(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049181
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】鉄道用枕木及び鉄道用枕木の施工方法
(51)【国際特許分類】
E01B 3/00 20060101AFI20230403BHJP
E01D 19/12 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
E01B3/00
E01D19/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158768
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 康宏
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA07
2D059GG63
(57)【要約】
【課題】枕木の下側からフックボルトを挿入する必要がなく、大掛かりな作業を伴わずに鉄橋の縦桁に枕木をフックボルトで固定できる鉄道用枕木の提供。
【解決手段】鉄橋の縦桁上にフックボルトで固定される鉄道用枕木であって、縦桁に固定された状態での上面11a及び下面11bに開口しフックボルト31のフック部が通過できる貫通部12を有する枕木本体11と、枕木本体11に着脱可能な固定治具21とを備え、固定治具21は、上面11aにおける貫通部12の開口の少なくとも一部を閉じる蓋部21aを有する、鉄道用枕木。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄橋の縦桁上にフックボルトで固定される鉄道用枕木であって、
前記縦桁上に固定された状態での上面及び下面に開口し前記フックボルトのフック部が通過できる貫通部を有する枕木本体と、
前記枕木本体に着脱可能な固定治具とを備え、
前記固定治具は、前記上面における前記貫通部の開口の少なくとも一部を閉じる蓋部を有する、鉄道用枕木。
【請求項2】
前記固定治具が、前記蓋部から垂下する垂下部を有する、請求項1に記載の鉄道用枕木。
【請求項3】
前記固定治具が、前記貫通部を前記フックボルトのフック部が通過した状態で前記フックボルトの軸部を収容する中間部材を有する、請求項1又は2に記載の鉄道用枕木。
【請求項4】
前記貫通部を前記フックボルトのフック部が通過した状態で、前記フックボルトの軸部の周囲の上面が平坦面である、請求項1~3のいずれか一項に記載の鉄道用枕木。
【請求項5】
前記固定治具を前記枕木本体に装着した状態で、前記固定治具の上面と前記枕木本体の上面とが面一になる領域が存在する、請求項4に記載の鉄道用枕木。
【請求項6】
前記貫通部が、前記枕木本体の前記上面及び前記下面に開口する長孔、前記枕木本体の前記上面、前記下面、及び長手方向に垂直な端面に開口する切欠き、又は前記枕木本体の前記上面、前記下面、及び幅方向に垂直な側面に開口する切欠きである、請求項1~5のいずれか一項に記載の鉄道用枕木。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の鉄道用枕木を、鉄橋の縦桁上にフックボルトで固定する施工方法であって、
前記枕木本体を、固定された状態での上面が上側となるように前記縦桁上に載置し、
前記フックボルトを前記貫通部に上側から挿入し、前記枕木本体の下面から前記フックボルトのフック部を突出させて前記縦桁の固定位置に配置し、
前記固定治具を前記枕木本体に装着して、前記貫通部内における前記フックボルトの軸部の位置を固定し、
前記枕木本体の上面から突出した記フックボルトのネジ部にナットを螺合して締結する、鉄道用枕木の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄道用枕木、及び鉄道用枕木の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄橋の縦桁と枕木(横桁)を固定する技術としてフックボルトを用いる方法がある。
例えば特許文献1には、フックボルトの軸部を貫通させる孔(角孔)を有する枕木を、縦桁の上に載置し、枕木の下側からフックボルトの軸部を孔に挿入して、フックボルトのネジ部が枕木の上面から突出し、かつフック部を縦桁に引っかけた状態として、前記ネジ部にナットを螺合して締め付ける方法が記載されている。
【0003】
しかし、鉄橋に枕木を施工する際には、枕木の下側からフックボルトを孔に挿入する作業が難しい場合がある。
