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  • 特開-空調システム及び空調制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047502
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】空調システム及び空調制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20230330BHJP
   F28F 23/02 20060101ALI20230330BHJP
   F28D 20/02 20060101ALI20230330BHJP
   F25B 47/02 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
B60H1/22 651B
F28F23/02 B
F28D20/02 D
F25B47/02 520E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156449
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋臣
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA27
3L211CA18
3L211CA20
3L211DA35
3L211DA45
3L211EA43
3L211FA02
3L211FA38
3L211GA36
3L211GA37
(57)【要約】      (修正有)
【課題】除霜運転による暖房性能の低下を軽減させた空調システム及び空調制御装置を提供する。
【解決手段】空調システムは、暖房運転時に車室内に温風を供給する室内コンデンサ21と、冷房運転時に車室内に冷風を供給する室内エバポレータ23と、暖房運転時にはエバポレータとして機能して冷房運転時にコンデンサとして機能する室外熱交換器22と、コンプレッサ27と、室内エバポレータとコンプレッサとの間の第1の冷媒配管17,14に設置されて気液を分離して気相冷媒をコンプレッサに供給するアキュムレータ25と、冷房用絞り26を有して室外熱交換器と室内エバポレータとを接続する第2の冷媒配管12と、第2の冷媒配管から分岐してアキュムレータに接続される分岐配管13と、外部から供給される熱源で加熱されて蓄熱する蓄熱材が封入されて分岐配管を被覆する蓄熱装置30と、蓄熱装置を発核して蓄熱材を発熱させる発核装置33と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
暖房運転時に高温の冷媒を器内で凝縮させて車室内に温風を供給する室内コンデンサと、
冷房運転時に低温の前記冷媒を器内で気化させて前記車室内に冷風を供給する室内エバポレータと、
前記暖房運転時には膨張した前記冷媒を昇温させるエバポレータとして機能して前記冷房運転時には前記冷媒を放熱させるコンデンサとして機能する室外熱交換器と、
前記冷媒を圧縮するコンプレッサと、
前記室内エバポレータと前記コンプレッサとの間の第1の冷媒配管に設置されて気液を分離して気相冷媒を前記コンプレッサに供給するアキュムレータと、
冷房用絞りを有して前記室外熱交換器と前記室内エバポレータとを接続する第2の冷媒配管と、
前記第2の冷媒配管から分岐して前記アキュムレータに接続される分岐配管と、
外部から供給される熱源で加熱されて蓄熱する蓄熱材が封入されて前記分岐配管を被覆する蓄熱装置と、
前記蓄熱装置を発核して前記蓄熱材を発熱させる発核装置と、を備えることを特徴とする空調システム。
【請求項2】
除霜運転の開始時に前記発核装置を作動させる請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
車両の駐車と同時に除霜運転の開始する請求項1又は請求項2に記載の空調システム。
【請求項4】
ヒートポンプを含む車両用の空調システムを制御する空調制御装置において、
車室外に配置された熱交換器の着霜を検知する着霜検知部と、
前記着霜が検知された場合に前記車両が駐車された際に除霜運転に切り替える除霜運転切替部と、
