(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045605
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】サイドケース取付構造
(51)【国際特許分類】
B62J 9/23 20200101AFI20230327BHJP
B62J 9/27 20200101ALI20230327BHJP
【FI】
B62J9/23
B62J9/27
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154129
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】塩坂 拓
(57)【要約】
【課題】後部装着部品が車体から側方に張り出し、車体に取り付けられたサイドケースの上方に位置する場合でも、サイドケースを車体から容易に取り外すことができるようにする。
【解決手段】サイドケース取付構造は、サイドケース5において、把持部14とサイドケース5の重心とを通る直線Sよりも前方および後方の部分に設けられた鉤状の前側取付部15および後側取付部16と、車体の後部の側部に設けられ、前側取付部15および後側取付部16を上方から掛ける前側掛部23および後側掛部25を有し、サイドケース5を前傾させた状態で車体に保持するケースホルダ21とを備え、ケースホルダ21には、車体に保持されたサイドケース5を、把持部14を持って前上方に引くことにより後側取付部16が後側掛部25から外れたときに、後側取付部16と接触してサイドケース5の前方への移動を制限するガイド部33が設けられている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に把持部を有するサイドケースを鞍乗型車両の車体に着脱可能に取り付けるサイドケース取付構造であって、
前記サイドケースにおいて、前記把持部と前記サイドケースの重心とを通る直線よりも後方の部分から、前記車体に向かって突出し、突出端部が下方を向くように曲がりまたは傾斜した第1の取付部と、
前記サイドケースにおいて、前記把持部と前記サイドケースの重心とを通る直線よりも前方の部分から、前記車体に向かって突出し、突出端部が下方を向くように曲がりまたは傾斜した第2の取付部と、
前記車体の後部の側部に設けられ、前記第1の取付部を上方から掛ける第1の掛部および前記第2の取付部を上方から掛ける第2の掛部を有し、前記第1の取付部および前記第2の取付部が前記第1の掛部および前記第2の掛部にそれぞれ掛けられることにより、前記サイドケースを前記把持部が前記サイドケースの重心よりも前方に位置するように傾斜させた状態で前記車体に保持する保持部とを備え、
前記保持部において前記第1の掛部の前方には、前記第1の掛部よりも上方に隆起し、前記車体に保持された前記サイドケースを前記把持部を持って前記車体に対して前上方に引くことにより前記第1の取付部が前記第1の掛部から外れたときに、前記第1の取付部と接触することによって前記サイドケースの前方への移動を制限する移動制限部が設けられていることを特徴とするサイドケース取付構造。
【請求項2】
前記サイドケースにおいて前記車体と対向する側部の下部には、下方に行くに従って前記車体に向かう方向に漸次張り出した張出部が設けられ、
前記保持部の前部には、前記サイドケースに向かって突出した突出部が設けられ、
前記突出部は、前記車体に保持された前記サイドケースを前記把持部を持って前記車体に対して前上方に引くことにより前記第1の取付部および前記第2の取付部が前記第1の掛部および前記第2の掛部からそれぞれ外れたときに、前記張出部を押し、前記サイドケースを前記車体から離すように側方に動かすことを特徴とする請求項1に記載のサイドケース取付構造。
【請求項3】
前記サイドケースの前部の下部から略前方に突出する第3の取付部と、
前記車体の後部の側部において前記保持部が設けられた部分の前下側の部分から略後方に突出し、前記第3の取付部を上方から掛ける第3の掛部とを備え、
前記サイドケースがその重心よりも前記把持部が前方に位置するように前記保持部および前記第3の掛部を介して前記車体に保持されている状態において、前記第3の取付部は、前記第3の掛部の後上方から前記第3の掛部に向かって突出し、前記車体を側方から見たときに、前記第3の取付部の突出方向に沿った直線と前記第3の掛部の突出方向に沿った直線とは互いに交差していることを特徴とする請求項1または2に記載のサイドケース取付構造。
【請求項4】
前記車体に保持された前記サイドケースを前記把持部を持って前記車体に対して前上方に引くことにより前記第1の取付部が前記第1の掛部から外れ、その後、前記サイドケースが後転して前記サイドケースの重心が前記把持部の真下に位置するに至った状態において、前記車体を側方から見たときに、前記第3の取付部の突出方向に沿った直線と前記第3の掛部の突出方向に沿った直線とは互いに平行であることを特徴とする請求項3に記載のサイドケース取付構造。
【請求項5】
前記車体の後部の上部に装着され、前記車体に保持された前記サイドケースよりも高い位置に配置された後部装着部品は、前記車体を上方から見たときに、前記車体に保持された前記サイドケースにおいて、前記移動制限部よりも前方に位置する部分と重ならないように配置されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のサイドケース取付構造。
【請求項6】
前記後部装着部品は前記車体から側方に張り出して前記第1の掛部の上方に位置しており、
