(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047034
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】風車の監視装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
F03D 17/00 20160101AFI20230329BHJP
F03D 80/50 20160101ALI20230329BHJP
【FI】
F03D17/00
F03D80/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021155930
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷山 賀浩
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 直孝
(72)【発明者】
【氏名】松崎 謙司
(72)【発明者】
【氏名】吉水 謙司
(72)【発明者】
【氏名】上田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】川端 俊一
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA24
3H178AA43
3H178BB56
3H178BB79
3H178DD12Z
3H178DD54X
3H178EE22
3H178EE32
3H178EE34
(57)【要約】
【課題】運転状態の異常を示すアラートが発報された場合であっても、作業員の派遣頻度を抑制できる風車の監視技術を提供する。
【解決手段】ナセル30の内部を作業する作業ツール45(45a,45b)と、ナセル30の内部空間47において作業ツール45を構造的に支持しその作業位置及び作業姿勢の少なくとも一方を可変的に設定する支持体46(46a,46b)と、作業位置及び前記作業姿勢を指定する内部空間47の座標情報36を入力し支持体46の駆動信号を出力する駆動部49と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風の流動エネルギーから変換した回転エネルギーを伝達するロータ軸、及び前記回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機を少なくとも収容するナセルの内部で作業する作業ツールと、
前記ナセルの内部空間において前記作業ツールを構造的に支持し、その作業位置及び作業姿勢の少なくとも一方を可変的に設定する支持体と、
前記作業位置及び前記作業姿勢を指定する前記内部空間の座標情報を入力し、前記支持体の駆動信号を出力する駆動部と、を備える風車の監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の風車の監視装置において、
前記支持体は、単独又は複数で構成される飛翔体及び多関節アームの少なくとも一方である風車の監視装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の風車の監視装置において、
前記ナセルに内部配置された構成機器に設置した複数のセンサの各々から検出データを取得する取得部と、
複数の前記検出データに基づいて前記ナセルの内部で発生している不具合事象を予め登録された分類の中から選択する第1選択部と、
単独もしくは複数を組み合わせ前記不具合事象に対応させて登録した前記座標情報を前記駆動部に送信する第1送信部と、
前記座標情報に基づいて前記作業ツールが作業した作業データを受信する受信部と、を備える風車の監視装置。
【請求項4】
請求項3に記載の風車の監視装置において、
送信される前記座標情報を任意に操作して、前記作業ツールの作業位置及び作業姿勢を設定する操作部を備える風車の監視装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の風車の監視装置において、
受信した前記作業データに基づいて対処動作を予め登録された分類の中から選択する第2選択部と、
選択された前記対処動作に対応させて登録した前記支持体の動作条件を前記駆動部に送信する第2送信部と、を備える風車の監視装置。
【請求項6】
請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の風車の監視装置において、
前記第1選択部は、過去に取得した前記検出データと選択した前記不具合事象との関係を機械学習して構築した第1学習モデルを使用する風車の監視装置。
【請求項7】
請求項5に記載の風車の監視装置において、
前記第2選択部は、過去に取得した前記作業データと選択した前記対処動作との関係を機械学習して構築した第2学習モデルを使用する風車の監視装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の風車の監視装置において、
前記作業ツールの前記座標情報を同定する基準ブロックが前記内部空間に配置される風車の監視装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の風車の監視装置において、
