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特開2023-49295排水口用保護具及びルーフドレーンの施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049295
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】排水口用保護具及びルーフドレーンの施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/04 20060101AFI20230403BHJP
   E04D 11/00 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
E04D13/04 E
E04D11/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158953
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】寺地 信治
(72)【発明者】
【氏名】後藤 友佑
(57)【要約】
【課題】屋上、バルコニー等を施工する際に、排水口を保護する。
【解決手段】スラブ上面に形成された排水口を覆う排水口用保護具200であって、天壁部210と、前記天壁部210の下面から下方に延びる2以上の脚部と、前記2以上の脚部の外方に位置し前記天壁部210の下面から下方に延びる第一の囲繞壁部220と、を有し、前記第一の囲繞壁部220は、前記天壁部210の軸線O1回りに周回し、前記排水口を覆った状態で、前記第一の囲繞壁部220の下端と前記スラブ上面とが離間することよりなる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラブ上面に形成された排水口を覆う排水口用保護具であって、
天壁部と、前記天壁部の下面から下方に延びる2以上の脚部と、前記2以上の脚部の外方に位置し前記天壁部の下面から下方に延びる第一の囲繞壁部と、を有し、
前記第一の囲繞壁部は、前記天壁部の軸線回りに周回し、
前記排水口を覆った状態で、前記第一の囲繞壁部の下端と前記スラブ上面とが離間する、排水口用保護具。
【請求項2】
前記脚部と前記第一の囲繞壁部とを間に、第二の囲繞壁部を有し、
前記第二の囲繞壁部は、前記天壁部の軸線回りに周回している、請求項1に記載の排水口用保護具。
【請求項3】
前記天壁部には、前記第一の囲繞壁部と前記第二の囲繞壁部との間に、切断予定線を有する、請求項2に記載の排水口用保護具。
【請求項4】
前記脚部は前記第二の囲繞壁部の内面に接している、請求項2又は3に記載の排水口用保護具。
【請求項5】
前記天壁部は、その周縁から中心に向かうに従い窄んでいる、請求項1~4のいずれか一項に記載の排水口用保護具。
【請求項6】
樹脂成形体である、請求項1~5のいずれか一項に記載の排水口用保護具。
【請求項7】
着色されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の排水口用保護具。
【請求項8】
請求項1に記載の排水口用保護具を用いたルーフドレーンの施工方法であって、
前記脚部を下方とし、前記第一の囲繞壁部の下端と前記スラブ上面とが離間した状態で前記排水口を前記排水口用保護具で覆う工程と、
前記排水口用保護具で前記排水口を覆った状態で、前記スラブ上面に防水シートを接着する工程と、
前記スラブ上面に前記防水シートを接着した後に、前記排水口用保護具を取り除き、前記排水口にルーフドレーンを設ける工程と、
を有する、ルーフドレーンの施工方法。
【請求項9】
請求項2~4のいずれか一項に記載の排水口用保護具を用いたルーフドレーンの施工方法であって、
前記脚部を下方とし、前記第一の囲繞壁部の下端及び前記第二の囲繞壁部の下端と前記スラブ上面とが離間した状態で前記排水口を前記排水口用保護具で覆う工程と、
前記第一の囲繞壁部と前記第二の囲繞壁部との間で前記天壁部を切断し、前記第二の囲繞壁部よりも外方を取り除き、残部を小径保護具とする工程と、
前記第二の囲繞壁部の下端が前記スラブ上面と接した状態で、前記小径保護具で前記排水口を覆い、前記スラブ上面に防水シートを接着する工程と、
前記スラブ上面に前記防水シートを接着した後に、前記小径保護具を取り除き、前記排水口にルーフドレーンを設ける工程と、
