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特開2023-46751ブタジエン製造用触媒、ブタジエンの製造装置、及びブタジエンの製造方法
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  • 特開-ブタジエン製造用触媒、ブタジエンの製造装置、及びブタジエンの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046751
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】ブタジエン製造用触媒、ブタジエンの製造装置、及びブタジエンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 21/08 20060101AFI20230329BHJP
   B01J 38/12 20060101ALI20230329BHJP
   B01J 21/20 20060101ALI20230329BHJP
   C07C 1/24 20060101ALI20230329BHJP
   C07C 11/167 20060101ALI20230329BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230329BHJP
【FI】
B01J21/08 Z
B01J38/12 B
B01J21/20 Z
C07C1/24
C07C11/167
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021155523
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】柳橋 宣利
(72)【発明者】
【氏名】西山 悠
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA10
4G169BA02B
4G169BC51B
4G169BC52B
4G169CB20
4G169CB21
4G169CB63
4G169DA06
4G169EA02Y
4G169EB18Y
4G169EC03Y
4G169EC08Y
4G169EC14Y
4G169EC15Y
4G169ED10
4G169FB79
4G169GA06
4H006AA02
4H006AA04
4H006AB46
4H006AB84
4H006AC25
4H006BA10
4H006BA30
4H006BA55
4H006BC10
4H039CA29
4H039CL25
(57)【要約】
【課題】触媒再生工程を含むブタジエン製造サイクルに用いられ、前記触媒再生工程において、ブタジエン製造用触媒が所定の触媒活性に回復したことを簡便に確認可能なブタジエン製造用触媒、ブタジエンの製造装置、及びブタジエンの製造方法の提供。
【解決手段】エタノールを含む原料からブタジエンを製造するブタジエン製造サイクルに用いられるブタジエン製造用触媒であって、前記ブタジエン製造サイクルは、温度300~400℃で、エタノールを含む原料を前記ブタジエン製造用触媒に接触処理させて、ブタジエンを製造するブタジエン製造工程と、前記ブタジエン製造工程後に温度450~550℃で、酸素を含むガスを前記ブタジエン製造用触媒に接触処理させて、前記ブタジエン製造用触媒を再生する触媒再生工程と、を含み、前記ブタジエン製造用触媒の光線透過率であるPが14%以上である、ブタジエン製造用触媒。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノールを含む原料からブタジエンを製造するブタジエン製造サイクルに用いられるブタジエン製造用触媒であって、
前記ブタジエン製造サイクルは、温度300~400℃で、エタノールを含む原料を前記ブタジエン製造用触媒に接触処理させて、ブタジエンを製造するブタジエン製造工程と、前記ブタジエン製造工程後に温度450~550℃で、酸素を含むガスを前記ブタジエン製造用触媒に接触処理させて、前記ブタジエン製造用触媒を再生する触媒再生工程と、を含み、
前記ブタジエン製造用触媒の光線透過率であるPが14%以上である、ブタジエン製造用触媒。
【請求項2】
下記ブタジエン製造サイクルAにおいて、10回目のサイクルにおける、再生処理直後のブタジエン製造用触媒の光線透過率をP%としたときに、P/Pが0.8~1である、請求項1に記載のブタジエン製造用触媒。
[ブタジエン製造サイクルA]
1.温度315℃で、エタノールを含む原料を、GHSV(エタノール基準)600h-1で前記ブタジエン製造用触媒に接触処理させて6時間、ブタジエンを製造する。
2.温度550℃で、酸素を21体積%含むガスを、GHSV(酸素基準)2100h-1で前記ブタジエン製造用触媒に接触処理させて8時間、前記ブタジエン製造用触媒を再生する。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のブタジエン製造用触媒が充填された反応管を備えるブタジエンの製造装置であって、
前記反応管は、光線を前記ブタジエン製造用触媒に照射する手段と、
前記ブタジエン製造用触媒の前記光線透過率を検出する手段と、を有する、ブタジエンの製造装置。
【請求項4】
前記反応管の少なくとも一部は透明である、請求項3に記載のブタジエンの製造装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のブタジエンの製造装置であって、前記反応管を複数備える、ブタジエンの製造装置。
【請求項6】
請求項5に記載のブタジエンの製造装置を用いるブタジエンの製造方法であって、前記複数の反応管は前記ブタジエン製造工程又は前記触媒再生工程を行っており、前記ブタジエン製造工程を行っている反応管に充填されている反応時のブタジエン製造用触媒の光線透過率をP%としたときに、P/Pが0.06以下となった前記ブタジエン製造用触媒が充填された反応管を、前記ブタジエン製造工程から、前記触媒再生工程に切り替える、ブタジエンの製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載のブタジエンの製造装置を用いるブタジエンの製造方法であって、前記複数の反応管は前記ブタジエン製造工程又は前記触媒再生工程を行っており、前記触媒再生工程を行っている反応管に充填されている前記再生時のブタジエン製造用触媒の光線透過率をP%としたときに、P/Pが0.8以上となった前記ブタジエン製造用触媒が充填された反応管を、前記触媒再生工程から、前記ブタジエン製造工程に切り替える、ブタジエンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブタジエン製造用触媒、ブタジエンの製造装置、及びブタジエンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1,3-ブタジエン等のブタジエンは、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)等の原料として用いられている。従来、ブタジエンは、C4留分から精製されていた。C4留分は、石油からエチレンを合成するナフサクラッキングの際に副生する留分である。しかし、シェールガスの利用量の増加に伴って石油の利用量が減少した。その結果、石油のナフサクラッキングで得られるブタジエンの生産量も減少している。このため、1,3-ブタジエンを製造するための代替方法が求められている。
