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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023049931
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】多層構造体
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20230403BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20230403BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20230403BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H01L23/36 M
B32B7/027
B32B27/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159965
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165021
【弁理士】
【氏名又は名称】千々松 宏
(72)【発明者】
【氏名】星山 裕希
(72)【発明者】
【氏名】乾 延彦
(72)【発明者】
【氏名】土屋 賢人
【テーマコード(参考)】
4F100
5F136
【Fターム(参考)】
4F100AA13B
4F100AA14B
4F100AK01B
4F100AK04A
4F100AK25B
4F100AK29B
4F100AK52B
4F100AL09B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100DC22B
4F100DE01B
4F100DE02B
4F100EA02A
4F100EC18
4F100EJ32
4F100EJ53B
4F100JJ01B
4F100JK02B
4F100JK05B
4F100JK06
4F100JK07A
4F100JK12B
4F100JL14B
4F100JN02B
5F136BC07
5F136FA53
5F136FA62
5F136FA63
(57)【要約】
【課題】フィルムに載置された放熱シートを真空吸着でフィルムからピックアップすることができる多層構造体を提供する。
【解決手段】本発明の多層構造体1は、フィルム20と、フィルム20上に載置され、かつ熱伝導粒子及び樹脂を含む放熱シート10とを備え、フィルム20に対する放熱シート10の面密着強度が1.0N/mm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムと、前記フィルム上に載置され、かつ熱伝導粒子及び樹脂を含む放熱シートとを備え、
前記フィルムに対する前記放熱シートの面密着強度が1.0N/mm以下である多層構造体。
【請求項2】
前記フィルムがロール状に巻き取られてなる請求項1に記載の多層構造体。
【請求項3】
前記フィルムの厚みが20~200μmである請求項1又は2に記載の多層構造体。
【請求項4】
前記フィルムのヤング率が1~6,000MPaである請求項1~3のいずれか1項に記載の多層構造体。
【請求項5】
前記放熱シートの表面のアスカーC硬度が15以上である請求項1~4のいずれか1項に記載の多層構造体。
【請求項6】
前記放熱シートの引張強度が0.05MPa以上である請求項1~5のいずれか1項に記載の多層構造体。
【請求項7】
前記放熱シートの30%圧縮強度が2,000kPa以下である請求項1~6のいずれか1項に記載の多層構造体。
【請求項8】
前記放熱シートの前記樹脂がエラストマー樹脂、シリコーン樹脂又はアクリル樹脂である請求項1~7のいずれか1項に記載の多層構造体。
【請求項9】
前記放熱シートの前記熱伝導粒子が窒化ホウ素及び窒化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の熱伝導粒子を含む請求項1~8のいずれか1項に記載の多層構造体。
【請求項10】
前記熱伝導粒子の長軸が、前記放熱シートの主面に対して60°以上の角度で配向している請求項1~9のいずれか1項に記載の多層構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱シートの多層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺のテープ状フィルムにデバイスを一列に仮付けした多層構造体が従来技術として知られている(例えば、特許文献1参照)。この多層構造体では、デバイス実装用フィーダーに設けられたナイフエッジによって、デバイスがフィルムから剥離され、移載ヘッドによって、剥離した放熱シートの吸着、移載及び貼着が行われる。これにより、デバイスのアッセンブリを自動化することができる。
【0003】
放熱シートは、主に、半導体パッケージのような発熱体と、アルミニウムや銅等の放熱体との間に配置して、発熱体で発生する熱を放熱体に速やかに移動させる機能を有する(例えば、特許文献2、3参照)。上記デバイスと同様に、長尺のテープ状フィルムに放熱シートを一列に仮付けした多層構造体に、放熱シートも包装することにより、放熱シートのアッセンブリを自動化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-50382号公報
【特許文献2】特開2012-38763号公報
【特許文献3】特開2013-254880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
放熱シートは、好ましくは、吸着ノズルを用いてテープ状フィルムからピックアップされながら、ナイフエッジによりテープ状フィルムから剥離される。このとき、放熱シートが、より確実にテープ状フィルムから剥離してピックアップされるためには、放熱シートは、真空吸着で、フィルムから直接ピックアップできることが好ましい。
そこで、本発明は、フィルムに載置された放熱シートを真空吸着でフィルムからピックアップすることができる多層構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討の結果、フィルムに対する放熱シートの面密着強度を所定の範囲内にすることにより、上記の課題を解決できることを見出し、以下の発明を完成させた。本発明は、以下の[1]~[10]を提供する。
[1]フィルムと、前記フィルムの一方の主面上に載置され、かつ熱伝導粒子及び樹脂を含む放熱シートとを備え、前記フィルムに対する前記放熱シートの面密着強度が1.0N/mm以下である多層構造体。
