(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047948
(43)【公開日】2023-04-06
(54)【発明の名称】移動用治具及び移動用治具を用いた施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/348 20060101AFI20230330BHJP
E04G 21/16 20060101ALI20230330BHJP
F16M 13/02 20060101ALI20230330BHJP
F16M 13/00 20060101ALI20230330BHJP
B65G 7/04 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
E04B1/348 X
E04G21/16
F16M13/02 Z
F16M13/00 Z
B65G7/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157153
(22)【出願日】2021-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】藤浪 南夏子
(72)【発明者】
【氏名】林 哲平
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174AA00
2E174BA05
2E174CA03
2E174CA06
2E174CA11
2E174CA16
2E174CA23
2E174CA38
2E174DA21
2E174DA33
(57)【要約】
【課題】重量物を床から浮かせた状態で安定して保持し、重量物から取り外すことが可能な移動用治具を提供する。
【解決手段】移動用治具1は、内装ユニットUを床上で移動させるための治具である。移動用治具1は、床上を移動するためのキャスター部20と、内装ユニットUの底面に設けられたベースフレームU2を下方から保持するための保持部30と、ベースフレームに対し着脱可能となるように取り付けられる取り付け部40と、取り付け部を「取り付け状態」と「取り外し状態」の間で切り替えるための切り替え部とを備えている。取り付け部40は、「取り付け状態」のときにベースフレームU2を保持部30とともに上下方向で挟み込む位置に設けられている。また、取り付け部40は、「取り外し状態」へ切り替えられたときにベースフレームU2を上下方向で挟み込む位置から移動した位置に設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量物を床上で移動させるための移動用治具であって、
床上を移動するためのキャスター部と、
前記キャスター部よりも上方位置に設けられ、前記重量物に設けられた被保持部を下方から保持するための保持部と、
前記保持部よりも上方位置に設けられ、前記被保持部に対し着脱可能となるように取り付けられる取り付け部と、
前記取り付け部を前記被保持部に取り付けた取り付け状態と、前記被保持部から取り外した取り外し状態との間で切り替えるための切り替え部と、を備え、
前記取り付け部は、
前記取り付け状態のときに、前記被保持部を前記保持部とともに上下方向で挟み込む位置に設けられ、
前記切り替え部によって前記取り外し状態へ切り替えられたときに、前記被保持部を上下方向で挟み込む位置から移動した位置に設けられていることを特徴とする移動用治具。
【請求項2】
前記移動用治具は、前記重量物となる内装ユニットを移動させるための治具であって、
前記移動用治具の本体となる本体部を備え、
前記保持部は、前記本体部よりも上方位置に設けられ、前記内装ユニットの底面に設けられたベースフレームを下方から保持し、
前記キャスター部は、前記本体部よりも下方位置に設けられ、上面視において前記保持部を囲むように複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の移動用治具。
【請求項3】
前記取り付け部は、
前記保持部から上方へ突出し、前記被保持部の側面に沿って延びている第1延出部と、
前記第1延出部の上端部から前記被保持部に向かって突出し、前記被保持部の上面に達する位置まで延びている第2延出部と、を有し、
前記取り付け部が取り付け状態のときに、前記第2延出部が前記被保持部を前記保持部とともに上下方向で挟み込む位置に設けられ、
前記取り付け部が前記取り外し状態のときには、前記第2延出部が前記被保持部の上面に達する位置から移動した位置に設けられ、前記被保持部の上面とは対向しない位置に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の移動用治具。
【請求項4】
前記取り付け部は、上下方向に長尺な取り付けボルトであって、
前記切り替え部は、前記保持部に対して前記取り付け部を水平方向に回動可能となるように連結し、
前記取り付け部を水平方向に回動させることで、前記取り付け部が前記取り付け状態と前記取り外し状態との間で切り替わることを特徴とする請求項3に記載の移動用治具。
【請求項5】
前記移動用治具は、複数の前記取り付け部を備え、
第1の取り付け部、第2の取り付け部は、それぞれ前記保持部から上方へ突出し、前記被保持部を側方から挟み込む位置に設けられ、
前記取り付け状態のときに、前記第1の取り付け部の前記第2延出部と、前記第2の取り付け部の前記第2延出部とが、前記被保持部の上面において前記第1の取り付け部及び前記第2の取り付け部による挟持方向に間隔を空けながら配置されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の移動用治具。
【請求項6】
前記移動用治具は、
前記移動用治具の本体となる本体部と、
前記本体部と前記保持部を連結し、前記本体部に対して前記保持部の高さ位置を変更可能な状態で取り付けられる高さ調整部材を備え、
前記高さ調整部材は、
前記本体部に設けられた組み付け穴を通じて組み付けられ、上下方向に長尺なボルトと、前記ボルトの軸部分に対して螺合されるナット又は雌ネジ部と、を有し、
