検出部の検出結果に基づいて、前記コンバータ回路および前記インバータ回路の変調方式を二相変調方式または三相変調方式に切り替える制御部と、
を備え、
前記コンバータ回路およびインバータ回路は、スイッチング素子からなる三相のフルブリッジ回路で構成され、前記コンバータ回路側のフィルタを構成する入力フィルタコンデンサと前記インバータ回路側のフィルタを構成する出力フィルタコンデンサが接続されており、
前記平滑回路の平滑コンデンサは、前記入力フィルタコンデンサ及び前記出力フィルタコンデンサに接続されておらず、
前記制御部は、前記インバータ基準正弦波を生成し、前記位相検出部によって検出される位相差が所定値以上になった場合に、前記コンバータ回路および前記インバータ回路の変調方式を前記二相変調方式から前記三相変調方式に切り替える。
【0008】
また、本発明の一側面に係る無停電電源装置は、
三相交流電源に接続され、前記三相交流電源からの交流を直流に変換するコンバータ回路と、
前記コンバータ回路の直流出力端子に接続された平滑コンデンサからなる平滑回路と、
前記平滑回路の直流端子に接続され、前記平滑回路からの直流を交流に変換して交流負荷に出力するインバータ回路と、
前記コンバータ回路および前記インバータ回路と並列に接続されるバイパス回路と、
前記コンバータ回路および前記インバータ回路を二相変調方式でPWM制御する制御部と、
を備え、
前記コンバータ回路およびインバータ回路は、スイッチング素子からなる三相のフルブリッジ回路で構成され、前記コンバータ回路側のフィルタを構成する入力フィルタコンデンサと前記インバータ回路側のフィルタを構成する出力フィルタコンデンサが接続されており、
前記平滑回路の平滑コンデンサは、前記入力フィルタコンデンサ及び前記出力フィルタコンデンサに接続されておらず、
前記制御部は、所定条件に応じて、前記インバータ回路から前記交流負荷への給電と、前記バイパス回路から前記交流負荷への給電とを切り替える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、装置を大型化せずに二相変調方式を採用可能であり、電力変換の効率を向上可能な電力変換装置および無停電電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1(a)】本発明の第1実施形態に係る電力変換装置の回路構成を示す図である。
図1(b)】本発明の第2実施形態に係る電力変換装置の回路構成を示す図である。
図2】従来の電力変換装置の回路構成を示す図である。
図3(a)】半導体スイッチング素子の駆動波形を生成するための制御波形とキャリア三角波である。
図3(b)】u相の半導体スイッチング素子の駆動波形である。
図4(a)】図2におけるインバータ回路の出力電圧であり、破線はその中に含まれるスイッチング周波数を取り去った電圧波形である。
図4(b)】インバータ回路のu相の出力フィルタリアクトルに流れる電流波形である。
図4(c)】インバータ回路のu相の出力フィルタコンデンサに流れる電流波形である。
図5(a)】図1(a)におけるインバータ回路のu相の出力電圧であり、破線はその中に含まれるスイッチング周波数を取り去った電圧波形である。
図5(b)】図1(a)においてインバータ回路との位相が合っているときのコンバータ回路で発生するr相の交流電圧であり、破線はその中に含まれるスイッチング周波数を取り去った電圧波形である。
図6図1(a)におけるインバータ回路の出力フィルタリアクトルと出力フィルタコンデンサと、コンバータ回路の入力フィルタコンデンサと入力フィルタリアクトルとの間に印加される電圧であり、破線はその中に含まれるスイッチング周波数を取り去った電圧波形である。
図7(a)】図1(a)におけるインバータ回路のu相の出力フィルタリアクトルに流れる電流波形である。
図7(b)】インバータ回路のu相の出力フィルタコンデンサに流れる電流波形である。
図8(a)】図1(a)におけるインバータ回路のu相の出力電圧である。
図8(b)】図1(a)においてインバータ回路との位相がずれたときのコンバータ回路で発生するr相の交流電圧である。
図9図8のときのインバータ回路のu相の出力フィルタリアクトルと出力フィルタコンデンサと、コンバータ回路のr相の入力フィルタコンデンサと入力フィルタリアクトルとの間に印加される電圧である。
図10(a)】図8のときのインバータ回路のu相の出力フィルタリアクトルに流れる電流波形である。
