(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047544
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】更生管の帯状部材継ぎ足し方法および継ぎ足し構造
(51)【国際特許分類】
B29C 63/32 20060101AFI20230330BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
B29C63/32
F16L1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156512
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】乙川 貴史
(72)【発明者】
【氏名】阿部 竜幸
(72)【発明者】
【氏名】木原 彬
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AG08
4F211AH43
4F211SA05
4F211SC03
4F211SD06
4F211SD19
4F211SD23
4F211SJ01
4F211SJ21
4F211SP04
4F211SW40
(57)【要約】
【課題】 更生管の帯状部材継ぎ足し部における補強部材の防錆・防食性を確保する。
【解決手段】
自走式製管機50により既設管1の内周に更生管2を製管する途中で、帯状部材3を継ぎ足す方法は、先行の帯状部材3Fの終端3Feと後続の帯状部材3Rの始端3Rsとの間にスペーサ60を設置する設置工程と、先行の帯状部材3Fの終端3Feと後続の帯状部材3Rの始端3Rsとの間にスペーサ60を介在させた状態で、後続の帯状部材3Rを用いて更生管2の製管を開始する製管工程と、スペーサ60を先行の帯状部材3Fの終端3Feと後続の帯状部材3Rの始端3Rsとの間の隙間Sから除去するスペーサ除去工程と、隙間Sに充填材料70を充填し、この充填材料70により、先行の帯状部材3Fの終端3Feと後続の帯状部材3Rの始端3Rsにおいて金属面が露出した補強部材20の端面を覆う充填工程と、を備えている。
【選択図】
図3D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製管機を用いて帯状部材を螺旋状に巻き、隣接する巻部分の側縁同士を嵌合することにより、既設管の内周に更生管を製管し、この製管の途中で、前記更生管の製管に供されていた先行の帯状部材の終端に後続の帯状部材を継ぎ足す方法において、
前記帯状部材は、樹脂製の主帯材と、前記主帯材の帯長方向に延びて前記主帯材の外周に装着された金属製の補強部材とを備え、前記補強部材が前記主帯材の樹脂に包まれているか又はその表面が防錆・防食層に覆われており、
前記先行の帯状部材の製管が終了した後、前記先行の帯状部材の終端と前記後続の帯状部材の始端とを離間させた状態で前記後続の帯状部材の製管を続行し、
前記製管の途中または製管が終了した後に、前記先行の帯状部材の終端と前記後続の帯状部材の始端との間の隙間に充填材料を充填し、この充填材料により、前記先行の帯状部材の終端と前記後続の帯状部材の始端において金属面が露出した前記補強部材の端面を覆う充填工程を実行することを特徴とする更生管の帯状部材継ぎ足し方法。
【請求項2】
前記充填工程において、前記充填材料を、前記隙間のみならず、前記先行の帯状部材の終端の近傍部および前記後続の帯状部材の始端の近傍部にも充填することを特徴とする請求項1に記載の更生管の帯状部材継ぎ足し方法。
【請求項3】
前記充填工程において、前記充填材料を、前記既設管の内周に至るまで充填することを特徴とする請求項2に記載の更生管の帯状部材継ぎ足し方法。
【請求項4】
前記製管機は走行手段を有する自走式製管機であり、
前記先行の帯状部材の終端と前記後続の帯状部材の始端との間にスペーサを設置する設置工程と、
前記製管機により、前記先行の帯状部材の終端と前記後続の帯状部材の始端との間に前記スペーサを介在させた状態で、前記後続の帯状部材を用いて前記更生管の製管を開始する製管工程と、
前記スペーサを前記先行の帯状部材の終端と前記後続の帯状部材の始端との間の隙間から除去するスペーサ除去工程と、
前記充填工程と、
を備えたことを特徴とする請求項1~3に記載の更生管の帯状部材継ぎ足し方法。
【請求項5】