前記ボルトと前記ナット又は前記雌ネジ部との螺合位置を調整することで、前記保持部の高さ位置を変更可能となるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の移動用治具。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の移動用治具を用いた施工方法であって、
重量物となる内装ユニットを組み立てるユニット組み立て工程と、
組み立てられた前記内装ユニットを施工現場へ搬入するユニット搬入工程と、
搬入された前記内装ユニットを吊り上げ装置によって吊り上げるユニット吊り上げ工程と、
吊り上げられた前記内装ユニットを建物の躯体内部に床から浮かせた状態で仮置きするユニット仮置き工程と、
仮置きされた前記内装ユニットを躯体内部の所定位置まで移動させるユニット移動工程と、
前記内装ユニットを躯体内部の所定位置に設置するユニット設置工程と、を含み、
前記ユニット搬入工程又は前記ユニット吊り上げ工程では、前記内装ユニットの底面に設けられたベースフレームに対し前記移動用治具を複数取り付け、
前記ユニット仮置き工程では、前記移動用治具を用いて前記内装ユニットを躯体内部に床から浮かせた状態で仮置きし、
前記ユニット移動工程では、躯体内部の所定位置まで移動させた前記内装ユニットから前記移動用治具を取り外すことを特徴とする移動用治具を用いた施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動用治具及び移動用治具を用いた施工方法に係り、特に、重量物を床上で移動させるための移動用治具及び移動用治具を用いた施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、施工現場での施工作業を効率化すべく、重量物となる内装ユニット(例えばユニットバス)を工場で予め組み立てておき、組み立てられた内装ユニットを施工現場へ搬入し、搬入された内装ユニットを吊り上げ装置によって吊り上げて、吊り上げられた内装ユニットを建物の躯体内部の所定位置に据え付ける施工方法が知られている。
このとき、上記内装ユニットを所定位置に据え付ける工程では、工事の進捗状況によって、あるいは内装ユニットを据え付ける専門業者の不在によって、内装ユニットを所定位置にそのまま据え付けることができない場合がある。そうした場合には、吊り上げられた内装ユニットを躯体内部の別位置に仮置きしておき、内装ユニットが据え付け可能となった後に、仮置きされた内装ユニットを躯体内部の所定位置まで移動させるといった作業が必要となる。
そのため、内装ユニットを仮置きするとともに、仮置きした内装ユニットを床から浮かせた状態で移動させることが可能な移動用治具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の空間ユニットの移動用装置は、空間ユニットの下端部にあるベースフレームに着脱可能に固定され、空間ユニットを昇降させる複数の油圧ジャッキと、空間ユニットの下方位置に差し込まれ、空間ユニットを下方から支持する複数の移動台車と、から主に構成されている。
上記構成により、空間ユニットを床から浮かせた状態で仮置きし、仮置きした空間ユニットを浮かせたまま所定位置まで移動させることができる。
また、油圧ジャッキによって空間ユニットを上昇させることで、空間ユニットから移動台車を取り外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のような移動用装置では、移動台車が重量物の真下に差し込まれ、重量物のベースフレームを下方から支持しているところ、当該ベースフレームを挟み込むように保持しているものではなかった。そのため、重量物がガタついた場合には、重量物を好適に保持しておくことができない虞があった。また、油圧ジャッキなくして重量物から取り外すことが困難であった。
従って、重量物を床から浮かせた状態で安定して保持することができ、重量物から取り外すことが可能な移動用治具が求められていた。
【0006】
また、特許文献1のような移動用装置では、重量物を仮置きするときに重量物に対し移動用装置(移動用治具)を取り付けているものの、移動用治具を予め取り付けておくことで施工現場での作業性を効率化することが求められていた。
例えば、重量物を吊り上げるよりも前に重量物に対し移動用治具を取り付けておくことが好ましいが、その場合には移動用治具の落下を防止するための工夫が必要とされていた。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、重量物を床から浮かせた状態で安定して保持することができ、重量物から取り外すことが可能な移動用治具及び移動用治具を用いた施工方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、重量物に対し事前に取り付けた場合であっても重量物から外れてしまうことのない移動用治具及び移動用治具を用いた施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、本発明の移動用治具によれば、重量物を床上で移動させるための移動用治具であって、床上を移動するためのキャスター部と、前記キャスター部よりも上方位置に設けられ、前記重量物に設けられた被保持部を下方から保持するための保持部と、前記保持部よりも上方位置に設けられ、前記被保持部に対し着脱可能となるように取り付けられる取り付け部と、前記取り付け部を前記被保持部に取り付けた取り付け状態と、前記被保持部から取り外した取り外し状態との間で切り替えるための切り替え部と、を備え、前記取り付け部は、前記取り付け状態のときに、前記被保持部を前記保持部とともに上下方向で挟み込む位置に設けられ、前記切り替え部によって前記取り外し状態へ切り替えられたときに、前記被保持部を上下方向で挟み込む位置から移動した位置に設けられていること、により解決される。
上記構成により、重量物を床から浮かせた状態で安定して保持することができ、重量物から取り外すことが可能な移動用治具を実現することができる。
