(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047542
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】波形被覆管及び複合管
(51)【国際特許分類】
F16L 11/11 20060101AFI20230330BHJP
【FI】
F16L11/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156510
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】金平 豊
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 孝輔
(72)【発明者】
【氏名】中村 晶
(72)【発明者】
【氏名】湯川 雅己
(72)【発明者】
【氏名】宮本 翔太
【テーマコード(参考)】
3H111
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA15
3H111CA14
3H111CA15
3H111CA16
3H111CA43
3H111CB03
3H111CB14
3H111CB23
3H111CB29
3H111DA13
3H111DA15
3H111DB03
(57)【要約】
【課題】波形被覆管の径方向圧縮荷重に対する強度を高めて、複合管の積載荷重を増大させる。
【解決手段】
可撓性の内管10を被覆する波形被覆管20は、管軸方向に交互に配置された環状の山部21および環状の谷部22と、管軸方向、周方向に分散し互いに独立して配置された保持突起23を備えている。保持突起23は、谷部22よりも径方向内方向に突出し、その先端230により前記内管を管軸と実質的に同心に保持する。保持突起23は、山部21および谷部22管軸方向に横切るようにして形成されており、保持突起23の管軸方向の寸法Lは、山部21および谷部22を含む1ピッチPより長い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性の内管を被覆する波形被覆管であって、
管軸方向に交互に配置された環状の山部および環状の谷部と、
管軸方向、周方向に分散し互いに独立して配置されるとともに前記谷部よりも径方向内方向に突出し、その先端により前記内管を管軸と実質的に同心に保持する保持突起と、
を備え、
前記保持突起の管軸方向の寸法が、前記山部および谷部を1つずつ含む1ピッチより長いことを特徴とする波形被覆管。
【請求項2】
前記保持突起が、少なくとも1つの谷部または少なくとも1つの山部を、管軸方向に横切るようにして形成されていることを特徴とする請求項1に記載の波形被覆管。
【請求項3】
前記保持突起が、1つの山部と2つの谷部を、管軸方向に横切るようにして形成されていることを特徴とする請求項2に記載の波形被覆管。
【請求項4】
前記保持突起が、2つの山部と3つの谷部を、管軸方向に横切るようにして形成されていることを特徴とする請求項2に記載の波形被覆管。
【請求項5】
前記保持突起の管軸方向に対峙する一対の第1側壁と、周方向に対峙する一対の第2側壁を有しており、
前記一対の第1側壁の根元は山部に連接され、前記一対の第2側壁は、前記保持突起が横切る谷部と山部に連接されていることを特徴とする請求項2~4の何れかに記載の波形被覆管。
【請求項6】
前記一対の第1側壁が径方向内方向に向かって互いに近づくようにして傾斜し、前記第1側壁の各々は、管軸と直交する平面に対して20°を超える傾斜角度を有していることを特徴とする請求項5に記載の波形被覆管。
【請求項7】
前記保持突起の管軸方向に沿う断面が、前記一対の第1側壁によりV字形をなすことを特徴とする請求項5または6に記載の波形被覆管。
【請求項8】
前記一対の第2側壁が径方向内方向に向かって互いに近づくようにして傾斜し、前記第2側壁の各々は、管軸を通る平面に対して20°を超える傾斜角度を有していることを特徴とする請求項5~7のいずれかに記載の波形被覆管。
【請求項9】
前記保持突起の先端は、管軸方向から見て凹曲線をなすことを特徴とする請求項8に記載の波形被覆管。
【請求項10】
前記山部は短円筒形状をなし、前記谷部の溝幅は前記1ピッチの25%以上で、前記保持突起の凹部深さが前記谷部の溝幅より大であることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の波形被覆管。
【請求項11】
可撓性を有する内管と、前記内管を被覆する請求項1~10のいずれかに記載の波形被覆管を含む複合管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体輸送に好適な可撓性の内管に被せる波形被覆管及び内管および波形被覆管を備えた複合管に関する。
