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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048517
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】車両下部構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20230331BHJP
   B62D 21/02 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B62D21/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157878
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】上妻 眞也
(72)【発明者】
【氏名】曽布川 靖
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕市
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健介
(72)【発明者】
【氏名】恩地 耕平
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 聖英
(72)【発明者】
【氏名】酒向 泰弘
【テーマコード(参考)】
3D203
3D235
【Fターム(参考)】
3D203AA12
3D203AA13
3D203AA31
3D203BA03
3D203BA06
3D203BA07
3D203CA25
3D203DA11
3D203DA20
3D203DB05
3D203DB07
3D235AA04
3D235BB17
3D235BB18
3D235BB25
3D235CC15
3D235DD33
3D235DD35
3D235DD37
3D235EE62
3D235EE63
3D235FF02
3D235FF06
3D235FF07
(57)【要約】
【課題】車両下部に配置される複数のバッテリの好適な分散配置を提案する。
【解決手段】車両下部構造1は、電動モータ6と、電動モータ6に接続される減速機7と、電動モータ6に電力を供給可能な一対の前列バッテリ4L,4Rと、車両幅方向に間隔を空けて配置される一対のサイドメンバ2L,2Rと、車両幅方向に延びて一対のサイドメンバ2L,2Rを連結するクロスメンバ32,33とを備える。クロスメンバ33はクロスメンバ32の後方に配置される。一対の前列バッテリ4L,4Rは、車両幅方向に互いに間隔を空けて配置される。前列バッテリ4L,4R間に減速機7の少なくとも一部が配置される。前列バッテリ4L,4Rはクロスメンバ32に固定される。減速機7はクロスメンバ33によって支持される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、該電動モータに接続される減速機と、前記電動モータに電力を供給可能な複数のバッテリと、車両幅方向に間隔を空けて配置される一対のサイドメンバと、車両幅方向に延びて前記一対のサイドメンバを連結する複数のクロスメンバと、を備える車両下部構造において、
前記複数のクロスメンバは、第1のクロスメンバと、該第1のクロスメンバの後方に配置される第2のクロスメンバと、を含み、
前記複数のバッテリは、車両幅方向に間隔を空けて配置される一対の第1のバッテリを含み、
前記第1のバッテリ間に前記減速機の少なくとも一部が配置され、
前記第1のバッテリが前記第1のクロスメンバに固定され、
前記減速機が前記第2のクロスメンバによって支持されることを特徴とする車両下部構造。
【請求項2】
前記第1のバッテリは第1のバッテリ固定材を介して前記第1のクロスメンバに固定され、
前記第1のバッテリ固定材は、車両幅方向に延びて前記第1のバッテリの底面を支持する第1の幅方向材と、前記第1の幅方向材の両端から立ち上がる一対の第1の上下方向材と、によってU字状に構成されたベルト状部材であり、
前記第1のバッテリ固定材の少なくとも一端が前記第1のクロスメンバに固定され、
前記第1の上下方向材は、下方に向かうほど後方に向かうように傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の車両下部構造。
