(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045043
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】車両用制御装置および車両
(51)【国際特許分類】
F16H 61/02 20060101AFI20230327BHJP
F16H 59/60 20060101ALI20230327BHJP
F16H 59/40 20060101ALI20230327BHJP
B60W 40/04 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
F16H61/02
F16H59/60
F16H59/40
B60W40/04
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153222
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 正宗
【テーマコード(参考)】
3D241
3J552
【Fターム(参考)】
3D241BA24
3D241BB06
3D241CE01
3D241CE02
3D241CE03
3D241CE05
3D241DA13Z
3D241DA23Z
3D241DB02Z
3D241DC59Z
3J552MA01
3J552NA01
3J552PA32
3J552PA51
3J552SB02
3J552TB02
3J552VA37W
3J552VA74W
3J552VB01W
3J552VD02W
3J552VE07W
3J552VE09W
(57)【要約】 (修正有)
【課題】車両の加速の遅れを防止することが可能な車両用制御装置および車両を提供する。
【解決手段】車両用制御装置10は、車両1の走行方向前方に設置された信号機に表示される予定の信号情報を、信号情報活用運転支援システム3から取得する取得部11と、取得された信号情報に基づいて、車両の加速が可能であるか否かについて判定する判定部12と、車両の加速が可能である場合、当該加速に対応するギヤ段を選択するように変速機20を制御する制御部13と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行方向前方に設置された信号機に表示される予定の信号情報を、信号情報活用運転支援システムから取得する取得部と、
取得された前記信号情報に基づいて、前記車両の加速が可能であるか否かについて判定する判定部と、
前記車両の加速が可能である場合、当該加速に対応するギヤ段を選択するように変速機を制御する制御部と、
を備える、車両用制御装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記車両との間の距離が所定の第1閾値以内に設置された前記信号機に表示される予定の信号情報を取得する、請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記判定部は、さらに、前記車両と当該車両の前方を走行する先行車両との間の車車間距離が所定の第2閾値以上である場合、前記車両の加速が可能であるか否かについて判定する、請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記判定部は、さらに、前記車両の車速およびアクセル開度に基づいて、前記車両の加速が可能であるか否かについて判定する、請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用制御装置を備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用制御装置および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を加速するためにアクセルを踏むと、現ギヤ段から現ギヤ段よりも低いギヤ段にシフトダウンが自動で行われることにより、ドライバビリティを向上させることが可能となる車両用制御装置が知られている。
【0003】
例えば、車両用制御装置としては、シフトレバーにおいてドライブレンジが選択されているとき、アクセル開度および車速に応じた目標ギヤ段が設定されたシフトマップに基づいて、自動変速機のギヤ段を制御する自動変速モードを実行する変速制御部を備えている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の発明では、アクセルを踏んでからシフトダウンが行われるため、車両の加速の遅れを防止することができないという問題がある。
【0006】
本開示の目的は、車両の加速の遅れを防止することが可能な車両用制御装置および車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本開示における車両用制御装置は、
車両の走行方向前方に設置された信号機に表示される予定の信号情報を、信号情報活用運転支援システムから取得する取得部と、
取得された前記信号情報に基づいて、前記車両の加速が可能であるか否かについて判定する判定部と、
前記車両の加速が可能である場合、当該加速に対応するギヤ段を選択するように変速機を制御する制御部と、
を備える。
【0008】
本開示における車両は、上記車両用制御装置を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、車両の加速の遅れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の実施の形態に係る車両用制御装置の構成の一例を示す構成ブロック図である。
【
図2】
図2は、車両および信号機のそれぞれの位置関係を示す図である。
【
図3】
