(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047594
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】既設管の更生方法及び該方法に用いる支持治具
(51)【国際特許分類】
B29C 63/32 20060101AFI20230330BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20230330BHJP
F16L 55/18 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
B29C63/32
F16L1/00 J
F16L55/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156582
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 聡俊
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 武司
(72)【発明者】
【氏名】蛭田 将司
(72)【発明者】
【氏名】近藤 陸太
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AG08
4F211AH43
4F211SA05
4F211SC03
4F211SD06
4F211SD19
4F211SD23
4F211SG01
4F211SJ13
4F211SJ15
4F211SJ21
4F211SJ26
4F211SP04
(57)【要約】
【課題】エキスパンダー製管工法において、更生管の拡張工程開始時における拡張不良が起きるのを防止する
【解決手段】帯状部材10からなる螺旋管状の更生管3を、既設管1より小径に製管して既設管1内に設置した後、帯状部材10の隣接する縁どうしの接合部15の接合力を弱化させながら、更生管3の周長を管端部3f側から順次拡張させる。その際、管端部3fに支持治具20を取り付け、支持治具20によって、管端部3fを既設管1の管底1bから浮かせた状態で、管端部3fの周長を拡張させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状部材を螺旋状に巻回して一周違いの隣接する縁どうしを接合してなる螺旋管状の更生管を、既設管の内径より小径に製管して前記既設管内に設置した後、前記隣接する縁どうしの接合部に介在させておいた切断用ワイヤを、前記更生管の管軸方向の一方側から他方側へ向けて引き取ることによって、前記接合部の一部を巻回方向に沿って順次切断して接合力を弱化させながら、前記更生管の他方側の部分を捩じって前記更生管の前記弱化がなれた部分の周長を拡張させる、既設管の更生方法であって、
前記設置後かつ未拡張の更生管の前記一方側の管端部に支持治具を取り付け、
前記支持治具によって前記管端部を前記既設管の管底から浮かせた状態で、前記管端部の前記拡張を行うことを特徴とする既設管の更生方法。
【請求項2】
前記支持治具によって前記管端部を前記既設管に対して軸合わせした状態で、前記管端部の前記拡張を行うことを特徴とする請求項1に記載の既設管の更生方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の支持治具であって、
前記管端部と係合される係合部と、
前記係合部を支持する支持手段と、
を備え、前記管端部を浮かせる支持力が、前記支持手段から前記係合部を介して前記管端部に付与されることを特徴とする支持治具。
【請求項4】
前記支持手段が、前記管端部の周方向と交差して管外側へ延び出る棒状体を含み、前記棒状体における前記管端部との交差部に前記係合部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の支持治具。
【請求項5】
前記係合部が、前記管端部を外周側及び内周側から挟み付けるクランプを含むことを特徴とする請求項3又は4に記載の支持治具。
【請求項6】
前記棒状体における前記管外側の端部は、人が把持可能な把持部を構成していることを特徴とする請求項3~5の何れか1項に記載の支持治具。