【請求項3】
前記減速機を前記第1のバッテリ固定材に連結する第1の連結材を備えることを特徴とする請求項2に記載の車両下部構造。
【請求項4】
前記複数のクロスメンバは、前記第2のクロスメンバの後方に配置される第3のクロスメンバを更に含み、
前記複数のバッテリは、前記減速機の後方に配置される少なくとも1つの第2のバッテリを含み、
前記第2のバッテリが前記第3のクロスメンバに固定されることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1つに記載の車両下部構造。
【請求項5】
前記複数のクロスメンバは、前記第2のクロスメンバの後方に配置される第3のクロスメンバを更に含み、
前記複数のバッテリは、前記減速機の後方に配置され、かつ、車両幅方向に間隔を空けて配置される一対の第2のバッテリを含み、
前記第2のバッテリが前記第3のクロスメンバに固定されることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1つに記載の車両下部構造。
【請求項6】
前記第2のバッテリは第2のバッテリ固定材を介して前記第3のクロスメンバに固定され、
前記第2のバッテリ固定材は、車両幅方向に延びて前記第2のバッテリの底面を支持する第2の幅方向材と、前記第2の幅方向材の両端から立ち上がる一対の第2の上下方向材と、によってU字状に構成されたベルト状部材であり、
前記第2のバッテリ固定材の少なくとも一端が前記第3のクロスメンバに固定され、
前記第2の上下方向材は、下方に向かうほど前方に向かうように傾斜していることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の車両下部構造。
【請求項7】
前記減速機を前記第2のバッテリ固定材に連結する第2の連結材を備えることを特徴とする請求項6に記載の車両下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の電気自動車では、車両下部のシャシフレーム上にバッテリボックス収納部が設けられている。このバッテリボックス収納部にはバッテリボックスが収納される。このバッテリボックスは多数のバッテリを収容している。バッテリボックス収納部の下方のシャシフレーム内には電動モータが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-98517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両の車種によっては、上述のバッテリボックス収納部のように、複数のバッテリを集約して配置するスペースを確保することが難しい場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、車両下部に配置される複数のバッテリの好適な分散配置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様における車両下部構造は、電動モータと、該電動モータに接続される減速機と、前記電動モータに電力を供給可能な複数のバッテリと、車両幅方向に間隔を空けて配置される一対のサイドメンバと、車両幅方向に延びて前記一対のサイドメンバを連結する複数のクロスメンバと、を備える。当該車両下部構造において、前記複数のクロスメンバは、第1のクロスメンバと、該第1のクロスメンバの後方に配置される第2のクロスメンバと、を含み、前記複数のバッテリは、車両幅方向に間隔を空けて配置される一対の第1のバッテリを含み、前記第1のバッテリ間に前記減速機の少なくとも一部が配置され、前記第1のバッテリが前記第1のクロスメンバに固定され、前記減速機が前記第2のクロスメンバによって支持される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様における車両下部構造によれば、一対の第1のバッテリ同士の間に減速機の少なくとも一部が配置される。ゆえに、例えば側突時に減速機に作用する衝撃が第1のバッテリによって軽減され得る。従って、減速機の保護構造としても機能し得る、好適なバッテリの分散配置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態における車両下部構造を下方から見た図である。
