(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047070
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】燃料電池システム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04858 20160101AFI20230329BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20230329BHJP
H01M 8/249 20160101ALI20230329BHJP
H01M 8/04225 20160101ALI20230329BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20230329BHJP
H01M 8/04228 20160101ALI20230329BHJP
H01M 8/04303 20160101ALI20230329BHJP
H01M 8/04302 20160101ALI20230329BHJP
H01M 8/04694 20160101ALI20230329BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20230329BHJP
【FI】
H01M8/04858
H01M8/04537
H01M8/249
H01M8/04225
H01M8/04313
H01M8/04228
H01M8/04303
H01M8/04302
H01M8/04694
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021155993
(22)【出願日】2021-09-24
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度、環境省、CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業(業務用・産業用純水素燃料電池(PEFC)の低コスト化及びシステム化開発・実証)委託業務、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(74)【代理人】
【識別番号】100208188
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 薫
(72)【発明者】
【氏名】秋山 紗耶加
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB11
5H127BA02
5H127BB02
5H127DA01
5H127DA11
5H127DB66
5H127DB69
5H127DC42
5H127DC46
(57)【要約】
【課題】燃料電池システムの発電出力の応答性を向上させる。
【解決手段】燃料電池システム1は、複数の燃料電池10と、各燃料電池10の運転状態を制御する制御装置20とを備えている。制御装置20は、出力指令を取得する指令取得部22と、通常運転モードで運転すべき燃料電池10の台数を決定する通常運転台数決定部23と、各燃料電池10の運転状態を決定する運転状態決定部24と、を有する。運転状態決定部24は、出力指令に応じて、通常運転モードで運転されている燃料電池の少なくとも1つの運転モードを待機運転モードに変更し、又は、待機運転モードで運転されている燃料電池の少なくとも1つの運転モードを通常運転モードに変更する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料電池と、
各燃料電池の運転状態を制御する制御装置と、
を備える燃料電池システムであって、
各燃料電池は、発電効率が第1の発電効率以上となる発電出力で運転される通常運転モードと、発電効率が前記第1の発電効率よりも低い第2の発電効率以下となる発電出力で運転される待機運転モードと、を含む複数の運転モードで運転可能であり、
前記制御装置は、
前記燃料電池システムが発電すべき総発電出力を示す出力指令を取得する指令取得部と、
前記出力指令が示す総発電出力に基づき、通常運転モードで運転すべき燃料電池の台数を決定する通常運転台数決定部と、
前記通常運転台数決定部で決定された台数に基づいて、各燃料電池の運転状態を決定する運転状態決定部と、
を有し、
前記燃料電池システムが発電している総発電出力よりも前記出力指令が示す総発電出力が低い場合、或いは通常運転モードで運転されている燃料電池の台数よりも前記通常運転台数決定部で決定された台数が少ない場合、前記運転状態決定部は、通常運転モードで運転されている燃料電池の少なくとも1つの運転モードを待機運転モードに変更し、
前記燃料電池システムが発電している総発電出力よりも前記出力指令が示す総発電出力が高い場合、或いは通常運転モードで運転されている燃料電池の台数よりも前記通常運転台数決定部で決定された前記台数が多い場合、前記運転状態決定部は、待機運転モードで運転されている燃料電池の少なくとも1つの運転モードを通常運転モードに変更する、燃料電池システム。
【請求項2】
前記制御装置は、各燃料電池の起動回数を取得する情報取得部を更に有し、
前記運転状態決定部は、通常運転モードで運転されている燃料電池のうち前記情報取得部で取得された起動回数が最も少ない燃料電池の運転モードを待機運転モードに変更する、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記制御装置は、待機運転モードで運転されている燃料電池の台数及び各燃料電池の起動回数を取得する情報取得部を更に有し、
前記情報取得部で取得された待機運転モードで運転されている燃料電池の台数が所定の台数よりも多い場合、前記運転状態決定部は、待機運転モードで運転されている燃料電池のうち、前記情報取得部で取得された起動回数が最も少ない燃料電池を、運転を停止させる燃料電池として決定する、請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記制御装置は、各燃料電池の起動回数を取得する情報取得部を更に有し、