詳しく述べると、上記移動用治具は、取り付け部を被保持部に取り付けた取り付け状態と、被保持部から取り外した取り外し状態との間で切り替える切り替え部を備えている。そして、移動用治具は、取り付け部が取り付け状態のときに、重量物の被保持部を上下方向で挟み込むように保持することができる。また、取り付け部を取り付け状態から取り外し状態へ切り替えることで、移動用治具を重量物(被保持部)から取り外すこともできる。
また上記のように取り付け部を備えていることで、重量物に対し移動用治具を事前に取り付けた場合であっても、重量物から外れてしまうことを防止することができる。例えば、重量物を吊り上げる前に移動用治具を取り付けた場合であっても、吊り上げられた重量物から移動用治具が落下してしまうことがない。
【0009】
このとき、前記移動用治具は、前記重量物となる内装ユニットを移動させるための治具であって、前記移動用治具の本体となる本体部を備え、前記保持部は、前記本体部よりも上方位置に設けられ、前記内装ユニットの底面に設けられたベースフレームを下方から保持し、前記キャスター部は、前記本体部よりも下方位置に設けられ、上面視において前記保持部を囲むように複数設けられていると良い。
上記構成により、シンプルな構成で、内装ユニットを床から浮かせた状態で仮置きし、内装ユニットを好適に移動させることが可能な移動用治具を実現できる。
詳しく述べると、保持部及び取り付け部が、内装ユニットの底面にあるベースフレームを上下方向で挟み込むように保持している。そのため、移動用治具が内装ユニットを安定して保持することができる。その結果、仮置きした内装ユニットを好適に移動させることができる。
【0010】
このとき、前記取り付け部は、前記保持部から上方へ突出し、前記被保持部の側面に沿って延びている第1延出部と、前記第1延出部の上端部から前記被保持部に向かって突出し、前記被保持部の上面に達する位置まで延びている第2延出部と、を有し、前記取り付け部が取り付け状態のときに、前記第2延出部が前記被保持部を前記保持部とともに上下方向で挟み込む位置に設けられ、前記取り付け部が前記取り外し状態のときには、前記第2延出部が前記被保持部の上面に達する位置から移動した位置に設けられ、前記被保持部の上面とは対向しない位置に配置されていると良い。
上記構成により、よりシンプルな構成で、重量物を安定して保持することができる。また、重量物から容易に取り外すこともできる。
【0011】
このとき、前記取り付け部は、上下方向に長尺な取り付けボルトであって、前記切り替え部は、前記保持部に対して前記取り付け部を水平方向に回動可能となるように連結し、前記取り付け部を水平方向に回動させることで、前記取り付け部が前記取り付け状態と前記取り外し状態との間で切り替わると良い。
上記構成により、取り付けボルト(例えばL字形状のアンカーボルト)を利用して、重量物の被保持部に対し移動用治具を容易に取り付けることができる。また、重量物(被保持部)から容易に取り外すこともできる。
【0012】
このとき、前記移動用治具は、複数の前記取り付け部を備え、第1の取り付け部、第2の取り付け部は、それぞれ前記保持部から上方へ突出し、前記被保持部を側方から挟み込む位置に設けられ、前記取り付け状態のときに、前記第1の取り付け部の前記第2延出部と、前記第2の取り付け部の前記第2延出部とが、前記被保持部の上面において前記第1の取り付け部及び前記第2の取り付け部による挟持方向に間隔を空けながら配置されていると良い。
上記のように第1の取り付け部、第2の取り付け部を有していることで、重量物を床から浮かせた状態で一層安定して保持することができる。また、重量物に移動用治具を強固に取り付けることができる。
また上記のように、第1の取り付け部の第2延出部と、第2の取り付け部の第2延出部とが、被保持部の上面において第1の取り付け部及び第2の取り付け部による挟持方向に間隔を空けながら配置されている。そのため、重量物の被保持部の上面において取り付け部を取り付ける(引っ掛ける)ための空きスペースが制限されている(僅かである)場合であっても、複数の取り付け部を好適に取り付けることができる。
【0013】
このとき、前記移動用治具は、前記移動用治具の本体となる本体部と、前記本体部と前記保持部を連結し、前記本体部に対して前記保持部の高さ位置を変更可能な状態で取り付けられる高さ調整部材を備え、前記高さ調整部材は、前記本体部に設けられた組み付け穴を通じて組み付けられ、上下方向に長尺なボルトと、前記ボルトの軸部分に対して螺合されるナット又は雌ネジ部と、を有し、前記ボルトと前記ナット又は前記雌ネジ部との螺合位置を調整することで、前記保持部の高さ位置を変更可能となるように構成されていると良い。
上記構成により、従来のように油圧ジャッキ等を使用することなく、シンプルな構成で保持部の高さ調整を行うことができる。保持部の高さ調整機能を備えていることで、移動用治具を重量物から一層容易に取り外すことが可能となる。
詳しく述べると、移動用治具を重量物の被保持部(ベースフレーム)から側方に引き抜くときに、必要に応じて保持部の高さ位置を幾分下げることによって、移動用治具を引き抜き易くすることができる。このとき、重量物の下端にある脚部材によって重量物が床上に支持された状態になっていると、移動用治具を一層引き抜き易くすることができる。
【0014】
また前記課題は、上記移動用治具を用いた施工方法であって、重量物となる内装ユニットを組み立てるユニット組み立て工程と、組み立てられた前記内装ユニットを施工現場へ搬入するユニット搬入工程と、搬入された前記内装ユニットを吊り上げ装置によって吊り上げるユニット吊り上げ工程と、吊り上げられた前記内装ユニットを建物の躯体内部に床から浮かせた状態で仮置きするユニット仮置き工程と、仮置きされた前記内装ユニットを躯体内部の所定位置まで移動させるユニット移動工程と、前記内装ユニットを躯体内部の所定位置に設置するユニット設置工程と、を含み、前記ユニット搬入工程又は前記ユニット吊り上げ工程では、前記内装ユニットの底面に設けられたベースフレームに対し前記移動用治具を複数取り付け、前記ユニット仮置き工程では、前記移動用治具を用いて前記内装ユニットを躯体内部に床から浮かせた状態で仮置きし、前記ユニット移動工程では、躯体内部の所定位置まで移動させた前記内装ユニットから前記移動用治具を取り外すこと、によっても解決される。
