(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047691
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】ステアリング支持構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20230330BHJP
【FI】
B62D25/08 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156754
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】川村 善明
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203BB35
3D203BB37
3D203BB39
3D203CA23
3D203CA29
3D203CA34
3D203CA37
3D203CA53
3D203CA73
3D203CB03
3D203CB09
3D203CB19
3D203DA13
3D203DA62
(57)【要約】
【課題】車両前方から入力された衝撃荷重のエネルギーを段階的に吸収する。
【解決手段】ステアリング支持構造100において、横強度部材10を車体パネル1に連結する連結部材20は、ステアリングコラム支持ハンガ30の上方の剛性保持部21と全体変形部22と前側変形部23とを含む。全体変形部22は、前接続部221、第1後接続部22a及び第2後接続部22bを経由するように周回して車両幅方向に開口した構造体をなす。前側変形部23は、主縦部材231と全体変形部22のうちの主縦部材231よりも車両前方の部分とにより車両幅方向に開口した構造体をなす。全体変形部22の車両下方の部分は第1後接続部22aにて屈曲している。前側変形部23は前接続部221と主縦部材231の上端との間の車両前後方向に直線的に延びた延伸部222cに脆弱部232を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方側の車体パネルの後方で車両幅方向に延在する横強度部材と、該横強度部材を前記車体パネルに連結する連結部材と、該連結部材の下方にて前記横強度部材から車両前方に延びるステアリングコラム支持ハンガと、を含む、ステアリング支持構造であって、
前記連結部材は、
前記横強度部材から車両前方に延び前記ステアリングコラム支持ハンガの上方に位置する剛性保持部と、
前記車体パネルに接続される前接続部と前記ステアリングコラム支持ハンガに接続される第1後接続部と前記剛性保持部に接続される第2後接続部とを有し、前記前接続部、前記第1後接続部及び前記第2後接続部を経由するように周回して車両幅方向に開口した構造体をなす、全体変形部と、
前記全体変形部の内側で車両上下方向に延在する主縦部材を有し、前記主縦部材と前記全体変形部のうちの前記主縦部材よりも車両前方の部分とにより車両幅方向に開口した構造体をなす、前側変形部と、
を含み、
前記全体変形部における車両下方の部分は、前記第1後接続部において屈曲した形状で延びており、
前記全体変形部における車両上方の部分のうちの少なくとも前記前側変形部の一部を構成する部分は、車両前後方向に直線的に延びており、
前記主縦部材は、前記全体変形部における前記前接続部と前記第1後接続部との間の所定の位置から上方に延びており、
前記前側変形部は、前記前接続部と前記主縦部材の上端との間の車両前後方向に直線的に延びた延伸部に脆弱部を有している、
ことを特徴とするステアリング支持構造。
【請求項2】
前記脆弱部は、前記延伸部の途中の部分を車両下方に凹んだ円弧状に湾曲させてなる円弧形状に形成されている、請求項1に記載のステアリング支持構造。
【請求項3】
前記連結部材は、前記主縦部材よりも車両後方において前記全体変形部の内側で車両上下方向に延在する少なくとも一つの副縦部材を有し、
前記前側変形部における前記主縦部材を設けることによって形成された開口部の開口面積は、前記全体変形部における前記少なくとも一つの副縦部材を設けることによって、前記前側変形部の前記開口部よりも車両後方に形成された開口部のそれぞれの開口面積よりも大きく設定されている、請求項1又は2に記載のステアリング支持構造。
【請求項4】
前記主縦部材と前記延伸部とのなす角度は鋭角に設定されており、
前記主縦部材と前記延伸部との接続箇所は、前記脆弱部の後端近傍に設定されている、請求項1~3のいずれか一つに記載のステアリング支持構造。
【請求項5】
前記全体変形部における車両下方の部分は、前記第1後接続部において鈍角に屈曲している、請求項1~4のいずれか一つに記載のステアリング支持構造。
【請求項6】