【0003】
ところで、近年では、石油から得られる化学工業原料に代えてバイオマス由来原料から誘導された化学工業原料が注目されている。1,3-ブタジエン等についても、サトウキビやトウモロコシ等のバイオマス由来のバイオエタノールから製造することの重要度が増している。
【0004】
特許文献1は、加熱下で、エタノールを酸化ゲルマニウムと酸化マグネシウムとを含有する触媒に接触処理することを特徴とする1,3-ブタジエンの製造方法を開示している。また、炭素質などが堆積して活性が低下した触媒を、反応器内において、350~500℃程度の加熱下において、空気を流通させ、1~24時間再生処理を行うことで、触媒活性が回復することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2014/129248号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ブタジエンの製造効率を高めるためには、再生処理の時間をできるだけ短くすることが効率的である。一方、再生処理の時間が短すぎると触媒活性の回復が不充分となり、ブタジエンの製造効率が低下する。したがって、所定の触媒活性に回復するための最短の再生処理の時間を確認する方法が望まれる。
【0007】
例えば、再生処理中の触媒を反応管から抜き出し、触媒中の炭素量を測定することにより、触媒の再生の進行度を確認する方法が考えられる。しかしながら、この方法では、反応管から再生処理後の触媒を抜出す工程、炭素量を測定する工程が必要となり、効率的ではない。一方、十分に再生するために通常よりも長時間再生処理をする方法も考えられる。しかしながら、この方法では実生産を鑑みると、再生時間が増大することで生産時間を短縮しなければならず、こちらも効率的ではない。
【0008】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであって、触媒再生工程を含むブタジエン製造サイクルに用いられ、前記触媒再生工程において、ブタジエン製造用触媒が所定の触媒活性に回復したことを簡便に確認可能なブタジエン製造用触媒、ブタジエンの製造装置、及びブタジエンの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の態様を有する。
[1] エタノールを含む原料からブタジエンを製造するブタジエン製造サイクルに用いられるブタジエン製造用触媒であって、前記ブタジエン製造サイクルは、温度300~400℃で、エタノールを含む原料を前記ブタジエン製造用触媒に接触処理させて、ブタジエンを製造するブタジエン製造工程と、前記ブタジエン製造工程後に温度450~550℃で、酸素を含むガスを前記ブタジエン製造用触媒に接触処理させて、前記ブタジエン製造用触媒を再生する触媒再生工程と、を含み、前記ブタジエン製造用触媒の光線透過率であるPが14%以上である、ブタジエン製造用触媒。
[2] 下記ブタジエン製造サイクルAにおいて、10回目のサイクルにおける、再生処理直後のブタジエン製造用触媒の光線透過率をP%としたときに、P/Pが0.8~1である、[1]に記載のブタジエン製造用触媒。
[ブタジエン製造サイクルA]
1.温度315℃で、エタノールを含む原料を、GHSV(エタノール基準)600h-1で前記ブタジエン製造用触媒に接触処理させて6時間、ブタジエンを製造する。
2.温度550℃で、酸素を21体積%含むガスを、GHSV(酸素基準)2100h-1で前記ブタジエン製造用触媒に接触処理させて8時間、前記ブタジエン製造用触媒を再生する。
[3] [1]又は[2]に記載のブタジエン製造用触媒が充填された反応管を備えるブタジエンの製造装置であって、前記反応管は、光線を前記ブタジエン製造用触媒に照射する手段と、前記ブタジエン製造用触媒の前記光線透過率を検出する手段と、を有する、ブタジエンの製造装置。
[4] 前記反応管の少なくとも一部は透明である、[3]に記載のブタジエンの製造装置。
[5] [3]又は[4]に記載のブタジエンの製造装置であって、前記反応管を複数備える、ブタジエンの製造装置。
[6] [5]に記載のブタジエンの製造装置を用いるブタジエンの製造方法であって、前記複数の反応管は前記ブタジエン製造工程又は前記触媒再生工程を行っており、前記ブタジエン製造工程を行っている反応管に充填されている反応時のブタジエン製造用触媒の光線透過率をP%としたときに、P/Pが0.06以下となった前記ブタジエン製造用触媒が充填された反応管を、前記ブタジエン製造工程から、前記触媒再生工程に切り替える、ブタジエンの製造方法。
[7] [5]に記載のブタジエンの製造装置を用いるブタジエンの製造方法であって、前記複数の反応管は前記ブタジエン製造工程又は前記触媒再生工程を行っており、前記触媒再生工程を行っている反応管に充填されている前記再生時のブタジエン製造用触媒の光線透過率をP%としたときに、P/Pが0.8以上となった前記ブタジエン製造用触媒が充填された反応管を、前記触媒再生工程から、前記ブタジエン製造工程に切り替える、ブタジエンの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、触媒再生工程を含むブタジエン製造サイクルに用いられ、前記触媒再生工程において、ブタジエン製造用触媒が所定の触媒活性に回復したことを簡便に確認可能なブタジエン製造用触媒、ブタジエンの製造装置、及びブタジエンの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態にかかるブタジエンの製造装置の模式図である。
図2】本発明の一実施形態にかかるブタジエンの製造装置が備える反応管を示す模式図である。
図3】本発明の一実施形態にかかるブタジエンの製造装置が備える反応管を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下の記載は本発明の実施態様の一例であり、本発明はこれらの内容に限定されず、その要旨の範囲内で変形して実施することができる。
【0013】
本実施形態のブタジエン製造用触媒は、エタノールを含む原料からブタジエンを製造するブタジエン製造サイクルに用いられる触媒である。前記ブタジエン製造用触媒の任意の波長の光線透過率であるPは、14%以上である。
はじめに、ブタジエン製造サイクルについて説明を行う。
【0014】
<ブタジエン製造サイクル>
ブタジエン製造サイクルは、ブタジエン製造工程と、触媒再生工程を、含む。
ブタジエン製造工程は、温度300~400℃で、エタノールを含む原料を前記ブタジエン製造用触媒に接触処理させて、ブタジエンを製造する工程である。
触媒再生工程は、前記ブタジエン製造工程後に温度450~550℃で、酸素を含むガスを前記ブタジエン製造用触媒に接触処理させて、前記ブタジエン製造用触媒を再生する工程である。
【0015】
(ブタジエン製造工程)
ブタジエン製造工程は、本実施形態のブタジエン製造用触媒を用いてエタノールを含む原料からブタジエンを製造する工程である。本発明において、製造対象であるブタジエンは、特に限定されないが、1,3-ブタジエンが好ましい。
【0016】
ブタジエンの製造工程では、ブタジエン製造用触媒にエタノールを含む原料を接触処理させる。