前記後部装着部品において前記第1の掛部の上方に位置する部分の下面は、前記車体に接近するに従って下降するように傾斜していることを特徴とする請求項5に記載のサイドケース取付構造。
【請求項7】
前記車体を後方から見たときに、前記後部装着部品において前記第1の掛部の上方に位置する部分と前記移動制限部との上下方向の間隔は、前記第1の取付部の上下方向の寸法よりも小さいことを特徴とする請求項6に記載のサイドケース取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両にサイドケースを取り付けるサイドケース取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗型車両への荷物の積載量を増やすために、鞍乗型車両の後部の左右両側または片側にサイドケースを取り付けることがある。サイドケースは、鞍乗型車両の車体のシートレール等にケースホルダ等を介して取り付けられることが多い。
【0003】
また、鞍乗型車両の中には、サイドケースにおいて車体に対向する側面にフックを設け、一方、車体のシートレールの外側の側部に、フックを掛ける穴を有するケースホルダを設け、フックをケースホルダの穴に掛けることにより、サイドケースを車体に着脱可能に取り付けることができるようにしたサイドケース取付構造を備えたものがある(下記の特許文献1を参照)。フックは、サイドケースの側面から側方に突出した後、下方に曲がった形状を有しており、ケースホルダに設けられた穴は上方に開口している。したがって、サイドケースを車体に取り付けるときには、フックの先端部をケースホルダの穴にその上方から挿入する。また、サイドケースを車体から取り外すときには、サイドケースの全体を持ち上げてフックの先端部を上方に移動させて、フックの先端部をケースホルダの穴から抜く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車体のシートレールの上部にグラブバーまたはリヤキャリア等の後部装着部品が装着されている場合、後部装着部品がシートレールから側方に張り出し、その張り出した部分が、車体に取り付けられたサイドケースの上方に位置することがある。
【0006】
上記サイドケース取付構造においては、サイドケースを車体から取り外すときに、ケースホルダの穴からフックを抜くために、サイドケースの全体を車体に対して上方に移動させる。それゆえ、後部装着部品がシートレールから側方に張り出して、車体に取り付けられたサイドケースの上方に位置する場合には、サイドケースの全体を車体に対して上方に移動させる量が制限され、サイドケースを車体から取り外し難くなる。
【0007】
この問題は、車体における後部装着部品の装着位置を高くすること、または、車体におけるサイドケースの取付位置を低くすることによって解決することができると考えられる。しかしながら、後部装着部品の装着位置を高くすると、車体の重心が高くなるため、鞍乗型車両の走行安定性が低下するおそれがある。例えば、グラブバーの装着位置を高くする場合には、それに合わせてピニオンシートの位置も高くしなければならないことが多い。その結果、鞍乗型車両の走行安定性が大きく低下するおそれがある。一方、サイドケースの取付位置を低くすると、サイドケースとマフラとの間隔を十分に確保することが困難になる場合がある。この場合には、サイドケースをマフラの熱から保護する措置を講じなければならなくなり、鞍乗型車両またはサイドケースの製造コストが上昇するおそれがある。
【0008】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、後部装着部品が車体から側方に張り出し、その張り出した部分が、車体に取り付けられたサイドケースの上方に位置する場合であっても、サイドケースを車体から容易に取り外すことができるサイドケース取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、上部に把持部を有するサイドケースを鞍乗型車両の車体に着脱可能に取り付けるサイドケース取付構造であって、前記サイドケースにおいて、前記把持部と前記サイドケースの重心とを通る直線よりも後方の部分から、前記車体に向かって突出し、突出端部が下方を向くように曲がりまたは傾斜した第1の取付部と、前記サイドケースにおいて、前記把持部と前記サイドケースの重心とを通る直線よりも前方の部分から、前記車体に向かって突出し、突出端部が下方を向くように曲がりまたは傾斜した第2の取付部と、前記車体の後部の側部に設けられ、前記第1の取付部を上方から掛ける第1の掛部および前記第2の取付部を上方から掛ける第2の掛部を有し、前記第1の取付部および前記第2の取付部が前記第1の掛部および前記第2の掛部にそれぞれ掛けられることにより、前記サイドケースを前記把持部が前記サイドケースの重心よりも前方に位置するように傾斜させた状態で前記車体に保持する保持部とを備え、前記保持部において前記第1の掛部の前方には、前記第1の掛部よりも上方に隆起し、前記車体に保持された前記サイドケースを前記把持部を持って前記車体に対して前上方に引くことにより前記第1の取付部が前記第1の掛部から外れたときに、前記第1の取付部と接触することによって前記サイドケースの前方への移動を制限する移動制限部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、後部装着部品が車体から側方に張り出し、その張り出した部分が、車体に取り付けられたサイドケースの上方に位置する場合であっても、サイドケースを車体から容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例のサイドケース取付構造を示す説明図であり、(A)は当該サイドケース取付構造をその左側から見た状態を示し、(B)は当該サイドケース取付構造をその上側から見た状態を示す。