特許文献2には、枕木の下部の作業空間に余裕がない場合に、一旦、枕木の下面となる面が垂直となるように90°回転させた状態でフックボルトを差し込んだ後、元に戻す方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-49620号公報
【特許文献2】特開2021-67154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載の方法は、枕木の下側からフックボルトを挿入する必要はないが、枕木を回転させるという大掛かりな作業を伴う。
本発明は、枕木の下側からフックボルトを挿入する必要がなく、大掛かりな作業を伴わずに鉄橋の縦桁に枕木をフックボルトで固定できる、鉄道用枕木の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の態様を有する。
[1]鉄橋の縦桁上にフックボルトで固定される鉄道用枕木であって、前記縦桁上に固定された状態での上面及び下面に開口し前記フックボルトのフック部が通過できる貫通部を有する枕木本体と、前記枕木本体に着脱可能な固定治具とを備え、前記固定治具は、前記上面における前記貫通部の開口の少なくとも一部を閉じる蓋部を有する、鉄道用枕木。
[2]前記固定治具が、前記蓋部から垂下する垂下部を有する、[1]の鉄道用枕木。
[3]前記固定治具が、前記貫通部を前記フックボルトのフック部が通過した状態で前記フックボルトの軸部を収容する中間部材を有する、[1]又は[2]の鉄道用枕木。
[4]前記貫通部を前記フックボルトのフック部が通過した状態で、前記フックボルトの軸部の周囲の上面が平坦面である、[1]~[3]のいずれかの鉄道用枕木。
[5]前記固定治具を前記枕木本体に装着した状態で、前記固定治具の上面と前記枕木本体の上面とが面一になる領域が存在する、[4]の鉄道用枕木。
[6]前記貫通部が、前記枕木本体の前記上面及び前記下面に開口する長孔、前記枕木本体の前記上面、前記下面、及び長手方向に垂直な端面に開口する切欠き、又は前記枕木本体の前記上面、前記下面、及び幅方向に垂直な側面に開口する切欠きである、[1]~[5]のいずれかの鉄道用枕木。
[7][1]~[6]のいずれかの鉄道用枕木を、鉄橋の縦桁上にフックボルトで固定する施工方法であって、前記枕木本体を、固定された状態での上面が上側となるように前記縦桁上に載置し、前記フックボルトを前記貫通部に上側から挿入し、前記枕木本体の下面から前記フックボルトのフック部を突出させて前記縦桁の固定位置に配置し、前記固定治具を前記枕木本体に装着して、前記貫通部内における前記フックボルトの軸部の位置を固定し、前記枕木本体の上面から突出した記フックボルトのネジ部にナットを螺合して締結する、鉄道用枕木の施工方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、枕木の下側からフックボルトを挿入する必要がなく、大掛かりな作業を伴わずに鉄橋の縦桁に枕木をフックボルトで固定できる、鉄道用枕木を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る枕木本体の一例を示す図であり、(a)は上方から見た平面図、(b)は(a)中に示すB-B線に沿う断面図、(c)は(a)中に示すC-C線に沿う断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る固定治具の一例を示す図であり、(a)は上方から見た平面図、(b)は(a)中に示すB-B線に沿う断面図、(c)は(a)中に示すC-C線に沿う断面図である。
【
図3】本実施形態の鉄道用枕木を鉄橋の縦桁上に固定した状態を示す斜視図である。
【
図5】固定治具の変形例(1)を示す図であり、(a)は上方から見た平面図、(b)は(a)中に示すB-B線に沿う断面図、(c)は(a)中に示すC-C線に沿う断面図である。
【
図6】固定治具の変形例(2)を示す図であり、(a)は上方から見た平面図、(b)は(a)中に示すB-B線に沿う断面図、(c)は(a)中に示すC-C線に沿う断面図である。
【
図7】固定治具の変形例(3)を示す図であり、(a)は上方から見た平面図、(b)は(a)中に示すB-B線に沿う断面図、(c)は(a)中に示すC-C線に沿う断面図である。
【
図8】固定治具の変形例(4)を示す図であり、(a)は上方から見た平面図、(b)は(a)中に示すB-B線に沿う断面図、(c)は(a)中に示すC-C線に沿う断面図、(d)は固定治具を装着する前の枕木本体の上面の平面図である。