前記全体変形部における車両上方の部分は、前記前接続部から前記第1後接続部の真上に対応する中間点まで車両前後方向に直線的に延びて、前記中間点から前記剛性保持部まで車両後方に下り勾配に傾斜している、請求項1~5のいずれか一つに記載のステアリング支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の室内の前側上部に設けられ、ステアリングコラム等を支持するためのステアリング支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両前方のダッシュパネル等の車体パネルの後方では、ステアリングコラム等を支持するための筒状の横強度部材が車両幅方向に延在している。横強度部材を含むステアリング支持構造(ステアリングサポートメンバとも言う)では、ステアリングコラム支持ハンガが横強度部材から車両前方に延びており、ステアリングコラムはステアリングコラム支持ハンガを介して支持されている。横強度部材と車体パネルとの間には、連結部材が設けられ、横強度部材と車体パネルとが連結部材を介して連結されている。
【0003】
ステアリング支持構造の一例として、特許文献1に開示された剛性支持部構造が知られている。剛性支持部構造は、車室前壁の車両後方で車両幅方向に延びる車体強度部材と、車室前壁と車体強度部材とを連結する剛性支持体と、を有しており、剛性支持体における上部補強フランジ部には、切欠きからなる変形起点が設けられている。そして、剛性支持部構造では、車両前方から衝撃荷重が入力された場合には、剛性支持体が変形起点を起点として屈曲変形することで、衝撃荷重のエネルギーを吸収するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両室内の乗員に対する保護性能を向上させるためには、車両前方から入力された衝撃荷重のエネルギーを吸収する際に、エネルギーを徐々に(つまり段階的)に吸収することが求められ得る。少なくともこの点において、特許文献1の剛性支持部構造は改善の余地がある。
【0006】
そこで、本発明は、車両前方から入力された衝撃荷重のエネルギーを段階的に吸収することができるステアリング支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の一態様によると、車両前方側の車体パネルの後方で車両幅方向に延在する横強度部材と、該横強度部材を前記車体パネルに連結する連結部材と、前記連結部材の下方にて前記横強度部材から車両前方に延びるステアリングコラム支持ハンガと、を含む、ステアリング支持構造が提供される。このステアリング支持構造において、前記連結部材は、剛性保持部と全体変形部と前側変形部と、を含む。前記剛性保持部は、前記横強度部材から車両前方に延び前記ステアリングコラム支持ハンガの上方に位置する。前記全体変形部は、前記車体パネルに接続される前接続部と前記ステアリングコラム支持ハンガに接続される第1後接続部と前記剛性保持部に接続される第2後接続部とを有し、前記前接続部、前記第1後接続部及び前記第2後接続部を経由するように周回して車両幅方向に開口した構造体をなす。前記前側変形部は、前記全体変形部の内側で車両上下方向に延在する主縦部材を有し、前記主縦部材と前記全体変形部のうちの前記主縦部材よりも車両前方の部分とにより車両幅方向に開口した構造体をなす。そして、前記全体変形部における車両上方の部分のうちの前記前側変形部の一部を構成する部分は車両前後方向に直線的に延びており、前記全体変形部における車両下方の部分は前記第1後接続部において屈曲した形状で延びており、前記主縦部材は前記全体変形部における前記前接続部と前記第1後接続部との間の所定の位置から上方に延びている。前記前側変形部は、前記前接続部と前記主縦部材の上端との間の車両前後方向に直線的に延びた延伸部に脆弱部を有している。
【発明の効果】
【0008】
前記一態様による前記ステアリング支持構造では、前記全体変形部と前記前側変形部はいずれも車両幅方向に開口した構造体をなしている。このため、各変形部を、(1)通常時には、十分な剛性を確保しつつも、(2)衝撃荷重が車両前方から車両後方に向かって前記前接続部に入力された場合には、衝撃荷重の入力方向についての変形を許容する強度を有するように容易に形成することができる。そして、前記全体変形部における車両上方の部分のうちの前記前側変形部の一部を構成する部分は車両前後方向に直線的に延びているが、前記全体変形部における車両下方の部分は前記第1後接続部において屈曲した形状で延びているため、前記前接続部と前記第1後接続部との間の部分は車両後方に向かって下り勾配で傾斜している。したがって、衝撃荷重が前記前接続部に入力されると、前記全体変形部では、前記ステアリングコラム支持ハンガや前記剛性保持部により車両後方から強固に支持された状態で、主に前記第1後接続部を起点とした折れ変形が誘発される。その結果、前記全体変形部は、衝撃荷重が入力されると、前記前接続部が車両上方且つ車両後方に移動するように、全体的に変形し得る構造になっている。一方、前記前側変形部では、衝撃荷重が伝わり易い車両前後方向に直線的に延びた前記延伸部に、前記脆弱部が設けられているため、主に前記脆弱部を起点とした変形が前記第1後接続部の折れ変形よりも積極的に誘発される。
【0009】