を有する、ルーフドレーンの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水口用保護具及びルーフドレーンの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の屋上、バルコニーのスラブには、排水口が形成されている。この排水口は、下方に延びるドレーン管に接続され、雨水等は排水口からドレーン管へ排水される。
排水口には、ルーフドレーンが設けられることがある。ルーフドレーンを設けることで、排水効率の向上等が図られる。
例えば、特許文献1には、排水部材と接続短管とを備え、排水部材は接続短管の上端に螺合され、接続短管の下端はドレーン管と接続される樹脂配管接続部が形成されているルーフドレーンが提案されている。特許文献1の発明によれば、排水部材とドレーン管との接続の効率化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-153224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、屋上等に排水口を形成し、排水口にルーフドレーンを設けるまでの施工の間、排水口がむき出しになる。この施工の間に、硬質の異物(ボルト、ナット等の部品、スパナ等の工具等)が誤って排水口から侵入し、ドレーン管内に落下すると、ドレーン管を破損するおそれがある。このため、屋上等を施工する際に、排水口を保護する必要がある。
そこで、本発明は、排水口を保護する排水口用保護具を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の態様を有する。
<1>
スラブ上面に形成された排水口を覆う排水口用保護具であって、
天壁部と、前記天壁部の下面から下方に延びる2以上の脚部と、前記2以上の脚部の外方に位置し前記天壁部の下面から下方に延びる第一の囲繞壁部と、を有し、
前記第一の囲繞壁部は、前記天壁部の軸線回りに周回し、
前記排水口を覆った状態で、前記第一の囲繞壁部の下端と前記スラブ上面とが離間する、排水口用保護具。
<2>
前記脚部と前記第一の囲繞壁部とを間に、第二の囲繞壁部を有し、
前記第二の囲繞壁部は、前記天壁部の軸線回りに周回している、<1>に記載の排水口用保護具。
<3>
前記天壁部には、前記第一の囲繞壁部と前記第二の囲繞壁部との間に、切断予定線を有する、<2>に記載の排水口用保護具。
<4>
前記脚部は前記第二の囲繞壁部の内面に接している、<2>又は<3>に記載の排水口用保護具。
<5>
前記天壁部は、その周縁から中心に向かうに従い窄んでいる、<1>~<4>のいずれかに記載の排水口用保護具。
<6>
樹脂成形体である、<1>~<5>のいずれかに記載の排水口用保護具。
<7>
着色されている、<1>~<6>のいずれかに記載の排水口用保護具。
【0006】
<8>
<1>に記載の排水口用保護具を用いたルーフドレーンの施工方法であって、
前記脚部を下方とし、前記第一の囲繞壁部の下端と前記スラブ上面とが離間した状態で前記排水口を前記排水口用保護具で覆う工程と、
前記排水口用保護具で前記排水口を覆った状態で、前記スラブ上面に防水シートを接着する工程と、
前記スラブ上面に前記防水シートを接着した後に、前記排水口用保護具を取り除き、前記排水口にルーフドレーンを設ける工程と、
を有する、ルーフドレーンの施工方法。
<9>
<2>~<4>のいずれかに記載の排水口用保護具を用いたルーフドレーンの施工方法であって、
前記脚部を下方とし、前記第一の囲繞壁部の下端及び前記第二の囲繞壁部の下端と前記スラブ上面とが離間した状態で前記排水口を前記排水口用保護具で覆う工程と、
前記第一の囲繞壁部と前記第二の囲繞壁部との間で前記天壁部を切断し、前記第二の囲繞壁部よりも外方を取り除き、残部を小径保護具とする工程と、
前記第二の囲繞壁部の下端が前記スラブ上面と接した状態で、前記小径保護具で前記排水口を覆い、前記スラブ上面に防水シートを接着する工程と、
前記スラブ上面に前記防水シートを接着した後に、前記小径保護具を取り除き、前記排水口にルーフドレーンを設ける工程と、
を有する、ルーフドレーンの施工方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の排水口用保護具によれば、施工中の排水口を保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態のルーフドレーンの断面図である。