[2]前記多層積層体がロール状に巻き取られてなる上記[1]に記載の多層構造体。
[3]前記フィルムの厚みが20~200μmである上記[1]又は[2]に記載の多層構造体。
[4]前記フィルムのヤング率が1~6,000MPaである上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の多層構造体。
[5]前記放熱シートの表面のアスカーC硬度が15以上である上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の多層構造体。
[6]前記放熱シートの引張強度が0.05MPa以上である上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の多層構造体。
[7]前記放熱シートの30%圧縮強度が2,000kPa以下である上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の多層構造体。
[8]前記放熱シートの前記樹脂がエラストマー樹脂、シリコーン樹脂又はアクリル樹脂である上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の多層構造体。
[9]前記放熱シートの前記熱伝導粒子が窒化ホウ素及び窒化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の熱伝導粒子を含む上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の多層構造体。
[10]前記熱伝導粒子の長軸が、前記放熱シートの主面に対して60°以上の角度で配向している上記[1]~[9]のいずれか1つに記載の多層構造体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フィルムに載置された放熱シートを真空吸着でフィルムからピックアップすることができる多層構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1(a)は、本発明の一実施形態の多層構造体の斜視図であり、図1(b)は、図1(a)の本発明の一実施形態の多層構造体のAA断面図である。
図2図2(a)~(c)は、本発明の一実施形態の多層構造体の製造方法を説明するための図である。
図3図3は、本発明の一実施形態の多層構造体の変形例の斜視図である。
図4図4は、面密着強度の測定に使用する試料の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図を参照して本発明の一実施形態の多層構造体1を説明する。図1(a)は、本発明の一実施形態の多層構造体の斜視図であり、図1(b)は、図1(a)の本発明の一実施形態の多層構造体のAA断面図である。なお、本発明の多層構造体は、以下に説明する本発明の一実施形態の多層構造体1に何ら限定されるものではない。
【0010】
本発明の一実施形態の多層構造体1は、フィルム20と、フィルム20の一方の主面上に載置され、かつ熱伝導粒子及び樹脂を含む放熱シート10とを備える。フィルム20はリール30に巻かれて、リール40に巻かれてロール状に巻き取られている。
【0011】
本実施形態において、フィルム20に対する放熱シート10の面密着強度は、1.0N/mm以下である。フィルム20に対する放熱シート10の面密着強度が1.0N/mmよりも大きいと、フィルム20に載置された放熱シート10を真空吸着でフィルム10からピックアップすることができない場合がある。このような観点から、フィルム20に対する放熱シート10の面密着強度は、好ましくは0.8N/mm以下であり、より好ましくは0.6N/mm以下である。また、フィルム20に対する放熱シート10の面密着強度は、好ましくは0.05N/mm以上である。フィルム20に対する放熱シート10の面密着強度が0.05N/mm以上であると、放熱シート10をフィルム20に、より確実に仮接着することができる。このような観点から、フィルム20に対する放熱シート10の面密着強度は、より好ましくは0.1N/mm以上であり、さらに好ましくは0.2N/mm以上である。フィルム20に対する放熱シート10の面密着強度は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0012】
フィルム20に対する放熱シート10の面密着強度は、例えば、粘着剤層を表面に形成したフィルム20にエンボス加工を施すことにより調整できる。例えば、エンボス加工により形成されたフィルム20の凹部の深さ、凹部の面積等を調節することにより、フィルム20に対する放熱シート10の面密着強度を調整できる。また、放熱シートの樹脂の選択、粘着剤層の粘着剤の選択、放熱シートの架橋などによってもフィルム20に対する放熱シート10の面密着強度を調整することができる。
【0013】
[放熱シート]
上述したように、放熱シート10は熱伝導粒子及び樹脂を含む。
【0014】
(熱伝導粒子)
熱伝導粒子は、熱伝導率の高い粒子であれば特に限定されない。しかし、少ない使用量で、放熱シートの熱伝導率を効果的に向上させることができるという観点から、熱伝導粒子は、熱伝導性板状フィラーであることが好ましい。熱伝導性板状フィラーは、最大長/厚みが2.0より大きい形状を有する熱伝導性板状フィラーである。
熱伝導性フィラーの材質としては、例えば、炭化物、窒化物、酸化物、水酸化物、金属、炭素系材料などが挙げられる。
【0015】
炭化物としては、例えば、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化アルミニウム、炭化チタン、炭化タングステンなどが挙げられる。
窒化物としては、例えば、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化クロム、窒化タングステン、窒化マグネシウム、窒化モリブデン、窒化リチウムなどが挙げられる。
酸化物としては、例えば、酸化鉄、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)(酸化アルミニウムの水和物(ベーマイトなど)を含む。)、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。また、酸化物として、チタン酸バリウムなどの遷移金属酸化物などや、さらには、金属イオンがドーピングされている、例えば、酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズなどが挙げられる。
