(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047551
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】管更生構造及び既設管更生方法、並びに管更生用規制部材
(51)【国際特許分類】
B29C 63/32 20060101AFI20230330BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
B29C63/32
F16L1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156521
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】北山 康
(72)【発明者】
【氏名】山崎 政浩
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 幸
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AG08
4F211AH43
4F211SA05
4F211SC03
4F211SD06
4F211SD19
4F211SG01
4F211SJ13
4F211SJ15
4F211SJ26
4F211SP04
(57)【要約】
【課題】管更生構造において、地震時荷重などにより既設管の所定箇所が集中的に変位した場合、更生管の伸縮部が局所的に大きく変形して破断されるのを防止する。
【解決手段】老朽化した既設管1の内周に、伸縮部15を有する帯状部材10からなる螺旋管状の更生管3をライニングする。既設管1と更生管3との間の管間隙間1cに規制部材20を配置する。規制部材20は、伸縮部15を管軸方向に跨ぐ跨ぎ部23を含む。跨ぎ部23によって、伸縮部15の伸び量を規制する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯幅方向へ伸縮可能な伸縮部を有して既設管の内周に沿って螺旋状に巻回された帯状部材からなる螺旋管状の更生管と、
前記既設管と前記更生管との間の管間隙間に配置され、かつ前記伸縮部を管軸方向に跨ぐ跨ぎ部を含み、前記跨ぎ部によって前記伸縮部の伸び量を規制する規制部材と、
を備えたことを特徴とする管更生構造。
【請求項2】
前記規制部材が、前記伸縮部と交差して前記管軸方向へ延びるとともに前記既設管と前記更生管との間に介在されたスペーサー部と、前記スペーサー部における前記伸縮部との交差部を挟んで両側から更生管側へ突出された一対の突起とを有し、前記交差部及び前記一対の突起によって、前記跨ぎ部が構成されていることを特徴とする請求項1に記載の管更生構造。
【請求項3】
前記伸縮部が、前記更生管の外周側へ膨出されて前記管軸方向へ伸縮可能なベローズを含み、前記跨ぎ部の内側に前記ベローズが挿し入れられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の管更生構造。
【請求項4】
前記既設管が、一列に連ねられた複数の管体によって構成されており、
前記伸縮部が、前記更生管の全域にわたって螺旋状に延び、
前記跨ぎ部が、前記伸縮部における、少なくとも、隣接する前記管体どうしの接続部の直近に配置された伸縮部分を跨ぐように配置されていることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の管更生構造。
【請求項5】
前記規制部材が、前記管間隙間に充填された裏込め材に埋設されていることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の管更生構造。
【請求項6】
帯幅方向へ伸縮可能な伸縮部を有する帯状部材を、既設管の内周に沿って螺旋状に巻回することによって、螺旋管状の更生管を製管する既設管更生方法において、
跨ぎ部を含む規制部材を、前記製管前又は製管時の前記既設管の内周面に配置する工程と、
前記製管時、前記跨ぎ部が前記伸縮部を管軸方向に跨ぐように調整する工程と、
を備えたことを特徴とする既設管更生方法。
【請求項7】
帯幅方向へ伸縮可能な伸縮部を有して既設管の内周に沿って螺旋状に巻回された帯状部材からなる螺旋管状の更生管と前記既設管との間の管間隙間に配置される管更生規制部材であって、
前記伸縮部を管軸方向に跨ぐ跨ぎ部を含み、前記跨ぎ部の内側に前記伸縮部が配置されることによって、前記伸縮部の伸び量が規制されることを特徴とする管更生用規制部材。