図10(b)】インバータ回路のu相の出力フィルタコンデンサに流れる電流波形である。
図11(a)】二相変調時のインバータ回路の出力電圧とコンバータ回路に入力される交流電圧との位相差に対する、u相のフィルタコンデンサに流れるリップル電流を示す図である。
図11(b)】図11(a)の部分拡大図である。
図12(a)】三相変調時のインバータ回路の出力電圧とコンバータ回路に入力される交流電圧との位相差が180度のときの電流波形であり、インバータ回路の出力フィルタリアクトルに流れる電流波形である。
図12(b)】三相変調時のインバータ回路の出力電圧とコンバータ回路に入力される交流電圧との位相差が180度のときの電流波形であり、同出力フィルタコンデンサに流れる電流波形である。
図13】変調方式を切り替える動作を説明するフローチャートである。
図14】本発明の実施形態に係る無停電電源装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、実施形態の説明において既に説明された部材と同一の参照番号を有する部材については、説明の便宜上、その説明は省略する。また、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0012】
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係る電力変換装置1の回路構成を示す図である。図1(a)に示すように、電力変換装置1は、入力フィルタF1と、コンバータ回路Cと、平滑回路Sと、インバータ回路Iと、出力フィルタF2と、位相検出部11と、コンバータ制御部12と、インバータ制御部13と、を備える。
【0013】
入力フィルタF1は、入力フィルタコンデンサ2a~2cと、入力フィルタリアクトル3a~3cと、を有する。入力フィルタリアクトル3a~3cの一方の端子は、電力変換装置1の装置入力端子31a~31cにそれぞれ接続されている。入力フィルタリアクトル3a~3cの他方の端子は、コンバータ回路Cの三相(r相,s相,t相)のコンバータ入力端子41a~41cにそれぞれ接続されている。電力変換装置1の装置入力端子31a~31cには、三相交流電源91が接続される。
【0014】
入力フィルタコンデンサ2a~2cの一方の端子は、入力フィルタリアクトル3a~3cにおける装置入力端子31a~31c側の端子にそれぞれ接続されている。入力フィルタコンデンサ2a~2cの他方の端子は、中性線nlに接続されている。入力フィルタF1は、三相交流電源91からの三相交流電力をコンバータ回路Cに通過させるとともに、コンバータ回路Cで発生するキャリア周波数(PWM制御方式におけるパルス幅変調周期を決定する周波数)の信号が三相交流電源91に通過するのを防止する。
【0015】
コンバータ回路Cは、三相ブリッジ接続された6個の半導体スイッチング素子4a~4fを有する。半導体スイッチング素子4a~4fは、例えば、IGBT(絶縁ゲート・バイポーラトランジスタ)と、逆並列された還流ダイオードとで構成されている。コンバータ回路Cは、三相(r相,s相,t相)のフルブリッジ回路で構成されている。コンバータ回路Cは、三相交流電源91からの交流電圧を直流電圧に変換する。
【0016】
平滑回路Sは、平滑コンデンサ5を有する。図に示す例では、平滑コンデンサ5は、単一のコンデンサで構成されている。平滑コンデンサ5は、コンバータ回路Cの出力を平滑するコンデンサであり、例えば、電解コンデンサである。平滑コンデンサ5は、コンバータ回路Cのコンバータ出力端子42a,42bに接続されている。
【0017】
インバータ回路Iは、三相ブリッジ接続された6個の半導体スイッチング素子6a~6fを有する。半導体スイッチング素子6a~6fは、例えば、IGBTと、逆並列された還流ダイオードとで構成されている。インバータ回路Iは、三相(u相,v相,w相)のフルブリッジ回路で構成されている。インバータ回路Iは、インバータ入力端子61a,61bが平滑コンデンサ5の両極端子にそれぞれ接続されている。インバータ回路Iは、半導体スイッチング素子6a~6fのスイッチング動作により、平滑回路Sからの直流電圧(コンバータ回路Cが出力する直流電圧)を交流電圧に変換する。
【0018】
