(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049179
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】多口継手及び配管システム
(51)【国際特許分類】
F16L 41/03 20060101AFI20230403BHJP
A62C 35/68 20060101ALI20230403BHJP
F16L 47/20 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
F16L41/03
A62C35/68
F16L47/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158763
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】太田 悠介
(72)【発明者】
【氏名】水川 賢司
(72)【発明者】
【氏名】秋山 尚文
(72)【発明者】
【氏名】山口 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】東 総介
【テーマコード(参考)】
2E189
3H019
【Fターム(参考)】
2E189CB02
2E189CG01
2E189CG04
3H019BA44
3H019BB01
(57)【要約】
【課題】施工性に優れていながら、火災が発生した際の止水性を確保できるため軽易耐熱試験に合格可能であり、消火配管システムに好適に使用できる多口継手と消火配管システムを提供することを課題とする。
【解決手段】管または管の一端に装着されたソケット20が、Oリング50を介して挿入される複数の受口を有する多口継手10であって、プロピレンとエチレンがランダム重合した樹脂で構成されており、前記プロピレンに基づく単位と前記エチレンに基づく単位の合計に対する前記プロピレンに基づく単位の割合[P/P+E]が、93~99質量%である、ことを特徴とする多口継手。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管または管の一端に装着されたソケットが、シーリング部材を介して挿入される複数の受口を有する多口継手であって、
プロピレンとエチレンがランダム重合した樹脂で構成されており、
前記プロピレンに基づく単位と前記エチレンに基づく単位の合計に対する前記プロピレンに基づく単位の割合[P/P+E]が、93~99質量%である、ことを特徴とする多口継手。
【請求項2】
前記複数の受口が、入側受口と、複数の出側受口とからなる、請求項1に記載の多口継手。
【請求項3】
前記樹脂の熱流束示差走査熱量測定による融点が135℃以上である、請求項1又は2に記載の多口継手。
【請求項4】
前記複数の受口は、最小肉厚が5.8mm以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の多口継手。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の多口継手と、前記複数の受口の各々に、シーリング部材を介して挿入された、管または管の一端に装着されたソケットを備える配管システム。
【請求項6】
前記管がいずれも樹脂製である、請求項5に記載の配管システム。
【請求項7】
さらに、前記管または前記管の先端に装着されたソケットが前記複数の受口の各々から抜けることを防止する固定部材を備える、請求項5又は6に記載の配管システム。
【請求項8】
消火配管システムである、請求項5~7のいずれか一項に記載の配管システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多口継手及び配管システムに関する。さらに詳しくは、スプリンクラー消火配管に適した多口継手及び配管システムに関する。
【背景技術】
【0002】
スプリンクラーは、火災発生時に被害が拡大しやすい場所や消火活動が困難な場所等に設置が義務付けられている消火設備である。スプリンクラー消火配管システムでは、給水用の主管から分岐管を通じて多数のスプリンクラーヘッドに水を分配できるようになっている。
【0003】
消火配管システムで使用される主管と分岐管との接続には、種々の継手が使用されている。
例えば、非特許文献1には、管との接触面に電熱線が埋設され、電気融着により管と一体化される合成樹脂管用多口継手が開示されている。また、特許文献1には、シーリング部材を用いてワンタッチで接続が行える多口継手が記載されている。このワンタッチ継手等のメカニカル継手は、止水性を確保するためにシーリング部材を使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】”三井消火配管システム エルメックス-SP”、[online]、2020年6月、三井化学資産株式会社、[令和3年6月17日検索]、インターネット<URL: https://www.mitsui-sanshi.co.jp/common/pdf/system/d40_4sp01/4sp01_catalog1.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1に開示された合成樹脂管用多口継手は電気融着によって管と一体化されるため、シーリング部材が不要で、火災が発生した際には管か継手が破壊されない限り漏水することはない。そのため、火災を想定した軽易耐熱試験(「合成樹脂製の管及び管継手の基準」(平成十三年三月三十日消防庁告示第十九号))に合格する配管システムの構築も可能である。しかし、融着工程は長時間かつ複雑であるため、施工性が悪い。
