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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023044756
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】除菌システム
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20230327BHJP
   B66B 11/02 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
A61L2/10
B66B11/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021152777
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】藤本 卓也
(72)【発明者】
【氏名】久保田 謙三
(72)【発明者】
【氏名】西野 優希
【テーマコード(参考)】
3F306
4C058
【Fターム(参考)】
3F306CB05
3F306CB60
4C058AA23
4C058AA30
4C058BB06
4C058DD01
4C058DD16
4C058EE01
4C058EE26
4C058KK02
4C058KK12
4C058KK22
(57)【要約】
【課題】紫外線の照射を適宜制御することが可能な除菌システムを提供する。
【解決手段】エレベーターの利用者Uが乗降するカゴ10内に紫外線UVを照射可能な照射部21と、エレベーターのカゴ10のドア14の動きを検知する第一振動センサ22と、カゴ10の床部11の動きを検知する第二振動センサ23と、第一振動センサ22及び第二振動センサ23の検出結果に基づいて照射部21による紫外線UVの照射を制御する制御部24と、を具備する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターの利用者が乗降するカゴ内に紫外線を照射可能な照射部と、
前記エレベーターのカゴのドアの動きを検知する第一センサと、
前記カゴの床部の動きを検知する第二センサと、
前記第一センサ及び前記第二センサの検出結果に基づいて前記照射部による紫外線の照射を制御する制御部と、
を具備する、
除菌システム。
【請求項2】
前記第一センサには、
前記ドアの振動を検知する第一振動センサが含まれる、
請求項1に記載の除菌システム。
【請求項3】
前記第二センサには、
前記床部の振動を検知する第二振動センサが含まれる、
請求項2に記載の除菌システム。
【請求項4】
前記第一振動センサは、
前記ドアに設けられ、
前記第二振動センサは、
前記床部に設けられる、
請求項3に記載の除菌システム。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第一振動センサ及び前記第二振動センサのそれぞれが振動を検知しない状態が所定時間継続した場合、前記照射部から紫外線を照射させる、
請求項3又は請求項4に記載の除菌システム。
【請求項6】
前記制御部は、
前記照射部による紫外線の照射中に前記第一振動センサ又は前記第二振動センサのいずれか一方のみが振動を検知した場合、前記照射部による紫外線の照射を停止させる、
請求項5に記載の除菌システム。
【請求項7】
前記制御部は、
前記照射部による紫外線の照射中に前記第一振動センサ及び前記第二振動センサのそれぞれが振動を検知した場合、前記照射部による紫外線の照射を継続させる、
請求項5又は請求項6に記載の除菌システム。
【請求項8】
前記制御部は、
前記照射部による紫外線の照射の継続中に前記第一振動センサ又は前記第二振動センサの少なくともいずれか一方が振動を検知しなくなった場合、前記照射部による紫外線の照射を停止させる、
請求項7に記載の除菌システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターの利用者が乗降するカゴ内を除菌する除菌システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベーターの利用者が乗降するカゴを除菌する技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の除菌装置は、紫外線除菌灯から紫外線を照射することで、エレベーターのカゴ内(エレベーターを操作する操作パネル)の除菌を行うことができる。前記除菌装置では、紫外線除菌灯への電力供給が手動で停止されない限り、常時紫外線の照射が行われる。
【0004】