【0002】
給水給湯用の可撓管(内管)を保護する可撓性の被覆管として、山部と谷部が交互に配置された波形被覆管は公知である。この波形被覆管は、内管を継手に接続する際に内管を露出させる必要があるため、管軸方向に伸縮し易くなっている。
【0003】
特許文献1~3の波形被覆管では、谷部からさらに径方向内方向へ突出する保持突起を分散配置し、これら保持突起の先端で内管の横移動を規制し、内管を波形被覆管の管軸と同心に保持している。これにより、水栓の急閉等による水撃のバタつき音を抑制するとともに、保温性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-41539号公報
【特許文献2】特開2021-138140号公報
【特許文献3】特開2021―139500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~3の被覆管では、保持突起は、谷部からさらに径方向、内方向に突出するようにして形成されており、その管軸方向の寸法がほぼ谷部の幅に制限されている。そのため、保持突起の径方向の圧縮荷重に対する強度が不足しており、例えば内管に被覆管を被せた複合管を積載すると、被覆管が潰れることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、可撓性の内管を被覆する波形被覆管であって、管軸方向に交互に配置された環状の山部および環状の谷部と、管軸方向、周方向に分散し互いに独立して配置されるとともに前記谷部よりも径方向内方向に突出し、その先端により前記内管を管軸と実質的に同心に保持する保持突起と、を備え、前記保持突起の管軸方向の寸法が、前記山部および谷部を1つずつ含む1ピッチより長いことを特徴とする。
この構成によれば、保持突起が山部と谷部の1ピッチより長い管軸方向寸法を有しているので、保持突起の径方向圧縮荷重に対する強度を高めることができ、波形被覆管に径方向外側から圧縮荷重をかけても潰れにくくなる。そのため、内管に被覆管を被せた複合管の積載荷重を増大させることができる。
【0007】
具体的には、前記保持突起が、少なくとも1つの谷部または少なくとも1つの山部を、管軸方向に横切るようにして形成されている。
【0008】
好ましくは、前記保持突起が、1つの山部と2つの谷部を、管軸方向に横切るようにして形成されている。この構成によれば、保持突起の管軸方向の寸法を十分長くすることができ、保持突起の強度を確実に高めることができる。
【0009】
さらに好ましくは、前記保持突起が、2つの山部と3つの谷部を、管軸方向に横切るようにして形成されている。この構成によれば、保持突起の管軸方向の寸法をさらに長くすることができ、保持突起の強度をより一層高めることができる。
【0010】
好ましくは、前記保持突起の管軸方向に対峙する一対の第1側壁と、周方向に対峙する一対の第2側壁を有しており、前記一対の第1側壁の根元は山部に連接され、前記一対の第2側壁は、前記保持突起が横切る谷部と山部に連接されている。
この構成によれば、前記一対の第1側壁の根元が山部に連接されるとともに、前記一対の第2側壁の根元が、前記保持突起が横切る谷部と山部に連接されているので、径方向圧縮荷重に対する強度をより一層高めることができる。
【0011】
好ましくは、前記一対の第1側壁が径方向内方向に向かって互いに近づくようにして傾斜し、前記第1側壁の各々は、管軸と直交する平面に対して20°を超える傾斜角度を有している。
【0012】
好ましくは、前記保持突起の管軸方向に沿う断面が、前記一対の第1側壁によりV字形をなす。
【0013】
前記一対の第2側壁が径方向内方向に向かって互いに近づくようにして傾斜し、前記第2側壁の各々は、管軸を通る平面に対して20°を超える傾斜角度を有している。
【0014】
好ましくは、前記保持突起の先端は、管軸方向から見て凹曲線をなす。これによれば、径方向の圧縮荷重を受けた時に保持突起の先端が内管の外周に滑らずに当たるため、圧縮荷重に対する強度を高めることができる。
【0015】
好ましくは、前記山部は短円筒形状をなし、前記谷部の溝幅は前記1ピッチの25%以上で、前記保持突起の凹部深さが前記谷部の溝幅より大である。
【0016】
本発明の他の態様は、可撓性を有する内管と、前記内管を被覆する前記波形被覆管を含む複合管である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、波形被覆管の径方向圧縮荷重に対する強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る波形被覆管を含む複合管を、上半部のみ断面にして示す側面図である。