前記除霜運転に切り替えられた際に前記空調システムの冷房運転では使用されない冷媒配管を加熱する加熱制御部と、を備えることを特徴とする空調制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、除霜運転モードを有する車両用の空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車では、高効率に暖房熱を創出できる暖房手段としてヒートポンプが採用され始めている。ヒートポンプは、投入エネルギー以上の暖房能力を発揮するため、エアコンの消費電力が航続距離に直接影響を及ぼす環境対応車にとって重要になる。
自動車用のエアコンに用いられるヒートポンプは、室外熱交換器に加えて、暖房用の室内コンデンサ及び冷房用の室内エバポレータの2種類の熱交換器を室内に有する。この室外熱交換器には、暖房運転時に、ヒートサイクルの過程で生成された低温の冷媒により空気中の水分が凝縮することで霜となって付着する。そこで、この霜を除去するため、除霜運転を行って暖房で使用する熱を室外熱交換器に送り込んでいた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-225477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術では、除霜運転中には、車室内の暖房性能が低下して温風が弱まるため車室内の快適性が損なわれるという課題があった。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、除霜運転による暖房性能の低下を軽減させた空調システム及び空調制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る空調システムは、暖房運転時に高温の冷媒を器内で凝縮させて車室内に温風を供給する室内コンデンサと、冷房運転時に低温の前記冷媒を器内で気化させて前記車室内に冷風を供給する室内エバポレータと、暖房運転時には膨張した前記冷媒を昇温させるエバポレータとして機能して冷房運転時には前記冷媒を放熱させるコンデンサとして機能する室外熱交換器と、前記冷媒を圧縮するコンプレッサと、前記室内エバポレータと前記コンプレッサとの間の第1の冷媒配管に設置されて気液を分離して気相冷媒を前記コンプレッサに供給するアキュムレータと、冷房用絞りを有して前記室外熱交換器と前記室内エバポレータとを接続する第2の冷媒配管と、前記第2の冷媒配管から分岐して前記アキュムレータに接続される分岐配管と、外部から供給される熱源で加熱されて蓄熱する蓄熱材が封入されて前記分岐配管を被覆する蓄熱装置と、前記蓄熱装置を発核して前記蓄熱材を発熱させる発核装置と、を備えるものである。
【0007】
本実施形態に係る空調制御装置は、ヒートポンプを含む車両用の空調システムを制御する空調制御装置において、車室外に配置された熱交換器の着霜を検知する着霜検知部と、前記着霜が検知された場合に前記車両が駐車された際に除霜運転に切り替える除霜運転切替部と、前記除霜運転に切り替えられた際に前記空調システムの冷房運転では使用されない冷媒配管を加熱する加熱制御部と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、除霜運転による暖房性能の低下を軽減させた空調システム及び空調制御装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(A)は暖房運転時及び除霜運転時の実施形態に係る空調システムの構成図、(B)は冷房運転時の実施形態に係る空調システムの構成図。
図2】暖房運転及び除霜運転における冷媒の通過箇所と温度変化との関係を示すグラフ。
図3】除霜運転を開始するタイミングと吹出し温との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
まず、図1(A),(B)を用いて、本発明の実施形態に係る空調システム10の構成について概説する。
図1(A)では暖房運転時及び除霜運転時に冷媒が流れる経路を太線で示し、冷媒が流れない経路を破線で示している。
図1(B)では冷房運転時に冷媒が流れる経路を太線で示し、冷媒が流れない経路を破線で示している。