ここで、紫外線は波長によっては人体に有害となる場合がある。このため、状況に応じて紫外線の照射を適宜制御できる技術が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3174620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、紫外線の照射を適宜制御することが可能な除菌システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、エレベーターの利用者が乗降するカゴ内に紫外線を照射可能な照射部と、前記エレベーターのカゴのドアの動きを検知する第一センサと、前記カゴの床部の動きを検知する第二センサと、前記第一センサ及び前記第二センサの検出結果に基づいて前記照射部による紫外線の照射を制御する制御部と、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記第一センサには、前記ドアの振動を検知する第一振動センサが含まれるものである。
【0010】
請求項3においては、前記第二センサには、前記床部の振動を検知する第二振動センサが含まれるものである。
【0011】
請求項4においては、前記第一振動センサは、前記ドアに設けられ、前記第二振動センサは、前記床部に設けられるものである。
【0012】
請求項5においては、前記制御部は、前記第一振動センサ及び前記第二振動センサのそれぞれが振動を検知しない状態が所定時間継続した場合、前記照射部から紫外線を照射させるものである。
【0013】
請求項6においては、前記制御部は、前記照射部による紫外線の照射中に前記第一振動センサ又は前記第二振動センサのいずれか一方のみが振動を検知した場合、前記照射部による紫外線の照射を停止させるものである。
【0014】
請求項7においては、前記制御部は、前記照射部による紫外線の照射中に前記第一振動センサ及び前記第二振動センサのそれぞれが振動を検知した場合、前記照射部による紫外線の照射を継続させるものである。
【0015】
請求項8においては、前記制御部は、前記照射部による紫外線の照射の継続中に前記第一振動センサ又は前記第二振動センサの少なくともいずれか一方が振動を検知しなくなった場合、前記照射部による紫外線の照射を停止させるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
請求項1においては、ドア及び床部の動きの検知結果に基づいてカゴ内を適宜除菌する(紫外線を照射する)ことができる。
【0018】
請求項2においては、ドアの振動を考慮して紫外線の照射を制御できる。
【0019】
請求項3においては、床部の振動を考慮して紫外線の照射を制御できる。
【0020】
請求項4においては、既存のエレベーターに容易に導入する(後付けする)ことができる。
【0021】
請求項5においては、利用者に誤って紫外線を照射してしまうのを防止できる。
【0022】
請求項6においては、利用者に誤って紫外線を照射してしまうのを効果的に防止できる。
【0023】
請求項7においては、紫外線を照射する機会を増やし、カゴ内を効果的に除菌することができる。
【0024】
請求項8においては、紫外線の照射の停止を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態に係る除菌システムが適用されたエレベーターのカゴを示す概略斜視図。
図2】エレベーター及び利用者の動作と紫外線の照射の制御内容との関係を示す説明図。
図3】照射処理を示すフローチャート。
図4】(a)紫外線の照射を開始する場合におけるエレベーターの動作の一例を示す説明図。(b)紫外線の照射を継続する場合におけるエレベーターの動作の一例を示す説明図。
図5】(a)エレベーターのカゴから利用者が退出した状態を示す概略斜視図。(b)除菌を行う様子を示す概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の説明においては、図中に記した矢印に従って上下方向及び左右方向をそれぞれ定義する。
【0027】
本発明の一実施形態に係る除菌システム20は、エレベーターのカゴ10内を除菌するためのものである。以下ではまず、図1を参照してエレベーターのカゴ10の構成について簡単に説明する。
【0028】
エレベーターのカゴ10は、エレベーターを利用する利用者U(図5(a)参照)が乗降するものである。カゴ10は、中空の略箱状に形成される。カゴ10は、巻上機(不図示)の動作により昇降することができる。カゴ10は、床部11、天井部12、側壁部13、ドア14及び操作部15を具備する。
【0029】
床部11は、カゴ10の床を成すものである。天井部12は、カゴ10の天井を成すものである。側壁部13は、カゴ10の側壁を成すものである。側壁部13には、手すり13aが取り付けられる。ドア14は、側壁部13に形成された出入口(開口部)に設けられる。操作部15は、利用者Uがエレベーターを操作するためのものである。操作部15には、利用者Uが行き先を選択するためのボタンやドア14を開閉するためのボタン等が設けられる。操作部15は、ドア14の近傍に配置される。