【
図9】固定治具の変形例(5)を示す図であり、(a)は上方から見た平面図、(b)は(a)中に示すB-B線に沿う断面図、(c)は(a)中に示すC-C線に沿う断面図である。
【
図10】固定治具の変形例(6)を示す図であり、(a)は上方から見た平面図、(b)は(a)中に示すB-B線に沿う断面図、(c)は(a)中に示すC-C線に沿う断面図である。
【
図11】固定治具の変形例(7)を示す図であり、(a)は上方から見た平面図、(b)は(a)中に示すB-B線に沿う断面図、(c)は(a)中に示すC-C線に沿う断面図である。
【
図12】固定治具の変形例(8)を示す図であり、(a)は上方から見た平面図、(b)は(a)中に示すB-B線に沿う断面図、(c)は(a)中に示すC-C線に沿う断面図、(d)は(b)中に示すD-D線に沿う断面図である。
【
図13】枕木本体の変形例(9)を示す図であり、(a)は上方から見た平面図、(b)は(a)中に示すB-B線に沿う断面図、(c)は(a)中に示すC-C線に沿う断面図である。
【
図14】枕木本体の変形例(10)を示す図であり、(a)は上方から見た平面図、(b)は(a)中に示すB-B線に沿う断面図、(c)は(a)中に示すC-C線に沿う断面図である。
【
図15】枕木本体の変形例(11)を示す図であり、(a)は上方から見た平面図、(b)は(a)中に示すB-B線に沿う断面図、(c)は(a)中に示すC-C線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態に係る鉄道用枕木及び鉄道用枕木の施工方法を説明する。
なお、以下の図は、その構成をわかりやすく説明するための模式図であり、各構成要素の寸法比率等は、実際とは異なる場合がある。
【0010】
本実施形態の鉄道用枕木は、枕木本体11と、枕木本体11に着脱可能な固定治具21を備える。
図1は、枕木本体11の例の要部を示したものである。図の(a)は上方から見た平面図、(b)は(a)中に示すB-B線に沿う断面図、(c)は(a)中に示すC-C線に沿う断面図である(以下、特に断りがない限り同様である)。
図2(a)~(c)は、固定治具21の例を示したものである。
【0011】
枕木本体11は四角柱状である。
枕木本体11の材質は、特に問わない。木、合成樹脂、繊維強化プラスチック(FRP)等が例示できる。例えば、一般的に鉄橋の製造に用いられるガラス繊維補強ウレタン発泡体、又は木が好ましい。
【0012】
本実施形形態の鉄道用枕木は、
図3、4に示すように、鉄橋の鋼桁(縦桁)41上にフックボルト31で固定されるものである。
図3は斜視図、
図4は
図3の要部を拡大して示した断面図である。なお
図3、4では固定治具21の図示を省略する。
鋼桁41は、例えば長尺のH型鋼からなり、一対の鋼桁41を略平行に敷設する。鋼桁41の長手方向において、複数の鉄道用枕木を間隔をあけて設置する。鉄道用枕木を鉄橋の鋼桁41上に固定した状態で、枕木本体11の長手方向は鋼桁41の長手方向と直交する。
【0013】
フックボルト31は、棒状の軸部31bと、軸部31bの下端に連設した略J字状のフック部31aと、軸部31bの上端に連設したネジ部31cを有する。符号Oは軸部31bの回転軸を示す。軸部31bの横断面形状は特に問わない。例えば円形でもよく、四角形でもよい。
回転軸Oに対して垂直方向における、フック部31aの大きさの最大値を、フック部31aの最大幅wとする。
【0014】
枕木本体11を鋼桁41上に固定した状態で、上側となる面を上面11a、下側(鋼桁41側)となる面を下面11b、枕木本体11の長手方向に垂直な面を端面11c、枕木本体11の幅方向に垂直な面を側面11dとする。
枕木本体11は、上面11a及び下面11bに開口する貫通部12を有する。貫通部12は、上面11aから下面11bに向かってフックボルト31が通過できる大きさ及び形状であればよい。
本実施形態において、貫通部12は、丸孔が枕木本体11の長手方向に伸びた長孔であり、長孔の長軸方向が枕木本体11の長手方向である。貫通部12は、角孔が枕木本体11の長手方向に伸びた長孔でもよい。
貫通部12の長軸方向における長さL1は、フック部31aの最大幅w以上である。
貫通部12の短軸方向における長さL2は、フック部31aが通過でき、かつ軸部31bを収容できる大きさである。貫通部12の短軸方向の長さL2と軸部31bの径との差は2~20mmが好ましく、5~15mmがより好ましい。
【0015】