【請求項7】
前記支持手段が、前記既設管の前記一方側の端部スペースに設置された支持台を含み、前記係合部が、前記支持台によって水平に支持された係合アームを含み、前記係合アームが、前記管端部の側方部を貫通することを特徴とする請求項3に記載の支持治具。
【請求項8】
前記係合アームが、前記管端部の両側の側方部のうち、前記捩じり力が下向きにかかる側方部を貫通することを特徴とする請求項7に記載の支持治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老朽化した下水道管等の既設管を更生する方法及び該方法に用いる支持治具に関し、特に既設管内に螺旋管状の更生管を構築する更生方法及び支持治具に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化した下水道管等の既設管の内周に沿って帯状部材(プロファイル)を螺旋状に巻回するとともに、該帯状部材の一周違いの隣接する縁どうしを凹凸嵌合にて接合して、螺旋管状の更生管を構築することによって、既設管を更生する方法が知られている(特許文献1等参照)。
【0003】
例えば、特許文献1には、いわゆるエキスパンダー(拡張)製管工法が開示されている。詳しくは、元押し式の製管機を発進側の人孔に設置し、該製管機によって、更生管を既設管の内径より小径に製管しながら、既設管の発進側の管口から既設管内へ更生管を順次押し込む。製管の際、帯状部材の前記隣接する縁どうしの接合部に切断用ワイヤを介在させておく。更生管の押し込み方向の先端部が到達側の管口まで到達したら、該押し込み方向の先端部(到達側の管端部)を固定する。そして、切断用ワイヤを引き取ることによって、前記接合部の一部を巻回方向に沿って前記到達側から前記発進側へ順次切断して、接合力を弱化させる。併行して、製管機から帯状部材を更に供給することで、更生管の元押し側(発進側)の端部を捩じって回転させる。これによって、前記切断により接合力が弱化された接合部の前記隣接する縁どうしが滑り、更生管の周長が到達側から発進側へ向けて順次拡張(拡径)されて、既設管の内周面に張り付けられる。拡張工程中の更生管における、未だ拡張されていない小径部分と、拡張済の大径部分との間には、コーン部分(円錐形の部分)が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-093547号公報(
図7~
図10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記拡張工程前の小径の更生管は、既設管の管底に着地されることで、更生管の管軸が既設管の管軸に対して下方へずれている。その状態で、更生管の到達側の管端部の周長拡張を開始すると、管端部が既設管の管底と摺擦されることで、拡張不良(拡径不良)が起き、更生管の断面が例えば横長の楕円形状に歪んだり、コーン部分の長さやテーパ角度や形状が変化したりすることがあった。場合によっては、コーン部分の小径側端部における前記接合部の破断(バックリング)や、コーン部分の大径側端部における張り付き不足などを惹き起こすこともあった。
本発明は、かかる事情に鑑み、エキスパンダー製管工法において、更生管の特に拡張工程開始時における拡張不良が起きるのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明方法は、帯状部材を螺旋状に巻回して一周違いの隣接する縁どうしを接合してなる螺旋管状の更生管を、既設管の内径より小径に製管して前記既設管内に設置した後、前記隣接する縁どうしの接合部に介在させておいた切断用ワイヤを、前記更生管の管軸方向の一方側から他方側へ向けて引き取ることによって、前記接合部の一部を巻回方向に沿って順次切断して接合力を弱化させながら、前記更生管の他方側の部分を捩じって前記更生管の前記弱化がなれた部分の周長を拡張させる、既設管の更生方法であって、
前記設置後かつ未拡張の更生管の前記一方側の管端部に支持治具を取り付け、
前記支持治具によって前記管端部を前記既設管の管底から浮かせた状態で、前記管端部の前記拡張を行うことを特徴とする。
【0007】