【
図2】本発明の実施例におけるサイドケースをその前側から見た状態を示す外観図である。
【
図3】本発明の実施例におけるサイドケースを示す外観図であり、(A)は当該サイドケースをその左側から見た状態を示し、(B)は当該サイドケースをその右側から見た状態を示す。
【
図4】本発明の実施例における車体の左後部を示す説明図であり、(A)は当該車体の左後部をその左側から見た状態を示し、(B)は当該車体の左後部をその上側から見た状態を示す。
【
図5】
図4(A)中の切断線V-Vに沿って切断した車体の左後部をその前上側から見た状態を示す説明図である。
【
図6】
図4(A)中の切断線VI-VIに沿って切断した車体の左後部の断面、および本発明の実施例におけるサイドケースの後側取付部をそれらの後側から見た状態を示す説明図であり、(A)は後側取付部が後側掛部に掛けられていない状態を示し、(B)は後側取付部が後側掛部に掛けられている状態を示す。
【
図7】本発明の実施例における車体、および車体に取り付けられたサイドケースを、
図1(B)中の切断線VII-VIIに沿って切断した断面をその右側から見た状態を示す説明図である。
【
図8】
図7と同じ方向から見た本発明の実施例のサイドケースの車体からの取外時の動きを示す説明図である。
【
図9】前方から見た本発明の実施例のサイドケースの車体からの取外時の動きを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態のサイドケース取付構造は、上部に把持部を有するサイドケースを鞍乗型車両の車体に着脱可能に取り付けるサイドケース取付構造である。
【0013】
本実施形態のサイドケース取付構造は、サイドケースにおいて、把持部とサイドケースの重心とを通る直線よりも後方の部分から、車体に向かって突出し、突出端部が下方を向くように曲がりまたは傾斜した第1の取付部と、サイドケースにおいて、把持部とサイドケースの重心とを通る直線よりも前方の部分から、車体に向かって突出し、突出端部が下方を向くように曲がりまたは傾斜した第2の取付部と、車体の後部の側部に設けられ、第1の取付部を上方から掛ける第1の掛部および第2の取付部を上方から掛ける第2の掛部を有し、第1の取付部および第2の取付部が第1の掛部および第2の掛部にそれぞれ掛けられることにより、サイドケースを把持部がサイドケースの重心よりも前方に位置するように傾斜させた状態で車体に保持する保持部とを備えている。
【0014】
また、保持部において第1の掛部の前方には、第1の掛部よりも上方に隆起し、車体に保持されたサイドケースを把持部を持って車体に対して前上方に引くことにより第1の取付部が第1の掛部から外れたときに、第1の取付部と接触することによってサイドケースの前方への移動を制限する移動制限部が設けられている。
【0015】
本実施形態のサイドケース取付構造において、サイドケースを車体から取り外すために、利用者は、把持部を持ってサイドケースを前上方に引き上げる。これにより、第1の取付部が第1の掛部から外れ、続いて、第1の取付部が移動制限部に接触する。その後、サイドケースは、重力により、第1の取付部と移動制限部との接触点を中心に後転する。この後転により、第2の取付部が第2の掛部から外れる。このように、重力によるサイドケースの後転によって第2の取付部が第2の掛部から自動的に外れるので、利用者は、サイドケースを車体から容易に取り外すことができる。
【0016】
また、本実施形態のサイドケース取付構造によれば、サイドケースを車体から取り外すときに、サイドケースを重力により第1の取付部と移動制限部との接触点を中心に後転させることによって、第2の取付部を第2の掛部から外す構成を有しているので、利用者は、サイドケースの全体を上方に、第1の取付部を第1の掛部から外すことが可能な略必要最小限の量移動させるだけで、サイドケースを車体から取り外すことができる。したがって、後部装着部品が車体から側方に張り出し、後部装着部品が、車体に保持されたサイドケースにおいて第1の取付部が設けられている部分の上方に位置し、そのために、サイドケースを車体から取り外すときにサイドケースの全体を上方に移動させることができる量が制限される場合であっても、サイドケースを車体から容易に取り外すことができる。
【実施例0017】
本発明のサイドケース取付構造の実施例について、鞍乗型車両の車体の後部左側の側部にサイドケースを取り付けるサイドケース取付構造を例にあげて説明する。なお、本実施例において、前(Fd)、後(Bd)、上(Ud)、下(Dd)、左(Ld)、右(Rd)の方向を述べる際には、各図中の右下に描いた矢印に従う。
【0018】
(サイドケース取付構造)
図1(A)は本発明の実施例のサイドケース取付構造1をその左側から見た状態を示している。
図1(B)はサイドケース取付構造1をその上側から見た状態を示している。なお、
図1(B)において、グラブバー86については、説明の便宜上、その外形のみを二点鎖線で示している。
【0019】
本発明の実施例のサイドケース取付構造1は、
図1に示すように、上部に把持部14を有するサイドケース5を鞍乗型車両の車体81に着脱可能に取り付ける構造である。サイドケース取付構造1は、サイドケース5の前側取付部15、後側取付部16および下側取付部17等(
図2および
図3を参照)と、車体81の左上シートレール82および左下シートレール83に設けられ、前側掛部23および後側掛部25等を有するケースホルダ21(
図4を参照)と、車体81のピニオンステップホルダ91に設けられた下側掛部41(
図4を参照)と有している。
【0020】