前記作業ツールは、カメラ、センサ及び工具の少なくともひとつである風車の監視装置。
【請求項10】
風の流動エネルギーから変換した回転エネルギーを伝達するロータ軸、及び前記回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機を少なくとも収容するナセルの内部において作業ツールで作業するステップと、
前記ナセルの内部空間において前記作業ツールを構造的に支持する支持体の作業位置及び作業姿勢の少なくとも一方を可変的に設定するステップと、
前記作業位置及び前記作業姿勢を指定する前記内部空間の座標情報を駆動部に入力し、前記支持体の駆動信号を出力させるステップと、を含む風車の監視方法。
【請求項11】
コンピュータに、
風の流動エネルギーから変換した回転エネルギーを伝達するロータ軸、及び前記回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機を少なくとも収容するナセルの内部において作業ツールで作業するステップ、
前記ナセルの内部空間において前記作業ツールを構造的に支持する支持体の作業位置及び作業姿勢の少なくとも一方を可変的に設定するステップ、
前記作業位置及び前記作業姿勢を指定する前記内部空間の座標情報を駆動部に入力し、前記支持体の駆動信号を出力させるステップ、を実行させる風車の監視プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、風力発電に使用する風車を監視する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
風力は、どこにでも存在し、二酸化炭素を排出せず、枯渇せずに永続的に利用できる、再生可能エネルギーの一つである。このような風力を利用した発電を促進するには、発電の安定性及び持続性を向上させるため、運転の健全性を監視する技術の確立が重要である。風力発電システムの監視は、風車の稼働状態を監視するSCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)や、構成機器の損傷や劣化等を個別に検知するCMS(Condition Monitoring System)等がある。
【0003】
SCADAでは、風向、風量、発電量、ピッチ角、ナセル角度、主軸回転速度、オイル温度、ベアリング温度、発電機温度、ナセル内温度,外気温、等といった運転情報が収集される。これに対しCMSは、構成機器に設置したセンサによる振動や音響等といった検出データが収集される。
【0004】
そして、このようにして収集した情報に基づいて、風車の運転状態の正常/異常の判定がなされる。そして、異常判定がなされた場合は、アラートが発報され、そのレベルに対応するアクションが実行される。そして、アラートのレベルによっては、風車の運転を停止させ、現場に作業員を派遣して必要な対処をし、アラートをリセットして運転を再開させるという対応が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、高レベルのアラートが発報された場合であっても、結果的に現場に派遣された作業員の五感(主に目視)による確認のみで運転が再開されたり、そもそも誤報であったりすることも多い。風車の運転が停止してから再開するまでの中断期間は、設備稼働率が低下し逸失発電量の増加に寄与する。このため、現場に作業員を派遣するような事態は、具体的な作業が伴う場合に限定されることが望ましい。また、洋上設置方式の風車の場合、海の状態によっては、作業員の風車へのアクセスが困難となり、運転の中断期間が長引いて逸失発電量がさらに増大する課題がある。
【0007】
本発明の実施形態はこのような事情を考慮してなされたもので、運転状態の異常を示すアラートが発報された場合であっても、作業員の派遣頻度を抑制できる風車の監視技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る風車の監視装置において、風の流動エネルギーから変換した回転エネルギーを伝達するロータ軸及び前記回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機を少なくとも収容するナセルの内部で作業する作業ツールと、前記ナセルの内部空間において前記作業ツールを構造的に支持しその作業位置及び作業姿勢の少なくとも一方を可変的に設定する支持体と、前記作業位置及び前記作業姿勢を指定する前記内部空間の座標情報を入力し、前記支持体の駆動信号を出力する駆動部と、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態により、運転状態の異常を示すアラートが発報された場合であっても、作業員の派遣頻度を抑制できる風車の監視技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(A)(B)本発明の実施形態が適用される風車の全体図。
【
図2】各実施形態に係る風車の監視装置における機構部が設置されたナセルの内部概念図。
【
図3】第1実施形態に係る風車の監視装置における制御部のブロック図。
【
図4】第2実施形態に係る風車の監視装置における制御部のブロック図。
【
図6】ナセルの内部空間におけるカメラ(作業ツール)の座標情報を同定する基準ブロックの外観図。
【