【請求項8】
前記伸縮部と交差して前記管軸方向へ延びるとともに前記既設管と前記更生管との間に介在されるスペーサー部と、前記スペーサー部における前記伸縮部との交差部を挟んで両側から更生管側へ突出された一対の突起とを有し、前記交差部及び前記一対の突起によって、前記跨ぎ部が構成されていることを特徴とする請求項7に記載の管更生用規制部材。
【請求項9】
前記スペーサー部の外周面には、凹凸パターンが形成されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の管更生用規制部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道管などの既設管を更生してなる管更生構造及び既設管更生方法、並びにそれに用いられる管更生用規制部材に関し、特に、ベローズ等の伸縮部を有する帯状部材からなる螺旋管状の更生管を既設管の内周にライニングした管更生構造等に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化した下水道管などの既設管の内周に沿うように帯状部材を螺旋状に巻回して螺旋管状の更生管を構築することによって、既設管を更生する方法は公知である(特許文献1、2等参照)。例えば、特許文献1の帯状部材には、帯幅方向へ伸縮可能なベローズが設けられている。地震時の大きな荷重に対して、ベローズが伸縮されることによって、前記荷重を逃がすことができる。
【0003】
下水道管などの地中に埋設された既設管としては、ヒューム管などの一定の長さの管体を一列に連ねた構造のものが一般的である。各管体の一端部には受口が設けられ、他端部には挿口が設けられている。隣接する管体のうち一方の受口に他方の挿口が挿し込まれることで、これら管体どうしが接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-065351号公報
【特許文献2】特開2019-181789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記ベローズ等の伸縮部付きの帯状部材からなる更生管がライニングされた更生既設管において、地震時の変位が所定箇所に集中することがある。すると、更生管においては、伸縮部のうち、前記変位集中箇所の付近の伸縮部分だけが大きく伸び変形される。例えば、既設管が管体を一列に連ねた構造では、地震時の変位が、隣接する管体どうしの接続部に集中することで、該接続部の周辺の伸縮部分だけが局所的に伸びることになる。変位が過大になって許容伸び量を超えた場合、変位集中箇所付近の伸縮部分が破断されるおそれがある。
本発明は、かかる事情に鑑み、地震時荷重などにより既設管の所定箇所が集中的に変位した場合、更生管の伸縮部における前記変位集中箇所付近の伸縮部分が局所的に大きく変形して破断されるのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る管更生構造は、帯幅方向へ伸縮可能な伸縮部を有して既設管の内周に沿って螺旋状に巻回された帯状部材からなる螺旋管状の更生管と、
前記既設管と前記更生管との間の管間隙間に配置され、かつ前記伸縮部を管軸方向に跨ぐ跨ぎ部を含み、前記跨ぎ部によって前記伸縮部の伸び量を規制する規制部材と、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
前記規制部材は、少なくとも、既設管における、地震時荷重等によって集中変位が起きやすい箇所(変位集中箇所)に設けることが好ましい。
そのような集中変位が起きたときは、更生管における伸縮部のうち、前記変位集中箇所の付近の伸縮部分が局所的に大きく伸縮変形される。該伸縮部分が、規制部材の跨ぎ部の両側部にそれぞれ突き当たるまで伸び変形したとき、それ以上の伸び変形が止められる。このため、荷重が周辺へ分散されて、更生管の広い範囲にわたって伸縮部が伸び変形される。これによって、荷重を更生管の広い範囲において吸収でき、前記変位集中箇所付近の伸縮部分が破断されるのを防止できる。
【0008】
前記規制部材が、前記伸縮部と交差して前記管軸方向へ延びるとともに前記既設管と前記更生管との間に介在されたスペーサー部と、前記スペーサー部における前記伸縮部との交差部を挟んで両側から更生管側へ突出された一対の突起とを有し、前記交差部及び前記一対の突起によって、前記跨ぎ部が構成されていることが好ましい。
