(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045447
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】手術手技訓練用の内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
A61B 1/01 20060101AFI20230327BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20230327BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
A61B1/01 511
A61B1/00 650
G02B23/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153860
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】508195545
【氏名又は名称】イービーエム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】朴 栄光
【テーマコード(参考)】
2H040
4C161
【Fターム(参考)】
2H040AA02
2H040BA04
2H040CA23
2H040CA24
2H040DA01
2H040DA02
2H040DA11
2H040DA12
2H040DA17
2H040DA21
2H040DA41
4C161AA24
4C161BB03
4C161CC06
4C161DD01
4C161GG11
4C161GG24
4C161LL02
(57)【要約】
【解決課題】 より簡易な構造で且つ高機能を実現できる訓練用内視鏡システムを提供する。
【解決手段】 この発明によれば、軸線方向に沿って延長されその先端部に撮像素子ユニット6が装着されてなる内視鏡本体2と、この内視鏡本体2にその先端部側から外挿され、上記撮像素子に光軸を一致させて対向するように固定されたウェッジプリズム11を有する外筒体3と、を有し、前記外筒体3を上記内視鏡本体2に対してその軸線周りに回動させることで、上記ウェッジプリズム11と上記撮像素子ユニット6との光軸周りの相対角度を変位させ、上記撮像素子ユニットへの入射光を偏角することができるように構成されている、手術手技訓練用の内視鏡システム1が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に沿って延長されその先端部に撮像素子が装着されてなる内視鏡本体と、
この内視鏡本体に、その先端部側から外挿され、上記撮像素子に光軸を一致させて対向するように固定された偏角レンズを有する外筒体と
を有し、
前記外筒体を上記内視鏡本体に対してその軸線周りに回動させることで、上記偏角レンズと上記撮像素子との光軸周りの相対角度を変位させ、上記撮像素子への入射光を偏角することができるように構成されている
ことを特徴とする手術手技訓練用の内視鏡システム。
【請求項2】
請求項1記載の内視鏡システムにおいて、
前記内視鏡本体は、
ユーザが保持するハンドル部と、
このハンドル部からこの内視鏡システムの先端方向に延長された延長部と
を有し、
前記撮像素子は、上記延長部の先端部に装着されている
ことを特徴とする内視鏡システム。
【請求項3】
請求項2記載の内視鏡システムにおいて、
前記ハンドル部の外形は、上記延長部の外径よりも大きく形成され、前記外筒体の後端部と当接することでこの外筒体と内視鏡本体の相対移動を規制するものである
ことを特徴とする内視鏡システム。
【請求項4】
請求項1記載の内視鏡システムにおいて、
前記外筒体は、
先端部から基端部まで略均一な外径を有し、模擬人体モデルに装着されたトロッカーを挿通させて、前記先端部を模擬人体モデル内に挿入することができるように構成されているものである
ことを特徴とする内視鏡システム。
【請求項5】
請求項4記載の内視鏡システムにおいて、
前記外筒体の外径は10~12mmである
ことを特徴とする内視鏡システム。
【請求項6】
請求項1記載の内視鏡システムにおいて、
前記偏角レンズはウェッジプリズムである
ことを特徴とする内視鏡システム。
【請求項7】
請求項1記載の内視鏡システムにおいて、
前記内視鏡本体若しくは外筒体若しくはその両方には、上記偏角レンズと撮像素子との相対角度を識別するための標識手段が設けられている
ことを特徴とする内視鏡システム。
【請求項8】
請求項1記載の内視鏡システムにおいて、
前記外筒体の基端部には、この外筒体を回動駆動するための唾部が設けられいている
ことを特徴とする内視鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、手術手技訓練用の内視鏡システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、外科治療において内視鏡下手術が急速に普及しており、そのための手術手技の訓練の必要性が拡大している。
【0003】
特に、手術室で行う鏡視下手術において、体内に挿入されている内視鏡用ビデオカメラを保持する行為や術野視野を確保するために内視鏡用ビデオカメラを操作する行為については、医師以外の例えば臨床医療工学技士等への開放が進んでおり、2021年の医療法改正に伴い、実技研修が必須となる。