前記スペーサ除去工程は、前記製管機が前記後続の帯状部材を用いた製管を開始してから再び前記先行の帯状部材の終端に達する前に、前記製管機を一旦停止させた状態で実行されることを特徴とする請求項4に記載の更生管の帯状部材継ぎ足し方法。
【請求項6】
前記充填工程は、前記後続の帯状部材の前記始端から少なくとも一周分製管された後に、実行されることを特徴とする請求項4または5に記載の更生管の帯状部材継ぎ足し方法。
【請求項7】
前記充填工程の後に、前記更生管の内面に前記充填材料を覆う樹脂製カバーを取り付けることを特徴とする請求項4~6のいずれかに記載の更生管の帯状部材継ぎ足し方法。
【請求項8】
前記スペーサの設置工程は、
a.前記製管機の前記走行手段の正転により、前記後続の帯状部材を先行の帯状部材に向けて送り込み、前記後続の帯状部材の始端を前記先行の帯状部材の終端に突き当てるステップと、
b.前記走行手段の正転により、前記製管機を前記先行の帯状部材から前記後続の帯状部材に移す工程と、
c.前記走行手段の逆転により、前記後続の帯状部材を先行の帯状部材から離すように移動させ、前記後続の帯状部材の始端と前記先行の帯状部材の終端に前記スペーサの幅より広い初期隙間を形成するステップと、
d.前記初期隙間に前記スペーサを挿入するステップと、
e.再び走行手段の正転により、前記後続の帯状部材を前記先行の帯状部材に向けて送り、前記後続の帯状部材の始端を前記スペーサに突き当てることにより、前記後続の帯状部材の始端と前記先行の帯状部材の終端とで前記スペーサを挟むステップと、
を含むことを特徴とする請求項4~7の何れかに記載の更生管の帯状部材継ぎ足し方法。
【請求項9】
帯状部材を螺旋状に巻き、隣接する巻部分の側縁同士を嵌合することにより、既設管の内周に製管される更生管において、先行の帯状部材の終端に後続の帯状部材を継ぎ足す構造であって、
前記帯状部材は、樹脂製の主帯材と、前記主帯材の帯長方向に延びて前記主帯材の外周に装着された金属製の補強部材とを備え、前記補強部材が前記主帯材の樹脂に包まれているか又はその表面が防錆・防食層に覆われており、
前記先行の帯状部材の終端と前記後続の帯状部材の始端との間に隙間が形成されており、この隙間に充填材料が充填され、この充填材料により、前記先行の帯状部材の終端と前記後続の帯状部材の始端において金属面が露出した前記補強部材の端面が覆われていることを特徴とする更生管の帯状部材継ぎ足し構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状部材を用いて更生管を製管する際に帯状部材を継ぎ足す方法および継ぎ足し構造に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化した下水道管等の既設管の内周面に沿って帯状部材(プロファイル)を螺旋状に巻回して螺旋管からなる更生管を製管し、これによって、既設管を更生する方法は公知である。
【0003】
帯状部材には、塩化ビニル樹脂等からなる主帯材の外周に帯長方向に延びる鋼製の補強部材を装着したものがあるが、その場合、補強部材の防錆・防食に配慮する必要がある。一般的には、既設管と製管された更生管との隙間に裏打ち材が充填されており、補強部材はこの裏打ち材に埋め込まれるため、防錆・防食されている。
特許文献1に開示されている帯状部材では、補強部材の防錆・防食性を高めるために、その表面に防錆・防食層が形成されている。
また、既設管と更生管との間の裏打ち材を省略するために、補強部材を主帯材の樹脂で包んで防錆・防食性をさらに高めた帯状部材も開発されている。
【0004】
ところで、更生管の製管に際して帯状部材の長さが足りないときは帯状部材を継ぎ足す必要がある。自走式製管機を用いた一般的な継ぎ足し方法では、製管機の走行手段の駆動により、継ぎ足されるべき後続の帯状部材を更生管の製管に供された先行の帯状部材の終端に向けて送り込んで後続の帯状部材の始端を先行の帯状部材の終端に突き当て、さらに後続の帯状部材を用いて自走しながら製管を続行する。そして、製管の途中または製管完了後に後続の帯状部材の始端と先行の帯状部材の終端を樹脂溶接する。
【0005】
特許文献2に開示された継ぎ足し方法は次の通りである。先行の帯状部材の終端と後続の帯状部材の始端との間に隙間を形成した状態で、細長く湾曲した鋼製の継手部材を用いて2本の帯状部材の補強部材を連結する。次に連結された後続の帯状部材を用いて製管を続行する。製管の途中または製管の完了後に、前記隙間に樹脂製の継手部材を嵌め込んで樹脂溶接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-175599号公報