【0030】
次に、図1及び図2を参照して本実施形態に係る除菌システム20について説明する。
【0031】
図1に示すように、除菌システム20は、照射部21、第一振動センサ22、第二振動センサ23及び制御部24を具備する。
【0032】
照射部21は、紫外線UV(可視光線よりも波長が短いもの)を照射するためのものである。照射部21は、カゴ10の天井部12に設けられる。また照射部21は、紫外線UVの照射口(不図示)を下方へ向けて配置される。こうして照射部21は、紫外線UVをカゴ10内に照射可能に設けられ、床部11、側壁部13、手すり13a及び操作部15等のカゴ10内の種々の部材に対して上方から紫外線UVを照射することができる(図5(b)参照)。また本実施形態の照射部21は、紫外線UVの中で比較的波長が短い(例えば、100~280nm程度の)深紫外線を照射することができる。また照射部21は、通信機能を有し、外部の機器からの信号に基づいて紫外線UVの照射を開始したり、当該紫外線UVの照射の停止することができる。
【0033】
第一振動センサ22は、ドア14の動きを検知するためのものである。第一振動センサ22は、振動を検知できる振動センサにより構成される。第一振動センサ22は、ドア14の内側面に貼り付けられ、ドア14の開閉時やカゴ10の昇降時等に生じるドア14の振動を検知することができる。第一振動センサ22は、通信機能を有し、外部の機器へ検知結果を送信することができる。
【0034】
第二振動センサ23は、床部11の動きを検知するためのものである。第二振動センサ23は、振動を検知できる振動センサにより構成される。第二振動センサ23は、床部11の上面に貼り付けられ、床部11上を利用者Uが歩行した際やカゴ10の昇降時等に生じる床部11の振動を検知することができる。第二振動センサ23は、通信機能を有し、外部の機器へ検知結果を送信することができる。
【0035】
制御部24は、照射部21による紫外線UVの照射を制御するためのものである。制御部24は、適宜の場所(例えばエレベーターが設置される建物内)に設けられる。制御部24は、演算装置及び記憶装置等を具備し、当該記憶装置に記憶されたプログラムを演算装置で実行することで種々の処理を行うことができる。
【0036】
また制御部24は、通信機能を有し、照射部21、第一振動センサ22及び第二振動センサ23と信号のやり取りを行うことができる。具体的には制御部24は、照射部21へ所定の信号を送信することで、当該照射部21からの紫外線UVの照射の開始及び停止を制御することができる。また制御部24は、第一振動センサ22及び第二振動センサ23から所定の信号を受信することで、当該第一振動センサ22及び第二振動センサ23の検知結果を取得することができる。
【0037】
上述の如く構成される制御部24は、照射部21から紫外線UVを照射させることで、カゴ10内のウイルスや菌を除去する(除菌する)ことができる。しかしながら紫外線UVは、波長によっては人体に対して有害となる場合がある。そこで本実施形態の制御部24は、第一振動センサ22及び第二振動センサ23の検知結果に基づいてエレベーター及び利用者Uの動作を検知し、カゴ10内が無人の状況である(無人環境下である)と考えられる場合に紫外線UVを照射する(図5参照)。
【0038】
図2は、エレベーター及び利用者Uの動作(制御部24が検知する動作)と、ドア14及び床部11の振動と、紫外線UVの照射の制御内容との関係をまとめた表である。なお図2における『想定動作』の欄は、予め想定される(制御部24が検知する)エレベーター及び利用者Uの動作を示すものである。また『ドア(第一振動センサ)』及び『床部(第二振動センサ)』の欄は、制御部24が『想定動作』を検知する際の判断基準となる、ドア14及び床部11の振動の検知状態を示すものである。また『照射開始』の欄は、紫外線UVを照射していない状態で制御部24が『想定動作』を検知した場合に、紫外線UVの照射を開始するか否かを示すものである。また『照射継続』の欄は、紫外線UVの照射中に制御部24が『想定動作』を検知した場合に、当該紫外線UVの照射を継続して行うか否かを示すものである。
【0039】
図2の『想定動作』の欄に示すように、制御部24はエレベーター及び利用者Uの動作として、『ドア開閉』、『乗降』、『EV稼働』及び『停止』を検知する。以下これら動作と振動と紫外線UVの照射の制御内容との関係について説明する。
【0040】
『ドア開閉』は、ドア14の開閉動作を示すものである。『ドア開閉』には、ドア14が開き始めてから開き終わるまでの期間中の動作と、ドア14が閉じ始めてから閉じ終わるまでの期間中の動作と、が含まれる。
【0041】