出力フィルタF2は、出力フィルタリアクトル7a~7cと、出力フィルタコンデンサ8a~8cと、を有する。出力フィルタリアクトル7a~7cの一方の端子は、三相(u相,v相,w相)のインバータ回路Iのインバータ出力端子62a~62cにそれぞれ接続されている。出力フィルタリアクトル7a~7cの他方の端子は、電力変換装置1の装置出力端子71a~71cにそれぞれ接続されている。電力変換装置1の装置出力端子71a~71cには、インバータ回路Iから出力される三相交流電力が供給される交流負荷92が接続される。
【0019】
出力フィルタコンデンサ8a~8cの一方の端子は、出力フィルタリアクトル7a~7cにおける装置出力端子71a~71c側の端子にそれぞれ接続されている。出力フィルタコンデンサ8a~8cの他方の端子は、中性線nlに接続されている。出力フィルタF2は、インバータ回路Iから出力される交流電力を交流負荷92に通過させるとともに、インバータ回路Iで発生するキャリア周波数の信号が交流負荷92に通過するのを防止する。
【0020】
位相検出部11には、電力変換装置1の装置入力端子31a~31cと、電力変換装置1の装置出力端子71a~71cと、が接続されている。位相検出部11は、インバータ側に対するコンバータ側の位相のずれを検出する。位相検出部11は、三相(r相,s相,t相)の装置入力端子31a~31cに入力される入力交流電圧と、三相(u相,v相,w相)の装置出力端子71a~71cに出力される出力交流電圧との位相差をそれぞれ検出する。位相検出部11は、検出した入力交流電圧と出力交流電圧とのそれぞれの位相差をコンバータ制御部12とインバータ制御部13に出力する。なお、本発明の第2実施形態として、図1(b)に示すように、位相検出部11は、インバータ側に対するコンバータ側の位相のずれを検出する場合に、装置入力端子31a~31cに入力される入力交流電圧と、インバータ制御部13内で用いられるインバータ基準正弦波との位相差を検出するようにしてもよい。インバータ基準正弦波は、インバータ制御部13においてプログラムで生成される理想正弦波である。
【0021】
コンバータ制御部12は、コンバータ回路Cの半導体スイッチング素子4a~4fを所望の状態にスイッチング制御する。コンバータ制御部12は、入力交流電圧と出力交流電圧との位相差を位相検出部11から受信する。コンバータ制御部12は、入力交流電圧と出力交流電圧との位相差に応じて、コンバータ回路Cの変調方式を二相変調方式または三相変調方式に切り替える。
【0022】
インバータ制御部13は、インバータ回路Iの半導体スイッチング素子6a~6fを所望の状態にスイッチング制御する。インバータ制御部13は、入力交流電圧と出力交流電圧との位相差を位相検出部11から受信する。インバータ制御部13は、入力交流電圧と出力交流電圧との位相差に応じて、インバータ回路Iの変調方式を二相変調方式または三相変調方式に切り替える。
【0023】
図2は、従来の電力変換装置200の回路構成の一例を示す図である。図2に示すように、電力変換装置200は、平滑回路Sを構成するコンデンサが直列に接続された2個の平滑コンデンサ5a,5bで構成されている点で、図1(a)、(b)に示す本発明の電力変換装置1の単一で構成される平滑コンデンサ5と相違する。そして、直流電圧の中性点である平滑コンデンサ5a,5b間が、入力フィルタコンデンサ2a~2cおよび出力フィルタコンデンサ8a~8cが接続されている中性線nlに接続される。また、電力変換装置200は、位相検出部11を備えておらず、コンバータ制御部12によるコンバータ回路Cおよびインバータ制御部13によるインバータ回路Iのスイッチング方式を二相変調方式または三相変調方式に切り替えていない点で、切り替えを行っている本発明の電力変換装置1と相違する。なお、電力変換装置200が入力フィルタF1と、コンバータ回路Cと、平滑回路Sと、インバータ回路Iと、出力フィルタF2と、コンバータ制御部12と、インバータ制御部13と、を備える構成は、本発明の電力変換装置1と同様である。
【0024】
次に、図1(a)に示す本発明の電力変換装置1および図2に示す従来の電力変換装置200において、インバータ回路Iを二相変調方式でPWM(Pulse Width Modulation)制御したときの出力フィルタリアクトル7a~7cと出力フィルタコンデンサ8a~8cに流れる電流について説明する。
【0025】
先ずここで、二相変調方式によるPWM制御について図3を参照して説明する。図3(a)は、二相変調方式における三相(u相,v相,w相)の制御波形101u,101v,101wと、キャリア三角波102と、を示す波形図である。制御波形101u,101v,101wは、インバータ基準正弦波に基づいて生成される波形である。図3(b)は、制御波形101uとキャリア三角波102とにより生成されたu相の半導体スイッチング素子6aの駆動波形103である。
