(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047656
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60G 11/16 20060101AFI20230330BHJP
【FI】
B60G11/16
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156700
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】阿曽 充宏
(72)【発明者】
【氏名】堀口 賢一
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AA48
3D301AA74
3D301AB17
3D301BA02
3D301BA20
3D301CA02
3D301CA50
3D301DA08
3D301DA88
3D301DB13
3D301DB22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】車両総重量が重い車両の荷室の低床化を実現する。
【解決手段】車体フレーム上に荷室が設けられた車両は、車両の前後方向において所定間隔で配置された一対の第1後輪50及び第2後輪55の各々に設けられ、第1後輪及び第2後輪を独立して回転させる駆動モータと、第1後輪の第1軸及び第2後輪の第2軸を支える一対のサスペンション機構100を備える。サスペンション機構は、第1後輪の第1軸と連結されており、長手方向が前後方向に延びている第1アーム部110と、第2後輪の第2軸と連結されており、長手方向が前後方向に延びている第2アーム部115と、第1アーム部と第2アーム部との一端部を共に、車体フレームに対して回動可能に支持させる支持軸120と、第1アーム部の他端部と車体の間に設けられた第1スプリング部材130と、第2アーム部の長手方向の他端部と車体の間に設けられた第2スプリング部材135を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム上に荷室が設けられた車両であって、
前記車両の前後方向において所定間隔で配置された一対の第1後輪及び第2後輪の各々に設けられ、前記第1後輪及び前記第2後輪を独立して回転させる駆動モータと、
前記第1後輪の第1軸及び前記第2後輪の第2軸を支える一対のサスペンション機構と、
を備え、
前記サスペンション機構は、
前記第1後輪の前記第1軸と連結されており、長手方向が前記前後方向に延びている第1アーム部と、
前記第2後輪の前記第2軸と連結されており、長手方向が前記前後方向に延びている第2アーム部と、
前記第1アーム部の前記長手方向の一端部と、前記第2アーム部の前記長手方向の一端部とを共に、前記車体フレームに対して回動可能に支持させる支持軸と、
前記第1アーム部の前記長手方向の他端部と車体の間に設けられた第1スプリング部材と、
前記第2アーム部の前記長手方向の他端部と前記車体の間に設けられた第2スプリング部材と、
を有する、車両。
【請求項2】
前記第1アーム部と前記第2アーム部は、それぞれ前記支持軸周りに独立して回動する、
請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記第1アーム部及び前記第2アーム部は、前記支持軸周りに一体になって回動する、
請求項1に記載の車両。
【請求項4】
前記第1アーム部の前記長手方向の長さは、前記第1後輪の直径よりも大きく、
前記第2アーム部の前記長手方向の長さは、前記第2後輪の直径よりも大きく、
前記第1スプリング部材及び前記第2スプリング部材は、鉛直方向に沿って配置されたコイルスプリングである、
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両。
【請求項5】
前記サスペンション機構は、
前記第1スプリング部材の両端側を、前記第1アーム部の前記他端部及び前記車体に接合する第1ダンパー部と、
前記第2スプリング部材の両端側を、前記第2アーム部の前記他端部及び前記車体に接合する第2ダンパー部と、を更に有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の車両。
【請求項6】
前記第1アーム部の前記一端部及び前記第2アーム部の前記一端部に設けられ、前記支持軸を支持する軸受けを更に備える、