ここで、前記前接続部に入力された衝撃荷重は、前記脆弱部と前記第1後接続部にそれぞれ伝わる。その結果、衝撃荷重が入力された後の初期の段階では、前記脆弱部を起点とした前記前側変形部の変形(以下では適宜に前側変形という)と前記第1後接続部を起点とした前記全体変形部の全体的な変形(以下では適宜に全体変形という)が同時に生じており、前記前側変形部では、前側変形と全体変形とが重なり合って生じることになる。しかし、変形が進んだ弱い箇所に力が一気に流れ込む(つまり、集中荷重が起きる)という力学特性のため、前側変形がある程度進むと、全体変形を誘発していた力も前記脆弱部に流れ、前記前接続部に入力された衝撃荷重の大半が前記脆弱部に一気に流れ込むようになる。その結果、以降においては、全体変形は抑制されてほとんど生じなくなり、前側変形が支配的となる。前記連結部材は上記のような変形過程を経て変形するため、衝撃荷重が入力された後の初期の段階では、入力された衝撃荷重のエネルギーの一部は前側変形と全体変形の両方のためのエネルギーに消費されて急速に吸収され、その後、前側変形がある程度進んだところで、残りの衝撃荷重のエネルギーの大半が前側変形のためのエネルギーに消費されてゆっくりと吸収されるようになる。このように、前記前側変形部の変形(前側変形)は前記全体変形部の変形(全体変形)よりも時間的に長く続いており、各変形の継続時間の差により、入力された衝撃荷重のエネルギーが時間を掛けて徐々に、つまり段階的に吸収されることになる。
【0010】
このようにして、本発明は、車両前方から入力された衝撃荷重のエネルギーを段階的に吸収することができるステアリング支持構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るステアリング支持構造の連結部材を含む要部の車両幅方向から視た側面図である。
【
図5】前記連結部材の変形過程を説明するための概念図である。
【
図6】前記連結部材に入力された衝撃荷重のエネルギーの吸収過程を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
図1~
図4は本発明の一実施形態に係るステアリング支持構造100を説明するための図であり、
図1は車両幅方向から視た要部の側面図、
図2は車両上方から視た要部の上面図、
図3は車両前方から視た要部の斜視図、
図4は別の角度で視た要部の斜視図である。なお、
図1は
図3に示すA-A線断面図でもある。また、図において、矢印Fr方向は車両前後方向で車両前方を示し、矢印O方向は車両幅方向で車両外方を示し、矢印U方向は車両上下方向で車両上方を示している。
【0013】
[ステアリング支持構造の概要]
自動車等の車両の車両室は、
図1及び
図2に示すように、車両前方側においてダッシュパネル等の車体パネル1によって区画されている。車両前方側の車体パネル1の後方には、ステアリング支持構造100が設けられている。ステアリング支持構造100は、インストルメントパネル(図示省略)の内部に配置されており、このインストルメントパネルを支持するとともに、運転席側ではステアリングコラム(図示省略)等を支持している。
【0014】
ステアリング支持構造100は、
図1~
図4に示すように、横強度部材10と、連結部材20と、ステアリングコラム支持ハンガ30と、を備えている。連結部材20及びステアリングコラム支持ハンガ30は運転席側に設けられている。なお、ステアリング支持構造100は、ステアリングサポートメンバとも呼ばれる。
【0015】
横強度部材10は、車体パネル1の後方で車両幅方向に延在する部材である。横強度部材10は、車両幅方向の全体に亘って延在する、例えば、円筒状の金属パイプからなる。横強度部材10の車両幅方向の両端部は、図示範囲外の車体側部を構成するダッシュサイドパネルに固定される。
【0016】
横強度部材10における車両幅方向について運転席側(つまり、図示省略したステアリングコラム側)の部分の車両後方には、横強度部材10よりも短い矩形筒状の金属パイプからなる補強部材12が車両幅方向に延在している。補強部材12の車両幅方向の両端部は、横強度部材10から車両後方に張り出した後ブラケット13(
図3参照)に固定されている。
図3では、一方の後ブラケット13が示されており、他方の後ブラケット13は図示範囲外に位置しており示されていない。後ブラケット13は車両後方に向かって上がり勾配に傾斜した方向に延びている。矩形筒状の補強部材12は
図3に示すように後ブラケット13に合わせて傾いている。そして、横強度部材10及び補強部材12の下方には、二つの下ブラケット14,14が互いに車両幅方向に間隔をあけて配置されており、各下ブラケット14は横強度部材10と補強部材12の間を接続している。
【0017】