なお、前側取付部15は「第2の取付部」の具体例であり、後側取付部16は「第1の取付部」の具体例であり、下側取付部17は「第3の取付部」の具体例である。また、ケースホルダ21は「保持部」の具体例である。また、前側掛部23は「第2の掛部」の具体例であり、後側掛部25は「第1の掛部」の具体例であり、下側掛部41は「第3の掛部」の具体例である。
【0021】
(サイドケース)
図2はサイドケース5をその前側から見た状態を示している。
図3(A)はサイドケース5をその左側から見た状態を示している。
図3(B)はサイドケース5をその右側から見た状態を示している。
【0022】
サイドケース5は、その内部に物を収容することができる箱状のケースであり、例えば、サイドパニアケースまたはサイドボックス等と呼ばれるものである。サイドケース5は、例えば、樹脂材料、またはアルミニウム等の金属材料により形成されている。サイドケース5は、
図2に示すように、ケース本体6および蓋12を備えている。蓋12は、ヒンジ部13を介してケース本体6に開閉可能に結合されている。
【0023】
ケース本体6は、
図3(B)に示すように、内側壁部7、上側壁部8、下側壁部9、前側壁部10および後側壁部11を有している。サイドケース5は、
図1(B)に示すように、内側壁部7が車体81の後部左側の側部に対向するように車体81に取り付けられる。なお、内側壁部7は「車体と対向する側部」の具体例である。
【0024】
また、
図1(B)に示すように、サイドケース5の上部の中央部には把持部14が設けられている。把持部14は、サイドケース5を車体81に対して着脱するとき、またはサイドケース5を持ち運ぶとき等に利用者が手で握る部分である。把持部14はサイドケース5の上側壁部8に回動可能に取り付けられており、
図2中の矢印Dに示すように倒すことができる。
【0025】
また、
図3(A)および
図3(B)は、サイドケース5の重心Gが把持部14の中央部Hの真下に位置している状態を示している。利用者が把持部14を持ってサイドケース5を持ち上げたときには、サイドケース5の重心Gが把持部14の中央部Hの真下に位置するようになる。
【0026】
また、
図3(B)に示すように、ケース本体6の内側壁部7の上部には、前側取付部15および後側取付部16が設けられている。前側取付部15および後側取付部16は、サイドケース5を車体81に固定されたケースホルダ21に着脱可能に取り付ける機能を有している。前側取付部15は、把持部14の中央部Hとサイドケース5の重心Gとを通る直線Sよりも前方に配置されている。後側取付部16は直線Sよりも後方に配置されている。また、
図2に示すように、前側取付部15および後側取付部16はそれぞれ下向きのフック状または鉤状に形成されている。すなわち、前側取付部15は、ケース本体6の内側壁部7から右方(車体81に向かう方向)に突出し、その突出端部が下方を向くように曲がっている。同様に、後側取付部16も、内側壁部7から右方に突出し、その突出端部が下方を向くように曲がっている。
【0027】
また、ケース本体6の前部の下部には下側取付部17が設けられている。下側取付部17は、サイドケース5を車体81に固定された下側掛部41に着脱可能に取り付ける機能を有している。下側取付部17は、ケース本体6の前部の下部から略前方に突出している。本実施例においては、下側取付部17は、前側壁部10の右下の角部(
図2の紙面においては左下の角部)から、下方に傾斜しつつ前方に突出している。また、下側取付部17の横断面は、
図2に示すようにコ字状に形成されている。また、下側取付部17は前方および下方に開口している。
【0028】
また、ケース本体6の内側壁部7の下部には、下方に行くに従って右方(車体81に向かう方向)に漸次張り出した張出部18が設けられている。すなわち、内側壁部7の下部には、内側壁部7の上部よりも右方に張り出した張出部18が形成されており、張出部18の上部には、ケース本体6から車体81に向かって下向きに傾斜する傾斜面が形成されている。
【0029】
(ケースホルダ)
図4(A)は車体81の左後部をその左側から見た状態を示している。
図4(B)は車体81の左後部をその上側から見た状態を示している。なお、
図4(B)において、グラブバー86については、説明の便宜上、その外形のみを二点鎖線で示している。また、
図5は、
図4(A)中の切断線V-Vに沿って切断した車体81の左後部(上側のみ)をその前上側から見た状態を示している。
【0030】
本実施例の鞍乗型車両は、例えばネイキッドタイプ、スポーツタイプ、アドベンチャータイプまたはツアラータイプの自動二輪車であり、その車体81の後部には、
図1(B)に示すように、車体81の前後方向中間部から上方に傾斜しつつ後方に伸長する4本のシートレール(左上シートレール82、左下シートレール83、右上シートレール84および右下シートレール85)が設けられている。図示を省略しているが、左下シートレール83の後端は左上シートレール82の後端側部分に接続されている。また、右下シートレール85の後端は右上シートレール84の後端側部分に接続されている。また、左上シートレール82および右上シートレール84の後端側部分の上部には、後部装着部品としてのグラブバー86が、グラブバー装着部材87を介して装着されている。
【0031】
また、
図4に示すように、車体81の後部左側の側部、具体的には、左上シートレール82および左下シートレール83の後部の左部には、ケースホルダ21が設けられている。ケースホルダ21は、サイドケース5を車体81に対して着脱可能にし、かつサイドケース5を車体81に保持する機能を有している。ケースホルダ21は例えば樹脂材料または金属材料により形成されている。ケースホルダ21は、ベース部22、前側掛部23、後側掛部25、およびガイド部31~34を有している。