図2図1のA-A矢視におけるバッテリのクロスメンバへの固定状況を示す図である。
図3図1のB-B矢視における減速機のクロスメンバ及びバッテリ固定材への懸架状況を示す図である。
図4図1のC-C矢視におけるバッテリのクロスメンバへの固定状況を示す図である。
図5】本発明の第2実施形態における車両下部構造を下方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は本発明の第1実施形態における車両下部構造を下方から見た図である。図2は、図1のA-A矢視におけるバッテリのクロスメンバへの固定状況を示す。図3は、図1のB-B矢視における減速機のクロスメンバ及びバッテリ固定材への懸架状況を示す。図4は、図1のC-C矢視におけるバッテリのクロスメンバへの固定状況を示す。尚、図2では、図示簡略化のため、後述する減速機7を二点鎖線で示し、また、後述する電動モータ6、ドライブシャフト8、デファレンシャル装置9、及び後輪10の図示を省略している。図3では、図示簡略化のため、後輪10を二点鎖線で示し、後述する後列バッテリ5L,5R及びデファレンシャル装置9の図示を省略している。図4では、図示簡略化のため、ドライブシャフト8及び後輪10を二点鎖線で示し、デファレンシャル装置9の図示を省略している。
【0010】
図1及び図2において、矢印Fr方向は、車両前後方向における車両前方を示す。以下の説明における「前」及び「後」は車両前後方向における前及び後に対応する。図1図3及び図4において、矢印L,Rは、それぞれ車両幅方向(車幅方向)の左側及び右側を示す。ここでの「左右」は、乗員が車両前方を向いたときの「左側」及び「右側」に対応する。図2図4において、矢印Dは車両下方を示す。以下の説明における「上」及び「下」は車両上下方向における上及び下に対応する。
【0011】
本実施形態における車両下部構造1は、電動車両50の下部構造である。電動車両50は、例えばトラック又はバンなどの商用車であり得る。
【0012】
車両下部構造1は、一対のサイドメンバ2L,2Rと、複数本(本実施形態では5本)のクロスメンバ31~35と、一対の前列バッテリ4L,4Rと、一対の後列バッテリ5L,5Rと、電動モータ6と、減速機7とを有する。尚、本実施形態では、車両下部構造1を構成するクロスメンバの本数が5本であるが、車両下部構造1を構成するクロスメンバの本数は5本に限らない。サイドメンバ2L,2Rとクロスメンバ31~35とは剛性を有し、例えば金属製である。
【0013】
サイドメンバ2L,2Rは、車両幅方向に互いに間隔を空けて配置されており、各々が車両前後方向に延びている。サイドメンバ2L,2Rの上方には、車両下部構造1を構成するフロアパネル又は荷台パネルなどのパネル部材(図示せず)が配置され得る。そして、サイドメンバ2L,2Rが、このパネル部材を直接的に又は間接的に支持し得る。
【0014】
本実施形態では、前から後に向かって順に、クロスメンバ31~35が、互いに間隔を空けて並んでいる。クロスメンバ31~35の各々は、サイドメンバ2L,2Rに跨るように、車両幅方向に延びている。クロスメンバ31~35の各々の一端部がサイドメンバ2Lに固定されており、他端部がサイドメンバ2Rに固定されている。
【0015】
クロスメンバ31,32,34,35は、例えば矩形断面を有する角パイプである。クロスメンバ33は、例えば円形断面を有する丸パイプである。クロスメンバ33は、その車両幅方向中間部(例えば車両幅方向中央)に、下方に凸となるように湾曲した湾曲部33pを備えている。ここにおいて、本発明の「第1のクロスメンバ」の一例としてクロスメンバ32が対応し得る。また、本発明の「第2のクロスメンバ」の一例としてクロスメンバ33が対応し得る。更に、本発明の「第3のクロスメンバ」の一例としてクロスメンバ34が対応し得る。クロスメンバ31,32,34,35が角パイプであることにより、これらへの前列バッテリ4L,4R及び後列バッテリ5L,5Rの固定(例えばねじ止め)を容易に行うことができる。
【0016】