前記燃料電池システムが発電している総発電出力よりも前記出力指令が示す総発電出力が高い場合、或いは通常運転モードで運転されている燃料電池の台数よりも前記通常運転台数決定部で決定された前記台数が多い場合、前記運転状態決定部は、運転が停止されている燃料電池のうち、前記情報取得部で取得された起動回数が最も少ない燃料電池を通常運転モードで運転される燃料電池として決定する、請求項1~3のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記情報取得部は、待機運転モードで運転されている燃料電池の台数を取得し、
前記情報取得部で取得された台数が所定の台数よりも少ない場合、前記運転状態決定部は、運転が停止されている燃料電池のうち、前記情報取得部で取得された起動回数が最も少ない燃料電池を、待機運転モードで運転される燃料電池として決定する、請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記燃料電池は、通常運転モードで運転されるとき、当該燃料電池の最大発電出力の40~60%となる発電出力で運転される、請求項1~5のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記燃料電池は、通常運転モードで運転されるとき、当該燃料電池の発電効率が最大となる発電出力で運転される、請求項1~6のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記燃料電池は、待機運転モードで運転されるとき、当該燃料電池の最大発電出力の5~15%となる発電出力で運転される、請求項1~7のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
各々が、発電効率が第1の発電効率以上となる高効率発電出力で運転される通常運転モードと、発電効率が前記第1の発電効率よりも低い第2の発電効率以下となる低効率発電出力で運転される待機運転モードと、を含む複数の運転モードで運転可能な、複数の燃料電池を含む燃料電池システムの制御方法であって、
前記燃料電池システムが発電すべき総発電出力を示す出力指令を取得する出力指令取得工程と、
前記出力指令が示す総発電出力に基づき、通常運転モードで運転すべき燃料電池の台数を決定する通常運転台数決定工程と、
前記通常運転台数決定工程で決定された台数に基づいて、各燃料電池の運転状態を決定する運転状態決定工程と、
を備え、
前記運転状態決定工程では、
前記燃料電池システムが発電している総発電出力よりも前記出力指令が示す総発電出力が低い場合、或いは通常運転モードで運転されている燃料電池の台数よりも前記通常運転台数決定工程で決定された台数が少ない場合、通常運転モードで運転されている燃料電池の少なくとも1つの運転モードを待機運転モードに変更し、
前記燃料電池システムが発電している総発電出力よりも前記出力指令が示す総発電出力が高い場合、或いは通常運転モードで運転されている燃料電池の台数よりも前記通常運転台数決定工程で決定された前記台数が多い場合、待機運転モードで運転されている燃料電池の少なくとも1つの運転モードを通常運転モードに変更する、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、燃料電池システム及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料ガスの有している化学エネルギーを直接電気に変換するシステムとして、燃料電池システムが知られている。この燃料電池システムは、燃料である水素と酸化剤である酸素とを電気化学的に反応させて電気を発生させる燃料電池を備えている。このような燃料電池システムは、高い発電効率で電気エネルギーを取り出すことが可能である。特許文献1には、複数の燃料電池を備えた燃料電池システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、要求される発電出力に対する燃料電池システムの発電出力の応答性向上が求められている。
【0005】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、燃料電池システムの発電出力の応答性向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による燃料電池システムは、
複数の燃料電池と、
各燃料電池の運転状態を制御する制御装置と、
を備え、
各燃料電池は、発電効率が第1の発電効率以上となる発電出力で運転される通常運転モードと、発電効率が前記第1の発電効率よりも低い第2の発電効率以下となる発電出力で運転される待機運転モードと、を含む複数の運転モードで運転可能であり、
前記制御装置は、
前記燃料電池システムが発電すべき総発電出力を示す出力指令を取得する指令取得部と、
前記出力指令が示す総発電出力に基づき、通常運転モードで運転すべき燃料電池の台数を決定する通常運転台数決定部と、
前記通常運転台数決定部で決定された台数に基づいて、各燃料電池の運転状態を決定する運転状態決定部と、
を有し、
前記燃料電池システムが発電している総発電出力よりも前記出力指令が示す総発電出力が低い場合、或いは通常運転モードで運転されている燃料電池の台数よりも前記通常運転台数決定部で決定された台数が少ない場合、前記運転状態決定部は、通常運転モードで運転されている燃料電池の少なくとも1つの運転モードを待機運転モードに変更し、
前記燃料電池システムが発電している総発電出力よりも前記出力指令が示す総発電出力が高い場合、或いは通常運転モードで運転されている燃料電池の台数よりも前記通常運転台数決定部で決定された前記台数が多い場合、前記運転状態決定部は、待機運転モードで運転されている燃料電池の少なくとも1つの運転モードを通常運転モードに変更する。
【0007】
本発明による制御方法は、
各々が、発電効率が第1の発電効率以上となる高効率発電出力で運転される通常運転モードと、発電効率が前記第1の発電効率よりも低い第2の発電効率以下となる低効率発電出力で運転される待機運転モードと、を含む複数の運転モードで運転可能な、複数の燃料電池を含む燃料電池システムの制御方法であって、
前記燃料電池システムが発電すべき総発電出力を示す出力指令を取得する出力指令取得工程と、
前記出力指令が示す総発電出力に基づき、通常運転モードで運転すべき燃料電池の台数を決定する通常運転台数決定工程と、
前記通常運転台数決定工程で決定された台数に基づいて、各燃料電池の運転状態を決定する運転状態決定工程と、
を備え、
前記運転状態決定工程では、