連結部材20は、横強度部材10を車体パネル1に連結する部材であり、鋼板からなるものである。連結部材20は、例えば、プレス成型により形成された複数の成形品が一体に溶接接合されてなる部材である。連結部材20は、横強度部材10の上部から車両前方に向かって張り出している。具体的には、連結部材20の車両前後方向の後端部は横強度部材10及び補強部材12に溶接接合されて固定(接続)され、連結部材20の車両前後方向の前端部は車体パネル1に適宜の締結具15(ここではボルト)によって締結されて固定(接続)されている。これにより、連結部材20は、横強度部材10及び補強部材12を車体パネル1に連結している。また、連結部材20は、後述するようにステアリングコラム支持ハンガ30にも溶接接合されて固定(接続)されている。連結部材20の詳しい構造については、後に詳述する。
【0018】
ステアリングコラム支持ハンガ30は、連結部材20の下方において横強度部材10から車両前方に延びる部材である。ステアリングコラム支持ハンガ30の下方には、ステアリングコラムが配置されている。ステアリングコラム支持ハンガ30は主にステアリングコラムをその上方から支持(保持)する高剛性の部材であり、ステアリングコラムを含む部材を強固に保持できるとともに車両前方から入力され得る衝突荷重に対して十分な剛性を有するように形成されている。
【0019】
ステアリングコラム支持ハンガ30は、例えば、鋼板からなり、車両下側に開口したU字断面を有したハンガ本体部31と、ハンガ本体部31の車両前方の開口を塞ぐハンガ前壁部32と、を有する。ハンガ前壁部32は、連結部材20の下側の後端角部(後述する第1後接続部22a)に接続して該後端角部を支持する傾斜面32aを有する。つまり、ステアリングコラム支持ハンガ30は連結部材20も支持している。ステアリングコラム支持ハンガ30の車両前後方向の後端部は横強度部材10に溶接接合され、ステアリングコラム支持ハンガ30の車両前後方向の前端部(ハンガ前壁部32)は連結部材20の下側の後端角部(第1後接続部22a)に溶接接合されている。そして、ステアリングコラム支持ハンガ30は、横強度部材10の前部から車両前方に向かって下り勾配に傾斜する方向に延びている。また、車両幅方向で視ると、横強度部材10が補強部材12及び後ブラケット13とステアリングコラム支持ハンガ30との間に位置している。
【0020】
[車体後部構造の詳細]
ここで、車両室内の乗員に対する保護性能を向上させるためには、車両前方から入力され得る衝撃荷重のエネルギーを吸収する際に、このエネルギーを、時間を掛けて徐々に(つまり段階的)に吸収することが求められ得る。これに対し、本実施形態に係るステアリング支持構造100では、以下の構造を有している。
【0021】
連結部材20は、主に衝撃荷重による変形の観点で区分すると、
図1に示すように、剛性保持部21と、全体変形部22と、前側変形部23と、を有している。
図1では、全体変形部22の範囲が二点鎖線で示され、前側変形部23の範囲が一点鎖線で示されている。また、連結部材20は、複数の成形品を溶接接合してなるものであり、接合前の成形品の単位の観点で区分すると、車両前方(車体パネル1)から車両後方に向かう衝撃荷重が入力される先端パッチ20Aと、連結部材20における車両上方の部分を構成し先端パッチ20Aから横強度部材10及び補強部材12まで延在する上リーンフォースメント20Bと、連結部材20における車両下方の部分を構成する下リーンフォースメント20Cとからなる部材である。以下では、変形の観点で区分した要素を主体に説明する。
【0022】
剛性保持部21は、横強度部材10から車両前方に延びステアリングコラム支持ハンガ30の上方に位置している。剛性保持部21は、車両前方から入力され得る衝突荷重に対して十分な剛性を有するように形成されており、横強度部材10及び補強部材12に溶接接合される連結部材20の後端部を構成する。
【0023】
剛性保持部21は、例えば、平板状の板部21aと板部21aの車両幅方向の両端からそれぞれ下方に延びるフランジ部21bとを有する。板部21aは車両後方ほど車両幅方向に幅広に形成され、フランジ部21bは車両後方ほど車両上下方向に幅広に形成されている。板部21aは補強部材12の上面から車両前方に上り勾配に傾斜して延びている。
【0024】
全体変形部22は、車体パネル1に接続される前接続部221と、ステアリングコラム支持ハンガ30に接続される第1後接続部22aと、剛性保持部21に接続される第2後接続部22bとを有する。全体変形部22は、前接続部221、第1後接続部22a及び第2後接続部22bを経由するように周回して車両幅方向に開口した構造体をなしている。全体変形部22は車体パネル1と剛性保持部21とステアリングコラム支持ハンガ30との間の連結部材20における大半の部分を構成している。全体変形部22の車両後方には、衝撃荷重に耐え得る剛性保持部21及びステアリングコラム支持ハンガ30が位置しており、全体変形部20の後端が剛性保持部21及びステアリングコラム支持ハンガ30によって支持されている。
【0025】
前側変形部23は、全体変形部22の内側で車両上下方向に延在する主縦部材231を有し、主縦部材231と全体変形部22のうちの主縦部材231よりも車両前方の部分とにより車両幅方向に開口した構造体をなしている。つまり、前側変形部23は連結部材20のうちの前接続部221を含む前側の部分を構成しており、全体変形部22の前側の一部と主縦部材231とにより構成されている。