図2】(a)本発明の一実施形態に係る排水口用保護具の平面斜視図である。(b)本発明の一実施形態に係る排水口用保護具の底面斜視図である。(c)図2(a)のC1-C1断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る排水口用保護具の使用方法を説明する工程図である。
図4】本発明の一実施形態に係る排水口用保護具の使用方法を説明する工程図である。
図5】(a)他の実施形態に係る排水口用保護具の平面斜視図である。(b)他の実施形態に係る排水口用保護具の底面斜視図である。(c)図5(a)のC2-C2断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(ルーフドレーン)
ルーフドレーンの一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、屋上やバルコニーのスラブ(ルーフスラブ)Sの抜孔Saに設けられた状態のルーフドレーン100の断面図である。
本実施形態のルーフドレーン100は、いわゆるサイフォン式のルーフドレーンである。
【0010】
ルーフドレーン100の下端部には、建築物の内部を通って下方に延びるドレーン管Eが接続されている。ルーフドレーン100は、アンカー14でスラブSに固定されている。
【0011】
ルーフドレーン100は、ベースプレート10と、クランプリング20と、バッフル30とを有する。
【0012】
ベースプレート10は、ドレーン管Eとルーフドレーン100とをスラブSの抜孔Saに対して位置決めする機能と、ドレーン管Eとルーフドレーン100とを接続する機能とを有する。
ベースプレート10は、ドレーン管Eに連結可能な連結管11cを含む落とし口部11と、落とし口部11の周囲から円錐状に拡がる傾斜部12と、4つのバッフル支持柱13と、を有している。ベースプレート10は、その底面から下方に突出するアンカー14を有する。
【0013】
落とし口部11は、ドレーン管Eに連結可能な連結管11cと、連結管11cから傾斜部12までの間の遷移部11tとを有する。
連結管11cは、開口部Dを有する環状体である。連結管11cは、ドレーン管Eに設けられた雄ねじに螺合可能な雌ねじを有している。
遷移部11tの下端又は内縁端は、連結管11cの上端に接合されており、上端又は外縁端は、傾斜部の下端又は内縁端に接続されている。遷移部11tと傾斜部12とは、一体に形成されている。
【0014】
連結管11cから傾斜部12に至る遷移部11tは、テーパ形状である。即ち、遷移部11tは、下方から上方に向かうに従い内径が拡がっている。これにより、落とし口部11にある水を効果的に加速して、落とし口部11からドレーン管Eまで速やかに流すことができる。なお、遷移部11tは、内側に向けて凸に円弧状に湾曲する内側部と、その内側部の外周縁と一体に接続されて水平面に沿う平坦な外側部と、を含んでよい。
【0015】
傾斜部12は、円環状である。傾斜部12の下端又は内縁端は、落とし口部11に一体に接続している。傾斜部12の上端又は外縁端は、円形状であり、連結管11cの管軸Yと直交する面HL、スラブSの上面又は水平面に沿って配置される。傾斜部12は、下方から上方に向かうに従い拡がる内径を有している。
【0016】
傾斜部12の上面は、連結管11cの管軸Yと直交する面HLに対して、10°以上60°以下の範囲の傾斜角度θで傾斜している。これにより、傾斜部12より上方に集まる水の流量(水量)が低くても、重力により加速させて落とし口部11に到達させ、高い流速でドレーン管Eに流すことができる。よって、低水量での排水性能を高くできる。なお、連結管11cの管軸Yと直交する面HLは、水平面であってよい。
【0017】
バッフル支持柱13は、落とし口部11の上面から上方に突出する棒状体である。本実施形態において、バッフル支持柱13は、開口部Dの周りに等間隔で配置されている。バッフル支持柱13の数は、特に限定されないが、例えば、2~12とされる。バッフル支持柱13の下端は、落とし口部11の上面に接合されている。バッフル支持柱13は、クランプリング20の貫通孔21gを貫通し、ワッシャ及びナット等の適宜の係止具(不図示)によりバッフル30と接続されている。