【
図2】
図1の要部を拡大して示す、上半部のみ断面にした側面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る波形被覆管を含む複合管の
図2相当図である。
【
図5】本発明の第3実施形態に係る波形被覆管を含む複合管の
図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
以下、本発明の実施形態を
図1~
図3を参照しながら説明する。
図1に示すように、複合管1は、可撓性の内管10と、この内管10を覆う可撓性の波形被覆管20(コルゲート管)を備えている。複合管1は、例えば給水・給湯用の配管として利用される。内管10の内部が、水、湯などの流体が通る流体通路となる。
【0020】
内管10は、全長にわたって一定の円形断面に形成され、かつ可撓性を有している。内管10としては、架橋ポリエチレン(PE-X)管、ポリブテン(PB)管、ポリエチレン(PE)管、耐熱性ポリエチレン(PE-RT)管、又はこれら樹脂のうち2以上の樹脂を含む樹脂管を用いることができる。また、上記樹脂のうちの少なくとも1つと金属を含む金属強化樹脂管を用いることもできる。上記は例示であり、可撓性、流体流通性などの所要の性能を確保し得るものであれば、内管10の材質に特に制限はない。
【0021】
波形被覆管20は、単層の樹脂管からなり、ポリエチレン(PE)管、架橋ポリエチレン(PE-X)管、ポリブテン(PB)管、耐熱性ポリエチレン(PE-RT)管、又はこれら樹脂のうち2以上の樹脂を含む樹脂管を用いることができる。また、発泡化により被覆管20の可撓性を向上させてもよい。この場合、ポリエチレン(PE)を主成分とし、発泡倍率を1.05倍から4倍の低発泡とするのが好ましい。上記は例示であり、可撓性、内管10に対する保護性などの所要の性能を確保し得るものであれば、波形被覆管20の材質として特に制限はない。
【0022】
図1、
図2に示すように、波形被覆管20は、環状の山部21と環状の谷部22を管軸方向に同一ピッチで交互に配することにより、波形断面になっている。
図2に示すように、山部21は径が一定の短円筒形状をなしており、谷部22の断面形状はU字形ないしはV字形をなしている。1ピッチPは、1つの山部21と1つの谷部22を含む管軸方向寸法として定義される。
【0023】
波形被覆管20はさらに、管軸方向、周方向に分散配置され互いに独立した保持突起23を有している。本実施形態では、保持突起23は、管軸方向に等間隔おきの形成箇所において、4つの保持突起23が周方向に等間隔をなして形成されている。保持突起23は谷部22よりも径方向内方向に突出しており、その先端部230は、内管10の外周に接触ないしは接近しており、これにより内管10を波形被覆管20の管軸と実質的に同心に保持している。
【0024】
保持突起23は、
図2に示すように管軸方向に対峙する一対の第1側壁231、231を有するとともに、
図3に示すように周方向に対峙する一対の第2側壁232,232を有している。一対の第1側壁231、231は径方向内方向に向かって互いに近づくように傾斜しており、これにより保持突起23の管軸方向に沿う断面はV字形をなしている。同様に第2側壁232,232は径方向内方向に向かって互いに近づくように傾斜しており、これにより保持突起23は管軸と直交する断面がほぼV字形をなしている。本実施形態では管軸方向から見た先端230の形状は凸曲線をなしている。
【0025】
図2に示すように、保持突起23の管軸方向寸法Lは、1ピッチPより長く、本実施形態では約1.5Pである。保持突起23は1つの山部21と2つの谷部22を管軸方向に横切るようにして形成されている。保持突起23の管軸方向の中心は、上記1つの山部21の管軸方向位置と一致している。一対の第1側壁231は、保持突起23の管軸方向中心に対して対称をなし、同一角度で傾斜している。管軸と直交する平面に対する第1側壁23aの傾斜角度Θ1は20°以上であり、本実施形態では約30°である。保持突起23の一対の第1側壁231の根元231aは、上記の横切った2つの谷部22に隣接する2つの山部21にそれぞれ連なっている。
【0026】
図3に示すように、保持突起23の一対の第2側壁232は、保持突起23の周方向中心に対して対称をなし、同一角度で傾斜している。管軸を含む平面に対する第2側壁232の傾斜角度Θ2は20°以上であり、本実施形態では約45である。第2側壁232の根元232aは、保持突起23が横切った1つの山部21と2つの谷部22に連なり、波形を描いている。
【0027】
