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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047027
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】車両用サイドドア構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20230329BHJP
【FI】
B60J5/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021155918
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正義
(57)【要約】
【課題】ドアラッチリンフォースメント及びインパクトビーム固定用のブラケットの保持性能の信頼性を向上させる。
【解決手段】車両用サイドドア構造を有するサイドドア100は、インナパネル2及びアウタパネル3を有するドア本体1と、ドアラッチリンフォースメント11を介して固定されるドアラッチ1bと、ブラケット12を介して固定される後端部10aを有するインパクトビーム10と、を含む。インナパネル2は、環状壁21と、環状壁21の内側の主要壁22と、環状壁21と主要壁22を接続する縦壁23と、複数のビードBとを有する。複数のビードBは、後縦壁23aにおけるドアラッチリンフォースメント11とブラケット12との間の部分において、互いに車両上下方向に離隔して設けられ且つ環状壁21と主要壁22の間の壁高さ方向に延びている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナパネル及び該インナパネルの車幅方向外側に配置されたアウタパネルを有するドア本体と、該ドア本体の車両前後方向の前部に取り付けられるヒンジと、前記ドア本体内において前記インナパネルの車両前後方向の後側にドアラッチリンフォースメントを介して固定されるドアラッチと、前記ドア本体内にて車両前後方向に延在し前記ドアラッチの下方に位置するブラケットを介して前記インナパネルに固定される後端部を有するインパクトビームと、を含む、車両用サイドドア構造であって、
前記インナパネルは、
車幅方向内側に臨みウェザストリップが当接する環状壁と、
前記環状壁の内側で車幅方向内側に臨み且つ前記環状壁よりも車幅方向内側に位置する主要壁と、
前記環状壁と前記主要壁を接続する縦壁と、
前記縦壁のうちの車両前後方向の後端側の後縦壁における車両上下方向について前記ドアラッチリンフォースメントと前記ブラケットとの間の部分において、互いに車両上下方向に離隔して設けられ且つ前記環状壁と前記主要壁の間の壁高さ方向に延びている、複数のビードと、
を有することを特徴とする車両用サイドドア構造。
【請求項2】
前記ドアラッチリンフォースメントは、前記後縦壁と前記主要壁とに固定され、
前記ブラケットは、前記後縦壁と前記環状壁とに固定されている、請求項1に記載の車両用サイドドア構造。
【請求項3】
前記ドア本体内における前記インパクトビームの上方にて車両前後方向に延在し少なくとも前記アウタパネルの車幅方向内側面に固定されるドアアウタセンターリンフォースメントを、さらに含み、
前記ドアアウタセンターリンフォースメントの車両前後方向の後端部は、車両上下方向について前記ドアラッチリンフォースメントと前記ブラケットとの間に位置している、請求項1又は2に記載の車両用サイドドア構造。
【請求項4】
前記ドア本体は、前記主要壁のうちの前記後縦壁側の部分における車両上下方向について前記ドアラッチリンフォースメントと前記ブラケットとの間の所定箇所に取り付けられる衝撃緩和部材を、有する、請求項1~3のいずれか一つに記載の車両用サイドドア構造。
【請求項5】
前記ビードは、前記後縦壁における前記主要壁側の端部から前記ウェザストリップの接触部分の手前まで延在している、請求項1~4のいずれか一つに記載の車両用サイドドア構造。
【請求項6】
前記ビードは、前記後縦壁のビード形成箇所において車両前後方向の前側に膨出し、且つ、前記環状壁側から前記主要壁側に向かうほど幅広に形成されている、請求項1~5のいずれか一つに記載の車両用サイドドア構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インナパネルとアウタパネルとを有するヒンジ開閉式のドア本体とドア本体内に設けられるドアラッチ及びインパクトビームとを含む車両用サイドドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ヒンジ開閉式の車両用サイドドアにおいて、ヒンジはドア本体の前部に取り付けられ、ドアラッチはドア本体内においてインナパネルの後側に配置され車体側のストライカに係合することによってドア閉状態を保つようになっている。また、インパクトビームの後端部はドアラッチの下方においてブラケットを介してインナパネルに固定されている。ブラケットは、インナパネルにスポット溶接により接合されることによってインナパネルに固定(保持)されている。
【0003】
