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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046530
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】オイルパン
(51)【国際特許分類】
   F01M 11/00 20060101AFI20230329BHJP
   F02F 7/00 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
F01M11/00 E
F01M11/00 G
F01M11/00 L
F01M11/00 N
F01M11/00 R
F02F7/00 302Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021155165
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小杉 裕太郎
【テーマコード(参考)】
3G015
3G024
【Fターム(参考)】
3G015BB07
3G015BB11
3G015BB12
3G015BG28
3G015CA07
3G015DA01
3G015DA05
3G015DA08
3G015EA04
3G015EA07
3G024AA62
3G024AA64
3G024BA03
3G024FA02
(57)【要約】
【課題】オイルパン本体に貯留されるオイルの量とオイルの油面の高さを最適化でき、かつオイルパン本体の振動を低減できるオイルパンを提供すること。
【解決手段】オイルパン10において、オイルパン本体11の底壁14は、深底部14Aと、深底部14Aに対してクランク軸方向4aの一方側で、かつ、深底部14Aよりも高い位置に設けられ、段差部14Cを介して深底部14Aに連結される浅底部14Bとを有し、オイルパン本体11に規定量のオイルを注入した際に、オイルの油面が浅底部14Bより上方に位置する。浅底部14Bは、クランク軸4と交差する方向における浅底部14Bの中央部に設けられた中央底部14Dと、中央底部14Dに対してクランク軸4と交差する方向の両側に設けられ、中央底部14Dから上方に持ち上げられた前側上げ底部14Eと後側上げ底部14Fとを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の開口部を有し、クランク軸を有する内燃機関本体の下部に連結されるフランジ部と、前記フランジ部の内縁部から下方に延びる周壁と、前記周壁の下端部に連結される底壁とを含んで構成されるオイルパン本体を備え、
前記底壁が、深底部と、前記深底部に対してクランク軸方向の一方側で、かつ、前記深底部よりも高い位置に設けられ、段差部を介して前記深底部に連結される浅底部とを有し、
前記オイルパン本体に規定量のオイルを注入した際に、オイルの油面が前記浅底部より上方に位置する内燃機関のオイルパンであって、
前記浅底部は、クランク軸と交差する方向における前記浅底部の中央部に設けられた中央底部と、前記中央底部に対してクランク軸と交差する方向の両側に設けられ、前記中央底部から上方に持ち上げられた上げ底部とを有することを特徴とする内燃機関のオイルパン。
【請求項2】
前記上げ底部は、前記上げ底部の上面がオイルの油面のうち下限の油面を示す下限レベルの位置より下側であり、かつ前記下限レベルの油面の近傍に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のオイルパン。
【請求項3】
前記周壁は、クランク軸方向の一端部に位置する第1の側壁と、クランク軸方向の他端部に位置して前記第1の側壁に対向する第2の側壁とを有し、
前記上げ底部は、前記段差部と前記第1の側壁の間においてクランク軸方向の全領域に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関のオイルパン。
【請求項4】
前記周壁は、クランク軸と交差する方向の前記深底部の一側縁部と前記浅底部の一側縁部に沿ってクランク軸方向に延び、上端部に前記フランジ部が連結される第3の側壁と、クランク軸と交差する方向の前記深底部の他側縁部と前記浅底部の他側縁部に沿ってクランク軸方向に延び、上端部に前記フランジ部が連結される第4の側壁とを有し、
前記第3の側壁は、フィルタ取付壁および膨出壁を有し、
前記フィルタ取付壁は、前記第3の側壁の上部から前記第4の側壁に向かって突出し、下面にオイルフィルタが取付けられるフィルタ取付面を有し、