上記構成により、工場(施工現場以外の場所)で予め組み立てられた内装ユニットを建物の躯体内部に好適に設置することが可能な移動用治具を用いた施工方法を実現することができる。
また上記構成により、内装ユニットを吊り上げる前に内装ユニットに移動用治具を取り付けておくことができるため、施工現場での作業性を効率化することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の移動用治具及び移動用治具を用いた施工方法によれば、重量物を床から浮かせた状態で安定して保持することができ、重量物から取り外すことが可能となる。
また、重量物に対し移動用治具を事前に取り付けた場合であっても重量物から外れてしまうことを防止することができる。例えば重量物を吊り上げるよりも前に移動用治具を取り付けた場合であっても、吊り上げられた重量物から移動用治具が落下してしまうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態の施工システムSを示す図であって、吊り天秤及び吊り治具を用いて内装ユニットを吊り上げた状態を示す説明図である。
【
図2】施工システムSを示す図であって、移動用治具を用いて内装ユニットを仮置きした状態を示す説明図である。
【
図3】
図2の要部拡大図であって、移動用治具及び内装ユニットを示す斜視図である。
【
図6A】取り付け部が「取り付け状態」であることを示す上面図である。
【
図6B】取り付け部が「取り外し状態」であることを示す上面図である。
【
図7】移動用治具の切り替え部、高さ調整部材を示す分解図である。
【
図8A】移動用治具が内装ユニットに取り付けられた状態を説明する図である。
【
図8B】移動用治具が内装ユニットから取り外された状態を説明する図である。
【
図9】移動用治具を用いた施工方法を示す工程図である。
【
図10】第2実施形態の移動用治具を示す斜視図である。
【
図11A】移動用治具が内装ユニットに取り付けられた状態を説明する図である。
【
図11B】移動用治具が内装ユニットから取り外された状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について
図1~
図11A、Bを参照して説明する。
本実施形態は、内装ユニットを床上で移動させるための移動用治具であって、床上を移動するためのキャスター部と、内装ユニットの底面に設けられたベースフレームを下方から保持するための保持部と、ベースフレームに対し着脱可能となるように取り付けられる取り付け部と、取り付け部を「取り付け状態」と「取り外し状態」の間で切り替えるための切り替え部とを備えており、取り付け部は、「取り付け状態」のときにベースフレームを保持部とともに上下方向で挟み込む位置に設けられ、「取り外し状態」へ切り替えられたときにベースフレームを上下方向で挟み込む位置から移動した位置に設けられていることを主な特徴とする移動用治具の発明に関するものである。
また、当該移動用治具を用いた施工方法の発明に関するものである。
【0018】
本実施形態の移動用治具1を含む施工システムSは、
図1~
図3に示すように、施工現場での組立作業及び設置作業を効率化すべく、工場で予め組み立てられた内装ユニットUを吊り上げ装置S1によって吊り上げて、建物の躯体内部の所定位置にそのまま据え付けるために用いられる施工システムである。
詳しく述べると、施工システムSでは、吊り上げ装置S1によって内装ユニットUを吊り上げる際にそれぞれ用いられ、吊り上げ装置S1に掛け止めされたスリング部材S2と、スリング部材S2の吊り位置を保持するための吊り天秤S3及び吊り治具S4と、を備えている。また、吊り上げられた内装ユニットUを建物内部に床から浮かせた状態で仮置きする際に用いられ、かつ、仮置きされた内装ユニットUを建物内部の所定位置まで移動させる際にも用いられる移動用治具1をさらに備えている。
なお、
図1に示すように、移動用治具1は、内装ユニットUを吊り上げるよりも前のタイミングで内装ユニットUの底面の四隅に吊り下げるように取り付けられている。
【0019】
内装ユニットUは、
図1~
図3に示すように、建物内部に設置される各種設備をユニット化し、そのまま据え付け可能となるように組み立てられたものであって、ユニットバス、ユニットトイレ、ユニットキッチン等の各種ユニット品を含むものである。
内装ユニットUは、箱状のユニット本体U1と、ユニット本体U1の底面に取り付けられる矩形枠状のベースフレームU2と、ベースフレームU2の底面から下方に突出している複数の脚部材U3と、から主に構成されている。
内装ユニットUは、工場から施工現場へ搬入する工程から建物内部に設置する工程までの間、シート状のユニットカバーU4によって上方から被覆されている。
【0020】
ベースフレームU2は、断面四角形状の長尺な角パイプ部材から形成されており、建物の躯体上に内装ユニットUを据え付けるためのフレーム部材である。
また、ベースフレームU2は、内装ユニットUを床上で移動させるときに移動用治具1を取り付けるための部材としても機能する。
脚部材U3は、
図3、
図8A、Bに示すように、上下方向に延びている軸状の脚部材であって、建物内部の床パネル上に接着剤を用いて固定される部材である。
また、脚部材U3は、内装ユニットUを吊り上げるときに吊り治具S3を取り付けるための部材としても機能する。
ユニットカバーU4は、防水性を有する養生カバーであって、ユニットカバーU4の幅方向の一端面には、内装ユニットUを取り出し可能にするためのカバー開閉部が形成されている。
【0021】
移動用治具1は、
図2、
図3に示すように、内装ユニットUを床から浮かせた状態で仮置きする際に用いられ、かつ、内装ユニットUを床上で移動させる際にも用いられる治具であって、例えば内装ユニットUの下端部における四隅に配置されている。
詳しく述べると、移動用治具1は、内装ユニットUのベースフレームU2に対して着脱可能に取り付けられ、脚部材U3を床Fからやや浮かせた状態で内装ユニットUを保持したまま移動することができる。また、内装ユニットUの高さ位置を調整することができる。