請求項1から5のいずれか1項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体フレーム上に荷室が設けられた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
トラック等の車両において、駆動輪を電動モータで独立して回転させる車両が提案されている(特許文献1を参照)。この車両は、走行時の衝撃を軽減するためにサスペンション機構を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両の荷室への乗降のし易さ等の観点から、荷室の低床化が要請されている。しかし、車体フレーム上に荷室が設けられる車両総重量が重い車両においては、高荷重を支えるために車軸懸架式のサスペンションが採用されており、荷室の低床化が困難であった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、車両総重量が重い車両の荷室の低床化を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様においては、車体フレーム上に荷室が設けられた車両であって、前記車両の前後方向において所定間隔で配置された一対の第1後輪及び第2後輪の各々に設けられ、前記第1後輪及び前記第2後輪を独立して回転させる駆動モータと、前記第1後輪の第1軸及び前記第2後輪の第2軸を支える一対のサスペンション機構と、を備え、前記サスペンション機構は、前記第1後輪の前記第1軸と連結されており、長手方向が前記前後方向に延びている第1アーム部と、前記第2後輪の前記第2軸と連結されており、長手方向が前記前後方向に延びている第2アーム部と、前記第1アーム部の前記長手方向の一端部と、前記第2アーム部の前記長手方向の一端部とを共に、前記車体フレームに対して回動可能に支持させる支持軸と、前記第1アーム部の前記長手方向の他端部と車体の間に設けられた第1スプリング部材と、前記第2アーム部の前記長手方向の他端部と前記車体の間に設けられた第2スプリング部材と、を有する、車両を提供する。
【0007】
また、前記第1アーム部と前記第2アーム部は、それぞれ前記支持軸周りに独立して回動することとしてもよい。
【0008】
また、前記第1アーム部及び前記第2アーム部は、前記支持軸周りに一体になって回動することとしてもよい。
【0009】
また、前記第1アーム部の前記長手方向の長さは、前記第1後輪の直径よりも大きく、前記第2アーム部の前記長手方向の長さは、前記第2後輪の直径よりも大きく、前記第1スプリング部及び前記第2スプリング部は、鉛直方向に沿って配置されたコイルスプリングであることとしてもよい。
【0010】
また、前記サスペンション機構は、前記第1スプリング部の両端側を、前記第1アーム部材の前記他端部及び前記車体に接合する第1ダンパー部と、前記第2スプリング部の両端側を、前記第2アーム部材の前記他端部及び前記車体に接合する第2ダンパー部と、を更に有することとしてもよい。
【0011】
また、前記第1アーム部の前記一端部及び前記第2アーム部の前記一端部に設けられ、前記支持軸を支持する軸受けを更に備えることとしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両総重量が重い車両の荷室の低床化を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】車両1の外観構成を説明するための模式図である。
【
図2】第1実施例に係るサスペンション機構100の構成を説明するための模式図である。
【
図3】第1スプリング部材130の配置を説明するための模式図である。
【
図4】第1スプリング部材130及び第2スプリング部材135の動きを説明するための模式図である。
【
図5】第2実施例に係るサスペンション機構100の構成を説明するための模式図である。
【
図6】第1スプリング部材130及び第2スプリング部材135の動きを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<車両の概要>
一の実施形態に係る車両の概要について、
図1を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、車両1の外観構成を説明するための模式図である。車両1は、一例としてトラックである。また、車両1は、電動モータで駆動する電気自動車である。車両1は、