本実施形態では、クロスメンバ31~33の直下に電動モータ6及び減速機7が配置されている。電動モータ6及び減速機7は、上面視でサイドメンバ2L,2R間に配置されている。また、電動モータ6及び減速機7は、車両前後方向中間部(例えば車両前後方向中央)、かつ、車両幅方向中間部(例えば車両幅方向中央)に配置されている。減速機7は電動モータ6の後部に接続されている。減速機7の第1出力軸に連結されたドライブシャフト(プロペラシャフト)8が後方に延びており、デファレンシャル装置9を介して左右の後輪10に駆動連結されている。また、減速機7の第2出力軸に連結されて前方に延びるドライブシャフト(プロペラシャフト)11も、図示しない左右の前輪を駆動させる役割を果たす。ここにおいて、減速機7は、電動モータ6の回転速度を減速してドライブシャフト8,11に伝達する。ドライブシャフト8は、電動モータ6から減速機7を介して出力される駆動力をデファレンシャル装置9に伝達する。
【0017】
前列バッテリ4L,4R及び後列バッテリ5L,5Rは例えば直方体状である。前列バッテリ4L,4R及び後列バッテリ5L,5Rは、各々が電動モータ6に電力を供給可能である。前列バッテリ4L,4Rは、クロスメンバ31,32の直下に配置されており、上面視でサイドメンバ2L,2R間に配置されている。前列バッテリ4L,4Rは、車両幅方向に互いに間隔を空けて配置されている。後列バッテリ5L,5Rは、クロスメンバ34,35の直下に配置されており、上面視でサイドメンバ2L,2R間に配置されている。後列バッテリ5L,5Rは、車両幅方向に互いに間隔を空けて配置されている。ここにおいて、本発明の「第1のバッテリ」の一例として、前列バッテリ4L,4Rが対応し得る。また、本発明の「第2のバッテリ」の一例として、後列バッテリ5L,5Rが対応し得る。
【0018】
前列バッテリ4L,4R間には、電動モータ6の少なくとも一部と、減速機7の少なくとも一部と、ドライブシャフト11の少なくとも一部とが配置されている。後列バッテリ5L,5R間には、ドライブシャフト8の少なくとも一部が配置されている。尚、本実施形態では、減速機7の後方に後列バッテリ5L,5Rが配置されている。この点、後列バッテリ5L,5R間に、減速機7の少なくとも一部が配置されてもよい。
【0019】
左側の前列バッテリ4Lは、前後2つのバッテリ固定材21L,22Lを介して、クロスメンバ31,32に固定されている。バッテリ固定材21L,22Lは、各々が鋼製のベルト状部材であり、左側の前列バッテリ4Lの底面と左右両側面とに沿って延びることで、前面視(正面視)でU字状をなしている。バッテリ固定材21L,22Lは、車両前後方向に互いに間隔を空けて配置されている。バッテリ固定材21Lは、左側の前列バッテリ4Lの前部を支持する。バッテリ固定材22Lは、左側の前列バッテリ4Lの後部(例えば後端部)を支持する。
【0020】
バッテリ固定材21Lは、車両幅方向に延びて左側の前列バッテリ4Lの底面を支持する幅方向材21Laと、幅方向材21Laの両端から立ち上がる左右一対の上下方向材21LbとによってU字状に構成されている。左側の上下方向材21Lbの上端はサイドメンバ2Lに固定され、右側の上下方向材21Lbの上端はクロスメンバ31に固定されている。つまり、バッテリ固定材21Lの少なくとも一端(右側の上下方向材21Lbの上端)がクロスメンバ31に固定されている。
【0021】
バッテリ固定材22Lは、車両幅方向に延びて左側の前列バッテリ4Lの底面を支持する幅方向材22Laと、幅方向材22Laの両端から立ち上がる左右一対の上下方向材22LbとによってU字状に構成されている。左側の上下方向材22Lbの上端はサイドメンバ2Lに固定され、右側の上下方向材22Lbの上端はクロスメンバ32に固定されている。つまり、バッテリ固定材22Lの少なくとも一端(右側の上下方向材22Lbの上端)がクロスメンバ32に固定されている。
【0022】
右側の前列バッテリ4Rは、前後2つのバッテリ固定材21R,22Rを介して、クロスメンバ31,32に固定されている。バッテリ固定材21R,22Rは、各々が鋼製のベルト状部材であり、右側の前列バッテリ4Rの底面と左右両側面とに沿って延びることで、前面視(正面視)でU字状をなしている。バッテリ固定材21R,22Rは、車両前後方向に互いに間隔を空けて配置されている。バッテリ固定材21Rは、右側の前列バッテリ4Rの前部を支持する。バッテリ固定材22Rは、右側の前列バッテリ4Rの後部(例えば後端部)を支持する。
【0023】