原料は、ブタジエンに変換され得る物質であり、少なくともエタノールを含む。原料は、例えば、エタノール、又はエタノール及びアセトアルデヒドが好ましい。
原料とブタジエン製造用触媒とを接触処理させる態様は、特に限定されず、例えば、反応管内のブタジエン製造用触媒を含む触媒層に原料をガスとして流通させ、ブタジエン製造用触媒を含む触媒層と原料とを接触させる態様が例示できる。
【0017】
原料がアセトアルデヒドを含まない場合、原料100体積%に対するエタノールの含有量は、10~100体積%であることが好ましく、20~100体積%であることがより好ましく、30~100体積%であることがさらに好ましい。エタノールの含有量が前記下限値以上であると、反応が急激に進行しないので、触媒の温度低下などが起きにくく反応が安定するという効果が得られる。エタノールの含有量が前記上限値以下であると、反応性が高く生産が可能という効果が得られる。
【0018】
原料がアセトアルデヒドを含む場合、原料100体積%に対するエタノールの含有量は、10~80体積%であることが好ましく、20~70体積%であることがより好ましく、30~60体積%であることがさらに好ましい。エタノールの含有量が前記下限値以上であると、反応が急激に進行しないので、触媒の温度低下などが起きにくく反応が安定するという効果が得られる。エタノールの含有量が前記上限値以下であると、反応性が高く生産が可能という効果が得られる。
【0019】
原料がアセトアルデヒドを含む場合、原料100体積%に対するアセトアルデヒドの含有量は、10~80体積%であることが好ましく、20~70体積%であることがより好ましく、30~60体積%であることがさらに好ましい。アセトアルデヒドの含有量が前記下限値以上であると、反応が急激に進行しないので、触媒の温度低下などが起きにくく反応が安定するという効果が得られる。アセトアルデヒドの含有量が前記上限値以下であると、反応性が高く生産が可能という効果が得られる。
【0020】
原料がアセトアルデヒドを含む場合、原料100体積%に対するエタノール及びアセトアルデヒドの合計含有量は、10~100体積%であることが好ましく、30~100体積%であることがより好ましく、50~100体積%であることがさらに好ましい。エタノール及びアセトアルデヒドの合計含有量が前記下限値以上であると、反応が急激に進行しないので、触媒の温度低下などが起きにくく反応が安定するという効果が得られる。エタノール及びアセトアルデヒドの合計含有量が前記上限値以下であると、反応性が高く生産が可能という効果が得られる。
【0021】
原料がアセトアルデヒドを含む場合、エタノールの体積に対するアセトアルデヒドの体積の割合は、0.2~0.8であることが好ましく、0.2~0.7であることがより好ましく、0.4~0.6であることがさらに好ましい。前記割合が、前記範囲内であると、ブタジエンの生産能が高まるという効果が得られる。
【0022】
エタノールとアセトアルデヒドの合計含有量100体積%未満の場合のバランスガスとしては、例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガスを例示できる。
不活性ガスは、希釈ガスである。原料ガスが希釈ガスを含むことで、ブタジエン選択率がさらに高まる。
【0023】
原料とブタジエン製造用触媒とを接触処理させる際の温度(反応温度)は、300~400℃であり、315~380℃がより好ましい。反応温度が前記下限値以上であれば、反応速度が充分に高まり、ブタジエンをより効率的に製造できる。反応温度が前記上限値以下であれば、ブタジエン製造用触媒の劣化を抑制しやすい。
【0024】
原料とブタジエン製造用触媒とを接触処理させる際の圧力(反応圧力)は、例えば、0.1~10MPaが好ましく、0.1~3MPaがより好ましい。反応圧力が上記下限値以上であれば、反応速度が高まり、ブタジエンをより効率的に製造できる。反応圧力が上記上限値以下であれば、ブタジエン製造用触媒の劣化を抑制しやすい。
【0025】
ブタジエン製造用触媒を含む触媒層に対する原料のガス空間速度(Gas Hourly Space Velocity:GHSV)は、標準状態換算で、0.1~10000h-1が好ましく、100~5000h-1がより好ましく、200~4000h-1がさらに好ましく、400~3000h-1が特に好ましい。GHSVが前記下限値以上であると、エタノールを含む原料の処理能力が高くなる。GHSVが前記上限値以下であると、ブタジエンの収率が向上する。
上記GHSVは、原料がアセトアルデヒドを含まない場合は、触媒層に含まれるブタジエン製造用触媒の体積に対するエタノールのGHSVであり、原料がアセトアルデヒドを含む場合は、触媒層に含まれるブタジエン製造用触媒の体積に対するエタノールとアルデヒドの合計のGHSVを意味する。すなわち、触媒層が後述の希釈剤を含む場合でも、GHSVの計算には、触媒層中のブタジエン製造用触媒の体積を使用する。以下も同様である。
以下、本明細書において、GHSVは、標準状態換算の値を意味する。
【0026】
後述の製造装置10を用いてブタジエンを製造する場合は、温度制御部5及び圧力制御部6で反応管1内を任意の温度及び任意の圧力とする。ガス化された原料ガスを原料供給配管3から反応管1内に供給する。反応管1内において原料がブタジエン製造用触媒に接触して反応し、ブタジエンが生成する。ブタジエンを含む生成ガスは、生成物排出配管4から排出する。
生成ガスには、エタノール、ブタジエンの他、アセトアルデヒド、プロピレン、エチレン等の化合物が含まれていてもよい。
【0027】
ブタジエンを含む生成ガスに対しては、必要に応じて気液分離や蒸留精製等の精製を行い、未反応の原料や副生物を除去する。
【0028】
(触媒再生工程)
触媒再生工程は、前記ブタジエン製造工程後に温度450~550℃で、酸素を含むガスを前記ブタジエン製造用触媒に接触処理させて、前記ブタジエン製造用触媒を再生する工程である。
【0029】
酸素を含むガス100体積%に対する酸素の含有量は、5~50体積%であることが好ましく、10~30体積%であることがより好ましく、17~21体積%であることがさらに好ましい。酸素の含有量が前記下限値以上であると、触媒再生の効率が向上する。酸素の含有量が100体積%未満の場合のバランスガスとしては、上述の不活性ガスが例として挙げられる。酸素を含むガスとして、空気を使用してもよい。
【0030】
酸素を含むガスとブタジエン製造用触媒とを接触処理させる際の温度(再生温度)は、450~550℃であり、480~550℃がより好ましい。再生温度が前記下限値以上であれば、触媒再生が好適に進行する。再生温度が前記上限値以下であれば、ブタジエン製造用触媒の劣化を抑制しやすい。
【0031】
酸素を含むガスとブタジエン製造用触媒とを接触処理させる際の圧力(再生圧力)は、例えば、0.1~10MPaが好ましく、0.1~3MPaがより好ましい。再生圧力が上記下限値以上であれば、触媒再生が好適に進行する。再生圧力が上記上限値以下であれば、ブタジエン製造用触媒の劣化を抑制しやすい。
【0032】
ブタジエン製造用触媒を含む触媒層に対する酸素を含むガスのGHSVは、酸素換算で0.02~10000h-1が好ましく、20~5000h-1がより好ましく、20~4000h-1がさらに好ましく、80~3000h-1が特に好ましい。GHSVが前記下限値以上であると、触媒再生が好適に進行する。GHSVが前記上限値以下であると、再生時の発熱が抑制され、ブタジエン製造用触媒の劣化を抑制しやすい。
