(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023048647
(43)【公開日】2023-04-07
(54)【発明の名称】モータ、及び同モータを用いた空気調和機
(51)【国際特許分類】
H02K 7/00 20060101AFI20230331BHJP
F24F 1/0018 20190101ALI20230331BHJP
F24F 1/0007 20190101ALI20230331BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20230331BHJP
F16F 15/10 20060101ALI20230331BHJP
F16F 15/126 20060101ALI20230331BHJP
F04D 29/053 20060101ALI20230331BHJP
F04D 29/66 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
H02K7/00 A
F24F1/0018
F24F1/0007 321
H02K7/14 A
F16F15/10 Y
F16F15/126 B
F04D29/053 A
F04D29/66 L
F04D29/66 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158079
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(72)【発明者】
【氏名】濱▲崎▼ 拓也
【テーマコード(参考)】
3H130
3L049
3L050
5H607
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB04
3H130AB26
3H130AB45
3H130AC11
3H130BA16G
3H130DD01X
3H130DE01X
3H130EA01D
3H130EA01G
3H130EC08G
3L049BB07
3L050BA03
5H607AA04
5H607BB01
5H607CC09
5H607DD07
5H607FF05
5H607JJ08
(57)【要約】
【課題】モータとシロッコファンと連結されるシャフトのねじり共振の振動を低減することで、ねじり共振による異音を低減させる。
【解決手段】 棒状のシャフト8でシロッコファン5と連結されるモータ4において、前記シャフト8は、前記モータ4と前記シロッコファン5の間に動吸振器6を備え、前記動吸振器6は、前記シャフト8に固定されるボス61と、前記ボス61の前記モータ4側で前記ボス61が細くなった固定部611に接着される防振ゴム62と、前記防振ゴム62に接着することで前記ボス61と係合されるプレート63と、前記プレート63と一体成型されたリング64で形成される。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状のシャフトを備え、同シャフトで送風ファンと連結されるモータにおいて、前記シャフトは、前記モータと前記送風ファンの間に動吸振器を備えることを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記動吸振器は、前記シャフトに固定されるボスと、前記ボスの前記モータ側で前記ボスの固定部に接着される防振ゴムと、前記防振ゴムに接着することで前記ボスと係合されるプレートと、前記プレートと一体成型されたリングで形成されることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記リングは薄い円盤形で、円盤形の中央に前記プレートが位置し、前記プレートと合わせておもりとなること特徴とする、請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の前記モータを用いた空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機等に使用されるモータと送風ファンから発生する騒音の対策に係るものである。
【背景技術】
【0002】
空気調和機などの家電製品に使用されるモータや送風ファン等の回転部品では、回転時の振動の低減による低騒音化が求められている。しかし、送風ファンをモータのシャフトに取り付けてモータが発生する回転トルクにより回転させる際に、送風ファンの重さの影響でモータと送風ファンを繋ぐシャフトがねじれる。シャフトには、ねじりを戻そうとする力も働くため、この二つの力が生じることでシャフトにねじり振動が発生する。このねじり振動の周波数が、モータの回転トルクに生じるトルク変動の周波数に近づくと、騒音の原因となる共振が発生する(以下、ねじり共振ともいう)。