貫通部12の長軸方向の長さL1は、フック部31aが通過できる大きさであり、軸部31bを収容するには大きすぎて、軸部31bの位置を固定できない。このため、フック部31aの通過後に、枕木本体11の上面11aに固定治具21を装着し、貫通部12のうち軸部31bを収容する部分の開口面積を小さくする。
固定治具21は、貫通部12内の軸部31bが、貫通部12の長軸方向に移動するのを規制するように設けて、軸部31bの位置を固定する。すなわち、固定治具21の蓋部21aと、貫通部12内の軸部31bとが近接するように固定治具21を配置することが好ましい。
【0016】
図2に示すように、固定治具21は、上面11aにおける貫通部12の開口の一部を閉じる板状の蓋部21aと、蓋部21aを挟んで両側にそれぞれ連設した張り出し部21bを有する。張り出し部21bは蓋部21aと同じ厚さの板状であり、蓋部21aの上面と張り出し部21bの上面は面一である。蓋部21aと張り出し部21bは同じ材質である。これらは一体成形してもよく、溶接してもよい。
固定治具の材質としては、ステンレス鋼(SUS)、鉄製、FRP製、熱可塑プラスチック製、セラミック製が挙げられる。鉄製のフックボルトとの耐電蝕、フックボルトの振動による耐摩擦の点では鉄製が好ましい。
【0017】
固定治具21を枕木本体11に取り付ける際は、貫通部12の短軸方向に沿って固定治具21を横架させ、張り出し部21bを上面11aの所定の位置に、固定部材22で固定する。
本実施形態によれば、貫通部12の内壁と蓋部21aとで軸部31bの移動を制限して、軸部31bの位置を固定できる。
【0018】
固定部材22は、例えばネジでもよく、接着剤でもよく、ネジと接着剤を組み合わせてもよい。接着剤としては、例えばエポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、フェノール系接着剤が挙げられる。
固定部材22がネジである場合、ネジの数は特に問わない。ネジの数が多いほど、固定の安定性が向上する。例えば4個以上が好ましい。
【0019】
本実施形態の鉄道用枕木を鋼桁41上に固定する方法は、まず、枕木本体11を鋼桁41上の所定の固定位置に載置する。このとき、上面11aを上側とする。
次いで、フックボルト31を貫通部12に上側から挿入し、下面11bからフック部31aを突出させ、鋼桁41のフランジ41aの固定位置に配置する。
この状態で、貫通部12内にはフックボルト31の軸部31bが存在し、上面11aからネジ部31cが突出する。
次いで、上面11aの所定位置に固定治具21を装着し、貫通部12内における軸部31bの位置を固定する。
次いで、ネジ部31cに、必要に応じて座金33を外装した後、ナット32を螺合して締結し、鋼桁41に枕木本体11を固定する。
【0020】
本実施形態によれば、枕木本体11の上面11aを上側として、鋼桁41上に載置して固定作業を行うため、枕木を回転させる作業が必要ない。
貫通部12は、フックボルト31のフック部31aが通過できる大きさであるため、枕木の下側からフックボルトを挿入する必要がない。
フックボルト31の配置、固定治具21の固定、及びナット32の締め付けを全て上側から操作できるため、枕木の下部の空間が狭い場合にも、大掛かりな作業を伴わずに固定できる。
【0021】
<変形例(1)>
図5に固定治具の変形例を示す。
本例の固定治具23は、蓋部23a及び張り出し部23bに加えて、蓋部23aから垂下する垂下部23cを有する。蓋部23aと垂下部23cは、貫通部12の長軸方向に垂直な面が面一である。
張り出し部23bは上記実施形態の張り出し部21bと同様である。蓋部23aと張り出し部23bと垂下部23cとは同じ材質である。これらを一体成形してもよく、適宜分割して溶接してもよい。
固定治具23を枕木本体11に取り付ける際には、張り出し部23bを上面11aの所定位置に固定し、垂下部23cを貫通部12内に挿入する。貫通部12内に垂下部23cを挿入した状態で、貫通部12内には、フックボルト31の軸部31bを収容する収容部12aと、中空部12bと、これらを隔てる垂下部23cが存在する。
本例では、枕木本体11の高さ方向において、貫通部12の深さと垂下部23cの長さが同じであり、収容部12aが筒状の空間となる。
本例によれば、貫通部12の内壁と蓋部23aと張り出し部23bとで軸部31bの移動を制限して、軸部31bの位置を固定できる。軸部31bの移動を制限する部材として、蓋部23aに加えて垂下部23cを有するため、軸部31bの位置の固定がより安定する。