図1に示すように、車体フレーム10と、キャブ20と、荷室30と、前輪40と、第1後輪50と、第1駆動モータ52と、第2後輪55と、第2駆動モータ57を有する。
【0016】
車体フレーム10は、車両1を支える骨格である。車体フレーム10は、車両1の前後方向に延びる一対のサイドメンバーと、一対のサイドフレームを連結するために車幅方向に延びるクロスメンバーとを有する。
【0017】
キャブ20は、車体フレーム10上に設けられている。キャブ20の内部には、運転手等の乗員が座る車室が形成されている。キャブ20の背面側には、荷室30と連通する連通口が形成されていてもよく、その場合運転者はキャブ20から荷室30へ移動可能である。
【0018】
荷室30は、車体フレーム10上に設けられており、キャブ20の後方に位置する。荷室30は、例えば箱型に形成されており、内部には荷物が収容される空間が形成されている。
【0019】
前輪40は、車両1の前の車輪であり、車体の左側及び右側に接続された一対の車輪である。前輪40は、ここでは非駆動輪であり、運転者がステアリングホイールを操作することで、前輪40が操舵される。
【0020】
第1後輪50は、車両1の後ろの車輪であり、車体の左側及び右側に接続された一対の車輪である。第1後輪50は、本実施形態では駆動輪であり、第1駆動モータ52によって駆動される。なお、第1後輪50の第1軸(回転軸)は、後述するサスペンション機構によって支えられている。
【0021】
第1駆動モータ52は、一対の第1後輪50の各々に設けられており、第1後輪50を独立して回転させる。第1駆動モータ52は、左側の第1後輪50(
図2の第1後輪50L)のホイール内と、右側の第1後輪50(
図2の第1後輪50R)のホイール内とに、それぞれ設けられている。
【0022】
第2後輪55は、後述する理由から第1後輪50に対して所定間隔だけ前側に配置されており、車体の左側及び右側に接続された一対の車輪である。第2後輪55は、駆動輪であり、第2駆動モータ57によって駆動される。なお、第2後輪55の第2軸(回転軸)も、後述するサスペンション機構によって支えられている。
【0023】
第2駆動モータ57は、一対の第2後輪55の各々に設けられており、第2後輪55を独立して回転させる。第2駆動モータ57は、左側の第2後輪55(
図2の第2後輪55L)のホイール内と、右側の第2後輪55(
図2の第2後輪55R)のホイール内とに、それぞれ設けられている。
【0024】
車両1においては、荷室30の床面32が低くなっており、床面32は、第1後輪50及び第2後輪55のホイールハウスの上面59よりも低い。本実施形態では、荷室30への乗降のし易さ等の観点から荷室30の低床化を実現すべく、床面32は第1後輪50及び第2後輪55の中心よりも低くなっている。これにより、乗員は、1ステップで荷室30に乗降できる。
【0025】
ところで、一般のタイヤでは1輪で支持出来る荷重に限界があり、トラック等のような重量車で許容荷重が不足する場合には1輪にかかる荷重を分散する為にダブルタイヤが用いられている。しかし、車両1において、ダブルタイヤを用いると、床面32の幅(具体的には、後輪の左右のホイールハウスの間の空間)が狭くなってしまい、床面32を低くするメリットを活かせない。また、車両1がトラック等の重量車である場合には、第1後輪50及び第2後輪55の軸を支えるサスペンション機構は、高荷重に耐える機構が望ましい。高荷重に耐えるサスペンションとしてはバネ乗数とストローク量の背反が少ない板バネを用いる為に車軸懸架式が通常採用されるが、この場合、車軸と車体フレーム10が交差するため、荷室30の床面32を低くすることができない。
【0026】
これに対して、本実施形態では、詳細は後述するが、独立懸架式のサスペンションを用いて、高荷重に耐えつつ荷室30の低床化を実現している。また、本実施形態では、第1後輪50と第2後輪55を前後方向に配置しているので、タイヤの許容荷重を増やす目的でダブルタイヤを用いる場合に比べてホイールハウスの車幅方向の長さを小さくでき、ホイールハウスの間の距離を大きく確保できる。これにより、例えば、荷室30内でホイールハウスの間に台車が通ることができ、作業性が向上する。
【0027】
<サスペンション機構の構成>
本実施形態に係るサスペンション機構として、第1実施例及び第2実施例を挙げて説明する。
【0028】
(第1実施例)
図2は、第1実施例に係るサスペンション機構100の構成を説明するための模式図である。
サスペンション機構100は、
