(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049564
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】電動車両の操舵制御装置
(51)【国際特許分類】
B62D 11/04 20060101AFI20230403BHJP
【FI】
B62D11/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159369
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古田 敏之
【テーマコード(参考)】
3D052
【Fターム(参考)】
3D052AA12
3D052EE02
3D052FF03
3D052GG04
(57)【要約】
【課題】ジョイスティックを備える電動車両を操作ワイヤで操縦するに当たり、急旋回したりすることを防いで、車両姿勢を安定させることができる電動車両の操舵制御装置を提供すること。
【解決手段】右の駆動輪21を駆動する右モータ2と、左の駆動輪31を駆動する左モータ3と、傾倒された方向により走行方向を決定するジョイスティック4と、ジョイスティック4が傾倒された方向に電動車両1を走行させる全方向走行モードと、ジョイスティック4が電動車両1の前方から左右方向に所定の角度を超える方向に傾倒されたとき、電動車両1の走行を制限する前方走行モードと、を切替えるモード切替えスイッチ6と、モード切替えスイッチ6の状態により全方向走行モードと前方走行モードとを切替える車両制御部8と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車輪を有し、左右に少なくとも一つずつの駆動輪を有し、前記駆動輪はそれぞれモータにより駆動され、傾倒された方向により走行方向を決定するジョイスティックを備える電動車両の操舵制御装置であって、
前記ジョイスティックには操作ワイヤ結線部が設けられ、
前記ジョイスティックが傾倒された方向に前記電動車両を走行させる全方向走行モードと、前記ジョイスティックが前記電動車両の前方から左右方向に所定の角度を越える方向に傾倒されたとき、前記電動車両の走行を制限する前方走行モードと、をモード切替えスイッチの状態により切替える車両制御部を備える電動車両の操舵制御装置。
【請求項2】
前記前方走行モードにおける前記所定の角度は、前記電動車両の前方から左右方向の90度よりやや小さい角度に設定され、
前記車両制御部は、前記ジョイスティックが前記所定の角度を越える方向に傾倒されたとき、前記電動車両の走行または旋回を行なわない請求項1に記載の電動車両の操舵制御装置。
【請求項3】
前記モード切替えスイッチとして外部操作式のスイッチを備え、前記電動車両の走行モードが前記前方走行モードであることを通知する通知部を備える請求項1または請求項2に記載の電動車両の操舵制御装置。
【請求項4】
前記車両制御部は、前記ジョイスティックがニュートラル状態のときのみ、前記モード切替えスイッチによる前記全方向走行モードと前記前方走行モードとの切替えを行なう請求項3に記載の電動車両の操舵制御装置。
【請求項5】
前記ジョイスティックに接触感知センサを設け、
前記車両制御部は、前記接触感知センサが接触を感知している間は、前記電動車両の走行モードを前記全方向走行モードとする請求項2または請求項3に記載の電動車両の操舵制御装置。
【請求項6】
前記操作ワイヤ結線部は、大きな負荷がかかった時に作動する安全装置を備えている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電動車両の操舵制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の操舵制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、左右の駆動輪をそれぞれ対応するモーターで独立して駆動し、駆動輪回転の速度および方向を個別に制御することで、前後進、操舵方向及び走行を制御し、操縦がジョイスティック型操縦手段の操作子を操作した方向へ電動車椅子が動作する様に、走行速度、方向を決定する電動車椅子において、この操作子の後方への操作に対して、後方への走行ではなく、定位置での回転動作を割り当てることが記載されている。
【0003】