前記燃料電池システムが発電している総発電出力よりも前記出力指令が示す総発電出力が低い場合、或いは通常運転モードで運転されている燃料電池の台数よりも前記通常運転台数決定工程で決定された台数が少ない場合、通常運転モードで運転されている燃料電池の少なくとも1つの運転モードを待機運転モードに変更し、
前記燃料電池システムが発電している総発電出力よりも前記出力指令が示す総発電出力が高い場合、或いは通常運転モードで運転されている燃料電池の台数よりも前記通常運転台数決定工程で決定された前記台数が多い場合、待機運転モードで運転されている燃料電池の少なくとも1つの運転モードを通常運転モードに変更する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、燃料電池システムの発電出力の応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態による燃料電池システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す燃料電池システムに含まれる燃料電池の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す燃料電池システムの制御装置の構成を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態による燃料電池システムの制御方法を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、第1の実施形態による燃料電池システムの制御方法を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第2の実施形態による燃料電池システムの制御装置の構成を示す図である。
【
図7】
図7は、第2の実施形態による燃料電池システムの制御方法を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、第2の実施形態による燃料電池システムの制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態による燃料電池システム1の構成を示すブロック図である。
図2は、
図1に示す燃料電池システム1に含まれる燃料電池10の構成を概略的に説明するための図である。
【0011】
図1に示す燃料電池システム1は、複数の燃料電池10と、制御装置20と、操作装置30と、を備えている
【0012】
燃料電池10は、水素と酸素とを用いて電気を発生させる。各燃料電池10は、例えば固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)である。
図2に示す例では、燃料電池10は、燃料電池スタック11と、燃料供給配管14と、燃料排出配管15と、空気供給配管16と、空気排出配管17と、電源装置18と、を有している。
【0013】
燃料電池スタック11は、電解質膜を挟んで設けられたアノード12とカソード13とを備えている。燃料供給配管14は、アノード12の吸気口に接続されている。この燃料供給配管14は、水素ガスをアノード12に供給する。燃料排出配管15は、アノード12の排出口に接続されている。この燃料排出管15は、アノード12から排出されたガスを、燃料電池10の外部または内部に排出する。空気供給配管16は、カソード13の吸気口に接続されている。この空気供給配管16は、空気中の酸素ガスをカソード13に供給する。空気排出配管17は、カソード13の排出口に接続されている。この空気排出配管17は、カソード13から排出されたガスを、燃料電池10の外部に排出する。
【0014】
燃料電池スタック11は、燃料供給配管14を介してアノード12に供給された水素ガスと、空気供給配管16を介してカソード13に供給された空気中の酸素ガスとを用いて発電する。
【0015】
電源装置18は、燃料電池スタック11の電極に接続されている。電源装置18は、燃料電池スタック11から電流を取り出す。図示された例では、各燃料電池10の最大発電出力は100kWである。
【0016】
制御装置20は、各燃料電池10の運転状態を制御する。具体的には、制御装置20は、各燃料電池10に制御信号を送ることにより、当該燃料電池10を、通常運転モードと待機運転モードとを含む複数の運転モードで運転させる。また、制御装置20は、各燃料電池10に制御信号を送ることにより、燃料電池10の運転を停止させ、又は、運転が停止している燃料電池10を起動させる。すなわち、各燃料電池10は、制御信号を受けて、通常運転モードで運転された状態、待機運転モードで運転された状態、及び、運転停止状態の、いずれかの運転状態にされる。
【0017】
ここで、燃料電池10は、通常運転モードで運転されるとき、発電効率が第1の発電効率以上となる発電出力で運転される。通常運転モードで運転される燃料電池10の発電効率が所定の発電効率以上であることにより、燃料電池システム1全体の発電効率を所定の発電効率以上にすることができる。また、燃料電池10は、待機運転モードで運転されるとき、発電効率が上記第1の発電効率よりも低い第2の発電効率以下となる発電出力で運転される。図示された例では、燃料電池10は、待機運転モードで運転されるとき、燃料電池システム1が電力供給を行う系統から解列されて、自立運転される。
【0018】
図示された例では、燃料電池10は、通常運転モードで運転されるとき、当該燃料電池の最大発電出力の40~60%となる発電出力、あるいは42%~58%となる発電出力で運転される。図示された例では、燃料電池10は、通常運転モードで運転されるとき、当該燃料電池10の発電効率が最大となる発電出力で運転される。一般に、燃料電池10は、当該燃料電池10の最大発電出力の約50%となる発電出力で運転される時、その発電効率が最大となる。図示された例では、各燃料電池10は、通常運転モードで運転されるとき、その最大発電出力の50%となる発電出力で運転される。上述したように、図示された例では各燃料電池10の最大発電出力は100kWであるため、通常運転モードで運転される燃料電池10の発電出力は、50kWである。
【0019】