車両用サイドドア構造の一例として、特許文献1に記載された構造が知られている。この特許文献1に記載された構造は、側面衝突の際にウインドレギュレータに設けた突起によってインナパネルを破断することで、側面衝突の際のドアラッチへの荷重集中の緩和を図るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-263135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ドアラッチは、防水の観点から主に樹脂製部材により形成されている。したがって、ドアラッチはインナパネルに直に固定された状態でドア開閉(特にドア閉)や側面衝突の際に耐え得る強度を有していない場合がある。そのため、ドアラッチを支える基礎となるドアラッチリンフォースメントがドアラッチとインナパネルとの間に補強のために設けられること、つまり、ドアラッチリンフォースメントがインナパネルの裏面におけるドアラッチ取付箇所に設けられ、ドアラッチがドアラッチリンフォースメントを介してインナパネルに固定されることがある。そして、ドアラッチリンフォースメントは、例えば、インナパネルにスポット溶接により接合されるとともにボルト等の締結具によって締結されることによってインナパネルに固定(保持)される。そのため、ドア開閉(特にドア閉)等の際に、ドアラッチリンフォースメントとインナパネルとのスポット溶接やボルト締結による結合箇所に応力や荷重が集中して、スポット溶接の剥離やボルト挿通孔の亀裂が生じ、ドアラッチリンフォースメントのインナパネルへの保持力の低下を招くおそれがある。この点について、特許文献1の構造では改善の余地がある。また、インパクトビーム固定用のブラケットとインナパネルとのスポット溶接等による結合箇所においても、同様の課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、ドアラッチリンフォースメントの保持性能及びインパクトビーム固定用のブラケットの保持性能の信頼性を向上させることができる車両用サイドドア構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の一態様によると、車両用サイドドア構造が提供される。この車両用サイドドア構造は、インナパネル及び該インナパネルの車幅方向外側に配置されたアウタパネルを有するドア本体と、該ドア本体の車両前後方向の前部に取り付けられるヒンジと、前記ドア本体内において前記インナパネルの車両前後方向の後側にドアラッチリンフォースメントを介して固定されるドアラッチと、前記ドア本体内にて車両前後方向に延在し前記ドアラッチの下方に位置するブラケットを介して前記インナパネルに固定される後端部を有するインパクトビームと、を含む。前記車両用サイドドア構造において、前記インナパネルは、前記インナパネルは、車幅方向内側に臨みウェザストリップが当接する環状壁と、前記環状壁の内側で車幅方向内側に臨み且つ前記環状壁よりも車幅方向内側に位置する主要壁と、前記環状壁と前記主要壁を接続する縦壁と、前記縦壁のうちの車両前後方向の後端側の後縦壁における車両上下方向について前記ドアラッチリンフォースメントと前記ブラケットとの間の部分において、互いに車両上下方向に離隔して設けられ且つ前記環状壁と前記主要壁の間の壁高さ方向に延びている、複数のビードと、を有している。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様による前記車両用サイドドア構造では、(1)前記ヒンジは、前記ドア本体の車両前後方向の前部に取り付けられており、前記インナパネルは、車幅方向内側に臨みウェザストリップが当接する環状壁と、前記環状壁の内側で車幅方向内側に臨み且つ前記環状壁よりも車幅方向内側に位置する主要壁と、前記環状壁と前記主要壁を接続する縦壁と、前記縦壁のうちの車両前後方向の後端側の後縦壁において前記環状壁と前記主要壁の間の壁高さ方向に延びている複数のビードと、を有している。したがって、各ビードの延びる方向である前記後縦壁における前記環状壁と前記主要壁の間の壁高さ方向は、概ね、前記ヒンジを支点とした前記ドア本体の後端部の回動方向(移動方向)に向いていることになる。つまり、前記複数のビードは前記ヒンジを支点とした回動方向の荷重に対して効果的に突っ張るように延びており、前記ドア本体はドアを閉めた際の回動方向の荷重に対して強い構造になっている。これにより、ドアを閉めた際等に、慣性によって前記ヒンジを支点とした回動方向で車室内側に移動しようとする前記アウタパネルの後端側の部分の荷重や前記インパクトビームの後端部の荷重等を、前記複数のビードを有した前記後縦壁によって効果的に受け止めることができる。(2)さらに、前記複数のビードは前記後縦壁における車両上下方向について前記ドアラッチリンフォースメントと前記ブラケットとの間の部分において、互いに車両上下方向に離隔して設けられているため、前記ドアラッチリンフォースメントと前記ブラケットとの間の前記後縦壁の剛性が向上するとともに、入力された荷重や発生し得る応力が比較的に均一に分散される。これにより、前記ドアラッチリンフォースメントと前記インナパネルとの結合箇所や前記ブラケットと前記インナパネルとの結合箇所における荷重や応力の集中がそれぞれ効果的に抑制又は防止されるようになる。その結果、ドアラッチリンフォースメントの保持性能及びインパクトビーム固定用のブラケットの保持性能の信頼性が高まることになる。
【0009】
このようにして、本発明は、ドアラッチリンフォースメントの保持性能及びインパクトビーム固定用のブラケットの保持性能の信頼性を向上させることができる車両用サイドドア構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る車両用サイドドア構造が適用されたサイドドアを車幅方向内側から視た平面図である。