水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。
金属としては、例えば、銅、金、ニッケル、錫、鉄、または、それらの合金が挙げられる。
炭素系材料としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛、ダイヤモンド、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、ナノホーン、カーボンマイクロコイル、ナノコイルなどが挙げられる。
上記した中では、窒化ホウ素及び窒化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0016】
これら熱伝導性板状フィラーは、単独使用または2種類以上併用することができる。熱伝導性の観点からは、窒化ホウ素、薄片化黒鉛の少なくとも何れかであることが好ましい。さらに電気絶縁性が要求される用途では、窒化ホウ素がより好ましい。
【0017】
熱伝導性板状フィラーの平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは1~400μmであり、より好ましくは5~300μmである。なお、熱伝導性板状フィラーの平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定により求められ、体積基準で、積算粒子量が50%である粒子径を表す。
熱伝導性板状フィラーのアスペクト比は、上記の通り2以上であるが、好ましくは3以上となるものである。ここで、板状熱伝導粒子のアスペクト比は、粒子の最大長の厚みに対する比(最大長/厚み)を意味する。なお、アスペクト比は走査型電子顕微鏡で、十分な数(例えば250個)の熱伝導粒子を観察して平均値として求めるとよい。
【0018】
熱伝導性板状フィラーは、市販品またはそれを加工した加工品を用いることができる。市販品としては、例えば、窒化ホウ素粒子の市販品などが挙げられる。窒化ホウ素粒子の市販品として、具体的には、例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製の「PT」シリーズ(例えば、「PT-110」など)、昭和電工社製の「ショービーエヌUHP」シリーズ(例えば、「ショービーエヌUHP-1」など)、デンカ株式会社製の「XGP」、「SGP」、「MGP」及び「GP」などが挙げられる。
【0019】
熱伝導粒子が熱伝導性板状フィラーを含む場合、放熱シート10では、樹脂中の熱伝導性板状フィラーは、その長軸が、放熱シート10の主面に対して、好ましくは60°以上の角度で配向している。熱伝導粒子の長軸が、放熱シート10の主面に対して60°以上の角度で配向している場合は、放熱シート10の厚み方向の熱伝導率を高くすることができる。放熱シート10の厚み方向の熱伝導率を高める観点から、熱伝導性板状フィラーの長軸が、放熱シート10の主面に対して70°以上の角度で配向していることがより好ましく、80°以上の角度で配向していることがさらに好ましい。
上記角度を求める方法は特に限定されない。例えば、放熱シート10において、熱伝導性板状フィラーの最も配向している方向、通常成形時の樹脂流動方向と平行な方向に、厚み方向の中央部分の薄膜切片を作製し、該薄膜切片を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率3,000倍で熱伝導性板状フィラーを観察する。観察された熱伝導性板状フィラーの長軸と、放熱シート10において主面を構成する面とのなす角度を測定することにより、上記角度を求めることができる。本明細書において、60°以上の角度とは、上記のように測定された値の平均値が60°以上の角度であることを意味し、配向角度が60°未満の熱伝導粒子の存在を否定するものではない。なお、なす角度が90°を超える場合は、その補角を測定値とする。
【0020】
本発明の熱伝導シートは、熱伝導性粒子として熱伝導性板状フィラー以外のフィラーを使用してもよく、熱伝導性板状フィラーと、熱伝導性板状フィラー以外のフィラーを含有してもよい。また、熱伝導性シートは、熱伝導性粒子として、熱伝導性板状フィラーを含有せずに、熱伝導性板状フィラー以外のフィラーのみを含有してもよい。
熱伝導性板状フィラー以外のフィラーには、例えば、球状フィラーが挙げられる。球状フィラーの材質は上記の通りであるが、好ましくは、アルミナ、カーボンブラック、天然シリカ、乾式合成シリカ、湿式合成シリカ、炭酸カルシウム(パテライト)、ガラス系ビーズ、シリカ系ビーズ、球状金属系フィラーなどが挙げられる。これらのフィラーは、1種単独で使用してもよいし、2種類以上を併用することができる。
【0021】
放熱シート10における熱伝導粒子の含有量は、樹脂の100質量部に対し、好ましくは50~1,000質量部、より好ましくは100~500質量部、さらに好ましくは150~450質量部である。
【0022】
(樹脂)
樹脂としては、特に限定されず、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エラストマー樹脂などの様々な樹脂を用いることができる。これらの樹脂の中で、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、及びエラストマー樹脂からなる群から選択された少なくとも一種の樹脂が好ましく、エラストマー樹脂がより好ましい。アクリル樹脂もしくはシリコーン樹脂を用いることにより、フィルムに粘着剤層を形成しなくても、フィルムに対する放熱シートの適切な面密着強度を得られる。また、エラストマー樹脂を用いることにより、放熱シートの引張強度等の機械的強度を改善することができる。
【0023】
エラストマー樹脂としては、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、水素添加ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン-ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、水素添加スチレン-イソプレンブロック共重合体、水素添加スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体等が挙げられる。これらのエラストマー樹脂の中で、水素添加ポリブタジエンゴムが好ましい。
【0024】
上記アクリル樹脂の種類としては、特に制限されないが、アクリレート、メタクリレート、及びこれらの両方を含むモノマーを重合した重合体である。なお、以下では、アクリレート及びメタクリレートの一方又は両方を、(メタ)アクリレートと総称する。