このようなドア14の開閉動作時(『ドア開閉』)、利用者Uは当該ドア14の開閉が済むまで動かずに待機することが多いと考えられる。よってドア14が開閉する場合、ドア14が振動するのに対して床部11はほとんど振動しないと考えられる。また開閉動作によりドア14が開いた場合、その後に人流(カゴ10への利用者Uの出入り)が想定される。このため制御部24は、ドア14の開閉動作時に照射部21による紫外線UVの照射を禁止する。
【0042】
具体的には制御部24は、第一振動センサ22が振動を検知すると共に第二振動センサ23が振動を検知しない(非検知である)場合にドア14の開閉を検知する。この場合制御部24は照射部21による紫外線UVの照射を開始しない。また制御部24は、紫外線UVの照射中にドア14の開閉を検知した場合、当該紫外線UVの照射を停止させる。
【0043】
『乗降』は、利用者Uによるカゴ10への乗降動作を示すものである。『乗降』には、乗り場(カゴ10の外)で待機する利用者Uがカゴ10内に足を踏み入れてから静止するまでの期間中の動作と、カゴ10内の利用者Uが動き始めてから当該カゴ10の外へ出るまでの期間中の動作と、が含まれる。このような利用者Uの乗降時(『乗降』)、制御部24は照射部21による紫外線UVの照射を禁止する。
【0044】
具体的には、乗降時、利用者Uの歩行により床部11が振動するのに対してドア14は開いたままでほとんど振動しないと考えられる。そこで制御部24は、第一振動センサ22が非検知であると共に第二振動センサ23が振動を検知した場合に利用者Uの乗降を検知する。この場合制御部24は照射部21による紫外線UVの照射を開始しない。また制御部24は、紫外線UVの照射中に利用者Uの乗降を検知した場合、当該紫外線UVの照射を停止させる。
【0045】
『EV稼働』は、カゴ10の昇降動作を示すものである。『EV稼働』には、カゴ10が昇降を開始してから停止するまでの期間中の動作が含まれる。このようなカゴ10の昇降時(『EV稼働』)、制御部24は照射部21による紫外線UVの照射の開始は禁止するものの、既に紫外線UVの照射を開始している場合は(紫外線UVの照射中であれば)当該紫外線UVの照射を許可する。
【0046】
具体的には、カゴ10の昇降時、カゴ10全体が振動すると考えられる。そこで制御部24は、第一振動センサ22及び第二振動センサ23のそれぞれが振動を検知した場合に、カゴ10の昇降を検知する。仮にカゴ10の昇降を検知して制御部24が紫外線UVの照射の開始を照射部21へ指示した場合、紫外線UVの照射の準備中や紫外線UVを照射してから間もなくカゴ10の昇降が完了し、利用者Uがカゴ10に乗り込む可能性がある。このようにカゴ10の昇降時に紫外線UVの照射を開始したとしても、照射部21を無駄に動作させる可能性がある。このため、制御部24はカゴ10の昇降を検知した場合、紫外線UVの照射を開始しない。一方、紫外線UVの照射中であれば上述のような照射部21の無駄な動作は生じないため、制御部24は紫外線UVの照射中にカゴ10の昇降を検知した場合、当該紫外線UVの照射を継続させる。
【0047】
図2に示す『停止』は、エレベーターの停止状態を示すものである。具体的には『停止』は、ドア14の開閉動作やカゴ10の昇降動作が行われておらず、ドア14やカゴ10に動きがない状態を示すものである。このようにエレベーターが停止状態である場合(『停止』)、カゴ10が無人であると考えられるため、制御部24は、紫外線UVの照射を許可する。
【0048】
具体的には制御部24は、第一振動センサ22及び第二振動センサ23がそれぞれ非検知である場合(より詳細には所定時間非検知である場合)に、エレベーターの停止状態を検知する。この場合、制御部24は、照射部21による紫外線UVの照射を開始する。また、紫外線UVの照射中にエレベーターに動きがない場合(停止状態が続く場合)、紫外線UVの照射を継続させる。
【0049】
制御部24は、上述のようなエレベーター等の動作に応じた紫外線UVの照射を制御するための照射処理を実行することができる。以下、具体的に説明する。
【0050】
図3に示す照射処理は、定期的に実行される。例えば照射処理は、前回の照射処理が終了してから所定時間経過後に実行される。制御部24は、照射処理の実行を開始すると、ステップS110へ移行する。
【0051】
ステップS110において制御部24は、第二振動センサ23(床部11の振動)が非検知であるか否かを判定する。制御部24は、第二振動センサ23が非検知である場合(ステップS110:yes)、ステップS120へ移行する。一方制御部24は、第二振動センサ23が非検知でない場合(ステップS110:no)、再びステップS110へ移行する。
【0052】
ステップS120において制御部24は、第一振動センサ22(ドア14の振動)が非検知であるか否かを判定する。制御部24は、第一振動センサ22が非検知である場合(ステップS120:yes)、ステップS130へ移行する。一方制御部24は、第一振動センサ22が非検知でない場合(ステップS120:no)、ステップS110へ移行する。