【0018】
クランプリング20は、ベースプレート10の上方に設けられている。
クランプリング20は、防水シートFをベースプレート10との間に挟んで固定する機能を有する。
クランプリング20は、円環状で板状のクランプベース21と、クランプベース21の外周縁21eの全周から上方に延びるリップ22を有している。クランプリング20は、クランプベース21の外周縁21eの全周から上方に延びるリップ22を有しているので、剛性を高められる。
【0019】
クランプベース21は、中央に開口部21aを有している。スラブSの上を流れる水は、この開口部21aを通って、ドレーン管Eに流れる。クランプベース21は、バッフル支持柱13を通すための貫通孔21gを2箇所以上有している。これにより、ベースプレート10に対するクランプリング20の位置決めを確実にできる。
【0020】
バッフル30は、落とし口部11の上方に配置される蓋部31と、蓋部31の周囲に設けられる縦リブ32と、を有している。
【0021】
蓋部31は、落とし口部11の上方からの空気を取り込みにくくして、ドレーン管Eによるサイフォン効果を高める機能を有する。蓋部31は、連結管11cの開口部Dの上方を覆っている。蓋部31は、管軸Yを中心とする円盤状である。蓋部31は、落とし口部11から上方に離間して設けられる。平面視において、蓋部31は、遷移部11tの全体を覆う大きさである。即ち、蓋部31の外周縁の径は、落とし口部11の遷移部11tの外周縁の径より大きい。
【0022】
縦リブ32は、ベースプレート10の周囲から集まる水を整流して、空気を取り込む渦を生じさせにくくして、ドレーン管Eによるサイフォン効果を高める機能を有する部材である。縦リブ32は、管軸Yを通る面に沿って、管軸Yから外方に放射状に延びる板状体である。縦リブ32は、管軸Yから放射状に、均等な間隔で、複数設けられている。
【0023】
縦リブ32の下端は、クランプリング20の上面に沿う形状である。これにより、スラブSの上面より下方の、クランプリング20の上面を伝って流れる水が低流量であっても、流れる水に縦リブ32の下端が作用して、渦の発生を抑制するように確実に整流できる。なお、縦リブ32の下端は、ベースプレート10の上面に沿う形状であってもよい。
【0024】
(排水口用保護具)
本発明の排水口用保護具は、天壁部と、天壁部の下面から下方に延びる脚部と、脚部の外方に位置し天壁部の下面から下方に延びる第一の囲繞壁部とを有する。
以下、図面を参照して排水口用保護具を説明する。
【0025】
図2の排水口用保護具200は、平面視真円形の天壁部210と、円筒状の第一の嵌合筒部230と、第一の囲繞壁部220とを有する。本実施形態において、第一の嵌合筒部230が脚部である。
【0026】
天壁部210は、平面視真円形で平滑な平板部214と、平板部214の周縁から下方に延びる拡径部216とを有する。拡径部216は、下方に向かうに従い径が大きくなっている。即ち、天壁部210は、その周縁から中心に向かうに従い窄んでいる。天壁部210が中心に向かうに従い窄んでいることで、天壁部210上の雨水等が天壁部210の上面を伝って、より速やかに落下する。
【0027】
天壁部210の下面には、4つの第一の嵌合筒部230が設けられている。4つの第一の嵌合筒部230は、排水口用保護具200の軸線O1回りに、略等間隔で配置されている。なお、第一の嵌合筒部230の数は、2つ以上であれば特に制限されないが、例えば12以下が好ましい。また、2つ以上の第一の嵌合筒部230は、軸線O1回りに等間隔でなくてもよい。
本実施形態において、第一の嵌合筒部230の内径は、バッフル支持柱13の外径よりも小さくなっている。なお、第一の嵌合筒部230の内径は、バッフル支持柱13の外径と同じでもよいし、大きくてもよい。但し、排水口19に対する排水口用保護具200の上下方向の位置関係を自在とするためには、第一の嵌合筒部230の内径は、バッフル支持柱13の外径より小さい方が好ましい。
【0028】
図2(c)に示すように、第一の嵌合筒部230は、下端234から上方(天壁部210方向)に向かう切れ込み232が形成されている。後述のルーフドレーンの施工方法において、第一の嵌合筒部230の内径がバッフル支持柱13の外径より小さく、切れ込み232が形成されていることで、第一の嵌合筒部230にバッフル支持柱13を挿入すると、切れ込み232が広がりつつ、第一の嵌合筒部230がバッフル支持柱13を受け入れる。この際、第一の嵌合筒部230に対するバッフル支持柱13の挿入の程度を変えることで、排水口19に対する排水口用保護具200の上下方向の位置関係を自在にできる。