図2】前記サイドドアの内部構造を説明するための斜視図である。
図3】前記サイドドアの要部を含む部分斜視図である。
図4】前記サイドドアのドアラッチ取付箇所を含む部分斜視図である。
図5図3に示すA-A線に沿った概略の断面図である。
図6】前記サイドドアのインナパネルとドアラッチリンフォースメントとのスポット溶接構造を説明するための概念図である。
図7】比較例のサイドドアにおけるスポット溶接剥離の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る車両用サイドドア構造が適用されたサイドドア100を車幅方向内側から視た平面図であり、図2はサイドドア100の内部構造を説明するための車幅方向外側から視た斜視図である。なお、図2では、後述するアウタパネル3が取り外されている。また、図において、矢印Fr方向は車両前後方向で車両前方を示し、矢印O方向は車両幅方向(車幅方向)で車両外方を示し、矢印U方向は車両上下方向で車両上方を示している。以下の説明における「前」及び「後」は車両前後方向における前及び後に対応し、「上」及び「下」は車両上下方向における上及び下に対応している。
【0012】
[サイドドアの概要]
図1及び図2に示すように、サイドドア100は、ドア本体1と、ヒンジ1aと、ドアラッチ1bと、インパクトビーム10と、ドアアウタセンターリンフォースメント30と、を含み、車体側部に開口されたドア開口の一部を開閉するヒンジ開閉式のドアである。本実施形態では、サイドドア100は、フロントサイドドアであるものとする。以下では、車室内の乗員が車両前後方向の前方に向かって視たときの左側のフロントサイドドアに、サイドドア100が適用された場合について説明する。
【0013】
ドア本体1は、インナパネル2と、インナパネル2の車幅方向外側に配置されたアウタパネル3と、を有している。各パネル(2,3)は、薄い金属製鋼板にプレス成型等を施すことにより形成される。ドア本体1(換言すると、インナパネル2及びアウタパネル3)は、車幅方向から視た平面視で、概ね矩形状の外形を有しており、上半分側の領域の中央部にスライドガラス用の窓孔1cが開口されている。また、車幅方向で視た平面視で、ドア本体1の後方の上下の各角部(後方下角部C1、後方上角部C2)はいずれも概ね直角の角として形成され、前方下角部C3はR形状に丸められている。なお、図示を省略したが、ドア本体1の車幅方向内側(つまり、インナパネル2)には、樹脂製のトリムが装着される。
【0014】
ヒンジ1aは、ドア本体1における車両前後方向の前部に取り付けられ、ドア本体1を車体側部のドア開口の前部に車幅方向に回動可能に連結するものである。つまり、ドア本体1は、自身の前部がヒンジ1aを介して車体(図示省略)に連結されており、サイドドア100はヒンジ1aを支点として車幅方向に回動(開閉)自在に車体に連結されている。詳しくは、2つのヒンジ1aが互いに車両上下方向に離隔してドア本体1の前部に取付けられており、各ヒンジ1aの回動軸は車両上下方向に延びている。
【0015】
ドアラッチ1bは、車体側部のドア開口の前縁部に設けられたストライカSに係合することによってドア本体1のドア閉状態を保つ部品であり、ドア本体1内においてインナパネル2の車両前後方向の後側にドアラッチリンフォースメント11を介して固定されている。ドアラッチ1bの大半の部分は防水の観点から樹脂製部材により形成されている。そして、ドア本体1のアウタパネル3には、ドアハンドル(図示省略)が設けられており、ドアハンドルが操作されると、ドア閉状態が解除されるようになっている。
【0016】
インナパネル2は、ドア本体1における車幅方向内側のパネルを構成する部材であり、アウタパネル3の外縁部と連結する外縁部を有している。図1では主にインナパネル2の車幅方向内側面2aが視認され、図2ではインナパネル2の車幅方向外側面2bが視認される。なお、インナパネル2の詳しい構造については後に詳述する。
【0017】
アウタパネル3は、インナパネル2の車幅方向外側面2bに相対し、サイドドア100の車幅方向の最外壁(意匠面)を構成する部材である。アウタパネル3は、その外縁にヘミング加工が施されてインナパネル2と一体化されており、インナパネル2と協働して閉断面構造を構成している。つまり、ドア本体1は、インナパネル2の外縁部とアウタパネル3の外縁部とが互いに連結されることにより構成されている。
【0018】
インパクトビーム10は、ドア本体1内にて車両前後方向に延在している。インパクトビーム10は、側面衝突時においてサイドドア100の変形を抑制するための直線的に延びた部材であり、例えば、筒状に形成されている。インパクトビーム10は、ドア本体1内の下側の領域において車両前後方向の概ね全体に亘って延在している。インパクトビーム10の後端部10aはドアラッチ1bの下方に位置するブラケット12を介してインナパネル2(車幅方向外側面2b)に固定され、インパクトビーム10の前端部10bは例えばインナパネル2の車幅方向外側面2bに別のブラケット13を介して固定される。インナパネル2には複数の孔2cが開口されており、図1では、インパクトビーム10の一部及びドアアウタセンターリンフォースメント30の一部が孔2cを通じて視認される。
【0019】