図3は、シフトマップの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本実施の形態に係る車両用制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、シフトダウン領域を含むシフトマップの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本開示の実施の形態に係る車両用制御装置10の構成の一例を示す構成ブロック図である。車両用制御装置10は、車両1に搭載され、車両1の各種制御を行うものである。車両用制御装置10は車載機とも呼ばれる。
【0012】
車両用制御装置10(車載機)は、例えば電子制御ユニット100(Electronic Control Unit:ECU)により構成される。ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、入力装置および出力装置を有している。CPUは、ROMに格納されたプログラムをRAMに展開して後述する各機能を実行する。車両用制御装置10は、取得部11、判定部12、変速制御部13および算出部14としての各機能とを有する。
【0013】
道路には光ビーコン3が設置されている。光ビーコン3は、信号情報活用運転支援システム(Traffic Signal Prediction Systems:TSPS)からの信号情報を車両1に提供する。信号情報を表示する車両用信号機2(以下「信号機」という。
図2を参照)には、例えば、左から青色、黄色、赤色のそれぞれの光源が配列された横型灯器がある。青色の光源が点灯する青色信号は、道路を走行する車両1に対して進行許可を示す。また、赤色の光源が点灯する赤色信号は、道路を走行する車両1に対して停止指示を示す。
【0014】
取得部11は、TSPSからの信号情報を取得する。これにより、取得部11は車両1の走行方向前方に設置された信号機2に表示される予定の信号情報を取得することが可能となる。また、取得部11は、アクセル開度センサ(不図示)からアクセルペダルの踏み込み量を取得する。また、取得部11は、車速センサ(不図示)から車速を取得する。また、取得部11は、車載カメラ(不図示)から周辺情報(例えば、車両の前方画像)を取得する。
【0015】
図2は、車両1および信号機2のそれぞれの位置関係を示す図である。
図2の横軸に時間、縦軸に車速を表す。算出部14は、車両1の前方画像を画像処理等することにより、車両1と信号機2との間の車両信号機間距離を算出する。なお、信号機2に向けてレーザービームを照射してからその反射光を受けるまでの時間に基づいて車両信号機間距離を計るためのレーザー距離計を車両1に搭載してもよい。
【0016】
車両1の走行中において、車両1の走行方向前方の信号機2の信号情報が赤色信号である場合、アクセルペダルを戻してアクセル開度を減少させることで、車両1にエンジンブレーキが作用する。これにより、車両1が減速する。車両1が信号機2の位置を通過するまでの間に、信号機2の信号情報が赤色信号から青色信号に変わる場合、アクセルペダルを踏み込んでアクセル開度を増大させることで、車両1を加速させる。このとき、より加速させるために、現ギヤ段よりも低いギヤ段にシフトダウンが行われる。ここで、信号機2の信号情報が赤色信号から青色信号に変わるタイミングでアクセルペダルを踏み込んでから行われるシフトダウンを「通常のシフトダウン」という。
【0017】
図2に通常のシフトダウンが行われた場合の車速を破線で示すように、通常のシフトダウンでは、アクセルペダルを踏み込んでからシフトダウンが行われるため、車両1の加速が遅れる。その結果、車速が目標速度に到達するまでに時間がかかる。
【0018】
本実施の形態では、判定部12は、取得部11により取得された信号情報に基づいて、車両1の加速が可能であるか否かについて判定する。信号情報は、例えば、信号情報の取得時(現時点)から所定時間T1(
図2を参照)後に信号機2が表示する信号が赤色信号から青色信号に変わることを示す情報である。具体的には、判定部12は、所定時間T1内に車両1が信号機2に達しない場合(信号機2の手前で信号機2が赤色信号から青色信号に変わる場合)、車両1の加速が可能であると判定し、所定時間T1内に車両1が信号機2に達する場合(信号機2の手前で信号機2が赤色信号から青色信号に変わらない場合)、車両1の加速が可能でないと判定する。所定時間T1内に車両1が信号機2に達するか否かは、車両1から信号機2までの距離である車両信号機間距離と車両1の車速とに基づいて判定することができる。つまり、判定部12は、信号情報、車速および車両信号機間距離の3つのパラメータに基づいて、車両1の加速が可能であるか否かについて判定する。
【0019】
変速制御部13は、車両1の加速が可能である場合、当該加速に対応するギヤ段を選択するように自動変速機20を制御する。
【0020】
変速制御部13は、具体的にはシフトマップに基づいて、自動変速機20のギヤ段を自動制御する変速制御部を有する。シフトマップは、アクセル開度と車速とにより決定されるギヤ段が設定されたものであり、車両用制御装置10の記憶部に記憶される。
図3は、シフトマップの一例を示す図である。
図3に、複数のダウンシフト線の中から代表して4速から3速のダウンシフト線を示す。例えば、変速制御部13は、車両1を加速する場合、かつ、車両1の運転状態がアクセル開度α、車速V1である場合(
図3に示す位置P1)、自動変速機20のギヤ段を4速から3速にシフトダウンする制御を実行する。
【0021】
次に、本開示の実施の形態に係る車両用制御装置10の動作の一例について
図4を参照して説明する。
図4は、本開示の実施の形態に係る車両用制御装置10の動作の一例を示すフローチャートである。本フローは、例えば、車両1のエンジンスタートスイッチのオンにより開始される。以下の説明では、取得部11,判定部12、変速制御部13および算出部14のそれぞれの機能をECU100が行うものとして説明する。
【0022】
先ず、ステップS100において、ECU100は、TSPSから信号情報を取得する。
【0023】