【0053】
ステップS130において制御部24は、第一振動センサ22及び第二振動センサ23が非検知となった状態が所定時間継続しているか否かを判定する。このとき制御部24は、第一振動センサ22及び第二振動センサ23が直近で非検知の状態へ遷移してから経過した時間(以下、「非検知時間」と称する)と所定の閾値とを比較する。なお当該閾値には、エレベーターが停止していると考えられる程度に長い時間が設定される。例えば前記閾値には、カゴ10の昇降が終わってからドア14が開くまでの時間よりも長い時間が設定される。本実施形態の閾値には、10秒が設定される。なお上述した閾値を設定する基準は一例であり、任意に変更可能である。
【0054】
制御部24は、非検知時間が前記閾値以上である場合(ステップS130:yes)、ステップS140へ移行する。一方制御部24は、非検知時間が前記閾値未満である場合(ステップS130:no)、ステップS110へ移行する。こうして制御部24は、第一振動センサ22及び第二振動センサ23のそれぞれが、非検知の状態が所定時間継続するまでステップS110~S130を繰り返す。これによって制御部24は、エレベーターが停止していると考えられる場合(図2に示す『停止』)に限り、ステップS140の処理へ移行する。
【0055】
ステップS140において制御部24は、照射部21に信号を送信し、当該照射部21からの紫外線UVの照射を開始する。こうして制御部24は、エレベーターが停止していると考えられる場合に紫外線UVの照射を行って、カゴ10内を除菌する。ステップS140の処理が終了すると、制御部24はステップS150へ移行する。
【0056】
ステップS150において制御部24は、紫外線UVの照射時間(ステップS140の処理を実行してから経過した時間)が所定時間を経過したか否かを判定する。このとき制御部24は、紫外線UVの照射時間と所定の閾値とを比較する。なお当該閾値には、カゴ10内の除菌が完了したと考えられる程度に長い時間が設定される。例えば、紫外線UVの照射によって除去すべきウイルス等を除菌する(不活化する)のに必要な除菌時間が一般的に知られている場合、前記閾値は、この除菌時間に基づいて適宜の値が設定される。例えば前記除菌時間と同じかそれよりも長い時間が前記閾値に設定される。本実施形態の閾値には、3分が設定される。なお上述した閾値を設定する基準は一例であり、任意に変更可能である。制御部24は、紫外線UVの照射時間が前記閾値以上である場合(ステップS150:yes)、ステップS160の処理へ移行する。一方、制御部24は、紫外線UVの照射時間が前記閾値未満である場合(ステップS160:no)、ステップS170の処理へ移行する。
【0057】
ステップS160において制御部24は、照射部21に信号を送信し、当該照射部21からの紫外線UVの照射を停止させる。制御部24はステップS160の処理が終了すると、照射処理を終了する。こうして制御部24は、紫外線UVによる除菌が完了した場合に、紫外線UVの照射を停止して照射処理を終了する。
【0058】
ステップS170において制御部24は、第二振動センサ23(床部11の振動)が非検知であるか否かを判定する。制御部24は、第二振動センサ23が非検知である場合(ステップS170:yes)、ステップS180へ移行する。一方制御部24は、第二振動センサ23が非検知でない場合(ステップS170:no)、ステップS200へ移行する。
【0059】
ステップS180において制御部24は、第一振動センサ22(ドア14の振動)が非検知であるか否かを判定する。制御部24は、第一振動センサ22が非検知である場合(ステップS180:yes)、ステップS190へ移行する。一方制御部24は、第一振動センサ22が非検知でない場合(ステップS180:no)、ステップS210へ移行する。
【0060】
ステップS190において制御部24は、照射部21による紫外線UVの照射を継続させる。こうして制御部24は、紫外線UVの照射を開始してからドア14及び床部11が振動せずにエレベーターの停止状態が続いている場合(図2に示す『停止』)、紫外線UVの照射を継続させる。制御部24はステップS190の処理が終了すると、ステップS150へ移行する。
【0061】
ステップS170で第二振動センサ23が非検知でない場合(床部11が振動している場合)に移行するステップS200において制御部24は、第一振動センサ22(ドア14の振動)が非検知であるか否かを判定する。制御部24は、第一振動センサ22が非検知である場合(ステップS200:yes)にステップS210へ移行する。一方制御部24は、第一振動センサ22が非検知でない場合(ステップS200:no)、ステップS220へ移行する。
【0062】