【0026】
このように、ステアリング支持構造100では、前接続部221、剛性保持部21及びステアリングコラム支持ハンガ30は変形抑制部(非変形部)として比較的に高剛性に形成されている。そして、剛性保持部21及びステアリングコラム支持ハンガ30と前接続部221との間には、通常時には十分な剛性を有しつつ衝撃荷重が入力された場合に変形し易い変形部(前側変形部23を含む全体変形部22)が配置されている。
【0027】
ここで、全体変形部22における車両上方の部分(222)のうちの前側変形部23の一部を構成する部分は車両前後方向に直線的に延びており、全体変形部22における車両下方の部分(223)は第1後接続部22aにおいて車両下方に凸に屈曲した形状で延びている。以下では、全体変形部22における車両上方の部分を適宜に上リーンフォースメント本体222といい、全体変形部22における車両下方の部分を適宜に下リーンフォースメント本体223という。
【0028】
全体変形部22において、前接続部221は、例えば、車両後方に開口した箱形に形成されており、衝撃荷重が入力される先端パッチ20Aを構成している。前接続部221は車体パネル1に当接する平坦な当接面221aを有している。当接面221aは車両上下方向及び車両幅方向に延びており、衝突荷重が車両前方から車両後方に向かって入力された場合に、衝突荷重が前接続部221の当接面221aに対して概ね垂直に入力される。前接続部221の当接面221aの部分には、ボルトからなる締結具15が螺合するネジ部が形成されており、車体パネル1には、締結具15が挿通される孔が開口されている。締結具15が前接続部221に螺合した状態で、車体パネル1が締結具15の頭部と前接続部221の当接面221aとの間に挟持されることで、前接続部221が車体パネル1に締結具15によって締結されて固定(接続)される。
【0029】
上リーンフォースメント本体222は、前接続部221から剛性保持部21の前端まで延在しており、剛性保持部21とともに上リーンフォースメント20Bを構成している。上リーンフォースメント本体222のうちの前側変形部23の一部を構成する部分は車両前後方向に直線的に延びている。そして、全体変形部22における剛性保持部21に接続される第2後接続部22bは、上リーンフォースメント本体222の後端の部分である。
【0030】
上リーンフォースメント本体222は、剛性保持部21と一体にプレス成型により形成されており、剛性保持部21と連続して車両前後方向に延びている。上リーンフォースメント本体222の前端部は、前接続部221内に組み込まれた状態で前接続部221の上側壁の内面に溶接接合されている。上リーンフォースメント本体222は、例えば、平板状の上板部222aと上板部222aの車両幅方向の両端からそれぞれ下方に延びる上フランジ部222bを有する。上板部222aは剛性保持部21の板部21aよりも車両幅方向に小さい所定幅で形成され板部21aと連続して延び、上フランジ部222bは剛性保持部21のフランジ部21bに連続して延びている。
【0031】
下リーンフォースメント本体223は、上リーンフォースメント本体222の下方に位置し前接続部221から第1後接続部22aを経由して第2後接続部22bまで延在しており、下リーンフォースメント20Cの一部を構成している。下リーンフォースメント本体223は、第1後接続部22aにおいて車両下方に凸に屈曲した形状で延びている。つまり、全体変形部22におけるステアリングコラム支持ハンガ30に接続される第1後接続部22aは、下リーンフォースメント本体223における車両下方に凸に屈曲した角部である。
【0032】
下リーンフォースメント本体223の前端部は、前接続部221内に組み込まれた状態で前接続部221の下側壁の内面に溶接接合されている。そして、下リーンフォースメント本体223の後端部は、上リーンフォースメント本体222の後端の部分(第2後接続部22b)に溶接接合されている。下リーンフォースメント本体223は、例えば、平板状の下板部223aと下板部223aの車両幅方向の両端からそれぞれ上方に延びる下フランジ部223bとを有する。下フランジ部223bのうちの第1後接続部22aよりも第2後接続部22b側の部分は、第2後接続部22b側に向かうほど車両上下方向に幅広に形成されている。
【0033】
前側変形部23において、主縦部材231は、全体変形部22における前接続部221と第1後接続部22aとの間の所定の位置から上方に延びている。具体的には、主縦部材231は、下リーンフォースメント本体223と一体に形成されている。そして、主縦部材231は、下リーンフォースメント本体223の車両幅方向の両側の各下フランジ部223bのうちの第1後接続部22aよりも前側の所定の位置からそれぞれ上方に延びて上リーンフォースメント本体222の上フランジ部222bに溶接接合されている。
【0034】
前側変形部23は、前接続部221と主縦部材231の上端との間の車両前後方向に直線的に延びた延伸部222cに脆弱部232を有している。延伸部222cは、上リーンフォースメント本体222のうちの前側の部分(換言すると、全体変形部22における車両上方の部分のうちの前側の部分)である。