当該方法によれば、更生管の一方側の管端部を浮かすことで、既設管の管底と擦らないようにしながら、該管端部を良好に周長拡張(拡径)できる。これによって、管端部の断面が歪むのを防止できる。また、コーン部分の長さ、テーパ角度及び形状を適正に保つことで、管端部における帯状部材の隣接する縁どうしの接合部が破断したり、張り付き不足が起きたりするのを防止できる。
更生管の前記他方側の部分を捩じって回転させる際、支持治具によって、前記管端部を回り止めできるから、接合力弱化部分を確実に周長拡張させることができる。
更生管の管端部が既設管の内周に張り付いた後は、管端部に続く未拡張部分が、管端部から上向きの力を受けて、既設管の管底から浮いた状態で周長拡張される。これによって、更生管が全域にわたって良好に拡張製管できる。
【0008】
前記支持治具によって前記管端部を前記既設管に対して軸合わせした状態で、前記管端部の前記拡張を行うことが好ましい。
これによって、更生管の一方側の管端部が、既設管に対して同心円の状態を保持したまま、周長拡張される。したがって、拡張途中の管端部が、既設管の内面と接触して擦るのを防止できる。これによって、管端部の拡張不良が起きるのを一層確実に防止できる。
前記軸合わせした状態とは、管端部の管軸が既設管の管軸と厳密に一致していることに限らず、目測などで管軸どうしが概略一致している状態であればよい。或いは、既設管の管軸に対する前記管端部の管軸の偏心量が、既設管の内径の好ましくは20%以内、より好ましくは10%以内であればよい。
【0009】
前記支持治具は、前記管端部と係合される係合部と、前記係合部を支持する支持手段と、を備え、前記管端部を浮かせる支持力が、前記支持手段から前記係合部を介して前記管端部に付与されることが好ましい。
当該支持治具を用いることによって、拡張工程途中の更生管の管端部が既設管の管底に擦らないようにしながら、良好に周長拡張できる。
【0010】
前記支持手段が、前記管端部の周方向と交差して管外側へ延び出る棒状体を含み、前記棒状体における前記管端部との交差部に前記係合部が設けられていることが好ましい。
これによって、支持治具を簡素な構造にできる。
【0011】
前記係合部が、前記管端部を外周側及び内周側から挟み付けるクランプを含むことが好ましい。
これによって、管端部を支持治具にしっかりと固定できる。
前記棒状体は、更生管の管軸方向における管端部より外側に配置されることが好ましく、前記クランプは、更生管の管軸方向の外側から管端部の外周側及び内周側に差し込まれることが好ましい。これによって、管端部に支持治具を挿通する貫通穴を形成する必要が無い。
管端部に貫通穴を形成し、支持治具を該貫通穴に挿通して管端部と係合してもよい。
【0012】
前記棒状体における前記管外側の端部は、人が把持可能な把持部を構成していることが好ましい。
これによって、支持治具の構造を一層簡素化できる。本構造は、管端部が軽量な場合に適している。作業者が把持部を把持して棒状体を持ち上げることで、管端部を既設管の管底から人力で浮かせることができる。
管端部の重量が多少大きい場合でも、棒状体を梃子にして、既設管の一方側の端部スペース(人孔等)内に支点を設け、棒状体の中間部を前記支点で支持し、係合部を作用点とし、把持部を力点とすることで、人力を増幅させて管端部を持ち上げることができる。
【0013】
前記支持手段が、前記既設管の前記一方側の端部スペースに設置された支持台を含み、前記係合部が、前記支持台によって水平に支持された係合アームを含み、前記係合アームが、前記管端部の側方部を貫通することが好ましい。
前記支持台によって、係合アームの支持高さを調整することによって、管端部を既設管の管底から浮かせることができる。好ましくは管端部の管軸高さを既設管の管軸高さとほぼ一致させることができる。さらに、前記管端部を係合アームに沿って水平方向へ位置調整することによって、管端部を既設管と軸合わせできる。
係合アームが管端部と係合されることによって、更生管の他方側部分を捩じって回転させる際、管端部を回り止めできる。したがって、管端部を確実に周長拡張させることができる。
【0014】
前記係合アームが、前記管端部の両側の側方部のうち、前記捩じり力が下向きにかかる側方部を貫通することが好ましい。
