(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048523
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】車両用バッテリ支持構造
(51)【国際特許分類】
B60R 16/04 20060101AFI20230331BHJP
B62D 25/08 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
B60R16/04 D
B62D25/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157887
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】植村 将典
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203BB34
3D203BB43
3D203CA57
3D203CA67
3D203CB04
3D203CB19
3D203DB06
(57)【要約】
【課題】バッテリを高い剛性で支えることが可能な車両用バッテリ支持構造を提供する。
【解決手段】バッテリ支持構造100のブラケット106は、上側ブラケット110と下側ブラケット112とを含む。上側ブラケット110は、天面部114と、天面部114の前縁から下方に延びる前壁部116と、天面部114の後縁から下方に延びる後壁部118とを有する。下側ブラケット112は、上側ブラケット110の下側に接合される上端部120と、上端部120から下方に延びる膨出部122と、膨出部122の前縁に沿っていてサイドメンバ108の側部に接合される前側フランジ124と、膨出部122の後縁に沿っていてサイドメンバ108の側部に接合される後側フランジ126とを有する。下側ブラケット112は、上側ブラケット110、パワーユニット搭載ルームの側壁、およびサイドメンバ108の間に閉断面E1を形成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のパワーユニット搭載ルームに配置されるバッテリと、該バッテリを支えるバッテリトレイと、該バッテリトレイを支えるブラケットとを備える車両用バッテリ支持構造において、
前記ブラケットは、
前記パワーユニット搭載ルームの車幅方向の端部の側壁に沿って車両前後方向に延びているサイドメンバの上側に設置される上側ブラケットと、
前記上側ブラケットの下側と前記サイドメンバとにわたって取り付けられる下側ブラケットとを含み、
前記上側ブラケットは、
前記バッテリトレイを支える天面部と、
前記天面部の前縁から下方に延びる前壁部と、
前記天面部の後縁から下方に延びる後壁部とを有し、
前記下側ブラケットは、
前記上側ブラケットの前記天面部の下側に接合される上端部と、
前記上端部から下方に延びて前記サイドメンバから離間している膨出部と、
前記膨出部の前縁に沿って形成され前記サイドメンバの車幅方向内側の側部に接合される前側フランジと、
前記膨出部の後縁に沿って形成され前記サイドメンバの車幅方向内側の側部に接合される後側フランジとを有し、
前記下側ブラケットは、前記上側ブラケット、前記パワーユニット搭載ルームの側壁、および前記サイドメンバの間に閉断面を形成することを特徴とする車両用バッテリ支持構造。
【請求項2】
前記膨出部は、前記上側ブラケットに近づくほど次第に前記サイドメンバから車幅方向内側に離間するよう膨出していることを特徴とする請求項1に記載の車両用バッテリ支持構造。
【請求項3】
前記膨出部は、前記サイドメンバの下端に到達する程度にまで前記上端部から下方に延びていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用バッテリ支持構造。
【請求項4】
前記下側ブラケットは、前記上側ブラケットの前記前壁部の後側および前記後壁部の前側に接合されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用バッテリ支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用バッテリ支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両のバッテリは、車両前部のエンジンやモータが搭載されるパワーユニット搭載ルームにおいて、車幅方向の片側の位置にブラケット等を利用して設置される。例えば、特許文献1のバッテリ取付構造では、
図2に示すように、バッテリ2が車幅方向左側のサイドフレーム1に第1ブラケット5および第2ブラケット6を利用して設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、相応の重量を有するバッテリは、走行中において振動の影響を受けやすい。特に、特許文献1の