前記膨出壁は、前記オイルフィルタを囲むように前記第3の側壁から前記第4の側壁に向かって膨出し、上端部が前記フィルタ取付壁の突出方向の先端部に連結されており、
前記上げ底部は、前記膨出壁に連結されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の内燃機関のオイルパン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルパンに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のエンジン本体の下部には内燃機関の潤滑用のオイルが貯留されるオイルパンが設けられている。
【0003】
従来のオイルパンとしては、上面を開口としたほぼ箱型形状を有し、底面部と、底面部の周縁から上方に角を丸くして一体的に立ち上がる周壁部と、周壁部の上端縁から外方に水平方向に延びるフランジ部とから構成されたものが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
周壁部は、平面視が底面部の周縁に沿って波形形状に形成され、内方側に膨らむ凸部と外方側に膨らむ凹部とが交互に現れるように構成されており、周壁部が外方に膨らんだ凹部の分だけ、所定の潤滑油の容量を確保することができ、周壁部が波形形状に形成されることによりオイルパンの剛性を高くできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-184924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、オイルパンに貯留されるオイルの油面が高すぎると、クランク軸のカウンタウェイトによってオイルが攪拌されるおそれがあり、逆に、オイルパンに貯留されるオイルの油面が低すぎると、オイルポンプにエアが吸い込まれるおそれがある。
【0007】
このため、オイルパンに貯留されるオイルの油面を適正な位置に調整する必要がある。ところが、オイルパンに貯留されるオイルの油面は、オイルパンに貯留されるオイルの量に関連しており、オイルの油面を高くするためにオイル量を増加させると、その分オイルの重量が増加するとともに、オイル交換時に廃棄されるオイルの量が増加するおそれがある。
【0008】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、オイルパン本体に貯留されるオイルの量とオイルの油面の高さを最適化でき、かつオイルパン本体の振動を低減できるオイルパンを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、矩形の開口部を有し、クランク軸を有する内燃機関本体の下部に連結されるフランジ部と、前記フランジ部の内縁部から下方に延びる周壁と、前記周壁の下端部に連結される底壁とを含んで構成されるオイルパン本体を備え、前記底壁が、深底部と、前記深底部に対してクランク軸方向の一方側で、かつ、前記深底部よりも高い位置に設けられ、段差部を介して前記深底部に連結される浅底部とを有し、前記オイルパン本体に規定量のオイルを注入した際に、オイルの油面が前記浅底部より上方に位置する内燃機関のオイルパンであって、前記浅底部は、クランク軸と交差する方向における前記浅底部の中央部に設けられた中央底部と、前記中央底部に対してクランク軸と交差する方向の両側に設けられ、前記中央底部から上方に持ち上げられた上げ底部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このように上記の本発明によれば、オイルパン本体に貯留されるオイルの量とオイルの油面の高さを最適化でき、かつオイルパン本体の振動を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施例に係るオイルパンを備えた内燃機関を右方から見た概略図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係るオイルパンの斜視図である。
図3図3は、本発明の一実施例に係るオイルパンの正面図である。
図4図4は、本発明の一実施例に係るオイルパンの平面図である。
図5図5は、本発明の一実施例に係るオイルパンの後面図である。
図6図6は、図4のVI-VI方向矢視断面図である。