空調システム10は、各種機器21~28が冷媒配管12~17で接続されて形成されたヒートポンプ式の回路を備える。空調システム10は、冷媒を気化及び凝縮を繰り返しながら回路内を循環させて車室内に温風又は冷風を送風する。
【0012】
空調システム10は、例えば電気自動車(EV)又はプラグインハイブリッド車(PHEV)などの外部電力を蓄電してこれを動力源にする車両に好適に適用される。
空調システム10は、フロントガラスの曇りの発生を防止するため、図1(A),(B)に示されるように、熱交換器が暖房用の室内コンデンサ21と冷房用の室内エバポレータ23とで別個に備える。つまり、空調システム10は、室外熱交換器22以外に、室内コンデンサ21及び室内エバポレータ23で合計3つの熱交換器を備える。室外熱交換器22は、車室外の例えばエンジンルームに設置される。また、室内コンデンサ21及び室内エバポレータ23は、車室内の例えばインストルメントパネル内に内蔵される。
【0013】
暖房運転時には、図1(A)に示されるように、室内コンデンサ21と室外熱交換器22とが環状に接続される。そして、室内コンデンサ21の器内には圧縮されて昇温した冷媒が流れ、不図示のブロワから室内コンデンサ21に送風された送風空気と熱交換をして送風空気を昇温する。昇温した送風空気は、温風となって空調口から車室内に送風される。このとき、室外熱交換器22は外気で冷媒を気化させるエバポレータとして機能する。
【0014】
冷房運転時には、図1(B)に示されるように、室内エバポレータ23と室外熱交換器22とが環状に接続される。そして、室内エバポレータ23の器内には膨張して降温した冷媒が流れ、ブロワから室内エバポレータ23に送風された送風空気と熱交換をして送風空気を冷却する。室内エバポレータ23で冷却された送風空気は、冷風となって空調口から車室内に送風される。ことのき、室外熱交換器22は外気で冷媒を放熱させるコンデンサとして機能する。
【0015】
次に、空調システム10のより詳細な構成を、引き続き図1(A),(B)を用いて説明する。なお、以下では、説明の便宜上、冷媒配管12~17を冷媒の流れの上流側の機器の名称を適宜冠して識別する。例えば、「室外熱交換器下配管」とは、室外熱交換器22の下流側に接続された冷媒配管12を示す。
【0016】
室外熱交換器配管(第2の冷媒配管)12は、本管12a(12)と冷房用分岐管12b(12)とが電磁弁である三方弁24で接続されて構成される。冷房用分岐管12bは、この冷房用分岐管12bを流れる冷媒を膨張させる冷房用絞り26を有している。また、冷房用分岐管12bは、室内エバポレータ23に接続される。また、三方弁24には、アキュムレータ25に接続された暖房用分岐管13が接続される。アキュムレータ25は、気液を分離して液相冷媒を器内に貯留して、気相冷媒のみを器外に送り出す装置である。
【0017】
また、アキュムレータ25に接続されるアキュムレータ下配管14にはコンプレッサ27が接続される。コンプレッサ27に接続されたコンプレッサ下配管15には室内コンデンサ21が接続される。また、室内コンデンサ21に接続された室内コンデンサ下配管16には室外熱交換器22が接続される。室内コンデンサ下配管16には電磁膨張弁である暖房用絞り28が設けられている。また、室内エバポレータ23は、室内エバポレータ下配管17によってアキュムレータ25に接続される。
【0018】
ただし、三方弁24は、暖房用分岐管13と冷房用分岐管12bとを切り替えることができれば、それぞれの分岐配管13,12bに設けられた別個の切換え弁で代替できる。
また、暖房用絞り28は、絞り開度を調節して絞りを全開にすると圧力損失のない冷媒通路になる。これと同様の機能は、絞り調節機能のない固定の絞りの流入口と流出口とを、電磁弁で開閉が制御されるバイパス通路を架橋することで実現してもよい。
【0019】
次に、暖房運転時及び除霜運転時の回路構成及び動作について、それぞれ説明する。
<暖房運転>
暖房運転時には、三方弁24は、冷房用分岐管12b側が閉止されて暖房用分岐管13側が開放される。このように三方弁24が切り替えられることで、図1(A)の太線で示される暖房回路が形成される。暖房回路には、アキュムレータ25、コンプレッサ27、室内コンデンサ21、暖房用絞り28、室外熱交換器22及び三方弁24がこの順で配置される。