これによって、更生管の他方側部分を捩じって回転させたとき、管端部に係合アームから上向きの反力が加わる。これによって、管端部を既設管の管底から確実に浮かせることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、エキスパンダー製管工法において、更生管の拡張工程開始時における拡張不良が起きるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る支持治具を用いて更生施工中の既設管を、更生管を設置後かつ未拡張の状態で示す側面断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のII-II線に沿う、前記既設管の到達側管口の正面図である。
【
図3】
図3(a)は、前記更生管の帯状部材の隣接する縁どうしの接合部を、接合力弱化前の状態で示す、
図1の円部IIIaにおける断面図である。
図3(b)は、前記更生管の帯状部材の隣接する縁どうしの接合部の接合力を弱化する状態を示す、
図6の円部IIIbにおける断面図である。
【
図4】
図4は、前記支持治具によって更生管の管端部を既設管と軸合わせした状態における、更生施工中の既設管の側面断面図である。
【
図5】
図5は、
図4のV-V線に沿う、前記既設管の到達側管口の正面図である。
【
図6】
図6は、前記更生管の管端部の周長を拡張させた状態における、更生施工中の既設管の側面断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2実施形態に係る支持治具を用いて更生管の管端部を既設管と軸合わせした状態における、更生施工中の既設管を示す、
図8のVII-VII線に沿う正面図である。
【
図8】
図8は、
図7のVIII-VIII線に沿う、更生施工中の既設管の平面断面図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態の変形例を示す、既設管の到達側管口の正面図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態の変形例を示す、既設管の到達側管口の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態(
図1~
図6)>
<既設管1及び更生管3>
図1及び
図6に示すように、老朽化した既設管1の内周に更生管3がライニングされることによって、既設管1が更生されている。更生対象の既設管1は、例えば地中に埋設された下水道管であるが、本発明は、これに限定されず、上水道管、農業用水管、ガス管、水力発電導水管、トンネルなどであってもよい。既設管1の両端部は、人孔4,4Bに連なっている。
【0018】
<帯状部材10>
図3(a)に示すように、更生管3は、帯状部材10(プロファイル)によって構成されている。帯状部材10は、ポリ塩化ビニル(PVC)などの合成樹脂からなり、一定の断面形状に形成されている。帯状部材10の幅方向の両縁には雌雄の嵌合部13,14が設けられている。
【0019】
<既設管更生方法>
既設管1は、次のようにして更生される。
<製管工程>
図1に示すように、元押し式の製管機8を用意して発進側の人孔4内に設置する。帯状部材10を地上のドラム7から順次繰り出して製管機8に供給する。製管機8において、帯状部材10を螺旋状に巻回し、一周違いの隣接する嵌合部13,14どうしを凹凸嵌合させて接合することで(
図3(a))、更生管3を順次製管する。凹凸嵌合された嵌合部13,14によって接合部15が形成される。この時点の更生管3は、既設管の内径より小径にする。製管された更生管3を、元押し式製管機8によって既設管1の内部へ向けて順次押し込む。
【0020】
<切断用ワイヤ介在工程>
図1に示すように、前記製管工程の際、切断用ワイヤ41をワイヤ繰出ロール42から製管機8へ導入して、接合部15の嵌合部13,14どうしの間に介在させる(
図3(a))。
【0021】
<更生管設置工程>
図1に示すように、このようにして、更生管3の到達側(一方側)の管端部3fが、既設管1の到達側(
図1において右)の管口1fから到達側の人孔4Bに少し突出されるまで、更生管3の製管を行う。これによって、更生管3が、既設管1の全域にわたって設置される。なお、本明細書において、管端部3fは、更生管3における既設管口1fの内部に配置された部分、及び人孔4Bへ突出された部分を含む。
