(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045235
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】内装構造および内装工法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/64 20060101AFI20230327BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20230327BHJP
E04B 9/00 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
E04B1/64 E
E04B1/76 400L
E04B1/76 500Z
E04B9/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153517
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒木 洋
(72)【発明者】
【氏名】工藤 隆一
(72)【発明者】
【氏名】本間 瑞基
(72)【発明者】
【氏名】下町 浩二
(72)【発明者】
【氏名】中垣 康平
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DB01
2E001DB05
2E001DD01
2E001FA15
2E001GA24
2E001GA82
2E001HB04
2E001HD02
2E001HD09
2E001HF03
2E001HF11
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、屋内空間と屋外空間の間の隠蔽部の結露を抑制することが可能な内装構造および内装工法を提供すること。
【解決手段】内装構造(10)は、屋内空間(21)と屋外空間の間の隠蔽部(22)の結露を抑制するためのものである。内装構造(10)は、表面が屋内空間(21)に面する内装材(2)と、内装材(2)の裏面側に重ね合わされる断熱材(3)と、断熱材(3)上に位置する下地材(4)と、内装材(2)、断熱材(3)、および下地材(4)を貫通する金属製ビス(5)とを備える。断熱材(3)は、透湿抵抗が0.0069[(m
2・s・Pa)/ng]以上である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内空間と屋外空間の間の隠蔽部の結露を抑制するための内装構造であって、
表面が前記屋内空間に面する内装材と、
前記内装材の裏面側に重ね合わされる断熱材と、
前記断熱材上に位置する下地材と、
前記内装材、前記断熱材、および前記下地材を貫通する金属製ビスとを備え、
前記断熱材は、透湿抵抗が0.0069[(m2・s・Pa)/ng]以上である、内装構造。
【請求項2】
前記断熱材は、熱抵抗が1.0m2K/Wである、請求項1に記載の内装構造。
【請求項3】
前記断熱材は、ポレスチレンフォーム、フェノールフォームから選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載の内装構造。
【請求項4】
屋内空間と屋外空間の間の隠蔽部の結露を抑制するための内装構造であって、
表面が前記屋内空間に面する内装材と、
前記内装材の裏面側に重ね合わされる断熱材と、
前記断熱材上に位置する下地材と、
前記内装材、前記断熱材、および前記下地材を貫通する金属製ビスと、
前記金属製ビスが前記下地材から突出する突出部分を被覆する他の断熱材とを備える、内装構造。
【請求項5】
前記断熱材と前記下地材との間には、防湿シートをさらに備える、請求項1~4のいずれかに記載の内装構造。
【請求項6】
屋内空間と屋外空間の間の隠蔽部の結露を抑制するための内装構造を選択する内装工法において、
表面が前記屋内空間に面する内装材と、前記内装材の裏面側に重ね合わされる断熱材と、前記断熱材上に位置する下地材と、前記内装材、前記断熱材、および前記下地材を貫通する金属製ビスとを備え、前記断熱材は、透湿抵抗が0.0069[(m2・s・Pa)/ng]以上である第1内装構造と、
前記第1内装構造に加えて、前記断熱材と前記下地材との間に、防湿シートを取り付けた第2内装構造と、