アクリル樹脂は、通常、アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位を有する。アルキル(メタ)アクリレートは、通常、アルキル基の炭素数が12以下のものが使用され、好ましくはアルキル基の炭素数が3~12のものが使用される。具体的には、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
アクリル樹脂は、1種のみを用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0025】
シリコーン樹脂の種類としては、特に制限されないが、縮合硬化型シリコーン樹脂、付加反応硬化型シリコーン樹脂のいずれでもよいが、付加反応硬化型シリコーン樹脂が好ましい。シリコーン樹脂は、シリコーン化合物を架橋剤により架橋させて硬化させたものが好ましい。シリコーン化合物としては、ビニル基などのアルケニル基を2つ以上有するオルガノポリシロキサンを使用することが好ましく、両末端にビニル基を有するオルガノポリシロキサンがより好ましい。両末端にビニル基を有するオルガノポリシロキサンとしては、ビニル両末端ポリジメチルシロキサン、ビニル両末端ポリフェニルメチルシロキサン、ビニル両末端ジメチルシロキサン-ジフェニルシロキサンコポリマー、ビニル両末端ジメチルシロキサン-フェニルメチルシロキサンコポリマー、ビニル両末端ジメチルシロキサン-ジエチルシロキサンコポリマーなどが挙げられる。
架橋剤としては、上記したシリコーン化合物を架橋できるものであれば限定されないが、ヒドロシリル基(SiH)を2つ以上有する化合物が挙げられ、中でもヒドロシリル基を2つ以上有するポリオルガノシロキサン(以下、「ヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサン」ともいう)が好ましい。
ヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサンとしては、メチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、ポリメチルヒドロシロキサン、ポリエチルヒドロシロキサン、メチルヒドロシロキサン-フェニルメチルシロキサンコポリマーなどが挙げられる。これらは、末端にヒドロシリル基を含有していてもよいが、含有していなくてもよく、例えば、両末端がトリメチルシリル基、トリエチルシリル基などによって封鎖されてもよい。 シリコーン樹脂は、1種のみを用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0026】
また、樹脂は、常温で液状の樹脂を含むことが好ましい。また、常温で液状の樹脂と固体状の樹脂の双方を含んでもよいが、常温で液状の樹脂のみからなることがより好ましい。液状の樹脂を含むことで、放熱シートの製造時における熱伝導粒子との混練負荷を低減できるため、熱伝導粒子を均一に分散させやすくなり、熱伝導性が向上する。なお、常温で液状の樹脂とは、20℃、1気圧(1.01×10-1MPa)の条件下において液状の樹脂のことを意味する。
液状の樹脂としては、例えば上記した樹脂の液状のものを用いることができ、好適な具体例として、液状アクリロニトリルブタジエンゴム、液状エチレンプロピレン共重合体、液状天然ゴム、液状ポリイソプレンゴム、液状ポリブタジエンゴム、液状水素化ポリブタジエンゴム、液状スチレン-ブタジエンブロック共重合体、液状水素化スチレン-ブタジエンブロック共重合体、液状アクリル樹脂、液状シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0027】
(放熱シートの熱伝導率)
放熱シート10の厚み方向の熱伝導率は、放熱シート10の放熱性を良好とする観点から、好ましくは3W/m・K以上であり、より好ましくは5W/m・K以上であり、さらに好ましくは8W/m・K以上である。また、放熱シート10の厚み方向の熱伝導率は、通常、100W/m・K以下であり、好ましくは70W/m・K以下である。放熱シート10の熱伝導率は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0028】
(放熱シートの表面のアスカーC硬度)
放熱シート10の表面のアスカーC硬度は、例えば10以上、好ましくは15以上であり、より好ましくは20以上であり、さらに好ましくは30以上である。放熱シート10の表面のアスカーC硬度が15以上であると、真空ノズルを用いて、放熱シート10を真空吸着でピックアップしたとき、放熱シートの表面にキズが発生することを抑制できる。放熱シート10の表面のアスカーC硬度は、好ましくは70以下であり、より好ましくは60以下であり、さらに好ましくは50以下である。放熱シート10の表面のアスカーC硬度が70以下であると、放熱シート10の柔軟性が良好になる。放熱シート10の表面のアスカーC硬度は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0029】
(放熱シートの引張強度)
放熱シート10の引張強度は、例えば0.03MPa以上、好ましくは0.05MPa以上である。放熱シート10の引張強度が0.05MPa以上であると、真空ノズルを用いて、放熱シート10を真空吸着でピックアップしたとき、放熱シートが変形することを抑制できる。このような観点から、放熱シート10の引張強度は、より好ましくは0.1MPa以上であり、さらに好ましくは0.2MPa以上であり、よりさらに好ましくは0.45MPa以上である。また、放熱シート10の柔軟性の観点から、放熱シート10の引張強度は、好ましくは2.0MPa以下であり、より好ましくは1.5MPa以下であり、さらに好ましくは1.0MPa以下である。放熱シート10の引張強度は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0030】
(放熱シートの30%圧縮強度)
放熱シート10の30%圧縮強度は、例えば2,500kPa以下、好ましくは2,000kPa以下である。放熱シート10の30%圧縮強度が2,000kPa以下であると、放熱シート10の柔軟性がさらに良好になる。このような観点から、放熱シート10の30%圧縮強度は、より好ましくは1,700kPa以下であり、さらに好ましくは1,000kPa以下である。また、放熱シート10の取り扱い性を良好にするという観点から、本発明の熱伝導シートの30%圧縮強度は、好ましくは100kPa以上であり、より好ましくは200kPa以上であり、さらに好ましくは500kPa以上である。放熱シート10の30%圧縮強度は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0031】