図2のバッテリ2は、サイドフレーム1に対してやや車幅方向内側に設置されているため、車幅方向内側に倒れる方向への挙動を生じさせやすく、車体振動を悪化させる原因にもなりかねない。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑み、バッテリを高い剛性で支えることが可能な車両用バッテリ支持構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用バッテリ支持構造の代表的な構成は、車両のパワーユニット搭載ルームに配置されるバッテリと、バッテリを支えるバッテリトレイと、バッテリトレイを支えるブラケットとを備える車両用バッテリ支持構造において、ブラケットは、パワーユニット搭載ルームの車幅方向の端部の側壁に沿って車両前後方向に延びているサイドメンバの上側に設置される上側ブラケットと、上側ブラケットの下側とサイドメンバとにわたって取り付けられる下側ブラケットとを含み、上側ブラケットは、バッテリトレイを支える天面部と、天面部の前縁から下方に延びる前壁部と、天面部の後縁から下方に延びる後壁部とを有し、下側ブラケットは、上側ブラケットの天面部の下側に接合される上端部と、上端部から下方に延びてサイドメンバから離間している膨出部と、膨出部の前縁に沿って形成されサイドメンバの車幅方向内側の側部に接合される前側フランジと、膨出部の後縁に沿って形成されサイドメンバの車幅方向内側の側部に接合される後側フランジとを有し、下側ブラケットは、上側ブラケット、パワーユニット搭載ルームの側壁、およびサイドメンバの間に閉断面を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、バッテリを高い剛性で支えることが可能な車両用バッテリ支持構造を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施例に係る車両用バッテリ支持構造の概要を示す斜視図である。
【
図2】
図1のブラケットを分解して示した図である。
【
図3】
図1のバッテリ支持構造のA-A断面図である。
【
図4】
図3のバッテリ支持構造のB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施の形態に係る車両用バッテリ支持構造は、車両のパワーユニット搭載ルームに配置されるバッテリと、バッテリを支えるバッテリトレイと、バッテリトレイを支えるブラケットとを備える車両用バッテリ支持構造において、ブラケットは、パワーユニット搭載ルームの車幅方向の端部の側壁に沿って車両前後方向に延びているサイドメンバの上側に設置される上側ブラケットと、上側ブラケットの下側とサイドメンバとにわたって取り付けられる下側ブラケットとを含み、上側ブラケットは、バッテリトレイを支える天面部と、天面部の前縁から下方に延びる前壁部と、天面部の後縁から下方に延びる後壁部とを有し、下側ブラケットは、上側ブラケットの天面部の下側に接合される上端部と、上端部から下方に延びてサイドメンバから離間している膨出部と、膨出部の前縁に沿って形成されサイドメンバの車幅方向内側の側部に接合される前側フランジと、膨出部の後縁に沿って形成されサイドメンバの車幅方向内側の側部に接合される後側フランジとを有し、下側ブラケットは、上側ブラケット、パワーユニット搭載ルームの側壁、およびサイドメンバの間に閉断面を形成することを特徴とする。
【0010】
上記構成のブラケットは、下側ブラケットが上側ブラケット、パワーユニット搭載ルームの側壁、およびサイドメンバの間に閉断面を形成することで、ブラケット全体として高い剛性で設置することが可能になっている。よって、上記構成によれば、バッテリの上下方向や車幅方向等の振動を効率よく抑えることが可能になる。
【0011】
上記の膨出部は、上側ブラケットに近づくほど次第にサイドメンバから車幅方向内側に離間するよう膨出していてもよい。
【0012】
上記構成の膨出部を有する下側ブラケットによれば、上側ブラケットをより広い閉断面をもって支えることができるため、バッテリの振動を効率よく抑えることが可能になる。
【0013】
上記の膨出部は、サイドメンバの下端に到達する程度にまで上端部から下方に延びていてもよい。
【0014】
上記構成によれば、膨出部による閉断面がサイドメンバの下端にまでわたって形成されるため、バッテリの振動をより効率よく抑えることが可能になる。
【0015】
上記の下側ブラケットは、上側ブラケットの前壁部の後側および後壁部の前側に接合されていてもよい。
【0016】
上記構成によれば、下側ブラケットと上側ブラケットをより高い剛性で接合させ、バッテリの振動をより効率よく抑えることが可能になる。
【実施例0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
図1は、本発明の実施例に係る車両用バッテリ支持構造(以下、バッテリ支持構造100)の概要を示す斜視図である。以下、
図1その他の本願のすべての図面において、車両前後方向をそれぞれ矢印F(Forward)、B(Backward)、車幅方向の左右をそれぞれ矢印L(Leftward)、R(Rightward)、車両上下方向をそれぞれ矢印U(upward)、D(downward)で例示する。
【0019】
バッテリ支持構造100は、主に車両前部のパワーユニット搭載ルーム内に配置されるバッテリ102を支えるための構造物であって、ブラケット106を中心に構成されていて、特にバッテリ102の振動を抑えることを可能にしている。バッテリ102は、車両に電力を供給する部材であって、受け皿であるバッテリトレイ104に支えられた状態で、パワーユニット搭載ルーム内の車幅方向の左側に配置される。
【0020】
ブラケット106は、パワーユニット搭載ルーム内のサイドメンバ108付近に設置され、バッテリトレイ104の前側を下方から支える。サイドメンバ108は、パワーユニット搭載ルームの側部を構成するフレームであって、側壁128の下部に沿って車両前後方向に延びている。
【0021】
ブラケット106は、上側ブラケット110と下側ブラケット112とを組み合わせて構成されている。上側ブラケット110は、サイドメンバ108の上側とパワーユニット搭載ルームの側壁128とにわたって設置される。下側ブラケット112は、上側ブラケット110の下側からサイドメンバ108の車幅方向内側の側部138にわたって取り付けられる。
【0022】
図2は、
図1のブラケット106を分解して示した図である。
図2(a)は、
図1の上側ブラケット110を単独で示した図である。
【0023】