【0033】
後述の製造装置10を用いて触媒再生を行う場合は、温度制御部5及び圧力制御部6で反応管1内を任意の温度及び任意の圧力とする。酸素を含むガスを原料供給配管3から反応管1内に供給する。反応管1内において酸素を含むガスがブタジエン製造用触媒に接触して、炭素質が燃焼し、触媒が再生される。燃焼によって生成した排ガスは、生成物排出配管4から排出する。
【0034】
≪ブタジエン製造用触媒≫
本発明のブタジエン製造用触媒は、エタノールを含む原料からブタジエンを合成するための触媒である。
【0035】
ブタジエン製造用触媒(フレッシュ触媒)の任意の波長における光線透過率であるPは、14%以上である。Pが14%以上であるということは、いずれの波長の光源を用いて触媒の光線透過度を測定した場合であっても、ブランクの光線透過度に対して、14%以上の光線透過率を示し、ブタジエン製造用触媒が透明又は透明に近いことを意味する。前記ブタジエン製造工程においては、炭素質などが堆積し、ブタジエン製造用触媒の活性が低下する。炭素質などが堆積した触媒は有色(特に黒色)となる。したがって、本実施形態のブタジエン製造用触媒を用いることによって、前記触媒再生工程における触媒再生の進行度を、光線透過率の変化として確認することが可能となる。光線透過率を測定する光源としては任意の波長の光源を使用することができるが、好ましくは540~1000nmの範囲から選ばれるいずれかの波長の光源を用いることができる。光源の強さ、検出器の感度、光源と検出器との距離などに合わせて適切な波長の光源を使用することができる。中でも、光源の波長は、可視光(360~830nm)が好ましい。可視光の波長の例としては、600nm、780nm、800nmが挙げられる。
ブタジエン製造用触媒のPは、15%以上であることが好ましく、18%以上であることがより好ましい。ブタジエン製造用触媒のPの上限は特に限定されないが、例えば、90%である。
が15%以上であると、特に触媒再生工程終盤における触媒再生の進行度をより正確に確認することができる。
【0036】
ブタジエン製造用触媒の任意の波長の光線透過率は、分光光度計(例えば、日立株式会社製、装置名U-4100)により測定することができる。
具体的には、分光光度計の測定用セルにブタジエン製造用触媒を充填し、任意の波長の光線透過度Pを測定する。なお、ブタジエン製造用触媒が大きすぎて測定用セルに入らない場合は、触媒を割るなどした上で充填すればよい。次に、空の測定用セルの前記波長の光線透過度Pを測定する。得られたPをPで除して、さらに100を乗じることによりPを求めることができる。なお、PとPを測定する際の光源の波長は同じ波長とする。
【0037】
本実施形態のブタジエン製造用触媒は、下記ブタジエン製造サイクルAにおいて、10回目のサイクルにおける、再生処理直後のブタジエン製造用触媒の光線透過率をP%としたときに、P/Pが0.8~1であることが好ましく、0.85~1であることがより好ましく、0.88~1であることがさらに好ましい。なお、PとPを測定する際の光源の波長は同じ波長とする。
【0038】
[ブタジエン製造サイクルA]
1.温度315℃で、エタノールを含む原料を、GHSV(エタノール基準)600h-1で前記ブタジエン製造用触媒に接触処理させて6時間、ブタジエンを製造する。
2.温度550℃で、酸素を21体積%含む気体を、GHSV(酸素基準)2100h-1で前記ブタジエン製造用触媒に接触処理させて8時間、前記ブタジエン製造用触媒を再生する。
【0039】
以下、本実施形態のブタジエン製造用触媒の具体的な構成について説明を行う。
【0040】
(活性金属)
ブタジエン製造用触媒は、活性金属を含む。活性金属としては、ハフニウム、ジルコニウム、銅、タンタル、ニオブ、マグネシウム、亜鉛、銀等の金属が例として挙げられ、触媒活性の観点から、ハフニウム、ジルコニウム、タンタル、ニオブが好ましく、ハフニウム、ジルコニウムがより好ましい。活性金属は1種類のみを使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0041】
活性金属の形態としては、酸化物、塩化物、硫化物、硝酸塩、炭酸塩等の無機塩、シュウ酸塩、アセチルアセトナート塩、ジメチルグリオキシム塩、エチレンジアミン酢酸塩等の有機塩又はキレート化合物、カルボニル化合物、シクロペンタジエニル化合物、アンミン錯体、アルコキシド化合物、アルキル化合物等が例示され、その中でもブタジエンの製造効率を高める観点から酸化物が好ましい。活性金属は後述の担体中の酸素以外の元素と複合酸化物を形成してもよい。活性金属を2種類以上併用する場合、これら2種類以上の元素の複合酸化物を形成していてもよい。
【0042】
(担体)
ブタジエン製造用触媒は、活性金属が担体に担持された担持触媒であることが好ましい。
ブタジエン製造用触媒の担体としては、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、カルシア等の酸化物が挙げられ、シリカ、チタニア、ジルコニアが好ましく、シリカが特に好ましい。シリカには、比表面積や細孔直径の異なる種々の製品がある。担体の比表面積や細孔直径を組み合せることで、ブタジエン選択率、原料転化率を制御できる。担体は1種類のみを使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0043】
担体の波長600~1200nmから選択される波長の内、透過率の最も高い波長における当該光線透過率は、20%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましく、35%以上であることがさらに好ましい。担体の光線透過率が前記下限値以上であると、上述の光線透過率が14%以上であるブタジエン製造用触媒が得られやすくなる。担体の光線透過率は、上述したPの測定と同様の方法で測定することができる。
【0044】
上記光線透過率特性を発現するためには、担体中の不純物の含有量が少ないことが好ましい。担体の総質量に対する不純物の含有量は10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましい。不純物の含有量が前記上限値以下であると、光線透過率が前記上限値以下のブタジエン製造用触媒が得られやすくなる。また、担体を構成する酸化物の一次粒子の粒径は、780nm未満であることが好ましく、400nm以下であることがより好ましく、300nm以下であることがさらに好ましい。粒径が前記上限値以下であると、光線透過率が前記上限値以下のブタジエン製造用触媒が得られやすくなる。
【0045】
担体に含まれる酸化物としてジルコニアを使用する場合、イットリウム又はハフニウムの酸化物が含まれることが好ましい。イットリウム又はハフニウムの酸化物の含有量としては、3~20質量%であることが好ましく、4~15質量%であることがより好ましい。
【0046】
前記担体の中でも多孔質シリカを担体として使用することが好ましい。多孔質シリカとしては、例えば、メソポーラスシリカ等を使用することができる。
【0047】
(ブタジエン製造用触媒の組成)