波形被覆管20は、保持突起23が内管10を同心に保持することによって、内管10のバタツキを抑えて音鳴りを抑制できるとともに保温性を向上させることができる。保持突起23は管軸方向に分散されているから管軸方向の伸縮性に影響を与えない。保持突起23は周方向に分散されているから、構造物が引っ掛かるリスクを抑制できる。
【0028】
保持突起23は、山部21と谷部22の1ピッチPより長い管軸方向寸法を有し、本実施形態では約1.5Pの寸法を有しているので、径方向の圧縮強度を高めることができ、ひいては波形被覆管20の径方向の圧縮荷重に対する強度を高めることができる。その結果、内管10に波形被覆管20を被せた複合管1を積載する場合に、波形被覆管20がつぶれずに積載可能な荷重を増大させることができる。
【0029】
しかも、一対の第1側壁231が20°より大きな傾斜角度Θ1(本実施形態では約30°)を有してV字形の断面をなし、その根元231aが山部21に連接していること、一対の第2壁部232が20°より大きな傾斜角度Θ2(本実施形態では約45°)を有してV字形の断面をなし、その根元232aが1つの山部21と2つの谷部22に連接していることによって、より一層径方向の圧縮強度を高めることができる。
【0030】
上述したように、保持突起23は谷部22の溝幅とは無関係に設定される。換言すれば、保持突起23の管軸方向の寸法を広げるために谷部22の溝幅を無理に広げずに済む。そのため、谷部22の溝幅を構造物の角が入り込んで引っ掛かるのを抑制できる幅に制限することができ、例えば谷部22の溝幅を1ピッチPの35%以下とする。ただし、谷部22は管軸方向の伸縮性を確保するため(圧縮代を確保するため)に、谷部22の溝幅は1ピッチPの25%以上とする。本実施形態では谷部22の溝幅は1ピッチPの約30%である。これにより、200mmの波形被覆管20を容易に50mm以上縮めることができる。
【0031】
構造物の角が谷部22の奥まで入らないようにするため、谷部22の溝深さは溝幅より大とする。また、ほぼ四角錐をなす保持突起23の凹部の深さは、谷部22の溝幅より大とする。
【0032】
ここで、参考のために上述した第1実施形態の複合管1の具体的寸法を例示する。
山部21の外径30.5mm
谷部22の内径25.5mm
同谷部22の底部(最小径部)の外径26.5mm
保持突起23の内接円の径17.8mm
架橋ポリエチレン管からなる内管10の外径17mm
内管10の内径(呼び径)13mm
山部21と谷部22のピッチP 4.3mm
山部21の幅 3.0mm
谷部22の幅 1.3mm
谷部22の溝先端および保持突起23の先端の凹部のR 0.5mm
【0033】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。これら実施形態において、第1実施形態に対応する構成部には同番号を付してその詳細な説明を省略する。
<第2実施形態>
図4に示す第2実施形態の保持突起23の管軸寸法は、第1実施形態より長く、保持突起23は、2つの山部21と3つの谷部22を管軸方向に横切るように形成されている。すなわち一対の第2側壁232の根元232aは、2つの山部21と3つの谷部22にそれぞれ連なっている。一対の第1壁部231の根元231aは、上記2つの山部21と3つの谷部22の管軸方向両側に位置する2つの山部21にそれぞれ連なっている。本実施形態の第1側壁231の傾斜角度Θ1は約45°である。
【0034】
第2実施形態では保持突起23の管軸寸法を第1実施形態よりさらに長くし、第1側壁231の傾斜角度Θ1を大きくすることにより、波形被覆管20の径方向圧縮荷重に対する強度をさらに高めることができる。
【0035】
<第3実施形態>
図5に示す第3実施形態では、管軸方向から見た保持突起23の先端230の形状が内管10に対応した円弧(凹曲線)を描いており、内管10の保持をより安定して行えるようになっている。また、径方向外側から圧縮荷重を受けた時に、保持突起23の先端230が滑らずに内管10の外周に当たるので、圧縮荷重に対する強度を高めることができる。
【0036】
本発明は、前記実施形態に限らず、その趣旨を逸脱しない範囲内において種々の形態を採用できる。例えば、上述した実施形態における周方向に離れた4つの保持突起を管軸方向にずらしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、例えば給水給湯管に適用できる。
【符号の説明】
【0038】
1 複合管
10 内管
20 被覆管
21 山部
22 谷部
23 保持突起
231 第1側壁
231a 第1側壁の根元
232 第2側壁
232a 第2側壁の根元
P ピッチ
L 保持突起の管軸方向の寸法
Θ1 第1側壁の傾斜角度
Θ2 第2側壁の傾斜角度