【0035】
本実施形態では、脆弱部232は、延伸部222cの途中の部分を車両下方に凹んだ円弧状に湾曲させてなる円弧形状に形成されている。つまり、脆弱部232は、車両幅方向視において、延伸部222cの車両前後方向の所定の位置において上板部222aを下方に滑らかに円弧状に湾曲させることにより形成されている。
【0036】
ここで、本実施形態では、連結部材20は、主縦部材231よりも車両後方において全体変形部22の内側で車両上下方向に延在する少なくとも一つの副縦部材233を有している。ここでは、車両幅方向の両側にそれぞれ一つの副縦部材233が設けられている。各副縦部材233は、下リーンフォースメント本体223と一体に形成されている。そして、各副縦部材233は、例えば、下フランジ部223bのうちの主縦部材231の下端と第1後接続部22aとの間の所定の位置から上方に延びて、上フランジ部222bに溶接接合されている。副縦部材233の上端は主縦部材231の上端と接続している。このように、主縦部材231及び副縦部材233が車両幅方向から視て全体変形部22の内側で延在するように設けられることによって、車両幅方向視で、車両前側から順に、第1開口部V1と、第2開口部V2と、第3開口部V3とが形成されている。以上のように構成された連結部材20において、下リーンフォースメント本体223と主縦部材231と副縦部材233とによって、下リーンフォースメント20Cが構成されている。また、下板部223aにおける少なくとも第1開口部V1の下方の部分に、貫通孔223cが開口されている(
図4参照)。
【0037】
そして、前側変形部23における主縦部材231を設けることによって形成された開口部(第1開口部V1)の開口面積は、全体変形部22における副縦部材233を設けることによって前側変形部23の開口部(第1開口部V1)よりも車両後方に形成された開口部(第2開口部V2及び第3開口部V3)のそれぞれの開口面積よりも大きく設定されている。
【0038】
本実施形態では、主縦部材231と延伸部222cとのなす角度である第1角度θ1は鋭角に設定されている。具体的には、第1角度θ1は、車両幅方向から視て、主縦部材231と延伸部222cの上板部222aとのなす角度である。そして、主縦部材231と延伸部222cとの接続箇所(接合箇所)Pは、脆弱部232の後端近傍に設定されている。接続箇所Pは車両前後方向に幅を有している。
【0039】
本実施形態では、全体変形部22における車両下方の部分である下リーンフォースメント本体223は、第1後接続部22aにおいて鈍角に屈曲している。具体的には、下リーンフォースメント本体223の下板部223aが車両幅方向から視て第1後接続部22aにおいて鈍角に屈曲しており、下板部223aにおける第1後接続部22aよりも車両前方側の部分と下板部223aにおける第1後接続部22aよりも車両後方側の部分とのなす角度である第2角度θ2は鈍角に設定されている。
【0040】
本実施形態では、全体変形部22における車両上方の部分である上リーンフォースメント本体222は、前接続部221から第1後接続部22aの真上に対応する中間点Mまで車両前後方向に直線的に延びて、中間点Mから剛性保持部21まで車両後方に下り勾配に傾斜している。つまり、上リーンフォースメント本体222における延伸部222cよりも後方の部分は車両後方にそのまま直線的に中間点Mまで延びている。この中間点Mは、副縦部材233よりも車両後方に位置している。そして、上リーンフォースメント本体222の上板部222aにおける中間点Mよりも車両後方の部分は、剛性保持部21の板部21aと同一の傾斜方向に傾斜している。
【0041】
ここで、ステアリングコラム等の保持や車両室内の乗員の保護のためには、車両前方から入力され得る衝撃荷重の全てのエネルギーをステアリング支持構造100よりも車両前方の部品の変形により吸収することが理想的である。しかし、衝撃荷重の全てのエネルギーが車両前方の部品の変形により吸収できず、車体パネル1(ダッシュパネル等)が車両後方に押し出される場合がある。この場合に、ステアリング支持構造100では、以下に説明するように、変形部(つまり、前側変形部23を含む全体変形部22)が変形することで、ステアリングコラムや横強度部材10に伝わる衝撃を抑制している。
【0042】
次に、本実施形態に係るステアリング支持構造100の連結部材20に車両前方から衝突荷重が入力された場合の連結部材20の変形過程及び衝撃荷重のエネルギーの吸収過程を
図1、
図5及び
図6等を参照して説明する。
図5は連結部材20の変形過程を説明するための概念図であり、
図6は連結部材20に入力された衝撃荷重のエネルギーの吸収過程を説明するための概念図である。
【0043】
図5では、衝撃荷重の入力前の通常時の連結部材20の輪郭D1が実線で示され、衝撃荷重が入力された後の初期の段階における変形した連結部材20の輪郭D2が破線で示され、初期の段階を経過してさらに変形した連結部材20の輪郭D3が破線で示されている。また、