ドアアウタセンターリンフォースメント30は、ドア本体1内におけるインパクトビーム10の上方にて車両前後方向に延在している。ドアアウタセンターリンフォースメント30は、サイドドア100の意匠面を構成するアウタパネル3の凹み(変形)を防ぐための直線的に延びた部材であり、例えば、薄い金属製鋼板にプレス成型等を施すことにより形成される。ドアアウタセンターリンフォースメント30は、ドア本体1内の下側の領域において車両前後方向の概ね全体に亘って延在しており、少なくともアウタパネル3の車幅方向内側面3aに固定される。具体的には、ドアアウタセンターリンフォースメント30は、自身の長手方向の複数の箇所で、アウタパネル3の車幅方向内側面3aに硬質スポンジ状部材(図示省略)を介して接合されている。また、ドアアウタセンターリンフォースメント30の前端部はスポット溶接によりインナパネル2の前側の部分の裏面(車幅方向外側面2b)に接合され、ドアアウタセンターリンフォースメント30の後端部はスポット溶接によりインナパネル2の後側の部分の裏面(車幅方向外側面2b)に接合されている。
【0020】
[インナパネルの概要]
以下では、インナパネル2の構造について、図1図5を参照して説明する。図3はサイドドア100の要部を含む部分斜視図であり、図4はサイドドア100のドアラッチ取付箇所を含む部分斜視図であり、図5図3に示すA-A線に沿った概略の断面図である。
【0021】
図1に示すように、インナパネル2は、当該インナパネル2の外縁部の内側の環状壁21と、インナパネル2における窓孔1cの下方の大半の領域を占める、主要壁22と縦壁23とからなる主要部2Aと、を有する。
【0022】
インナパネル2は、上記要素(21,2A(22,23))に加えて、自身の外縁部から環状壁21までに亘るパネル周縁部24と、窓孔1cの周囲の窓縁部25とを有し、これら(21,22,23,24,25)が一体に形成されている。
【0023】
環状壁21は、パネル周縁部24の内側で車幅方向内側に臨む部分であり、環状に延びている。換言すると、環状の環状壁21は、パネル周縁部24の内側で、車両前後方向及び車両上下方向に延びて車幅方向内側に臨んでいる。また、環状壁21の内側に、主要部2A(主要壁22、縦壁23)及び窓縁部25が位置している。環状壁21は、車幅方向内側(車室内側)に面した平坦な環状面を有している。この環状面は、インナパネル2の車幅方向内側面2aの一部を構成している。そして、環状壁21(前記環状面)に弾性を有した環状のウェザストリップ26(シール部材)が車幅方向内側から当接している(図4及び図5参照)。なお、図1及び図3では、ウェザストリップ26は図示省略されている。
【0024】
つまり、環状壁21は、ウェザストリップ26が接触する接触面を形成する部分である。環状壁21は、車幅方向から視た平面視で、その大半の部分がインナパネル2の外縁部の内側近傍で外縁部に沿うように延びている。但し、図1に示すように、環状壁21のうちのドア本体1の後方下角部C1の内側の部分は、車体側部の構造等の規制を受けて、外縁部(後方下角部C1)から車両前方で且つ車両上方に大きく退避する(離れる)ように延びている。主要部2A(主要壁22及び縦壁23)における後方下角部C1側の部分も同様に退避するように形成されている。
【0025】
具体的には、環状壁21のうちの車両後方の部分である後環状壁21aは、車両上下方向について中間位置と下端位置との間における前記中間位置寄りの所定位置に設けられた屈曲部21a1において車両前方に屈曲するように延びている。つまり、後環状壁21aは、後方上角部C2側から屈曲部21a1に向かって概ね上下方向に延びた後、屈曲部21a1において車両前方側に滑らかなR形状で屈曲して、屈曲部21a1から環状壁21のうちの車両下方の部分まで直線的に延びている。
【0026】
主要部2Aは、主要壁22と縦壁23とからなり、窓縁部25より下方で窓縁部25と連続し且つ環状壁21の内側に位置している。つまり、主要部2Aは、インナパネル2における窓縁部25より下方の大半の領域を占める部分である。主要部2Aは、全体として車幅方向内側に向かって大きく膨らむように形成されている。主要部2Aは、インナパネル2の車幅方向外側面2bに向かって視た場合、全体として車幅方向内側に凹んだ形状に形成され、アウタパネル3と協働してインパクトビーム10等の各種の部材や機器を収容する収容室を構成している。
【0027】
主要部2Aの主要壁22は、環状壁21の内側で車幅方向内側に臨み且つ環状壁21よりも車幅方向内側に位置しており、インナパネル2の車幅方向内側面2aの大半の領域を占めている。
【0028】
主要部2Aの縦壁23は、環状壁21と主要壁22を接続する部分である。つまり、縦壁23は環状壁21の内縁と主要壁22の外縁との間を接続しており、環状壁21と主要壁22の間の車幅方向の段差部分を埋めるように設けられている。
【0029】
そして、主要部2Aのうちのドア本体1の後方下角部C1の内側の部分も、後環状壁21aの形状に合わせて、後方下角部C1から車両前方で且つ車両上方に大きく退避するように形成されている。したがって、主要部2Aの縦壁23のうちの車両前後方向の後端側の部分である後縦壁23aは、後環状壁21aの形状に合わせて屈曲している。つまり、後縦壁23aは、後環状壁21aの屈曲部21a1に対応する所定位置に設けられた屈曲部23a1において車両前方に屈曲するように延びている。具体的には、後縦壁23aは、後方上角部C2側から屈曲部23a1に向かって概ね上下方向に延びた後、屈曲部23a1において車両前方側に滑らかなR形状で屈曲して、屈曲部23a1から縦壁23のうちの車両下方の部分まで直線的に延びている。