【0004】
そのため、内視鏡、特に腹腔鏡、胸腔鏡の操作、特に術野視野確保に対する訓練の需要が特に高く、より安価で且つ手軽に扱え、且つ視野確保訓練に有効な機能を有する訓練用内視鏡システムが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、より簡易な構造で且つ高機能を実現できる訓練用内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明によれば以下の構成が提供される。
【0007】
(1) 軸線方向に沿って延長されその先端部に撮像素子が装着されてなる内視鏡本体と、
この内視鏡本体に、その先端部側から外挿され、上記延長部に装着された撮像素子に光軸を一致させて対向するように固定された偏角レンズを有する外筒体と
を有し、
前記外筒体を上記内視鏡本体に対してその軸線周りに回動させることで、上記偏角レンズ体と上記撮像素子との光軸周りの相対角度を変位させ、上記撮像素子への入射光を偏角することができるように構成されている
ことを特徴とする手術手技訓練用の内視鏡システム。
【0008】
(2) 前記(1)記載の内視鏡システムにおいて、
前記内視鏡本体は、
ユーザが保持するハンドル部と、
このハンドル部からこの内視鏡システムの先端方向に延長された延長部と
を有し、
前記撮像素子は、上記延長部の先端部に装着されている
ことを特徴とする内視鏡システム。
【0009】
(3) 前記(2)記載の内視鏡システムにおいて、
前記ハンドル部の外形は、上記延長部の外径よりも大きく形成され、前記外筒体の後端部と当接することでこの外筒体と内視鏡本体の相対移動を規制するものである
ことを特徴とする内視鏡システム。
【0010】
(4) 前記(1)記載の内視鏡システムにおいて、
前記外筒体は、
先端部から基端部まで略均一な外径を有し、模擬人体モデルに装着されたトロッカーを挿通させて、前記先端部を模擬人体モデル内に挿入することができるように構成されているものである
ことを特徴とする内視鏡システム。
【0011】
(5) 前記(4)記載の内視鏡システムにおいて、
前記外筒体の外径は10~12mmである
ことを特徴とする内視鏡システム。
【0012】
(6) 前記(1)記載の内視鏡システムにおいて、
前記偏角レンジはウェッジプリズムである
ことを特徴とする内視鏡システム。
【0013】
(7) 前記(1)記載の内視鏡システムにおいて、
前記内視鏡本体若しくは外筒体若しくはその両方には、上記レンズ体と撮像素子との相対角度を識別するための標識手段が設けられている
ことを特徴とする内視鏡システム。
【0014】
(8) 前記(1)記載の内視鏡システムにおいて、
前記外筒体の基端部には、この外筒体を回動駆動するための唾部が設けられいている
ことを特徴とする内視鏡システム。
【0015】
この発明の上記特許請求の範囲に記載していない他の特徴については、この後の発明の最良の実施形態及び図面中に明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、この発明の一実施形態に係る訓練用内視鏡システムの全体構成を示す概略図。
【0017】
【
図2】
図2は、同じく、システムを分解した状態を示す概略図。
【0018】
【
図3】
図3は、同じく、システムの操作を示す概略図。
【0019】
【
図4】
図4は、同じく、ウェッジプリズムの動作を示す説明図。
【0020】
【
図5】
図5は、同じく、システムの使用態様を示す概略図。
【0021】
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を添付図面を参照して説明する。
【0023】
(構成)
図1に示す内視鏡システム1は、この発明を硬性腹腔鏡に適用した例を示すものである。
【0024】
このシステム1は、大きく分けて、内視鏡本体2と、この内視鏡本体2に外挿される外筒体3とからなる。
(内視鏡本体)
図2は、上記内視鏡本体2と外筒体3とを分離させた状態を示す図である。
【0025】
前記内視鏡本体2は、ハンドル部4と、このハンドル部4から延長された延長部5と、この延長部5の延長端に装着された撮像素子ユニット6とを有する。
【0026】
前記ハンドル部4はユーザ(手術手技訓練者)が保持してこのシステムを操作する部分であり、この実施形態では上記延長部5が延長される側の端部にライトガイドコネクターを模した操作バー7が横方向に突出するように設けられている。
【0027】
前記延長部5は、上記ハンドル部4と軸線を一致させて取り付けられた、例えば長さ40cm、外径10mm、内径8mmのステンレス製筒状部材である。
【0028】
そして、この延長部5には、先端部内に撮像面を先端側に向けて取り付けれた撮像素子ユニット6と、この撮像素子ユニット6から上記延長部5と上記ハンドル部4内を通って外部に延出されたケーブル8とが収納されている。このケーブル8の図示しない他端部はPCに直接接続可能なようにUSB雌端子となっていて、Webカメラ等と同様にPCに接続するだけで撮像素子として認識され各種カメラアプリ等によりPCのディスプレイ上に撮像画像を表示できるようになっている。
【0029】
(外筒体)