ところで、近年、農業において生産者人口が減少し、作業の機械化が求められている。その一環として、特許文献1に記載されているような電動車両を農業用車両に転用する試みがあり、このような電動車両は収穫物の運搬や薬剤散布に用いられる。
【0004】
例えば、農作物の収穫作業では、作業者が採集した農作物を電動車両に適宜搭載し、電動車両は農作物を運搬しながら作業者に適宜追従する。これにより、作業の効率化や負荷軽減を図ることができる。
【0005】
このとき、電動車両を作業者に追従させる方法としては、センサを用いる方法や、ワイヤなどで物理的に接続する有線追尾式などの方法がある。有線追尾式は、電動車両のジョイスティックのレバー等に操作ワイヤなどを結線し、ジョイスティックのレバーが操作ワイヤなどを通じて作業者に引かれて倒れることで、車両がモータの力で走行する。この方法は安価な点で優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
有線追尾式は、操作ワイヤを車両の前方に引く場合にはよく操作者に追従するものの、右方または左方、および左右方から後方にかけて操作ワイヤを引いたとき、問題が発生する可能性がある。
【0008】
一つ目の問題は、操作ワイヤを電動車両の右方または左方の真横方向に引っ張った場合に、電動車両が急旋回を起こすこと。もう一つは、操作ワイヤを電動車両の後方に引っ張る場合、車載物が操作ワイヤの障害物になり、操作者の居る方向と操作ワイヤに引っ張られて傾倒するジョイスティックのレバーの倒れる方向が一致しない虞があること。さらに、操作ワイヤを電動車両の後方に引っ張る場合、電動車両が後退せずに車両の前方を車両後方に居る操作者の方に向けようとしたり、引っ張られた方向に後退しようとして前部を逆方向に転向する場合があるため、車両姿勢が安定しないことである。
【0009】
このような問題の対策として、電動車両への進行方向に関する操作ワイヤによる指示方向を制限するように、ジョイスティックのレバーの左右の側方から後方を覆うカバーやレバーが左右の側方から後方の方向範囲に傾倒できない様にストッパを設けた場合、車庫への車両の保管時や、車両の向きや位置を微調整する際には、左右または後方に動かすことができないため不都合が生じる。
【0010】
そこで、本発明は、ジョイスティックを備える電動車両を操作ワイヤで操縦するに当たり、急旋回したりすることを防いで、車両姿勢を安定させることができる電動車両の操舵制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため本発明は、複数の車輪を有し、左右に少なくとも一つずつの駆動輪を有し、前記駆動輪はそれぞれモータにより駆動され、傾倒された方向により走行方向を決定するジョイスティックを備える電動車両の操舵制御装置であって、前記ジョイスティックには操作ワイヤ結線部が設けられ、前記ジョイスティックが傾倒された方向に前記電動車両を走行させる全方向走行モードと、前記ジョイスティックが前記電動車両の前方から左右方向に所定の角度を超える方向に傾倒されたとき、前記電動車両の走行を制限する前方走行モードと、をモード切替えスイッチの状態により切替える車両制御部を備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明によれば、ジョイスティックを備える電動車両を操作ワイヤで操縦するに当たり、急旋回したりすることを防いで、車両姿勢を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る電動車両の概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る電動車両の操舵制御装置の前方走行モード時のジョイスティックの傾倒方向の所定の方向範囲の設定例を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係る電動車両の操舵制御装置のモード切替制御処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施の形態に係る電動車両の操舵制御装置は、複数の車輪を有し、左右に少なくとも一つずつの駆動輪を有し、駆動輪はそれぞれモータにより駆動され、傾倒された方向により走行方向を決定するジョイスティックを備える電動車両の操舵制御装置であって、ジョイスティックには操作ワイヤ結線部が設けられ、ジョイスティックが傾倒された方向に電動車両を走行させる全方向走行モードと、ジョイスティックが電動車両の前方から左右方向に所定の角度を超える方向に傾倒されたとき、電動車両の走行を制限する前方走行モードと、をモード切替えスイッチの状態により切替える車両制御部を備えるよう構成されている。