【0022】
移動用治具1は、
図3~
図7に示すように、移動用治具1の本体となる本体部10と、本体部10よりも下方位置に設けられ、床上を水平方向に移動するキャスター部20と、本体部10よりも上方位置に設けられ、内装ユニットUのベースフレームU2を下方から保持する保持部30と、保持部30よりも上方位置に設けられ、ベースフレームU2に対し着脱可能となるように取り付けられる取り付け部40と、取り付け部40を「取り付け状態」と「取り外し状態」の間で切り替えるための切り替え部50と、本体部10及び保持部30を連結し、本体部10に対して保持部30の高さ位置を変更可能な状態で取り付けられる高さ調整部材60と、から主に構成されている。
なお、移動用治具1は、複数の取り付け部40を備えている。
【0023】
本体部10は、三角形状のプレート体からなる本体プレートであって、水平な平面を有している。
本体部10の上面には、本体部10の中央部分に形成され、高さ調整部材60を組み付けるための組み付け穴11と、本体部10の角部に形成され、キャスター部20を取り付けるための複数の取り付け穴12とが、それぞれ形成されている。
【0024】
キャスター部20は、
図4、
図5に示すように、自在に向きを変えて回転可能な球状の回転体であって、本体部10において保持部30を囲むように複数設けられている。
詳しく述べると、キャスター部20は、上面視において保持部30の中心から略等しい間隔を空けて3つ配置されており、第1キャスター部20Aと、第2キャスター部20Bと、第3キャスター部20Cと、を有している。
【0025】
キャスター部20は、本体部10の取り付け穴12を貫通して軸支され、上下方向に延びているキャスター軸21と、本体部10に対してキャスター軸21を中心として水平方向に回動可能なキャスター本体22と、キャスター本体22を貫通して軸支され、キャスター軸21とは直交方向に延びている車軸23と、キャスター本体22に対して車軸23を中心として回動可能な球状の車輪24と、から主に構成されている。
上記構成により、移動用治具1は、キャスター部20を旋回させながら回転させることで床上を自在に移動することができる。
なお、キャスター部20は、旋回式のキャスターのほか、進行方向が前後方向に固定されている固定式のキャスター(円盤状の車輪)であっても良い。
【0026】
保持部30は、
図3~
図5に示すように、プレート形状を有し、内装ユニットUのベースフレームU2を下方から保持する部材であって、ベースフレームU2よりも幅広となるように形成されている。
保持部30は、上面視において本体部10の中央部に組み付けられ、側面視において本体部10よりも上方に浮かせた位置に設けられている。具体的には、本体部10の上面に対して高さ調整部材60を介して組み付けられている。
【0027】
保持部30は、高さ調整部材60の上端部に取り付けられ、移動用治具1の高さ方向とは直交する方向に延びている底壁部31を有している。
底壁部31の上面には、底壁部31の幅方向の両側部分に形成され、取り付け部40を組み付けるための一対の組み付け穴31a、31bが形成されている。
一対の組み付け穴31aは、ベースフレームU2を間に配置することが可能な間隔を空けて対向する位置(対応する位置)に配置されている。
一対の組み付け穴31bも同様の配置となっている。一対の組み付け穴31bは、一対の組み付け穴31aと所定の間隔を空けて配置されている。
なお、一対の組み付け穴31a、31bは、必ずしも対向する位置に配置されていなくても良く、例えばジグザグ状となるように配置されていても良い。
【0028】
また、底壁部31の上面において一対の組み付け穴31a、31bに隣接し、一対の組み付け穴31a、31bよりも外側位置には、一対の組み付け穴31c、31dがそれぞれ形成されている。
当該組み付け穴31c、31dが形成されることで、ベースフレームU2の形状、大きさに対応して取り付け部40を取り付けることが可能となる。
【0029】
取り付け部40は、
図3~
図7に示すように、上下方向に長尺なL字形状の取り付けボルト(アンカーボルト)であって、保持部30から上方へ突出し、ベースフレームU2を側方から保持するとともに、ベースフレームU2の上面に掛け止めされる部材である。
具体的には、取り付け部40は、保持部30から上方へ突出し、ベースフレームU2の側面に沿って延びている第1延出部41と、第1延出部41の上端部からベースフレームU2に向かって突出し、ベースフレームU2の上面に達する位置まで延びている第2延出部42と、を備えている。
第1延出部41は、上下方向に長尺な本体部41aと、本体部41aのうち第2延出部側とは反対側の端部に設けられたネジ部41bと、を有している。
本体部41aは、ネジ部41bよりも幾分幅広となるように形成されている。すなわち、本体部41aの外径は、ネジ部41bの外径(ネジ山径)よりも幾分大きく形成されている。言い換えれば、本体部41aとネジ部41bの境界部分には段差部41cが形成されている。
【0030】
取り付け部40は、
図6A、Bに示すように、切り替え部50によって取り付け部40をベースフレームU2に取り付けた「取り付け状態(第1の状態)」と、ベースフレームU2から取り外した「取り外し状態(第2の状態)」との間で切り替え可能となっている。
詳しく述べると、取り付け部40は、切り替え部50によって保持部30に対して水平方向に回動可能となるように連結されている。取り付け部40を水平方向に回動させることで、取り付け部40が「取り付け状態」と「取り外し状態」との間で切り替わる。
【0031】
取り付け部40が「取り付け状態」のときには、第2延出部42がベースフレームU2の上面の端部に掛け止めされている。言い換えれば、第2延出部42が、ベースフレームU2を保持部30とともに上下方向で挟み込む位置に設けられている。
また、取り付け部40が「取り外し状態」のときには、第2延出部42がベースフレームU2の上面に達する位置から移動した位置に設けられている。言い換えれば、第2延出部42が、ベースフレームU2の上面とは対向しない位置に配置されている。
