(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050019
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】異常判定システム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/04 20060101AFI20230403BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20230403BHJP
A61G 12/00 20060101ALI20230403BHJP
G06Q 50/22 20180101ALI20230403BHJP
A61B 5/107 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
G08B25/04 K
G08B21/02
A61G12/00 E
G06Q50/22
A61B5/107 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160142
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】高田 昌太
(72)【発明者】
【氏名】西田 竜太
(72)【発明者】
【氏名】西口 絵里子
(72)【発明者】
【氏名】片岡 夏海
【テーマコード(参考)】
4C038
4C341
5C086
5C087
5L099
【Fターム(参考)】
4C038VA16
4C038VB01
4C341LL10
5C086AA22
5C086AA49
5C086CA06
5C086CA21
5C086DA08
5C086EA40
5C086FA06
5C086FA18
5C087AA19
5C087AA37
5C087DD03
5C087DD30
5C087EE08
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087GG08
5C087GG09
5C087GG70
5C087GG83
5L099AA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】対象者の異常の有無の判定精度の向上を図る異常判定システムを提供する。
【解決手段】異常判定システム10は、対象者(居住者P1)の姿勢を検知する姿勢検知部(居室センサ11)と、対象者の姿勢の移行速度に基づいて対象者の異常の有無を判定し、対象者の姿勢が第一の姿勢から第二の姿勢へと移行する速度が第一範囲外である場合、対象者に異常があると判定する判定部(サーバ12)と、を具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の姿勢を検知する姿勢検知部と、
前記対象者の姿勢の移行速度に基づいて前記対象者の異常の有無を判定する判定部と、
を具備する異常判定システム。
【請求項2】
前記判定部は、
前記対象者の姿勢が第一の姿勢から第二の姿勢へと移行する速度が第一範囲外である場合、前記対象者に異常があると判定する、
請求項1に記載の異常判定システム。
【請求項3】
前記判定部は、
前記対象者の姿勢の移行速度を予め学習することで、前記第一範囲を決定する、
請求項2に記載の異常判定システム。
【請求項4】
前記対象者の場所を検知する場所検知部をさらに具備し、
前記判定部は、
前記対象者の所定の場所での滞在時間が第二範囲外である場合、前記対象者に異常があると判定する、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の異常判定システム。
【請求項5】
前記判定部は、
前記対象者の所定の場所での滞在時間を予め学習することで、前記第二範囲を決定する、
請求項4に記載の異常判定システム。
【請求項6】
前記対象者のバイタル情報を検知するバイタル情報検知部をさらに具備し、
前記判定部は、
前記対象者のバイタル情報に基づいて前記対象者の異常の有無を判定する、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の異常判定システム。
【請求項7】
前記対象者に異常があると判定された場合、前記対象者の異常に関する情報を記憶する記憶部をさらに具備する、
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の異常判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象者の異常の有無を判定する異常判定システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象者の異常の有無を判定する異常判定システムの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、障害者施設において、人感センサ等のセンサを用いて入居者の現在の状況を検知し、管理室の管理用PCの画面上に表示する異常判定システムが記載されている。介護者(施設の職員)は、管理用PCの画面上で入居者の異常(例えば、転倒等)の有無を確認し、異常が発生していることが確認された場合、その入居者の居室に駆けつけることができる。
【0004】
このような異常判定システムにおいては、異常を誤検知してしまうと、介護者が入居者の居室に無駄に駆けつけることになるため、異常の有無の判定精度の向上が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、異常の有無の判定精度の向上を図ることが可能な異常判定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、対象者の姿勢を検知する姿勢検知部と、前記対象者の姿勢の移行速度に基づいて前記対象者の異常の有無を判定する判定部と、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記判定部は、前記対象者の姿勢が第一の姿勢から第二の姿勢へと移行する速度が第一範囲外である場合、前記対象者に異常があると判定するものである。