【0015】
これにより、本発明の一実施の形態に係る電動車両の操舵制御装置は、ジョイスティックを備える電動車両を操作ワイヤで操縦するに当たり、急旋回したりすることを防いで、車両姿勢を安定させることができる。
【実施例0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係る電動車両の操舵制御装置について詳細に説明する。説明に用いる前後左右の方向は、本発明の一実施例に係る電動車両が直進して追従する時を基準とし、操作者(作業者)が居る方向(進行方向)を前方とし、前方の反対方向を後方とし、車両の左右方向(車幅方向)を左右方向とする。
【0017】
図1において、本発明の一実施例に係る電動車両の操舵制御装置を搭載した電動車両1は、右モータ2と、左モータ3と、ジョイスティック4と、ジョイスティック操作信号生成部5と、を含んで構成される。
【0018】
電動車両1は、図示しない複数の車輪を有し、電動車両1の進行方向に向かって右側に駆動輪21を有し、左側に駆動輪31を有している。電動車両1は、後輪駆動でもよいし、前輪駆動でもよい。また、全輪駆動でもよい。どの駆動形式でも、操縦安定性、走破性を高めるため、駆動輪ではない車輪である従動輪には操舵装置(パワーステアリング)が設けられていてもよい。駆動輪にも操舵装置(パワーステアリング)を設けて駆動輪の向きを変更してもよい。操舵装置を有することで、大きな径の車輪を使用することが可能となって、畑などにおける走破性を向上させることができる。
【0019】
右モータ2は、図示しないバッテリから供給される電力により回動して、右の駆動輪21を駆動するようになっている。また、右モータ2は、複数のギヤ等によって構成された図示しない動力伝達機構(減速機)を介して電動車両1の右の駆動輪21に接続されている。
【0020】
左モータ3は、図示しないバッテリから供給される電力により回動して、左の駆動輪31を駆動するようになっている。また、左モータ3は、複数のギヤ等によって構成された図示しない動力伝達機構(減速機)を介して電動車両1の左の駆動輪31に接続されている。
【0021】
電動車両1は、右モータ2及び左モータ3の駆動力によって走行する。また、右モータ2と左モータ3の回転方向や回転速度を制御することにより、電動車両1の走行方向を変えたり旋回させたりすることができる。なお、右モータ2及び左モータ3は、動力伝達機構等を介さずに直接駆動輪に駆動力を伝達可能に駆動輪に取付けられたインホイールモータであってもよい。
【0022】
ジョイスティック4は、車両の前方に設けられ、例えば、上方に延びる様に設けられた図示しないレバーを有し、レバーは直立状態からいずれかの方向に傾倒させることができるようになっている。電動車両1は、ジョイスティック4のレバーが傾倒した方向に進むように制御され、電動車両1に対するジョイスティック4の傾倒角度(直立状態からの倒れ角度)に応じて、駆動力が調整される。さらに、レバーの先端には、レバーを遠隔から操作するための操作ワイヤを結線する操作ワイヤ結線部41が設けられている。
【0023】
操作ワイヤ結線部41には、操作ワイヤ結線部41に大きな負荷がかかったときに操作ワイヤが外れるような安全装置を介して操作ワイヤが取付けられている。安全装置は、例えば、一定荷重で外れる係止部材で構成される。
【0024】
ジョイスティック操作信号生成部5は、ジョイスティック4のレバーが傾倒された方向及び倒れ角度に対応する信号を車両制御部8に出力する。
【0025】
車両制御部8は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0026】
このコンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットを車両制御部8として機能させるためのプログラムが格納されている。
【0027】
すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、これらのコンピュータユニットは、本実施例における車両制御部8として機能する。
【0028】