【0032】
移動用治具1は、
図5~
図7に示すように、複数の取り付け部40を備えている。具体的には、保持部30の上面において一対の組み付け穴31aに組み付けられる第1取り付け部40A、第2取り付け部40Bと、一対の組み付け穴31bに組み付けられる第3取り付け部40C、第4取り付け部40Dと、を備えている。
第1取り付け部40A、第2取り付け部40Bは、それぞれ保持部30から上方へ突出し、ベースフレームU2を側方から挟み込む位置に設けられている。
なお、第3取り付け部40C、第4取り付け部40Dについても同様の位置関係となっている。
【0033】
図6Aに示す「取り付け状態」のときに、第1取り付け部40Aの第2延出部42と、第2取り付け部40Bの第2延出部42とは、ベースフレームU2の上面において第1取り付け部40A及び第2取り付け部40Bによる挟持方向に所定の間隔を空けながら配置されている。
そして、
図6Bに示す「取り外し状態」のときには、第1取り付け部40A、第2取り付け部40Bが、保持部30に対して同じ向きに約90度回動した位置に配置されている。このとき、第1取り付け部40Aと第2取り付け部40Bは、ベースフレームU2の上面とは対向しない位置に配置されており、かつ、互いに反対側を向くように配置されている。
なお、第3取り付け部40C、第4取り付け部40Dについても同様の位置関係となっている。
【0034】
切り替え部50は、
図4、
図7に示すように、保持部30に対して取り付け部40を回動可能となるように連結する部材であって、取り付け部40を「取り付け状態」と「取り外し状態」の間で切り替えるための部材である。
具体的には、切り替え部50は、保持部30の底面に設けられ、保持部30の組み付け穴31a(31b)と上下方向で連通する位置に配置され、取り付け部40(第1延出部41)のネジ部41bと螺合される切り替え用ナット50である。
第1延出部41のネジ部41bが組み付け穴31a(31b)を貫通し、切り替え用ナット50と螺合されており、切り替え用ナット50に対するネジ部41bの螺合位置を変更することで、取り付け部40が「取り付け状態」と「取り外し状態」の間で切り替わるように構成されている。
【0035】
なお、本実施形態の切り替え部は、切り替え用ナット50であって、比較的シンプルな構成で取り付け部40を「取り付け状態」と「取り外し状態」の間で切り替え可能な構造を実現している。
一方で、切り替え部(切り替え手段)は切り替え用ナット50に限定されず、種々の切り替え手段を用いて取り付け部40を切り替える構造を実現しても良い。
例えば、ヒンジ構造やスライド構造等の公知な構造を採用しても良い。
【0036】
上記構成において、
図6Aに示すように、取り付け部40が「取り付け状態」のときに、第1延出部41がベースフレームU2の外側面に当接し、第2延出部42がベースフレームU2の上面に掛け止めされている。
そのため、第1取り付け部40Aと第2取り付け部40Bが、ベースフレームU2を両側方から挟み込むように保持することができる。
また、保持部30と、第1取り付け部40A及び第2取り付け部40Bとが、上下方向においてベースフレームU2を挟み込むように保持することができる。
その結果、移動用治具1が、「取り付け状態」のときに内装ユニットUを強固に保持することができる。
【0037】
また上記構成において、
図7に示すように、取り付け部40のうち、本体部41aとネジ部41bの境界部分には段差部41cが形成されている。そして、取り付け部40が「取り付け状態」のときに段差部41cと保持部30とが当接する構成となっている。
そうすることで、取り付け部40が保持部30によって安定して支持される。その結果、ベースフレームU2に対し取り付け部40を安定して掛け止めることができる。
また、ベースフレームU2に対し取り付け部40を掛け止めるとき、すなわち取り付け部40を「取り外し状態」から「取り付け状態」へ切り替えるときに、段差部41cをストッパー(移動規制部材)として利用することで、取り付け部40の切り替え操作が容易になる。
【0038】
高さ調整部材60は、
図4、
図7に示すように、保持部30の高さ位置を変更するための部材である。
具体的には、高さ調整部材60は、本体部10の底面に設けられた固定ナット61と、保持部30の底面に設けられ、保持部30から下方へ突出し、本体部10(組み付け穴11)を貫通して固定ナット61に螺合される高さ調整ボルト62と、から主に構成されている。
なお、固定ナット61の代わりに本体部10の組み付け穴11に雌ネジ部を形成することとしても良い。
【0039】
上記構成において、固定ナット61に対する高さ調整ボルト62の螺合位置を調整することで、保持部30が、高さ調整ボルト62の螺合位置に応じた高さ位置に移動することができる。すなわち、移動用治具1の高さ位置を適宜調整することができる。
【0040】
なお、本体部10の底面の外縁部分のうち、キャスター部20A、20B、20Cの間の位置には、不図示の棒状の回転用治具を係合させるための係合部70(70A、70B、70C)が溶接で取り付けられている。
係合部70A、70B、70Cは、長尺ナットであって、それぞれ本体部10の中心部から水平方向の外側に向かって放射状に延びるように配置されている。
回転用治具は、係合部70の係合穴に係合させて、本体部10を回転させるための棒状治具である。
上記回転用治具を利用することで、作業者が本体部10を回転移動させることができる。本体部10を回転移動させることで、固定ナット61及び高さ調整ボルト62の螺合位置を調整することができ、保持部30の高さ位置を調整することが可能となる。
このようにすれば、作業者が移動用治具1(保持部30)の高さ位置を容易に調整することが可能となる。
【0041】
上記構成により、
図1に示すように、内装ユニットUのベースフレームU2に対し移動用治具1を容易に取り付けることができる。また、内装ユニットUを吊り上げているときに、内装ユニットUから移動用治具1が落下することを防止することができる。
また、
図8Aに示すように、移動用治具1が、内装ユニットUを床から浮かせた状態で安定して保持することができる。