図7図7は、図4のVII-VII方向矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施の形態に係るオイルパンは、矩形の開口部を有し、クランク軸を有する内燃機関本体の下部に連結されるフランジ部と、フランジ部の内縁部から下方に延びる周壁と、周壁の下端部に連結される底壁とを含んで構成されるオイルパン本体を備え、底壁が、深底部と、深底部に対してクランク軸方向の一方側で、かつ、深底部よりも高い位置に設けられ、段差部を介して深底部に連結される浅底部とを有し、オイルパン本体に規定量のオイルを注入した際に、オイルの油面が浅底部より上方に位置する内燃機関のオイルパンであって、浅底部は、クランク軸と交差する方向における浅底部の中央部に設けられた中央底部と、中央底部に対してクランク軸と交差する方向の両側に設けられ、中央底部から上方に持ち上げられた上げ底部とを有する。
【0013】
これにより、本発明の一実施の形態に係るオイルパンは、オイルパン本体に貯留されるオイルの量とオイルの油面の高さを最適化でき、かつオイルパン本体の振動を低減できる。
【実施例0014】
以下、本発明に係るオイルパンの実施例について、図面を用いて説明する。
図1から図7は、本発明に係る一実施例のオイルパンを示す図である。図1から図7において、上下前後左右方向は、以下のように規定する。
【0015】
クランク軸に沿う方向をエンジンの左右方向とし、クラック軸に沿う方向でオイルパンの左側壁の側を左側、オイルパンの右側壁の側を右側とする。そして、クランク軸と水平に直交するエンジンの方向を前後方向とし、クランク軸と鉛直に直交する方向を上下方向とする。
【0016】
まず、構成を説明する。
図1において、車両に搭載されるエンジン1は、エンジン本体2と、オイルパン10とを備えている。エンジン本体2は、クランク軸4を回転自在に支持するシリンダブロック2Aを備えており、クランク軸4は車幅方向(左右方向)に延びている。
【0017】
シリンダブロック2Aには図示しない複数の気筒が設けられており、気筒は、エンジン1の車幅方向に並んで設置されている。気筒にはそれぞれ図示しないピストンが収容されており、ピストンは、図示しないコネクティングロッドを介してクランク軸4に連結されている。
【0018】
ピストンは、気筒内で往復運動することにより、コネクティングロッドを介してクランク軸4を回転させる。エンジン本体2は、シリンダブロック2Aの上部に取付けられた図示しないシリンダヘッドとシリンダヘッドの上部に取付けられた図示しないシリンダヘッドカバーを有するが、説明を省略する。本実施例のエンジン1は、内燃機関を構成し、エンジン本体2は、内燃機関本体を構成する。
【0019】
図2図3に示すように、オイルパン10は、オイルパン本体11を有し、オイルパン本体11は、フランジ部12、周壁13および底壁14を有する。
【0020】
図2図4に示すように、フランジ部12は、矩形の開口部12aを有する。フランジ部12は、シリンダブロック2Aの下部に設けられたフランジ部2a(図6図7参照)に図示しないボルトによって固定されている。
【0021】
図2に示すように、周壁13は、フランジ部12の内縁部12bから下方に延びており、箱型形状に形成されている。底壁14は、周壁13の下端部に連結されている。周壁13の上端部は開口されており、周壁13の下端部は底壁14によって閉じられている。
【0022】
図2図3に示すように、底壁14は、深底部14Aと浅底部14Bを有する。深底部14Aは、クランク軸4の方向(以下、クランク軸方向4aという)で右側に設けられている。浅底部14Bは、深底部14Aに対して左側(一方側)で、かつ、深底部14Aよりも高い位置に設けられており、段差部14Cを介して深底部14Aに連結されている。
【0023】
すなわち、本実施例の底壁14は、車幅方向において高さの異なる深底部14Aと浅底部14Bとを有する段違い形状に形成されている。
【0024】
図2図3に示すように、段差部14Cは、クランク軸方向4aで底壁14の略中央部に設けられており、深底部14Aはオイルパン本体11の右半分の領域に形成され、浅底部14Bはオイルパン本体11の左半分の領域に形成されている。
【0025】
図2に示すように、周壁13は、前壁15、後壁16、左側壁17および右側壁18を有する。
【0026】
図4に示すように、前壁15は、クランク軸4と交差する方向の深底部14Aの前縁部(一側縁部)14aと浅底部14Bの前縁部(一側縁部)14bに連結されている。前壁15は、深底部14Aの前縁部14aと浅底部14Bの前縁部14bに沿ってクランク軸方向4aに延びており、上端部にフランジ部12が連結されている。