車両制御部8の入力ポートには、前述のジョイスティック操作信号生成部5に加え、モード切替えスイッチ6を含む各種センサ類及びスイッチ類が接続されている。
【0029】
モード切替えスイッチ6は、電動車両1の走行モードを切替えるスイッチであり、後述する「全方向走行モード」と電動車両1の後方への走行を制限する「前方走行モード」を切替える。モード切替えスイッチ6は、例えば、タクタイルスイッチ、ロッカースイッチ、トグルスイッチなどにより構成され、ジョイスティック4を操作する操作者によって操作される。
【0030】
なお、ジョイスティック4のレバーに接触感知センサを設けてモード切替えスイッチとしてもよい。この場合、ジョイスティック4のレバーが把持されているか否かで電動車両1の走行モードを切替える。つまり、ジョイスティック4のレバーが把持されているときに「全方向走行モード」に切替えるようにすると、操作ワイヤを介さずに操作者によって直接ジョイスティック4が操作される場合、電動車両1は「全方向走行モード」に切り替えられて左右または後方に自由に移動させることができ、車庫への電動車両1の保管時や、電動車両1の向きや位置を微調整することが容易にできる。接触感知センサは、例えば、静電容量方式のタッチセンサなどで構成される。
【0031】
モード切替えスイッチとして、単純にモードを切替える専用のスイッチであるモード切替えスイッチ6と接触感知センサのどちらかを備えるようにしてもよいし、両方を備えるようにしてもよい。モード切替えスイッチとして両方を備える場合は、通常はモード切替えスイッチ6に従いつつ、接触感知センサが接触を感知したときは無条件で走行モードを「全方向走行モード」に切替えるようにしてもよい。
【0032】
一方、車両制御部8の出力ポートには、前述の右モータ2、左モータ3に加え、前方走行モード表示部7を含む各種制御対象類が接続されている。
【0033】
前方走行モード表示部7は、電動車両1の走行モードが、後述する前方走行モードであることを表示して通知する。前方走行モード表示部7は、通知部を構成する。前方走行モード表示部7は、例えば、表示灯などで構成される。通知部を音で通知するアラームなどで構成してもよい。前方走行モードは、電動車両1の走行方向を前方から所定の角度範囲に制限する走行モードであり、電動車両1を作業者に追従させる時に用いられる。つまり、電動車両1が追従する制御をしていることを、前方走行モード表示部7は表示する。
【0034】
本実施例において、車両制御部8は、ジョイスティック操作信号生成部5の出力する信号に基づいて、ジョイスティック4のレバーが傾倒された方向に電動車両1が進むように右モータ2及び左モータ3などを制御する。
【0035】
車両制御部8は、ジョイスティック4のレバーが傾倒された方向に電動車両1を走行させる全方向走行モード、あるいは、ジョイスティック4のレバーの傾倒された方向よっては走行を制限する前方走行モードで電動車両1を制御する。前方走行モードでは、レバーが電動車両1の前方から左右方向に所定の角度範囲であれば、レバーが傾倒された方向に電動車両1を走行させ、所定の角度範囲外の方向に傾倒されたとき、電動車両1の走行を制限する。全方向走行モードと前方走行モードとは、モード切替えスイッチ6の状態により切替えられる。
【0036】
車両制御部8は、前方走行モードでは、例えば、
図2に示すように、電動車両1の前方から左右方向にα度以下の範囲ではレバーが傾倒された方向に電動車両1を走行させ、範囲外となる前方から左右方向にα度を超える方向にジョイスティック4のレバーが傾倒されたとき、その方向への走行を行なわない。
【0037】
所定の角度としては、例えば、前方から左右方向への角度が90度よりやや小さい角度に設定される。つまり、ジョイスティック4のレバーが前方側に傾倒されたときは、車両制御部8は傾倒された方向に電動車両1を走行させる。それ以外の方向に傾倒されたとき、あるいは、ジョイスティック4のレバーが所定の角度を超えた方向に傾倒されたとき、車両制御部8は電動車両1の走行または旋回を行なわない。つまり、前方走行モードでは、後方への走行が制限又は禁止され、電動車両1の後側への走行を抑制している。
【0038】