図6において、横軸は衝撃荷重が入力された時点からの経過時間tを示し、縦軸は衝撃荷重の入力時(t=0)における入力エネルギーをE0とし、その後のエネルギーEの吸収量(減少量)を示している。つまり、縦軸の下側ほど、衝撃エネルギーの吸収量が大きいことを示している。また、
図6では、連結部材20におけるエネルギー吸収特性を示す曲線Cが実線で示されており、従来の連結部材におけるエネルギー吸収特性の一例を示す曲線C’が破線で示されている。
【0044】
ステアリング支持構造100では、全体変形部22と前側変形部23はいずれも車両幅方向に開口した構造体をなしているため、(1)通常時には、全体変形部22及び前側変形部23はいずれも十分な剛性を確保しつつも、(2)衝撃荷重が連結部材20の前接続部221に入力された場合には、全体変形部22及び前側変形部23はいずれも衝撃荷重の入力方向についての変形を許容するようになっている。そして、全体変形部22における車両上方の部分のうちの前側変形部23の一部を構成する部分は車両前後方向に直線的に延びているが、全体変形部22における車両下方の部分(上リーンフォースメント本体222)は第1後接続部22aにおいて屈曲した形状で延びているため、全体変形部22(下リーンフォースメント本体223)における前接続部221と第1後接続部22aとの間の部分は車両後方に向かって下り勾配で傾斜している。
【0045】
したがって、衝撃荷重が前接続部221に入力されると、
図5に破線D1で示すように、全体変形部22では、ステアリングコラム支持ハンガ30や剛性保持部21により車両後方から強固に支持された状態で、主に第1後接続部22aを起点とした折れ変形が誘発される。その結果、全体変形部22は、衝撃荷重が入力されると、前接続部221が車両上方且つ車両後方に移動するように、全体的に変形し得る構造になっている。一方、前側変形部23では、衝撃荷重が伝わり易い車両前後方向に直線的に延びた延伸部222cに、脆弱部232が設けられているため、主に脆弱部232を起点とした変形が第1後接続部22aの折れ変形よりも積極的に誘発されている。
【0046】
ここで、前接続部221に入力された衝撃荷重は、脆弱部232と第1後接続部22aにそれぞれ伝わる。その結果、衝撃荷重が入力された後の初期の段階(
図6ではt=0~t1の範囲)では、
図5に輪郭D2で示すように、脆弱部232を起点とした前側変形部23の変形(以下では適宜に前側変形という)と第1後接続部22aを起点とした全体変形部22の全体的な変形(以下では適宜に全体変形という)が同時に生じており、前側変形部23では、前側変形と全体変形とが重なり合って生じることになる。
【0047】
しかし、変形が進んだ弱い箇所に力が一気に流れ込む(つまり、集中荷重が起きる)という力学特性のため、前側変形がある程度進むと、全体変形を誘発していた力も脆弱部232に流れ、前接続部221に入力された衝撃荷重の大半が脆弱部232に一気に流れ込むようになる。その結果、以降(
図6ではt=t1~t2の範囲)においては、
図5に輪郭D3で示すように、全体変形は抑制されてほとんど生じなくなり、前側変形が支配的となる。
【0048】
連結部材20は上記のような変形過程を経て変形している。つまり、衝撃荷重が入力された初期の段階(t=0~t1)では、入力された衝撃荷重のエネルギーE0の一部は、
図5に輪郭D2で示すように前側変形と全体変形の両方のためのエネルギーに消費(変換)されて、
図6に示すように急速に吸収される。その後(t>t1)、前側変形がある程度進んだところで、残りの衝撃荷重のエネルギーの大半が、
図5に輪郭D3に示すように前側変形のためのエネルギーに消費(変換)されて、
図6に示すようにゆっくりと吸収されるようになる。このように、前側変形部23の変形(前側変形)は全体変形部22の変形(全体変形)よりも時間的に長く続いており(t=0~t2)、前側変形と全体変形の継続時間の差により、入力された衝撃荷重のエネルギーE0が時間を掛けて徐々に(段階的)に吸収されることになる。つまり、
図6において、初期の段階(t=0~t1)では、エネルギー吸収特性を示す曲線Cは時間tの経過とともに急峻な下がり勾配を示しているため、連結部材20はエネルギーEを急速に吸収していることが分かる。その後(t>t1)、曲線Cは時間tの経過とともに緩やかな勾配に移行しており、エネルギーEが時間t2でゼロになっているため、連結部材20はエネルギーEをゆっくりと時間を掛けて吸収している(漸減させている)ことが分かる。つまり、曲線Cでは、従来の曲線C’比べると、衝撃荷重が入力された時点(t=0)から、エネルギーEがゼロになる着地点(t=t2)へと、ゆっくりと移行するため、ステアリング支持構造100では、乗員にかかる負荷が小さくなっている。
【0049】
このように、ステアリング支持構造100は、車両前方から入力された衝撃荷重のエネルギーを段階的に吸収することができる。
【0050】