また、図示された例では、燃料電池10は、待機運転モードで運転されるとき、当該燃料電池10の最大発電出力の5~15%となる発電出力で運転される。図示された例では、燃料電池10は、待機運転モードで運転されるとき、当該燃料電池10の最大発電出力の10%となる発電出力で運転される。上述したように、図示された例では各燃料電池10の最大発電出力は100kWであるため、待機運転モードで運転される燃料電池10の発電出力は、10kWである。
【0020】
以下では、通常運転モードで運転されている燃料電池10を、「通常モード燃料電池」又は「通常モードFC」とも呼ぶ。また、以下では、待機運転モードで運転されている燃料電池10を、「待機モード燃料電池」又は「待機モードFC」とも呼ぶ。また、以下では、運転停止状態にある燃料電池10を、「停止燃料電池」又は「停止FC」とも呼ぶ。また、以下では、通常運転モードで運転されている燃料電池10の発電出力を、「通常発電出力」とも呼ぶ。また、以下では、待機運転モードで運転されている燃料電池10の発電出力を、「待機発電出力」とも呼ぶ。
【0021】
図3は、制御装置20の構成を概略的に示すブロック図である。
図3に示すように、第1の実施形態による制御装置20は、情報取得部21と、指令取得部22と、通常運転台数決定部23と、運転状態決定部24と、を有している。
【0022】
情報取得部21は、通常モード燃料電池10の台数、待機モード燃料電池10の台数、及び、各燃料電池10の起動回数を取得する。情報取得部21には、例えば、運転状態決定部24から、通常モード燃料電池10の台数、待機モード燃料電池10の台数及び各燃料電池10の起動回数が入力される。
【0023】
指令取得部22は、燃料電池システム1が発電すべき総発電出力を示す出力指令を取得する。図示された例では、指令取得部22は、上記総発電出力を、操作装置30から取得する。以下では、出力指令が示す総発電出力を、「指令総発電出力」とも呼ぶ。また、燃料電池システム1が出力している総発電出力を、「現行総発電出力」とも呼ぶ。
【0024】
通常運転台数決定部23は、指令総発電出力と現行総発電出力とが異なる場合、出力指令に基づき、通常運転モードで運転すべき燃料電池10の台数を決定し、決定された台数を運転状態決定部24に入力する。通常運転台数決定部23は、指令総発電出力を通常発電出力で除算した結果に基づいて、通常運転モードで運転すべき燃料電池10の台数を決定する。例えば、指令総発電出力が200kWであり、通常発電出力が50kWである場合、指令総発電出力を通常発電出力で除算した結果は、200kW/50kW=4となる。したがって、通常運転台数決定部23は、通常運転モードで運転すべき燃料電池10の台数を、4台とする。なお、指令総発電出力が現行総発電出力に等しい場合、通常運転台数決定部23から運転状態決定部24への入力は行われない。以下では、通常運転台数決定部23で決定された通常運転モードで運転すべき燃料電池10の台数を、「指令通常モード台数」とも呼ぶ。
【0025】
運転状態決定部24は、通常運転台数決定部23で決定された指令通常モード台数に基づいて、各燃料電池10の運転状態を決定する。現行総発電出力よりも指令総発電出力が低い場合(したがって、通常モード燃料電池の台数よりも指令通常モード台数が少ない場合)、運転状態決定部24は、少なくとも1台の通常モード燃料電池10の運転モードを待機運転モードに変更する。また、現行総発電出力よりも指令総発電出力が高い場合(したがって、通常モード燃料電池の台数よりも指令通常モード台数が多い場合)、運転状態決定部24は、少なくとも1台の待機モード燃料電池10の運転モードを通常運転モードに変更し、或いは、少なくとも1台の停止燃料電池10の運転モードを通常運転モードに変更する。
【0026】
例えば、通常発電出力が50kWであり、通常モード燃料電池の台数が5台であり、現行総発電出力が250kWであるものとする。この状態で、指令総発電出力が200kWである出力指令が入力されると、通常運転台数決定部23は、指令通常モード台数を4台と決定する。この場合、運転状態決定部24は、5台の通常モード燃料電池10のうち1台の運転モードを待機運転モードに変更する。
【0027】
あるいは、例えば、通常発電出力が50kWであり、通常モード燃料電池の台数が3台であり、現行総発電出力が150kWであるものとする。この状態で、指令総発電出力が200kWである出力指令が入力されると、通常運転台数決定部23は、指令通常モード台数を4台と決定する。この場合、運転状態決定部24は、複数の燃料電池10のうち通常モード燃料電池10以外の燃料電池1台の運転モードを通常運転モードに変更する。
【0028】
運転状態決定部24は、通常モード燃料電池10の運転モードを待機運転モードに変更する際、通常モード燃料電池10が複数存在する場合には、以下のようにして、待機運転モードに変更される燃料電池10を選択する。すなわち、運転状態決定部24は、通常モード燃料電池10のうち情報取得部21で取得された起動回数が最も少ない燃料電池10を、その運転モードが待機運転モードに変更される燃料電池として選択する。
【0029】
また、運転状態決定部24は、停止燃料電池10を通常運転モードに変更する際、停止燃料電池10が複数存在する場合には、以下のようにして、通常運転モードに変更される燃料電池10を選択する。すなわち、運転状態決定部24は、停止燃料電池10のうち情報取得部21で取得された起動回数が最も少ない燃料電池10を、通常運転モードに変更される燃料電池として選択する。
【0030】
また、運転状態決定部24は、情報取得部21で取得された待機モード燃料電池10の台数が所定の台数Nよりも多い場合、待機モード燃料電池10のうち、情報取得部21で取得された起動回数が最も少ない燃料電池10を、運転が停止される燃料電池10として決定する。
【0031】
このように第1の実施形態の燃料電池システム1においては、通常モード燃料電池10の台数が指令総発電出力を出力するのに必要となる燃料電池10の台数よりも多い場合、過剰の通常モード燃料電池10の運転状態を直ちに運転停止状態にせず、待機運転モードに変更する。あるいは、第1の実施形態の燃料電池システム1においては、通常運転モード燃料電池10の台数が指令総発電出力を出力するのに必要となる燃料電池10の台数よりも少ない場合、通常運転モードで運転される燃料電池10の台数を増やすが、このとき、待機モード燃料電池10が存在する場合には、待機モード燃料電池10を停止燃料電池10よりも優先させて通常運転モードに変更する。このように複数の燃料電池10を制御することにより、燃料電池システム1の総発電出力を増大させる際に運転停止状態にある燃料電池10を起動させる機会が低減される。この結果、燃料電池システム1の発電出力の応答性を向上させることができる。