【0022】
図1及び
図2に示すように、この段階における更生管3は、全体が、既設管1より小径の未拡張管部3aであり、かつ既設管1の管底1bに着地されている。更生管3の管軸は、既設管1の管軸に対して下方へ偏心されている。また、
図1及び
図3(a)に示すように、切断用ワイヤ41が、更生管3の全域にわたって接合部1に収容された状態で帯状部材10に沿って螺旋状に巻かれている。
【0023】
図1に示すように、さらに、更生管3の到達側(一方側)の管端部3fから切断用ワイヤ41が引き出されて発進側(他方側)へ向けて折り返されている。管端部3fに切断用ワイヤ41の折り返し部41cが形成されている。切断用ワイヤ41における折り返し部41cより先端側の被引き出し部分41bは、更生管3の内部を経て、発進側人孔4に設置されたワイヤ引取ウィンチ43に巻き取られている。
【0024】
<支持治具設置工程>
図1に示すように、前記設置後かつ未拡張の更生管3の管端部3fに支持治具20を取り付ける。
図2に示すように、支持治具20は、棒状体21(支持手段)と、クランプ22(係合部)を含む。棒状体21は、一端部が管端部3fの周方向と交差されるとともに、他端部が管外側へ延び出るように向けられる。棒状体21における一端部(管端部3fとの交差部)にクランプ22が設けられている。クランプ22は、一対のクランプ部材22a,22bを有している。棒状体21における管外側の端部は、人が把持可能な把持部21bを構成している。
これによって、支持治具20を簡素な構造にできる。
【0025】
図1の二点鎖線にて示すように、前記支持治具20の棒状体21を、管端部3fよりも管軸方向の外側(
図1において右側)から管端部3fに近接させ、クランプ22の一対のクランプ部材22a,22bを管軸方向の外側から管端部3fの外周側及び内周側に差し込む。これらクランプ部材22a,22bによって、管端部3fの一箇所を外周側及び内周側から強く挟み付ける。これによって、クランプ22が管端部3fに固定(係合)される。
また、棒状体21を保持することで、管端部3fが回り止めされる。
【0026】
<浮かせ工程、軸合わせ工程>
図4及び
図5に示すように、さらに作業者(図示せず)は、把持部21bを把持して、棒状体21を持ち上げ、管端部3fを既設管1の管底1bから浮かせる。言い換えると、管端部3fを浮かせる支持力が、棒状体21(支持手段)からクランプ22(係合部)を介して管端部3fに付与される。好ましくは、管端部3fの管軸が既設管1の管軸と概略一致されるように軸合わせする。
本構造は、管端部3fが人力で持ち上げ可能な程度に軽量な場合に適している。
【0027】
なお、管端部3fの重量が多少大きい場合でも、棒状体21による梃子を構築することによって、人力を増幅させて管端部3fを持ち上げることができる。
棒状体21をジャッキなどの昇降支持機構によって昇降可能に支持することで、管端部3fを持ち上げてもよい。
【0028】
<拡張工程>
管端部3fの前記浮き状態を保持しながら、拡張工程を開始する。
詳しくは、
図4に示すように、ワイヤ引取ウィンチ43を駆動して、切断用ワイヤ41の被引き出し部分41bを到達側(一方側、
図4において右側)から発進側(他方側、
図4において左側)へ引き取る。これによって、折り返し部41cが、更生管3の巻回方向に沿って螺旋状に発進側管端部3eへ向けて移行される。
図3(b)に示すように、このとき、折り返し部41cによって、雄嵌合部14における一部の凸条14b(接合部15の一部)が根元部分から切断される。したがって、接合部15における嵌合部13,14どうしによる接合力(拘束力)が弱まる。すなわち、接合力が弱化される。これによって、嵌合部13,14どうしが巻回方向へ相対スライド可能になる。前記折り返し部41cの発進側への移行に伴って、凸条14bが巻回方向に沿って順次切断され、接合力を弱化された範囲が発進側へ広がる。
【0029】