次に、ステップS110において、ECU100は、アクセル開度および車速を取得する。
【0024】
次に、ステップS120において、ECU100は、車両1の前方画像を取得する。
【0025】
次に、ステップS130において、ECU100は、車両1の前方画像に基づいて、車両1と信号機2との間の車両信号機間距離を算出する。
【0026】
次に、ステップS140において、ECU100は、信号情報、車速および車両信号機間距離の3つのパラメータに基づいて、車両1の加速が可能であるか否かについて判定する。車両1の加速が可能である場合(ステップS140:YES)、処理はステップS150に遷移する。車両1の加速が可能でない場合(ステップS140:NO)、
図4に示すフローは終了する。
【0027】
ステップS150において、ECU100は、加速に対応するギヤ段を選択する制御を実行する。具体的には、ECU100は、車速およびアクセル開度に基づいてシフトマップを参照して、ギヤ段を選択するように自動変速機20を制御する。
【0028】
上記の実施の形態に係る車両用制御装置10によれば、車両1の走行方向前方に設置された信号機2に表示される予定の信号情報を、信号情報活用運転支援システムから取得する取得部11と、取得された信号情報に基づいて、車両1の加速が可能であるか否かについて判定する判定部12と、車両1の加速が可能である場合、当該加速に対応するギヤ段を選択するように自動変速機20を制御する変速制御部13と、を備える。
【0029】
上記構成により、信号機2の信号情報が赤色信号から青色信号に変わるタイミングよりも早く、事前にシフトダウンが行われるため、車両1の加速の遅れを防止することが可能となる。
図2は、事前のシフトダウンを行った場合の車速と、信号機2の信号情報が赤色信号から青色信号に変わるタイミングで通常のシフトダウンを行った場合の車速とを比較して示す図である。
図2に実線で事前のシフトダウンを行った場合の車速を示し、破線で通常のシフトダウンを行った場合の車速を示す。
図2に示すように、事前のシフトダウンを行った場合に車両1が目標車速に到達するtpの方が、通常のシフトダウンを行った場合に車両1が目標車速に到達するtnよりも早い。
【0030】
<変形例1>
次に、本実施の形態に係る車両用制御装置10の変形例について説明する。なお、変形例の説明においては、実施の形態と異なる構成について主に説明し、同じ構成についてその説明を省略する。
【0031】
上記実施の形態では、取得部11は、車両1の進行方向前方に設置された信号機2に表示される予定の信号情報を取得する。これに対して、変形例1では、取得部11は、車両1との間の距離が第1閾値以内に設置された信号機2に表示される予定の信号情報を取得する。なお、第1閾値は、安全かつ円滑な交通を確保する観点から、実験やシミュレーションにより設定することが可能となる。上記の構成により、安全かつ円滑な交通を確保することが可能となる。
【0032】
<変形例2>
次に、変形例2について説明する。安全な交通を確保するためには、車両1と車両1の前方を走行する先行車両(不図示)との車車間距離を十分に確保する必要がある。そこで、変形例2では、判定部12は、上記3つのパラメータに基づいて、車両1の加速が可能であると判定される場合であっても、車両1と先行車両との間の車車間距離が所定の第2閾値未満である場合、車両1の加速が可能であるか否かの判定をしない。換言すれば、判定部12は、車両1と先行車両との間の車車間距離が所定の第2閾値以上である場合、車両1の加速が可能であるか否かの判定をする。なお、第2閾値は、安全かつ円滑な交通を確保する観点から、実験やシミュレーションにより設定することが可能となる。
【0033】
この場合、算出部14は、車両1の前方画像を画像処理等することにより、車両1と車両1の前方を走行する先行車両との間の車車間距離を算出する。なお、先行車両に向けてレーザービームを照射してからその反射光を受けるまでの時間に基づいて車車間距離を計るためのレーザー距離計を車両1に搭載してもよい。
【0034】
<変形例3>
次に、変形例3について説明する。上記実施の形態においては、判定部12は、信号情報、車速、および、車両信号機間距離の3つのパラメータに基づいて、車両1の加速が可能であるか否かについて判定する(
図4に示すステップS140を参照)。
【0035】
これに対し、変形例3では、判定部12は、車両1の車速およびアクセル開度に基づいて、シフトダウン領域であるか否かを判定する。そして、判定部12は、シフトダウン領域である場合、上記の3つのパラメータに基づいて、車両1の加速が可能であるか否かについて判定する。換言すれば、判定部12は、シフトダウン領域でない場合、上記の3つのパラメータに基づいて、車両1の加速が可能であるか否かについて判定しない。
【0036】
図5は、シフトダウン領域を含むシフトマップの一例を示す図である。
図5にシフトダウン領域をハッチングで描かれた領域で示す。車速およびアクセル開度により定められた位置(
図5に示す位置P2)がシフトダウン領域ではない場合、判定部12は、上記の3つのパラメータに基づいて、車両1の加速が可能であるか否かについて判定しない。シフトダウン領域でない領域(非シフトダウン領域)を設けることにより、ドライバビリティを悪化させるようなシフトダウンを防止することが可能となる。
【0037】
その他、上記実施の形態は、何れも本開示の実施をするにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本開示はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本開示は、車両の加速の遅れを防止することが要求される車両用制御装置を搭載する車両に好適に利用される。
【符号の説明】
【0039】
1 車両
2 信号機
3 光ビーコン
10 車両用制御装置
11 取得部
12 判定部
13 変速制御部
14 算出部
20 自動変速機