車両制御部8は、例えば、ジョイスティック4のレバーが左方向または右方向に傾倒されたときは、旋回を制限する。また、車両制御部8は、所定の角度範囲外の方向に傾倒操作された場合に、例えば、運転速度を10分の1程度に下げるようにしてもよい。また、車両制御部8は、例えば、0.5秒程度の短時間だけ操作を受け付けて走行を行ない、その後停止するようにしてもよい。この時、ジョイスティック4のレバーが操作されずに車体に対して垂直になるニュートラル状態に戻ったら、また短時間だけ操作を受け付けるようにしてもよい。
【0039】
また、車両制御部8は、例えば、所定の角度として、前方からそれぞれ左右方向に80度以上の角度を設定し、所定の角度を超える方向にジョイスティック4のレバーが傾倒されたときには、操作を無視するようにしてもよい。
【0040】
車両制御部8は、全方向走行モードと、前方走行モードと、の切替えを、ジョイスティック4のレバーがニュートラル状態のときや、電動車両1の速度がゼロのときにだけ行なう。なお、車両制御部8は、ジョイスティック4のレバーがニュートラル状態以外のときにモード切替えスイッチ6の切替えが行なわれたときは、ジョイスティック4のレバーが一定時間ニュートラル状態になったときに走行モードの切替えを行なうようにしてもよい。
【0041】
車両制御部8は、ジョイスティック4のレバーに接触感知センサを設けてモード切替えスイッチとしている場合、ジョイスティック4のレバーが把持されて接触感知センサが接触を感知している間は、全方向走行モードとする。そして、レバーが把持されていない時は、前方走行モードとする、あるいは、その他のモード切替えスイッチの状態に従う。
【0042】
以上のように構成された本実施例に係る電動車両の操舵制御装置によるモード切替制御処理について、
図3を参照して説明する。なお、以下に説明するモード切替制御処理は、車両制御部8が動作を開始すると開始され、予め設定された時間間隔で実行される。
【0043】
ステップS1において、車両制御部8は、電動車両1の速度がゼロであるか否かを判定する。
【0044】
電動車両1の速度がゼロであると判定した場合には、車両制御部8は、ステップS2の処理を実行する。電動車両1の速度がゼロでないと判定した場合には、車両制御部8は、ステップS1の処理を実行する。
【0045】
ステップS2において、車両制御部8は、モード切替えスイッチ6により電動車両1の走行モードの切替えを受け付ける。ステップS2の処理を実行した後、車両制御部8は、ステップS3の処理を実行する。つまり、車両制御部8は、電動車両1が停止状態の時だけモード切替えスイッチ6の操作によって要求されているモードの切替要求を受け付ける。
【0046】
なお、このモードの切替要求は、モード切替えスイッチ6の種類によって異ならせることができる。例えば、タクタイルスイッチであれば、押圧操作された時に前方走行モードと全方向走行モードを現在の走行モードと異なるモードに切替えることができるし、あるいは、押圧操作されている時だけ特定の走行モード(全方向走行モード)とすることもできる。ロッカースイッチやトグルスイッチであれば、モード切替えスイッチ6の状態に応じて切替えることができるので、前方走行モードと全方向走行モードを操作者が直接選択することもできる。
【0047】
ステップS3において、車両制御部8は、現在の電動車両1の走行モードが前方走行モードであるか否かを判定する。
【0048】
現在の電動車両1の走行モードが前方走行モードであると判定した場合には、車両制御部8は、ステップS4の処理を実行する。現在の電動車両1の走行モードが前方走行モードでないと判定した場合には、車両制御部8は、ステップS6の処理を実行する。
【0049】
ステップS4において、車両制御部8は、電動車両1の走行モードを全方向走行モードに切替える。以後、車両制御部8は、ジョイスティック4のレバーが傾倒された方向に電動車両1を走行させる。そして、ステップS4の処理を実行した後、車両制御部8は、ステップS5の処理を実行する。
【0050】
ステップS5において、車両制御部8は、前方走行モード表示部7による表示をオフにして表示を停止させる。ステップS5の処理を実行した後、車両制御部8は、モード切替制御処理を終了する。
【0051】
ステップS6において、車両制御部8は、電動車両1の走行モードを前方走行モードに切替える。以後、車両制御部8は、電動車両1の後側(後方)への走行を抑制する。そして、ステップS6の処理を実行した後、車両制御部8は、ステップS7の処理を実行する。
【0052】
ステップS7において、車両制御部8は、前方走行モード表示部7による表示をオンにして表示させる。ステップS7の処理を実行した後、車両制御部8は、モード切替制御処理を終了する。