前記第2内装構造に加えて、前記金属製ビスが前記下地材から突出する突出部分を第2断熱材で被覆した第3内装構造とを計画しておいて、
前記屋内空間の設定温度が20℃以上25℃未満である場合には、前記第1内装構造を選択し、
前記屋内空間の設定温度が15℃以上20℃未満である場合には、前記第2内装構造を選択し、
前記屋内空間の設定温度が10℃以上15℃未満である場合には、前記第3内装構造を選択する、内装工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、屋内空間と屋外空間の間の隠蔽部の結露を抑制するための内装構造および内装工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物の壁材または天井材などの内装材の結露対策として、たとえば断熱パネルが提案されている。
【0003】
特開平8-246609号公報(特許文献1)には、折半屋根の上方に耐火材、断熱材、および防水層を屋外側に向かって順番に積層し、それらをビスで貫通して固定した屋根構造が開示されている。この屋根構造は、断熱性、防熱性および耐火性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の屋根構造は、屋内空間と屋外空間の温度差で起こる結露に対しては不十分である。また、折半屋根の上方に複数の部材を積層させる必要があるため、構造が大がかりである。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、簡易な構成で、屋内空間と屋外空間の間の隠蔽部の結露を抑制することが可能な内装構造および内装工法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある局面による内装構造は、屋内空間と屋外空間の間の隠蔽部の結露を抑制するための内装構造であって、表面が屋内空間に面する内装材と、内装材の裏面側に重ね合わされる断熱材と、断熱材上に位置する下地材と、内装材、断熱材、および下地材を貫通する金属製ビスとを備え、断熱材は、透湿抵抗が0.0069[(m2・s・Pa)/ng]以上である。
【0008】
好ましくは、断熱材は、熱抵抗が1.0m2K/W程度である。
【0009】
好ましくは、断熱材は、ポレスチレンフォーム、フェノールフォームから選ばれる少なくとも1種である。
【0010】
本発明の他の局面による内装構造は、屋内空間と屋外空間の間の隠蔽部の結露を抑制するための内装構造であって、表面が屋内空間に面する内装材と、内装材の裏面側に重ね合わされる断熱材と、断熱材上に位置する下地材と、内装材、断熱材、および下地材を貫通する金属製ビスと、金属製ビスが下地材から突出する突出部分を被覆する他の断熱材とを備える。
【0011】
好ましくは、断熱材と下地材との間には、防湿シートをさらに備える。
【0012】
本発明の他の局面による内装工法は、屋内空間と屋外空間の間の隠蔽部の結露を抑制するための内装構造を選択する内装工法において、表面が屋内空間に面する内装材と、内装材の裏面側に重ね合わされる断熱材と、断熱材上に位置する下地材と、内装材、断熱材、および下地材を貫通する金属製ビスとを備え、断熱材は、透湿抵抗が0.0069[(m2・s・Pa)/ng]以上である第1内装構造と、第1内装構造に加えて、断熱材と下地材との間に、防湿シートを取り付けた第2内装構造と、第2内装構造に加えて、金属製ビスが下地材から突出する突出部分を第2断熱材で被覆した第3内装構造とを計画しておいて、屋内空間の設定温度が20℃以上25℃未満である場合には、第1内装構造を選択し、屋内空間の設定温度が15℃以上20℃未満である場合には、第2内装構造を選択し、屋内空間の設定温度が10℃以上15℃未満である場合には、第3内装構造を選択する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の内装構造および内装工法によれば、簡易な構成で、屋内空間と屋外空間の間の隠蔽部の結露を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施の形態1に係る内装構造を備える建物を模式的に示す図であり、(A)は縦断面図であり、(B)は