【0020】
ここで、図2は、暖房運転及び除霜運転における冷媒の通過箇所と温度変化との関係を示すグラフである。なお、図2において、除霜運転の温度変化については、蓄熱装置30を設けた場合(実線)と設けなかった場合(破線)との2つのパターンを示している。また、暖房運転の温度変化は、一点破線で表されている。
暖房運転では、図1(A)及び図2に示されるように、アキュムレータ25で液相が除去されて気相になった冷媒は、下流側のコンプレッサ27に送られる。コンプレッサ27は、電動モータで冷媒を圧縮することで冷媒を大幅に昇温し、この冷媒をコンプレッサ下配管15に吐出して回路内を循環させる。
【0021】
圧縮されて高温になった冷媒は、前述のように、室内コンデンサ21でブロワから室内コンデンサ21に送風された送風空気と熱交換をして降温して凝縮する。一方、送風空気は、この熱交換で昇温して温風となって空調口から車室内に供給される。室内コンデンサ21で凝縮して気液混相になった冷媒は、暖房用絞り28の通過により膨張してさらに降温して液相になってエバポレータとして機能する室外熱交換器22に流入する。
暖房用絞り28で膨張して外気温よりも低温になった冷媒は、室外熱交換器22で外気から吸熱して、再度アキュムレータ25に流入して循環を繰り返す。
【0022】
なお、図2では、室内コンデンサ21、暖房用絞り28、室外熱交換器22及びコンプレッサ27以外の冷媒配管12a,13~16の区間においても、わずかにグラフが傾いている。この傾きは、冷媒配管12a,13~16を流動中も冷媒が僅かに外気と熱のやり取りをしていることを表している。外気よりも冷媒が低温の箇所では、冷媒が管内を流動中に外気から熱を受け取るため、図2中のグラフは僅かに正の傾きを有する。外気よりも冷媒が高温の箇所では、冷媒が管内を流動中に外気に熱を放出するため、図2中のグラフは僅かに負の傾きを有する。
【0023】
ところで、暖房運転を継続すると、室外熱交換器22は持続的に冷却されて氷点下の温度に到達して着霜することがある。室外熱交換器22が着霜すると、室外熱交換器22の熱伝導が阻害されて熱交換が十分になされなくなり、車室内の暖房の効きが低下する。また、室外熱交換器22で十分に熱交換されないと、冷媒が気化されずに液相のままアキュムレータ25で分離され、コンプレッサ27に流入する冷媒の密度が低くなる。よって、コンプレッサ27で十分に冷媒を圧縮することができず、昇温がさらに阻害される。そこで、空調システム10は、例えば暖房運転中に着霜を感知した場合に、暖房運転に一旦除霜運転を挿入する。
【0024】
<除霜運転>
除霜運転時の冷媒の循環回路は、暖房運転時の回路に類似する。ただし、室内コンデンサ21及び暖房用絞り28の絞りを開放して冷媒を膨張させずに弁内を通過させるため、図2に示されるように、暖房用絞り28による冷媒の温度降下は発生しない。なお、前述のように、同様の運用は暖房用絞り28に代えて固定の膨張弁をバイパス通路でバイパスさせても実現することができる。また、除霜運転では、エアミックスドア(図示せず)に遮られてブロワの風が室内コンデンサ21に流入しないため、室内コンデンサ21で熱交換が行われない。よって、冷媒は暖房熱を含んだまま室内コンデンサ21から流出する。なお、図示を省略するが、除霜運転時にも同様に、室内コンデンサ21の器内又は器外で迂回させてもよい。
【0025】
このように、除霜運転では、室内コンデンサ21及び暖房用絞り28で降温しなかった冷媒が高温のまま室外熱交換器22に流入して、室外熱交換器22の着霜を溶かす。

なお、暖房運転から除霜運転に切り替わると、室内コンデンサ21で熱交換がなされないため車室内の暖房の効きが低下する。
【0026】
ここで、図1(B)を用いて、冷房運転について簡単に説明する。
冷房運転では、図1(B)に示されるように、三方弁24は冷房用分岐管12bを開放して暖房用分岐管13を閉止する。三方弁24のこの切り替えにより、暖房運転時に回路から切り離されていた室内エバポレータ23が冷媒の循環回路内に含まれることになる。具体的には、冷房回路には、アキュムレータ25、コンプレッサ27、室内コンデンサ21、暖房用絞り28、室外熱交換器22、三方弁24、冷房用絞り26及び室内エバポレータ23がこの順で配置される。そして、冷房運転では、冷房用絞り26で膨張して降温した冷媒は、室内エバポレータ23に流入して上述のように空調口内部で冷気を発生させる。