前記一対の突起の間に前記伸縮部が挟まれるように配置される。これによって、地震時荷重等により前記伸縮部が過度に伸び変形されるのを確実に防止することができる。前記一対の突起間の距離によって、伸縮部の最大伸長可能量を設定することができる。一対の突起間の距離は、伸縮部が過度に伸ばされて破断される直前の許容伸長量以下である。
スペーサー部が既設管と更生管との間に介在されることによって、既設管と更生管の間隔ないしは管間隙間の大きさを保持できる。
【0009】
前記伸縮部が、前記更生管の外周側へ膨出されて前記管軸方向へ伸縮可能なベローズを含み、前記跨ぎ部の内側に前記ベローズが挿し入れられていることが好ましい。
前記ベローズが伸縮されることによって、地震時荷重を吸収できる。ベローズの両端部が跨ぎ部の両側部にそれぞれ突き当たるまで伸び変形したとき、ベローズがそれ以上、伸びるのが規制される。
【0010】
前記既設管が、一列に連ねられた複数の管体によって構成されており、
前記伸縮部が、前記更生管の全域にわたって螺旋状に延び、
前記跨ぎ部が、前記伸縮部における、少なくとも、隣接する前記管体どうしの接続部付近に配置された伸縮部分を跨ぐように配置されていることが好ましい。
地震時には既設管における隣接する管体どうしが相対変位されることで、前記接続部の付近の伸縮部分に荷重が加えられて、該伸縮部分が変形される。この伸縮部分の伸び変形を規制部材の跨ぎ部によって規制することで、更生管の伸縮部が広い範囲にわたって伸び変形される。これによって、荷重を更生管の広い範囲に分散させて吸収できる。
【0011】
前記規制部材が、前記管間隙間に充填された裏込め材に埋設されていることが好ましい。これによって、規制部材を管間隙間内に安定的に配置できる。裏込め材を介して既設管と更生管とが構造的に一体化されて、荷重を広く分散させることができる。
【0012】
本発明方法は、帯幅方向へ伸縮可能な伸縮部を有する帯状部材を、既設管の内周に沿って螺旋状に巻回することによって、螺旋管状の更生管を製管する既設管更生方法において、
跨ぎ部を含む規制部材を、前記製管前又は製管時の前記既設管の内周面に配置する工程と、
前記製管時、前記跨ぎ部が前記伸縮部を管軸方向に跨ぐように調整する工程と、
を備えたことを特徴とする。
更生管の製管によって、規制部材が、既設管と更生管との間の管間隙間に配置される。
跨ぎ部が伸縮部を管軸方向に跨ぐことによって、地震時荷重等による伸縮部の伸び量が規制される。これによって、荷重を更生管の広い範囲にわたって分散できるとともに、伸縮部が局所的に破断されるのを防止できる。
【0013】
また、本発明は、帯幅方向へ伸縮可能な伸縮部を有して既設管の内周に沿って螺旋状に巻回された帯状部材からなる螺旋管状の更生管と前記既設管との間の管間隙間に配置される管更生規制部材であって、
前記伸縮部を管軸方向に跨ぐ跨ぎ部を含み、前記跨ぎ部の内側に前記伸縮部が配置されることによって、前記伸縮部の伸び量が規制されることを特徴とする。
前記管更生用規制部材は、前記伸縮部と交差して前記管軸方向へ延びるとともに前記既設管と前記更生管との間に介在されるスペーサー部と、前記スペーサー部における前記伸縮部との交差部を挟んで両側から更生管側へ突出された一対の突起とを有し、前記交差部及び前記一対の突起によって、前記跨ぎ部が構成されていることが好ましい。
【0014】
前記スペーサー部の外周面には、凹凸パターンが形成されていることが好ましい。
この構成は、管間隙間に裏込め材を充填する場合に特に効果的である。裏込め材は、既設管と更生管とを構造的に一体化させて複合管を構成する作用を有する。一方、管間隙間にスペーサー部が有ると前記一体化作用が損なわれるおそれがある。これに対し、前記凹凸パターンによってスペーサー部と裏込め材との定着性が高められるから、前記一体化作用が損なわれるのを防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、管更生構造において、地震時荷重などにより既設管の所定箇所が集中的に変位した場合、更生管の伸縮部における前記変位集中箇所付近の伸縮部分が局所的に大きく変形するのを阻止できる。これによって、前記伸縮部分の破断を防止できる。さらに、荷重を更生管の広い範囲にわたって分散させて吸収できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る管更生構造の側面図である。
【
図2】
図2は、
図1のII-II線に沿う、前記管更生構造の正面断面図である。
【
図3】
図3(a)は、前記管更生構造の更生管を構成する帯状部材を、そのベローズが伸縮変形されていない状態で示す断面図である。