【0003】
そこで、シャフトを部分的に細くすることで、ねじり振動の周波数とトルク変動の周波数をずらし、ねじり共振が発生しないようにして振動・騒音の低減を図ったものがある。(例えば特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
だが、モータと送風ファンを繋ぐシャフトを部分的に細くして、ねじり共振を防止できたとしても、シャフトの耐久性が落ちる可能性がある。
【0006】
本発明の課題は、シャフトの耐久性を落とすことなく、ねじり共振を防止できるモータと、同モータを用いた空気調和機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は棒状のシャフトで送風ファンと連結されるモータにおいて、前記シャフトは、前記モータと前記送風ファンの間に動吸振器を備えることを特徴とする。
【0008】
前記動吸振器は、前記シャフトに固定されるボスと、前記ボスの前記モータ側で前記ボスの固定部に接着される防振ゴムと、前記防振ゴムに接着することで前記ボスと係合されるプレートと、前記プレートと一体成型されたリングで形成されることを特徴とする。
【0009】
また、前記リングは薄い円盤形で、円盤形の中央に前記プレートが位置し、前記プレートと合わせておもりとなること特徴とする。
【0010】
前記モータは空気調和機に用いられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シャフトの耐久性を落とすことなく、ねじり共振を防止できるモータと、同モータを用いた空気調和機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る空気調和機を家屋に設置した状態を示す断面図。
【
図5】
図2の空気調和機の送風機室側の天板を外した状態の斜視図。
【
図7】本発明に係るモータとシャフトと送風機と動吸振器の側面図。
【
図12】従来の共振点の振幅と本発明の共振点の振幅の違いを示す図。
【
図13】送風機が2台ある空気調和機に搭載したモータとシャフトと送風機と動吸振器の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0014】
図1は本発明の実施例を示す断面図であり、
図2は本発明の実施の形態に係る空気調和機1の斜視図である。空気調和機1は、吊下金具11に連結されるボルト110で家屋の天井裏90に吊下げて設置する天井カセット形空気調和機である。
【0015】
鋼板で形成された直方体形状の筐体10の内部は、筐体10の中央を仕切る仕切板12により送風ファン5を備える送風機室2と、熱交換器31を備える熱交換器室3とに区画される。筐体10の側面には、仕切板12を挟んで送風機室2側の側面に吸込口13が開口され、熱交換器室3側の側面に吹出口14が開口されている。吸込口13は室内の天井91に設けられた室内側吸込口92とダクト94で、吹出口14は室内の天井91に設けられた室内側吹出口93とダクト95でそれぞれ連結されている。
尚、以下の説明で、筐体10は天井裏90側で天板15のある面を上面、室内の天井91側で底板16のある面を底面、吸込口13のある面を正面、吹出口14のある面を背面、後述するドレンパイプ34のある面を左側面、左側面の対面を右側面とする。
【0016】
【0017】
図3に示すように熱交換器室3には、熱交換器31と、熱交換器31の下方に熱交換器31から排出されるドレン水を受けるドレンシート32とドレンパン33を備える。ドレン水はドレンパン33から、
図2に示すドレンパイプ34に流れ、ドレンパイプ34に繋いだドレンホース(図示無し)で屋外に排出される。
【0018】
図4に示すように送風機室2には、左側面側に電装品ユニット7が配置され、電装品ユニット7を除く部分には、仕切板12に沿って電装品ユニット7の右側にモータ4と、その右側に送風ファン5が配置される。
【0019】
モータ4はモータ取付台41で仕切板12に固定される。モータ4は鋼板を積層して形成されたロータ(図示無し)を有し、ロータの中心部に形成したシャフト取付穴(図示無し)に細長い棒状のシャフト8が圧入して固定される。モータ4の両側には、シャフト8を回転自在に軸支した軸受け42および軸受け43を備える。
【0020】
送風ファン5はシロッコファンである。送風ファン5は、送風ファン5の中央にある円盤状の中央壁板51の中心にシャフト8が固定されることでモータ4と連結される。
【0021】
図3から