【0026】
インバータ制御部13は、図3(a)(b)に示すように、制御波形101uとキャリア三角波102との比較により駆動波形103を生成する。インバータ制御部13は、制御波形101uとキャリア三角波102とを比較して、制御波形101uの方が大きい場合に上側の半導体スイッチング素子6aがオンして、下側の半導体スイッチング素子6bがオフする駆動波形103を生成する。また、インバータ制御部13は、制御波形101uの方が小さい場合に下側の半導体スイッチング素子6bがオンして、上側の半導体スイッチング素子6aがオフする駆動波形103を生成する。なお、図3(b)には、上側の半導体スイッチング素子6aの駆動波形103のみを示している。
【0027】
また、二相変調方式では、三相の制御波形101u,101v,101wのうち、いずれか一相の制御波形の位相がそれぞれ60度変化する期間で最大値または最小値に固定され、残りの二相が変調される。このように、二相変調方式は、三相のうちいずれか一相の制御波形が常に最大値または最小値に固定されて半導体スイッチング素子のスイッチングが停止されるので、三相変調方式に比べてスイッチング回数が減少されてスイッチングによる損失が抑制される。なお、図3では、u相について説明しているが、v相およびw相の場合にも同様にして半導体スイッチング素子6c,6dおよび6e,6fの制御波形が生成される。
【0028】
図4は、図2に示す従来の電力変換装置200においてコンバータ回路Cおよびインバータ回路Iを二相変調方式でPWM制御したときの出力フィルタリアクトル7aと出力フィルタコンデンサ8aに流れる電流を説明する図である。図4(a)は、インバータ回路Iにおけるu相のインバータ出力端子62aの出力電圧Eu2を示し破線はその中に含まれるスイッチング周波数を取り去った電圧波形を示す。図4(b)は、インバータ回路Iにおけるu相の出力フィルタリアクトル7aに流れる電流波形221を示す。図4(c)は、インバータ回路Iにおけるu相の出力フィルタコンデンサ8aに流れる電流波形222を示す。
【0029】
図4(a)に示すように、出力電圧Eu2は、PWM制御によって電源電圧±Ed間を変化する波形として出力される。そして、電力変換装置200の回路構成の場合、平滑コンデンサ5-半導体スイッチング素子6a,6b-出力フィルタリアクトル7a-出力フィルタコンデンサ8a-平滑コンデンサ5で一つの閉じられたループが構成される。これのため、当該ループにおける出力フィルタリアクトル7aと出力フィルタコンデンサ8a間には、高周波のスイッチング波形に低周波の破線で示す電圧211が印加される。電圧211は、例えば、丸領域212a~212eに示すように、変化点における電圧変動が大きい。このため、出力フィルタリアクトル7aと出力フィルタコンデンサ8aが振動を起こし、出力フィルタリアクトル7aおよび出力フィルタコンデンサ8aに、例えば、図4(b),(c)に示すような約1.2Ap-pの電流波形221,222が流れる。よって、出力フィルタリアクトル7aおよび出力フィルタコンデンサ8aとして使用する部品を大型化しなければならなくなる。
【0030】
なお、図に示す例では、インバータ回路Iにおけるu相の出力フィルタリアクトル7aと出力フィルタコンデンサ8aに流れる電流ついて示しているが、v相およびw相の出力フィルタリアクトル7bおよび7cと出力フィルタコンデンサ8bおよび8cに流れる電流も同様である。また、コンバータ回路Cにおけるr相,s相,t相の入力フィルタコンデンサ2a~2cと入力フィルタリアクトル3a~3cに流れる電流も同様である(以下の説明において同じ)。
【0031】
図5は、図1(a)に示す本発明の電力変換装置1においてコンバータ回路Cおよびインバータ回路Iを二相変調方式でPWM制御したときの出力フィルタリアクトル7aと出力フィルタコンデンサ8aに流れる電流を説明する図である。図5(a)は、インバータ回路Iにおけるu相のインバータ出力端子62aの出力電圧Euを示し破線はその中に含まれるスイッチング周波数を取り去った電圧波形を示す。図5(b)は、図1(a)においてインバータ回路との位相が合っているときのコンバータ回路Cがu相の入力側に出力する電圧、すなわち、コンバータ回路Cにおけるu相のコンバータ入力端子41aに発生する入力電圧Erを示し破線はその中に含まれるスイッチング周波数を取り去った電圧波形を示す。インバータ回路との位相が合っているため、入力電圧Erの波形は、出力電圧Euの波形と略同じ波形になる。