ステップS170・S180・S200で第一振動センサ22及び第二振動センサ23のうち一方のセンサのみが非検知である場合に移行するステップS210において、制御部24は照射部21からの紫外線UVの照射を停止させる。こうして制御部24は、紫外線UVの照射中にドア14の開閉を検知した場合に(図2に示す『ドア開閉』、ステップS170:yes、ステップS180:no)、紫外線UVの照射を停止させる。また制御部24は、紫外線UVの照射中に利用者Uの動きを検知した場合(図2に示す『乗降』、ステップS170:no、ステップS200:yes)にも、紫外線UVの照射を停止させる。制御部24はステップS210の処理が終了すると、照射処理を終了する。
【0063】
ステップS170・S200で第一振動センサ22及び第二振動センサ23のそれぞれが振動を検知した場合に移行するステップS220において制御部24は、照射部21による紫外線UVの照射を継続させる。こうして制御部24は、紫外線UVの照射中にカゴ10の昇降を検知した場合(図2に示す『EV駆動』)、紫外線UVの照射を継続させる。制御部24はステップS220の処理が終了すると、ステップS230へ移行する。
【0064】
ステップS230において制御部24は、第一振動センサ22又は第二振動センサ23の少なくともいずれか一方が非検知であるか否かを判定する。制御部24は、第一振動センサ22又は第二振動センサ23の少なくともいずれか一方が非検知である場合(ステップS230:yes)、ステップS210へ移行して紫外線UVの照射を停止させる。こうして制御部24は、カゴ10の昇降が完了したことを検知して紫外線UVの照射を停止させる。一方制御部24は、第一振動センサ22及び第二振動センサ23のそれぞれが振動を検知した場合(ステップS230:no)、ステップS220へ移行して紫外線UVの照射を継続させる。こうして制御部24は、カゴ10の昇降が完了するまで紫外線UVの照射を継続させる。
【0065】
以下では、図4及び図5を参照し、照射処理の具体例について説明する。なお図4は、エレベーターを利用者Uが利用する場合におけるドア14及び床部11の振動と紫外線UVの照射状態との関係の一例を示すものである。図4では、エレベーター及び利用者Uの動作が左側から順に時系列に並んでいる。まず図4(a)について説明する。
【0066】
図4(a)は、利用者Uが所定の階で無人のカゴ10に乗り込んで別の階で降りる場合における、ドア14等の振動と紫外線UVの照射状態との関係の一例を示すものである。図4(a)の左端に示すように、ドア14が開いて利用者Uがカゴ10に乗り込むと(『ドア開』及び『乗降』)、第一振動センサ22及び第二振動センサ23はドア14及び床部11の振動を検知する。また利用者Uがカゴ10に乗り込んでからドア14が閉じてカゴ10が昇降すると(『ドア閉』及び『EV昇降』)、第一振動センサ22及び第二振動センサ23はドア14及び床部11の振動を検知する。
【0067】
このように、利用者Uがエレベーターに乗り込んでからカゴ10が昇降する間は第一振動センサ22又は第二振動センサ23の少なくともいずれか一方が振動を検知する。この場合、制御部24は紫外線UVの照射を許可しない(ステップS110・S120)。なお本具体例とは異なり、乗降時に利用者Uがカゴ10から降りて当該カゴ10が無人となった場合、第二振動センサ23は、ドア14が閉じられる際は非検知となる(図4の『ドア閉』に示す『検知(or非検知)』参照)。
【0068】
カゴ10の昇降が完了すると第一振動センサ22及び第二振動センサ23のそれぞれが非検知となるが、所定時間以内にドア14が開かれるため(『EV停止』、『ドア開』)、制御部24は、紫外線UVの照射を許可しない(ステップS130:No)。また、図4及び図5(a)に示すように、利用者Uがカゴ10から降りてドア14が閉まる際には(『乗降』、『ドア閉』)、第一振動センサ22や第二振動センサ23が振動を検知する。このため、制御部24は紫外線UVの照射を許可しない(ステップS110・S120)。
【0069】
ドア14が閉まって無人の状態となると、エレベーターはドア14の開閉やカゴ10の昇降を行わずに停止する(『停止』)。このような停止状態が所定時間継続すると(『停止継続』)、図5(b)に示すように、制御部24は紫外線UVの照射を許可する(ステップS130:yes、ステップS140)。これによって制御部24は、エレベーターが無人の状況であると考えられる場合に紫外線UVの照射を開始でき、利用者Uに誤って紫外線UVを照射するのを防止することができる。
【0070】
また紫外線UVの照射中にドア14が開かれると第一振動センサ22がドア14の振動を検知し(『ドア開』)、制御部24は紫外線UVの照射を停止させる(ステップ150:no、ステップS170:yes、ステップS180:no、ステップS210)。これによって制御部24は、利用者Uがカゴ10内に乗り込む前に紫外線UVの照射を停止でき、当該利用者Uに誤って紫外線UVを照射するのを効果的に防止できる。