図2に示すように一対あり、左側の第1後輪50L及び第2後輪55Lの軸を支えるサスペンション機構100Lと、右側の第1後輪50R及び第2後輪55Rの軸を支えるサスペンション機構100Rとである。サスペンション機構100L及びサスペンション機構100Rは、独立懸架式のサスペンションであり、車体フレーム10と交差しない位置に配置されている。
【0029】
車体フレーム10は、前後方向に延びている一対のサイドメンバー12と、車幅方向に延びているクロスメンバー14を有する。サスペンション機構100L、100Rは、サイドメンバー12よりも車幅方向の外側に位置している。
【0030】
サスペンション機構100Lとサスペンション機構100Rは同じ構成であるので、以下では、サスペンション機構100Lを例に挙げて説明する。サスペンション機構100Lは、
図2に示すように、第1アーム部110と、第2アーム部115と、支持軸120と、第1スプリング部材130と、第2スプリング部材135と、軸受け140と、第1ダンパー部150と、第2ダンパー部155を有する。
【0031】
第1アーム部110は、第1後輪50Lの第1軸(不図示)と連結されており、長手方向が車両1の前後方向に延びている。第1アーム部110の一端部は、前後方向において第1後輪50Lよりも前側に位置し、第1アーム部110の他端部は、第1後輪50Lの軸(不図示)よりも後ろ側に位置する。
【0032】
第2アーム部115は、第2後輪55Lの第2軸(不図示)と連結されており、長手方向が車両1の前後方向に延びている。第2アーム部115の一端部は、前後方向において第2後輪55Lよりも後ろ側に位置し、第2アーム部115の他端部は、第2後輪55Lの軸(不図示)よりも前側に位置する。
【0033】
第1アーム部110と第2アーム部115は、別部材から成る。このため、第1アーム部110と第2アーム部115は、それぞれ支持軸120周りに独立して回動する。また、第1アーム部110及び第2アーム部115は、サイドメンバー12の車幅方向の外側に前後方向に沿って配置されている。このため、第1アーム部110及び第2アーム部115が車体フレーム10のサイドメンバー12と交差しないため、車体フレーム10上に設けられる荷室30の床面32を低くできる。
【0034】
支持軸120は、第1アーム部110の一端部と第2アーム部115の一端部とを連結している。支持軸120は、第1アーム部110の長手方向の一端部と、第2アーム部115の長手方向の一端部とを共に、車体フレーム10に対して回動可能に支持させる。このため、第1アーム部110及び第2アーム部115は、第1後輪50や第2後輪55に衝撃が作用する際に、支持軸120周りに回動する。なお、支持軸120は、車体フレーム10(例えば、サイドメンバー12)に支持されている。
【0035】
第1スプリング部材130は、第1アーム部110の長手方向の他端部と車体の間に設けられている。第1スプリング部材130は、ここではコイルスプリングである。第1スプリング部材130が第1アーム部110の他端部に位置する場合には、一端部に位置する支持軸120と第1スプリング部材130の距離を長くすることができる。特に、本実施形態では、第1アーム部110の長さが第1後輪50の直径よりも大きいので、第1スプリング部材130を支持軸120から後輪50の軸(不図示)を超えて離すことができる。これにより、後輪50Lの軸(不図示)には第1スプリング部材130として用いるコイルスプリングのバネ乗数にレバー比を加える事が出来る為、実効バネ乗数を高くし、ストロークを大きくできるので、第1スプリング部材130が高荷重に耐えることができる。
【0036】
図3は、第1スプリング部材130の配置を説明するための模式図である。第1スプリング部材130は、
図3に示すように、鉛直方向に沿って配置されている。第1スプリング部材130の一端は、第1アーム部110側に位置し、第1スプリング部材130の他端は、車体(具体的には、ホイールハウスの上面59)側に位置している。
【0037】