【特許文献2】特開2019-181798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した一般的な継ぎ足し方法および特許文献2の継ぎ足し方法では、先行の帯状部材の終端と後続の帯状部材の始端において、補強部材の端面(金属露出面)は露出されたままである。そのため、更生管と既設管との間に裏打ち材を充填されても補強部材の端面を確実に覆うことができず、防錆・防食性を十分に確保できない可能性がある。
特許文献1には、更生管に貫通穴を形成することにより露出した補強部材の金属面を、防錆・防食材で覆うことが開示されているが、更生管の製管途中で帯状部材を継ぎ足す方法および構造については開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、製管機を用いて帯状部材を螺旋状に巻き、隣接する巻部分の側縁同士を嵌合することにより、既設管の内周に更生管を製管し、この製管の途中で、前記更生管の製管に供されていた先行の帯状部材の終端に後続の帯状部材を継ぎ足す方法において、
前記帯状部材は、樹脂製の主帯材と、前記主帯材の帯長方向に延びて前記主帯材の外周に装着された金属製の補強部材とを備え、前記補強部材が前記主帯材の樹脂に包まれているか又はその表面が防錆・防食層に覆われており、
前記先行の帯状部材の製管が終了した後、前記先行の帯状部材の終端と前記後続の帯状部材の始端とを離間させた状態で前記後続の帯状部材の製管を続行し、前記製管の途中または製管が終了した後に、前記先行の帯状部材の終端と前記後続の帯状部材の始端との間の隙間に充填材料を充填し、この充填材料により、前記先行の帯状部材の終端と前記後続の帯状部材の始端において金属面が露出した前記補強部材の端面を覆う充填工程を実行することを特徴とする。
【0009】
上記の方法によれば、帯状部材の継ぎ足し部において補強部材の端面の金属面の露出を充填材料で防ぐことができるので、補強部材の防錆・防食を確実に行うことができる。
【0010】
好ましくは、前記充填工程において、前記充填材料を、前記隙間のみならず、前記先行の帯状部材の終端の近傍部および前記後続の帯状部材の始端の近傍部にも充填する。この方法によれば、継ぎ足し部での水密性を十分に確保することができる。
【0011】
好ましくは、前記充填工程において、前記充填材料を、前記既設管の内周に至るまで充填する。この方法によれば、継ぎ足し部での耐圧性も確保することができる。
【0012】
好ましくは、前記製管機は走行手段を有する自走式製管機であり、前記先行の帯状部材の終端と前記後続の帯状部材の始端との間にスペーサを設置する設置工程と、前記製管機により、前記先行の帯状部材の終端と前記後続の帯状部材の始端との間に前記スペーサを介在させた状態で、前記後続の帯状部材を用いて前記更生管の製管を開始する製管工程と、前記スペーサを前記先行の帯状部材の終端と前記後続の帯状部材の始端との間の隙間から除去するスペーサ除去工程と、前記充填工程と、を備えている。
この方法によれば、自走式の製管機を用いる場合に、スペーサにより先行の帯状部材の終端と前記後続の帯状部材の始端との間の隙間を確実に維持しながら、後続の帯状部材を用いた製管を開始することができる。
【0013】
好ましくは、前記スペーサ除去工程は、前記製管機が前記後続の帯状部材を用いた製管を開始してから再び前記先行の帯状部材の終端に達する前に、前記製管機を一旦停止させた状態で実行される。
この方法によれば、先行の帯状部材の終端と後続の帯状部材の始端との間の隙間の側方が開放された状態で、スペーサを比較的容易に取り外すことができる。
【0014】
好ましくは、前記充填工程は、前記後続の帯状部材の前記始端から少なくとも一周分製管された後に、実行される。この方法によれば、充填材料が後続の帯状部材を用いた製管の支障になるのを確実に回避できる。
【0015】
好ましくは、前記充填工程の後に、前記更生管の内面に前記充填材料を覆う樹脂製カバーを取り付ける。この方法によれば、充填材料が更生管を流れる流体に晒されるのを回避することができる。
【0016】
好ましくは、前記スペーサの設置工程は、