図4に示すように、切断用ワイヤ41の引き取りと併行して、元押し式製管機8を駆動させて、帯状部材10を更生管3に更に供給する。これによって、更生管3の発進側管端部3e(他方側の部分)に捩じり力が付与され、発進側管端部3eから折り返し部41cまでの小径の未拡張管部3aが回される。更生管3における折り返し部41cから到達側管端部3fまでの、前記接合力が弱化された部分は、接合部15の嵌合部13,14どうしが巻回方向へ相対スライドして、周長が順次拡張(拡径)される。
前記管端部3fが支持治具20によって回り止めされているから、前記拡張作用を確実に起こすことができる。
【0030】
図5に示すように、管端部3fは、支持治具20によって既設管1の管底1bから浮かされているから、拡張途中、管端部3fが既設管1の管底1bと摺擦するのを回避できる。これによって、管端部3fの断面が例えば横長楕円形状に歪むなどの拡張不良が起きるのを防止できる。
【0031】
好ましくは、管端部3fは、支持治具20によって既設管1と軸合わせされているから、
図5の二点鎖線にて示すように、既設管1に対して同心円の円形断面を保持したまま、周長拡張(拡径)されるようにできる。したがって、周長拡張の途中で、管端部3fが、既設管1の管底1bとだけでなく、既設管1の内周面の各所と接触して摺擦するのを回避できる。これによって、管端部3fの拡張不良が起きるのを一層確実に防止できる。
【0032】
図5の二点鎖線にて示すように、管端部3fが周長拡張されるのに合わせて、支持治具20を上昇させる。これによって、管端部3fが周長拡張されても既設管1の管底1bと擦るのを確実に防止でき、さらには、管端部3fが周長拡張されても既設管1との軸合わせ状態を確実に維持できる。
この結果、
図5の三点鎖線にて示すように、管端部3fが全周にわたって既設管1の内周面に張り付くまで、良好に周長拡張できる。
【0033】
図6に示すように、更生管3には、折り返し部41cから管端部3fへ向かって拡径するコーン部分3cが形成される。管端部3fが良好に拡張されていることによって、それに続くコーン部分3cの長さ、傾斜角度、形状などを良好に保持できる。したがって、コーン部分3cの特に小径側端部3caにおいて接合部15が破断されたり、コーン部分3cの大径側端部3cbの既設管1への張り付き不足が起きたりするのを防止できる。
【0034】
更生管3は、到達側から発進側の管端部3eへ向けて順次、周長拡張される。更生管3における到達側の拡張済の管部分が、良好に周長拡張されて既設管1の内周に張り付けられているから、それに続く未拡張部分3aが、拡張済の管部分から上向きの力を受けて、既設管1の管底1bから浮いた状態になり、良好に周長拡張される。
このようにして、
図6の二点鎖線にて示すように、更生管3の発進側の端部まで良好に周長拡張でき、更生管3の全域を既設管1の内周面に張り付けることができる。
【0035】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態(
図7~
図8)>
図7及び
図8に示すように、本発明の第2実施形態における支持治具30は、内外の支持台31,32(支持手段)と、係合アーム33(係合部)を含む。支持台31,32は、到達側人孔4B(既設管の一方側の端部スペース)に設置されている。内側の支持台31は、支柱34と、支持梁35を有している。
図7に示すように、到達側人孔4Bに支柱34が立設されている。
図8に示すように、支柱34の上端部から支持梁35が水平に延びている。支持梁35は、更生管3の管端部3f内へ差し入れられている。
【0036】
図8に示すように、管口1fから突出された管端部3fの側方の到達側人孔4Bの内壁には、外側支持台32が設けられている。外側支持台32は、例えば端太等の木材によって構成されているが、これに限らず、金属材によって構成されていてもよく、インバート等の人孔4B自体の構成要素を外側支持台として代用してもよい。
【0037】
管端部3fの側方部3sには、係合孔3hが貫通形成されている。
図7示すように、好ましくは、係合孔3hは、管端部3fの両側の側方部のうち、拡張工程時の捩じり力aが下向きにかかる側方部3sに配置されている。更に好ましくは、係合孔3hは、嵌合部13,14(
図3参照)どうしの接合部15を避けて形成されている。
【0038】
係合アーム33は、断面円形に形成され、水平に真っ直ぐ延びている。
図7及び