【0022】
<変形例(2)>
図6に固定治具の変形例を示す。本例の固定治具23が
図5の変形例(1)と異なる点は、張り出し部23bを大きくし、固定部材22の数を増やした点である。
本例において、張り出し部23bは、枕木本体11を上から見たときに、蓋部23aに隣接する部分に加えて、中空部12bに隣接する部分にも存在する。
本例によれば、固定部材22の数を多くできるため、枕木本体11に固定治具23をより強固に固定できる。
【0023】
<変形例(3)>
図7に固定治具の変形例を示す。本例の固定治具23が
図6の変形例(2)と異なる点は、垂下部23cを貫通部12の長軸方向に延ばして中空部12bを中実にした点である。蓋部23aと張り出し部23bと垂下部23cとは同じ材質である。一体成形してもよく、適宜分割して溶接してもよい。
固定治具23を枕木本体11に取り付ける際には、張り出し部23bを上面11aの所定位置に固定し、垂下部23cを貫通部12内に挿入する。貫通部12内に垂下部23cを挿入すると、貫通部12内の空間が収容部12aのみとなる。
本例によれば、収容部12a内に固定された軸部31bが、垂下部23cを押す方向に移動しようとしても垂下部23cが動かないため、軸部31bの位置の固定がより安定する。
【0024】
<変形例(4)>
図8に枕木本体及び固定治具の変形例を示す。
図8(d)は、固定治具24を装着する前の枕木本体11の上面11aの平面図である。
本例は、枕木本体11の上面11aに張り出し部24bを収容する凹部13を設けた例である。
本例の固定治具24が
図5の変形例(1)と異なる点は、蓋部24a及び張り出し部24bの面積を大きくし、垂下部24cを蓋部24aの一部に設けた点である。中空部12bには蓋部24aが存在し、かつ垂下部24cが存在しない部分がある。
本例では、枕木本体11の高さ方向において、蓋部24aの厚さと垂下部24cの長さの合計が貫通部12の深さと同じである。張り出し部24bは蓋部24aと同じ厚さの板状である。
上面11aに設けた凹部13を、上から見た平面形状は、張り出し部24bの平面形状より若干大きく、凹部13の深さは張り出し部24bの厚さと同じである。
固定治具24を枕木本体11に装着した状態で、張り出し部24bは凹部13に嵌合し、蓋部24aの上面と張り出し部24bの上面と枕木本体11の上面11aが面一になる。
本例によれば、固定治具24を装着した状態で枕木本体11の上面11aが平坦面になる。このため、上面11aから突出するネジ部31cに座金33を外装してナット32で締結する際に、座金33の座面が傾かず、座金33を枕木本体11の高さ方向に対して垂直に保って締結できる。
【0025】
[実施例(1)]
図8に示す形状の鉄道用枕木を製造し、鋼桁41上にフックボルト31で固定した。
フックボルト31は、軸部31bの横断面形状が円形(直径19mm)の丸フックボルトを用いた。フックボルト31のフック部31aの最大幅wは100mmである。
枕木本体11の材質はガラス繊維補強ウレタン発泡体を用いた。枕木本体11のサイズは、長手方向の長さが2600mm、高さ及び幅が200mmである。
枕木本体11を鋼桁41上に固定したときに、フックボルト31の軸部31bが収容部12aに位置するように、枕木本体11に貫通部12を設けた。貫通部12の長軸方向は枕木本体11の長手方向と平行とした。貫通部12の長軸方向の長さL1は140mm、短軸方向の長さL2は32mmとした。
枕木本体11の上面11aに凹部13を形成した。貫通部12の長軸方向における凹部13の長さs1は42mm、短軸方向における凹部13の長さs2は41mm、凹部13の深さは4mmとした。貫通部12の長軸方向において垂下部24cから収容部12aの内面までの距離s3は23mmとした。
固定治具24の材質は鉄製とした。貫通部12の長軸方向における固定治具24の長さt1は40mm、短軸方向における固定治具24の長さt2は110mmとした。
貫通部12の長軸方向における垂下部24cの幅t3は10mm、蓋部24a及び張り出し部24bの厚さt4は4mmとした。
固定部材22として六角フランジタッピンねじ(φ8-首下50mm)を用いた。
【0026】
<変形例(5)>
図9に固定治具の変形例を示す。
図8の変形例(4)では、枕木本体11の上面11aに凹部13を設けて、固定治具24の上面と枕木本体11の上面11aとを面一にしたが、本例は上面11aに凹部を設けず、収容部12aの周囲において固定治具25の上面と枕木本体11の上面11aとを面一にした例である。