【0030】
後縦壁23aの屈曲部23a1を含む部分は、後環状壁21aの屈曲部21a1を含む部分に連続して接続している。したがって、環状壁21と縦壁23とが交わる角部である谷筋Vのうちの後縦壁23aの屈曲部23a1に対応する領域である屈曲部領域Wは、車幅方向に屈曲するだけでなく車両前後方向にも屈曲している。そのため、ドア本体1では、ドア開閉(特にドア閉)や側面衝突等の際には、谷筋Vのうちの屈曲部領域Wに応力や荷重が集中し易くなる傾向にある。
【0031】
パネル周縁部24は、インナパネル2の外縁部から環状壁21までに亘る部分である。ドア本体1の全体の車幅方向についての厚み(ドア厚み)は、主要部2Aで厚く、パネル周縁部24で薄くなっている。つまり、ドア本体1のアウタパネル3は車幅方向に凹凸なく平坦に形成されており、ドア本体1のインナパネル2は車幅方向にパネル周縁部24で薄くなるように構成されている。
【0032】
また、パネル周縁部24のうちの後方下角部C1を含む部分は、他の部分よりも大面積の領域に広がっており、車幅方向から視た平面視で概ね直角三角形状の退避面部24aをなしている。退避面部24aは、ヒンジ1aを支点として車幅方向に回動するドア本体1におけるヒンジ1aとは反対側の後端側の部分に位置しており、さらに、ドア本体1における他の部分よりも車幅方向に薄くなっている部分である。そのため、この退避面部24aは、ドア開閉等の際に、車幅方向等に揺れて振動し易い部分である。
【0033】
本実施形態では、退避面部24aは、その内側の環状壁21と連続しており、環状壁21の一部をなしている。
【0034】
窓縁部25は、窓孔1cの開口縁を構成し且つ車幅方向で視た平面視で環状壁21の内側に位置する部分である。
【0035】
[サイドドアの詳細構造]
次に、主にサイドドア100の詳細構造について説明する。
【0036】
[ドアラッチの取付構造]
インナパネル2の主要部2Aにおける後方側角部には、後縦壁23aから主要壁22に亘って切欠部2dが開口されており、この切欠部2dに、ドアラッチ1bにおけるストライカ係合口部1b1が嵌まり込むようになっている。そして、ストライカSはストライカ係合口部1b1に進入してドアラッチ1bに係合するようになっている。そして、インナパネル2の切欠部2dはインナパネル2の車両前後方向の後側(後縦壁23a)における車両上下方向の概ね中央部に位置している。
【0037】
ドアラッチ1bは、前述したように、ドア本体1内においてインナパネル2の車両前後方向の後側にドアラッチリンフォースメント11を介して固定されている。ドアラッチリンフォースメント11は、薄い金属製鋼板にプレス成型等を施すことにより形成される。ドアラッチリンフォースメント11は、ドアラッチ1bを支える基礎となる部材であり、ドアラッチ1bとインナパネル2との間に補強のために設けられる。つまり、ドアラッチリンフォースメント11はインナパネル2の裏面(インナパネル2の車幅方向外側面2bを含むドア本体1の内部側の面)におけるドアラッチ取付箇所(配置箇所)に設けられ、ドアラッチ1bはドアラッチリンフォースメント11を介してインナパネル2に固定される。
【0038】
ドアラッチリンフォースメント11は、インナパネル2の裏面にスポット溶接により接合されるとともに例えばボルトからなる締結具T(図3及び図4参照)によって締結されることによってインナパネル2に固定(保持)される。インナパネル2の後縦壁23aにおける切欠部2dの車両上下方向の両側の部分及びドアラッチリンフォースメント11には、締結具(ボルト)挿通孔が開口されている。そして、ドアラッチ1bには、締結具Tと螺合するネジ部が形成されている。インナパネル2に接合されたドアラッチリンフォースメント11に、ドアラッチ1bのインナパネル2側の端面を当接させた状態で、締結具挿通孔を挿通した締結具Tがドアラッチ1bのネジ部に螺合する。これにより、ドアラッチ1bがドアラッチリンフォースメント11を介してインナパネル2の車両前後方向の後ろ側の部分に固定される。
【0039】
本実施形態では、ドアラッチリンフォースメント11は、後縦壁23aと主要壁22とに固定されている(図2図4参照)。具体的には、ドアラッチリンフォースメント11は、インナパネル2における切欠部2dの周囲を取り囲み、インナパネル2の裏面側から後縦壁23aと主要壁22に沿うように形成されており、主要部2Aにおける後方側角部に合わせて屈曲している。図3及び図4には、ドアラッチリンフォースメント11とインナパネル2とのスポット溶接箇所が、黒塗り丸印で模式的に示されている。
【0040】
ドアラッチリンフォースメント11(換言すると、ドアラッチ1b、ストライカS)は、図3に示すように、谷筋Vのうちの応力や荷重が集中し易い屈曲部領域Wよりも、車両上下方向について上方に位置している。
【0041】
[インパクトビームの後端部の取付構造]
インパクトビーム10の後端部10aは、前述したように、ドアラッチ1bの下方に位置するブラケット12を介してインナパネル2(車幅方向外側面2b)に固定される。ブラケット12は、薄い金属製鋼板にプレス成型等を施すことにより形成される。ブラケット12は、インナパネル2の裏面にスポット溶接により接合されることによってインナパネル2に固定(保持)される。