さらには、
図8Bに示すように、建物内部の所定位置まで移動させた内装ユニットUから移動用治具1を容易に取り外すこともできる。
なお、内装ユニットU(ベースフレームU2)から移動用治具1を取り外すときには、
図8Bに示すように、複数の取り付け部40を保持部30から一旦取り外すことで、ベースフレームU2に対し移動用治具1を真横に移動させて取り外すことができる。
なお、ベースフレームU2及び脚部材U3の種類、大きさによっては、ベースフレームU2をかわすように移動用治具1を傾けながら引き寄せることで、複数の取り付け部40を取り付けたままであっても移動用治具1を取り外すこともできる。
【0042】
<移動用治具を用いた施工方法>
次に、吊り天秤S3、吊り治具S4、移動用治具1を用いた内装ユニットUの施工方法について、
図9に基づいて説明する。
まずは、作業者(例えば、メーカー施工者)が、内装ユニットUを事前に組み立てる「ユニット組み立て工程」(ステップS1)から始まる。
【0043】
その後、作業者が、組み立てられた内装ユニットUを施工現場へ搬入する「ユニット搬入工程」を行う(ステップS2)。
詳しく述べると、内装ユニットUは、ユニットカバーU4によって被覆され、胴ベルトを巻き付けた状態でトラックによって搬入される。
また、上記ユニット搬入工程において内装ユニットUの底面に設けられたベースフレームU2に対し移動用治具1を複数取り付ける。
なお、次のステップS3のユニット吊り上げ工程において内装ユニットU(ベースフレームU2)に対し移動用治具1を複数取り付けることとしても良い。その場合には、内装ユニットUを吊り上げるよりも前のタイミングで、内装ユニットUに対し移動用治具1を取り付けると良い。
【0044】
その後、作業者が、搬入された内装ユニットUを吊り上げ装置S1に掛け止めされたスリング部材S2によって吊り上げる「ユニット吊り上げ工程」を行う(ステップS3)。
詳しく述べると、ユニット吊り上げ工程では、
図1に示すように、枠状に展開された吊り天秤S3によってスリング部材S2の吊り位置を保持することと(ステップS3-1)、内装ユニットUの脚部材U3に対して吊り治具S4を掛け止めすることと(ステップS3-2)、スリング部材S2の下端部に対して吊り治具S4を取り付けることと(ステップS3-3)、を行った上で、内装ユニットUを吊り上げる(ステップS3-4)。
なお、ステップS3-1からステップS3-3までの作業については、いずれの順番で行われても良い。
【0045】
その後、作業者が、吊り上げられた内装ユニットUを建物の躯体内部に床から浮かせた状態で仮置きする「ユニット仮置き工程」を行う(ステップS4)。
詳しく述べると、ユニット仮置き工程では、
図2に示すように、移動用治具1を用いて内装ユニットUを床から浮かせた状態で仮置きすることと(ステップS4-1)、内装ユニットUから吊り治具S4を取り外すことと(ステップS4-3)、を行う。
なお、仮置きされた内装ユニットUは、例えば、工事の進捗状況に応じて所定の間、建物内部の別の位置に保管される。あるいは、内装ユニットUのメーカー施工者が到着するまでの間、建物内部の別の位置に保管される。
【0046】
その後、作業者が、仮置きされた内装ユニットUを躯体内部の所定位置まで移動させる「ユニット移動工程」を行う(ステップS5)。
詳しく述べると、ユニット移動工程では、建物の躯体内部の所定位置まで内装ユニットUを移動させることと(ステップS5-1)、内装ユニットUから移動用治具1を取り外すことと(ステップS5-2)、を行う。
なお、
図2に示すように、建物の躯体内部にある床F(パネル床)の上面には、躯体に対し床Fを固定するための固定用穴F1が所定の間隔を空けて形成されている。そうすると、移動用治具1のキャスター部20が固定用穴F1内部に落下する虞がある。そのため、移動用治具1が固定用穴F1に落下する場合を想定して、移動用治具1が3つのキャスター部20を備えている。
【0047】
その後、作業者が、内装ユニットUを躯体内部の所定位置に設置する「ユニット設置工程」を行う(ステップS6)。
詳しく述べると、内装ユニットUの高さ合わせ及び位置調整を行い、内装ユニットUの脚部材U3を床F上に接着剤等を用いて固定し、内装ユニットUの配管作業を行う。
上記ステップS6の工程を終えて、一連の作業工程を終了する。
【0048】
上記施工方法であれば、工場で予め組み立てられた内装ユニットUを建物の躯体内部に好適に設置することが可能な施工方法を実現することができる。
特に、移動用治具1を用いることで、内装ユニットUを床から浮かせた状態で仮置きするとともに、内装ユニットUを好適に移動させることが可能となる。
また、内装ユニットUに移動用治具1を予め取り付けておくことで、施工現場での作業性の向上を図ることが可能となる。
<移動用治具の第2実施形態>
次に、第2実施形態の移動用治具101について
図10、
図11A、Bに基づいて説明する。
なお、上述した移動用治具1と重複する内容は説明を省略する。
移動用治具101は、本体部110と、複数のキャスター部120と、保持部130と、複数の取り付け部140A~140Dと、切り替え部150と、高さ調整部材160と、から主に構成されている。
【0049】
保持部130は、縦断面略ハット形状を有し、高さ調整部材160の上端部に取り付けられ、移動用治具1の高さ方向とは直交する方向に延びている底壁部131と、底壁部131の幅方向の両端部からそれぞれ上方へ突出している一対の側壁部132と、一対の側壁部の突出端部からそれぞれ側方へ突出している一対の突出壁部133と、を有している。
一対の突出壁部133の上面には、それぞれ取り付け部140を組み付けるための一対の組み付け穴131a、131bが形成されている。
【0050】
保持部130は、一対の側壁部132によってベースフレームU2を両側方から挟み込むように保持することができる。
このとき、一対の側壁部132は、ベースフレームU2の下方部分を両側方から挟み込むように保持している。言い換えれば、一対の側壁部132の高さは、ベースフレームU2の高さのおよそ半分程度となっている。