【0053】
このように、本実施例では、車両制御部8は、ジョイスティック4のレバーが傾倒された方向に電動車両1を走行させる全方向走行モードと、ジョイスティック4のレバーが電動車両1の前方から左右方向に所定の角度を超える方向に傾倒されたとき、当該方向への電動車両1の走行を制限する前方走行モードと、をモード切替えスイッチ6の入力状態により切替える。
【0054】
これにより、ジョイスティック4のレバーの先端に操作ワイヤを結線して操作するとき、前方走行モードにすることで、電動車両1が急旋回したり、車載物が操作ワイヤと干渉して電動車両1が意図しない方向に移動したりすることを防いで、車両姿勢を安定させることができる。
【0055】
一方、駐停車や車両位置の微調整をするときは、全方向走行モードにすることで、小回りを良くし、容易に運転することができる。ジョイスティック4は、追従時に車載物が操作ワイヤと干渉しないように電動車両1の前方に設けられ、モード切替えスイッチ6は、ジョイスティック4の近傍となる電動車両1の前方に設けられ、ジョイスティック4と同時操作可能な位置に配置されている。なお、誤って押圧操作されぬようにモード切替えスイッチ6に保護部材を設けてもよい。
【0056】
また、前方走行モードにおける所定の角度は、電動車両1の前方から左右方向へ90度よりやや小さい角度に設定され、車両制御部8は、ジョイスティック4のレバーが前方から左右方向に所定の角度を超えた方向に傾倒されたとき、当該方向への電動車両1の走行または旋回を行なわない。つまり、側方から後方側の方向範囲にジョイスティック4のレバーが傾倒操作されたとき、当該方向への電動車両1の走行または旋回を行なわない
【0057】
これにより、横方向や後方への走行をより厳しく制限し、前方への走行に限定することで、全方向走行モード時より安全性を高めることができる。
【0058】
また、操作者が操作して意図した走行モードを要求するモード切替えスイッチとしてモード切替えスイッチ6を備え、電動車両1の走行モードが前方走行モードであることを表示する前方走行モード表示部7を備える。
【0059】
これにより、操作者が電動車両1の走行モードを容易に変更することができるとともに、操作者が電動車両1の走行モードを容易に知ることができ、意図せぬ発進などを抑制させることができる。
【0060】
また、車両制御部8は、ジョイスティック4のレバーがニュートラル状態のときのみ、モード切替えスイッチ6による全方向走行モードと前方走行モードとの切替えを行なう。
【0061】
ジョイスティック4の操作中のモード変更を禁止することで、意図せぬ発進や停止を抑制することができる。例えば、前方走行モード中で後方にジョイスティック4が操作されているときにモード切替えスイッチ6により全方向走行モードに切替えられたときに、意図せぬ発進を抑制することができる。
【0062】
また、ジョイスティック4のレバーに接触感知センサを設け、車両制御部8は、接触感知センサが接触を感知している間は、電動車両1の走行モードを全方向走行モードとすることができる。
【0063】
これにより、ジョイスティック4のレバーを把持するだけで電動車両1の走行モードを全方向走行モードにすることができ、利便性を高めることができる。
【0064】
また、操作ワイヤ結線部41は、大きな負荷がかかった時に作動する安全装置を備えている。
【0065】
操作ワイヤを必要以上に引っ張ってしまったときに、ジョイスティック4のレバーから操作ワイヤが外れてジョイスティック4が破損しないようにすることができる。なお、操作ワイヤ側に伸縮機構を設けて、操作者と電動車両1の距離に自由度を持たせることができる。更に、ばね付勢された巻き取り装置を備えた伸縮機構であれば、操作者の作業動作の支障とならずに追従走行させることができる。
【0066】
本実施例では、各種センサ情報に基づき車両制御部8が各種の判定や算出を行なう例について説明したが、これに限らず、電動車両1が外部サーバ等の車外装置と通信可能な通信部を備え、該通信部から送信された各種センサの検出情報に基づき車外装置によって各種の判定や算出が行なわれ、その判定結果や算出結果を通信部で受信して、その受信した判定結果や算出結果を用いて各種制御を行なってもよい。
【0067】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。