【0027】
なお、クランク軸4は、クランク状に形成されているが、クランク軸4と交差する方向とはクランク軸4の直線状の回転中心軸と水平方向で交差する方向である。また、クランク軸方向4aとは、クランク軸4の回転中心軸と同一方向である。
【0028】
後壁16は、クランク軸4と交差する方向の深底部14Aの後縁部(他側縁部)14c(図6参照)と浅底部14Bの後縁部(他側縁部)14dに連結されている。
【0029】
後壁16は、深底部14Aの後縁部14cと浅底部14Bの後縁部14dに沿ってクランク軸方向4aに延びており、上端部にフランジ部12が連結されている。前壁15と後壁16は、クランク軸4と交差する方向(前後方向)で対向している。
【0030】
左側壁17は、クランク軸方向4aの左端部(一端部)に位置しており、前壁15の左端部と後壁16の左端部と浅底部14Bの左端部とを連結している。
【0031】
右側壁18は、クランク軸方向4aの右端部(他端部)に位置しており、前壁15の右端部と後壁16の右端部と深底部14Aの右端部とを連結している。左側壁17は、クランク軸方向4aで右側壁18に対向している。
【0032】
本実施例の左側壁17は、第1の側壁を構成し、右側壁18は、第2の側壁を構成する。前壁15は、第3の側壁を構成し、後壁16は、第4の側壁を構成する。
【0033】
図2図4に示すように、浅底部14Bは、中央底部14D、前側上げ底部14Eおよび後側上げ底部14Fを有する。
【0034】
中央底部14Dは、浅底部14Bのクランク軸4と交差する前後方向(水平方向)における中央部に設けられている。
【0035】
前側上げ底部14Eは、中央底部14Dに対してクランク軸4と交差する前後方向の前側に設けられており、中央底部14Dから上方に持ち上げられている(図7参照)。
【0036】
前側上げ底部14Eの前端は前壁15に連結されている(図7参照)。前側上げ底部14Eの前端は、浅底部14Bの前縁部14bである。
【0037】
後側上げ底部14Fは、中央底部14Dに対してクランク軸4と交差する前後方向の後側に設けられており、中央底部14Dから上方に持ち上げられている(図7参照)。後側上げ底部14Fの後端は後壁16に連結されている(図7参照)。後側上げ底部14Fの後端は、浅底部14Bの後縁部14dである。
【0038】
図7に示すように、前側上げ底部14Eは、後側上げ底部14Fより高い位置に位置している。これにより、中央底部14Dは、前側上げ底部14Eと後側上げ底部14Fに対して下方に突出している。
【0039】
このように、浅底部14Bは、中央底部14Dに対してクランク軸4と交差する前後方向の両側に、中央底部14Dから上方に持ち上げられた前側上げ底部14Eと後側上げ底部14Fとを有する。本実施例の前側上げ底部14Eおよび後側上げ底部14Fは、上げ底部を構成する。
【0040】
図4に示すように、前側上げ底部14Eと後側上げ底部14Fは、段差部14Cと左側壁17の間においてクランク軸方向4aの全領域に形成されており、前側上げ底部14Eと後側上げ底部14Fの左端部は、それぞれ左側壁17に連結されている。
【0041】
図1図4に示すように、深底部14Aは、中央最深底部14G、前側上げ底部14Hおよび後側上げ底部14Iを有する。
【0042】
中央最深底部14Gは、深底部14Aのクランク軸4と交差する前後方向における中央部に設けられており、底壁14の中で最も低い位置に設けられている。
【0043】
図6図7に示すように、前側上げ底部14Hは、中央最深底部14Gに対してクランク軸4と交差する前後方向の前側に設けられており、中央最深底部14Gから上方に持ち上げられている(図6図7参照)。
【0044】
前側上げ底部14Hの前端は前壁15に連結されている。前側上げ底部14Hの前端は、深底部14Aの前縁部14aである。
【0045】
後側上げ底部14Iは、中央最深底部14Gに対してクランク軸4と交差する前後方向の後側に設けられており、中央最深底部14Gから上方に持ち上げられている
【0046】
後側上げ底部14Iの後端は後壁16に連結されている。後側上げ底部14Iの後端は、深底部14Aの後縁部14cである。後側上げ底部14Iは、前側上げ底部14Hより高い位置まで持ち上げられている。
【0047】
このように、深底部14Aは、中央最深底部14Gに対してクランク軸4と交差する前後方向の両側に、中央最深底部14Gから上方に持ち上げられた前側上げ底部14Hと後側上げ底部14Iとを有する。
【0048】