【0007】
これに対して、特許文献1の多口継手は管をワンタッチで接続することができるので施工が容易である。
しかし、火災が発生した際、多口継手構成する樹脂が熱により膨張してシーリング部材を加圧する力が弱まるため、止水性を確保するのに必要なシーリング圧縮率を維持しにくい。
【0008】
そのため、ワンタッチ継手等のメカニカル継手は、火災でスプリンクラーが正常に作動する前に漏水しやすく、軽易耐熱試験に合格できないため、限られた条件においてしか使用できなかった。
なお、多口継手を構成する樹脂が熱膨張することを考慮して、シーリング部材の圧縮率が高くなるように設計することも考えられるが、その場合、多口継手に管を挿入する際に強い力で挿入しなければならず、施工性が低下してしまう。
【0009】
本発明は上記事情に鑑み、施工性に優れていながら、火災が発生した際の止水性を確保できるため軽易耐熱試験に合格可能であり、消火配管システムに好適に使用できる多口継手と消火配管システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]管または管の一端に装着されたソケットが、シーリング部材を介して挿入される複数の受口を有する多口継手であって、
プロピレンとエチレンがランダム重合した樹脂で構成されており、
前記プロピレンに基づく単位と前記エチレンに基づく単位の合計に対する前記プロピレンに基づく単位の割合[P/P+E]が、93~99質量%である、ことを特徴とする多口継手。
[2]前記複数の受口が、入側受口と、複数の出側受口とからなる、[1]に記載の多口継手。
[3]前記樹脂の熱流束示差走査熱量測定による融点が135℃以上である、[1]又は[2]に記載の多口継手。
[4]前記複数の受口は、最小肉厚が5.8mm以上である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の多口継手。
[5][1]~[4]のいずれか一項に記載の多口継手と、前記複数の受口の各々に、シーリング部材を介して挿入された、管または管の一端に装着されたソケットを備える配管システム。
[6]前記管がいずれも樹脂製である、[5]に記載の配管システム。
[7]さらに、前記管または前記管の先端に装着されたソケットが前記複数の受口の各々から抜けることを防止する固定部材を備える、[5]又は[6]に記載の配管システム。
[8]消火配管システムである、[5]~[7]のいずれか一項に記載の配管システム。
【発明の効果】
【0011】
本発明の多口継手と消火配管システムによれば、施工性に優れていながら、火災が発生した際の止水性を確保できるため軽易耐熱試験に合格可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る多口継手10の斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る多口継手10の縦断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る多口継手10の製造方法を説明するための縦断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る配管システムで使用するソケット20の一例を示す斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る配管システムで使用するクリップ30の一例を示す斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る配管システムで使用するキャップ40の一例を示す斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る配管システムの最終組立前の状態を示す多口継手の受口近傍の縦断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る配管システムにおける多口継手の受口近傍を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[多口継手を構成する樹脂]
本発明の多口継手は、プロピレンとエチレンがランダム重合した樹脂(以下「樹脂(I)」という。)で構成される。
樹脂(I)におけるプロピレンに基づく単位とエチレンに基づく単位の合計に対するプロピレンに基づく単位の割合[P/P+E]は、93~99質量%である。
【0014】
樹脂(I)の[P/P+E]は、95~96質量%であることが好ましい。
樹脂(I)は[P/P+E]が93質量%以上であることにより、熱膨張率を低く、融点を高くしやすい。そのため、火災が発生した際の止水性が確保された多口継手を構成できる。[P/P+E]が99質量%以下であることにより、クリープ性能(長期耐久性)を確保しやすい。