バッテリ固定材21Rは、車両幅方向に延びて右側の前列バッテリ4Rの底面を支持する幅方向材21Raと、幅方向材21Raの両端から立ち上がる左右一対の上下方向材21RbとによってU字状に構成されている。右側の上下方向材21Rbの上端はサイドメンバ2Rに固定され、左側の上下方向材21Rbの上端はクロスメンバ31に固定されている。つまり、バッテリ固定材21Rの少なくとも一端(左側の上下方向材21Rbの上端)がクロスメンバ31に固定されている。
【0024】
バッテリ固定材22Rは、車両幅方向に延びて右側の前列バッテリ4Rの底面を支持する幅方向材22Raと、幅方向材22Raの両端から立ち上がる左右一対の上下方向材22RbとによってU字状に構成されている。右側の上下方向材22Rbの上端はサイドメンバ2Rに固定され、左側の上下方向材22Rbの上端はクロスメンバ32に固定されている。つまり、バッテリ固定材22Rの少なくとも一端(左側の上下方向材22Rbの上端)がクロスメンバ32に固定されている。
【0025】
バッテリ固定材22L,22Rの上下方向材22Lb,22Rbは、下方に向かうほど後方に向かうように傾斜している。また、バッテリ固定材22L,22Rの上下方向材22Lb,22Rbは、下方に向かうほど減速機7に近づくように傾斜している。ここにおいて、本発明の「第1のバッテリ固定材」の一例としてバッテリ固定材22L,22Rが対応し得る。また、本発明の「第1の幅方向材」の一例として幅方向材22La,22Raが対応し得る。更に、本発明の「第1の上下方向材」の一例として上下方向材22Lb,22Rbが対応し得る。
【0026】
左側の後列バッテリ5Lは、前後2つのバッテリ固定材24L,25Lを介して、クロスメンバ34,35に固定されている。バッテリ固定材24L,25Lは、各々が鋼製のベルト状部材であり、左側の後列バッテリ5Lの底面と左右両側面とに沿って延びることで、前面視(正面視)でU字状をなしている。バッテリ固定材24L,25Lは、車両前後方向に互いに間隔を空けて配置されている。バッテリ固定材24Lは、左側の後列バッテリ5Lの前部(例えば、車両前後方向中央部よりは前端側の部分)を支持する。バッテリ固定材25Lは、左側の後列バッテリ5Lの後部を支持する。
【0027】
バッテリ固定材24Lは、車両幅方向に延びて左側の後列バッテリ5Lの底面を支持する幅方向材24Laと、幅方向材24Laの両端から立ち上がる左右一対の上下方向材24LbとによってU字状に構成されている。左側の上下方向材24Lbの上端と、右側の上下方向材24Lbの上端とは、それぞれ、クロスメンバ34に固定されている。つまり、バッテリ固定材24Lの少なくとも一端(左側の上下方向材24Lbの上端、及び、右側の上下方向材24Lbの上端)がクロスメンバ34に固定されている。
【0028】
バッテリ固定材25Lは、車両幅方向に延びて左側の後列バッテリ5Lの底面を支持する幅方向材25Laと、幅方向材25Laの両端から立ち上がる左右一対の上下方向材25LbとによってU字状に構成されている。左側の上下方向材25Lbの上端と、右側の上下方向材25Lbの上端とは、それぞれ、クロスメンバ35に固定されている。つまり、バッテリ固定材25Lの少なくとも一端(左側の上下方向材25Lbの上端、及び、右側の上下方向材25Lbの上端)がクロスメンバ35に固定されている。
【0029】
右側の後列バッテリ5Rは、前後2つのバッテリ固定材24R,25Rを介して、クロスメンバ34,35に固定されている。バッテリ固定材24R,25Rは、各々が鋼製のベルト状部材であり、右側の後列バッテリ5Rの底面と左右両側面とに沿って延びることで、前面視(正面視)でU字状をなしている。バッテリ固定材24R,25Rは、車両前後方向に互いに間隔を空けて配置されている。バッテリ固定材24Rは、右側の後列バッテリ5Rの前部(例えば、車両前後方向中央部よりは前端側の部分)を支持する。バッテリ固定材25Rは、右側の後列バッテリ5Rの後部を支持する。
【0030】
バッテリ固定材24Rは、車両幅方向に延びて右側の後列バッテリ5Rの底面を支持する幅方向材24Raと、幅方向材24Raの両端から立ち上がる左右一対の上下方向材24RbとによってU字状に構成されている。左側の上下方向材24Rbの上端と、右側の上下方向材24Rbの上端とは、それぞれ、クロスメンバ34に固定されている。つまり、バッテリ固定材24Rの少なくとも一端(左側の上下方向材24Rbの上端、及び、右側の上下方向材24Rbの上端)がクロスメンバ34に固定されている。
【0031】