図5に示すように、送風ファン5はファンケース52で囲われている。ファンケース52は、仕切板12側にある開口53の周囲に爪とネジ(図示無し)を用いて仕切板12に固定される。ファンケース52の開口53と仕切板開口121が合致することで、送風ファン5が回転することによりファンケース52内に取り込まれた空気Sは開口53から仕切板開口121を通り熱交換器室3に送風される。
【0022】
図6は
図5のモータ部分の拡大図で、
図7はモータ4とシャフト8と送風ファン5と動吸振器6の正面図である。シャフト8は、軸受け43と送風ファン5の空気入口54の間に動吸振器6を備える。動吸振器6は、送風ファン5とロータとのねじり共振を抑制し振動・騒音の低減を図るものである。尚、後述する動吸振器6のリング64が可能な範囲でモータ寄りに配置されているため、送風ファン5に吸い込まれる空気の流れが動吸振器6で妨げられることはない。
【0023】
図8から
図10に動吸振器6を示す。
図8は動吸振器6の斜視図で、
図9は動吸振器6の分解図で、
図10は
図7のC-C断面図である
動吸振器6は、筒型で筒の中央の穴の中にシャフト8が挿入されるアルミダイカスト製のボス61と、ボス61のモータ4側の端の固定部611に固定されるボス61より外径が一回り大きいクロロプレンゴム製の防振ゴム62と、防振ゴム62の周囲に接着することでボス61と係合されるアルミダイカスト製の円盤形のプレート63と、プレート63の周囲に固定されてプレート63と一体となるポリプロピレン製の円盤形のリング64で形成される。
【0024】
リング64は動吸振器6の質量体(おもり)にあたり、シャフト8の振動をリング64に吸収させて代わりに振動させる。そこで、リング64の大きさと重さを調整することで、動吸振器6における最適な振動・騒音の低減を可能にする。
【0025】
プレート63は、リング64と防振ゴム62を結合する。また、リングと同じ動吸振器6のおもりとしての効果もある。
【0026】
防振ゴム62は、動吸振器6の減衰器にあたり、ねじり振動の振動である運動エネルギーを熱エネルギーに変換して消費することで、ねじり振動を減衰させる。
【0027】
ボス61は、ボス61の上部にあるネジ穴641にねじ込んだネジ65で、ボス61の中央に貫通したシャフト8が固定される。これによりリング64とプレート63と防振ゴム62もシャフト8に固定される。
【0028】
動吸振器6は、シャフト8におもりとなるリング64を取り付けることで、シャフト8の振動をリング64に吸収させて代わりに振動させることで、シャフト8の振動抑制を図るものである。また、防振ゴム62が減衰器となり、リング64の振動である運動エネルギーを熱エネルギーに変換して消費することでねじり振動を減衰させる。
図11は、「ねじり振動の固有値の理論式」で、
図12は振動と固有値の図である。これにより、シャフトがねじれにくいほど、固有値は高くなることがわかる。
【0029】
尚、動吸振器6は、シャフト8と軸受け43と送風ファン5の空気入口54の間に設けられるが、送風ファン5とモータ4の間は送風路になっているため、風の抵抗にならないように可能な限りモータ4寄りに設けるのが望ましい。
【0030】
また、筐体の大きさに問題がなければ、動吸振器6を、モータ4の端(動吸振器6→モータ4→送風ファン5)や、送風ファン5の端(モータ4→送風ファン5→動吸振器6)に設けてもよい。
【0031】
図13は、モータ4に2台の送風ファン5をシャフト8で連結したものである。この場合も、空気調和機1において、モータ4と送風ファン5を繋ぐシャフト8に動吸振器6を設けたことで、シャフト8に伝わっていた振動が動吸振器6で吸収される。これにより、シャフトを細くすることなく、ねじり共振回転数での異音を低減させ、共振回転数を使用可能となり、送風ファン5の振動が軽減される。
【0032】
以上により、空気調和機1において、モータ4と送風ファン5を繋ぐシャフト8に動吸振器6を設けたことで、シャフト8に伝わっていた振動が動吸振器6で吸収される。これにより、シャフトを細くするなどによりその耐久性を落とすことなくねじり共振を防止できる。このため、ねじり共振回転数での異音を低減させ、共振回転数を使用可能となり、送風ファン5の振動が軽減される。
【符号の説明】
【0033】
1:空気調和機、10:筐体、11:吊下金具、110:ボルト、12:仕切板、121:仕切板開口、13:吸込口、14:吹出口、15:天板、16:底板
2:送風機室
3:熱交換器室、31:熱交換器、32:ドレンシート、33:ドレンパン、34:ドレンパイプ
4:モータ、41:モータ取付台、42、43:軸受け
5:送風ファン、51:中央壁、52:ファンケース、53:開口、54:空気入口
6:動吸振器、61:ボス、62:防振ゴム、63:プレート、64:リング
7:電装品ユニット
8:シャフト
90:天井裏、91:天井、92:室内側吸込口、93:室内側吹出口、94、95:ダクト
S:空気