本例において、垂下部25cを蓋部25aの一部に設けた点は変形例(4)と同じである。
中空部12bに存在する蓋部25aには張り出し部25bが連設されており、垂下部25cが存在する部分の蓋部25aには張り出し部25bが連設されていない。
中空部12bに存在する蓋部25aの上面と張り出し部25bの上面とは面一であるが、この部分の蓋部25aは張り出し部25bより肉厚であり、下面に段部25eが存在する。
中空部12bに存在する蓋部25aの上面と、垂下部25cが存在する部分の蓋部25aの上面とは面一でなく、上面に段部25fが存在する。
垂下部25cが存在する部分においては、蓋部25aの厚さと垂下部25cの長さの合計が貫通部12の深さと同じであり、蓋部25aの上面と枕木本体11の上面11aとが面一である。
本例によれば、固定治具25を装着した状態で、収容部12aの周囲において、固定治具25の上面と、枕木本体11の上面11aが面一になる。このため、収容部12aを貫通したフックボルト31のネジ部31cに、座金33を外装してナット32で締結する際に、座金33の座面が傾かず、座金33を枕木本体11の高さ方向に対して垂直に保って締結できる。
【0027】
<変形例(6)>
図10に固定治具の変形例を示す。本例は軸部31bの横断面形状が四角形である場合に好適な例である。
本例の固定治具23が
図6の変形例(2)と異なる点は、垂下部23cの収容部12a側に角筒状の中間部材23eを設けた点である。中間部材23eは垂下部23cと同じ材質であり、垂下部23cと一体化されている。中間部材23eの上端面は枕木本体11の上面11aと面一である。
中間部材23eは、フックボルト31の軸部31bを収容する。軸部31bの横断面形状が四角形である場合、貫通部12の長軸方向における中間部材23eの内寸と軸部31bの一辺の長さとの差、及び貫通部12の短軸方向における中間部材23eの内寸と軸部31bの一辺の長さとの差は、いずれも0.1~5mmが好ましく、0.5~2mmがより好ましい。
本例によれば、フックボルト31の軸部31bの外面と、貫通部12の内面との間に中間部材23eが存在するため、貫通部12の内面の摩擦摩耗を防止できる。
【0028】
<変形例(7)>
図11に固定治具の変形例を示す。本例の固定治具23が
図10の変形例(6)と異なる点は、枕木本体11を上から見たときに、収容部12aの周囲を含む領域に張り出し部23bが存在するように、張り出し部23bの面積を大きくした点である。
中間部材23eの上端は張り出し部23bと一体化されている。
蓋部23aと張り出し部23bと中間部材23eの上面は面一である。すなわち、固定治具23の上面は平坦面である。
本例によれば、収容部12aを貫通したフックボルト31のネジ部31cに、座金33を外装してナット32で締結する際に、座金33の全周が固定治具23の上面上に存在する。したがって、座金33の座面が傾かず、座金33を枕木本体11の高さ方向に対して垂直に保って締結できる。
【0029】
<変形例(8)>
図12に固定治具の変形例を示す。
図12(d)は、
図12(b)に示すD-D線に沿う断面図である。
本例の固定治具23が
図11の変形例(7)と異なる点は、枕木本体11を上から見たときに、中空部12bに隣接する部分に張り出し部23bが存在しない点である。
本例によれば、変形例(7)と同様に、固定治具23の上面が平坦面であり、収容部12aを貫通したフックボルト31のネジ部31cに、座金33を外装してナット32で締結する際に、座金33の全周が固定治具23の上面上に存在するため、座金33の座面が傾かず、座金33を枕木本体11の高さ方向に対して垂直に保って締結できる。
加えて、変形例(7)に比べて、固定治具21の体積と固定部材22の数を減らすことができる。
【0030】
[実施例(2)]
図12に示す形状の鉄道用枕木を製造し、鋼桁41上にフックボルト31で固定した。
フックボルト31は、軸部31bの横断面形状が正方形(一辺の長さ19mm)の角フックボルトを用いた。フックボルト31のフック部の最大幅wは100mmである。
枕木本体11の材質はガラス繊維補強ウレタン発泡体を用いた。枕木本体11のサイズは、長手方向の長さが2600mm、高さ及び幅が200mmである。
枕木本体11を鋼桁41上に固定したときに、フックボルト31の軸部31bが収容部12aに位置するように、枕木本体11に貫通部12を設けた。貫通部12の長軸方向は枕木本体11の長手方向と平行とした。貫通部12の長軸方向の長さL1は140mm、短軸方向の長さL2は32mmとした。