(放熱シートの大きさ)
放熱シート10の大きさは、放熱シート10の上に搭載するデバイスに応じて、適宜変更することができる。放熱シート10が矩形形状である場合、放熱シートの上記長手方向(L方向)の長さは、通常0.5~100mmであり、上記幅方向(W方向)の長さは、通常0.5~100mmである。また、放熱シート10の厚みは、通常50~10000μmである。
【0032】
(放熱シートの製造方法)
本発明の熱伝導シートの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、樹脂と熱伝導粒子を混練して熱伝導性樹脂組成物を作製する混練工程と、前記熱伝導性樹脂組成物を積層して積層体を作製する積層工程を含む。
【0033】
本実施形態では、下記の各<混練工程>、<積層工程>を含む方法を用いて熱伝導シート1を得る。
さらに必要に応じて、<スライス工程>及び<架橋工程>を用いることも可能である。
【0034】
<混練工程>
熱伝導粒子と樹脂を混練して、熱伝導性樹脂組成物を作製する。
前記の混練は、例えば樹脂と熱伝導粒子とを、プラストミル等の二軸スクリュー混練機や二軸押出機等を用いて、加熱下において混練することが好ましく、これにより、熱伝導粒子が樹脂中に均一に分散された熱伝導性樹脂組成物を得ることができる。
【0035】
<積層工程>
積層工程では、前記混練工程で得た熱伝導性樹脂組成物を積層して積層体を作製する。
積層方法としては、例えば、混練工程で作製した熱伝導性樹脂組成物を分割して積層して積層体を作製後、熱プレスを行い、その後、更に、分割と積層と上記の熱プレスを繰り替して、積層体の層数を増やす方法を用いることができる。
【0036】
このように、複数回の成形によって、熱伝導性樹脂層の幅方向長さを狭めていく手法によれば、各回における成形圧を、1回の成形で行う場合に比べて、小さくすることができるため、成形に起因する積層構造の破壊等の現象を回避することができる。
【0037】
その他の積層方法として、例えば、多層形成ブロックを備える押出機を用い、前記多層形成ブロックを調製して、共押出し成形により、積層体を得る方法を用いることもできる。
【0038】
具体的には、第1の押出機及び第2の押出機の双方に混練工程で得た熱伝導性樹脂組成物を導入し、第1の押出機及び第2の押出機から熱伝導性樹脂組成物を同時に押出す。第1の押出機及び第2の押出機から押出された熱伝導性樹脂組成物は、フィードブロックに送られる。フィードブロックでは、第1の押出機及び第2の押出機から押出された熱伝導性樹脂組成物が合流する。それによって、熱伝導性樹脂組成物が積層された2層体を得ることができる。次に、上記の2層体を多層形成ブロックへと移送し、押出し方向に平行な方向であり、かつ積層面に垂直な複数の面に沿って2層体を複数に分割後、積層して、積層体を作製することができる。
【0039】
<スライス工程>
上記積層工程で得た積層体を必要に応じて所望の高さになるよう積層し、圧力を掛けて合着した後、積層方向に対して平行方向にスライスすることにより、放熱シート10を作製する。
【0040】
<架橋工程>
架橋工程では、電離性放射線を放熱シート10に照射して、放熱シート10を架橋する。これにより、放熱シート10の粘着性を抑制することができる。電離性放射線としては、例えば、光、γ線、電子線等が挙げられる。電離性放射線の照射量は、100~1,000kVの加速電圧で50~800kGyが好ましく、200~800kVの加速電圧で100~700kGyがより好ましい。架橋工程は、樹脂がエラストマー樹脂である場合に行うことが好ましい。
【0041】
上記工程を経ることにより、熱伝導粒子の長軸が、放熱シート10の主面に対して60°以上の角度で配向した放熱シート10を得ることができる。
【0042】
[フィルム]
フィルム20は、デバイスのテーピングの形態に通常使用されるものであれば、特に限定されない。テーピングの形態に通常使用されるフィルムには、例えば、ポリスチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどが挙げられる。これらのフィルムの中で、ポリエチレンテレフタレートフィルム、及びポリエチレンフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムがより好ましい。
【0043】
(フィルムの厚み)
ナイフエッジにおいて、放熱シート10がフィルム20からより確実に剥離できるようにするために、フィルム20から放熱シート10を剥離するときに使用するナイフエッジの形状にフィルム20が追従できることが好ましい。また、ナイフエッジの形状にフィルム20が追従させるために、フィルム20にテンションを与えるので、ナイフエッジによりフィルム20が切断されにくいことが好ましい。このような観点から、フィルム20の厚みは、例えば5~250μm、好ましくは20~200μmであり、より好ましくは50~200μmであり、さらに好ましくは50~150μmである。なお、フィルム20のナイフエッジの形状への追従が不十分であると、放熱シート10はフィルム20から剥離しない場合がある。
【0044】
(フィルムの幅)
フィルム20の幅は、特に限定されないが、例えば1~500mmである。
【0045】
(フィルムのヤング率)
フィルムのヤング率は、特に限定されないが、例えば1~10,000MPaである。フィルム20から放熱シート10を剥離するときに使用するナイフエッジの形状にフィルム20が追従できるようにする観点から、フィルム20のヤング率は、好ましくは1~6,000MPaであり、より好ましくは100~5,000MPaであり、さらに好ましくは1,000~4,500MPaである。フィルム20のヤング率は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0046】
(フィルムの凹凸)
フィルム20は、放熱シート10が載置されるフィルムの主面に凹凸が設けられてもよい。凹凸は、例えばエンボス加工により形成されるとよい。これにより、フィルム20に対する放熱シート10の面密着強度をより的確に調整することができる。例えば、エンボス加工により形成されたフィルム20の凹部の深さ、凹部の面積等を調節することにより、フィルム20に対する放熱シート10の面密着強度を調整できる。