a.前記製管機の前記走行手段の正転により、前記後続の帯状部材を先行の帯状部材に向けて送り込み、前記後続の帯状部材の始端を前記先行の帯状部材の終端に突き当てるステップと、
b.前記走行手段の正転により、前記製管機を前記先行の帯状部材から前記後続の帯状部材に移す工程と、
c.前記走行手段の逆転により、前記後続の帯状部材を先行の帯状部材から離すように移動させ、前記後続の帯状部材の始端と前記先行の帯状部材の終端に前記スペーサの幅より広い初期隙間を形成するステップと、
d.前記初期隙間に前記スペーサを挿入するステップと、
e.再び走行手段の正転により、前記後続の帯状部材を前記先行の帯状部材に向けて送り、前記後続の帯状部材の始端を前記スペーサに突き当てることにより、前記後続の帯状部材の始端と前記先行の帯状部材の終端とで前記スペーサを挟むステップと、
を含む。
この方法によれば、自走式製管機を用いてスペーサを円滑かつ確実に設置することができる。
【0017】
本発明の他の態様は、帯状部材を螺旋状に巻き、隣接する巻部分の側縁同士を嵌合することにより、既設管の内周に製管される更生管において、先行の帯状部材の終端に後続の帯状部材を継ぎ足す構造であって、
前記帯状部材は、樹脂製の主帯材と、前記主帯材の帯長方向に延びて前記主帯材の外周に装着された金属製の補強部材とを備え、前記補強部材が前記主帯材の樹脂に包まれているか又はその表面が防錆・防食層に覆われており、前記先行の帯状部材の終端と前記後続の帯状部材の始端との間に隙間が形成されており、この隙間に充填材料が充填され、この充填材料により、前記先行の帯状部材の終端と前記後続の帯状部材の始端において金属面が露出した前記補強部材の端面が覆われている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】帯状部材を用いて既設管の内周に沿い更生管を製管する工程を概略的に示す図である。
【
図3A】更生管の製管の途中で先行の帯状部材が途切れた状態を、更生管の内側から見た正面図である。
【
図3B】先行の帯状部材の終端と後続の帯状部材の始端との間の隙間にスペーサを介在させた状態で、後続の帯状部材を用いた製管を開始した状態を示す正面図である。
【
図3C】前記隙間からスペーサを除去した状態で後続の帯状部材の新たな巻き部分により製管が続行された状態を示す正面図である。
【
図3D】前記隙間に充填材料を充填した状態を示す正面図である。
【
図3E】更生管の内周面に前記モルタルを覆うカバーを取り付けた状態を示す正面図である。
【
図5】(A)~(F)は、先行の帯状部材の終端と後続の帯状部材の始端との間の隙間にスペーサを設置する工程を、順を追って説明する概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、老朽化した下水道管等の既設管1の内周面に更生管2がライニングされることで、既設管1が更生されている。既設管1としては、下水道管の他、上水道管、農業用水管、水力発電導水管、ガス管などが挙げられる。
【0020】
更生管2は、帯状部材3(プロファイル)を既設管1の内周に沿って螺旋状に巻回することにより製管される。
図2に示すように、帯状部材3は、主帯材10と、主帯材10の帯長方向に延びて主帯材の外周に装着された複数の補強部材20を備えている。帯状部材3の両端は、帯長方向に対して直交する面になるように整えられている。
【0021】
主帯材10は、ポリ塩化ビニルやポリエチレンなどの樹脂を押出成形することにより得られる。主帯材10は、平帯部11と、平帯部11の両側縁部に形成された嵌合部13,14と、平帯部11の外周面に形成され平帯部11と直交するように起立した複数のリブ15とを有している。平帯部11は平坦な帯状に形成されており、平帯部11によって更生管2の滑らかな内周面が画成されている。嵌合部13,14は相補形状をなしており、嵌合部13が雌型、嵌合部14が雄型となっている。
【0022】
補強部材20は、平板形状の細長い鋼板(金属板)からなり、主帯材10のリブ15に埋め込まれている。換言すれば補強部材20は、主帯材10の樹脂材料により全周を包囲されており、高い防錆・防食性を有している。ただし、帯状部材3の両端では、補強部材20は樹脂に覆われておらず金属面が露出している。
【0023】
自走式製管機50により、帯状部材3が螺旋状に巻かれ隣接する巻き部分の嵌合部13,14が、厚み方向に押圧されて嵌合されることにより、更生管2が製管される。
【0024】