【0032】
図5(a)に示すように、出力電圧Euは、従来の電力変換装置200における出力電圧Eu2と同様に、PWM制御によって電源電圧±Ed間を変化する波形として出力される。ところが、電力変換装置1の回路構成の場合、平滑コンデンサ5-半導体スイッチング素子6a,6b-出力フィルタリアクトル7a-出力フィルタコンデンサ8a-入力フィルタコンデンサ2a-入力フィルタリアクトル3a-半導体スイッチング素子4a,4b-平滑コンデンサ5で一つの閉じられたループが構成される。これにより、上記平滑コンデンサ5-半導体スイッチング素子6a,6b-出力フィルタリアクトル7a-出力フィルタコンデンサ8a-入力フィルタコンデンサ2a-入力フィルタリアクトル3a-半導体スイッチング素子4a,4b-平滑コンデンサ5のループにおける出力フィルタリアクトル7aと出力フィルタコンデンサ8aと入力フィルタコンデンサ2aと入力フィルタリアクトル3a間には、出力電圧Euから入力電圧Erを減算した電圧が印加されることになる。
【0033】
図6は、図5(a)に示す出力電圧Euから図5(b)に示す入力電圧Erを減算した印加電圧Eu-Er、すなわち、出力フィルタリアクトル7aと出力フィルタコンデンサ8aと入力フィルタコンデンサ2aと入力フィルタリアクトル3aに印加される電圧を示し、破線の電圧111はその中に含まれるスイッチング周波数を取り去った電圧波形を示す。電圧111は、入力電圧Erと出力電圧Euとが略同じ電圧波形であるため、例えば、丸領域112a~112eに示すように、変化点における電圧変動が、図4(a)の丸領域212a~212eに示す変化点の電圧変動に比べて格段に小さい。
【0034】
図7(a)は、図6に示す印加電圧Eu-Erが出力フィルタリアクトル7aと出力フィルタコンデンサ8aと入力フィルタコンデンサ2aと入力フィルタリアクトル3aに印加されるときの出力フィルタリアクトル7aに流れる電流波形121を示す。図7(b)は、同印加電圧Eu-Erが印加されるときの出力フィルタコンデンサ8aに流れる電流波形122を示す。
【0035】
上述したように出力フィルタリアクトル7aと出力フィルタコンデンサ8aと入力フィルタコンデンサ2aと入力フィルタリアクトル3aに印加される電圧に含まれる電圧111の変化点における電圧変動が小さいので、出力フィルタリアクトル7aと出力フィルタコンデンサ8aに電流振動が起こりにくくなる。このため、出力フィルタリアクトル7aおよび出力フィルタコンデンサ8aに流れる電流は、図7(a),(b)に示すように100mAp-p程度の電流波形121,122に抑えられることになる。
【0036】
ところで、電力変換装置において、例えば、入力側であるコンバータ回路が、出力側であるインバータ回路と同期が取れていない状態となる場合が生じ得る。そして、コンバータ回路とインバータ回路との同期が取れていない状態では、コンバータ回路の入力電圧とインバータ回路の出力電圧との間で位相差が生じる。
【0037】
そこで、発明者は、図1(a)に示す本発明の電力変換装置1において、コンバータ回路C側とインバータ回路I側との同期が取れていない場合、すなわちコンバータ回路Cの入力電圧Erとインバータ回路Iの出力電圧Euとに位相差が生じた場合の出力フィルタリアクトル7aおよび出力フィルタコンデンサ8aに流れる電流について検討を行った。なお、上記図5から図7で説明した電力変換装置1における出力フィルタリアクトル7aおよび出力フィルタコンデンサ8aに流れる電流波形121および122は、コンバータ回路Cとインバータ回路Iとが同期している場合、すなわちコンバータ回路Cの入力電圧Erとインバータ回路Iの出力電圧Euとの位相差が0度の場合の電流である。
【0038】
以下、図8から図10を参照して、電力変換装置1におけるコンバータ回路Cの入力電圧Erとインバータ回路Iの出力電圧Euとの位相差が180度の場合の出力フィルタリアクトル7aおよび出力フィルタコンデンサ8aに流れる電流について説明する。
【0039】