図1(A)の矢印IIから見た底面図である。
【
図2】本実施の形態1に係る内装構造を天井裏空間側から見た斜視図である。
【
図3】本実施の形態1に係る内装構造の一部を概略的に示す断面図である。
【
図4】本実施の形態2に係る内装構造の一部を概略的に示す断面図である。
【
図5】本実施の形態3に係る内装構造の一部を概略的に示す断面図である。
【
図6】本実施の形態3に係る内装構造の一部を概略的に示す図であり、
図2に示す下地材の長手方向に沿った断面図である。
【
図7】(A)は
図6のVIIa線に沿う端面図であり、(B)は
図6のVIIb線に沿う端面図である。
【
図8】一般的な建物を模式的に示す模式断面図である。
【
図9】
図8の一部分を拡大して示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0016】
はじめに、本実施の形態に係る内装構造の説明に先立ち、一般的な工場、倉庫、仮設施設、研究所などの非住宅などにおいて、夏期に発生する結露について、
図8,9を参照しながら簡単に説明する。
【0017】
図8を参照して、建物100は、折半屋根の屋根材101が外壁102により支持されている。これら屋根材101および外壁102は屋外空間120に面している。屋根材101の下方には天井材112が設けられ、屋根材101と天井材112の間に天井裏空間122が形成される。外壁102の屋内空間121側には内壁113が設けられ、外壁102と内壁113との間には壁裏空間123が形成される。この天井裏空間122および天井裏空間122は、「隠蔽部」ともいう。天井材112および内壁113は、一般的な軽鉄下地工法で取り付けられる。軽鉄下地工法は、一般的な軽鉄下地材に対して、たとえば石膏ボートなどの内装材をビスで固定する方式である。
【0018】
このような建物100において、外気が高温多湿となる夏期では、屋内空間121で冷房が行われる。天井材112および内壁113には、結露防止のために断熱材が用いられている。断熱材の性能が低い場合、天井裏空間122の温度が、露点温度以下に低下し、天井材112の天井裏空間122側に結露C1が発生する。さらに、壁裏空間123の温度も、露点温度以下に低下し、内壁113の壁裏空間123側に結露C2が発生する。
【0019】
このような結露C1,C2の影響によって、天井材112および内壁113を構成する内装材にカビが発生する。夏期において、屋内空間121の設定温度が、通常の設定温度(たとえば25℃程度)よりも低い温度の建物においては、結露水によって内装材にカビが発生するため、隠蔽部でのカビ対策が必要である。さらに、内装材にカビが発生していると、内装材を軽鉄下地材に固定するビスにまで錆が発生してしまうことを、本願発明者鋭意研究の結果、見出した。
【0020】
具体的には、
図9を参照して、たとえば石膏ボードなどの内装材102を軽鉄下地材104に固定する場合には、金属製ビス105が用いられる。金属製ビス105は、内装材102と下地材104を貫通する貫通部105aと、下地材104から天井裏空間122に突出する突出部105bとを含む。本願発明者は、特にビス105の貫通部105aで錆が発生していることに着目し、ビス部分に錆が発生する原因を考察した。
【0021】
発明者は、鋭意研究の結果、ビス105の貫通部105aに錆が発生する原因として、以下の3つの原因を考え出した。第1に、矢印F1で示すように、ビス105の突出部105bに結露C3が発生し、結露水となって内装材102の貫通孔から内装材102に含浸する(第1の原因:ビスの結露)。第2に、矢印F2で示すように、天井裏空間122の湿気が内装材102に透湿し、ビス105の貫通部105aで結露C4が発生する(第2の原因:透湿による内装材の結露)。第3に、矢印F3で示すように、内装材102の天井裏空間122側の表面で結露C5が発生し、結露水が内装材102に含浸してビス105の貫通部105aに到達する(第3の原因:内装材の表面の結露)。
【0022】
このような3つの原因で発生するビス105の錆を改善するべく、本実施の形態では、内装材と下地材の間に断熱材を配置させ、さらに断熱材の透湿性能としての透湿抵抗に着目することで、ビスの錆を抑制することとしている。以下に、このような内装構造10について、詳細に説明する。