バッテリ固定材25Rは、車両幅方向に延びて右側の後列バッテリ5Rの底面を支持する幅方向材25Raと、幅方向材25Raの両端から立ち上がる左右一対の上下方向材25RbとによってU字状に構成されている。左側の上下方向材25Rbの上端と、右側の上下方向材25Rbの上端とは、それぞれ、クロスメンバ35に固定されている。つまり、バッテリ固定材25Rの少なくとも一端(左側の上下方向材25Rbの上端、及び、右側の上下方向材25Rbの上端)がクロスメンバ35に固定されている。
【0032】
バッテリ固定材24L,24Rの上下方向材24Lb,24Rbは、下方に向かうほど前方に向かうように傾斜している。また、バッテリ固定材24L,24Rの上下方向材24Lb,24Rbは、下方に向かうほど減速機7に近づくように傾斜している。ここにおいて、本発明の「第2のバッテリ固定材」の一例としてバッテリ固定材24L,24Rが対応し得る。また、本発明の「第2の幅方向材」の一例として幅方向材24La,24Raが対応し得る。更に、本発明の「第2の上下方向材」の一例として上下方向材24Lb,24Rbが対応し得る。
【0033】
例えば鋼製であるU字状のバッテリ固定材21L,21R,22L,22R,24L,24R,25L,25Rについては、これらが取り付けられるクロスメンバ31,32,34,35の総合剛性を高める役割を果たし得る。
【0034】
減速機7は、その上部に取り付けられた減速機マウント40を介して、湾曲部33pにてクロスメンバ33に懸架されている。つまり、減速機7は、減速機マウント40を介して、クロスメンバ33に支持されている。
【0035】
これに加えて、本実施形態では、減速機7は、減速機マウント41を介して、バッテリ固定材22Lの右側の上下方向材22Lbに懸架されている。この減速機マウント41は、本発明の「第1の連結材」に対応し、減速機7をバッテリ固定材22Lに連結するように構成されている。
【0036】
本実施形態によれば、車両下部構造1は、電動モータ6と、電動モータ6に接続される減速機7と、電動モータ6に電力を供給可能な複数のバッテリ4L,4R,5L,5Rと、車両幅方向に間隔を空けて配置される一対のサイドメンバ2L,2Rと、車両幅方向に延びて一対のサイドメンバ2L,2Rを連結する複数のクロスメンバ31~35とを備える。複数のクロスメンバ31~35は、第1のクロスメンバ(例えばクロスメンバ32)と、第1のクロスメンバ(例えばクロスメンバ32)の後方に配置される第2のクロスメンバ(例えばクロスメンバ33)とを含む。複数のバッテリ4L,4R,5L,5Rは、車両幅方向に間隔を空けて配置される一対の第1のバッテリ(例えば前列バッテリ4L,4R)を含む。第1のバッテリ(例えば前列バッテリ4L,4R)間に減速機7の少なくとも一部が配置される。第1のバッテリ(例えば前列バッテリ4L,4R)が第1のクロスメンバ(例えばクロスメンバ32)に固定される。減速機7が第2のクロスメンバ(例えばクロスメンバ33)によって支持される。ゆえに、一対のサイドメンバ2L,2Rと、第1のクロスメンバ(例えばクロスメンバ32)と、第2のクロスメンバ(例えばクロスメンバ33)とによって構成される領域は車体剛性が向上するので、減速機7からの振動(特に低周波振動)を低減でき、減速機7の揺動も効果的に抑えられる。この振動の低減により、車室内での騒音を低減させることができる。また、前列バッテリ4L,4Rと減速機7とが第1のクロスメンバ(例えばクロスメンバ32)と第2のクロスメンバ(例えばクロスメンバ33)とによって支持されるので、重量物の分散配置ができ、ひいては車体の重量バランスを均一化することができる。この点も、車体剛性の向上に寄与し得る。更に、第1のバッテリ(例えば前列バッテリ4L,4R)間に減速機7の少なくとも一部が配置されるので、例えば側突時に減速機7に作用する衝撃が第1のバッテリ(例えば前列バッテリ4L,4R)によって軽減され得る。
【0037】