図8(a)は、インバータ回路Iにおけるu相の出力電圧Euで破線はその中に含まれるスイッチング周波数を取り去った電圧波形ある。図8(b)は、コンバータ回路Cにおけるu相の入力電圧Erで破線はその中に含まれるスイッチング周波数を取り去った電圧波形ある。図8(a)に示すように、出力電圧Euは、図5(a)の位相差が0度の場合の出力電圧Euと同様に、PWM制御によって電源電圧±Ed間を変化する波形として出力される。一方、図8(b)に示すように、入力電圧Erは、出力電圧Euに対して略プラスマイナスが反転した電圧波形になる。
【0040】
入力電圧Erと出力電圧Euとの波形のずれは、入力電圧Erと出力電圧Euとの位相差に応じて変化し、位相差が180度のときに最大となる。このため、電力変換装置1の平滑コンデンサ5-半導体スイッチング素子6a,6b-出力フィルタリアクトル7a-出力フィルタコンデンサ8a-入力フィルタコンデンサ2a-入力フィルタリアクトル3a-半導体スイッチング素子4a,4b-平滑コンデンサ5のループにおける出力フィルタリアクトル7aと出力フィルタコンデンサ8aと入力フィルタコンデンサ2aと入力フィルタリアクトル3aに印加される電圧、すなわち出力電圧Euから入力電圧Erを減算した電圧は、両電圧の位相差が大きいほど大きくなる。
【0041】
図9は、図8(a)に示す出力電圧Euから図8(b)に示す入力電圧Erを減算した印加電圧Eu-Er、すなわち、出力フィルタリアクトル7aと出力フィルタコンデンサ8aと入力フィルタコンデンサ2aと入力フィルタリアクトル3aに印加される電圧を示し、破線の電圧131はその中に含まれるスイッチング周波数を取り去った電圧波形を示す。出力電圧Euと入力電圧Erとは略反転した電圧波形であるため、図9に示すように、電圧131は例えば、丸領域132a~132eに示すように、電圧131の変化点における電圧変動が、図6の位相差が0度のときの電圧111の変化点における電圧変動に比べて大きい。
【0042】
図10(a)は、図9に示す印加電圧Eu-Erが出力フィルタリアクトル7aと出力フィルタコンデンサ8aと入力フィルタコンデンサ2aと入力フィルタリアクトル3aに印加されるときの出力フィルタリアクトル7aに流れる電流波形141を示す。図10(b)は、同印加電圧Eu-Erが印加されるときの出力フィルタコンデンサ8aに流れる電流波形142を示す。
【0043】
上述したように入力電圧Erと出力電圧Euとの位相差が180度の場合には、出力フィルタリアクトル7aと出力フィルタコンデンサ8aと入力フィルタコンデンサ2aと入力フィルタリアクトル3aに印加される印加電圧Eu-Erの変化点における電圧変動が大きくなるので、出力フィルタリアクトル7aと出力フィルタコンデンサ8aに電流振動が起こりやすくなる。このため、出力フィルタリアクトル7aおよび出力フィルタコンデンサ8aに流れる電流は、図10(a),(b)に示すように約400mAp-pの電流波形141,142が流れることになり得る。
【0044】
これに対して、発明者は、コンバータ回路Cの入力電圧Erとインバータ回路Iの出力電圧Euとの位相差と、出力フィルタコンデンサ8a(または、出力フィルタリアクトル7a)に流れる電流との関係について検討した。
【0045】
図11(a)は、入力電圧Erと出力電圧Euとの位相差と、出力フィルタコンデンサ8aに流れるリップル電流との関係を示す図である。図11(b)は、位相差0度周辺のリップル電流を示す部分拡大図である。
【0046】
発明者は、出力フィルタコンデンサ8aとして使用する部品の形状およびコストを考慮して、リップル電流が位相差0度のときのリップル電流の2倍以下となることを目標に位相差を検討した。その結果、2倍以下のリップル電流に抑えるための位相差は、±0.5度であることが特定された。そして、これにより、入力電圧Erと出力電圧Euとの位相差が±0.5度未満の場合には、コンバータ回路Cおよびインバータ回路Iを二相変調方式でPWM制御しても、コンデンサ部品が大型化せず、コストも高価とならないことが分かった。
【0047】
次に、発明者は、電力変換装置1におけるコンバータ回路C側とインバータ回路I側との同期が取れていない場合において、コンバータ回路Cおよびインバータ回路Iを三相変調方式でPWM制御したときの出力フィルタリアクトル7aおよび出力フィルタコンデンサ8aに流れる電流について検討を行った。
【0048】