【0023】
<概要について>
図1(A)および
図1(B)を参照して、本実施の形態に係る天井構造10が設けられる建物1の概要について説明する。本実施の形態において、建物1は、屋内空間21の温度を一定の温度に設定する施設、たとえば一般的な工場、倉庫、仮設施設、研究所などの非住宅などである。
【0024】
建物1は、折板状の屋根材11と、対向し合う外壁12と、屋根材11を支持する複数の梁17とを含む。梁17は、いわゆる大梁に相当するH型であるとするが、大梁に直交する小梁であってもよい。複数の梁17は、第1の方向(
図2の矢印A1で示す方向)に延在し、第1の方向に直交する第2の方向(
図1,2の矢印A2で示す方向)にそれぞれが間隔を置いて配置されている。
【0025】
本実施の形態では、これらの梁17を利用して、天井構造10が配置されている。以下の説明において、天井構造10よりも上方位置の小空間(屋根材11と天井構造10との間の空間)を「天井裏空間22」という。また、天井構造10よりも下方位置の大空間(天井構造10と床16との間の空間)を、「屋内空間21」という。なお、下述する天井構造10は、1階建ての建物だけではなく、複数階建ての建物に用いられてもよい。また、外壁12の屋内空間21には、内壁構造30が配置されている。内壁構造30と外壁12との間の空間を「壁裏空間23」という。なお、天井構造10と内壁構造30とを総じて「内装構造」という。以下の説明では、天井構造10について説明するが、方向の違い、使用する部材の違いはあるものの、内壁構造30についても天井構造10と略同様の構成が適用される。
【0026】
図2をさらに参照して、本実施の形態に係る天井構造10の説明に先立ち、天井構造10を支持する天井下地材について説明する。
【0027】
本実施の形態では、天井構造10は、天井下地材に取り付けられている。天井下地材は、所定方向に延在し、互いに間隔をあけて配置された複数の第1棒状部材70と、複数の第2棒状部材4とを含む。複数の第2棒状部材4は、たとえば、第1棒状部材70を介して梁17に吊下げ連結されている。複数の第1棒状部材70は、たとえば、梁17と同じ第1の方向に延在し、第1の方向に直交する第2の方向に間隔をあけて配置されている。この場合、第2棒状部材4は、第2の方向に延在し、第1の方向に間隔をあけて配置されている。
【0028】
図2に示されるように、第1棒状部材70は、いわゆる野縁受けであり、第1の方向から見て横向きU字状(逆コの字状)に形成されている長尺状の部材である。第1棒状部材70は、たとえば、金属材料により形成されている。第1棒状部材70は、梁17のフランジに固定された吊ボルト71により吊下げられたハンガー72によって支持されている。なお、第1棒状部材70は、長尺状の部材であれば断面の形状は問わず、たとえば、中実の矩形状や円形状などを含む。
【0029】
第2棒状部材4は、いわゆる野縁であり、第2の方向から見てU字状(上向きコの字状)に形成されている長尺状の部材である。第2棒状部材4は、たとえば、金属材料により形成されている。第2棒状部材4は、たとえば軽鉄下地材(LGS)などであることが好ましい。第2棒状部材4は、第1棒状部材70に吊下げられたクリップ73(
図7(A)において破線で示す)によって支持されている。なお、以下の説明において、第2棒状部材4を単に「下地材」という。
【0030】
なお、本実施の形態では、下地材4は、クリップ73を介して第1棒状部材70から吊り下げられるとしたが、下地材4は、第1棒状部材70に直接取り付けられて、第1棒状部材70から吊り下げられていてもよい。また、第1棒状部材70が設けられていない場合、下地材4は、梁17などに直接取り付けられていてもよい。つまり、上述した天井構造10は、本実施の形態の一例である。
【0031】
<天井構造(内装構造)について>
次に、本実施の形態に係る天井構造10について説明する。
図3を参照して、天井構造10は、表面が屋内空間21に面する内装材2と、内装材2の裏面側に重ね合わされる断熱材3と、断熱材3上に位置する下地材4と、それらを貫通する金属製ビス5とを備える。
【0032】
内装材2は、たとえば天井材であり、たとえば仕上げ材、化粧材なども含む。内装材2は面材であり、表面(