例えば、フィルム20に対する放熱シート10の面密着強度を1.0N/mm以下とする観点から、主面における凹部の深さは、好ましくは5~80μmであり、より好ましくは10~70μmであり、さらに好ましくは20~60μmである。また、フィルム20に対する放熱シート10の面密着強度を1.0N/mm以下とする観点から、フィルム20の主面において、フィルム全体の面積対する凹部の占有面積の割合は、好ましくは5~95%であり、より好ましくは10~90%であり、さらに好ましくは20~80%である。凹部の深さ及び凹部の占有面積の割合は、例えば、レーザー顕微鏡で表面形状解析することにより測定することができる。
【0047】
また、フィルムが巻き取られたときに放熱シートがフィルムの背面に転着することを防止するために、フィルムの背面には、離型処理が施されてもよい。離型処理には、例えば、シリコーン系剥離剤、アルキルペンダント系剥離剤、縮合ワックス系剥離剤などの剥離剤を用いることができる。
【0048】
(粘着剤層)
フィルム20に放熱シート10を仮接着するために、フィルム20の表面に、不図示の粘着剤層を形成してもよい。粘着剤層には、例えば、ゴム系粘着剤層、アクリル系粘着剤層、シリコーン系粘着剤層、ウレタン系粘着剤層などが挙げられる。これらの粘着剤層の中で、フィルムと放熱シートの面密着強度を所望の範囲に調整しやすい観点及び安価に提供できるという観点から、アクリル系粘着剤層及びゴム系粘着剤層が好ましく、これらの中ではゴム系粘着剤層がより好ましい。ゴム系粘着剤層に使用されるゴム系粘着剤には、例えば、天然ゴム系粘着剤、スチレン-ブタジエン(SBR)系粘着剤、再生ゴム系粘着剤、ポリイソブチレンゴム系粘着剤、ブチルゴム系粘着剤、ブロックコポリマー系粘着剤等が挙げられる。ゴム系粘着剤層を使用することで、放熱シートの樹脂としてエラストマー樹脂を使用する場合に、特にフィルムと放熱シートの面密着強度を所望の範囲に調整しやすくなる。粘着剤層の厚みは、例えば、1~200μmである。
【0049】
粘着剤層の粘着力を調整することにより、フィルム20に対する放熱シート10の面密着強度を1.0N/mm以下に調節することができる。また、フィルム20をエンボス加工して、放熱シート10及びフィルム20との間の接触面積を調整することによっても、フィルム20に対する放熱シート10の面密着強度を1.0N/mm以下に調節することができる。
【0050】
なお、放熱シート10が粘着性を有する場合は、フィルム20の表面に粘着剤層を設けなくてもよい。また、放熱シート10が強い粘着性を有する場合、フィルム20に対する放熱シート10の面密着強度を1.0N/mm以下に調節するために、フィルム20の表面に剥離層を設けてもよい。また、この場合も、フィルム20をエンボス加工して、放熱シート10及びフィルム20との間の接触面積を調整することによって、フィルム20に対する放熱シート10の面密着強度を1.0N/mm以下に調節してもよい。
【0051】
(多層構造体の使用方法)
本発明の一実施形態の多層構造体1は、例えば、リール40から巻き出され、フィルム20に載置されている放熱シート10は、真空ノズルによりピックアップされる。巻き出されたフィルム20は、ナイフエッジによって進行方向を鋭角に折り返されてもよく、折り返されることでフィルム20から放熱シート10が剥離され、剥離された放熱シート10を真空ノズルによりピックアップすることも好ましい。放熱シート10は、半導体デバイスのような剛性を有さないので、ナイフエッジにより剥離されながら真空ノズルにより吸着されることで適切にピックアップされる。
【0052】
(多層構造体の製造方法)
本発明の一実施形態の多層構造体1の製造方法は、特に限定されない。多層構造体1は、例えば、表面に粘着剤層を形成したフィルムの上に放熱シートを配置することにより作製することができる。また、本発明の一実施形態の多層構造体1を、例えば、以下のように作製してもよい。図2(a)に示すように、放熱シートを構成する放熱組成物の放熱組成物シート状成形体40を、表面に粘着層を形成したフィルムに貼り付ける。次に、図2(b)に示すように、放熱シートの輪郭に対応する部分41が切断されるように、フィルムを除いて放熱組成物シート状成形体40を打ち抜く(ハーフカット)。そして、図2(c)に示すように、放熱組成物シート状成形体40の不要部分を除去して、本発明の一実施形態の多層構造体1を作製してもよい。
【0053】
[本発明の一実施形態の多層構造体の変形例]
本発明の一実施形態の多層構造体1は、次のように変形することができる。
本発明の一実施形態の多層構造体1はテーピングの形態であった。しかし、本発明の一実施形態の多層構造体の形態は、放熱シート及びフィルムを備える多層構造体の形態であれば、特に限定されない。例えば、図3に示す多層構造体1Aのように、放熱シート10が縦方向及び横方向に並ぶトレイの形態であってもよい。この場合、この場合も、放熱シート10は、吸着ノズルを用いて、ピックアップされる。
【0054】
本発明の一実施形態の多層構造体及び本発明の一実施形態の多層構造体の変形例は、任意に組み合わせることができる。
【0055】
本発明の一実施形態の多層構造体及び本発明の一実施形態の多層構造体の変形例は、本発明の多層構造体の一例にすぎない。したがって、本発明の多層構造体は、本発明の一実施形態の多層構造体及び本発明の一実施形態の多層構造体の変形例に限定されない。
【実施例0056】
以下に本発明の実施例を説明する。ただし、本発明は実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
【0057】
(放熱シートの作製)
(放熱シートの作製)
水素化ブタジエンゴム(商品名「L-1203」、株式会社クラレ製、液状)100質量部、窒化ホウ素(デンカ株式会社製、商品名「SGP」、板状(鱗片状)、平均粒子径18、厚み1μm、アスペクト比20)340質量部を溶融混練後、これを多層成型ブロック製造用押出機で押出し、1層あたりの厚みが1,000μm(熱伝導性樹脂層の幅が1,000μm)であり、これが10層積層された多層成形ブロックを得た。該多層成形ブロックの積層面に垂直な面がシート面となるようにして、多層成型ブロックをスライスして、1,000μmの厚みを有する放熱シートを得た。得られた放熱シートに加速電圧750kVの電子線を150kGy照射し、さらに加速電圧300kVの電子線を600kGy照射して、放熱シートを得た。
【0058】
(多層構造体の作製)