【0015】
樹脂(I)は、本発明の効果を損なわない範囲で、プロピレンに基づく単位とエチレンに基づく単位以外のその他の単位の1種又は2種以上を含んでいてもよい。
その他の単位としては、1-ヘキセン等に基づく単位が挙げられる。
その他の単位を含む場合、その他の単位は、ランダムに含まれていることが好ましい。
樹脂(I)を構成する全単位に占める、プロピレンに基づく単位とエチレンに基づく単位の合計の割合は、98質量%以上であることが好ましく、99質量%であることがより好ましく、100%であることが特に好ましい。
【0016】
樹脂(I)は、本発明の作用効果を妨げない範囲で、上述した成分の他に、減粘剤、老化防止剤、可塑剤、難燃剤、安定剤、揺変性付与剤、離型剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、含浸剤、消泡剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂(I)100質量部に占める添加剤の配合量は、2質量部以下であることが好まししい。
【0017】
樹脂(I)の熱機械分析(TMA)による23℃における熱膨張率は10.2×10-5/K以下であることが好ましく、5.8×10-5/K以下であることがより好ましい。
熱膨張率が好ましい範囲の上限値以下であることによって、火災時にシーリング部材を加圧する力が弱まりにくく、止水性を確保するのに必要なシーリング圧縮率を維持しやすい。
【0018】
樹脂(I)の熱流束示差走査熱量測定による融点は135℃以上であることが好ましく、139℃以上であることがより好ましい。
融点が好ましい範囲の下限値以上であることによって、火災時に多口継手のシーリング部材に接している部分が溶融するまでの時間が長くなり、止水性をより確保しやすくなる。
【0019】
樹脂(I)のMRS(ISO 9080の方法1を用いて求めた、20℃水中において50年後に予測される長期静水圧強度の97.5%下方信頼性限界値σlCL(lower confidence limit))は、10MPa以上であることが好ましく、12.5MPa以上であることがより好ましい。
MRSが、好ましい範囲の下限値以上であることによって、信頼性の高い消火配管システムの構築が可能となる。
【0020】
樹脂(I)の市販品としては、例えばLyondellBasell社製、Hostalen PP XN112-I、BOREALIS社製、RA130E-8427等が挙げられる。
中でもLyondellBasell社製、Hostalen PP H5416Kが、供給が安定しているため好ましい。
【0021】
[多口継手の構造]
本発明の多口継手は、管または管の一端に装着されたソケットが、シーリング部材を介して挿入される複数の受口を有する。受口は、管または管の一端に装着されたソケットが挿入される部分である。複数の受口は、入側受口と、複数の出側受口とからなることが好ましい。
【0022】
以下、
図1、
図2に基づき、本発明の一実施形態に係る多口継手10について説明する。多口継手10は、
図1に示すように、本体部11と本体部11の底面近傍の周壁から四方に伸びる4つの分岐部12と、本体部11の上方に接続された入側受口13と、各分岐部12の先端に各々に接続された4つの出側受口14とで概略構成されている。
【0023】
図2に示すように、本体部11は、有底の略筒状とされ、上端には、入側受口13が接続される入側開口部11aが形成されている。また、底面近傍の周壁には、分岐部12が接続される出側開口部11bが周方向に沿って等間隔に形成されている。
本体部11の内径はほぼ均一とされ、外径は下方において、やや拡径している。すなわち、本体部11は上方か肉薄とされ、下方がやや肉厚とされている。
【0024】
4つの分岐部12は各々筒状とされ、出側開口部11bに接続されている。また、各分岐部12は、本体部11に接続された端部と反対側の先端に分岐部開口部12aが形成され、分岐部開口部12aに出側受口14が接続されている。
分岐部12の内径はほぼ均一とされ、外径は本体部11に接続する側において、やや拡径している。すなわち、分岐部12は先端側か肉薄とされ、本体部11に接続下側がやや肉厚とされている。
【0025】
入側受口13は、本体部11に接続された端部と反対側の先端から順に、受口側鍔部13a、外径が受口側鍔部13aより小さい肉薄部13b、外径が肉薄部13bより大きい基端部13cとされている。基端部13cの外径は、入側開口部11aにおける本体部11の外径より大きい。
入側受口13の内径は全体としてほぼ均一とされているが、受口側鍔部13a側の先端でやや拡径している。また、入側受口13の内径は入側開口部11aにおける本体部11の内径より大きく、本体部11と接続する部分の内側には、段部13dが形成されている。
【0026】
同様に、出側受口14は、分岐部12に接続された端部と反対側の先端から順に、受口側鍔部14a、外径が受口側鍔部14aより小さい肉薄部14b、外径が肉薄部14bより大きい基端部14cとされている。基端部14cの外径は、分岐部開口部12aにおける分岐部12の外径より大きい。