第2スプリング部材135は、第2アーム部材15の長手方向の他端部と車体の間に設けられている。第2スプリング部材135は、ここではコイルスプリングである。第2スプリング部材135が第2アーム部115の他端部に位置する場合には、一端部に位置する支持軸120と第2スプリング部材135の距離を長くすることができる。特に、本実施形態では、第2アーム部115の長さが第2後輪55の直径よりも大きいので、第2スプリング部材135を支持軸120から第2後輪55の軸(不図示)を超えて離すことができる。これにより、第2後輪55Lの軸(不図示)には第2スプリング部材135として用いるコイルスプリングのバネ乗数にレバー比を加える事が出来る為、実効バネ乗数を高くし、ストロークを大きくできるので、第2スプリング部材135が高荷重に耐えることができる。なお、上記では、第1スプリング部材130及び第2スプリング部材135がコイルスプリングであることとしたが、これに限定されず、例えばエアスプリングであってもよい。
【0038】
図4は、第1スプリング部材130及び第2スプリング部材135の動きを説明するための模式図である。
図4(a)に示すように車両1が平坦な路面を走行する際には、第1スプリング部材130及び第2スプリング部材135は、伸縮しない。これに対して、
図4(b)に示すように第2後輪55が路面の凸部に乗り上げる際には、第2スプリング部材135が縮む。前述したように、第1アーム部110と第2アーム部115が独立して回動するので、第2スプリング部材135が縮んでも、第1スプリング部材130は伸縮しない。すなわち、第1スプリング部材130と第2スプリング部材135は、独立して伸縮する。
【0039】
軸受け140は、支持軸120を支持するベアリングである。軸受け140は、
図2に示すように、第1アーム部110の一端部と第2アーム部115の一端部に設けられている。具体的には、第1アーム部110の一端部に軸受け140が2つ設けられ、第2アーム部115の一端部に軸受け140が2つ設けられている。ここでは、第2アーム部115に作用する荷重が大きいと想定されるため、第2アーム部115に設けられた軸受け140が外側に位置している。第1アーム部110の作用する荷重が大きい場合には、第1アーム部110に設けられる軸受け140を外側に配置してもよい。
【0040】
軸付け140が支持軸120を支持する場合には、ブッシュが支持軸120を支持する際に発生する問題を解消できる。ブッシュが支持軸120を支持する場合には、車両1の旋回時にブッシュが撓むことで、後輪が外側を向くことで、オーバーステアが発生する。これに対して、軸受け140を用いた場合には、ブッシュの撓みに起因するオーバーステアの発生を防止できる。
【0041】
また、軸受け140を用いた場合には、ブッシュを用いた場合に比べて、第1アーム部110及び第2アーム部115がスムーズに回動しやすくなる。特に、第1後輪50や第2後輪55内に第1駆動モータ52及び第2駆動モータ57が配置される構成の場合には、高イナーシャによるジャイロ効果で第1アーム部110及び第2アーム部115の動きが悪くなりやすいが、軸受け140を用いることで第1アーム部110及び第2アーム部115の動きの悪化を抑制できる。
【0042】
第1ダンパー部150は、
図3に示すように、第1スプリング部材130の同軸上を貫通するように配置されている。第1スプリング部材130の一端側の第1ダンパー部150は、第1アーム部110と接合し、第1スプリング部材130の他端側の第1ダンパー部150は、車体(例えば、ホイールハウスの上面59)と接合している。第1アーム部110の一端部にブッシュを用いた場合には、軸受け140の場合に比べてブッシュのたわみにより第1アーム部110の振れが発生しうるが、本実施形態のように第1ダンパー部150を設けることによって、第1アーム部110の振れを抑制できる。
【0043】
第2ダンパー部155は、第1ダンパー部150と同様に、第2スプリング部材135の同軸上を貫通するように配置されている。第2スプリング部材135の一端側の第2ダンパー部155は、第2アーム部115と接合し、第2スプリング部材135の他端側の第2ダンパー部155は、車体(例えば、ホイールハウスの上面59)と接合している。第2ダンパー部155を設けることによって、第1ダンパー部150と同様に、第2アーム部115の振れを抑制できる。
【0044】
ところで、上述した独立懸架式のサスペンション機構100を用いることで、荷室30を低床化しつつ、例えばバッテリーやインバータ等を荷室30の下に配置することが可能となる。
図2では、第1駆動モータ52及び第2駆動モータ57(
図1)に電力を供給するバッテリー190が、車幅方向においてサスペンション機構100Lとサスペンション機構100Rの間に位置している。前述したように、車体フレーム10のサイドメンバー12と交差する部材がないので、一対のサイドメンバー12の間に、大型のバッテリー190を配置することが可能となる。