【0071】
次に、図4(b)について説明する。図4(b)は、ある利用者Uがカゴ10から降りてから、別の階にいる他の利用者Uが無人のカゴ10を呼び出す場合のドア14等の振動と紫外線UVの照射状態との関係の一例を示している。
【0072】
図4(b)の左端に示すように、利用者Uがドア14を開けてカゴ10から降りると(『ドア開』、『乗降』)、当該ドア14は所定時間以内に閉じられる(『ドア閉』)。この際、第一振動センサ22や第二振動センサ23が振動を検知するため、制御部24は紫外線UVの照射を許可しない(ステップS110・S120)。
【0073】
利用者Uがカゴ10から降りて無人の状態が所定時間継続すると(『停止』、『停止継続』)、制御部24は紫外線UVの照射を許可する(ステップS130:yes、ステップS140)。
【0074】
紫外線UVの照射中にカゴ10が停止している階とは別の階から利用者Uがカゴ10を呼び出すと、カゴ10は無人の状態で昇降する(『EV昇降』)。この際、第一振動センサ22及び第二振動センサ23のそれぞれが振動を検知するため、制御部24は紫外線UVの照射を継続させる(ステップS150:no、ステップS170:no、ステップS180:no、ステップS220)。これによって制御部24は無人のカゴ10の昇降時にも紫外線UVを照射でき、カゴ10内の除菌を効果的に行うことができる。
【0075】
カゴ10の昇降が完了すると第一振動センサ22及び第二振動センサ23が非検知となり(『EV停止』)、制御部24は紫外線UVの照射を停止させる(ステップS230:yes、ステップS210)。
【0076】
以上の如く、本実施形態に係る除菌システム20は、エレベーターの利用者Uが乗降するカゴ10内に紫外線UVを照射可能な照射部21と、前記エレベーターのカゴ10のドア14の動きを検知する第一センサ(第一振動センサ22)と、前記カゴ10の床部11の動きを検知する第二センサ(第二振動センサ23)と、前記第一センサ及び前記第二センサの検出結果に基づいて前記照射部21による紫外線UVの照射を制御する制御部24と、を具備するものである。
【0077】
このように構成することにより、ドア14及び床部11の動きの検知結果に基づいてカゴ10内を適宜除菌する(紫外線UVを照射する)ことができる。例えばドア14及び床部11が振動しない状態で紫外線UVを照射させ(ステップS110~S140)、利用者Uに誤って紫外線UVを照射するのを防止できる。
【0078】
また、前記第一センサには、前記ドア14の振動を検知する第一振動センサ22が含まれるものである。
【0079】
このように構成することにより、ドア14の振動を考慮して、紫外線UVの照射を制御できる。
【0080】
また、前記第二センサには、前記床部11の振動を検知する第二振動センサ23が含まれるものである。
【0081】
このように構成することにより、床部11の振動を考慮して、紫外線UVの照射を制御できる。
【0082】
また、前記第一振動センサ22は、前記ドア14に設けられ、前記第二振動センサ23は、前記床部11に設けられるものである(図1参照)。
【0083】
このように、振動を検知するセンサ(第一振動センサ22及び第二振動センサ23)をドア14及び床部11に設けることで、エレベーターの運転を制御する制御システムと連携しなくてもドア14及び床部11の動きを検知できる。このため、既存のエレベーターに容易に導入する(後付けする)ことができる。
【0084】
また、前記制御部24は、前記第一振動センサ22及び前記第二振動センサ23のそれぞれが振動を検知しない状態が所定時間継続した場合(ステップS130:yes)、前記照射部21から紫外線UVを照射させるものである(ステップS140)。
【0085】
このように構成することにより、紫外線UVの照射を適切に行うことができる。
【0086】
また、前記制御部24は、前記照射部21による紫外線UVの照射中に前記第一振動センサ22又は前記第二振動センサ23のいずれか一方のみが振動を検知した場合、前記照射部21による紫外線UVの照射を停止させるものである(ステップS170~S210)。
【0087】
このように構成することにより、利用者Uがカゴ10内に入る前に紫外線UVの照射を停止できる。また万が一利用者Uがカゴ10内に閉じ込められていた場合でも、当該利用者Uの動きに起因する床部11の振動を第二振動センサ23が検知して、紫外線UVの照射を停止できる。これによって、利用者Uに誤って紫外線UVを照射してしまうのを効果的に防止できる。
【0088】
また、前記制御部24は、前記照射部21による紫外線UVの照射中に前記第一振動センサ22及び前記第二振動センサ23のそれぞれが振動を検知した場合、前記照射部21による紫外線UVの照射を継続させるものである(ステップS170:no、ステップS200:no、ステップS200)。
【0089】