≪帯状部材の継ぎ足し方法≫
既設管1の全長にわたって更生管2をライニングするには、帯状部材3が1本では足りないために、帯状部材3は製管の途中で継ぎ足される。以下の説明および図面において、更生管2の製管に供された先行の帯状部材と後続の帯状部材を区別する場合には、先行の帯状部材に符号3Fを付し、後続の帯状部材に符号3Rを付すことにする。
【0025】
以下、帯状部材の継ぎ足し方法を、順を追って説明する。
<スペーサ設置工程>
図3Aおよび
図4(A)は、更生管2の製管途中で先行の帯状部材3Fが途切れた状態を示す。この状態で、
図3B,
図4(B)に示すように直方体形状のスペーサ60の一方の側面を先行の帯状部材3Fの終端3Feに当て、このスペーサ60の他方の側面に後続の帯状部材3Rの始端3Rsを当てる。これにより、先行の帯状部材3Fの終端3Feと後続の帯状部材3Rの始端3Rsとの間の隙間Sにスペーサ60を設置する。このスペーサ60の幅すなわち隙間Sの幅は、後述する充填工程において指が入るのに十分な大きさであり、例えば20mm~35mmである。スペーサ60には、更生管2の径方向内側の面にネジ穴61が形成されている。
【0026】
<製管工程>
上記のように隙間Sにスペーサ60を設置した後、自走式製管機50により後続の帯状部材3Rを用いた製管を開始する。すなわち、後続の帯状部材3Rの始端3Rsの近傍部の嵌合部14を、先行の帯状部材3Fの終端3Feより一周手前の部分の嵌合部13に嵌合させる。この際、後続の帯状部材3Rは先行の帯状部材3Fに向かう力を受けるが、スペーサ60により隙間Sは維持される。
【0027】
<スペーサ除去工程>
上記製管により後続の帯状部材3Rが最初の一周分製管される前に(すなわち、製管機50が先行の帯状部材3Fの終端3Feおよびスペーサ60に到達する前に)、製管機50を一旦停止させ、スペーサ60を隙間Sから取り外す。スペーサ60は帯状部材3Fの終端3Feと後続の帯状部材3Rの始端3Rsと間に挟まれているが、スペーサ60のネジ穴61にボルト(図示しない)をねじ込んで径方向内側に引くことにより、スペーサ60を隙間Sから取り外すことができる。隙間Sは一側方が開放されているため、スペーサ60の取り外しを比較的容易に行うことができる。
【0028】
<製管再開工程>
スペーサ60を除去した後、後続の帯状部材3Rを用いた製管を再開することにより、
図3C、
図4(C)に示すように、後続の帯状部材3Rの始端3Rsから少なくとも一周分製管されると、上記隙間Sは全周にわたって矩形に画成された空間となる。より具体的には、隙間Sは、先行の帯状部材3Fの始端3Feと後続の帯状部材3Rの始端3Rsと、先行の帯状部材3Fの一周手前の部分と、後続の帯状部材3Rの一周後の部分とで画成されている。
【0029】
先行の帯状部材3Fの終端3Feに位置する補強部材20の端面および後続の帯状部材3Rの始端3Rsに位置する補強部材20の端面は、隙間Sに臨んでおり、金属面が露出している。
【0030】
<充填工程>
図3C、
図4(C)の状態に至った後、更生管2の製管途中または製管完了後に、
図3D、
図4(D)に示すように、隙間Sに、垂れ流れたりしない所定の粘度を有する充填材料70を充填する。そのため、充填材料70が後続の帯状部材3Rの製管の支障にならず、また全周を囲われた隙間Sに効率良く充填材料70を充填できる。充填材料70としては、速乾性のモルタルを用いるが、主剤と硬化剤を混合することにより隙間Sに充填後に硬化する樹脂材料(例えば積水化学工業株式会社製のエストドレンタイト)を用いてもよい。
【0031】
隙間Sはスペーサ60と幅寸法と等しく、指を挿入することが可能で十分な充填作業スペースを有している。充填材料70は、先行の帯状部材3Fの終端3Feと後続の帯状部材3Rの始端3Rsに位置する補強部材20の端面を覆うとともに、隙間Sに相当する領域より広い領域にわたって主帯材10と既設管1との間の空間を満たすようにして充填される。すなわち、主帯材10の平帯部11の裏側(外周)およびリブ15間に充填されるとともに、既設管1の内周に到達するまで充填される。
【0032】
充填材料70は更生管2の内周面とほぼ面一の位置まで充填される。最後に、
図3Eに示すように、更生管2の内周面にポリ塩化ビニル等からなる樹脂カバー80をエポキシ系接着剤等で貼り付け、これにより隙間Sに充填された充填材料70を覆う。
【0033】