図3では下面)が屋内空間21に面しており、裏面(
図3では上面)が断熱材3に面している。内装材2は、複数の下地材4に跨って貼り付けられている。具体的には、
図1(B)に示すように、内装材2は天井一面に貼り付けられていることが好ましい。
【0033】
断熱材3は、防湿性に優れた発泡断熱材を用いることが好ましく、たとえばポレスチレンフォーム、フェノールフォームなどである。断熱材3は、透湿抵抗が0.0069[(m2・s・Pa)/ng]以上であることが好ましい。透湿抵抗が0.0069[(m2・s・Pa)/ng]以上であれば、夏期に想定される隠蔽部の温湿度環境において、断熱材3と内装材2の界面部での結露を抑制することができる。
【0034】
断熱材3は、熱抵抗が1.0m2K/W程度であり、0.8m2K/W以上1.2m2K/W以下であることが好ましい。熱抵抗が0.8m2K/W以上1.2m2K/W以下であれば、隠蔽部の結露を抑制することができる。断熱材3の厚みは、30mm以下が好ましい。30mm以下であれば、隠蔽部の結露を抑制することができる。また、厚さ30mmの断熱材は、市場で多く流通しており、入手しやすいという利点がある。さらに、30mm以下であれば、屋内空間21が狭くなることもない。なお、断熱材の透湿抵抗は、透湿比抵抗と厚さを掛けて算出されるものである。断熱材3は、たとえば平面視矩形形状であり、複数枚が組み合わされて、内装材2全面に重ね合わされること好ましいが、長尺状に形成されて下地材4と重なる部分だけに設けられてもよい。
【0035】
金属製ビス5は、鋼製であることが好ましいが、たとえばステンレス、黄銅、アルミニウム、マグネシウムなどの金属製であればよい。ビス5は、頭部51と軸部52とを含む。頭部51には、「+」または「-」形状の溝部が形成されており、頭部51は、ビス5の捩じ込みのための操作部となる。また、頭部51は、ビス5の捩じ込み後には下地材4に対する抜け止め部となる。
【0036】
軸部52は、頭部51の直径よりも小径であり、その一端が頭部51に接続され、他端が長手方向に延びている。軸部52には、螺旋状のネジ山が設けられていてもよい。軸部52は、内装材2、断熱材3、および下地材4を貫通する貫通部52aと、それらから天井裏空間122に突出する突出部52bとを有する。突出部52bの寸法は、たとえば10mm程度であることが好ましい。
【0037】
ビス5は、金属製であるため、熱を伝えやすく、熱橋の役割を果たす。そのため、夏期において、屋内空間21の冷房温度が低い場合には、天井裏空間22に突出したビス5の突出部52bの表面温度は、断熱材3の天井裏空間22の表面温度よりも低くなる。これにより、ビス5の突出部52bに結露が生じやすくなる。
【0038】
屋内空間21の設定温度が20℃以上25℃以下であれば、設定温度がそれほど低くない。そのため、ビス5の温度が低くなりにくく、ビス5の突出部52bが結露するおそれは低い。透湿抵抗が0.0069[(m2・s・Pa)/ng]以上の断熱材3を用いることで、断熱材3の内部で結露することを防止することができる。さらに、天井裏空間22からの湿気を内装材2に到達しにくくすることができ、内装材2との界面で結露が発生することを防止することができる。
【0039】
<実施の形態2>
図4は、本発明の実施の形態2に係る天井構造10Aを模式的に示す図である。上記実施の形態と本実施の形態は、防湿シート6において異なる。
【0040】
防湿シート6は、断熱材3と下地材4との間に設けられる。つまり、防湿シート6は、天井裏空間22の表面側に設けられる。防湿シート6は、たとえば水酸化アルミニウム紙、アルミニウム箔などのアルミ素材であることが好ましい。防湿シート6は、単層ではなく、複層設けられてもよい。防湿シート6は、平面視矩形形状であり、断熱材3全面に隙間なく重ね合わされることが好ましい。防湿シート6を用いた構成は、屋内空間21の設定温度が15℃以上20℃未満である場合に使用されることが好ましい。
【0041】
屋内空間21の設定温度が15℃以上20℃未満は、やや低い。そのため、ビス5の内部温度が低くなるため、透湿抵抗が0.0069[(m2・s・Pa)/ng]以上の断熱材3だけでは、断熱材3に侵入した湿気により断熱材3内部で結露が発生する可能性がある。そのため、断熱材3の天井裏空間22側に防湿シート6を設けることで、天井裏空間22側から湿気が断熱材3内部に浸入することを防止することができる。さらに、天井裏空間22からの湿気を内装材2に到達しにくくすることができ、内装材2との界面で結露が発生することを防止することができる。