【0027】
出側受口14の内径は全体としてほぼ均一とされているが、受口側鍔部14a側の先端でやや拡径している。また、出側受口14の内径は分岐部開口部12aにおける分岐部12の内径より大きく、分岐部12と接続する部分の内側には、段部14dが形成されている。
なお、出側受口14の径は、全体として入側受口13よりも小さくされている。
【0028】
入側受口13には、多口継手10に向けて水を供給する給水用の主管ないしは主管からの分岐管の一端に装着されたソケットが挿入されるようになっている。また、4つの入側受口13の各々には、主管から水が分配される分岐管の一端に装着されたソケットが挿入されるようになっている。
【0029】
入側受口13の肉薄部13bと出側受口14の肉薄部14bの肉厚(入側受口13と出側受口14の最小肉厚)は、各々5.8mm以上であることが好ましい。
各受口は、最小肉厚が5.8mm以上であることにより、火災時に多口継手のシーリング部材に接している部分まで熱が伝わり溶融してしまうまでの時間が長くなり、止水性をより確保しやすくなる。
【0030】
各受口は、最小肉厚が9.8mm以下であることが好ましい。
各受口は、最小肉厚が9.8mm以下であることにより、多口継手10全体の大きさが過大となることを回避できる。また、クリップ等の固定部材を嵌合させやすくなる。
【0031】
多口継手10は、入側受口13に本体部11より外径が大きい部分があるため、通常の射出成型で一体成型することが困難である。
そこで、
図3に示すように、複数の部分に分割したものを各々成型しておき、それらをバット融着により接合して一体化することが好ましい。
【0032】
多口継手10は、
図3に示すように、例えば、本体部材15と入側受口部材16とに分け、別々に成型した本体部材15と入側受口部材16とをバット融着により接合して製造することができる。
本体部材15と入側受口部材16とは、各々射出成型により製造できる。その後、両部材の接合させる部分を一定温度に加熱されたヒーターに密着させて加熱融解し、その後融解した端部同士を圧着することによって、接合することができる。
【0033】
本体部材15は、本体部11から、入側受口13近傍部分である本体上部11dを除いた本体底部11cと、本体底部11cの底面近傍の周壁から四方に伸びる4つの分岐部12と、各分岐部12の先端に各々に接続された4つの出側受口14とで構成されている。
一方入側受口部材16は、入側受口13と本体部11の本体上部11dとで構成されている。
【0034】
[配管システム]
本発明の配管システムは、少なくとも多口継手と、多口継手の受口の各々に、シーリング部材を介して挿入された、管または管の一端に装着されたソケットを備える。また、必要に応じて、管または管の先端に装着されたソケットが受口の各々から抜けることを防止する固定部材を使用してもよい。固定部材は、単独の部材でも複数の部材の組み合わせでもよい。固定部材の種類や具体的形状に特に限定はないが、クリップ、キャップ、バンド等の1以上を適宜組み合わせて使用できる。
【0035】
多口継手により接続する管は、樹脂製でも金属製でもよいが、ボルトやナット等の使用が不要となることから、樹脂製であることか好ましい。
以下、配管システムの1実施形態として、多口継手10に
図4のソケット20を挿入し、
図5のクリップ30と
図6のキャップ40とで固定した配管システムについて説明する。
【0036】
ソケット20は、
図4に示すように、管が挿入される円筒状の管挿入部21と、入側受口13又は出側受口14に挿入される部分である接続部22と、管挿入部21と接続部22の間の中間部23とで概略構成されている。
なお、入側受口13と出側受口14の径の相違に応じて、入側受口13に挿入するソケット20の径は出側受口14に挿入するソケット20の径に対して、全体的に大きくされている。
【0037】
接続部22は略円筒状であるが、周面に2条の環状溝22aが形成されている。中間部23は、接続部22に隣接するソケット側鍔部23aと、管挿入部21に隣接する凸状23bと、ソケット側鍔部23aと凸状23bとの間であって、ソケット側鍔部23aと凸状23bより外径の小さい環状凹部23cとで構成されている。
ソケット20には、管挿入部21先端の挿入口21aから、図示を省略する管が挿入され固定される。そして、管が固定されたソケット20が、多口継手10の入側受口13又は出側受口14に挿入される。
【0038】
クリップ30は、
図5に示すように、U字型の連結部31と連結部31の両端に対して、U字型の外側に開く方向で接続された第1押さえ部32と、各第1押さえ部32の連結部31と反対側の端部に対して、内側に閉じる方向で接続された第2押さえ部33と、第2押さえ部33の第1押さえ部32と反対側の端部に対して、外側に開く方向で接続された先端部34とで概略構成されている。
また、連結部31の両端近傍から両端の各々に接続された第1押さえ部32にかけて、第1嵌合孔35が各々形成されている。また、一対の第1押さえ部32から第2押さえ部33にかけて第1嵌合孔35が、各々形成されている。
【0039】
キャップ40は、