また本実施形態によれば、第1のバッテリ(例えば前列バッテリ4L,4R)は第1のバッテリ固定材(例えばバッテリ固定材22L,22R)を介して第1のクロスメンバ(例えばクロスメンバ32)に固定される。第1のバッテリ固定材(例えばバッテリ固定材22L,22R)は、車両幅方向に延びて第1のバッテリ(例えば前列バッテリ4L,4R)の底面を支持する第1の幅方向材(例えば幅方向材22La,22Ra)と、第1の幅方向材(例えば幅方向材22La,22Ra)の両端から立ち上がる一対の第1の上下方向材(例えば上下方向材22Lb,22Rb)と、によってU字状に構成されたベルト状部材である。第1のバッテリ固定材(例えばバッテリ固定材22L,22R)の少なくとも一端が第1のクロスメンバ(例えばクロスメンバ32)に固定される。第1の上下方向材(例えば上下方向材22Lb,22Rb)は、下方に向かうほど後方に向かうように傾斜している。ゆえに、例えば後突時に、第1のバッテリ(例えば前列バッテリ4L,4R)が慣性で後方に移動しようとしても、上述の傾斜した第1の上下方向材(例えば上下方向材22Lb,22Rb)が第1のバッテリ(例えば前列バッテリ4L,4R)の動きと相対するので、第1のバッテリ(例えば前列バッテリ4L,4R)の後退を低減することができる。
【0038】
また本実施形態によれば、車両下部構造1は、減速機7を第1のバッテリ固定材(例えばバッテリ固定材22L,22R)に連結する第1の連結材(例えば減速機マウント41)を備える。ゆえに、減速機7が第1のクロスメンバ(例えばクロスメンバ32)と第2のクロスメンバ(例えばクロスメンバ33)とによって懸架されるので、減速機7の揺動を更に低減することができる。
【0039】
また本実施形態によれば、複数のクロスメンバ31~35は、第2のクロスメンバ(例えばクロスメンバ33)の後方に配置される第3のクロスメンバ(例えばクロスメンバ34)を更に含む。複数のバッテリ4L,4R,5L,5Rは、減速機7の後方に配置される少なくとも1つの第2のバッテリ(例えば後列バッテリ5L,5Rの少なくとも1つ)を含む。第2のバッテリ(例えば後列バッテリ5L,5Rの少なくとも1つ)が第3のクロスメンバ(例えばクロスメンバ34)に固定される。ゆえに、第1のバッテリ(例えば前列バッテリ4L,4R)及び第2のバッテリ(例えば後列バッテリ5L,5Rの少なくとも1つ)からなるバッテリ配置の中央領域に減速機7や電動モータ6等が配置され得るので、前突時、後突時、及び/又は側突時に高圧配線を保護することができる。
【0040】
また本実施形態によれば、複数のクロスメンバ31~35は、第2のクロスメンバ(例えばクロスメンバ33)の後方に配置される第3のクロスメンバ(例えばクロスメンバ34)を更に含む。複数のバッテリ4L,4R,5L,5Rは、減速機7の後方に配置され、かつ、車両幅方向に間隔を空けて配置される一対の第2のバッテリ(例えば後列バッテリ5L,5R)を含む。第2のバッテリ(例えば後列バッテリ5L,5R)が第3のクロスメンバ(例えばクロスメンバ34)に固定される。ゆえに、第1のバッテリ(例えば前列バッテリ4L,4R)及び第2のバッテリ(例えば後列バッテリ5L,5R)からなるバッテリ配置の中央領域に減速機7や電動モータ6等が配置され得るので、前突時、後突時、及び/又は側突時に高圧配線を保護することができる。
【0041】
また本実施形態によれば、第2のバッテリ(例えば後列バッテリ5L,5R)は第2のバッテリ固定材(例えばバッテリ固定材24L,24R)を介して第3のクロスメンバ(例えばクロスメンバ34)に固定される。第2のバッテリ固定材(例えばバッテリ固定材24L,24R)は、車両幅方向に延びて第2のバッテリ(例えば後列バッテリ5L,5R)の底面を支持する第2の幅方向材(例えば幅方向材24La,24Ra)と、第2の幅方向材(例えば幅方向材24La,24Ra)の両端から立ち上がる一対の第2の上下方向材(例えば上下方向材24Lb,24Rb)と、によってU字状に構成されたベルト状部材である。第2のバッテリ固定材(例えばバッテリ固定材24L,24R)の少なくとも一端が第3のクロスメンバ(例えばクロスメンバ34)に固定される。第2の上下方向材(例えば上下方向材24Lb,24Rb)は、下方に向かうほど前方に向かうように傾斜している。ゆえに、例えば前突時に、第2のバッテリ(例えば後列バッテリ5L,5R)が慣性で前方に移動しようとしても、上述の傾斜した第2の上下方向材(例えば上下方向材24Lb,24Rb)が第2のバッテリ(例えば後列バッテリ5L,5R)の動きと相対するので、第2のバッテリ(例えば後列バッテリ5L,5R)の前進を低減することができる。従って、減速機7と第2のバッテリ(例えば後列バッテリ5L,5R)との干渉を低減することができる。
【0042】
