(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046656
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】電気融着継手
(51)【国際特許分類】
F16L 47/02 20060101AFI20230329BHJP
B29C 65/34 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
F16L47/02
B29C65/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021155366
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼屋 智嗣
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見 安孝
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 大慧
【テーマコード(参考)】
3H019
4F211
【Fターム(参考)】
3H019GA03
4F211AD12
4F211AG08
4F211AH11
4F211AK09
4F211TA01
4F211TC11
4F211TD11
4F211TN08
4F211TQ13
(57)【要約】
【課題】電熱線のキンクが発生し難い電気融着継手を提供する。
【解決手段】円筒状の受口部3を有する継手本体と2、受口部3の内周面に埋め込まれたコイル状の電熱線4とを有し、電熱線4の、巻き内径をR(単位:mm)、ヤング率をE(単位:kgf/mm
2)、線径をd(単位:mm)とすると、A=E・I/R
3(I=π・d
4/64)で表されるリング剛性Aが2.3×10
-3kgf/mm以上である、電気融着継手1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の受口部を有する継手本体と、前記受口部の内周面に埋め込まれたコイル状の電熱線とを有し、
前記電熱線の、巻き内径をR(単位:mm)、ヤング率をE(単位:kgf/mm2)、線径をd(単位:mm)とすると、下記式1で表されるリング剛性Aが2.3×10-3kgf/mm以上である、電気融着継手。
A=E・I/R3 … 式1
I=π・d4/64 … 式2
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気融着継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス配管や上下水道配管等の樹脂管を接続する継手として、電気融着継手が知られている。例えば、樹脂管を挿入する円筒状の受口を有する電気融着継手は、受口の内周面近傍にコイル状の電熱線が埋め込まれている。電熱線に通電して、電熱線に近接する部分を所定時間加熱すると、受口の内周面と樹脂管の外周面とが融着する。
【0003】
電気融着工程において、電熱線の熱膨張に起因してキンク(よじれ、ねじれ等)が発生する場合がある。通電中にキンクが発生すると、電熱線どうしが接触して短絡しやすくなるため、融着不良が生じやすい。
特許文献1では、電熱線どうしが接触しても短絡が生じないように、ポリイミド等を用いた絶縁皮膜で電熱線を被覆する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の方法は製造コストが増加するという問題がある。
本発明は、電熱線のキンクが発生し難い電気融着継手を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の態様を有する。
[1] 円筒状の受口部を有する継手本体と、前記受口部の内周面に埋め込まれたコイル状の電熱線とを有し、前記電熱線の、巻き内径をR(単位:mm)、ヤング率をE(単位:kgf/mm2)、線径をd(単位:mm)とすると、下記式1で表されるリング剛性Aが2.3×10-3kgf/mm以上である、電気融着継手。
A=E・I/R3 … 式1
I=π・d4/64 … 式2
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電熱線のキンクが発生し難い電気融着継手が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る電気融着継手の例を示す正面図である。
【
図2】電熱線にキンクが発生した電気融着継手のX線画像の例を示す模式図である。
【
図3】実施例及び比較例の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
図1は本実施形態の電気融着継手1を一部断面視した正面図である。本実施形態の電気融着継手1は継手本体2と、電熱線4とを有する。
継手本体2は、円筒状で両端に開口を有する。管軸Q方向の中央に、内周面2aから内方に突出する位置決め突起2bが存在し、その両側が、それぞれ円筒状の受口部3である。電気融着時には受口部3に樹脂管(図示せず)を挿入する。
【0010】
受口部3には、継手本体2の内周面2aに埋め込まれた電熱線4が存在する。管軸Q方向において、電熱線4が存在する領域が加熱領域である。加熱領域と継手本体2の開口との間、及び加熱領域と位置決め突起2bとの間は、電熱線4が存在しないコールド領域である。
電熱線4は内周面2aに沿うコイル状をなしており、内周面2aの近傍に存在する。電熱線4の巻き内径Rと受口部3の内径rとの差を表す(R-r)の値は、例えば0.1~5mmであり、0.2~4mmが好ましく、0.2~3mmがより好ましい。