【0032】
また、第1の実施形態の燃料電池システム1においては、通常運転モードから待機運転モードに変更される燃料電池10として、通常モード燃料電池10のうち起動・停止回数が最も少ない燃料電池10を選択する。さらに、待機運転モードから運転停止状態に変更される燃料電池10として、待機モード燃料電池10のうち起動・停止回数が最も少ない燃料電池10を選択する。起動・停止回数が最も少ない燃料電池10を通常運転モードから待機運転モードに変更し、また、待機運転モードから運転停止状態に変更することにより、複数の燃料電池10の間で起動・停止回数の偏りが生じることを抑制することができる。言い換えると、複数の燃料電池10のうち一部の燃料電池10の起動・停止回数が他の燃料電池10の起動・停止回数よりも著しく増大する、ということを抑制することができる。これにより、複数の燃料電池10のうち一部の燃料電池10が他の燃料電池10よりも先に劣化することを抑制することができる。この結果、燃料電池システム1を信頼性高く稼働させることができる。
【0033】
また、第1の実施形態の燃料電池システム1においては、運転停止状態から待機運転モードに変更される燃料電池10として、停止燃料電池10のうち起動・停止回数が最も少ない燃料電池10を選択する。このことによっても、複数の燃料電池10の間で起動・停止回数の偏りが生じることを抑制することができ、複数の燃料電池10のうち一部の燃料電池10が他の燃料電池10よりも先に劣化することを抑制することができる。
【0034】
なお、上述したように、指令総発電出力が現行総発電出力に等しい場合、通常運転台数決定部23から運転状態決定部24への入力が行われない。したがって、この場合、運転状態決定部24は、各燃料電池10の運転状態を変更しない。言い換えると、この場合、通常モード燃料電池10の運転モードは通常運転モードに維持され、待機モード燃料電池10の運転モードは待機運転モードに維持され、停止燃料電池10は運転停止状態に維持される。
【0035】
次に、
図4及び
図5を参照して、燃料電池システム1の制御方法について説明する。ここでは、燃料電池システム1が含む複数の燃料電池10の台数を6台とし、複数の燃料電池10それぞれの最大発電出力を100kWとし、各燃料電池10の通常発電出力を50kWとして説明する。また、指令総発電出力は、0kW、50kW、100kW,150kW、200kW、250kW及び300kWのいずれかとする。
【0036】
図4に示すように、指令取得部22は、操作装置30から燃料電池システム1が発電すべき総発電出力(指令総発電出力)を示す出力指令を取得する(ステップS11)。
【0037】
次に、通常運転台数決定部23は、指令総発電出力が現行総発電出力に等しいか否かを判断する(ステップS12)。指令総発電出力が現行総発電出力に等しい場合(ステップS12のYES)、各燃料電池10の運転状態が維持される。
【0038】
一方、ステップS12で指令総発電出力が現行総発電出力と異なる場合(ステップS12のNO)、通常運転台数決定部23は、指令総発電出力が現行総発電出力よりも大きいか否かを判断する(ステップS13)。ステップS13において、通常運転台数決定部23は、指令総発電出力を通常発電出力で除算した値(指令通常モード台数)が、通常モード燃料電池10の台数よりも大きいか否かを判断してもよい。そして、指令総発電出力が現行総発電出力よりも大きい場合(或いは、指令通常モード台数が通常モード燃料電池10の台数よりも大きい場合)(ステップS13のYES)、通常運転台数決定部23は、指令通常モード台数を運転状態決定部24に渡す。そして、運転状態決定部24は、情報取得部21から待機モード燃料電池10の台数についての情報を取得し、待機モード燃料電池10の台数が1以上であるか否かを判断する(ステップS14)。待機モード燃料電池10の台数が1以上である場合には(ステップS14のYES)、運転状態決定部24は、1台の待機モード燃料電池10の運転モードを通常運転モードに変更する(ステップS15)。この結果、当該燃料電池10が、通常運転モードで運転される。その後、再び、ステップS12の判断を行う。また、ステップS15において、運転状態決定部24は、各燃料電池10の運転状態に関する情報を、情報取得部21に渡す。
【0039】
ステップS14において、待機モード燃料電池10が存在しない場合には(ステップS14のNO)、運転状態決定部24は、停止燃料電池10のうち起動・停止回数が最も少ない燃料電池1台を通常運転モードに変更する(ステップS16)。この結果、当該燃料電池10が起動されて、通常運転モードで運転される。その後、再び、ステップS12の判断を行う。
【0040】
次に、ステップS13において、指令総発電出力が現行総発電出力よりも小さい場合(或いは、指令通常モード台数が通常モード燃料電池10の台数よりも小さい場合)(ステップS13のNO)について説明する。この場合、通常運転台数決定部23は、指令通常モード台数を運転状態決定部24に渡す。そして、運転状態決定部24では、情報取得部21から各燃料電池10の起動・停止回数についての情報を取得し、通常モード燃料電池10のうち起動・停止回数が最も少ない燃料電池1台の運転モードを、待機運転モードに変更する(ステップS17)。この結果、当該燃料電池10が待機運転モードで運転される。その後、運転状態決定部24では、待機モード燃料電池10の台数が所定の台数Nよりも多いか否かを判断する(ステップS18)。ステップS18において、待機モード燃料電池10の台数が所定の台数Nよりも多いと判断された場合(ステップS18のYES)、運転状態決定部24は、待機モード燃料電池10のうち、起動・停止回数が最も少ない燃料電池10を運転停止状態にする(ステップS19)。このとき、運転停止状態に変更される燃料電池10の台数は、待機モード燃料電池10の台数から上記所定の台数Nを引いた値に等しい。この値は、待機モード燃料電池10の台数として過剰な台数を表している。ステップS19の結果、起動・停止回数が最も少ない待機モード燃料電池10が、上記過剰な台数だけ運転停止状態にされる。また、ステップS19において、運転状態決定部24は、各燃料電池10の運転状態に関する情報を、情報取得部21に渡す。その後、再び、ステップS12の判断を行う。