図7】実施形態に係る風車の監視方法の工程及び風車の監視プログラムのアルゴリズムを説明するフローチャート。
【
図8】実施形態に係る風車の監視・分析方法の工程及び風車の監視プログラムのアルゴリズムを説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施形態が適用される風車20の全体図である。
図1(A)は着床式の洋上設置方式の一例を示し、
図2(B)は浮体式の洋上設置方式の一例を示している。このように風車20は、ブレード25と、タワー26と、ナセル30と、ハブ51を備えている。
【0012】
ブレード25は、ハブ51でロータ軸27(
図2)に連結されるように放射状に配置されている。これらのブレード25は、風の流動エネルギーを効率よく回転エネルギーに変換できるよう、風の流入方向に対しピッチ角が調節される。このピッチ角を調整するモータやブレーキ、非常用電源などの駆動機構(図示略)がハブ51内に設けられている。タワー26は、海底に築かれ海面から露出する基礎28の上面に、鉛直方向に沿って建築されている。なお
図1の実施形態では洋上設置方式をとる風車20への適用を例示しているが、これに限定されることなく、地上設置方式の風車にも適用できる。
【0013】
図2は各実施形態に係る風車の監視装置(以下、単に「監視装置」という)における機構部40が設置されたナセル30の内部概念図である。このようにナセル30は、ロータ軸27を風向きに自動的に追従させるヨー駆動部23を介して、タワー26の頂部に設けられている。そして。このタワー26の内部には、海上輸送され基礎28に上陸させた物品もしくは作業員を、ナセル30の内部に移送する昇降手段24が設けられている。
【0014】
そして、このナセル30には、各種の構成機器33が収容されている。そのような構成機器33は、ロータ軸27を支持する主軸受33aと、このロータ軸27の末端に接続して回転数を増速させる増速器33bと、回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機33cと、発電機33cの出力を変調・変圧等し系統周波数及び系統電圧に合わせた電力の外部出力29とする変換回路33eと、これら構成機器33(33a,33b…)に設置された複数のセンサ34に接続し各々の検出データ43を集約して外部伝送する伝送回路33dと、が例示されている。
【0015】
ここで、センサ34としては、ジャイロセンサ、加速度センサ、振動センサ、AEセンサ、圧力センサ、温度センサ、臭いセンサ、音波センサ、騒音センサ、距離センサ等が挙げられる。さらに、このナセル30には、風況(風速、風向等)を計測するための風況計(図示略)が設けられている。
【0016】
図2は監視装置における機構部40が設置されたナセル30の内部概念図の一例を示している。このように監視装置の機構部40は、ナセル30の内部を撮影(作業)するカメラ45(45a,45b)(作業ツール)と、ナセル30の内部空間47においてカメラ45を構造的に支持しその撮影位置(作業位置)及び撮影姿勢(作業姿勢)の少なくとも一方を可変的に設定する支持体46(46a,46b)と、撮影位置及び前記撮影姿勢を指定する内部空間47の座標情報36を入力し支持体46の駆動信号を出力する駆動部49と、を備えている。
【0017】
ここで支持体46は、飛翔体46aや多関節アーム46bが挙げられる。これら支持体46は、いずれか一方のみで配置される場合もあるし、両方が配置される場合もある。また、支持体46は、単数で構成される場合もあるし、複数で構成されて協調制御される場合もある。飛翔体46aは、平時は、ナセル30の内部に設けられたヘリポートに常駐し、給電等が行われている。
【0018】
また多関節アーム46bは、その基端部においてレール19を移動するように構成され、広範囲に亘りナセル30を内部撮影することができる。またレール19の構成としては、走行のみでなく、横行と上下方向のテレスコピック機構などを組み合わせた3次元移動が可能な構成をとることもできる。さらに上記構成の横行、走行、テレスコピック機構によりテレスコピック機構先端で飛翔体46aを把持してナセル30内を移動し、タワー26上端から飛翔体46aをリリースして飛翔体46aのみでタワー26内の検査を実施することができる。なお多関節アーム46bは、レール19に替えて、移動ロボット(図示略)に設けられる場合もある。
【0019】
また支持体46は、ナセル30の内部のみに限らず、タワー26の内部やハブ51の内部もカメラ45で撮影できる。この場合、タワー26の継目のボルトの締結具合や、その内部に配置されている構成機器33を観察することができる。カメラ45としては、光学カメラ、赤外線カメラ、マルチスペクトル、ハイパースペクトルを作業ツールとして採用することが考えられ、また360度カメラを採用することも考えられる。なお、作業ツールとしては、ミリ波レーダーやレーザー等を用いた距離計測器、振動や加速度、温度などの状態量を計測するセンサをカメラ45の代わりに又はカメラ45に加えて備えるようにしてもよい。
【0020】
このように支持体46は、作業ツールとしてカメラ45を常時支持する構成に限らない。例えば、センサ34同等の可搬式のセンサ(図示略)や構成機器33に対し接触作業を行う工具であっても良い。また、それぞれ異なる種類のカメラ45やセンサを複数支持してもよい。さらに、検出した不具合事象に合わせて、もしくは監視員が適切と考える種類の作業ツールに交換、装着することもできる。