フィルムの原反ロール(ポリエチレン、商品名「ウベポリシート」、宇部フィルム社製、厚み:25μm、ヤング率:3MPa)を用意した。スリッターを用いて原反ロールを100mmの幅に切断し、長尺のテープ状フィルムを作製した。このテープ状フィルムの表面にゴム系粘着剤(商品名「オリバイン BPS5079-1」、トーヨーケム社製)を塗布し、100℃の温度で乾燥して、10μmの厚みを有する粘着剤層を表面に備えたフィルムを作製した。
【0059】
このフィルムの全面に放熱シートを貼り付けた。次に、抜き刃を使用して、放熱シートを貼り付けたフィルムを2.0mm×2.0mmの大きさにハーフカットした。そして、放熱シートの不要部分をフィルムから剥がして、長さ方向に並ぶ複数の2.0mm×2.0mmの大きさの放熱シートを表面に備えた実施例1の多層構造体を作製した。
【0060】
(実施例2)
窒化ホウ素の配合量を340質量部から410質量部に変更した以外は、実施例1の方法で作製した放熱シートと同様な方法で作製した放熱シートを使用し、フィルムの原反ロールとして、フィルムの原反ロール(ポリエチレン、商品名「ウベポリシート」、宇部フィルム社製、厚み:100μm、ヤング率:3MPa)を使用した。それ以外は、実施例1の多層構造体と同様な方法で、実施例2の多層構造体を作製した。
【0061】
(実施例3)
フィルムの原反ロールとして、フィルムの原反ロール(ポリエチレン、商品名「ウベポリシート」、宇部フィルム社製、厚み:200μm、ヤング率:3MPa)を使用した。それ以外は、実施例1の多層構造体と同様な方法で、実施例3の多層構造体を作製した。
【0062】
(実施例4)
フィルムの原反ロールとして、フィルムの原反ロール(ポリエチレンテレフタレート、商品名「ルミラー #25-S10」、東レ社製、厚み:25μm、ヤング率:4,100MPa)を使用した。それ以外は、実施例1の多層構造体と同様な方法で、実施例4の多層構造体を作製した。
【0063】
(実施例5)
窒化ホウ素の配合量を340質量部から290質量部に変更した以外は、実施例1の方法で作製した放熱シートと同様な方法で作製した放熱シートを使用し、フィルムの原反ロールとして、フィルムの原反ロール(ポリエチレンテレフタレート、商品名「ルミラー #100-S10」、東レ社製、厚み:100μm、ヤング率:4,100MPa)を使用した。それ以外は、実施例1の多層構造体と同様な方法で、実施例5の多層構造体を作製した。
【0064】
(実施例6)
フィルムの原反ロールとして、フィルムの原反ロール(ポリエチレンテレフタレート、商品名「ルミラー #100-S10」、東レ社製、厚み:100μm、ヤング率:4,100MPa)を使用した。それ以外は、実施例1の多層構造体と同様な方法で、実施例6の多層構造体を作製した。
【0065】
(実施例7)
シリコーン樹脂(信越化学工業株式会社製「KF-96H-10万cs」、液状)100質量部、厚さ1μmの窒化ホウ素340質量部を溶融混練後、これを多層成型ブロック製造用押出機で押出し、1層あたりの厚みが1,000μm(熱伝導性樹脂層の幅が1,000μm)であり、これが10層積層された多層成形ブロックを得た。該多層成形ブロックを積層面に垂直な面をシート面となるよう向きを調整し、放熱シートを得た。
この放熱シートを使用し、フィルムの原反ロールとして、フィルムの原反ロール(ポリエチレンテレフタレート、商品名「ルミラー #100-S10」、東レ社製、厚み:100μm、ヤング率:4,100MPa)を使用し、フィルムの表面に粘着剤を塗布しなかった。それ以外は、実施例1の多層構造体と同様な方法で、実施例7の多層構造体を作製した。
【0066】
(実施例8)
アクリル樹脂(ナガセケムテックス社製、商品名「SG-280 EK23」、液状)100質量部、厚さ1μmの窒化ホウ素340質量部を溶融混練後、これを多層成型ブロック製造用押出機で押出し、1層あたりの厚みが1,000μm(熱伝導性樹脂層の幅が1,000μm)であり、これが10層積層された多層成形ブロックを得た。該多層成形ブロックを積層面に垂直な面をシート面となるよう向きを調整し、放熱シートを得た。この放熱シートを使用し、フィルムの原反ロールとして、フィルムの原反ロール(ポリエチレンテレフタレート、商品名「ルミラー #100-S10」、東レ社製、厚み:100μm、ヤング率:4,100MPa)を使用し、フィルムの表面に粘着剤を塗布しなかった。それ以外は、実施例1の多層構造体と同様な方法で、実施例8の多層構造体を作製した。
【0067】
(実施例9)
フィルムの原反ロールとして、フィルムの原反ロール(ポリエチレンテレフタレート、商品名「ルミラー #100-S10」、東レ社製、厚み:100μm、ヤング率:4,100MPa)を使用し、フィルムの表面に塗布する粘着剤として、アクリル系粘着剤(商品名「オリバイン BPS5448」、トーヨーケム社製)を使用した。それ以外は、実施例1の多層構造体と同様な方法で、実施例9の多層構造体を作製した。
【0068】
(実施例10)
フィルムの原反ロールとして、フィルムの原反ロール(ポリエチレン、商品名「ルミラー #12-S10」、東レ社製、厚み:15μm、ヤング率:3MPa)を使用した。それ以外は、実施例1の多層構造体と同様な方法で、実施例10の多層構造体を作製した。
【0069】
(実施例11)
フィルムの原反ロールとして、フィルムの原反ロール(ポリエチレンテレフタレート、商品名「ルミラー #12-S10」、東レ社製、厚み:15μm、ヤング率:4,100MPa)を使用した。それ以外は、実施例1の多層構造体と同様な方法で、実施例11の多層構造体を作製した。
【0070】
(実施例12)
フィルムの原反ロールとして、フィルムの原反ロール(ポリエチレン、商品名「ルミラー #250-S10」、東レ社製、厚み:250μm、ヤング率:3MPa)を使用した。それ以外は、実施例1の多層構造体と同様な方法で、実施例12の多層構造体を作製した。
【0071】
(実施例13)
フィルムの原反ロールとして、フィルムの原反ロール(ポリエチレンテレフタレート、商品名「ルミラー #250-S10」、東レ社製、厚み:250μm、ヤング率:4,100MPa)を使用した。それ以外は、実施例1の多層構造体と同様な方法で、実施例11の多層構造体を作製した。
【0072】
(実施例14)
フィルムの原反ロールとして、フィルムの原反ロール(ポリイミド、商品名「ルミラー #25-S10」、東レ社製、厚み:25μm、ヤング率:9,100MPa)を使用した。それ以外は、実施例1の多層構造体と同様な方法で、実施例14の多層構造体を作製した。
【0073】
(実施例15)
窒化ホウ素の配合量を340質量部から290質量部に変更した以外は、実施例1の方法で作製した放熱シートと同様な方法で作製した放熱シートに電子線を照射しなかった。フィルムの原反ロール(ポリエチレンテレフタレート、商品名「ルミラー #100-S10」、東レ社製、厚み:100μm、ヤング率:4,100MPa)を使用した。それ以外は、実施例1の多層構造体と同様な方法で、実施例15の多層構造体を作製した。