次に、本発明の第2実施形態について図5を用いて説明する。図5は本実施形態における車両下部構造を下方から見た図である。上述の第1実施形態と異なる点について説明する。
【0043】
本実施形態では、減速機7は、減速機マウント42Lを介して、バッテリ固定材24Lの幅方向材24Laに連結されると共に、減速機マウント42Rを介して、バッテリ固定材24Rの幅方向材24Raに連結される。これら減速機マウント42L,42Rは、本発明の「第2の連結材」に対応し、減速機7をバッテリ固定材24L,24Rに連結するように構成されている。
【0044】
特に本実施形態によれば、車両下部構造1は、減速機7を第2のバッテリ固定材(例えばバッテリ固定材24L,24R)に連結する第2の連結材(例えば減速機マウント42L,42R)を備える。ゆえに、減速機7が更に第3のクロスメンバ(例えばクロスメンバ34)によって懸架されるので、減速機7の揺動を更に低減することができる。
【0045】
上述の第1及び第2実施形態において、バッテリ固定材21L,21Rの上下方向材21Lb,21Rbが、下方に向かうほど後方に向かうように傾斜してもよく、又は、下方に向かうほど前方に向かうように傾斜してもよい。同様に、バッテリ固定材25L,25Rの上下方向材25Lb,25Rbについても、下方に向かうほど後方に向かうように傾斜してもよく、又は、下方に向かうほど前方に向かうように傾斜してもよい。
【0046】
上述の第1及び第2実施形態では、前列バッテリ4L,4R間に、電動モータ6の少なくとも一部と、減速機7の少なくとも一部とが配置されていたが、これに代えて、後列バッテリ5L,5R間に、電動モータ6の少なくとも一部と、減速機7の少なくとも一部とが配置されてもよい。
【0047】
上述の第1及び第2実施形態では減速機7の後方に2つの後列バッテリ5L,5Rが配置されている例を示したが、減速機7の後方に配置される後列バッテリは2つに限らず、1つでもよく、又は3つ以上であってもよい。減速機7の後方に配置される後列バッテリが1つである場合には、例えば、上述の第1及び第2実施形態において、後列バッテリ5L,5Rの一方が省略されてもよい。又は、上述の第1及び第2実施形態において、後列バッテリ5L,5Rが一体化されて、車両幅方向中央部を跨ぐように構成されてもよい。
【0048】
上述の第1及び第2実施形態において、電動車両50に発電ユニットを搭載してこの発電ユニットをレンジエクステンダとして利用する場合には、例えば、車体後部49に当該発電ユニットを配置してもよい。この場合には、当該発電ユニットは、上面視でサイドメンバ2L,2R間に配置され得る。また、当該発電ユニットは、サイドメンバ2L,2Rより下位に配置され、かつ、デファレンシャル装置9の後方に配置され得る。当該発電ユニットにて発電された電力は、前列バッテリ4L,4R及び後列バッテリ5L,5Rの充電に用いられ得る。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて更なる変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1…車両下部構造、2L,2R…サイドメンバ、4L,4R…前列バッテリ(第1のバッテリ)、5L,5R…後列バッテリ(第2のバッテリ)、6…電動モータ、7…減速機、8…ドライブシャフト、9…デファレンシャル装置、10…後輪、11…ドライブシャフト、21L,21R…バッテリ固定材、21La,21Ra…幅方向材、21Lb,21Rb…上下方向材、22L,22R…バッテリ固定材(第1のバッテリ固定材)、22La,22Ra…幅方向材(第1の幅方向材)、22Lb,22Rb…上下方向材(第1の上下方向材)、24L,24R…バッテリ固定材(第2のバッテリ固定材)、24La,24Ra…幅方向材(第2の幅方向材)、24Lb,24Rb…上下方向材(第2の上下方向材)、25L,25R…バッテリ固定材、25La,25Ra…幅方向材、25Lb,25Rb…上下方向材、31…クロスメンバ、32…クロスメンバ(第1のクロスメンバ)、33…クロスメンバ(第2のクロスメンバ)、33p…湾曲部、34…クロスメンバ(第3のクロスメンバ)、35…クロスメンバ、40…減速機マウント、41…減速機マウント(第1の連結材)、42L,42R…減速機マウント(第2の連結材)、49…車体後部、50…電動車両
図1
図2
図3
図4
図5