図8に示すように、係合アーム33が、係合孔3hに通されることによって、管端部3fの側方部3sを貫通している。係合アーム33における管端部3fの内側の端部は、内側支持台31の支持梁35の先端部に接合されている。係合アーム33における管端部3fの外側の端部は、外側支持台32に載せられている。これによって、係合アーム33が、内側支持台31と外側支持台32に架け渡されて、水平に支持されている。
【0039】
図7に示すように、係合アーム33によって、拡張工程前の管端部3fが吊り支持されている。これによって、管端部3fを既設管1の管底から浮かせることができる。
係合アーム33は、管端部3fとの係合部を構成している。特に、拡張工程時の捩じり力aが下向きにかかる側方部3sとの係合部を構成している。
支持台31,32は、管端部3fを既設管1の管底から浮かせて支持する支持力を、係合アーム33を介して管端部3fに付与する支持手段を構成している。
【0040】
好ましくは、支持台31,32による係合アーム33の支持高さを調整する。支柱34が伸縮可能であってもよく、支柱34の底部に高さ調整用の台座を置いてもよい。支持台32の厚みないしは設置高さを調整してもよい。これによって、管端部3fを既設管1の管底1bから確実に浮かせることができる。更には、管端部3fの管軸高さを既設管1の管軸高さと略一致させることができる。
さらに、管端部3fを係合アーム33に沿って水平に位置調整する。これによって、管端部3fの管軸を既設管1の管軸と略一致させることができる。
これによって、管端部3fを既設管1と軸合わせした状態で、拡張工程を行うことができ、良好に周長拡張できる。
【0041】
側方部3sには、拡張工程時の捩じり力aが下向きにかかる。これを係合アーム33が受ける。これによって、管端部3fには、係合アーム33から前記捩じり力に対する上向きの反力が加わる。これによって、管端部3fを既設管1の管底1bから確実に浮かせた状態で周長拡張させることができる。
【0042】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、管端部3fの拡張工程の少なくとも開始時~中盤までは、管端部3fが既設管1の管底1bから浮いていればよく、必ずしも、管端部3fが既設管1と軸合わせされていなくてもよい。
拡張工程の少なくとも開始時~中盤まで、管端部3fが既設管1の管底1bから常に離間した状態であるのが好ましいが、人力により浮かせる負担が大きい場合などでは、常時離間していなくてもよいし、摩擦抵抗力が当初より小さくなり、拡径不良が起きない程度に管端部3fと既設管1とが接触していてもよい。
図9及び
図10に示すように、第1実施形態の変形態様として、棒状体21の一端(下端)を、既設管1の内面下半分(
図9)や人孔4Bの底面(
図10)に突き当て反力を得ながら、梃子の原理を用いて、管端部3fを浮かせてもよい。
第1実施形態の変形態様として、棒状体が管端部を貫通して管端部と係合されてもよい。前記管端部の一箇所に係合孔が形成されていてもよい。前記係合部が、前記係合孔に挿通されることで管端部と係合されてもよい。
支持治具の支持手段が、係合部ひいては管端部をリフトアップするジャッキを含んでいてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、例えば、老朽化した下水道管の更生に適用できる。
【符号の説明】
【0044】
1 既設管
1b 管底
1f 到達側の管口
3 更生管
3a 未拡張管部
3c コーン部分
3ca 小径側端部
3cb 大径側端部
3e 発進側の管端部(他方側の部分)
3f 到達側(一方側)の管端部
3h 係合孔
3s 捩じり力が下向きにかかる側方部
4 発進側人孔
4B 到達側人孔(既設管の一方側の端部スペース)
8 元押し式の製管機
10 帯状部材
13 雌嵌合部
14 雄嵌合部
15 接合部
20 支持治具
21 棒状体(支持手段)
21a 管係合側端部
21b 把持部
22 クランプ(係合部)
22a クランプ部材
22b クランプ部材
30 支持治具
31 内側の支持台(支持手段)
32 外側の支持台(支持手段)
33 係合アーム(係合部)
34 支柱
35 支持梁
41 切断用ワイヤ
41b 被引き出し部分
41c 折り返し部
42 ワイヤ繰出ロール
43 ワイヤ引取ウィンチ