図3(b)は、前記帯状部材を、ベローズが伸び変形された状態で示す断面図である。
【
図6】
図6は、地震時荷重により変位した状態における管更生構造の側面断面図である。
【
図7】
図7は、
図6における変位集中箇所を拡大して示す断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第2実施形態に係る管更生構造の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態>
図1は、管更生構造1を示したものである。管更生構造1は、既設管2と、更生管3と、裏込め材4を含む。既設管2は、例えば、地中に埋設された下水道管である。なお、既設管2は、下水道管に限らず、上水道管、農業用水路管、水力発電導水管、ガス管、トンネル等でもよい。
【0018】
図1に示すように、既設管2は、複数の管体2aを一列に連ねることによって構成されている。管体2aとしては、例えば、一定の長さのヒューム管が用いられている。各管体2aの一端部には受口2bが設けられ、他端部には挿口2dが設けられている。隣接する管体2aのうち一方の受口2bに他方の挿口2dが挿し込まれることで、これら管体2aどうしが接続されている。互いに嵌合された受口2b及び挿口2dによって、接続部2cが構成されている。接続部2cは、既設管1における、地震時荷重等によって集中変位が起きやすい箇所(変位集中箇所)となる。
【0019】
図1及び
図2に示すように、老朽化した既設管2の内周面に更生管3がライニングされている。これら既設管2と更生管3との間の管間隙間1cには、モルタルなどの裏込め材4が充填されている。これによって、既設管2と更生管3とが裏込め材4を介して構造的に一体化された複合管からなる管更生構造1が構築されている。
【0020】
更生管3は、帯状部材10を螺旋状に巻回してなる螺旋管である。
図3(a)に示すように、帯状部材10は、帯板部11と、嵌合部13,14と、ベローズ15(伸縮部)と、リブ16を含み、一定の異形断面に形成されて、帯長方向(
図3(a)において紙面と直交する方向)へ延びている。帯状部材10の材質は、例えばポリ塩化ビニルなどの合成樹脂である。帯板部11は、帯幅方向の一端側(
図3(a)において左)の第1帯板部分11aと、帯幅方向の他端側(
図3(a)において右)の第2帯板部分11bとを含む。これら帯板部分11a,11bの間には、段差11dが形成されている。帯板部分11aが、帯板部分11bより外周側(更生管3に製管されたとき外周を向く側、図(a)3において上側)へずれて配置されている。帯板部分11aの端部に凹凸断面形状の第1嵌合部13が設けられている。
【0021】
帯板部分11aの中間部には、ベローズ15が形成されている。ベローズ15は、例えばU字状の断面に形成されることによって、外周側へ膨出されるとともに内周側(
図3(a)において下側)から見て凹んでいる。
図3(a)及び同図(b)に示すように、ベローズ15帯幅方向へ拡縮可能である。
【0022】
帯板部分11bの外周側面には、第1嵌合部13とは相補をなす凹凸断面形状の第2嵌合部14が設けられている。帯板部分11bは、第2嵌合部14よりも帯幅方向の他端側(
図3において右)へ延び出て、延出帯部分11eを構成している。ベローズ15から第2嵌合部14までの帯板部11には、外周側へ突出するT字断面のリブ16が形成されている。
【0023】
図4に示すように、管更生構造1においては、帯状部材10が、既設管2の内周面に沿って螺旋状に巻回されるとともに一周違いの嵌合部13,14どうしが嵌合されることによって、螺旋管状の更生管3が製管されている。第1帯板部分11aの内周側面(
図4において下面)に、第2帯板部分11bの延出帯部分11eが重ね合わされている。延出帯部分11eによって、ベローズ15の内周側への開口が塞がれるとともに、段差11dが埋められている。更生管3の内周面は、段差の無い平滑面になっている。
図1に示すように、ベローズ15は、更生管3の全域にわたって螺旋状に延びている。
【0024】
図1及び
図2に示すように、管更生構造1における管間隙間1cには、複数の管更生用規制部材20が設置されている。規制部材20の材質は、鋼鉄、鉄、ステンレスなどの金属でもよく、硬質樹脂でもよい。
図5に示すように、各規制部材20は、スペーサー部21と、一対の突起22を含む。スペーサー部21は、真っ直ぐな棒形状ないしは鉄筋状に形成されている。