【0041】
一方、ステップS18において、待機モード燃料電池10の台数が所定の台数N以下であると判断された場合(ステップS18のNO)、運転状態決定部24は、待機モード燃料電池10の運転状態を変更しない。また、運転状態決定部24は、各燃料電池10の運転状態に関する情報を、情報取得部21に渡す。その後、再び、ステップS12の判断を行う。
【0042】
なお、上述してきた一実施形態では、ステップS14で待機モード燃料電池10が存在しない場合(ステップS14のNO)、停止燃料電池10を起動させたが、これに限られない。ステップS14のNOの場合、複数の燃料電池10の中に待機運転モード(又は通常運転モード)から運転停止状態へ移行中の燃料電池10が存在する場合は、運転状態決定部24は、運転停止状態へ移行中の燃料電池1台の運転状態を通常運転モードに変更してもよい。これにより、当該燃料電池の起動・停止回数の増大を抑制することができる。
【0043】
<第2の実施形態>
次に、
図6乃至
図8を参照して、第2の実施形態による燃料電池システム1について説明する。
図6に示す第2の実施形態の燃料電池システム1は、制御装置20が予測指令取得部25及び待機運転台数決定部26を含む点で、第1の実施形態の燃料電池システム1と異なっている。他の構成は、
図1乃至
図5に示す第1の実施形態による燃料電池システム1と略同一である。
図6乃至
図8に示す第2の実施形態において、
図1乃至
図5に示す第1の実施形態と同一の部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0044】
予測指令取得部25は、燃料電池システム1が将来発電すべき総発電出力を示す予測出力指令を取得する。図示された例では、予測指令取得部25は、予測出力指令を、操作装置30から取得する。操作装置30から予測指令取得部25へは、例えば、20分後から40分後までの間に燃料電池システム1が発電すべき総発電出力を示す予測出力指令が、20分毎に入力される。なお、以下では、予測出力指令が示す総発電出力を、「予測総発電出力」とも呼ぶ。
【0045】
待機運転台数決定部26は、予測出力指令の入力を受けて、予測総発電出力を出力するのに必要となる燃料電池10の台数を算出する。具体的には、予測総発電出力を通常発電出力で除算することにより、予測総発電出力を出力するのに必要となる燃料電池10の台数を算出する。そして、算出された台数と、現時点での(予測出力指令が入力された時点での)通常モード燃料電池10の台数及び待機モード燃料電池10の台数の和と、を比較する。算出された台数が上記和よりも多い場合には、待機運転台数決定部26は、算出された台数と上記和との差を運転停止状態から待機運転モードに変更すべき燃料電池10の台数として、運転状態決定部24に入力する。一方、算出された台数が上記和以下である場合には、待機運転台数決定部26から運転状態決定部24への入力は行われない。
【0046】
なお、以下では、予測総発電出力を出力するのに必要となる燃料電池10の台数を、「予測必要台数」とも呼ぶ。また、現時点での(予測出力指令が入力された時点での)通常モード燃料電池の台数及び待機モード燃料電池の台数の和を、「現行運転台数」とも呼ぶ。また、予測必要台数と現行運転台数との差を、「不足運転台数」とも呼ぶ。
【0047】
運転状態決定部24は、待機運転台数決定部26からの不足運転台数Mの入力を受けて、停止燃料電池10を待機運転モードに変更する。この場合、運転状態決定部24は、停止燃料電池10のうち起動・停止回数が最も少ない燃料電池10を、待機運転台数決定部26で算出された不足運転台数Mだけ、待機運転モードに変更する。この結果、当該燃料電池10が不足運転台数Mだけ起動されて、待機運転モードで運転される。これにより、予測総発電出力を出力するのに十分な台数の燃料電池10が、通常運転モード又は待機運転モードで運転される。
【0048】
また、運転状態決定部24は、通常運転台数決定部23から指令通常モード台数が入力されると、指令通常モード台数と通常モード燃料電池の台数との差を、指令総発電出力を出力するのに不足する通常運転モードで運転される燃料電池の台数として算出する。これは、待機運転モードから通常運転モードに変更すべき燃料電池10の台数でもある。そして、待機モード燃料電池10を、算出された台数だけ、通常運転モードに変更する。以下では、指令通常モード台数の入力を受けて待機運転モードから通常運転モードに変更すべき燃料電池10の台数を、「不足通常モード台数」とも呼ぶ。
【0049】
このように、第2の実施形態の燃料電池システム1においては、定期的に予測出力指令が入力される。そして、予測必要台数が現行運転台数よりも多い場合には、停止燃料電池を起動させて待機運転モードで運転させておく。これにより、指令総発電出力が増大して通常運転モードで運転すべき燃料電池10の台数が増大した場合、待機モード燃料電池10を通常運転モードに変更するだけでよく、停止燃料電池10を起動させる必要がない。この結果、燃料電池システム1の発電出力の応答性を向上させることができる。また、停止燃料電池10を待機運転モードに変更する際、停止燃料電池10のうち起動・停止回数が最も少ない燃料電池10を起動させることにより、複数の燃料電池10の間で起動・停止回数の偏りが生じることを抑制することができる。この結果、複数の燃料電池10のうち一部の燃料電池10が他の燃料電池10よりも先に劣化することを、抑制することができる。
【0050】
次に、
図7及び
図8を参照して、第2の実施形態の燃料電池システム1の制御方法について説明する。なお、
図7に示す処理は、
図8に示す処理とは独立して定期的に行われる。
【0051】
図7に示すように、操作装置30から予測指令取得部25へ、定期的に(例えば20分間隔で)予測出力指令の入力が行われる(ステップS21)。予測出力指令は、上述したように、将来(例えば20分後から40分後までの間に)燃料電池システム1が発電すべき予測総発電出力を示す。
【0052】
予測指令取得部25に予測出力指令が入力されると、待機運転台数決定部26は、予測総発電出力で出力するのに必要となる燃料電池の台数(予測必要台数)を算出する。そして、算出された予測必要台数と現行運転台数とを比較する(ステップS22)。ステップS22で、予測必要台数が現行運転台数よりも多い場合には(ステップS22のYES)、予測必要台数と現行運転台数とから不足運転台数Mを求める。そして、得られた不足運転台数Mを、運転状態決定部24に入力する。