この切れ込み232は、1つの第一の嵌合筒部230について、1つでもよいし、2つ以上でもよい。第一の嵌合筒部230が切れ込み232を2つ以上有する場合、切れ込み232の上限は4つ以下が好ましい。
【0029】
第一の囲繞壁部220は、天壁部210の周縁から下方に延びている。第一の囲繞壁部220は、天壁部210の周縁を周回している。これにより、第一の囲繞壁部220は、4つの第一の嵌合筒部230の外方に位置し、4つの第一の嵌合筒部230を囲んでいる。
【0030】
本実施形態において、天壁部210の下面には、4つの第一の嵌合筒部230と第一の囲繞壁部220との間に第二の囲繞壁部240が設けられている。第二の囲繞壁部240は、軸線O1回りに周回している。また、第二の囲繞壁部240は、4つの第一の嵌合筒部230と接している。即ち、4つの第一の嵌合筒部230は、第二の囲繞壁部240の内面に接している。
本実施形態において、第二の囲繞壁部240の下端244は、第一の嵌合筒部230の下端234よりも、下方に位置している。
本実施形態において、第二の囲繞壁部240の下端244は、第一の囲繞壁部220の下端224と同等又は下方に位置する(即ち、下端244は、下端224と同等又は天壁部210から離れる方向に位置する)のが好ましく、下端244は下端224よりも下方に位置することがより好ましい。下端244が下端224よりも下方に位置することで、傾斜部12の形状に沿ったものとなる。
【0031】
天壁部210には、第一の囲繞壁部220と第二の囲繞壁部240との間に切断予定線212が形成されている。切断予定線212は、軸線O1回りに周回している。本実施形態の切断予定線212は、天壁部210の上面に形成された凹条である。なお、切断予定線212は、凸条でもよいし、天壁部210の下面に形成された凹条でもよいし、印刷による表示でもよい。
【0032】
天壁部210には、第一の囲繞壁部220と第二の囲繞壁部240との間に、円筒状の8つの第二の嵌合筒部250が設けられている。8つの第二の嵌合筒部250は、軸線O1回りに等間隔で配置されている。なお、第二の嵌合筒部250の数は、2つ以上であれば特に制限されないが、例えば12以下が好ましい。また、第二の嵌合筒部250は、軸線O1回りに等間隔でなくてもよい。
なお、第二の嵌合筒部250を有することで、バッフル支持柱13がより大径の円周上に設けられている場合にも対応できる。
【0033】
図2(c)に示すように、第二の嵌合筒部250は、下端254から上方に向かう切れ込み252が形成されている。
【0034】
本実施形態において、第一の嵌合筒部230と、第二の囲繞壁部240と、切断予定線212と、第二の嵌合筒部250と、第一の囲繞壁部220とは、この順で、軸線O1を中心に同心円上に位置している。
【0035】
天壁部210、第一の囲繞壁部220及び第二の囲繞壁部240の厚さは、互いに同じであってもよいし、互いに異なってもよい。
【0036】
排水口用保護具200の素材は、特に限定されないが、樹脂が好ましい。即ち、排水口用保護具200は、樹脂成形体が好ましい。排水口用保護具200の樹脂としては、ポリオレフィンがより好ましく、ポリプロピレンがさらに好ましい。
排水口用保護具200に用いられる樹脂は、リサイクル原料由来でもよい。排水口用保護具200は、ルーフドレーンの施工後に取り除かれ廃棄されるため、高度な機械強度を要しない。
排水口用保護具200の使用は短期間である。このため、排水口用保護具200は、耐候性を要しない。即ち、排水口用保護具200は、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を含まなくてもよい。
【0037】
排水口用保護具200は、少なくとも天壁部210の上面に着色されていることが好ましい。排水口用保護具200は、コンクリートを打設し、これを硬化してスラブSを形成する間にも用いられる。このため、排水口用保護具200は、スラブSと識別できるように、着色されていることが好ましい。排水口用保護具200の色調は、コンクリートと識別できれば特に限定されず、例えば、緑、赤、黄、青等が挙げられる。