このように構成することにより、カゴ10内を効果的に除菌することができる。
【0090】
また、前記制御部24は、前記照射部21による紫外線UVの照射の継続中に前記第一振動センサ22又は前記第二振動センサ23の少なくともいずれか一方が振動を検知しなくなった場合、前記照射部21による紫外線UVの照射を停止させるものである(ステップS230:yes、ステップS210)。
【0091】
このように構成することにより、カゴ10に利用者Uが乗り込む前に(カゴ10の昇降が完了した際に)紫外線UVの照射を停止でき、紫外線UVの照射の停止を適切に行うことができる。
【0092】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0093】
例えば照射部21は、深紫外線を照射するものとしたが、照射部21が照射する紫外線の種類は特に限定されるものではない。また照射部21は、天井部12に1つ設置されるものとしたが、照射部21の設置個数及び設置場所は特に限定されるものではなく、任意に変更可能である。例えば照射部21を複数個天井部12に設置してもよいし、照射部21を側壁部13に設置してもよい。
【0094】
また第一振動センサ22は、ドア14に設けられるものとしたが、第一振動センサ22の設置場所は特に限定されるものではなく、任意に変更可能である。また第一振動センサ22は、ドア14の振動を検知するものとしたが、第一振動センサ22はドア14の動きを検知するものであれば、必ずしもドア14の振動を検知する必要はない。例えば第一振動センサ22は、ドア14の加速度を検知してもよい。こうして第一振動センサ22がドア14の加速度を検知する場合、制御部24は、例えば加速度の向きに応じてドア14の開閉及びカゴ10の昇降を検知できる。具体的には制御部24は、第一振動センサ22が水平方向の加速度を検知した場合にドア14の開閉を検知できる。また制御部24は、第一振動センサ22が鉛直方向の加速度を検知した場合にカゴ10の昇降を検知できる。
【0095】
また第二振動センサ23は、床部11に設けられるものとしたが、第二振動センサ23の設置場所は特に限定されるものではなく、任意に変更可能である。また第二振動センサ23は、床部11の振動を検知するものとしたが、第二振動センサ23は床部11の動きを検知するものであれば、必ずしも床部11の振動を検知する必要はない。例えば第二振動センサ23は、床部11の加速度を検知してもよい。こうして第二振動センサ23が床部11の加速度を検知する場合、制御部24は、加速度の検知結果を適宜解析することで、乗降及びカゴ10の昇降を検知できる。
【0096】
また第一振動センサ22及び第二振動センサ23は、1つ設置されるものとしたが、第一振動センサ22及び第二振動センサ23の設置個数は特に限定されるものではなく、任意に変更可能である。
【0097】
また制御部24は、紫外線UVの照射中にカゴ10が昇降した場合に紫外線UVの照射を継続させるものとしたが(ステップS170:no、ステップS200:no、ステップS220)、これに限定されるものではなく、紫外線UVの照射を停止させてもよい。
【0098】
また除菌システム20では、第一振動センサ22及び第二振動センサ23に加えて、カゴ10内の利用者Uの存在を検知する人感センサを設置してもよい。この場合、照射処理では、第一振動センサ22及び第二振動センサ23の検知及び非検知の判定(ステップS110~S130、S170・S180・S200・S230)に加えて、人感センサで利用者Uの存在を検知しているか否かの判定も行う。そして、人感センサで利用者Uを検知した場合は紫外線UVの照射を禁止する。これによって利用者Uに誤って紫外線UVを照射するのを効果的に防止できる。
【0099】
また除菌システム20では、第一振動センサ22及び第二振動センサ23に加えて、ドア14の開閉を検知する開閉センサを設置してもよい。この場合、照射処理では、第一振動センサ22及び第二振動センサ23の検知及び非検知の判定(ステップS110~S130、S170・S180・S200・S230)に加えて、開閉センサでドア14の開閉状態も判定する。例えば開閉センサでドア14が閉じていることを検知した場合に限り、紫外線UVの照射を許可する。これによって紫外線UVがカゴ10の外に漏れるのを防止できる。
【0100】
また制御部24は、エレベーターの運転を制御する制御システムと連携し、当該制御システムから取得した種々の情報に応じてドア14及び床部11の動きを検知してもよい。例えば制御部24は、前記制御システムがカゴ10を昇降させる際に所定の信号を受信することで、カゴ10の昇降(ドア14及び床部11の振動)を検知できる。
【符号の説明】
【0101】
10 カゴ
14 ドア
20 除菌システム
21 照射部
22 第一振動センサ
23 第二振動センサ
24 制御部
U 利用者
UV 紫外線
図1
図2
図3
図4
図5