【0021】
図3は第1実施形態に係る風車の監視装置における制御部10A(10)の一例を示すブロック図である。このように監視装置の制御部10Aは、ナセル30に内部配置された構成機器33(33a,33b…)に設置した複数のセンサ34の各々から検出データ43を取得する取得部15と、複数の検出データ43に基づいてナセル30の内部で発生している不具合事象35を予め第1登録部31に登録された分類の中から選択する第1選択部11と、単独もしくは複数を組み合わせ不具合事象35に対応させて登録した座標情報36を駆動部49に送信する第1送信部21と、座標情報36に基づいてカメラ45(45a,45b)(作業ツール)が撮影(作業)した画像データ39(作業データ)を受信する受信部16と、を備えている。
【0022】
取得部15に取得させる検出データ43としては、上述したCMS(Condition Monitoring System)用途のセンサ34の出力値に、さらに、上述したSCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)の状態値を加えてもよい。なお取得部15による検出データ43の取得は、風車20の運転状態に関し何らかの異常を示すアラートが発報されてから開始するようにしてもよい。もしくは、何れかの不具合事象35に該当するまで、切れ目なく連続的に検出データ43を取得してもよい。
【0023】
第1選択部11は、複数のセンサ34(34a,34b…)から取得された検出データ43に基づいて、人間系の判断もしくは自動的に、第1登録部31から不具合事象35を選択することができる。なおこの不具合事象35は、予め検討され複数に分類されて第1登録部31に登録されている。
【0024】
さらにこの第1登録部31には、登録されている複数の不具合事象35の各々に紐付けて、ナセル30の内部空間47において支持体46の位置決めをする座標情報36が、登録されている。各々の不具合事象35に紐付けされる座標情報36は単独である場合もあるし、複数を組み合わせる場合もある。複数の座標情報36を組み合わせることにより、同一の撮影対象(作業対象)に対し、複数の撮影位置(作業位置)及び撮影姿勢(作業姿勢)からの画像データ39(作業データ)を受信することができる。なおこれら支持体46の座標情報36は、作業ツールとして取り付けたカメラ45の撮影条件を紐付けたり作業ツールとして取り付けた距離センサにより再構築したりすることができる。
【0025】
座標情報36はあらかじめ登録されている他に、レーザスキャンデータや3DCADデータなどから構築された3次元データ上から座標情報を登録・指定することもできる。また3次元データは360度カメラ(全方位カメラ)や単眼カメラの動画(時系列データ)、ステレオ画像などから再構成により生成することもできる。カメラ45による画像データ39から3次元データを更新することで、座標情報を更新するだけでなく、形状の変化(過去からの差分)の検査にも利用することができる。
【0026】
第1送信部21は、座標情報36を駆動部49に送信することで、紐付けられた不具合事象35の原因となる構成機器33にカメラ45をアプローチさせることができる。そして、様々な位置・姿勢から、解析に必要な箇所のみフォーカスして、構成機器33の画像データ39を得ることができる。また注目すべき構成機器33が複数ある場合も、カメラ45の位置・姿勢を変えて、それぞれにアプローチさせることができる。
【0027】
受信部16では、座標情報36に基づいてカメラ45(45a,45b)が撮影した画像データ39を受信し、表示部17に表示させる。なお、画像データ39は、静止画であったり動画であったりする。また、受信された画像データ39は、リアルタイムで表示される場合の他に、記録され後日に再生することもできる。
【0028】
さらに監視装置の制御部10は、送信される座標情報36を任意に操作してカメラ45の撮影位置及び撮影姿勢を設定する操作部18を備えている。これにより、予め紐付けられている座標情報36では、満足のいく画像データ39が得られなかった場合でも、カメラ45の位置・姿勢に修正を加えて再撮影することができる。このようにして、操作して修正を加えた座標情報36を不具合事象35に紐付けて更新登録することもできる。
【0029】
また上述のとおり支持体46は、カメラ45を常時付帯させる構成に限らないことから、受信部16が受信するデータは必ずしも画像データ39だけではなく、可搬式のセンサ(図示略)から送出されるデータ、もしくは信号であっても良い。この場合、表示部17ではデータ、もしくは信号の時系列グラフや、可搬式のセンサの種類によってあらかじめ設定された一次処理を施して変換された物理量を表示させる。また受信するデータ種が複数種類ある場合は同時に表示させることも良く、監視員が自由に設定することもできる。
【0030】
さらに不具合事象が誤報や、風況起因など風車本体の不具合に伴うものではなく修復を必要としないことが判断された場合は、アラートリセットを遠隔操作にて行うことで、人員を派遣する必要がなくなる。
【0031】
(第2実施形態)
次に
図4を参照して本発明における第2実施形態について説明する。