【0045】
(第2実施例)
図5は、第2実施例に係るサスペンション機構100の構成を説明するための模式図である。第2実施例の第1アーム部110及び第2アーム部115と、支持軸120の構成が、第1実施例の構成と異なる。それ以外の構成は、第1の実施例と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0046】
第1実施例では、第1アーム部110と第2アーム部115が、別々の部材であり、支持軸120に対して独立して回動することとした。これに対して、第2実施例では、第1アーム部110と第2アーム部115が、それぞれアーム部材170の一部を成している。支持軸120は、アーム部材170の中央を支持する。このため、第2実施例では、第1アーム部110及び第2アーム部115は、支持軸120周りに一体になって回動する。
【0047】
第2実施例の支持軸120は、車体フレーム10(例えば、サイドメンバー12)に固定されたブラケット175に設けられている。第1アーム部110と第2アーム部115が一体となっているので、第2実施例では、2つの支持軸120のみでアーム部材170を支持する。
【0048】
図6は、第1スプリング部材130及び第2スプリング部材135の動きを説明するための模式図である。
図6(a)に示すように車両1が平坦な路面を走行する際には、第1スプリング部材130及び第2スプリング部材135は、伸縮しない。これに対して、
図6(b)に示すように第2後輪55が路面の凸部に乗り上げる際には、第2スプリング部材135が縮む。第1アーム部110と第2アーム部115が一体として回動するので、第1スプリング部材130が縮むと、第2スプリング部材135が伸びる。
【0049】
<本実施形態における効果>
上述した実施形態のサスペンション機構100(100L、100R)は、独立懸架式のサスペンションであり、前後方向に延びている第1アーム部110及び第2アーム部115と、第1アーム部110の一端部と第2アーム部115の一端部とを支持する支持軸120と、第1アーム部110及び第2アーム部115の他端部と車体の間に設けられた第1スプリング部材130及び第2スプリング部材135を有する。
これにより、第1アーム部110及び第2アーム部115が車体フレーム10のサイドメンバー12と交差しないので、荷室30の低床化を実現できる。また、第1スプリング部材130及び第2スプリング部材135が支持軸120から離れた位置に配置されているため、第1スプリング部材130及び第2スプリング部材135のバネ乗数にレバー比を加える事が出来る為、実効バネ乗数を高くし、この結果、車両総重量の重い車両の高荷重に耐えることができる。
【0050】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0051】
1 車両
10 車体フレーム
30 荷室
50 第1後輪
52 第1駆動モータ
55 第2後輪
57 第2駆動モータ
100 サスペンション機構
110 第1アーム部
115 第2アーム部
120 支持軸
130 第1スプリング部材
135 第2スプリング部材
140 軸受け
150 第1ダンパー部
155 第2ダンパー部
【手続補正書】
【提出日】2022-11-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム上に荷室が設けられた車両であって、
前記車両の前後方向において所定間隔で配置された一対の第1後輪及び第2後輪の各々に設けられ、前記第1後輪及び前記第2後輪を独立して回転させる駆動モータと、
前記第1後輪の第1軸及び前記第2後輪の第2軸を支える一対のサスペンション機構と、
を備え、
前記車体フレームと前記荷室の床面とは、上下方向において前記第1後輪及び前記第2後輪の中心よりも低く位置しており、
前記サスペンション機構は、
前記第1後輪の前記第1軸と連結されており、長手方向が前記前後方向に延びている第1アーム部と、
前記前後方向において前記第1後輪よりも前側の前記第2後輪の前記第2軸と連結されており、長手方向が前記前後方向に延びている第2アーム部と、
前記第1アーム部の前記長手方向の一端部と、前記第2アーム部の前記長手方向の一端部とを共に、前記車体フレームに対して回動可能に支持させる支持軸と、
前記第1アーム部の、前記前後方向において前記第1後輪よりも後側の前記長手方向の他端部と、車体の間に設けられた第1スプリング部材と、