図4に示すように、前側上げ底部14Hと後側上げ底部14Iの右端部は、それぞれ右側壁18に連結されており、右側壁18から段差部14Cに向かって延びている。
【0049】
図7に示すように、本実施例の前側上げ底部14Eと後側上げ底部14Fは、その上面14e、14fがオイルの油面のうち下限の油面を示すロアレベルLの位置より下側であり、ロアレベルLの油面の近傍に設けられている。
【0050】
本実施例のオイルパン本体11には規定量のオイルが注入されており、規定量のオイルの油面は、浅底部14B(すなわち、中央底部14D、前側上げ底部14Eおよび後側上げ底部14F)より上方に位置している。
【0051】
規定量のオイルとは、オイルパン本体11に注入されるオイルの油面がアッパレベルH(上限レベル)とロアレベルL(下限レベル)の間の高さに位置していることである。
【0052】
オイルパン本体11に注入されるオイルレベルは、図示しないオイルレベルゲージによって検出可能であり、オイルレベルゲージのロアレベルLの目印とアッパレベルHの目印間の位置になるように調整される。
【0053】
図2図4に示すように、前壁15にはフィルタ取付壁14Jおよび膨出壁14Kが設けられている。
【0054】
フィルタ取付壁14Jは、フランジ部12の近傍の前壁15の上部から後壁16に向かって突出しており、半円状に形成されている。フィルタ取付壁14Jは、下面にフィルタ取付面14gを有し(図7参照)、フィルタ取付面14gにはオイルフィルタ21が取付けられている。
【0055】
これにより、オイルフィルタ21は、フィルタ取付壁14Jに吊り下げられるようにしてフィルタ取付面14gに取付けられている。
【0056】
図4に示すように、オイルパン10を上方から見た場合に、膨出壁14Kは、仮想線で示すオイルフィルタ21を囲むように前壁15から後壁16に向かって半円状に膨出しており、上端部がフィルタ取付壁14Jの突出方向の先端部14jに連結されている。
【0057】
本実施例のオイルフィルタ21は、円筒状に形成されており、半円状の膨出壁14Kは、オイルフィルタ21との間に円周方向に一定の隙間を介して対向している。
【0058】
図4に示すように、オイルパン10を上方から見た場合に、オイルフィルタ21は、後端部21aが前壁15よりも後壁16側に近づくようにオイルパン本体11の内方に入り込んでおり、前端部21bが前壁15から前方に露出している。
【0059】
これにより、オイルフィルタ21がオイルパン本体11から外方に大きく飛び出ることを抑制でき、オイルフィルタ21の設置スペースを低減できる。
【0060】
図2図4に示すように、前側上げ底部14Eの右端部と前側上げ底部14Hの左端部は、膨出壁14Kに連結されており、膨出壁14Kと前壁15と左側壁17とによって囲まれる前側上げ底部14Eの上方の空間にオイルが貯留される。
【0061】
図4に示すように、オイルパン本体11にはオイルストレーナ22が設置されている。オイルストレーナ22は、深底部14Aの上方に設置されており、下面に図示しないオイル吸い込み口が設けられている。
【0062】
オイルストレーナ22にはオイル出口22aが設けられており、オイル出口22aは、シリンダブロック2Aに設けられた図示しないオイル通路を介して図示しないオイルポンプに接続されている。
【0063】
オイルポンプが作動されると、オイルストレーナ22によってオイルが吸い込まれて濾過された後、濾過されたオイルが図示しないオイル配管を通してオイルポンプに吸い込まれる。
【0064】
フィルタ取付壁14Jにはオイル導入穴14hとオイル排出穴14iが形成されており(図4参照)、オイル導入穴14hとオイル排出穴14iは、オイルフィルタ21に連通している。
【0065】
オイルパン本体11からオイルポンプに吸い込まれたオイルは、オイルポンプからシリンダブロック2Aに設けられた図示しないオイル通路に吐出された後、オイル導入穴14hを通してオイルフィルタ21に導入される。
【0066】
オイルフィルタ21に導入されたオイルは、オイルフィルタ21によって濾過された後、オイル排出穴14iからシリンダブロック2Aに設けられた図示しないメインギャラリーを通してエンジン1の潤滑部位に供給される。
【0067】
図4に示すように、前側上げ底部14Eにはリブ15Aが設けられている。リブ15Aは、前側上げ底部14Eから上方に突出しており、左側壁17からオイルストレーナ22に向かって延びている。
【0068】
これにより、前側上げ底部14Eをリブ15Aによって補強でき、前側上げ底部14Eの剛性を高くできる。
【0069】