図4に示すように、スペーサー部21の長さは、ベローズ15が伸び縮みしていない状態での更生管3の螺旋ピッチと等大であるか、それより少し小さい。スペーサー部21の断面形状は、円形であるが、これに限らず、四角形などの多角形であってもよい。スペーサー部21は、管間隙間1c内に配置可能である限り、平板状であってもよい。
【0025】
スペーサー部21の中間より一端寄り部分の周側部には、一対の突起22が設けられている。突起22は、スペーサー部21に対して直交するように、スペーサー部21から突出されている。一対の突起22は、互いに平行をなし、スペーサー部21の長手方向に離間して配置されている。
【0026】
スペーサー部21及び突起22を含む規制部材20の外周面には、凹凸パターン24が形成されている。凹凸パターン24は、例えば網目状ないしは綾目状になっている。凹凸パターン24は、スペーサー部21の外周面から突出された凸条でもよく、スペーサー部21の外周面から凹んだ凹溝でもよく、ローレットでもよい。
【0027】
図1及び
図2に示すように、管更生構造1において、複数の規制部材20が、更生管3の外周の管軸方向及び管周方向に分布するように配置されている。
図2に示すように、この実施形態では、規制部材20は、更生管3の上半部の管間隙間1cに、管周方向へ間隔を置いて配置されている。各規制部材20のスペーサー部21の延び方向は、更生管3の管軸方向(
図2の紙面直交方向)へ向けられている。
図1及び
図4に示すように、管周方向の各位置における規制部材20どうしが、一直線に連なるように並べられている。
各規制部材20は、更生管3に対して固定されておらず、フリーである。これら規制部材20が、管間隙間1cの裏込め材4に埋設されて定着されている。
【0028】
スペーサー部21が、管更生構造1の上半部における既設管2と更生管3との間に介在されることによって、これら既設管2と更生管3との間隔が保持されている。なお、更生管3の底部は、既設管2の底部に着地されている(
図2)。
【0029】
図4に示すように、各規制部材20のスペーサー部21における、一対の突起22どうしの間の部分21c(交差部)が、ベローズ15の外周側に被さるようにして、ベローズ15と交差している。一対の突起22が、該交差部21cを挟んで両側から更生管3側へ突出されている。規制部材20における交差部21c及び一対の突起22によって、跨ぎ部23が構成されている。跨ぎ部23は、ベローズ15を更生管3の管軸方向に跨いでいる。跨ぎ部23には、交差部21c及び一対の突起22によって、跨ぎ凹部23cが形成されている。跨ぎ凹部23cにベローズ15が挿し入れられている。一対の突起22の間にベローズ15が挟まれるように配置されている。一対の突起22によって、跨ぎ凹部23cの両側部が画成されている。
【0030】
図7に示すように、跨ぎ部23によってベローズ15の伸び量が規制される。一対の突起22どうしの離間距離が、ベローズ15の最大伸長可能量となる。前記離間距離すなわち前記最大伸長可能量は、ベローズ15の許容伸長量(破断時の伸長量)より小さい。
規制部材20は、少なくとも接続部2cないしはその近傍に設けられていればよい。跨ぎ部23は、ベローズ15における少なくとも接続部2cの直近又は付近のベローズ部分15a(伸縮部分)を跨ぐように配置されていればよい。
【0031】
<既設管更生方法>
老朽化した既設管1の更生施工に際して、更生管3がライニング(製管)される前の既設管2の内周面の所定箇所に、規制部材20をU字アンカー等の仮止め手段(図示せず)によって仮止めしておく。その後、更生管3をライニングすることによって、規制部材20を既設管と更生管3との間に挟む。これによって、規制部材20が管間隙間1cに配置される。
前記仮止めの際は、突起22を既設管2の管周方向へ向けておき、ライニング中又はライニング後に、規制部材20を約90度回転させて、突起22を管内周側へ向けてもよい。
更に、跨ぎ部23がベローズ15を管軸方向に跨ぐように、規制部材20の位置及び向きを調整する。
前記仮止め工程を省いてもよい。更生管3をライニングするのと併行して、該ライニング中(製管時)の更生管3と既設管1の内周面の間に規制部材20を挿し入れてもよい。
更生管3を少し小径に製管して、管間隙間1cに規制部材20を挿入配置した後、更生管3を拡径させてもよい。
【0032】