ブタジエン製造用触媒が、活性金属が担体に担持された担持触媒である場合、ブタジエン製造用触媒の総質量に対する、活性金属の酸化物換算の担持量は、0.2~40質量%であることが好ましく、2~35質量%であることがより好ましく、4~30質量%であることがさらに好ましい。活性金属の酸化物換算の担持量が前記下限値以上であると、充分な量の活性金属を担持でき、原料転化率とブタジエン選択率がさらに高まる。活性金属の酸化物換算の担持量が前記上限値以下であると、活性金属を均一かつ高分散状態にしやすいため、ブタジエン選択率がさらに高まる。また、活性金属の酸化物換算の担持量が前記上限値以下であると、上述の特性を有する担体を使用する限り、得られるブタジエン製造用触媒の光線透過率が14%以上になりやすくなる。
【0048】
本実施形態のブタジエン製造用触媒は、ハフニウムと、元素Mを含むことが好ましい。元素Mは、チタン及びジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素である。元素Mとしては、ジルコニウムが好ましい。ブタジエン製造用触媒中のハフニウムのモル数に対する元素Mのモル数の比(M/Hf)は、20超500以下であることが好ましく、50超400以下であることがより好ましく、100超400以下であることがさらに好ましく、100超300以下であることが特に好ましい。前記モル数の比が前記範囲内であると、ブタジエン収率が高まる。
【0049】
(ブタジエン製造用触媒の物性)
本実施形態のブタジエン製造用触媒の大きさ、形状は特に限定されない。大きさとしては例えば、ブタジエン製造用触媒の長径と短径の平均値が2~80mmであってもよく、3~50mmであってもよい。なお、ブタジエン製造用触媒の大きさの分布ができるだけ狭いことが好ましい。ブタジエン製造用触媒の形状としては、円柱状、中空円柱状態、球状、リング状等の本分野の触媒の形状が挙げられる。
【0050】
ブタジエン製造用触媒の細孔容積の合計(以下、全細孔容積ともいう)は、0.1~2.50mL/gが好ましく、0.25~1.50mL/gがより好ましく、0.50~1.20mL/gがさらに好ましい。全細孔容積が前記範囲の下限値以上であれば、エタノールを含む原料のブタジエン製造用触媒内部への拡散性が向上し、原料転化率とブタジエン選択率がさらに高まる。全細孔容積が前記範囲の上限値以下であれば、原料とブタジエン製造用触媒との接触面積が充分となりやすく、原料転化率とブタジエン選択率がさらに高まる。
なお、ブタジエン製造用触媒の全細孔容積は、水滴定法により測定される値である。水滴定法とは、ブタジエン製造用触媒の表面に水分子を吸着させ、分子の凝縮から細孔容積を測定する方法である。
【0051】
ブタジエン製造用触媒の平均細孔直径は2~50nmが好ましく、2~30nmがより好ましく、2~20nmがさらに好ましく、2~15nmが特に好ましい。平均細孔直径が前記範囲の下限値以上であれば、エタノールを含む原料のブタジエン製造用触媒内部への拡散性が向上し、原料転化率がさらに高まる。また、平均細孔直径が前記範囲の下限値以上であれば、触媒表面の酸強度が強くなりすぎないため、副反応を抑制することができ、結果としてブタジエンの選択率が高まる。平均細孔直径が前記範囲の上限値以下であれば、触媒表面に充分な量の活性点が存在するため、原料転化率とブタジエン選択率がさらに高まる。
【0052】
なお、平均細孔直径は、全細孔容積とBET比表面積とから算出される値である。BET比表面積は、窒素を吸着ガスとし、その吸着量とその時の圧力から算出される値である。具体的には、細孔形状を円筒形であると仮定することにより算出することができる。円筒形の側面積としてBET比表面積A1を、円筒形の体積として全細孔容積V1を使用すると、平均細孔直径Dave1は下記(I)式により算出することができる。
ave1=4V1/A1…(I)
【0053】
平均細孔直径は、水銀圧入法ポロシメーターによっても測定することができる。水銀圧入法は、水銀を加圧してブタジエン製造用触媒の細孔に圧入し、毛細管現象の原理に基づきその圧力と圧入された水銀量から平均細孔直径を算出する。
水銀を圧入した圧力P、触媒の細孔水銀の表面張力γ、接触角θを使用すると、細孔直径は、下記式(II)により算出することができる。平均細孔直径Dave2は下記(II)式によりPの関数として算出されたDの平均値である。
=-(1/P)4γcosθ…(II)
【0054】
本実施形態のブタジエン製造用触媒の比表面積は、100~3000m/gが好ましく、200~2500m/gがより好ましく、200~1500m/gがさらに好ましい。比表面積が前記範囲の下限値以上であれば、触媒表面に充分な量の活性点が存在するため、原料転化率とブタジエン選択率がさらに高まる。比表面積が前記範囲の上限値以下であれば、平均細孔直径が小さくなりすぎず、エタノールを含む原料のブタジエン製造用触媒内部への拡散性が向上し、原料転化率がさらに高まる。
なお、前記比表面積は、窒素を吸着ガスとし、BET式ガス吸着法により測定されるBET比表面積である。
【0055】
ブタジエン製造用触媒における全細孔容積と比表面積との積は、10~100000mL・m/gが好ましく、20~25000mL・m/gがより好ましく、20~2000mL・m/gがさらに好ましい。前記積が前記範囲の下限値以上であれば、触媒表面に充分な量の活性点が存在するため、原料転化率とブタジエン選択率がさらに高まる。前記積が前記範囲の上限値以下であれば、活性点とならない触媒表面が大きくなりすぎず、副反応を抑制することができ、結果としてブタジエン選択率がさらに高まる。
【0056】
本実施形態のブタジエン製造用触媒におけるメソ細孔(細孔径が2~50nmの細孔)の細孔容積の合計(以下、全メソ細孔容積ともいう)が、全細孔容積に対して、50~100%であることが好ましく、80~100%であることがより好ましく、90~100%であることがさらに好ましい。
全細孔容積に対する、全メソ細孔容積が前記範囲の下限値以上であれば、ブタジエン製造用触媒に充分なメソ細孔が存在し、エタノールを含む原料のブタジエン製造用触媒内部への拡散性が向上するため、原料転化率とブタジエン選択率がさらに高まる。
ブタジエン製造用触媒の全細孔容積は、前述した水滴定法により測定される値である。ブタジエン製造用触媒の全メソ細孔容積は、窒素吸着法により2~50nmの細孔を有する細孔の容積を測定し、それらを合計することによって得ることができる。
【0057】
<ブタジエン製造用触媒の製造方法>
ブタジエン製造用触媒は、例えば、活性金属を担体に担持し、その後、乾燥、焼成を行うことによって製造することができる。
【0058】
担体を製造する方法は、特に限定されず、従来公知の製造方法で製造されたものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
【0059】
例えば、担体としてシリカを製造する方法としては、例えば、ケイ素元素を含む化合物と、無機酸とを含む溶液を混合することによるゾルゲル法が挙げられる。前記ケイ素元素を含む化合物としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸アンモニウム等が例として挙げられる。また、前記無機酸としては、硫酸、硝酸、塩酸等が例として挙げられる。
【0060】