【0042】
本実施形態では、ブラケット12は、後縦壁23aと環状壁21とに固定されている(図2参照)。具体的には、ブラケット12は、ドアラッチ1b及びドアラッチリンフォースメント11の下方において、インナパネル2の裏面側から後縦壁23aと環状壁21に沿うように形成されており、後縦壁23aと環状壁21とが交わる角部に合わせて屈曲している。詳しくは、ブラケット12は、環状壁21に対しては、環状壁21と連続して環状壁21の一部をなすパネル周縁部24の退避面部24aにスポット溶接により接合されることにより環状壁21に接合されている。また、ブラケット12における環状壁21(退避面部24a)に接合される部分には、インパクトビーム10の断面形状に合わせて湾曲した湾曲部が形成されており、インパクトビーム10の後端部10aはブラケット12の前記湾曲部に溶接接合されることによってブラケット12を介してインナパネル2に固定される。
【0043】
ブラケット12(換言すると、インパクトビーム10の後端部10a)は、図3に示すように、屈曲部領域Wよりも車両上下方向について下方に位置している。つまり、屈曲部領域Wは、車両上下方向について、ドアラッチリンフォースメント11とブラケット12との間に位置している。
【0044】
[ドア本体の詳細構造]
ドア本体1のインナパネル2は、上述した各要素(21,22,23,24,25)に加えて、以下の要素(構造)を有している。
【0045】
インナパネル2は、後縦壁23aにおける車両上下方向についてドアラッチリンフォースメント11とブラケット12との間の部分において、互いに車両上下方向に離隔して設けられる、複数のビードBを有している。つまり、本実施形態では、複数のビードBは、後縦壁23aにおける車両上下方向について屈曲部領域Wに対応する部分に設けられている。特に限定されるものではないが、図では、4個のビードBが形成されている。
【0046】
そして、複数のビードBは、後縦壁23aにおける車両上下方向についてドアラッチリンフォースメント11とブラケット12との間の部分において、環状壁21と主要壁22の間の壁高さ方向に延びている。したがって、各ビードBの延びる方向である後縦壁23aにおける環状壁21と主要壁22の間の壁高さ方向は、概ね、ヒンジ1aを支点としたドア本体1の後端部の回動方向(移動方向)に向いている。
【0047】
本実施形態では、各ビードBは、後縦壁23aにおける主要壁22側の端部からウェザストリップ26の接触部分の手前まで延在している。つまり、ビードBはインナパネル2の主要部2Aにおける後方側角部(換言すると、後縦壁23aと主要壁22とが交わる山筋部分)からウェザストリップ26の後縦壁23aとの接触部分(接触範囲)の手前の位置まで延在している。したがって、ビードBは、環状壁21と縦壁23とが交わる角部である谷筋V(詳しくは谷筋Vのうちの後縦壁23aの屈曲部23a1に対応する領域である屈曲部領域W)から、後縦壁23aにおけるウェザストリップ26との接触部分の上端までの範囲には形成されていない。
【0048】
本実施形態では、各ビードBは、後縦壁23aのビード形成箇所において車両前後方向の前側に向かって膨出し、且つ、環状壁21側から主要壁22側に向かうほど幅広に形成されている。つまり、各ビードBは、インナパネル2の車幅方向内側面2a側では後縦壁23aの他の部分よりもドア本体1の内部側に凹んでおり(図1及び図3参照)、インナパネル2の車幅方向外側面2b側では後縦壁23aの他の部分よりもドア本体1の内部側に突出している。また、各ビードBは、ドア本体1の内部側から視ると、例えば、ドア本体1の内部側に突出した概ね台形断面(山形)を有し、台形頂部の平坦部と、ビード幅方向両側の側壁部とからなる。そして、各ビードBのビード幅方向両側の側壁部の間の距離が、環状壁21側から主要壁22側に向かうほど広がっている。なお、特に限定されるものではないが、各ビードBの深さは例えば3mm~4mm程度である。
【0049】
また、後縦壁23aにおけるブラケット12が接合される部分もビードBと同様にドア本体1の内部側に僅かに凹むように形成されている。さらに、後縦壁23aにおけるドアラッチリンフォースメント11が接合される部分もドア本体1の内部側に僅かに凹むように形成されている。これらにより、後縦壁23aにおけるブラケット12やドアラッチリンフォースメント11が接合される部分の強度の向上が図られている。
【0050】
本実施形態では、ドア本体1は、衝撃緩和部材27を有している。衝撃緩和部材27は、主要壁22のうちの後縦壁23a側の部分(換言すると、インナパネル2の主要部2Aにおける後方側角部側の部分、又は、後縦壁23aと主要壁22とが交わる山筋側の部分)における車両上下方向についてドアラッチリンフォースメント11とブラケット12との間の所定箇所に取り付けられている。衝撃緩和部材27は、サイドドア100を閉めた際に生じるヒンジ1aを支点としたサイドドア100の慣性エネルギーを車体側へ効率的に伝達するための部品の一つである。衝撃緩和部材27は、例えば、クッションゴムなどの弾性を有した円柱状の部材からなる。衝撃緩和部材27は、主要壁22に取り付けられた状態で主要壁22よりも車幅方向内側(車室内)側に突出しており、ドア閉の際に車体に接触して衝撃を緩和する。
【0051】
本実施形態では、ドア本体1内のドアアウタセンターリンフォースメント30の車両前後方向の後端部30aは、車両上下方向についてドアラッチリンフォースメント11とブラケット12との間に位置している。