【0027】
冷房運転では、暖房運転で使用される暖房用分岐管13の使用が停止され、室内エバポレータ下配管17及び冷房用分岐管12bが新たに使用される。つまり、暖房回路で使用される冷媒配管12a,13~16のうち、暖房用分岐管13のみが冷房回路に含まれないことになる。
そこで、実施形態に係る空調システム10では、この特徴に着目して、暖房用分岐管13に暖房用分岐管13を蓄熱装置30で被覆する。蓄熱装置30が配置された冷媒配管12~17は放熱性が低下するため、冷房回路及び暖房回路の共通路に蓄熱装置30を配置するのは好ましくないためである。
【0028】
例えば、フロントガラスが曇った場合、暖房運転中に一旦デフロスタ運転で車室内を冷却して除湿をする。このとき、冷房回路及び暖房回路の共通路に蓄熱装置30が設けられていると、デフロスタ運転への切り替え時に温度変化に追従できずに除湿効果が低下する。また、放熱性が低下すると、デフロスタ運転後の暖房運転でも暖房効果が低下する。よって、空調システム10の温度変化の応答性を維持するため、蓄熱装置30は暖房用分岐管13に設けられることが望ましい。
【0029】
このように、除霜運転時に蓄熱装置30で暖房用分岐管13を加熱することで、回路を循環する冷媒の温度を底上げして溶霜を助勢することができる。また、暖房用分岐管13を加熱されることで、コンプレッサ27に流入する冷媒の気化が促進されて、コンプレッサ27へ流入する冷媒の密度が高くなる。冷媒の密度が上がると、コンプレッサ27の圧縮効率が上がり、コンプレッサ27から吐出される冷媒の温度上昇が促進される。
【0030】
なお、暖房用分岐管13はアキュムレータ25の上流側に接続されるため、暖房用分岐管13を流れる冷媒は液相又は気液混合相にある。よって、気相と比較して熱伝導率も高いため、蓄熱装置30で暖房用分岐管13を加熱することは効率的である。また、熱を有効に活用という観点からも、冷媒温度が低く蓄熱材31との融点と温度差の大きい暖房用分岐管13は設置個所として好適である。
【0031】
蓄熱装置30の蓄熱容器32には、外部から供給される熱源で加熱されて蓄熱する蓄熱材31が封入されている。外部から供給される熱源は、例えば、車両の駆動用バッテリの充電のために接続する外部電源を利用した電気ヒータである。また、融点の低い蓄熱材31を使用する場合、駆動用バッテリの充電時に発生する廃熱を利用して蓄熱してもよい。
蓄熱材31は、融点以下でも結晶化することなく液相を維持する過冷却状態を維持して、加熱時の吸収熱を潜熱として内部に貯蔵する、いわゆる潜熱型の蓄熱材31である。また、蓄熱装置30には、発核装置33が接続される。
【0032】
発核装置33は、蓄熱材31を発核して過冷却状態を崩壊させて、蓄熱材31を瞬時に液相状態から固相状態に相転移させる。蓄熱装置30は、このとき蓄熱材31から放出される潜熱つまり凝固熱で暖房用分岐管13を加熱する。
発核方法には、例えば、種結晶として液相の蓄熱材31から隔離されて結晶状態で保持された蓄熱材31の一部を、液相の蓄熱材31に接触させて再結晶化させる方法がある。
このように、除霜運転時に蓄熱材31の放熱で冷媒の昇温を瞬時に助勢することで、室外熱交換器22に到達した冷媒で、より速やかに溶霜することができる。
【0033】
蓄熱材31には、例えば30~60℃程度の融点を有する、酢酸ナトリウム3水和物等の酢酸ソーダ、硫酸ナトリウム10水和物等の硫酸ソーダ、又は塩化カルシウム6水和物が好適に使用される。
なお、蓄熱材31は氷点下でも放熱するため、低温での除霜効果が高い。例えば、氷点下ではバッテリの性能が低下するため、電気ヒータでは十分な熱が得られない。また、バッテリは高価で重いため、除霜のために容量を増やすことは好ましくない。
なお、蓄熱容器32を複数に分割して、一度に発核させずに何度か分けて発核させてもよい。
【0034】
<制御装置40>
また、空調システム10は、この空調システム10を制御する空調制御装置(以下、単に「制御装置」という)40を備える。