上述の担体(シリカ)の波長600~1200nmから選択される波長の内、透過率の最も高い波長における当該光線透過率が20%以上である担体(シリカ)を得るためのシリカの製造方法について説明する。まず、スプレードライでシリカの種結晶を製造し、ケイ酸ナトリウム水溶液中で種結晶を加熱乾燥することにより、粒成長させることで製造することができる。このように製造されたシリカは、不純物が少なくなり上述の特性を有すると考えられる。
【0061】
上記特性を有するシリカとしては、市販品を使用することもできる。市販品としては、富士シリシア株式会社製の製品名キャリアクトQ、キャリアクトG等が例として挙げられる。
【0062】
活性金属の原料化合物としては、特に限定されず、例えば、活性金属の原料化合物としては、それぞれ、例えば、活性金属の塩化物、塩化酸化物、硫化物、硝酸塩、炭酸塩のような無機塩、シュウ酸塩、アセチルアセトナート塩、ジメチルグリオキシム塩、エチレンジアミン酢酸塩のような有機塩、キレート化合物、カルボニル化合物、シクロペンタジエニル化合物、アンミン錯体、アルコキシド化合物、アルキル化合物等が挙げられる。
中でも、上記化合物としては、塩化物または塩化酸化物であることが好ましい。また、上記化合物には、必要に応じて、水和物を使用してもよい。
【0063】
活性金属の原料化合物の具体例としては、塩化ハフニウム(HfCl)、塩化チタン(TiCl、TiCl、TiCl)、チタンアルコキシド、塩化ジルコニウム(ZrCl)、塩化酸化ジルコニウム(ZrClO)、ジルコニウムアルコキシド、ハフニウムアルコキシド等が挙げられる。
なお、上記化合物は、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0064】
活性金属の担体への担持方法としては、本分野で公知の担持方法に準じて行うことができる。このような、担持方法としては、例えば、含浸法、共沈法、イオン交換法等が挙げられる。
【0065】
上記担持方法に使用される活性金属の原料化合物を溶解させる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水、及びメタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ヘキサノールのような脂肪族直鎖アルコールのような有機溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
中でも、溶媒としては、取り扱い性が容易である観点から、水単独、水とメタノール又はエタノールとの混合溶媒が好ましい。なお、水としては、金属イオン等を除去したイオン交換水、または蒸留水が好ましい。
【0066】
ブタジエン製造用触媒が、活性金属を2種類以上含む場合、これらの活性金属を担体に担持する方法としては、同時法、逐次法等がある。同時法は、全ての原料化合物を溶解した溶液を担体に上述の方法で担持させる方法である。逐次法は、各原料化合物を別個に溶解した溶液を調製し、逐次的に担体に各溶液を上述の方法で担持させる方法である。
【0067】
次に、溶液が含浸された含浸体を、溶液から分離および乾燥した後、焼成する。これにより、活性金属が担体に固定され、ブタジエン製造用触媒を得ることができる。
含浸体の溶液からの分離は、例えば、濾過、デカンテーション、遠心分離等により行うことができる。
【0068】
乾燥温度は、20~200℃であることが好ましく、50~150℃であることがより好ましい。また、乾燥時間は、1時間~10日間であることが好ましく、2時間~5日間であることがより好ましい。
【0069】
焼成温度は、200~800℃であることが好ましく、400~600℃であることがより好ましい。また、焼成時間は、10分間~2日間であることが好ましく、1~10時間であることがより好ましい。
このような条件で、焼成を行うことにより、触媒中に不純物が残留しないか、ほとんど残留しないようにしつつ、活性金属を直接又は酸素元素を介して担体に強固に結合させることができる。
【0070】
上述した逐次法の場合、第1の担持、乾燥を行った後に、第2の担持を行ってもよいし、第1の担持、乾燥、焼成を行った後に、第2の担持を行ってもよい。
【0071】
(ブタジエンの製造装置)
本実施形態のブタジエンの製造装置は、上述の本実施形態のブタジエン製造用触媒が充填された反応管を備える。
ブタジエンの製造装置は、エタノールを含む原料ガスからブタジエンを製造する。
【0072】
以下、ブタジエンの製造装置の一例について、図1に基づいて説明する。
ブタジエンの製造装置10(以下、単に「製造装置10」という。)は、反応管1と原料供給配管3と生成物排出配管4と温度制御部5と圧力制御部6とを備える。
反応管1は、内部に触媒層2を備える。触媒層2には、本発明のブタジエン製造用触媒が充填されている。原料供給配管3は反応管1に接続している。生成物排出配管4は反応管1に接続している。温度制御部5は反応管1に接続している。生成物排出配管4は、圧力制御部6を備える。
【0073】
触媒層2は、本実施形態のブタジエン製造用触媒のみを有してもよいし、本実施形態のブタジエン製造用触媒と希釈材とを有してもよい。希釈材は、触媒が過度に発熱又は冷却することを防止する。
エタノールを含む原料からブタジエンを合成する反応は吸熱反応である。このため、触媒層2は、希釈材を要しないのが通常である。
希釈材は、例えば、ブタジエン製造用触媒の担体と同様のものや、石英砂、アルミナボール、アルミボール、アルミショット等である。
触媒層2に希釈材を充填する場合、希釈材/ブタジエン製造用触媒で表される質量比は、それぞれの種類や比重等を勘案して決定され、例えば、0.5~5が好ましい。
なお、触媒層は、固定床、移動床、流動床等のいずれでもよい。
【0074】
反応管1は、原料ガス及び製造された生成物に対して不活性な材料からなるものが好ましい。反応管1は、100~500℃程度の加熱、又は10MPa程度の加圧に耐え得る形状のものが好ましい。反応管1は、例えば、ステンレス製の略円筒形の部材を例示できる。製造装置10は、反応管1を複数備えることが好ましい。この場合、一部の反応管1において、前記触媒再生工程を行い、残りの反応管1において、ブタジエン製造工程を行うことが好ましい。
【0075】
本発明の一実施形態において、反応管1は、少なくとも一部が透明であることが好ましい。また、反応管1は、全てが透明であってもよい。このような材質としては、石英ガラス、耐熱ガラス等が挙げられる。石英ガラス又は耐熱ガラスを使用するときは、反応管における最も厚さの薄い部分の厚さを4mm以上、反応圧力を、3MPa以下とする。反応圧力は前記反応管における最も厚さの薄い部分の厚さにより適宜調整することができる。
反応管1の少なくとも一部が透明であると、触媒再生工程における触媒再生の進行度を、触媒を抜出すことなく、目視で確認することができる。
【0076】
図2は本発明の一実施形態における、反応管1を示す模式図である。本実施形態の反応管1は、触媒層が位置する部分が透明である。透明な部分は、複数設けられていてもよい。図2では、透明な部分が、触媒層の入り口、中段、出口の3か所に設けられている。この場合、目視で触媒の色味を確認することができる。また、図2に示すように、反応管の一方の側面から光源として任意の波長の光線を触媒層に照射して、反応管の他方の側面に設置した検出器により光線透過度(光線透過率)を検出することができる。
【0077】
図2の反応管1は、任意の波長の光線を前記ブタジエン製造用触媒に照射する手段と、前記ブタジエン製造用触媒の光線透過度(光線透過率)を検出する手段と、を有することが好ましい。