図4は第2実施形態に係る風車の監視装置における制御部10B(10)の一例を示すブロック図である。なお、
図3において
図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0032】
第2実施形態に係る監視装置10B(10)は、第1実施形態の監視装置10Aの構成に加えて、受信部16で受信した画像データ39(作業データ)に基づいて対処動作37を予め第2登録部32に登録された分類の中から選択する第2選択部12と、選択された対処動作37に対応させて第2登録部32に登録された支持体46の動作条件38を駆動部49に送信する第2送信部22と、を備えている。
【0033】
第2選択部12は、カメラ45(45a,45b)(作業ツール)が撮影(作業)した画像データ39(作業データ)に基づいて、人間系の判断もしくは自動的に、第2登録部32から対処動作37を選択することができる。なおこの対処動作37は、予め検討され複数に分類されて第2登録部32に登録されている。
【0034】
さらにこの第2登録部32には、登録されている複数の対処動作37の各々に紐付けて、ナセル30の内部空間47において支持体46を位置決めし作業させる動作条件38が登録されている。ここで対処動作37とは、支持体46からカメラ45を取り外し、替わりに他の作業ツールを取り付け、対象に所定の作業を行うことである。具体的な作業としては、潤滑油を注いだりネジを増し締めしたりすることが挙げられる。
【0035】
第2送信部22は、発生した対処動作37に紐付けられた動作条件38を駆動部49に送信することで、支持体46からカメラ45を取り外し、替わりに他の作業ツールを取り付けることができる。そして、対象に所定の作業を行うことで、不具合事象35を解消することができる。また対処動作37が複数ある場合も、作業ツールを取り換えて、それぞれの作業をさせることができる。
【0036】
画像データ39は、動力伝達系や構造物系の構成機器33では、ボルトの外観点検、歯車の損傷、歯車の損傷有無、制御装置の各接続部、漏油・漏水の有無等やクラック、錆、腐食の有無を確認できるものが具体的に挙げられる。ブレーキに対しては、動作中のがたつきや、滑り、ブレーキシューの摩耗度を観察する。電気系の構成機器33では、端子台やケーブルの外観、アーク痕、端子の緩み、バッテリーの有効期限、電解液の漏れ、液面レベルの確認等が挙げられる。他の作業データとしては、作業を行った際の確認データ(例えば、電気抵抗値、トルク検出値、といった機器検出値等)が挙げられる。
【0037】
対処動作37としては、緩んだネジの増し締め、給油、電気抵抗測定などがある。これにより、異常を示すアラートが発報された場合に不具合事象35の確認作業だけで人員を派遣することがなくなる。さらに、この不具合事象35を支持体46による対処動作37のみで解消することができれば、風車の監視装置に発生した不具合事象35を自律動作で全て修復させることができ、アラートリセットを遠隔操作にて行うことで、人員を派遣する必要がなくなる。
【0038】
図5は学習モデル41,42の構築に関する概念図の一例である。機械学習部44は、過去に取得した検出データ43と選択した不具合事象35との関係を機械学習させ、第1学習モデル41を構築することができる。第1選択部11は、この第1学習モデル41を使用して、新たに取得した検出データ43から、対応する不具合事象35を、第1登録部31に登録された分類の中から自動的に選択する。
【0039】
同様に機械学習部44は、過去に取得した画像データ39(作業データ)と選択した対処動作37との関係を機械学習させ、第2学習モデル42を構築することができる。第2選択部12は、この第2学習モデル42を使用して、新たに取得した画像データ39から、対応する対処動作37を、第2登録部32に登録された分類の中から自動的に選択する。また機械学習する作業データは、画像データ39に限らず、支持体46に支持させた可搬式のセンサから送出されるデータ、もしくは信号を用いても良い。
【0040】
図6はナセル30の内部空間47におけるカメラ45の座標情報36を同定する基準ブロック50の外観図の一例である。ナセル30の内部空間47における現実の撮影位置及び撮影方向は、第1には、座標情報36に基いて支持体46(46a,46b)が持つ固有の機能により設定される。飛翔体46aであれば、駆動部49から発信される信号に基づいて撮影位置及び撮影姿勢を調整できる。多関節アーム46bであれば関節を構成するモータの回転角を決定することで撮影位置及び撮影姿勢を調整できる。
【0041】
そして、撮影位置及び撮影姿勢を設定する、第2の方法として、支持体46に搭載されているカメラ45が基準ブロック50を撮影した画像データ39を用いる方法がある。この第2の方法を用いて、第1の方法のキャリブレーションを行うこともできる。この基準ブロック50は、多角錐台の形状を有し、側面には異なる色もしくは模様が付されている。
【0042】
さらに基準ブロック50の使い方として、撮影した画像データ39からキャリブレーションをする他に、飛翔体46aが着陸した場合に飛翔体46aと基準ブロック50が嵌合することで、飛翔体46aの位置・姿勢情報をキャリブレーションすることもできる。なお