更生管3のライニング後、管間隙間1cに裏込め材4を充填する。これによって、規制部材20が裏込め材4に埋設される。したがって、規制部材20を管間隙間1c内に安定的に配置できる。加えて、凹凸パターン24によって、スペーサー部21の裏込め材4への定着強度が高められる。したがって、管間隙間1cにスペーサー部21が有っても、裏込め材4による既設管1と更生管3との一体化作用が損なわれるのを防止できる。
このようにして、老朽化した既設管2が更生され、管更生構造1が構築される。
【0033】
管更生構造1において、地震等による荷重に対しては、ベローズ15が伸縮されることによって、荷重を逃がすことができる。
詳しくは、
図6に示すように、地震等による荷重が既設管1に加えられると、隣接する管体2aどうしが相対変位されることで、特に接続部2c(所定箇所)に変位が集中しやすい。このため、更生管3においては、螺旋状のベローズ15のうち、特に接続部2cの付近のベローズ部分15aが局所的に大きく伸縮変形される。
図7に示すように、該ベローズ部分15aが大きく伸長された場合、ベローズ部分15aの両端部が、対応する規制部材20Aの跨ぎ部23の一対の突起22にそれぞれ突き当たる。このため、ベローズ部分15aが、それ以上、伸び変形するのが阻止される。これによって、接続部2c(変位集中箇所)の付近のベローズ部分15aが過度に伸長されて破断されるのを防止できる。
【0034】
図6に示すように、前記接続部2cの付近のベローズ部分15aが、対応する規制部材20Aによって変形を拘束されるために、荷重が分散されて、更生管3の広い範囲にわたってベローズ15が伸び変形される。好ましくは、ベローズ部分15aを中心にして、螺旋状のベローズ15の複数ピッチにわたって、伸び変形が伝播される。これによって、螺旋管状の更生管3の複数ピッチにわたる部分によって、荷重を吸収できる。接続部2cから離れた部分においても、ベローズ15が最大伸長可能量まで伸長したときは、対応する規制部材20によって、それ以上の伸長を規制できる。更生管3の上半部のベローズ15が規制部材20によって拘束されると、下半部にもその拘束力が及び、下半部のベローズ15の伸長が抑制される。
この結果、更生管3のベローズ15が、地震等の荷重によって破断されるのを確実に防止できる。
【0035】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態(
図8)>
図8は、本発明の第2実施形態を示したものである。第2実施形態においては、規制部材20が、更生管3の外周の上半部だけでなく下半部にも配置されることで、更生管3の外周の全周にわたって間隔を置いて配置されている。下半部に配置された規制部材20のスペーサー部21によって、更生管3の底部が、既設管1の底部から浮かされている。好ましくは、更生管3は、既設管1とほぼ同心円をなすように配置されている。
【0036】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、規制部材20が、更生管3の外周の下半部だけに配置されていてもよく、左右両側部だけに配置されていてもよい。
帯状部材の伸縮部は、必ずしもベローズによって構成されていなくてもよい。帯状部材が、ベローズを有していなくてもよい。更生管3における帯状部材10の嵌合された嵌合部13,14どうしが、互いの間のクリアランス又は各々の弾性によって管軸方向(帯幅方向)へ変位可能又は変形可能であってもよく、嵌合部13,14によって「伸縮部」が構成されていてもよい。当該嵌合部13,14からなる伸縮部を、規制部材20の跨ぎ部23が跨ぐように配置されていてもよい。
裏込め材4を省略してもよい。更生管3が、それ単独で所要強度を担う自立管を構成していてもよい。
更生管3が、幅広の帯状部材(ストリップ)と、幅細の帯状部材(ジョイナー)とを含む2条の螺旋構造であってもよい。何れか一方の帯状部材にベローズなどの伸縮部が形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、例えば、老朽化した下水道管の更生技術に適用できる。
【符号の説明】
【0038】
1 管更生構造
1c 管間隙間
2 既設管
2a 管体
2b 受口
2c 接続部(変位集中箇所)
2d 挿口
3 更生管
4 裏込め材
10 帯状部材
11 帯板部
11a 帯板部分
11b 帯板部分
11d 段差
11e 延出帯部分
13 第1嵌合部
14 第2嵌合部
15 ベローズ(伸縮部)
15a 接続部の直近のベローズ部分(伸縮部分)
16 リブ
20 規制部材
20A 対応する規制部材 接続部の
21 スペーサー部
21c 交差部
22 突起
23 跨ぎ部
24 凹凸パターン