任意の波長の光線を前記ブタジエン製造用触媒に照射する手段としては、例えば、任意の波長の光線を照射可能な機器(光源)を反応管1に取り付けることが挙げられる。ブタジエン製造用触媒の光線透過度(光線透過率)を検出する手段としては、例えば、透過度(光線透過率)を検出可能な検出器を反応管1に取り付けることが挙げられる。光源及び検出器は反応器の外側面に設置されていても、反応器の内部まで嵌入していてもよく、適宜測定距離を調整することができる。また光源と検出器とが一体化された機器を用いて、単位面積当たりの光線透過度や反射光による光線透過度の測定を行うこともできる。
反応管1が、このような構成を有することにより、前記触媒再生工程における触媒再生の進行度を、触媒を抜出すことなく、光線透過率の変化として確認することが可能となる。
【0078】
任意の波長の光線を照射する光源から光線透過度(光線透過率)を検出する検出器までの距離は、例えば、0.2~15[cm]であることが好ましく、0.5~10[cm]であることがより好ましく、1~5[cm]であることがさらに好ましい。なお、反応管の外径が前記距離よりも大きい場合には、光源及び検出器のいずれか一方又は両方は反応管の内部まで嵌入されることとなる。その場合、触媒層に光源及び検出器のいずれか一方又は両方を挿入し、前記距離としてもよい。本実施形態の反応管1の場合、P、及びブタジエン製造工程中又は触媒再生中のブタジエン製造用触媒の光線透過率は具体的に以下のように求めることができる。まず、ブタジエン製造用触媒を充填していない空の反応管1において任意の波長の光線透過度Pを測定する。次に、ブタジエン製造用触媒(フレッシュ触媒)を反応管1に充填し、前記波長の光線透過度Pを測定する。得られたPをPで除して、さらに100を乗じることによりPを求めることができる。また、反応開始後のブタジエン製造工程中又は触媒再生中において、前記波長の光線透過度を測定する。得られた光線透過度をPで除して、さらに100を乗じることによりブタジエン製造工程中又は触媒再生中におけるブタジエン製造用触媒の前記波長の光線透過率を求めることができる。なお、全ての光線透過度の測定の際に、同じ波長の光源を使用し、光源から検出器までの距離を一定とする。
【0079】
図3は本発明の一実施形態における、反応管1を示す模式図である。本実施形態の反応管1は、反応管1の長軸方向の触媒層の入り口側又は出口側に光源として任意の波長の光線を触媒層に照射して、反応管1の長軸方向の触媒層の入り口側又は出口側(光源に対し、触媒層と対向する側)に設置した検出器により光線透過度(光線透過率)を検出することができる。
【0080】
図3の反応管1は、任意の波長の光線を前記ブタジエン製造用触媒に照射する手段と、前記ブタジエン製造用触媒の光線透過度(光線透過率)を検出する手段と、を有することが好ましい。
任意の波長の光線を前記ブタジエン製造用触媒に照射する手段としては、例えば、任意の波長の光線を照射可能な機器(光源)を反応管1に取り付けることが挙げられる。ブタジエン製造用触媒の光線透過度(光線透過率)を検出する手段としては、例えば、透過度(光線透過率)を検出可能な検出器を反応管1に取り付けることが挙げられる。光源及び検出器は反応器の内部に設置されていることが好ましく、適宜測定距離を調整することができるように設置させていることが好ましい。光源は、反応管1の長軸方向の触媒層の入り口側又は出口側に設置されていることが好ましく、検出器は、反応管1の長軸方向の触媒層の入り口側又は出口側(光源に対し、触媒層と対向する側)に設置されていることが好ましい。また光源と検出器とが一体化された機器を用いて、単位面積当たりの光線透過度や反射光による光線透過度の測定を行うこともできる。
反応管1が、このような構成を有することにより、前記触媒再生工程における触媒再生の進行度を、触媒を抜出すことなく、光線透過率の変化として確認することが可能となる。
【0081】
任意の波長の構成を照射する光源から光線透過度(光線透過率)を検出する検出器までの距離は、例えば、0.5~10[cm]であることがより好ましく、1~5[cm]であることがさらに好ましい。なお、触媒層の層高が前記距離よりも大きい場合には、触媒層に光源及び検出器のいずれか一方又は両方を挿入し、前記距離とすればよい。本実施形態の反応管1の場合、P、及びブタジエン製造工程中又は触媒再生中のブタジエン製造用触媒の光線透過率は具体的に以下のように求めることができる。まず、ブタジエン製造用触媒を充填していない空の反応管1において任意の波長の光線透過度Pを測定する。次に、ブタジエン製造用触媒(フレッシュ触媒)を反応管1に充填し、前記波長の光線透過度Pを測定する。得られたPをPで除して、さらに100を乗じることによりPを求めることができる。また、反応開始後のブタジエン製造工程中又は触媒再生中において、前記波長の光線透過度を測定する。得られた光線透過度をPで除して、さらに100を乗じることによりブタジエン製造工程中又は触媒再生中におけるブタジエン製造用触媒の前記波長の光線透過率を求めることができる。なお、全ての透過度の測定の際に、同じ波長の光源を使用し、光源から検出器までの距離を一定とする。
【0082】
図2又は3の反応管1が有する光源としては、LED電球、ハロゲン光源、蛍光灯を備える光ファイバーが例として挙げられる。また、検出器としては、UV-vis検出器に接続された光ファイバーが例として挙げられる。光源としてLED電球を使用する場合の波長は560~650nm、ハロゲン光源を使用する場合の波長は750~1000nm、蛍光灯を使用する場合の波長は540~620nmが好ましい。
【0083】
原料供給配管3は、原料を反応管1内に供給する供給手段である。原料供給配管3は、例えば、ステンレス製等の配管である。
生成物排出配管4は、触媒層2で製造された生成物を含むガスを排出する排出手段である。生成物排出配管4は、例えば、ステンレス製等の配管である。
【0084】
温度制御部5は、反応管1内の触媒層2を任意の温度にできるものであればよい。温度制御部5は、例えば、電気炉等である。
圧力制御部6は、反応管1内の圧力を任意の圧力にできるものであればよい。圧力制御部6は、例えば、公知の圧力弁等である。
なお、製造装置10は、マスフロー等、ガスの流量を調整するガス流量制御部等の周知の機器を備えていてもよい。
【0085】
≪ブタジエンの製造方法≫
本実施形態のブタジエンの製造方法は、上述の本実施形態のブタジエン製造用触媒が充填された複数の反応管1を備えるブタジエンの製造装置10を用いる。
【0086】
ブタジエンの製造方法の一実施形態としては、前記複数の反応管は前記ブタジエンの製造工程又は前記触媒再生工程を行っており、前記ブタジエン製造工程を行っている反応管に充填されている反応時のブタジエン製造用触媒の光線透過率をP%としたときに、P/Pが0.06以下となった前記ブタジエン製造用触媒が充填された反応管を、前記ブタジエン製造工程から、前記触媒再生工程に切り替える、ブタジエンの製造方法である。なお、PとPを測定する際の光源の波長は同じ波長とする。
本実施形態においては、各反応管のブタジエン収率等の反応結果がなくても、P/Pに基づき、触媒再生の要否を判断することができる。
【0087】