上側ブラケット110は、車幅方向内側に向かって先細りとなるように突出した形状をしていて、上方を向いた天面部114にてバッテリトレイ104(
図1参照)を支える。前壁部116は、天面部114の前縁から下方に延びるよう形成されている。後壁部118は、天面部114の後縁から下方に延びるよう形成されている。
【0024】
上側ブラケット110は、複数のフランジを利用して車両に設置される。フランジ130は、車幅方向外側の端部に形成されていて、パワーユニット搭載ルームの側壁128(
図1参照)に接合される。フランジ132は、前壁部116の下部に形成されていて、サイドメンバ108の上部136に接合される。フランジ134は、フランジ132よりも車幅方向内側における前壁部116の下部に形成されていて、サイドメンバ108の側部138に接合される。これらフランジ132、134と同様のフランジは、後壁部118の下部にも形成されている。
【0025】
図2(b)は、
図1の下側ブラケット112を単独で示した図である。下側ブラケット112の上端部120は、車幅方向内側に屈曲したフランジ状になっていて、上側ブラケット110の天面部114の下側に接合される。
【0026】
膨出部122は、上端部120から下方に延びている部位である。膨出部122は、下側ブラケット112をサイドメンバ108(
図1参照)に接合させたときに当該サイドメンバ108から離間した状態になるよう、車幅方向内側に膨出した形状になっている。
【0027】
前側フランジ124は、膨出部122の前縁に沿って形成されていて、サイドメンバ108の側部138(
図1参照)に接合される。後側フランジ126もまた、膨出部122の後縁に沿って形成されていて、サイドメンバ108の側部138に接合される。下部フランジ140は、サイドメンバ108の下端142の付近に接合される。
【0028】
図3は、
図1のバッテリ支持構造100のA-A断面図である。下側ブラケット112は、上述した膨出部122を利用して、上側ブラケット110、パワーユニット搭載ルームの側壁128、およびサイドメンバ108の間に閉断面E1を形成する。
【0029】
ブラケット106は、下側ブラケット112が上側ブラケット110からパワーユニット搭載ルームの側壁128およびサイドメンバ108にわたる領域との間に閉断面E1を形成することで、ブラケット106全体として高い剛性で設置することが可能になっている。特に、ブラケット106は、閉断面構造になっていることで、単に平板状の構造である場合や開断面構造である場合に比べて、様々な方向からの力に対して高い剛性を発揮することができる。よって、当該ブラケット106は、バッテリ102の上下方向や車幅方向等の振動を効率よく抑えることが可能になっている。
【0030】
下側ブラケット112の膨出部122は、上側ブラケット110に近づくほど次第にサイドメンバ108から車幅方向内側に離間するよう膨出している。例えば、膨出部122は、上部に傾斜部123が形成されている。傾斜部123は、上方に行くほどサイドメンバ108の車幅方向内側に向かうよう傾斜して延びて、上側ブラケット110の天面部114に接続している。
【0031】
上記構成の膨出部122を有する下側ブラケット112によれば、上側ブラケット110をより広い閉断面E1をもって支えることができるため、バッテリ102の振動を効率よく抑えることが可能になる。また、膨出部122は傾斜部123が車幅方向内側に傾斜して延びていることで、上側ブラケット110の天面部114のより車幅方向内側の部位を膨出部122によって支えることができ、バッテリトレイ104の上下方向のたわみ等を効率よく抑えることが可能になっている。
【0032】
膨出部122は、サイドメンバ108の下端142に到達する程度にまで上端部120から下方に延びた状態になって、上側ブラケット110を支えている。この構成によれば、膨出部122による閉断面E1がサイドメンバ108の下端142にまでわたって広く形成されるため、バッテリ102からかかる上下方向の荷重を効率よく吸収し、バッテリ102の振動をより効率よく抑えることが可能になる。
【0033】
図4は、
図3のバッテリ支持構造100のB-B断面図である。下側ブラケット112は、上側ブラケット110の前壁部116の後側および後壁部118の前側にも接合されている。すなわち、下側ブラケット112は、上側ブラケット110の前壁部116および後壁部118にもわたって閉断面E1を形成している。この構成によれば、下側ブラケット112と上側ブラケット110をより高い剛性で接合させ、バッテリ102の上下方向および前後方向の振動をより効率よく抑えることができる。
【0034】
上述したブラケット106の上側ブラケット110および下側ブラケット112は、共にパネル材料に曲げ加工を施すことで成形可能である。その他、これら上側ブラケット110および下側ブラケット112は、鋳造による鋳物部品としても実現可能である。
【0035】
以上のように、当該バッテリ支持構造100によれば、閉断面E1を形成するブラケット106を利用して、バッテリ102の振動性能を改善し、ひいてはバッテリ102からの入力に起因する音圧感度や車体のフロアの振動感度なども改善することが可能である。
【0036】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
100…バッテリ支持構造、102…バッテリ、104…バッテリトレイ、106…ブラケット、108…サイドメンバ、110…上側ブラケット、112…下側ブラケット、114…天面部、116…前壁部、118…後壁部、120…上端部、122…膨出部、123…傾斜部、124…前側フランジ、126…後側フランジ、128…側壁、130…フランジ、132…フランジ、134…フランジ、136…上部、138…側部、140…下部フランジ、142…下端、E1…閉断面