【0053】
待機運転台数決定部26から不足運転台数Mが入力されると、運転状態決定部24は、停止燃料電池10のうち、起動・停止回数が最も少ない燃料電池を、不足運転台数Mだけ待機運転モードに変更する(ステップS23)。この結果、当該燃料電池10が起動されて、待機運転モードで運転される。また、ステップS23において、運転状態決定部24は、各燃料電池10の運転状態に関する情報を、情報取得部21に渡す。
【0054】
なお、ステップS22で、予測必要台数が現行運転台数以下であるには(ステップS22のNO)、待機運転台数決定部26から運転状態決定部24への入力は行われない。この結果、予測出力指令の入力に伴う停止燃料電池10の起動は行われない。
【0055】
図7に示す処理の後、
図8に示すように指令取得部22が操作装置30から出力指令を取得すると(ステップS11)、
図4に示す場合と同様に、通常運転台数決定部23は、ステップS12の判断を行う。そして、ステップS12でNOの場合には、通常運転台数決定部23は、ステップS13の判断を行う。ステップS13でYESの場合、指令総発電出力を出力するのに必要となる通常運転される燃料電池の台数(指令通常モード台数)を算出する。
【0056】
次に、通常運転台数決定部23は、指令総発電出力を出力するのに不足する通常運転される燃料電池の台数(不足通常モード台数)を算出して、算出した値を運転状態決定部24に入力する。次に、運転状態決定部24では、待機モード燃料電池10を、不足通常モード台数だけ通常運転モードに変更する(ステップS24)。この結果、燃料電池10が、不足通常モード台数だけ待機運転モードから通常運転モードに変更される。
【0057】
なお、上述した実施形態に対し、様々な変更を加えることが可能である。例えば、上述した実施形態では、指令総発電出力は、0kW、50kW、100kW,150kW、200kW、250kW及び300kWのいずれかであるが、これに限られない。指令総発電出力は、42kW、58kW、142kW等、任意の値であってよい。この場合、通常モード燃料電池10を、その最大発電出力の40~60%となる発電出力で運転させるのであれば、任意の発電出力で運転させてよい。例えば、各燃料電池10の最大発電出力が100kWであり且つ指令総発電出力が42kWである場合、1台の通常モード燃料電池10を、その最大発電出力の42%となる発電出力で運転させてもよい。また、各燃料電池10の最大発電出力が100kWであり且つ指令総発電出力が142kWである場合、2台の通常モード燃料電池10を、その最大発電出力の50%となる発電出力で運転させ、1台の通常モード燃料電池10を、その最大発電出力の42%となる発電出力で運転させてもよい。
【0058】
以上のように、第1及び第2の実施形態による燃料電池システム1は、複数の燃料電池10と、各燃料電池10の運転状態を制御する制御装置20と、を備える。各燃料電池10は、発電効率が第1の発電効率以上となる発電出力で運転される通常運転モードと、発電効率が第1の発電効率よりも低い第2の発電効率以下となる発電出力で運転される待機運転モードと、を含む複数の運転モードで運転可能である。制御装置20は、指令取得部22と通常運転台数決定部23と運転状態決定部24とを有する。指令取得部22は、燃料電池システム1が発電すべき総発電出力を示す出力指令を取得する。通常運転台数決定部23は、出力指令が示す総発電出力に基づき、通常運転モードで運転すべき燃料電池10の台数を決定する。運転状態決定部24は、通常運転台数決定部23で決定された台数に基づいて、各燃料電池10の運転状態を決定する。燃料電池システム1が発電している総発電出力よりも出力指令が示す総発電出力が低い場合、或いは、通常運転モードで運転されている燃料電池10の台数よりも通常運転台数決定部23で決定された台数が少ない場合、運転状態決定部24は、通常運転モードで運転されている燃料電池10の少なくとも1つの運転モードを待機運転モードに変更する。また、燃料電池システム1が発電している総発電出力よりも出力指令が示す総発電出力が高い場合、或いは、通常運転モードで運転されている燃料電池10の台数よりも通常運転台数決定部23で決定された台数が多い場合、運転状態決定部24は、待機運転モードで運転されている燃料電池10の少なくとも1つの運転モードを通常運転モードに変更する。
【0059】
このような燃料電池システム1によれば、燃料電池システム1全体の発電効率を所定の発電効率以上にすることができる。また、通常運転モードで運転されている燃料電池10の台数が、出力指令が示す総発電出力を出力するのに必要となる燃料電池10の台数よりも多い場合、過剰の通常モード燃料電池10を直ちに運転停止状態にせず、待機運転モードに変更する。あるいは、通常運転モードで運転されている燃料電池10の台数が、出力指令が示す総発電出力を出力するのに必要となる燃料電池10の台数よりも少ない場合、待機運転モードで運転されている燃料電池10を通常運転モードに変更する。このように複数の燃料電池10を制御することにより、燃料電池システム1の総発電出力を増大させる際に、運転停止状態にある燃料電池10を起動させる機会が低減される。この結果、燃料電池システム1の発電出力の応答性を向上させることができる。
【0060】
第1及び第2の実施形態による燃料電池システム1において、制御装置20は、各燃料電池10の起動回数を取得する情報取得部21を更に有している。運転状態決定部24は、通常運転モードで運転されている燃料電池10のうち情報取得部21で取得された起動回数が最も少ない燃料電池10の運転モードを待機運転モードに変更する。待機運転モードで運転される燃料電池10は、その後に運転停止状態にされる可能性が高い。したがって、起動回数が最も少ない燃料電池10の運転モードを待機運転モードに変更することにより、複数の燃料電池10の間で起動回数の偏りが生じることを抑制することができる。この結果、複数の燃料電池10のうち一部の燃料電池10が他の燃料電池10よりも先に劣化する、ということを抑制することができる。
【0061】