制御装置40は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備えたマイクロコンピュータとして構成される。CPUは、制御プログラムに従って所望の演算を実行して、種々の処理や制御を行う。ROMは、CPUで処理する制御プログラムや制御データを記憶し、RAMは、主として制御処理のための各種作業領域として使用される。
このように構成で実現される制御装置40は、着霜検知部41と、除霜運転切替部42と、加熱制御部43と、を備える。
【0035】
着霜検知部41は、室外熱交換器22の着霜を検知する。着霜は、例えば暖房の設定温度と実際に空調口から送風される温風の温度との差で検知することができる。また、室外熱交換器22に温度計を設置してゼロ度を下回った場合に着霜と推定してもよい。また、室外熱交換器22の通過の前後の冷媒の温度差又は圧力差から着霜を推定してもよい。さらに、室外熱交換器22をカメラで撮影して着霜を検知してもよい。なお、着霜検知部41には、温度計やカメラ、湿度計又は圧力計などのセンサに加えて、これらのセンサから送られてくるデータが閾値を超えた場合に着霜と判定する判定部も含まれる。
【0036】
除霜運転切替部42は、着霜検知部41で着霜と判定された場合に除霜運転に切り替える。除霜運転切替部42は、暖房用絞り28の絞りを全開にし、エアミックスドアの方向を変更して室内コンデンサ21への送風を防止する。なお、エアミックスドアの方向の変更に代えて適宜室内コンデンサ21内のバイパス通路を開放してもよい。
加熱制御部43は、除霜運転に切り替えられた際に発核装置33を作動させて蓄熱装置30を発核させる。
【0037】
ここで、図3は、除霜運転を開始するタイミングと吹出し温との関係を示すグラフである。
除霜運転切替部42は、着霜が検知された場合に、さらに車両の駐車を検知して除霜運転に切り替えることが望ましい。除霜運転切替部42は、例えばイグニッションスイッチが切られたことを閾値にして空調システム10の除霜運転を開始する。なお、コンプレッサ27に電動コンプレッサを用いることで、イグニッションスイッチが切られた後もコンプレッサ27の作動を継続させることができる。
【0038】
暖房運転での走行中に、コンビニエンスストアなどの充電できない駐車場に駐車する場合がある。この時、空調システム10の電源を切って放置すると室外熱交換器22が冷えたままのため着霜が進行する。着霜が進行すると、再度走行するときに暖房が利かず、除霜運転から始めなくてはならないため、暖房が効かず、車室内の快適性が著しく低下する。また、車両の駐車後には乗車者は車両から離れることが多く、車室内の快適性が求められることが少なくなる。そこで、着霜検知部41が着霜を検知した場合に、車両の駐車時に除霜運転を開始し、さらに加熱装置30を作動させる。
駐車時に除霜運転をすることで、図3に示されるように、再度運転するときは、除霜されているため、即時に暖房運転をすることができる。よって、運転の再開時に車室内を最適温度する調整して走行することができる。
【0039】
以上のように、実施形態に係る空調システム10によれば、短時間で溶霜するため、除霜運転による暖房性能の低下を軽減させることができる。
また、除霜運転のための電力の使用が最小限であるため、車両の航続距離を延ばすことができる。
【0040】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0041】
例えば、実施形態では熱交換器が3つの例で説明したが、熱交換器は4つ以上であってもよい。
【符号の説明】
【0042】
10…空調システム、12~17…冷媒配管、12(12a,12b)…室外熱交換器下配管(本管,冷房用分岐管)、13…暖房用分岐管(分岐配管)、14…アキュムレータ下配管、15…コンプレッサ下配管、16…室内コンデンサ下配管、17…室内エバポレータ下配管、21…室内コンデンサ、22…室外熱交換器、23…室内エバポレータ、24…三方弁、25…アキュムレータ、26…冷房用絞り、27…コンプレッサ、28…暖房用絞り、29…蓄熱装置、31…蓄熱材、32…蓄熱容器、33…発核装置、40…制御装置、41…着霜検知部、42…除霜運転切替部、43…加熱制御部。
図1
図2
図3