【0032】
ベース部22は、前後方向および上下方向に拡がり、上下方向に比して前後方向に長い板状に形成されている。ベース部22は、左上シートレール82の伸長方向に沿うように配置されている。また、ベース部22は、2つの結合部材88により左上シートレール82および左下シートレール83に固定されている。すなわち、各結合部材88は左上シートレール82および左下シートレール83に例えば溶接により接合され、ベース部22の前部および後部は例えばボルト等の固定部材により2つの結合部材88にそれぞれ結合されている。
【0033】
前側掛部23は、サイドケース5の前側取付部15を掛ける部分である。前側掛部23は、ベース部22の前部から左方(車体81から離れる方向)に突出した板状に形成され、その中央部には、当該部分を上下方向に貫通する挿入穴24が設けられている。挿入穴24は、サイドケース5の前側取付部15の突出端部を挿入する穴である。
【0034】
後側掛部25は、サイドケース5の後側取付部16を掛ける部分である。後側掛部25は、ベース部22の後部から左方(車体81から離れる方向)に突出した板状に形成され、その中央部には、当該部分を上下方向に貫通する挿入穴26が設けられている。挿入穴26は、サイドケース5の後側取付部16の突出端部を挿入する穴である。
【0035】
ガイド部31は、
図4(A)に示すように、前側掛部23の前方に配置され、前側掛部23と隣接している。また、ガイド部31は、
図4(B)に示すように、ベース部22から左方(車体81から離れる方向)に突出している。また、
図5に示すように、ガイド部31の上部は、前側掛部23よりも上方に隆起しており、ガイド部31の下部は、前側掛部23よりも下方に隆起している。また、ガイド部31の上面31Aは、左方に行くに従って下降するように傾斜している。さらに、ガイド部31の下面31Bは、左方に行くに従って上昇するように傾斜している。ガイド部32は、前側掛部23の後方に配置され、前側掛部23と隣接している。ガイド部32は、ガイド部31と前後方向に略対称の形状を有している。ガイド部33は、後側掛部25の前方に配置され、後側掛部25と隣接している。ガイド部33は、ガイド部31と略同じ形状を有している。ガイド部34は、後側掛部25の後方に配置され、後側掛部25と隣接している。ガイド部34は、ガイド部32と略同じ形状を有している。
【0036】
ガイド部31~34は、それぞれ、次に述べるようにいくつかの機能を有している。
(a)ガイド部31の上部およびガイド部32の上部は、サイドケース5の車体81への取付時において、サイドケース5の前側取付部15がケースホルダ21の前側掛部23に掛けられるときに、前側取付部15の突出端部を前側掛部23の挿入穴24に案内する機能を有している。同様に、ガイド部33の上部およびガイド部34の上部は、サイドケース5の車体81への取付時において、サイドケース5の後側取付部16がケースホルダ21の後側掛部25に掛けられるときに、後側取付部16の突出端部を後側掛部25の挿入穴26に案内する機能を有している。
(b)ガイド部33の上部は、サイドケース5の車体81からの取外時において、利用者が把持部14を持ってサイドケース5を車体81に対して前上方に引き上げ、その結果、後側取付部16が後側掛部25から外れたときに、後側取付部16と接触することによってサイドケース5の前方への移動を制限する機能を有している。
(c)ガイド部31の下部およびガイド部32の下部は、サイドケース5の車体81からの取外時において、利用者が把持部14を持ってサイドケース5を車体81に対して前上方に引き上げ、その結果、前側取付部15、後側取付部16および下側取付部17が前側掛部23、後側掛部25および下側掛部41からそれぞれ外れたときに、サイドケース5の張出部18を押し、サイドケース5を左方(車体81から離れる方向)に動かす機能を有している。
(d)ガイド部31およびガイド部32は前側掛部23を補強する機能を有し、ガイド部33およびガイド部34は後側掛部25を補強する機能を有している。
【0037】
なお、ガイド部33の上部は「移動制限部」の具体例である。また、ガイド部31の下部またはガイド部32の下部は「突出部」の具体例である。
【0038】
(ケースホルダおよびグラブバーの位置)
図6は、
図4(A)中の切断線VI-VIに沿って切断した車体81の左後部の断面、およびサイドケース5の後側取付部16をそれらの後側から見た状態を示している。また、
図6(A)は後側取付部16が後側掛部25に掛けられていない状態を示し、
図6(B)は後側取付部16が後側掛部25に掛けられている状態を示している。
【0039】
図6(A)に示すように、グラブバー86の左部は車体81から左方に張り出し、ケースホルダ21の後側掛部25の上方に位置している。また、グラブバー86において、後側掛部25の上方に位置する部分の下面86Aは、車体81に接近するに従って下降するように傾斜している。また、グラブバー86において後側掛部25の上方に位置する部分と後側掛部25との上下方向の間隔Mは、サイドケース5の後側取付部16の上下方向の寸法Lよりも大きい。また、
図6(A)に示すように車体81を後方から見たときに、グラブバー86において後側掛部25の上方に位置する部分とガイド部33との上下方向の間隔Nは、サイドケース5の後側取付部16の上下方向の寸法Lよりも小さい。
【0040】
また、
図6(B)に示すように、サイドケース5が車体81に取り付けられたときに、サイドケース5において後側取付部16が設けられている部分と、その上方に位置するグラブバー86の左部との間隔Tは、例えば、後側取付部16の突出端部において、後側掛部25の挿入穴26内に入り込んでいる部分の長さUよりも僅かに大きい。