本実施形態では、脆弱部232は延伸部222cの途中の部分を車両下方に凹んだ円弧状に湾曲させてなる円弧形状に形成されている。これにより、脆弱部232を起点とした前側変形部23における前側変形が効果的に誘発されるため、段階的な変形が効果的に誘発される。また、脆弱部232を円弧形状に形成することによって、従来のような切欠きによる脆弱部で生じ得る顕著な応力集中を避けることができる。そのため、悪路等の路面走行時に生じ得る強い加振力によって、脆弱部232に亀裂が発生することを効果的に防止することができる。また、例えば、車両幅方向に延びるV字状に凹んだ横ビードにより脆弱部を形成した場合には、上リーンフォースメント20Bのフランジ部の成形の際に亀裂が生じる可能性があり、成形が困難になる可能性がある。これに対し、円弧形状の脆弱部232は亀裂を懸念することなく成形することができる。また、円弧形状の脆弱部232の円弧径のサイズを調整することで、前側変形の変形量のコントロールや成形性のコントロールが、例えば、V字状の横ビードからなる脆弱部等と比較すると容易になる。さらに、脆弱部232の円弧径のサイズの調整によって、前側変形のみの変形(
図6ではt>t1の範囲の変形)の継続時間をコントロールすることもできる。
【0051】
本実施形態では、前側変形部23の開口部(第1開口部V1)の開口面積は、全体変形部22における第1開口部V1よりも車両後方の開口部(第2開口部V2及び第3開口部V3)のそれぞれの開口面積よりも大きく設定されている。これにより、前側変形部23の剛性が全体変形部22における前側変形部23よりも後方の部分の剛性よりも低下し、前側変形部23における前側変形を効果的に誘発することができる。
【0052】
本実施形態では、主縦部材231と延伸部222cとのなす角度である第1角度θ1は鋭角に設定され、主縦部材231と延伸部222cとの接続箇所(接合箇所)Pは脆弱部232の後端近傍に設定されている。これにより、亀裂が発生することを効果的に抑制しつつ、脆弱部232に衝撃荷重が作用し易くなり、前側変形部232における前側変形の更なる促進を促すことができる。
【0053】
ここで、全体変形部22の下リーンフォースメント本体223が第1後接続部22aおいて鋭角に屈曲していると、車両前方から衝撃荷重が入力された場合に、全体変形部22はすぐに第1後接続部22aを起点(回転軸)とした折れ変形による全体変形に移行してしまい、衝撃荷重のエネルギーの吸収量が少なくなってしまう。これに対し、本実施形態では、全体変形部22の下リーンフォースメント本体223は第1後接続部22aにおいて鈍角に屈曲している。これにより、車両前方から衝撃荷重が入力された際に、下リーンフォースメント本体223において、ある程度、前後方向に突っ張って衝撃荷重を受けつつ、徐々に折れ変形による全体変形に移行するなるため、衝撃荷重のエネルギーの吸収量を高めることができる。また、下リーンフォースメント20Cに鈍角となる第1後接続部22aを設けることで、主縦部材231及び副縦部材233や下フランジ部223bの成形が容易になる。
【0054】
本実施形態では、全体変形部22における車両上方の部分である上リーンフォースメント本体222は、前接続部221から第1後接続部22aの真上に対応する中間点Mまで車両前後方向に直線的に延びて、中間点Mから剛性保持部21まで車両後方に下り勾配に傾斜している。これにより、車両前方から衝撃荷重が入力された際に、上リーンフォースメント本体222における前側の車両前後方向に直線的に延びた部分によって、ある程度、前後方向に突っ張って衝撃荷重を受けつつ、中間点Mよりも後方の傾斜した部分によって全体変形が効果的に誘発される。その結果、例えば、衝撃荷重が入力された後の初期の段階を経過した後(t>t1)も、全体変形が完全に止まらないようにすることができ、その結果、衝撃エネルギーの吸収量が高まる。
【0055】
また、下リーンフォースメント本体223の下板部223aにおける第1開口部V1の下方の部分に、貫通孔223cが開口されているため(
図4参照)、全体変形や前側変形を効果的に誘発することができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて変形や変更が可能である。
【0057】
例えば、副縦部材233は、車両幅方向の両側にそれぞれ一つだけ設けられているものとしたが、これに限らず、車両幅方向の両側にそれぞれ二つ以上設けられてもよい。また、連結部材20は、先端パッチ20Aと上リーンフォースメント20Bと下リーンフォースメント20Cとの三つの成形品を溶接接合してなるものとしたが、溶接接合する成形品の個数はこれに限らず、適宜の個数に分割されてよい。
【符号の説明】
【0058】
1…車体パネル、10…横強度部材、20…連結部材、21…剛性保持部、22…全体変形部、22a…第1後接続部、22b…第2後接続部、221…前接続部、222c…延伸部、23…前側変形部、231…主縦部材、232…脆弱部、233…副縦部材、30…ステアリングコラム支持ハンガ、100…ステアリング支持構造、M…中間点、P…接続箇所、V1…第1開口部(開口部)、V2…第2開口部(開口部)、V3…第3開口部(開口部)