そうすることで、移動用治具101が内装ユニットU(ベースフレームU2)を安定して保持することができることと、使用後は内装ユニットUから移動用治具101を容易に取り外せることを両立させている。
【0051】
取り付け部140は、突出壁部133から上方へ突出し、ベースフレームU2の側面に沿って延びている第1延出部141と、第1延出部141の上端部からベースフレームU2に向かって突出し、ベースフレームU2の上面に達する位置まで延びている第2延出部142と、を備えている。
取り付け部140は、切り替え部150(切り替え用ナット150)によって「取り付け状態(第1の状態)」と、「取り外し状態(第2の状態)」との間で切り替え可能となっている。
【0052】
上記構成において、
図11Aに示すように、取り付け部140が「取り付け状態」のときに、保持部130がベースフレームU2を両側方及び下方から保持するとともに、取り付け部140がベースフレームU2を両側方及び上方から保持した状態となっている。
そうすることで、移動用治具101がベースフレームU2を強固に保持することができる。
【0053】
また上記構成において、保持部130がベースフレームU2を両側方から保持しているため、取り付け部140(第1延出部141)は、ベースフレームU2の外側面に当接させておらず、ベースフレームU2から幾分間隔を空けた位置に配置されている。
そうすることで、
図11Bに示すように、建物内部の所定位置まで移動させた内装ユニットUから移動用治具101を容易に取り外すことが可能となる。
具体的には、ベースフレームU2をかわすように移動用治具101を傾けながら引き寄せることで、取り付け部140を取り付けたまま移動用治具101を取り外すことができる。
なお、取り付け部140の外径を幾分細くすることで、ベースフレームU2から移動用治具101を取り外し易くなる。すなわち、ベースフレームU2に対し移動用治具101を傾けたときにベースフレームU2をかわし易くなる。
【0054】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、
図2、
図3に示すように、移動用治具1が、内装ユニットUを仮置きし、また内装ユニットUを床上で移動させる際に用いられるが、内装ユニットUに用いられる治具に限定されず変更可能である。
例えば、移動用治具1が、箱状の重量物を仮置きし、移動させる際に用いられても良いし、重量物以外の吊り対象物を仮置きし、移動させる際に用いられても良い。
【0055】
上記実施形態では、
図1に示すように、移動用治具1が、内装ユニットUを吊り上げるよりも前のタイミングで内装ユニットUに取り付けられているが、特に限定されず変更可能である。
例えば、組み立てられた内装ユニットUを施工現場へ搬入するときに移動用治具1が取り付けられても良い。あるいは、従来のように内装ユニットUを仮置きするときに移動用治具1が取り付けられても良い。
【0056】
上記実施形態では、
図4に示すように、移動用治具1が、3つのキャスター部20を備えているが、特に限定されず変更可能である。
例えば、よりコンパクトな形状にすべく、移動用治具1が1つのキャスター部20を備えた構成としても良い。
また例えば、建物内の床(パネル床)上を好適に移動させるべく、移動用治具1が4つ以上のキャスター部20を備えていても良い。
【0057】
上記実施形態では、
図5、
図6Aに示すように、移動用治具1が4つの取り付け部40を備えているが、特に限定されず変更可能である。
例えば、よりコンパクトな形状にすべく、移動用治具1が2つの取り付け部40を備えた構成としても良いし、1つの取り付け部40のみを備えた構成としても良い。
【0058】
上記実施形態では、
図4に示すように、移動用治具1が、高さ調整部材60を備えているが、特に限定されることなく、高さ調整部材60を不要の構成としても良い。
【0059】
上記実施形態では、
図7に示すように、移動用治具1が、固定ナット61及び高さ調整ボルト62から構成される高さ調整手段を備えているが、当該高さ調整手段について特に限定されることなく変更可能である。
例えば、「高さ調整部材」が、上下方向に間隔を空けて形成された複数の係合凹部を外側面に有し、上下方向に長尺な「ベース部材」と、係合凹部に係合可能な係合凸部を有し、ベース部材に対して上下方向に移動(スライド移動)する「スライド部材」と、から構成されても良い。そうすれば、所定の係合凹部に係合凸部を係合させることで、スライド部材の高さ位置を変更し、スライド部材に取り付けられた保持部の高さ位置を変更することができる。
そのほか、機械的構造による公知な高さ調整手段を採用しても良い。
【0060】
上記実施形態では、主として本発明に係る移動用治具及び移動用治具を備えた施工方法に関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0061】
S 施工システム
S1 吊り上げ装置
S2 スリング部材
S3 吊り天秤
S4 吊り治具
U 内装ユニット(重量物)
U1 ユニット本体
U2 ベースフレーム(被保持部)
U3 脚部材
U4 ユニットカバー
1、101 移動用治具
10、110 本体部
11 組み付け穴
12 取り付け穴
20、120 キャスター部
20A 第1キャスター部
20B 第2キャスター部
20C 第3キャスター部
21 キャスター軸
22 キャスター本体
23 車軸
24 車輪
30、130 保持部
31、131 底壁部
31a、31b、31c、31d、131a、131b 組み付け穴
132 側壁部
133 突出壁部
40、140 取り付け部(取り付けボルト)
40A、140A 第1取り付け部(第1の取り付け部)
40B、140B 第2取り付け部(第2の取り付け部)
40C、140C 第3取り付け部
40D、140D 第4取り付け部
41、141 第1延出部
41a 本体部
41b ネジ部
41c 段差部
42、142 第2延出部
50、150 切り替え部(切り替え用ナット)
60、160 高さ調整部材
61 固定ナット
62 高さ調整ボルト
70 係合部(係合ナット)
70A、70B、70C 係合部
F 床(パネル床)
F1 固定用穴