【0041】
(下側掛部)
図1に示すように、左下シートレール83の前部には、当該部分から左下方に伸長するピニオンステップホルダ91が設けられている。また、ピニオンステップホルダ91の下端側部分の左部にはピニオンステップ92が設けられている。なお、右下シートレール85の前側部分にも、ピニオンステップホルダ91およびピニオンステップ92と左右対称に、ピニオンステップホルダおよびピニオンステップが設けられているが、それらについては図示を省略している。
【0042】
下側掛部41は、
図4に示すように、車体81の後部左側の側部においてケースホルダ21が設けられた部分の前下側の部分、具体的にはピニオンステップホルダ91の下端側部分に設けられている。下側掛部41はピニオンステップホルダ91の下端側部分から略後方に突出している。下側掛部41には、サイドケース5の下側取付部17が掛けられる。下側掛部41は、ケースホルダ21と協働して、サイドケース5を車体81に対して着脱可能にし、かつサイドケース5を車体81に保持する機能を有している。
【0043】
下側掛部41は、例えば金属材料により形成された長板状のプレート42と、プレート42の後端部(先端部)に装着された弾性体43(例えばゴムキャップ)とを備えている。プレート42の前端部(基端部)は、ピニオンステップホルダ91の下端側部分の右部、すなわち、ピニオンステップ92が設けられている側と反対側の部分に、例えばボルト等の固定部材により固定されている。
【0044】
図2に示すように、サイドケース5の下側取付部17は、横断面コ字状に形成され、前方および下方に開口している。下側取付部17は、下側掛部41の弾性体43を上方から左右に挟み込むことにより、下側掛部41に掛けられる。
【0045】
(サイドケースの取付)
図7は、車体81、および車体81に取り付けられたサイドケース5を、
図1(B)中の切断線VII-VIIに沿って切断した断面をその右側から見た状態を示している。サイドケース5は、
図7に示すように、前側取付部15がケースホルダ21の前側掛部23に上方から掛けられ、後側取付部16がケースホルダ21の後側掛部25に上方から掛けられ、かつ下側取付部17が下側掛部41に上方から掛けられることにより、車体81に取り付けられ、保持される。また、サイドケース5は、把持部14の中央部Hがサイドケース5の重心Gよりも前方に位置するように傾斜した状態で車体81に保持される。なお、図示を省略しているが、サイドケース5には、前側取付部15および後側取付部16が前側掛部23および後側掛部25に掛けられた状態を維持するロック機構が設けられており、そのロック機構により、把持部14の中央部Hがサイドケース5の重心Gよりも前方に位置するように傾斜した状態が維持される。
【0046】
(サイドケースの取外時における後転)
図8は、
図7と同じ方向から見たサイドケース5の車体81からの取外時の動きを示している。
図8(A)において、車体81に取り付けられたサイドケース5を車体81から取り外すときには、利用者は、まず、上記ロック機構を解除した後、手で把持部14を持ち、サイドケース5を前上方(矢印A方向)に引き上げる。これにより、サイドケース5が重力に抗して前上方に移動し、後側取付部16が後側掛部25から外れ、その直後に、後側取付部16がガイド部33の上部に接触する。
図8(A)中のPは、このときの後側取付部16とガイド部33の上部との接触点を示している。
【0047】
なお、このとき、前側取付部15は、利用者がサイドケース5を前上方に引き上げる角度の若干の相違によって、前側掛部23から外れる場合と外れない場合がある。また、下側取付部17も、同様に、下側掛部41から外れる場合と外れない場合がある。
図8(A)は、利用者がサイドケース5を前上方に引き上げたときに、前側取付部15および下側取付部17が前側掛部23および下側掛部41から外れなかった場合を示している。
【0048】
利用者がサイドケース5を前上方に引き上げ、後側取付部16が後側掛部25から外れ、後側取付部16がガイド部33の上部に接触した時点において、サイドケース5には、利用者が把持部14を前上方に引く力と、重力が作用する。これにより、サイドケース5は、サイドケース5の重心Gが把持部14の中央部Hの真下に来るように後転しようとする。また、この時点において、後側取付部16がガイド部33の上部に接触しているので、サイドケース5の前方への移動がガイド部33の上部により制限されている。その結果、サイドケース5は、接触点Pを中心として、
図8(A)中の矢印B方向に回転(後転)する。
【0049】
サイドケース5がこのように後転することにより、
図8(B)に示すように、サイドケース5の重心Gが把持部14の中央部Hの真下に来る。その結果、前側取付部15が前側掛部23から外れて、前側掛部23から上方へ大きく離れ、同時に、下側取付部17が下側掛部41から外れて、下側掛部41から上方へ大きく離れる。その直後、利用者は、把持部14を左方に引く。これにより、後側取付部16がガイド部33の上部から離れ、サイドケース5が車体81から離れる。
【0050】
このように、利用者が把持部14を持ってサイドケース5を前上方に引き上げて、後側取付部16を後側掛部25から外すと、サイドケース5が重力により後側取付部16とガイド部33の上部との接触点Pを中心に後転し、前側取付部15および下側取付部17が前側掛部23および下側掛部41から自動的に外れ、前側掛部23および下側掛部41から大きく離れる。
【0051】