図6には、4角推台形状の基準ブロック50が例示されているが、これに限定されない。このような色違いの側面を持つ多角錐台形状の基準ブロック50を撮影した画像データ39の画像解析により、支持体46撮影位置及び撮影姿勢を調整できる。また飛翔体46aの位置・姿勢情報についてはGPS情報を利用する場合もある。
【0043】
さらに、基準ブロック50の多角錐台の上面を飛翔体46aの待機ポートとして利用することもできる。この基準ブロック50に、飛翔体46aの給電装置を設けてもよい。このような、基準ブロック50が設けられることで、風車20が船舶や洋上の浮体上に設置され波で揺れる環境にあっても、実際の撮影位置及び撮影姿勢と座標情報36との誤差を抑制することができる。
【0044】
図7のフローチャートの例に基づいて実施形態に係る風車の監視方法の工程及び風車の監視プログラムのアルゴリズムを説明する(適宜、
図2,
図4参照)。まず複数のセンサ34(34a,34b…)の各々から検出データ43を取得する(S11)。そして複数の検出データ43に基づいてナセル30の内部で発生している不具合事象35を予め登録された分類の中から選択する(S12)。さらに、この不具合事象35に対応させて登録した座標情報36を駆動部49に送信する(S13)。
【0045】
次に、座標情報36を駆動部49に入力し、支持体46の駆動信号を出力させる(S14)。そして、ナセル30の内部空間47においてカメラ45を構造的に支持する支持体46(46a,46b)の撮影位置及び撮影姿勢の少なくとも一方を設定する(S15)。さらにナセル30の内部をカメラ45(45a,45b)で撮影する(S16)。なお、対象物がナセル30ではなく、タワー26やハブ51に設置されている場合は該当箇所を撮影する。
【0046】
次に座標情報36に基づいてカメラ45が撮影した画像データ39を受信する(S17)。そして受信した画像データ39に基づいて対処動作37を予め登録された分類の中から選択する(S18)。さらに、選択された対処動作37に対応させて登録した支持体46の動作条件38を駆動部49に送信する(S19)。そして、ナセル30の内部空間47において支持体46は、動作条件38で規定された作業を実施する(S20、END)。また、支持体46に可搬式のセンサを設置する場合は、例えば
図8に示すフローチャートとなるが風車の監視方法の工程及び風車の監視プログラムのアルゴリズムは上述と同等となる。
【0047】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の風車の監視装置によれば、撮影位置及び撮影姿勢を可変するカメラの支持体をナセルに導入することにより、運転状態の異常を示すアラートが発報された場合であっても、作業員の派遣頻度を抑制することが可能となる。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0049】
以上説明した風車の監視装置は、専用のチップ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを高集積化させた制御装置と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの外部記憶装置と、ディスプレイなどの表示装置と、マウスやキーボードなどの入力装置と、通信I/Fとを、備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成で実現できる。このため風車の監視装置の構成要素は、コンピュータのプロセッサで実現することも可能であり、風車の監視プログラムにより動作させることが可能である
【0050】
また風車の監視プログラムは、ROM等に予め組み込んで提供される。もしくは、このプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供するようにしてもよい。
【0051】
また、本実施形態に係る風車の監視プログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせて提供するようにしてもよい。また、風車の監視装置は、構成要素の各機能を独立して発揮する別々のモジュールを、ネットワーク又は専用線で相互に接続し、組み合わせて構成することもできる。
【符号の説明】
【0052】
10(10A,10B)…風車の監視装置、11…第1選択部、12…選択部、15…取得部、16…受信部、17…表示部、18…操作部、19…レール、20…風車、21…第1送信部、22…第2送信部、23…ヨー駆動部、24…昇降手段、25…ブレード、26…タワー、27…ロータ軸、28…基礎、29…外部出力、30…ナセル、31…第1登録部、32…第2登録部、33…構成機器、33a…主軸受(構成機器)、33b…増速器(構成機器)、33c…発電機(構成機器)、33d…伝送回路(構成機器)、33e…変換回路(構成機器)、34…センサ、35…不具合事象、36…座標情報、37…対処動作、38…動作条件、39…画像データ(作業データ)、40…機構部、41…第1学習モデル、42…第2学習モデル、43…検出データ、44…機械学習部、45…カメラ(作業ツール)、46(46a,46b)…支持体、46a…飛翔体(支持体)、46b…多関節アーム(支持体)、47…内部空間、49…駆動部、50…基準ブロック、51…ハブ。