排水口用保護具200は、天壁部210の上面のみに塗装が施されていてもよいし、排水口用保護具200全体が着色されていてもよい。
【0038】
(ルーフドレーンの施工方法)
以下に本実施形態の排水口用保護具を用いたルーフドレーンの施工方法について、説明する。
本実施形態のルーフドレーンの施工方法は、排水口を排水口用保護具で覆う工程(1)と、排水口用保護具を小径保護具とする工程(2)と、排水口を小径保護具で覆い、スラブ上面に防水シートを接着する工程(3)と、小径保護具を取り除き、排水口にルーフドレーンを設ける工程(4)とを有する。
【0039】
<工程(1)>
工程(1)は、排水口用保護具で排水口を覆う工程である。
図3(a)に示すように、落とし口部11を抜孔Saに挿入し、連結管11cとドレーン管Eとをつなぐ。アンカー14がスラブS内に位置するように、スラブSを打設する。こうして、スラブSにベースプレート10を固定する。この時点で、ベースプレート10の開口部で形成される排水口19は、上方に開口している。また、ベースプレート10は、スラブSの一部となる。
【0040】
排水口用保護具200の第一の嵌合筒部230内にバッフル支持柱13を受け入れて、第一の嵌合筒部230とバッフル支持柱13とを嵌合する。こうして、排水口用保護具200で排水口19を塞ぐ。この際、第一の囲繞壁部220の下端224と第二の囲繞壁部240の下端234とをベースプレート10の上面から離間させる(図3(b))。即ち、第一の囲繞壁部220の下端224と第二の囲繞壁部240の下端234とは、スラブS上面から離間している。
【0041】
下端224とベースプレート10の上面との距離d1は、例えば、1~20mmが好ましく、5~15mmがより好ましい。距離d1が上記下限値以上であれば、排水口用保護具200で排水口19を覆った状態で、雨水等が排水口19へより円滑に流入できる。距離d1が上記上下値以下であれば、部品、工具等が排水口19からドレーン管E内に落下するのをより良好に防止できる。
【0042】
下端234とベースプレート10の上面との距離d2は、例えば、1~20mmが好ましく、5~15mmがより好ましい。距離d2が上記下限値以上であれば、排水口用保護具200で排水口19を覆った状態で、雨水等が排水口19へより円滑に流入できる。距離d2が上記上下値以下であれば、部品、工具等が排水口19からドレーン管E内に落下するのをより良好に防止できる。
なお、距離d1と距離d2とは同じでもよいし、異なってもよい。また、距離d1及び距離d2のいずれか一方のみが上記範囲(1~20mm)で、他方が上限値超でもよい。
【0043】
距離d1は、第一の嵌合筒部230へのバッフル支持柱13の挿入の程度で調節できる。
第一の嵌合筒部230の内径がバッフル支持柱13の外径よりも小さければ、第一の嵌合筒部230へのバッフル支持柱13の挿入の程度をより容易に調節できる。
【0044】
(工程(2))
工程(2)は、排水口用保護具を小径保護具とする工程である。本工程は、例えば、コンクリートを打設して、スラブSを硬化した後、スラブS上に防水シートを設置するまでの準備工程である。
【0045】
図4(a)に示すように、バッフル支持柱13と第一の嵌合筒部230との嵌合を解除し、排水口19から排水口用保護具200を外す。
切断予定線212で天壁部210を切断し、切断予定線212より内方の小径保護具200aと、切断予定線212より外方部分200bとに切り分ける。こうして、外方部分200bを切除して、残部を小径保護具200aとする。
【0046】
<工程(3)>
工程(3)は、排水口を小径保護具で覆い、防水シートをスラブ上に設ける工程である。
図4(b)に示すように、スラブS上面(ベースプレート10の上面含む)に、防水シートFを接着する(防水シート設置操作)。小径保護具200aの第一の嵌合筒部230にバッフル支持柱13を受け入れて、小径保護具200aで排水口19を塞ぐ(密閉操作)。なお、本工程は、防水シートをスラブ上に接着させるため、降雨時を想定していない。このため、密閉操作において、第二の囲繞壁部240の下端244は、スラブS上面(ベースプレート10上面)に接していることが好ましい。下端244がスラブS上面に接することで、器具、工具等が排水口19からドレーン管Eに落下するのをより確実に防止できる。また、下端244とスラブS上面との間に防水シートFが挟まれていてもよい。