【0042】
<実施の形態3>
図5は、本発明の実施の形態3に係る天井構造10Bを模式的に示す図である。上記実施の形態2と本実施の形態は、断熱材3に加えて、断熱材3とは別の断熱材7が用いられている点において異なる。以下の説明では、新たに用いられる断熱材の差別化から、上述した断熱材を第1断熱材3といい、新たな断熱材を第2断熱材7という。
【0043】
第2断熱材7は、ビス5の突出部52bを被覆するため設けられる。第2断熱材7は、湿気または水分を通過させないもの、たとえば独立気泡構造体のポリエチレンフォームなどであり、弾性を有することが好ましい。第2断熱材7は、断面視矩形形状の長尺状の部材であるが、ビス5の突出部52bだけを被覆していればよいため、長尺状である必要ははく、たとえば立方体形状、球体などであってもよい。
【0044】
第2断熱材7の厚さは、たとえば15mm程度であることが好ましい。ビス5の突出部52bの寸法は、通常10mm程度であるため、突出部52bを被覆できる厚さであることが好ましいからである。第2断熱材7を用いた構成は、屋内空間21の設定温度が10℃以上15℃未満である場合に使用されることが好ましい。なお、本実施の形態では、下地材4と断熱材3との間に防湿シート6が用いられていたが、防湿シート6は用いられていなくてもよい。
【0045】
また、第2断熱材7は、下地材4に組み込むことで、施工を簡素化することができる。
図2,6,7を参照して、第2断熱材7を下地材4内に組み込む方法について説明する。
図2は、本実施の形態1に係る内装構造を天井空間側から見た斜視図であり、
図6は、
図2に示す下地材4の長手方向に沿った断面図であり、
図7(A)は、
図6のVIIa線に沿う端面図であり、
図7(B)は、
図6のVIIb線に沿う端面図である。
【0046】
上述のように、第2断熱材7は、長手方向に延びる長尺状の部材であり、下地材4と、下地材4を連結するジョイント75との間にその両端が挟み込まれることで固定される。
【0047】
図7(A)を参照して、下地材4は、中空形状であり、長手方向に直交する断面において、底壁41と、底壁41の両端から上方に立ち上がる一対の側壁42と、一対の側壁42の上方端から内方に突出する一対の上壁43と、一対の上壁43の内方端から下方に突出する鍔部44とを含む。なお、
図3~
図5に示す下地材4は、
図7(A)および
図7(B)の下地材4を簡略化したものである。
【0048】
第2断熱材7は、下地材4の底壁41と一対の側壁42とで形成される空間に入れ込むようにするために、下地材4の内部の形状と同様の形状、すなわち断面矩形形状の長尺状であることが好ましい。
図7(B)に示すように、第2断熱材7の縦寸法は、下地材4の側壁42の縦寸法よりも小さいことが好ましい。
【0049】
図2に示すように、ジョイント75は、2つの下地材4を連結するために用いられる。特に
図7(A)に示すように、ジョイント75は、第2の方向から見てU字状(上向きコの字状)に形成されている。具体的にはジョイント75は、底部75aと、底部75aの両端から上方に立ち上がる一対の側部75bとを含む。ジョイント75も、たとえば、金属材料により形成されている。
図7(A)に示すように、ジョイント75は、下地材45内に嵌り込む大きさとすることが好ましい。具体的には、ジョイント75の底部75aは下地材4の底壁41に対応する大きさであり、ジョイント75の側部75bの縦寸法は、下地材4の側壁42の縦寸法よりも小さいことが好ましい。
【0050】
下地を組む際に、下地材4の内部に第2断熱材7を挿入し、第2断熱材7を挿入した下地材4同士をジョイント75で繋ぎ合わせる。具体的には、同じ長さの下地材4と第2断熱材7を複数準備し、下地材4の内部に第2断熱材7を挿入する。長手方向一端部と他端部を対向させて、下地材4の内部にジョイント75を押し込む。この際に、第2断熱材7の長手方向端部を圧縮しながら行う。
【0051】