固定治具23の材質は鉄製とした。貫通部12の長軸方向における固定治具23の長さt1は100mm、短軸方向における固定治具23の長さt2は110mm、蓋部23a及び張り出し部23bの厚さt4は4mmとした。
貫通部12の長軸方向における垂下部23cと中間部材23eの合計の幅u1は36mmとした。中間部材23eの横断面において、内面形状は一辺の長さが22mmの正方形である。
固定部材22として六角フランジタッピンねじ(φ8-首下50mm)を用いた。
【0031】
<変形例(9)>
図13に枕木本体の変形例を示す。
本例の枕木本体11が、
図1に示す上記実施形態と異なる点は、貫通部12が、枕木本体11の上面11a及び下面11bに加えて、長手方向に垂直な端面11cにも開口する切欠きである点である。
上記実施形態と同様に、貫通部12の長軸方向における長さL1は、フック部31aの最大幅w以上であればよい。貫通部12の短軸方向における長さL2は、フック部31aが通過でき、かつ軸部31bを収容できる大きさである。
本例の鉄道用枕木を鋼桁41上に固定する方法は、上記実施形態と同様である。
本例によれば、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0032】
<変形例(10)>
図14に枕木本体の変形例を示す。
本例の枕木本体11が、
図1に示す上記実施形態と異なる点は、貫通部12である長孔の向きを変えた点である。
上記実施形態では、長孔の長軸方向が枕木本体11の長手方向であるが、これに限らない。例えば、
図14に示すように、長孔の短軸方向が枕木本体11の長手方向であってもよい。
本例の鉄道用枕木を鋼桁41上に固定する場合は、フックボルト31を貫通部12に上側から挿入し、下面11bからフック部31aを突出させた後、フックボルト31を回転軸Oを中心に回転させて、フック部31aを鋼桁41のフランジ41aの固定位置に配置する。
したがって、貫通部12の短軸方向における長さL2は、フック部31aが通過でき、かつ軸部31bが回転軸Oを中心に回転できる大きさとする。貫通部12の長軸方向における長さL1は、フック部31aの最大幅w以上であればよい。
本例によれば、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0033】
<変形例(11)>
図15に枕木本体の変形例を示す。
本例の枕木本体11が、
図14に示す変形例(10)と異なる点は、貫通部12が、枕木本体11の上面11a及び下面11bに加えて、幅方向に垂直な側面11dにも開口する切欠きである点である。
変形例(10)と同様に、貫通部12の長軸方向における長さL1は、フック部31aの最大幅w以上であればよい。貫通部12の短軸方向における長さL2は、フック部31aが通過でき、かつ軸部31bが回転軸Oを中心に回転できる大きさとする。
本例の鉄道用枕木を鋼桁41上に固定する方法は、変形例(10)と同様である。
本例によれば、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0034】
なお、貫通部12の長軸方向の向きは上記の例に限らず、適宜設定可能である。枕木本体11の材質がガラス長繊維を含む繊維強化プラスチック又は木の場合、枕木本体11の強度の点では、貫通部12の長軸方向をガラス長繊維又は木繊維に略平行として、貫通部12を形成する際に切断されるガラス長繊維又は木繊維を低減することが好ましい。
また、上記変形例(6)~(8)では中間部材23eを角筒状としたが、中間部材23eの形状はこれに限らず、適宜設定可能である。中間部材23eは、フックボルト31の軸部31bの外面と貫通部12の内面の間の、少なくとも一部に介在する部材を備え、両面の摩擦を低減できる形状であればよい。
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0035】
11 枕木本体
11a 上面
11b 下面
11c 端面
11d 側面
12 貫通部
12a 収容部
12b 中空部
13 凹部
21、23、24、25 固定治具
21a、23a、24a、25a 蓋部
21b、23b、24b、25b 張り出し部
22 固定部材(ネジ)
23c、24c、25c 垂下部
23e 中間部材
25e、25f 段部
31 フックボルト
31a フック部
31b 軸部
31c ネジ部
32 ナット
33 座金
w フック部の最大幅
41 鋼桁(縦桁)
41a フランジ