図6に示すように、略矩形の枠体である枠状本体41と、枠状本体41の長手方向両端の中央部分に設けられた一対の押さえ爪42と、枠状本体41の長手方向に沿う1辺の両端側から立設する一対のリブ43とで概略構成されている。
一対のリブ43の間において、枠状本体41には、凹部41aが形成されている。
また、枠状本体41の長手方向に沿う他の1辺にも、凹部41aに対向する部分に凹部41bが形成されている。
【0040】
図7は、多口継手10の入側受口13にソケット20を挿入し、クリップ30を嵌め、キャップ40で固定する直前の状態を示す入側受口13近傍の縦断面図である。
図7に示すように、ソケット20の接続部22部分は、多口継手10の入側受口13の内側に挿入され、両部材の間は、環状溝22aに嵌められた2つのOリング50(シーリング部材)でシールされている。
【0041】
また、入側受口13の受口側鍔部13aの上面と、ソケット20の中間部23におけるソケット側鍔部23aの下面が当接した状態となっている。そして、この当接した受口側鍔部13aとソケット側鍔部23aとを、第1嵌合孔35と第2嵌合孔36内に挿入させた状態で、入側受口13の肉薄部13bとソケット20の中間部23における環状凹部23cとの部分を把持するようにして、クリップ30が嵌められている。
【0042】
この
図7の状態において、キャップ40は一対のリブ43がソケット20の中間部23における凸状23bとほぼ同じ高さとなるように配置されている。
そして、この
図7の状態におけるキャップ40をクリップ30に向けて押し込むと、
図8に示すように、クリップ30の先端部34がキャップ40の押さえ爪42内に嵌合し、クリップ30が固定され、本発明の1実施形態に係る配管システムが構築される。
なお、
図8は、多口継手10の受口側鍔部13aとソケット20のソケット側鍔部23aとの付け合わせ部分における横断面図である。
【0043】
受口近傍が
図8のように構成された配管システムは、電機融着を必要としないため、施工時間を短縮し、施工手間を大幅に改善することができる。また、多口継手10が樹脂(I)で構成されているため、火災時にもシーリング圧縮率を維持できるので、軽易耐熱試験に合格することができ適用場所の制限を受けない。
なお、
図7、
図8では、ソケット20を挿入した入側受口13近傍について説明したが、ソケット20を挿入した出側受口14近傍も同様である。
【0044】
[他の実施形態]
上記実施形態において、本体部11、分岐部12、入側受口13、出側受口14の具体的な寸法等に特に限定はない。
例えば本体部11の長さをさらに長くして、クリップ30を嵌めやすくすることが考えられる。
【0045】
また、上記実施形態ではクリップとキャップを使用して多口継手とソケットとを固定する方式としたが、固定部材を使用せずに固定できるワンタッチ接続や別の固定部材を用いた固定方法を採用してもよい。また、ソケットを用いず、管を直接受口に挿入して固定する構成、例えば、特許文献1のような構成にしてもよい。使用するシーリング部材の数にも特に限定はない。
具体的な固定方法に応じて、多口継手の受口の具体的な構造は適宜変更することができる。
【0046】
また、受口の数に限定はなく、1つの入側受口と1つの出側受口を設けてもよいし、1つの入側受口と2~3の出側受口を設けてもよいし、1つの入側受口と5つ以上の出側受口とを設けてもよい。
ただし、製造の容易性、使用する際の有用性等を考慮と、1つの入側受口と2~4の出側受口を設けることが好ましい。
受口の配置にも特に限定はなく、例えば、周方向ではなく、長手方向に出側受口が配列するような構成としてもよい。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【実施例0047】
[実験例]
図1、
図2に示す多口継手10における肉薄部13b、肉薄部14bの肉厚が、加熱時の漏水の生じやすさに与える影響を調べた。
多口継手10の材質としては、タキロンシーアイ社製、PPマルボーを用いた。
【0048】
試験に供した多口継手10の各部の寸法は、以下のとおりである。
出側受口14の内径:25.2mm
受口側鍔部14aの長さ:5.5mm
受口側鍔部14aの肉厚:4.2mm
肉薄部14bの長さ:7.0mm
肉薄部14bの肉厚:表1に記載のとおり。
基端部14cの長さ:14.0mm
基端部14cの肉厚:4.9mm
【0049】
漏水試験は、多口継手10の4つの出側受口14の1つのみを切削加工によって作製し、出側受口14にソケット20を挿入した。その後、出側受口14とソケット20をクリップ30とキャップ40を用いて固定し、出側受口14に接続した手押しポンプから水を供給し、円周応力が一定となるよう水圧を1.2MPa付近で保持した。
この状態で、ホットエアにより、初期温度25℃から昇温速度4℃/sで設定温度600℃まで加熱し、出側受口14とソケット20の接続部をホットエアの熱風放出ノズルが出側受口14とソケット20の接続部に接するようにして加熱することを継続し、漏水が生じるまでの時間を計測した。結果を表1に示す。
【0050】
【0051】
表1に示すように、受口の最小肉厚が5.8mmあれば、2分間以上漏水を防げることがわかった。