密閉操作と防水シート設置操作との順序は、密閉操作が先でもよいし、防水シート設置操作が先でもよい。
【0047】
<工程(4)>
工程(4)は、小径保護具を取り除き、排水口にルーフドレーンを設ける工程である。
図4(c)に示すように、防水シートFをスラブS上面に接着した後、第一の嵌合筒部230とバッフル支持柱13との嵌合を解除し、小径保護具200aを取り外す。こうして、排水口19を露出させる。
次いで、ルーフドレーンの種類に応じて、ルーフドレーンの部品を順次組み立てる。
例えば、図1のルーフドレーン100を排水口19に設ける場合には、バッフル支持柱13を貫通孔21gに通し、クランプリング20をベースプレート10上に位置させる。この際、クランプリング20とベースプレート10とで防水シートFを上下に挟み込む。
次いで、バッフル支持柱13をバッフル30の貫通孔31gに通し、バッフル30をクランプリング20上に位置させる。
こうして、ベースプレート10と、クランプリング20と、バッフル30とを下方からこの順で重ね、必要に応じてボルト、ナット等で固定して、排水口19にルーフドレーン100を設ける。
【0048】
本実施形態の排水口用保護具によれば、天壁部と脚部と第一の囲繞壁部とを有するため、屋上、バルコニー等の施工において、雨水等の排水を妨げることなく、部品や工具が排水口からドレーン管に落下するのを防止できる。
【0049】
本実施形態のルーフドレーンの施工方法によれば、本実施形態の排水口用保護具を用いるため、屋上、バルコニー等の施工において、雨水等の排水を妨げることなく、部品や工具が排水口からドレーン管に落下するのを防止できる。
【0050】
(他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態に限定されない。
上述の実施形態に係る排水口用保護具は、第一の囲繞壁部と第二の囲繞壁部との間に第二の嵌合筒部を有する。
しかしながら、本発明はこれに限定されず、排水口用保護具は第二の嵌合筒部を有しなくてもよい。
図5の排水口用保護具300は、天壁部210の下面に、4つの第一の嵌合筒部230と第二の囲繞壁部240と第一の囲繞壁部220とが、この順で軸線O2を中心に同心円上に配置されている。排水口用保護具200と異なる点は、第二の嵌合筒部を有しない点である。
本実施形態によれば、第二の嵌合筒部を有しないため、成形型の構造が簡略化され、生産性をより高められる。
【0051】
上述の実施形態の排水口用保護具は、平面視真円形であるが、本発明はこれに限定されない。排水口用保護具の平面視形状は、ベースプレートや排水口の平面視形状に応じて適宜決定できる。排水口用保護具の平面視形状は、楕円でもよいし、四角形、六角形、八角形等の多角形でもよい。
【0052】
上述の実施形態のベースプレートは、落とし口部の周縁から広がるテーパ状の傾斜部を有している。しかしながら、本発明はこれに限定されず、ベースプレートは、傾斜部に代えて、スラブSの上面と平行な部材を有してもよい。この場合、第一の囲繞壁部の下端と第二の囲繞壁部の下端とは同じ高さが好ましい。
【0053】
上述の実施形態では、第一の嵌合筒部を有しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、バッフル支持柱に代えて、ベースプレートに孔が形成されている場合、又はベースプレートから上方に突出する嵌合筒部が形成されている場合がある。この場合、第一の嵌合筒部に代えて、天壁部の下面から下方に延びる柱状体を脚部としてもよい。加えて、第二の嵌合筒部に代えて、天壁部の下面から下方に延びる柱状体を設けてもよい。
【0054】
上述の実施形態の第一の囲繞壁部は、軸線O1周りに連なっているが、本発明はこれに限定されず、第一の囲繞壁部は複数の壁部が間隔を空けて並んでいてもよい。
【0055】
上述の実施形態のルーフドレーンは、いわゆるサイフォン式であるが、本発明はこれに限定されず、ルーフドレーンの形式は問わない。
【符号の説明】
【0056】
19 排水口
100 ルーフドレーン
200、300 排水口用保護具
210 天壁部
212 切断予定線
220 第一の囲繞壁部
230 第一の嵌合筒部
240 第二の囲繞壁部
250 第二の嵌合筒部
S スラブ
F 防水シート
図1
図2
図3
図4
図5