上述したようにして構築された継ぎ足し構造では、補強部材20が主帯材10の樹脂で包まれ、帯状部材3F,3Rの補強部材20の端面も充填材料70で覆われるため、補強部材20の全域にわたって金属露出面を無くすことができ、防錆・防食効果を確実に得ることができる。そのため、既設管と更生管2との間に裏打ち材を充填する工程を省くこともできる。
【0034】
充填材料70は隙間Sより広い領域にわたり帯状部材3F,3Rの裏側に充填されるので、十分な水密性を確保することができる。また、既設管1の内周面に達するまで充填されるので、継ぎ足し部でも更生管2の内圧に対する強度を確保できる。
【0035】
≪スペーサの設置工程の詳細≫
次に、上述したスペーサ60の設置工程について
図5を参照しながら詳述する。図示のように自走式製管機50は、前側の一対の第1駆動ローラ51と後側の一対の第2駆動ローラ52(走行手段)とを有している。なお、帯状部材3を厚み方向に押圧して嵌合部13,14を嵌合させる手段については公知であるので図示せず、説明を省略する。
【0036】
製管機50は先行の帯状部材3Fを用いて更生管2を製管し、この先行の帯状部材3Fに沿って自走する。やがて帯状部材3Fが途切れると、
図5(A)に示すように第1駆動ローラ51が帯状部材3Fの終端3Feを通り過ぎて空転するため、第1、第2駆動ローラ51,52は自動的に停止される。
【0037】
次に、後続の帯状部材3Rを製管機50に差し込み、第1駆動ローラ51を再駆動して正転させると、
図5(B)に示すように、後続の帯状部材3Rが先行の帯状部材3Fに向かって送り込まれ、後続の帯状部材3Rの始端5Rsが先行の帯状部材3Fの終端3Feに突き当たる。
【0038】
次に、第1、第2駆動ローラ51,52を共に正転させることにより、
図5(C)に示すように、製管機50は自走し、第1、第2駆動ローラ51,52が後続の帯状部材3Rに移る。
【0039】
次に、第1、第2駆動ローラ51,52を逆転させると、
図5(D)に示すように後続の帯状部材3Rが先行の帯状部材3Rから離れる方向に移動する。その結果、先行の帯状部材3Fの終端3Feと後続の帯状部材3Rの始端5Rsとの間には、スペーサ60の幅より広い初期隙間S’が生じる。
【0040】
次に、
図5(E)に示すように、スペーサ60を先行の帯状部材3Fの終端3Feに沿わせるようにして上記初期隙間S’に挿入する。
【0041】
次に、再び駆動ローラ51,52を正転させると、後続の帯状部材3Rが先行の帯状部材3Fに向かって移動し、その始端3Rsがスペーサ60に突き当たる。その結果、先行の帯状部材3Fの終端3Feと後続の帯状部材3Rの始端5Rsとの間に、スペーサ60の幅寸法と等しい隙間Sが得られる。
さらに駆動ローラ51,52の駆動(正転)を続けると、製管機50は後続の帯状部材3Rに沿って自走しながら、製管を続行する。
【0042】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
図示した帯状部材の主帯材および補強部材は例示であり、図示した断面形状のものに限られず、種々の形態を適用できる。
補強部材を主帯材の樹脂で包まずにその表面全周に防錆・防食層を形成してもよい。
防錆・防食層は、樹脂に限らず、金属酸化膜、難防錆・防食金属膜または、防錆・防食塗装膜であってもよい。
補強部材と主帯材とは別体であってもよく、補強部材が、主帯材の外周面側に取り付けられていてもよい。
スペーサ60は、中実、中空もしくは一面開放の箱体であってもよいし、断面コ字状のように天板とそこから延びる脚部とからなるものであってもよい。
スペーサ60を帯状部材の間に設ける際、スペーサ60を先行の帯状部材もしくは後続の帯状部材と連結しておいてもよい。
上述の実施形態では、既設管と更生管との間の裏打ち材を省いたが、必要に応じて裏打ち材を充填してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、更生管の製管の途中での帯状部材の継ぎ足し方法に適用できる。
【符号の説明】
【0044】
1 既設管
2 更生管
3 帯状部材(プロファイル)
3F 先行の帯状部材(他方の帯状部材)
3Fe 終端
3R 後続の帯状部材(一方の帯状部材)
3Rs 始端
10 主帯材
20 補強部材
50 自走式製管機
51,52 第1、第2駆動ローラ(走行手段)
60 スペーサ
70 充填材料
80 樹脂カバー
S 隙間
S’ 初期隙間