また、上記外筒体3は、前記内視鏡本体2の前記延長部5に外挿される外筒本体10と、この外筒本体10の先端部内に上記延長部に装着された撮像素子ユニット6に光軸を一致させて対向するように固定されたウェッジプリズム11と、上記外筒本体10の上記ハンドル部4側の外表面に固定された唾部12とを有する。
【0030】
上記外筒本体10は、上記内視鏡本体2の延長部5の外径よりも若干大きい内径を有する円筒状部材であり、例えば、内径10.5mm、外形12mmである。前記ウェッジプリズム11は、先端側に向いた入射面11aと撮像素子ユニット6に対向した出射面11bの間に3度の角度がつけられてなる直径約10mmの円形のプリズムである。
【0031】
また、上記唾部12の外面には、この外筒体3と内視鏡本体2との相対角度を把握するための目印12aが設けられている。この目印は、360度の角度を表示するための目盛りであっても良い。
【0032】
(組み立て)
このシステム1を組み立てるには、
図2に示す矢印Aに示すように、上記外筒体3を上記内視鏡本体2に取り付ける。この時、上記外筒体3と内視鏡本体2の軸線を一致させた後、上記外筒体3の開口部3aを前記撮像素子ユニット6が設けられてなる前記延長部5の先端に被せ、そのまま軸線を一致させた状態でこの外筒体3の唾部12が上記ハンドル部4に当接するまでスライドさせる。
【0033】
このことで
図1に示すように、この実施形態の内視鏡システム1が完成する。なお、上記外筒体3の寸法は、上記唾部12を上記ハンドル部4に当接させた際の上記ウェッジプリズム11と上記撮像素子ユニット6との間の距離を含む位置関係が最適になるように定められている。
【0034】
(作用)
このような構成によれば、上記外筒体3は前記内視鏡本体2の延長部5の周りで回転可能であり、
図3(a)に矢印Bで示すように、上記ハンドル4をユーザが保持した状態で上記外筒体3の唾部12を回転駆動することで、
図3(b)に示すように、それに連動させて上記ウェッジプリズム11の偏角方向を変更することができる。
【0035】
すなわち、
図4に拡大して示すように、前記ウェッジプリズム11は、入射面11aでの屈折により、上記入射面11aの傾斜角(偏角)で入射光を偏向して、上記撮像素子ユニット6に導く。このことにより、このプリズム11を通して上記撮像素子ユニット6の撮像画像を見ると、プリズム11からの距離によって変化する量だけ偏角オフセットされた視野を得ることができる。
【0036】
(手術手技訓練における視野確保)
図5を参照してこのシステム1の実際の使用方法を説明すると、ユーザは、上記外筒体3を前記内視鏡本体2に取り付けた状態で、上記ハンドル部4を一方の手で保持して、前記外筒体3の先端部側からこのシステム1を模擬人体モデル14内に挿入する。
【0037】
この時、模擬人体モデル14にトロッカー15を取り付け、このトロッカー15の挿入口15aを介して上記外筒体3の先端部を模擬人体モデル14内に挿入することができる。この例で用いているトロッカー15の挿入口15aの内径は12mmであり、上記システム1を上記外筒体3を取り付けた状態で通過させることができる。
【0038】
そして、上記ユーザは、上記模擬人体モデル14の外側から、もう一方の手で外筒体3の唾部12を保持して回しながら、人体モデル14内で所望の視野を確保する。
【0039】
このとき、このシステム1ではウェッジプリズム11を用いているから、通常の直視視野では死角になる対象臓器部位を、斜視視野によって覗き込むことで視野確保を行うことが可能となる。具体的には、例えば、胆嚢摘出術において、胆管付近の背面・裏面の視野確保を行うことができる。
【0040】
このシステム1を胸部臓器を対象とした場合には、前記同様に、胸腔鏡下視野確保訓練に用いることができる。
【0041】
また、このシステム1の利点は先端部を細く形成でき、トロッカー(ポート)を介して操作ができるように構成できる点である。すなわち、ウェッジプリズム11を含めた外筒体3の外形が直径約12mmであり、そのまま通常規格のトロッカー15を通過できるので、トロッカー15を介した状態で、上記した操作法で斜視視野を得ることができる。このため、実際の手術とより近い環境で視野確保の練習が可能になる。
【0042】
なお、本発明は上記一実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で種々変形可能である。
【0043】
例えば、上記一実施形態では上記外筒体本体10は一体品であったが、例えば
図6に示すように、上記ウェッジプリズム11が取り付けられた先端部を着脱可能とするように、先端部10aと後端部10bとに分離可能に構成しても良い。このような構成によれば、上記ウェッジプリズム11やこの外筒体本体10の内面のクリーニングが容易になる。
【0044】
また、上記実施形態では、外筒体に設ける偏角レンズとしてウェッジプリズムを用いたが、他の種類のレンズであっても良い。
【符号の説明】
【0045】
1…内視鏡システム
2…内視鏡本体
3…外筒体
3a…外筒体の開口部
4…ハンドル部
4…ハンドル
5…延長部
6…撮像素子ユニット
7…操作バー
8…ケーブル
10…外筒本体
10a…先端部
10b…後端部
11…ウェッジプリズム
11a…入射面
11b…出射面
12…唾部
14…模擬人体モデル
15…トロッカー
15a…挿入口