図12(a)は、三相変調方式のPWM制御において、コンバータ回路Cの入力電圧Erとインバータ回路Iの出力電圧Euとの位相差が180度のときの出力フィルタリアクトル7aに流れる電流である。図12(b)は、同位相差が180度のときの出力フィルタコンデンサ8aに流れる電流である。図12(a)(b)に示すように、三相変調方式でPWM制御を行った場合、出力フィルタリアクトル7aおよび出力フィルタコンデンサ8aに流れる電流は、50mAp-p程度の電流波形151,152に抑えられる。これは、入力電圧Erおよび出力電圧Euに二相変調による変化点が存在しないため、理想の正弦波(図示省略)になるためである。なお、図12に示す例では、入力電圧Erと出力電圧Euとの位相差が180度の場合について説明したが、位相差が180度未満の場合であっても同様に出力フィルタリアクトル7aおよび出力フィルタコンデンサ8aに流れる電流は抑えられる。
【0049】
次に、図13を参照して、電力変換装置1における変調方式の切り替え動作について説明する。
位相検出部11は、コンバータ回路Cに入力される入力交流電圧とインバータ回路Iから出力される出力交流電圧を受信する。位相検出部11は、受信した入力交流電圧と出力交流電圧との位相差θを算出する(ステップS10)。位相検出部11は、算出した位相差θをコンバータ制御部12とインバータ制御部13に送信する。
【0050】
コンバータ制御部12とインバータ制御部13は、受信した位相差θが所定値未満の位相差(例えば、-0.5度<θ<0.5度)であるか否か、すなわちコンバータ回路Cとインバータ回路Iとが同期状態であるか非同期状態であるか判定する(ステップS11)。
【0051】
ステップS11において、位相差θが所定値未満(同期状態)であると判定された場合には(ステップS11のYES)、コンバータ制御部12とインバータ制御部13は、コンバータ回路Cの半導体スイッチング素子4a~4fとインバータ回路Iの半導体スイッチング素子6a~6fをそれぞれ二相変調方式でPWM制御する(ステップS12)。
【0052】
一方、ステップS11において、位相差θが所定値未満ではない(非同期状態である)と判定された場合には(ステップS11のNO)、コンバータ制御部12とインバータ制御部13は、コンバータ回路Cの半導体スイッチング素子4a~4fとインバータ回路Iの半導体スイッチング素子6a~6fをそれぞれ三相変調方式でPWM制御する(ステップS13)。
【0053】
ステップS10からステップS13までの一連の処理は、連続的に繰り返される。そして、位相差θが所定値未満から所定値以上に変化した場合には、コンバータ制御部12とインバータ制御部13は、コンバータ回路Cとインバータ回路IのPWM制御を二相変調方式から三相変調方式に切り替える。また、位相差θが所定値以上から所定値未満に変化した場合には、コンバータ制御部12とインバータ制御部13は、コンバータ回路Cとインバータ回路IのPWM制御を三相変調方式から二相変調方式に切り替える。
【0054】
なお、図14に示すように、電力変換装置1において、r相の装置入力端子31aとu相の装置出力端子71a、s相の装置入力端子31bとv相の装置出力端子71b、およびt相の装置入力端子31cとw相の装置出力端子71cをそれぞれ接続可能に構成されるバイパス回路301と、コンバータ回路Cのコンバータ出力端子42a,42bに平滑コンデンサ5と並列に接続される蓄電池9と、を設けてもよい。バイパス回路301を設けた構成の場合、バイパス回路301を通じて三相交流電源91から交流負荷92へ直接的に交流電力を供給する給電ルートを形成することができる。これにより電力変換装置1のメンテナンスを行う場合でも交流負荷92へ継続して電力を供給することができる。蓄電池9を設けた構成の場合、蓄電池9に蓄積された電力をインバータ回路Iを介して交流負荷92へ供給する給電ルートを形成することができる。これにより、三相交流電源91が停電したときでも、蓄電池9に蓄積された電力をインバータ回路Iを介して交流負荷92へ継続して供給することができ、電力変換装置1を無停電電源装置300として用いることができる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係る電力変換装置1は、三相交流電源91に接続されて、三相交流電源91からの交流を直流に変換するコンバータ回路Cと、コンバータ回路Cの直流出力端子に接続された平滑コンデンサ5からなる平滑回路Sと、平滑回路Sの直流端子に接続されて、平滑回路Sからの直流を交流に変換して交流負荷92に出力するインバータ回路Iと、コンバータ回路Cに入力される交流電圧とインバータ回路Iから出力される交流電圧との位相差を検出する位相検出部11と、位相検出部11の検出結果に基づいて、コンバータ回路Cおよびインバータ回路Iの変調方式を二相変調方式または三相変調方式に切り替えるコンバータ制御部12およびインバータ制御部13と、を備える。