第1及び第2の実施形態による燃料電池システム1において、制御装置20は、待機運転モードで運転されている燃料電池10の台数及び各燃料電池10の起動回数を取得する情報取得部21を更に有している。情報取得部21で取得された待機運転モードで運転されている燃料電池10の台数が所定の台数Nよりも多い場合、運転状態決定部24は、待機運転モードで運転されている燃料電池10のうち、情報取得部21で取得された起動回数が最も少ない燃料電池10を、運転を停止させる燃料電池として決定する。これにより、複数の燃料電池10の間で起動回数の偏りが生じることを抑制することができる。この結果、複数の燃料電池10のうち一部の燃料電池10が他の燃料電池10よりも先に劣化する、ということを抑制することができる。
【0062】
第1及び第2の実施形態による燃料電池システム1において、制御装置20は、各燃料電池10の起動回数を取得する情報取得部21を更に有している。燃料電池システム1が発電している総発電出力よりも出力指令が示す総発電出力が高い場合、或いは、通常運転モードで運転されている燃料電池10の台数よりも通常運転台数決定部23で決定された台数が多い場合、運転状態決定部24は、運転が停止されている燃料電池10のうち、情報取得部21で取得された起動回数が最も少ない燃料電池10を通常運転モードで運転される燃料電池10として決定する。これにより、複数の燃料電池10の間で起動回数の偏りが生じることを抑制することができる。この結果、複数の燃料電池10のうち一部の燃料電池10が他の燃料電池10よりも先に劣化する、ということを抑制することができる。
【0063】
第2の実施形態による燃料電池システム1において、情報取得部21は、待機運転モードで運転されている燃料電池10の台数を取得する。情報取得部21で取得された台数が所定の台数(具体的には、予測必要台数と、予測出力指令が入力された時点での通常モード燃料電池の台数と、の差)よりも少ない場合、運転状態決定部24は、運転が停止されている燃料電池10のうち、情報取得部21で取得された起動回数が最も少ない燃料電池10を、待機運転モードで運転される燃料電池10として決定する。これにより、燃料電池システム1の総発電出力を増大させる際に運転停止状態にある燃料電池10を起動させる機会が、より効果的に低減される。この結果、燃料電池システム1の発電出力の応答性を、より効果的に向上させることができる。また、複数の燃料電池10の間で起動回数の偏りが生じることを抑制することができる。この結果、複数の燃料電池10のうち一部の燃料電池10が他の燃料電池10よりも先に劣化する、ということを抑制することができる。
【0064】
第1及び第2の実施形態による燃料電池システム1において、燃料電池10は、通常運転モードで運転されるとき、当該燃料電池10の最大発電出力の40~60%となる発電出力で運転される。これにより、燃料電池システム1全体の発電効率を効果的に向上させることができる。
【0065】
第1及び第2の実施形態による燃料電池システム1において、燃料電池10は、通常運転モードで運転されるとき、当該燃料電池10の発電効率が最大となる発電出力で運転される。これにより、燃料電池システム1全体の発電効率を、さらに効果的に向上させることができる。
【0066】
第1及び第2の実施形態による燃料電池システム1において、燃料電池10は、待機運転モードで運転されるとき、当該燃料電池10の最大発電出力の5~15%となる発電出力で運転される。
【0067】
第1及び第2の実施形態による制御方法は、各々が、発電効率が第1の発電効率以上となる高効率発電出力で運転される通常運転モードと、発電効率が第1の発電効率よりも低い第2の発電効率以下となる低効率発電出力で運転される待機運転モードと、を含む複数の運転モードで運転可能な、複数の燃料電池10を含む燃料電池システム1の制御方法である。この制御方法は、出力指令取得工程と通常運転台数決定工程と運転状態決定工程とを備えている。出力指令取得工程では、燃料電池システム1が発電すべき総発電出力を示す出力指令を取得する。通常運転台数決定工程では、出力指令が示す総発電出力に基づき、通常運転モードで運転すべき燃料電池10の台数を決定する。運転状態決定工程では、通常運転台数決定工程で決定された台数に基づいて、各燃料電池10の運転状態を決定する。具体的には、運転状態決定工程では、燃料電池システム1が発電している総発電出力よりも出力指令が示す総発電出力が低い場合、或いは通常運転モードで運転されている燃料電池10の台数よりも通常運転台数決定工程で決定された台数が少ない場合、通常運転モードで運転されている燃料電池10の少なくとも1つの運転モードを待機運転モードに変更する。また、運転状態決定工程では、燃料電池システム1が発電している総発電出力よりも出力指令が示す総発電出力が高い場合、或いは通常運転モードで運転されている燃料電池10の台数よりも通常運転台数決定工程で決定された台数が多い場合、待機運転モードで運転されている燃料電池10の少なくとも1つの運転モードを通常運転モードに変更する。
【0068】
このような燃料電池システム1の制御方法によれば、燃料電池システム1全体の発電効率を所定の発電効率以上にすることができる。また、通常運転モードで運転されている燃料電池10の台数が、出力指令が示す総発電出力を出力するのに必要となる燃料電池10の台数よりも多い場合、過剰の通常モード燃料電池10の運転を直ちに停止させず、待機運転モードに変更する。あるいは、通常運転モードで運転されている燃料電池10の台数が、出力指令が示す総発電出力を出力するのに必要となる燃料電池10の台数よりも少ない場合、待機運転モードで運転されている燃料電池10を通常運転モードに変更する。このように複数の燃料電池10を制御することにより、燃料電池システム1の総発電出力を増大させる際に運転停止状態にある燃料電池10を起動させる機会が低減される。この結果、燃料電池システム1の発電出力の応答性を向上させることができる。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態および変形例を説明したが、これらの実施形態および変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内でこれらの実施形態および変形例を、部分的に適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0070】
1:燃料電池システム、10:燃料電池、11:燃料電池スタック、12:アノード、13:カソード、20:制御装置、21:情報取得部、2:指令取得部、23:通常運転台数決定部、24:運転状態決定部、30:操作装置