受口部3の内径rは、電気融着継手1の用途に応じて設計できる。受口部3の内径rが大きいと、電気融着時に電熱線4のキンクが生じやすく、本発明を適用することによる効果が大きい。
【0011】
コイル状である電熱線4の、管軸Q方向における線間の距離(電熱線の太さを含まない)は、例えば0.5~3mmが好ましく、0.5~2mmがより好ましい。線間の距離が均一でない場合は平均値で表す。
電熱線4の全巻き数は、管軸Q方向における加熱領域の長さに応じて設定できる。
【0012】
継手本体2の、管軸Q方向の両端部の外周面には、継手本体2の径方向外側に突出する一対のターミナルピン11が存在する。ターミナルピン11は電熱線4に電気的に接続している。通電装置(図示略)のケーブルコネクタを、ターミナルピン11に取り付けて、電熱線4に通電すると、電熱線4が発熱する。
加熱領域の外周面には、インジケータ12が存在する。インジケータ12は、継手本体2の径方向に凹む凹部12aの底面と一体的に形成されている。継手本体2の受口部3に樹脂管を挿入した状態で電熱線4が発熱すると、電熱線4の周りの樹脂が溶融して熱膨張する。受口部3と樹脂管との融着部分に充分な加圧力が発生するとインジケータ12が径方向外側に隆起する。インジケータ12が凹部12aから表出することで、融着が適性に行われたと判定できる。
【0013】
継手本体2は熱可塑性樹脂組成物からなる。熱可塑性樹脂組成物として、例えばポリオレフィンを主成分とする樹脂組成物が挙げられる。本明細書において「ポリオレフィンを主成分とする樹脂組成物」とは、ポリオレフィンを50質量%以上含む樹脂組成物を意味する。例えば、ポリオレフィンの1種以上からなる樹脂組成物、又はポリオレフィンの1種以上と、必要に応じた添加剤とを含む樹脂組成物が挙げられる。
継手本体2を構成する樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂は1種でもよく、2種以上でもよい。具体的には、ポリブテン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等を例示できる。
継手本体2を構成する樹脂組成物の融点は120~135℃が好ましく、125~130℃がより好ましい。
【0014】
電熱線4は、通電すると発熱する材料からなる。電気抵抗が大きい材料が好適に用いられる。例えば、ニクロム線、鉄クロム合金線、銅線、銅ニッケル合金線、鉄ニッケル合金線、マンガン線、銅ニッケルマンガン合金線、ニッケルクロム合金線、クロメル線等が挙げられる。
【0015】
電熱線4の、巻き内径をR(単位:mm)、ヤング率をE(単位:kgf/mm2)、線径をd(単位:mm)とするとき、下記式1で表されるリング剛性Aが2.3×10-3kgf/mm以上である。
A=E・I/R3 … 式1
I=π・d4/64 … 式2
式1中のIは、式2で表される断面二次モーメント(単位:mm4)である。
例えば、電熱線4の巻き内径R(単位:mm)に応じて、電熱線4の材質(ヤング率E)及び線径dを、リング剛性Aが所望の値となるように設計する。
【0016】
電熱線4のリング剛性Aが、2.3×10-3kgf/mm以上であると、電熱線4のキンクを防止できる。リング剛性Aは5.0×10-3kgf/mm以上が好ましく、1.0×10-2kgf/mm以上がより好ましい。リング剛性Aの上限は特に限定されない。
【0017】
電気融着継手1は、公知の方法で製造できる。例えば、継手本体2の内面形状に対応するコア金型を用意し、コア金型の外面上に電熱線4をコイル状に巻く。継手本体2の外面形状に対応する外側金型と、電熱線4を巻いたコア金型との間の空間に、樹脂組成物を射出成形する方法で電気融着継手1を製造できる。
又は、継手本体2を、電熱線4が存在する面を境界面とする内層部材と外層部材とに分割して成形する方法でも製造できる。例えば、まず、射出成形法で内層部材を成形し、その外面上に電熱線4をコイル状に巻く。電熱線4を巻いた内層部材を金型内に配置し、射出成形法で外層部材を成形するとともに、内層部材と外層部材とを一体化する方法で電気融着継手1を製造できる。
【0018】
なお、本実施形態の電気融着継手1の形状はソケットであるが、これに限らず、円筒状の受口を有する形状であれば同様に適用できる。例えば、チーズ、エルボ等を例示できる。
【実施例0019】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
(実施例)
図1に示すソケット型の電気融着継手1を製造した。継手本体2は、高密度ポリエチレン樹脂を主成分とする樹脂組成物(融点130℃)からなる。
得られた電気融着継手1と樹脂管とを電気融着して接合した。樹脂管は、高密度ポリエチレン樹脂を主成分とする樹脂組成物(融点130℃)からなる。樹脂管の外径は電気融着継手1の呼び径に対応するものを選択した。
電気融着後にX線検査を行い、電熱線を観察してキンク発生の有無を調べた。
図2は、電熱線のキンクが発生した電気融着継手のX線画像を模式的に示した図である。符号20はキンクが発生した部分を示す。
寸法等が異なる各種電気融着継手1について、キンク発生の有無を調べた結果を
図3に示す。
図3において、横軸は継手の受口部の内径r、縦軸はリング剛性Aである。○はキンクが発生しなかった例であり、×はキンクが発生した例である。
図3の結果に示されるように、電熱線のリング剛性Aが2.3×10
-3kgf/mm以上であるとき、キンクは発生しなかった。