コンバータ回路Cおよびインバータ回路Iは、それぞれ半導体スイッチング素子4a~4f、半導体スイッチング素子6a~6fからなる三相のフルブリッジ回路で構成されている。コンバータ回路側の入力フィルタF1を構成する入力フィルタコンデンサ2a~2cとインバータ回路側の出力フィルタF2を構成する出力フィルタコンデンサ8a~8cが接続され、平滑回路Sの平滑コンデンサ5は、入力フィルタコンデンサ2a~2cおよび出力フィルタコンデンサ8a~8cに接続されていない。コンバータ制御部12およびインバータ制御部13は、位相検出部11によって検出される位相差θが所定値以上になった場合に、コンバータ回路Cおよびインバータ回路Iの変調方式を二相変調方式から三相変調方式に切り替える。この構成によれば、コンバータ回路側の入力フィルタF1の中点およびインバータ回路側の出力フィルタF2の中点と平滑回路Sの平滑コンデンサ5を接続しないこと、および位相差θが所定値以上になった際にコンバータ回路Cの制御およびインバータ回路Iの制御を二相変調方式から三相変調方式に切り替えることで、コンバータ回路Cの入力フィルタF1およびインバータ回路Iの出力フィルタF2に流れる電流を抑制することができる。このため、入力フィルタF1および出力フィルタF2を構成する部品(入力フィルタコンデンサ2a~2c,出力フィルタコンデンサ8a~8c、入力フィルタリアクトル3a~3c,出力フィルタリアクトル7a~7c等)を小型化することができるので、電力変換装置1全体を大型化せずに二相変調方式を採用することができ、二相変調方式を採用することにより電力変換の効率を向上させることができる。
【0056】
また、電力変換装置1によれば、コンバータ制御部12およびインバータ制御部13は、位相検出部11によって検出される位相差θが所定値未満になった場合に、インバータ回路Iの変調モードを三相変調方式から二相変調方式に切り替える。このため、位相差θが所定値未満になった際にインバータ回路Iの制御を三相変調方式から二相変調方式に戻すことができるので、電力変換の効率を適切に向上させることができる。
【0057】
また、電力変換装置1によれば、位相検出部11は、位相差θを検出する際にインバータ制御部13で使用されるインバータ基準正弦波を用いる。このように、コンバータ回路Cに入力される交流電圧とインバータ制御部13で使用される理想的なインバータ基準正弦波との位相差を検出することによっても制御の変調方式を適切に切り替えることが可能である。
【0058】
また、電力変換装置1によれば、コンバータ回路Cおよびインバータ回路Iと並列にバイパス回路301をさらに備え、コンバータ制御部12およびインバータ制御部13は、所定条件に応じて(例えば、停電時あるいはメンテナンス時)、蓄電池9に蓄電されている電力をインバータ回路Iから交流負荷92へ給電するルートと、バイパス回路301から交流負荷92へ給電するルートとをそれぞれ切り替えることができる。このように、電力変換装置1は、非絶縁型の無停電電源装置として機能させることも可能である。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0060】
1,200 電力変換装置
2a~2c 入力フィルタコンデンサ
3a~3c 入力フィルタリアクトル
4a~4f 半導体スイッチング素子
5,5a,5b 平滑コンデンサ
6a~6f 半導体スイッチング素子
7a~7c 出力フィルタリアクトル
8a~8c 出力フィルタコンデンサ
9 蓄電池
11 位相検出部
12 コンバータ制御部
13 インバータ制御部
31a~31c 装置入力端子
41a~41c コンバータ入力端子
91 三相交流電源
92 交流負荷
101u,101v,101w 制御波形
102 キャリア三角波
103 駆動波形
300 無停電電源装置
301 バイパス回路
C コンバータ回路
Eu,Eu2 出力電圧
Er 入力電圧
F1 入力フィルタ
F2 出力フィルタ
I インバータ回路
nl 中性線
S 平滑回路
図1(a)】
図1(b)】
図2
図3(a)】
図3(b)】
図4(a)】
図4(b)】
図4(c)】
図5(a)】
図5(b)】
図6
図7(a)】
図7(b)】
図8(a)】
図8(b)】
図9
図10(a)】
図10(b)】
図11(a)】
図11(b)】
図12(a)】
図12(b)】
図13
図14