ところで、このようなサイドケース5の後転を可能にするためには、車体81に取り付けられたサイドケース5において、ガイド部33よりも前方に位置する部分の上方に、サイドケース5の後転時にサイドケース5と接触する物体が存在しないことが必要である。本実施例の車体81には、
図1(B)に示すように、左上シートレール82および右上シートレール84の後端側部分の上部に、後部装着部品としてのグラブバー86が設けられており、グラブバー86の左部が左上シートレール82および右上シートレール84よりも左方に張り出して、車体81に取り付けられたサイドケース5の上方に位置している。しかしながら、グラブバー86の左部は、車体81に取り付けられたサイドケース5において、ガイド部33よりも前方に位置する部分の上方には位置していない。すなわち、グラブバー86は、車体81を上方から見たときに、車体81に取り付けられたサイドケース5において、ガイド部33よりも前方に位置する部分と重ならないように配置されている。
【0052】
(サイドケースの取外時の横移動)
図9は、前方から見たサイドケース5の車体81からの取外時の動きを示している。
図9(A)において、利用者が、上記ロック機構を解除した後、手で把持部14を持ち、サイドケース5を前上方(矢印A方向)に引き上げることにより、後側取付部16が後側掛部25から外れ、後側取付部16がガイド部33の上部に接触し、サイドケース5が、重力により、後側取付部16とガイド部33の上部との接触点を中心に矢印B方向に後転する。
【0053】
サイドケース5が後転している間において、前側取付部15および下側取付部17が前側掛部23および下側掛部41から外れた後、ケースホルダ21のガイド部31の下部およびガイド部32の下部が、サイドケース5の張出部18に接触し、張出部18を左方に押す。これにより、サイドケース5が左方(矢印C方向)に動かされ、車体81から離れる。
【0054】
(下側取付部および下側掛部の配置)
図7に示すように、サイドケース5がその重心Gよりも把持部14が前方に位置するようにケースホルダ21および下側掛部41を介して車体81に取り付けられている状態において、下側取付部17は、下側掛部41の後上方から下側掛部41に向かって突出し、かつ車体81を側方から見たときに、下側取付部17の突出方向に沿った直線Eと下側掛部41の突出方向に沿った直線Fとは互いに交差している。
【0055】
また、
図8(B)に示すように、車体81に取り付けられたサイドケース5を、利用者が把持部14を持って車体81に対して前上方に引くことによって後側取付部16が後側掛部25から外れ、サイドケース5が重力により後転し、前側取付部15および下側取付部17が前側掛部23および下側掛部41から外れ、サイドケース5の重心Gが把持部14の中央部Hの真下に位置するに至った状態において、車体81を側方から見たときに、下側取付部17の突出方向に沿った直線Eと下側掛部41の突出方向に沿った直線Fとは互いに平行である。
【0056】
サイドケース5における下側取付部17の取付角度、およびピニオンステップホルダ91における下側掛部41の取付角度は、このように、サイドケース5が車体81に前傾状態で保持されているときには、直線EとFとが上述したように互いに交差し、サイドケース5の取外時にサイドケース5が後転して、その重心Gが把持部14の中央部Hの真下に来たときには、直線EとFが互いに平行になるように設定されている。
【0057】
以上説明した通り、本発明の実施例のサイドケース取付構造1は、前側取付部15および後側取付部16が前側掛部23および後側掛部25に上方からそれぞれ掛けられることにより、サイドケース5を、把持部14の中央部Hがサイドケース5の重心Gよりも前方に位置するように傾斜させた状態で車体81に保持するケースホルダ21を備えている。また、ケースホルダ21において、後側掛部25の前方には、後側掛部25よりも上方に隆起し、車体81に取り付けられたサイドケース5を、把持部14を持って車体81に対して前上方に引くことにより後側取付部16が後側掛部25から外れたときに、後側取付部16と接触することによってサイドケース5の前方への移動を制限する機能を有するガイド部33が設けられている。これらの構成により、サイドケース5を車体81から取り外すために、利用者が把持部14を持ってサイドケース5を前上方に引き上げ、後側取付部16を後側掛部25から外したときに、サイドケース5を、重力により、後側取付部16とガイド部33の上部との接触点Pを中心に後転させることができ、この後転を利用して、前側取付部15および下側取付部17を前側掛部23および下側掛部41から自動的に外すことができる。したがって、利用者は、サイドケース5を車体81から容易に取り外すことができる。
【0058】
また、本実施例では、
図6(B)に示すように、グラブバー86の左部が車体81から左方に張り出し、車体81に取り付けられているサイドケース5において後側取付部16が設けられている部分の上方に位置している。また、車体81に取り付けられているサイドケース5において後側取付部16が設けられた部分と、グラブバー86の左部との間の上下方向の間隔Tは極めて小さい。具体的には、間隔Tの大きさは、例えば、後側取付部16の突出端部において、後側掛部25の挿入穴26内に入り込んでいる部分の長さUよりも僅かに大きい程度である。その結果、サイドケース5を車体81から取り外すときに、サイドケース5の全体を上方に移動させることができる量は間隔Tの大きさ以下の僅かな量である。
【0059】