ブタジエンの製造方法の一実施形態としては、前記複数の反応管は前記ブタジエンの製造工程又は前記触媒再生工程を行っており、前記触媒再生工程を行っている反応管に充填されている前記再生時ブタジエン製造用触媒の光線透過率をPとしたときに、P/Pが0.8以上となった前記ブタジエン製造用触媒が充填された反応管を、前記触媒再生工程から、前記ブタジエン製造工程に切り替える、ブタジエンの製造方法である。なお、PとPを測定する際の光源の波長は同じ波長とする。
本実施形態においては、P/Pに基づき、触媒再生完了を判断することができる。
【実施例0088】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0089】
[触媒の物性分析]
1.光線透過率の測定
ブタジエン製造用触媒の波長600nm、780nm、800nmの光線透過率は、分光光度計(日立株式会社製、装置名U-4100)により測定した。
【0090】
[ブタジエン製造サイクル]
ブタジエン製造サイクルAとして、以下の1.ブタジエン製造工程、2.触媒再生工程を1サイクルとした。但し、2回目以降のサイクルにおいては、ブタジエン製造用触媒を新たに充填せず、1回目のサイクルのブタジエン製造工程において充填された触媒層をそのまま継続して使用した。
【0091】
1.ブタジエン製造工程
各例のブタジエン製造用触媒3gを直径1/2インチ(1.27cm)、長さ15.7インチ(40cm)のステンレス製の円筒型の反応管に充填して触媒層を形成した。
次いで、反応温度(触媒層の温度)を315℃とし、反応圧力(触媒層の圧力)を1MPaとし、GHSV(エタノ―ル基準)600h-1で原料を反応管に供給し、6時間反応を行い、生成ガスを得た。原料ガスは、エタノール30体積%(気体換算)と、窒素70体積%(気体換算)との混合ガスであった。回収した生成ガスをガスクロマトグラフィーにより分析し、ブタジエン(1,3-ブタジエン)、アセトアルデヒド、エチレン、プロピレンの選択率、原料転化率及びブタジエン収率を求めた。ブタジエン収率は、[原料転化率]×[ブタジエン選択率]で求められる値である。なお、[原料転化率]とは、原料ガスに含まれるエタノールのモル数に対する、反応により消費されたエタノールのモル数が占める百分率であり、反応器に供給したエタノールのモル数と、反応器出口でガスクロマトグラフィーにより検出されたエタノールのモル数から計算することができる。「ブタジエン選択率」とは、上述の反応により消費されたエタノールのモル数に対する、ブタジエンへ変換されたエタノールのモル数が占める百分率であり、反応器に供給したエタノールのモル数と、反応器出口でガスクロマトグラフィーにより検出されたエタノールのモル数と、反応器出口でガスクロマトグラフィーによって検出された1,3-ブタジエンのモル数から計算することができる。
【0092】
2.触媒再生工程
再生温度(触媒層の温度)を550℃とし、再生圧力(触媒層の圧力)を1MPaとし、GHSV(酸素基準)2100h-1で酸素を含むガスを反応管に供給し、8時間触媒再生を行った。酸素を含むガスは、酸素21体積%(気体換算)と窒素78体積%(気体換算)との混合ガスであった。
【0093】
[実施例1]
0.2gの塩化ハフニウム(HfCl:株式会社高純度化学研究所製)を、水410mLに溶解して、溶液を調製した。
次に、この溶液を、8.5gの多孔質担体(富士シリシア化学株式会社製のシリカ多孔質粒子、平均粒径:1.77mm、平均細孔直径:10nm、全細孔容積:1.01mL/g、比表面積:283m/g)に滴下した。
次に、多孔質担体が浸漬された溶液を、大気圧下、超音波洗浄機で、3時間攪拌した後、濾過により溶液を分離した。
回収された多孔質体を145℃で4時間乾燥した後、さらに420℃で6時間焼成して、触媒Aを製造した。触媒Aを用いて、ブタジエン製造サイクルAを行った。波長780nmの光線透過率であるP、及び10回目のブタジエン製造サイクルAにおける、再生処理中のブタジエン製造用触媒の波長780nmの光線透過率の経時変化を表1に示す。さらに、10回目のサイクルにおける再生処理中のブタジエン製造用触媒のブタジエン収率の経時変化も表1に示す。
【0094】
[実施例2]
塩化ハフニウムを2g使用した以外は実施例1と同様にして触媒Bを製造した。触媒Bを用いて、ブタジエン製造サイクルAを行った。波長780nmの光線透過率であるP、及び10回目のブタジエン製造サイクルAにおける、再生処理中のブタジエン製造用触媒の波長780nmの光線透過率の経時変化を表1に示す。さらに、10回目のサイクルにおける再生処理中のブタジエン収率の経時変化も表1に示す。
【0095】
[実施例3]
2.0gの塩化酸化ジルコニウム八水和物(ZrClO・8HO:株式会社高純度化学研究所製)と、0.07gの塩化ハフニウム(HfCl:株式会社高純度化学研究所製)とを、水100mLに溶解して、溶液を調製した。
次に、この溶液を、2.0gの多孔質担体(富士シリシア化学株式会社製のシリカ多孔質粒子、平均粒径:1.77mm、平均細孔直径:10nm、全細孔容積:1.01mL/g、比表面積:283m/g)に滴下した。
次に、多孔質担体が浸漬された溶液に水酸化ナトリウムを添加し、大気圧下、超音波洗浄機で、1時間攪拌した後、濾過により溶液を分離した。
回収された多孔質体を105℃で5時間乾燥した後、さらに410℃で6時間焼成して、触媒Cを製造した。触媒Cを用いて、ブタジエン製造サイクルAを行った。波長780nmの光線透過率であるP、及び10回目のブタジエン製造サイクルAにおける、再生処理中のブタジエン製造用触媒の波長780nmの光線透過率の経時変化を表1に示す。さらに、10回目のサイクルにおける再生処理中のブタジエン収率の経時変化も表1に示す。
【0096】
[比較例1]
担体として不透明担体である合成ゼオライトA-4(和光純薬製)を使用した以外は実施例3と同様にして触媒Dを製造した。触媒Dを用いて、ブタジエン製造サイクルAを行った。波長780nmの光線透過率であるP、及び10回目のブタジエン製造サイクルAにおける、再生処理中のブタジエン製造用触媒の波長780nmの光線透過率の経時変化を表1に示す。さらに、10回目のサイクルにおける再生処理中のブタジエン収率の経時変化も表1に示す。
【0097】
[実施例4]
光源として、蛍光灯を用い、測定波長を600nmとした以外は実施例1と同様にしてブタジエン製造サイクルAを行った。10回目のサイクルにおけるブタジエンの収率の経時変化及び[再生処理中の波長600nmの光線透過率]/Pの経時変化は実施例1と同じであった。
【0098】
[実施例5]
光源として、ハロゲン光源を用い、測定波長を800nmとした以外は実施例1と同様にしてブタジエン製造サイクルAを行った。10回目のサイクルにおけるブタジエンの収率の経時変化及び[再生処理中の波長800nmの光線透過率]/Pの経時変化は実施例1と同じであった。
【0099】
【表1】
【0100】
が14%以上である実施例1~5では、再生処理中のブタジエン製造用触媒の波長780nm(600nm又は800nm)の光線透過率の経時変化とブタジエン収率の経時変化が相関することがわかった。一方、Pが14%未満である比較例1では、再生処理中のブタジエン製造用触媒の波長780nmの光線透過率の経時変化とブタジエン収率の経時変化に相関は全く確認できなかった。
【符号の説明】
【0101】
1 反応管
2 触媒層
3 原料供給配管
4 生成物排出配管
5 温度制御部
6 圧力制御部
10 ブタジエンの製造装置
図1
図2
図3