後側上げ底部14Fにはリブ15Bが設けられている。リブ15Bは、後側上げ底部14Fから上方に突出しており、後壁16から前壁15に向かって延びている。
【0070】
これにより、後側上げ底部14Fをリブ15Bによって補強でき、後側上げ底部14Fの剛性を高くできる。
【0071】
中央最深底部14Gにはリブ15C、15Dが設けられている。リブ15C、15Dは、中央最深底部14Gから上方に突出しており、右側壁18から段差部14Cに向かって延びている。
【0072】
これにより、中央最深底部14Gをリブ15C、15Dによって補強でき、中央最深底部14Gの剛性を高くできる。
【0073】
図4図5に示すように、深底部14Aにはドレン孔14mが形成されており、ドレン孔14mはプラグ50(図1参照)によって閉止されている。オイル交換時等においてオイルパン10に貯留されたオイルはドレン孔14mから排出される。
【0074】
本実施例のオイルパン10は、オイルパン本体11およびプラグ50によって構成されている。
【0075】
次に、本実施例のオイルパン10の作用効果を説明する。
本実施例のオイルパン10は、矩形の開口部12aを有し、クランク軸4を有するシリンダブロック2Aの下部に連結されるフランジ部12と、フランジ部12の内縁部12bから下方に延びる周壁13と、周壁13の下端部に連結される底壁14とを含んで構成されるオイルパン本体11を備えている。
【0076】
底壁14は、深底部14Aと、深底部14Aに対してクランク軸方向4aの左側(一方側)で、かつ、深底部14Aよりも高い位置に設けられ、段差部14Cを介して深底部14Aに連結される浅底部14Bとを有し、オイルパン本体11に規定量のオイルを注入した際に、オイルの油面が浅底部14Bより上方に位置する。
【0077】
浅底部14Bは、クランク軸4と交差する方向における浅底部14Bの中央部に設けられた中央底部14Dと、中央底部14Dに対してクランク軸4と交差する方向の両側に設けられ、中央底部14Dから上方に持ち上げられた前側上げ底部14Eと後側上げ底部14Fとを有する。
【0078】
これにより、前側上げ底部14Eと後側上げ底部14Fによりオイルパン本体11の浅底部14Bに貯留されるオイルの量を減少させつつ、オイルの油面を上昇させることができる。
【0079】
ここで、オイルパン本体11に貯留されるオイルの油面が高すぎると、クランク軸4の図示しないカウンタウェイトによってオイルが攪拌されるおそれがある。逆に、オイルパン本体11に貯留されるオイルの油面が低すぎると、オイルストレーナ22のオイル吸い込み口がエアを吸い込み、オイルポンプがエアを吸い込むおそれがある。
【0080】
本実施例のオイルパン10は、オイルパン本体11に貯留されるオイルの油面を前側上げ底部14Eと後側上げ底部14Fにより上昇させることができるので、オイルパン本体11の浅底部14Bに貯留されるオイルの量を減少させた場合であっても、オイルの油面を上昇させることができる。
【0081】
また、オイルストレーナ22は、深底部14Aに貯留されるオイルをオイル吸い込み口から吸い込むので、深底部14Aに設置されている。これに対し、浅底部14Bは、オイルストレーナ22のような干渉物が設置されないため、前側上げ底部14Eと後側上げ底部14Fの大きさを拡大し易い。
【0082】
このため、オイルパン本体11に貯留されるオイルの油面を上昇させるためにオイルパン本体11の内部に、エンジン1の潤滑に必要な量を超えるオイルが注入されることを防止でき、カウンタウェイトによってオイルが攪拌されることを防止できる。
【0083】
これに加えて、オイルパン本体11に貯留されるオイル量の減少によりオイルの油面が低下することを防止でき、オイルポンプへのエアの吸い込みを防止できる。
【0084】
また、本実施例のオイルパン10は、前側上げ底部14Eと後側上げ底部14Fに対して相対的に下方に突出する凸状の中央底部14Dを浅底部14Bに形成できる。このため、断面が円弧である凸状の中央底部14Dを、浅底部14Bを段差部14Cに連結するリブとして機能させることができ、オイルパン本体11の剛性を高くしてオイルパン本体11の振動を低減できる。
【0085】
このように、本実施例のオイルパン10は、オイルパン本体11に貯留されるオイルの量とオイルの油面の高さを最適化でき、かつオイルパン本体11の振動を低減できる。
【0086】