【0074】
(実施例16)
窒化ホウ素の配合量を340質量部から420質量部に変更した以外は、実施例1の方法で作製した放熱シートと同様な方法で作製した放熱シートを使用し、フィルムの原反ロール(ポリエチレンテレフタレート、商品名「ルミラー #100-S10」、東レ社製、厚み:100μm、ヤング率:4,100MPa)を使用した。それ以外は、実施例1の多層構造体と同様な方法で、実施例16の多層構造体を作製した。
【0075】
(比較例1)
フィルムの原反ロールとして、フィルムの原反ロール(ポリエチレンテレフタレート、商品名「ルミラー #100-S10」、東レ社製、厚み:100μm、ヤング率:4,100MPa)を使用し、フィルムの表面に塗布する粘着剤として、特殊アクリル系粘着剤(商品名「CAT1300S」、帝国インキ製造社製)を使用した。それ以外は、実施例1の多層構造体と同様な方法で、比較例1の多層構造体を作製した。
【0076】
(放熱シートの評価)
(1)熱伝導粒子の配向角度の測定
放熱シートの断面を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製 S-4700)で観察した。倍率3000倍の観察画像から、任意の20個の熱伝導粒子について、シート面とのなす角を測定し、その平均値を配向角度とした。
【0077】
(2)熱伝導率の測定
25mm角の放熱シートのセラミックヒーターと水冷式放熱板の間に挟み、加熱した。20分間経過した後、セラミックヒーターの温度T1と水冷式放熱板の温度T2を測定し、セラミックヒーターの印加電力W、放熱シートの厚さt、放熱シートの面積Sを下記式に代入して熱伝導率λを算出した。
λ=t×W/{S×(T1‐T2)}
(3)30%圧縮強度
得られた放熱シートの30%圧縮強度を、エー・アンド・ディ社製「RTG-1250」を用いて測定した。サンプル寸法を2mm×15mm×15mmに調整し、測定温度を23℃、圧縮速度を1mm/minとして測定を行った。
(4)引張強度
得られた放熱シートの引張強度を、エー・アンド・ディ社製「RTG-1250」を用いて測定した。サンプル寸法を1.5mm×10mm×60mm、測定温度を23℃、引張速度を500mm/minとして測定を行った。
(5)アスカーC硬度
25mm角の放熱シートを、厚み10mm以上となるように積層し、アスカーゴム硬度計C型(高分子計器株式会社製)で23℃にて測定した。
(6)面密着強度
放熱シートの面密着強度を以下(i)~(iii)により測定した。
(i)厚さ10mm大きさ50mm×50mmのポリカーボネート板211、平板部213a(大きさ25mm×25mm)と、平板部213aの中心部から鉛直上に固定された板状部材213b(長さ25mm)とからなるT型アルミ治具(A5052)213を準備した(図4参照)。さらに、両面粘着テープ212(商品名「ダブルタックテープ No.570E」、積水化学工業株式会社製)、及びフィルム20上に仮接着した放熱シート10のサンプルを準備した(図4参照)。
(ii)図4に示すように、ポリカーボネート板211と、T型アルミ治具213の平板部213aにそれぞれ両面粘着テープ212を用いて放熱シート10とフィルム20をそれぞれ貼付けた。
(iii)上記(ii)の状態で23℃、1時間養生させた後、ポリカーボネート板を引張試験機(A&D製、テンシロンRTG-1310)に固定し、T型アルミ治具13を上方に1.0mm/分で引張り、放熱シート10とフィルム20の界面で剥離する、もしくは放熱シート10が凝集破壊する際の応力(N/mm)を測定した。なお、測定はチャック間距離0.17mm、標線間距離0.17mmの条件で行い、両面粘着テープ212の界面など上記以外の箇所で剥離が起こった場合にはより密着力の強い両面粘着テープを使用することとした。そして、この測定において、応力の最大値を「面密着強度」とした。
【0078】
(フィルムの評価)
(1)ヤング率
23℃の雰囲気下、幅25mmのフィルムをエー・アンド・ディ社製「RTG-1250」にて引張速度300mm/分、チャック間隔100mmの条件で引張り、そのS-S曲線の応力の立上り部の接線からヤング率(引張弾性率)を求めた。
【0079】
(多層構造体の評価)
(1)ピックアップ評価
フィルムキャリア部品用フィーダー(三井金属計測機工株式会社製)を用いて、フィルムから放熱シートを吸着ノズル用いてピックアップできるかを調べた。
A:放熱シートをピックアップできた。
B:放熱シートをピックアップできなかった。
(2)放熱シートのピックアップ後の表面のキズの有無。
フィルムキャリア部品用フィーダー(三井金属計測機工株式会社製)を用いて、吸着ノズル用いてピックアップした後の放熱シートの表面のキズの有無を目視で調べた。
A:放熱シートの表面にキズがなかった。
B:放熱シートの表面にキズがあった。
(3)放熱シートのピックアップ後の変形の有無。
フィルムキャリア部品用フィーダー(三井金属計測機工株式会社製)を用いて、吸着ノズル用いてピックアップした後の放熱シートの変形の有無を調べた。
A:放熱シートの変形がなかった。
B:放熱シートの変形があった。
(4)ナイフエッジでのフィルム剥離評価
フィルムキャリア部品用フィーダー(三井金属計測機工株式会社製)を用いてナイフエッジ部において、放熱シートがフィルムから剥離されているかを調べた。
A:全ての放熱シートがフィルムから剥離された。
B:フィルムから剥離されない放熱シートがあった。
(5)ナイフエッジでのフィルム切断の有無
フィルムキャリア部品用フィーダー(三井金属計測機工株式会社製)を用いてナイフエッジ部において、フィルムの切断の有無を調べた。
A:フィルムの切断なし。
B:フィルムの切断あり。
(6)総合評価
A:ピックアップ評価がAであり、他の評価も全てAであった。
B:ピックアップ評価がAであり、他の評価が1つでもBであった。
C:ピックアップ評価がBであった。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
以上の実施例及び比較例から、フィルムに対する放熱シートの面密着強度を1.0N/mm以下とすることにより、フィルムから放熱シートをピックアップすることができることがわかった。
【符号の説明】
【0084】
1,1A 多層構造体
10 放熱シート
20,20A フィルム
30 リール
40 放熱組成物シート状成形体
211 ポリカーボネート板
212 両面粘着テープ
213 T型アルミ治具
図1
図2
図3
図4