しかしながら、本実施例のサイドケース取付構造1によれば、サイドケース5を車体81から取り外すときに、サイドケース5を、重力により、後側取付部16とガイド部33の上部との接触点Pを中心に後転させることによって、前側取付部15および下側取付部17を前側掛部23および下側掛部41から外す構成を有している。それゆえ、利用者は、サイドケース5の全体を上方に、間隔T以下の量移動させるだけで、後側取付部16を後側掛部25から外して、サイドケース5を車体81から取り外すことができる。
【0060】
このように、本実施例によれば、グラブバー86の左部が車体81から左方に張り出し、グラブバー86の左部が、車体81に取り付けられたサイドケース5において後側取付部16が設けられている部分の上方に位置し、そのために、サイドケース5を車体から取り外すときに、サイドケース5の全体を上方に移動させることができる量が制限される場合であっても、サイドケース5を車体81から容易に取り外すことができる。
【0061】
また、本実施例のサイドケース取付構造1において、サイドケース5には張出部18が設けられ、ケースホルダ21にはガイド部31およびガイド部32が設けられている。そして、ガイド部31およびガイド部32は、サイドケース5の車体81からの取外時に、前側取付部15、後側取付部16および下側取付部17が前側掛部23、後側掛部25および下側掛部41からそれぞれ外れたときに、張出部18を押し、サイドケース5を車体81から離すように左方に動かす機能を有している。これにより、サイドケース5の取外時に、サイドケース5が自動的に車体81から離れる方向に移動するので、利用者はサイドケース5を車体81から一層容易に取り外すことができる。
【0062】
また、本実施例のサイドケース取付構造1において、サイドケース5における下側取付部17の取付角度、およびピニオンステップホルダ91における下側掛部41の取付角度は、サイドケース5が車体81に前傾状態で保持されているときには、
図7に示すように、下側取付部17の突出方向に沿った直線Eと、下側掛部41の突出方向に沿った直線Fとが互いに交差し、サイドケース5の取外時にサイドケース5が後転して、その重心Gが把持部14の中央部Hの真下に来たときには、
図8(B)に示すように直線EとFが互いに平行になるように設定されている。この構成により、サイドケース5の車体81からの取外時に、下側取付部17を下側掛部41から大きく離すことができる。したがって、利用者が、前側取付部15、後側取付部16および下側取付部17が前側掛部23、後側掛部25および下側掛部41からそれぞれ外れた後に、サイドケース5を車体81から引き離すときに、下側取付部17が下側掛部41に当たることを抑制することができる。よって、利用者は、サイドケース5の車体81からの取外を円滑に行うことができる。
【0063】
また、グラブバー86は、車体81に取り付けられたサイドケース5において、ガイド部33よりも前方に位置する部分と重ならないように配置されている。これにより、サイドケース5の車体81からの取外時に、サイドケース5の後転がグラブバー86によって阻害されることを防止することができる。
【0064】
また、グラブバー86において、後側掛部25の上方に位置する部分の下面86Aは、車体81に接近するに従って下降するように傾斜している。これにより、サイドケース5の車体81への取付時においては、後側取付部16を後側掛部25に円滑に導くことができる。また、サイドケース5の車体81への取外時においては、後側取付部16を後側掛部25から円滑に引き離すことができる。
【0065】
また、車体81を後方から見たときに、グラブバー86において後側掛部25の上方に位置する部分とガイド部33との上下方向の間隔Nは、サイドケース5の後側取付部16の上下方向の寸法Lよりも小さい。これにより、サイドケース5の車体81からの取外時において、利用者が把持部14を持ってサイドケース5を車体81に対して前上方に引き上げ、その結果、後側取付部16が後側掛部25から外れたときに、後側取付部16をガイド部33の上部に確実に接触させることができ、サイドケース5の前方への移動をガイド部33によって確実に制限することができる。
【0066】
なお、上記実施例では、後側取付部16の形状を、ケース本体6の内側壁部7から車体81に向かって突出し、その突出端部が下方を向くように曲がった形状としたが、後側取付部16の形状を、ケース本体6の内側壁部7から車体81に向かって突出し、その突出端部が下方を向くように傾斜した形状としてもよい。この点は、前側取付部15の形状についても同様である。また、上記実施例では、後側掛部25に、後側取付部16の突出端部を挿入する挿入穴26を設ける場合を例にあげたが、挿入穴26に代えて、溝または凹部を設けるようにしてもよい。この点は、前側掛部についても同様である。また、下側取付部17または下側掛部41の形状も上記実施例のものに限定されない。
【0067】
また、上記実施例では、後部装着部品としてグラブバー86を例にあげたが、後部装着部品として、他にリヤキャリア、リヤケース等が考えられる。
【0068】
また、上記実施例では、鞍乗型車両の車体81の後部左側にサイドケースを取り付けるサイドケース取付構造1を例にあげたが、本発明は、鞍乗型車両の車体81の後部右側にサイドケースを取り付けるサイドケース取付構造にも適用することができる。この場合には、上記実施例のサイドケース取付構造1と左右対称のサイドケース取付構造を形成すればよい。また、本発明は、ネイキッドタイプ、スポーツタイプ、アドベンチャータイプまたはツアラータイプの自動二輪車に限らず、スクータ、自動三輪車等、種々の鞍乗型車両に適用することができる。
【0069】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うサイドケース取付構造もまた本発明の技術思想に含まれる。