前記第2アーム部の、前記前後方向において前記第2後輪よりも前側の前記長手方向の他端部と、前記車体の間に設けられた第2スプリング部材と、
を有し、
前記第1スプリング部材及び前記第2スプリング部材は、鉛直方向に沿って配置されたコイルスプリングである、車両。
【請求項2】
前記第1アーム部と前記第2アーム部は、それぞれ前記支持軸周りに独立して回動する、
請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記第1アーム部及び前記第2アーム部は、前記支持軸周りに一体になって回動する、
請求項1に記載の車両。
【請求項4】
前記第1アーム部の前記長手方向の長さは、前記第1後輪の直径よりも大きく、
前記第2アーム部の前記長手方向の長さは、前記第2後輪の直径よりも大きく、
前記第1スプリング部材及び前記第2スプリング部材は、鉛直方向に沿って配置されたコイルスプリングである、
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両。
【請求項5】
前記サスペンション機構は、
前記第1スプリング部材の両端側を、前記第1アーム部の前記他端部及び前記車体に接合する第1ダンパー部と、
前記第2スプリング部材の両端側を、前記第2アーム部の前記他端部及び前記車体に接合する第2ダンパー部と、を更に有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の車両。
【請求項6】
前記第1アーム部の前記一端部及び前記第2アーム部の前記一端部に設けられ、前記支持軸を支持する軸受けを更に備える、
請求項1から5のいずれか1項に記載の車両。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム上に荷室が設けられた車両であって、
前記車両の前後方向において所定間隔で配置された一対の第1後輪及び第2後輪の各々に設けられ、前記第1後輪及び前記第2後輪を独立して回転させる駆動モータと、
前記第1後輪の第1軸及び前記第2後輪の第2軸を支える一対のサスペンション機構と、
を備え、
前記車体フレームと前記荷室の床面とは、上下方向において前記第1後輪及び前記第2後輪の中心よりも低く位置しており、
前記サスペンション機構は、
前記第1後輪の前記第1軸と連結されており、長手方向が前記前後方向に延びている第1アーム部と、
前記前後方向において前記第1後輪よりも前側の前記第2後輪の前記第2軸と連結されており、長手方向が前記前後方向に延びている第2アーム部と、
前記第1アーム部の前記長手方向の一端部と、前記第2アーム部の前記長手方向の一端部とを共に、前記車体フレームに対して回動可能に支持させる支持軸と、
前記第1アーム部の、前記前後方向において前記第1後輪よりも後側の前記長手方向の他端部と、車体の間に設けられた第1スプリング部材と、
前記第2アーム部の、前記前後方向において前記第2後輪よりも前側の前記長手方向の他端部と、前記車体の間に設けられた第2スプリング部材と、
を有し、
前記第1スプリング部材及び前記第2スプリング部材は、鉛直方向に沿って配置されたコイルスプリングであり、
前記第1アーム部の前記一端部及び前記第2アーム部の前記一端部に設けられ、前記支持軸の軸方向の両側を支持する軸受けを更に備える、車両。
【請求項2】
前記第1アーム部と前記第2アーム部は、それぞれ前記支持軸周りに独立して回動する、
請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記第1アーム部及び前記第2アーム部は、前記支持軸周りに一体になって回動する、
請求項1に記載の車両。
【請求項4】
前記第1アーム部の前記長手方向の長さは、前記第1後輪の直径よりも大きく、
前記第2アーム部の前記長手方向の長さは、前記第2後輪の直径よりも大きく、
前記第1スプリング部材及び前記第2スプリング部材は、鉛直方向に沿って配置されたコイルスプリングである、
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両。
【請求項5】
前記サスペンション機構は、
前記第1スプリング部材の両端側を、前記第1アーム部の前記他端部及び前記車体に接合する第1ダンパー部と、
前記第2スプリング部材の両端側を、前記第2アーム部の前記他端部及び前記車体に接合する第2ダンパー部と、を更に有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の車両。