【0052】
次に、本実施形態に係る車両用サイドドア構造の作用について説明する。
【0053】
上述したような車両用サイドドア構造が適用されたサイドドア100では、(1)各ビードBの延びる方向である後縦壁23aにおける環状壁21と主要壁22の間の壁高さ方向は、概ね、ヒンジ1aを支点としたドア本体1の後端部の回動方向(移動方向)に向いている。したがって、複数のビードBはヒンジ1aを支点とした回動方向の荷重に対して効果的に突っ張るように延びており、ドア本体1はドアを閉めた際の回動方向の荷重に対して強い構造になっている。これにより、サイドドア100を閉めた際等に、慣性によってヒンジ1aを支点とした回動方向で車室内側に移動しようとするアウタパネル3の後端側の部分の荷重やインパクトビーム10の後端部の荷重等を、複数のビードBを有した後縦壁23aによって効果的に受け止めることができる。(2)さらに、複数のビードBは後縦壁23aにおける車両上下方向についてドアラッチリンフォースメント11とブラケット12との間の部分において、互いに車両上下方向に離隔して設けられているため、ドアラッチリンフォースメント11とブラケット12との間の後縦壁23aにおいて立体的な構造が構築されて後縦壁23aの剛性が向上するとともに、入力された荷重や発生し得る応力が比較的に均一に分散される。これにより、ドアラッチリンフォースメント11とインナパネル2との結合箇所(スポット溶接箇所及びボルト締結箇所)やブラケット12とインナパネル2との結合箇所(スポット溶接箇所)における荷重や応力の集中がそれぞれ効果的に抑制又は防止されるようになる。その結果、ドアラッチリンフォースメントの保持性能及びインパクトビーム固定用のブラケットの保持性能の信頼性が高まることになる。
【0054】
なお、後縦壁23aにビードBが形成されている本実施形態に係るサイドドア100と、後縦壁23aにビードBが形成されていないサイドドア100’(以下では、比較例に係るサイドドア100’と言う)について、それぞれ、ドア開閉を繰り返す耐久試験を実施した。図6はサイドドア100のインナパネル2とドアラッチリンフォースメント11とのスポット溶接構造を説明するための概念図であり、図7は比較例のサイドドア100’におけるドアラッチリンフォースメント11とインナパネル2とのスポット溶接剥離の概念図である。図6には、ドアラッチリンフォースメント11とインナパネル2とのスポット溶接箇所の一例が、丸印で模式的に示されている。図7も同様にスポット溶接箇所の一例が丸印で模式的に示されている。
【0055】
上記耐久試験の結果、本実施形態に係るサイドドア100では、ドアラッチリンフォースメント11とインナパネル2との結合箇所(スポット溶接箇所及びボルト締結箇所)の塑性歪が比較例に係るサイドドアに比べて低減することが確認されるとともに、ブラケット12とインナパネル2との結合箇所(スポット溶接箇所)の塑性歪も比較例に係るサイドドアに比べて低減することが確認された。例えば、耐久試験後において、本実施形態に係るサイドドア100のドアラッチリンフォースメント11とインナパネル2とのスポット溶接箇所では、図6に示すようにスポット溶接剥離が発生しなかった。ブラケット12とインナパネル2とのスポット溶接箇所でも同様である。一方、比較例に係るサイドドアでは、ドアラッチリンフォースメント11とインナパネル2とのスポット溶接箇所では、図7に示すようにスポット溶接剥離が発生する場合があった。
【0056】
このようにして、本実施形態に係るサイドドア100によれば、ドアラッチリンフォースメント11の保持性能及びインパクトビーム固定用のブラケット12の保持性能の信頼性を向上させることができる車両用サイドドア構造を提供することができる。
【0057】
また、このサイドドア100は、ドア開閉が繰り返されても、亀裂や剥離がブラケット12のスポット溶接箇所に生じることを回避可能な耐久性を有している。したがって、側面衝突時において、ブラケット12がインナパネル2から破断し難いため、ポール等の衝突の際の衝撃エネルギーをインパクトビーム10の曲げ変形により確実に吸収することができ、このサイドドア100はポール衝突に効果的な構造を有している。また、一般的に、車体のデザイン構成が決定すると、他の部品と異なり、インパクトビーム10はその位置を移動することが困難である場合が多い。しかし、サイドドア100では、ドアラッチリンフォースメント11やブラケット12の保持性能の信頼性の向上を図るための構造において、インパクトビーム10自体の位置(レイアウト)を変更する必要がないため、車体のデザイン構成に影響を与えることはない。また、後縦壁23aの形状変更(ビードBの配置)だけで、保持性能の信頼性を向上させる構造であり、新たな部品を追加する必要がなく、低コストで且つ重量を増加させることなく信頼性を向上させることができる。
【0058】
本実施形態では、複数のビードBは、後縦壁23aにおける車両上下方向について屈曲部領域Wに対応する部分に設けられている。これにより、ドア開閉(特にドア閉)や側面衝突等の際に、谷筋Vのうちの応力や荷重の集中が発生し易く脆弱部になり得る屈曲部領域Wの剛性が複数のビードBにより高まる。
【0059】