また、本実施例のオイルパン10によれば、リブ15A、15B、15C、15Dによって、前側上げ底部14E、後側上げ底部14Fおよび中央最深底部14Gを補強して、前側上げ底部14E、後側上げ底部14Fおよび中央最深底部14Gの剛性を高くできる。このため、オイルパン本体11の剛性をより一層高くしてオイルパン本体11の振動をより効果的に低減できる。
【0087】
また、本実施例のオイルパン10によれば、前側上げ底部14Eと後側上げ底部14Fは、上面14e、14fがオイルの油面のうち下限の油面を示すロアレベルLの位置より下側であり、かつロアレベルLの油面の近傍に設けられている。
【0088】
これにより、エンジン1の運転によってオイルが消費されてオイルの油面がアッパレベルHからロアレベルLに低下する際、オイルの油面が前側上げ底部14Eと後側上げ底部14Fの上面14e、14fよりも低くなってオイルの油面が急激に低下することを防止できる。このため、オイルポンプへのエアの吸い込みをより効果的に防止できる。
【0089】
また、本実施例のオイルパン10によれば、周壁13は、クランク軸方向4aの左端部に位置する左側壁17と、クランク軸方向4aの右端部に位置して左側壁17に対向する右側壁18とを有する。
【0090】
これに加えて、前側上げ底部14Eと後側上げ底部14Fは、段差部14Cと左側壁17の間においてクランク軸方向4aの全領域に形成されている。
【0091】
これにより、前側上げ底部14Eと後側上げ底部14Fの設置領域をクランク軸方向4aに拡大でき、オイルパン本体11に貯留されるオイルの油量およびオイルの油面の調整を容易に行うことができる。この結果、オイルパン本体11に貯留されるオイルの油量およびオイルの油面をより効果的に最適化できる。
【0092】
また、本実施例のオイルパン10によれば、周壁13は、クランク軸方向4aと交差する方向の深底部14Aの前縁部14aと浅底部14Bの前縁部14bに沿ってクランク軸方向4aに延び、上端部にフランジ部12が連結される前壁15と、クランク軸方向4aと交差する方向の深底部14Aの後縁部14cと浅底部14Bの後縁部14dに沿ってクランク軸方向4aに延び、上端部にフランジ部12が連結される後壁16とを有する。
【0093】
前壁15は、フィルタ取付壁14Jを有し、フィルタ取付壁14Jは、前壁15の上部から後壁16に向かって突出し、下面にオイルフィルタ21が取付けられるフィルタ取付面14gを有する。
【0094】
また、前壁15は、膨出壁14Kを有し、膨出壁14Kは、オイルフィルタ21を囲むように前壁15から後壁16に向かって膨出し、上端部がフィルタ取付壁14Jの突出方向の先端部14jに連結されている。これに加えて、前側上げ底部14Eと前側上げ底部14Hが膨出壁14Kに連結されている。
【0095】
これにより、膨出壁14Kよってオイルパン本体11の容積を調整でき、オイルパン本体11に貯留されるオイルの量とオイルの油面をより効果的に最適化できる。
【0096】
これに加えて、前側上げ底部14Eと前側上げ底部14Hを膨出壁14Kによって補強して前側上げ底部14E、14Hの剛性を高くできる上に、膨出壁14Kによって前壁15の剛性を高くできる。この結果、オイルパン本体11の振動をより効果的に抑制できる。
【0097】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく調整が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0098】
1...エンジン(内燃機関)、2...エンジン本体(内燃機関本体)、4...クランク軸、4a...クランク軸方向、10...オイルパン、11...オイルパン本体、12...フランジ部、12a...開口部、12b...内縁部、13...周壁、14...底壁、14A...深底部、14a...前縁部(クランク軸と交差する方向の深底部の一側縁部)、14B...浅底部、14b...前縁部(クランク軸と交差する方向の浅底部の一側縁部)、14C...段差部、14c...後縁部(クランク軸と交差する方向の深底部の他側縁部)、14D...中央底部、14d...後縁部(クランク軸と交差する方向の浅底部の他側縁部)、14E...前側上げ底部(上げ底部)、14F...後側上げ底部(上げ底部)、14J...フィルタ取付壁、14K...膨出壁、15...前壁(第3の側壁)、16...後壁(第4の側壁)、17...左側壁(第1の側壁)、18...右側壁(第2の側壁)、21...オイルフィルタ、H...アッパレベル(上限レベル)、L...ロアレベル(下限レベル)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7