これにより、第2断熱材7の長手方向両端部を圧縮させて、ジョイント75で固定することができるため、第2断熱材7は長手方向中央部でも、浮きにくくなる。そのため、第2断熱材7の底部が下地材4の底壁41に接した状態になるため、ビス5が第2断熱材7に刺さりやすくなる。さらに、第2断熱材7が多少浮いてしまった場合でも、長手方向両端部が圧縮固定されているため、湿気の侵入を防ぐことが可能である。
【0052】
また、本実施の形態の内装構造は、一般的な下地工法をベースとしているため、通常の内装工でも施工することができる。そのため、特殊な断熱パネルなどの施工と比較して、工期を短縮することが可能である。さらに、特殊な部材を必要としないため、施工が容易である。
【0053】
下地材4は、運搬や施工の観点から、長手方向の長さが制限される。そのため、下地材4同士をジョイント75で繋ぐことが一般的である。一般的に使用されるジョイント75を利用して第2断熱材7を固定することができるため、施工が容易である。
【0054】
屋内空間21の設定温度が10℃以上15℃未満は、設定温度がかなり低い。そのため、ビス5の突出部52bの内部温度まで低温になるため、透湿抵抗が0.0069[(m2・s・Pa)/ng]以上の断熱材3と防湿シート6だけでは、結露が発生する可能性がある。そのため、ビス5の突出部52bに第2断熱材7を設けることで、ビス5に結露が発生することを防止することができる。さらに、天井裏空間22からの湿気を内装材2に到達しにくくすることができ、内装材2との界面で結露が発生することを防止することができる。これにより、10℃以上15℃未満といった低温度であっても、ビス5の結露を防止することができる。
【0055】
<内装工法>
次に、上述した実施の形態1~3の天井構造10~10Bを用いた内装工法について説明する。以下の説明において、理解容易のため、実施の形態1の天井構造10(
図3)を第1内装構造10といい、実施の形態2の天井構造10A(
図4)を第2内装構造10Bといい、実施の形態3の天井構造10B(
図5)を第3内装構造10Bという。
【0056】
内装工法は、あらかじめ3種類の第1内装構造10、第2内装構造10A、および第2内装構造10Bを計画しておいて、屋内空間21の設定温度に合ったものを選択するというものである。
【0057】
一般的な工場、倉庫、仮設施設などの建物では、その用途に応じて、夏期の屋内空間21の設定温度が決定される。屋内空間21の設定温度が20℃以上25℃未満である場合は、それほど温度が低くないため、ビス5の温度も極端に低くなることがない。そのため、屋内空間の設定温度が20℃以上25℃未満である場合には、断熱材3の透湿抵抗が0.0069[(m2・s・Pa)/ng]以上の第1内装構造を選択する。
【0058】
屋内空間21の設定温度が15℃以上20℃未満である場合は、ある程度温度が低いため、ビス5の表面温度が低くなる場合もあり、ある程度の配慮が必要である。そのため、屋内空間21の設定温度が15℃以上20℃未満である場合には、断熱材3の透湿抵抗が0.0069[(m2・s・Pa)/ng]以上で、かつ防湿フィルム6を用いた第2内装構造を選択する。
【0059】
屋内空間21の設定温度が10℃以上15℃未満である場合は、温度が低いため、ビス5の表面温度だけではなく内部温度まで低くなり、十分な結露対策が必要となる。そのため、屋内空間21の設定温度が10℃以上15℃未満である場合には、断熱材3の透湿抵抗が0.0069[(m2・s・Pa)/ng]以上で、防湿フィルム6を用い、かつ第2断熱材7を備えた第3内装構造を選択する。
【0060】
本実施の形態では、屋内空間21の設定温度に合わせた内装構造10,10A,10Bを温度帯毎に段階的に定めている。そのため、温度帯にとって最適な結露対策を取った内装構造10,10A,10Bを選択することができるため、オーバースペックとなることなく、必要最低限のコストで結露対策が可能となる。
【符号の説明】
【0061】
1,100 建物、2,102 内装材、3,103 断熱材(第1断熱材)、4,104 下地材(第2棒状部材)、5,105 金属製ビス、6 防湿シート、7 第2断熱材、10,10A,10B 天井構造(内装構造)、30 内壁構造、21,121 屋内空間、22,122 天井裏空間、23,123 壁裏空間、52a,105a 貫通部、52b,105b 突出部。