本実施形態では、ドアラッチリンフォースメント11は後縦壁23aと主要壁22とに固定され、ブラケット12は後縦壁23aと環状壁21とに固定されている。つまり、ドアラッチリンフォースメント11は、ビードBはインナパネル2の主要部2Aにおける後方側角部(換言すると、後縦壁23aと主要壁22とが交わる山筋部分)を補強している。一方、ブラケット12は、環状壁21と縦壁23とが交わる角部である谷筋V(ここでは、谷筋Vのうちの後縦壁23aの屈曲部23a1に対応する領域である屈曲部領域W)を補強している。したがって、サイドドア100は、ドアラッチリンフォースメント11とブラケット12がいずれも後縦壁23aに接合するとともに互いに上下方向に離隔させた状態で、後縦壁23aにおける両要素(11、12)の間の部分を複数のビードBによって補強した構造を有している。その結果、ドア本体1の後端側の部分において、環状壁21から主要壁22までに亘って立体的に連動した高剛性の構造が構築される。これにより、従来の構造において側面衝突等の際に生じ得る主要部2Aにおける後方側角部(山筋部分)や上記谷筋Vを起点とした曲げ変形が、本実施形態に係るサイドドア100では効果的に抑制され、側面衝突の際の衝突エネルギーを効果的に受け止めることができる。
【0060】
また、複数のビードBが形成された後縦壁23aにドアラッチリンフォースメント11との結合箇所(スポット溶接箇所及びボルト締結箇所)があるため、ドアラッチリンフォースメント11とインナパネル2とのスポット溶接の剥離が効果的に回避される。その結果、側面衝突の際に、従来の構造において生じ得たドアラッチリンフォースメント11のL字断面の開き変形(図7参照)が、本実施形態に係る構造では、図6に示すように効果的に抑制される。したがって、本実施形態に係る構造では、側面衝突の際にドアラッチ1bが脱落してドア開放が生じることを効果的に抑制することができる。
【0061】
本実施形態では、ブラケット12が環状壁21と連続して環状壁21の一部をなす退避面部24aに接合されているため、ドア開閉等の際に揺れやすい退避面部24aの揺れを効果的に抑制することができる。
【0062】
本実施形態では、ドアアウタセンターリンフォースメント30の車両前後方向の後端部30aは、車両上下方向についてドアラッチリンフォースメント11とブラケット12との間に位置している。つまり、ドアアウタセンターリンフォースメント30の後端部30aの車室内側に複数のビードBが形成された高剛性の後縦壁23aが位置していることになる。これにより、ドア閉の際に、慣性によって、アウタパネル3と一緒に、ヒンジ1aを支点とした回動方向で車室内側に移動しようとするドアアウタセンターリンフォースメント30の後端部30aの荷重を、後縦壁23aによって効果的に受け止めることができる。その結果、ドアラッチリンフォースメント11とインナパネル2との結合箇所(スポット溶接箇所及びボルト締結箇所)やブラケット12とインナパネル2との結合箇所(スポット溶接箇所)における荷重や応力の集中が効果的に回避することができる。
【0063】
本実施形態では、衝撃緩和部材27が主要壁22のうちの後縦壁23a側の部分における車両上下方向についてドアラッチリンフォースメント11とブラケット12との間の所定箇所に取り付けられている。これにより、乗員等が意図せずに強い力でサイドドア100を閉めた場合であっても、衝撃緩和部材27によって、過剰なエネルギーを吸収し、インナパネル2における上記結合箇所等における応力や荷重の集中をより効果的に回避することができる。
【0064】
本実施形態では、ビードBは後縦壁23aにおける主要壁22側の端部からウェザストリップ26の接触部分の手前まで延在している。これにより、ウェザストリップ26と後縦壁23aとの間のシール性を保ちつつ、後縦壁23aの屈曲部23a1や後環状壁21aの屈曲部21a1の変形が抑制され、ウェザストリップ26が車体側の接触面に対して隙間なく均一に接触するようになり、その結果、インナパネル2側における応力や荷重の集中がより効果的に抑制される。
【0065】
本実施形態では、ビードBは後縦壁23aのビード形成箇所において車両前後方向の前側に膨出し且つ環状壁21側から主要壁22側に向かうほど幅広に形成されている。これにより、しわの発生を効果的に抑制しつつ、ビードBを有した後縦壁23aをプレス成型により形成することができる。
【0066】
なお、ビードBの個数(本数)は4個に限らない。例えば、ビードBの個数は3個以上の適宜の個数を採用することができる。また、サイドドア100は、左側のフロントサイドドアに適用されたが、右側のフロントサイドドアに適用されてもよい。この場合、上述した構造と車幅方向について左右に逆向きの構造が適用される。また、サイドドア100の構造はリアサイドドアの構造に適用されてもよい。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて更なる変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…ドア本体、1a…ヒンジ、1b…ドアラッチ、2…インナパネル、3…アウタパネル、10…インパクトビーム、10a…後端部、11…ドアラッチリンフォースメント、12…ブラケット、21…環状壁、22…主要壁、23…縦壁、23a…後縦壁、26…ウェザストリップ、27…衝撃緩和部材、30…ドアアウタセンターリンフォースメント、30a…後端部、B…ビード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7