【0010】
請求項3においては、前記判定部は、前記対象者の姿勢の移行速度を予め学習することで、前記第一範囲を決定するものである。
【0011】
請求項4においては、前記対象者の場所を検知する場所検知部をさらに具備し、前記判定部は、前記対象者の所定の場所での滞在時間が第二範囲外である場合、前記対象者に異常があると判定するものである。
【0012】
請求項5においては、前記判定部は、前記対象者の所定の場所での滞在時間を予め学習することで、前記第二範囲を決定するものである。
【0013】
請求項6においては、前記対象者のバイタル情報を検知するバイタル情報検知部をさらに具備し、前記判定部は、前記対象者のバイタル情報に基づいて前記対象者の異常の有無を判定するものである。
【0014】
請求項7においては、前記対象者に異常があると判定された場合、前記対象者の異常に関する情報を記憶する記憶部をさらに具備するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、異常の有無の判定精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る異常判定システムの構成を示した模式図。
【
図2】サーバによる制御内容を示したフローチャート。
【
図3】異常判定システムによって検知される異常の一例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の一実施形態に係る異常判定システム10の構成について説明する。
【0018】
本実施形態に係る異常判定システム10は、高齢者施設、介護施設、障害者施設等の施設に入居している人(入居者P1)の異常の有無を判定するものである。
図1に示すように、本実施形態においては、異常判定システム10を高齢者施設1に設けた例を示している。
【0019】
異常判定システム10が設けられる高齢者施設1には複数の居室2が設けられ、各居室2において入居者P1が生活を営んでいる。なお、
図1では便宜上、1つの居室2のみを図示している。各居室2にはトイレ2aが設けられる。また高齢者施設1には、高齢者施設1のスタッフP2(介護職員等)が待機するスタッフ詰所3が設けられる。
【0020】
異常判定システム10は、主として居室センサ11、端末13及びサーバ12を具備する。
【0021】
居室センサ11は、居室2に在室している入居者P1に関する情報を取得するものである。本実施形態においては、居室センサ11として、所定範囲に伝播するミリ波(高波数帯の電磁波)によるミリ波センサを用いている。居室センサ11は、例えば居室2の天井部に、下方へミリ波を発信可能に設けられる。居室センサ11から発信されたミリ波は対象物によって反射され、当該居室センサ11がこの反射波を受信する。居室センサ11は、受信した反射波に基づいて、対象物との距離、角度、重心位置といった対象物の位置(場所)に関する情報や、対象物の形状、対象物の移動速度等を取得することができる。
【0022】
サーバ12は、居室センサ11の検出結果に基づいて各種処理を行うものである。サーバ12は、例えばクラウド上に設けられた仮想サーバ(クラウドサーバ)により構成される。サーバ12は、CPU等の演算処理部、RAMやROM等の記憶部等を具備する。サーバ12は、居室センサ11からの情報に基づいて、入居者P1の異常の有無を判定することができる。またサーバ12は、後述する端末13との間で、各種情報を送受信することができる。
【0023】
端末13は、各種情報を表示することが可能なものである。端末13は、入居者P1の異常の有無を把握すべき者によって所持される。本実施形態では、高齢者施設1のスタッフP2が端末13を所持しているものとする。端末13は、例えばスタッフP2が携帯可能な機器(例えば、スマートフォンやタブレット端末等)によって構成される。端末13は、後述するサーバ12からの情報を適宜の方法(液晶画面への表示、音声等)でスタッフP2に報知することができる。
【0024】
以上の如く構成された異常判定システム10を用いることで、入居者P1の異常の有無を判定することができる。また異常判定システム10は、入居者P1に異常があると判定した場合、その旨をスタッフP2に報知することができる。これによってスタッフP2は、入居者P1の居室2に駆けつけるなど、適切な対応を速やかに実行することができる。
【0025】
サーバ12は、
図2に示す制御フローを繰り返し実行することで、入居者P1の異常の有無を判定してスタッフP2に報知することができる。以下では、異常判定システム10による一連の処理について具体的に説明する。
【0026】
ステップS101において、サーバ12は、居室センサ11からの情報に基づいて、居室2に在室している人が一人であるか否かを判定する。
【0027】
ここで、サーバ12は、居室センサ11からの情報に基づいて、居室2の在室情報(居室2に人が何人在室しているか)を判定することができる。具体的には、サーバ12は居室センサ11により取得された居室2内の対象物の各種情報(距離、移動速度等)から、在室している人の有無や人数を判定することができる。
【0028】
サーバ12は、居室2に在室している人が一人であると判定した場合、ステップS102に移行する。一方、サーバ12は、居室2に在室している人が一人ではない(一人も在室していない、又は、二人以上在室している)と判定した場合、ステップS107に移行する。このように居室2に二人以上在室していることが検知された場合には、居室2に入居者P1とスタッフP2が在室している可能性が高いため、後述するステップS103及びステップS104の異常の判定を行わない。
【0029】
なお、居室2に在室している人が一人である場合、当該人は当該居室2の入居者P1である可能性が高い。以下では、ステップS101で一人で在室していることが判定された人は入居者P1であるものと仮定して説明する。
【0030】
ステップS102において、サーバ12は、居室2に在室している入居者P1の姿勢が臥位であるか否かを判定する。
【0031】
ここで、サーバ12は、居室センサ11からの情報に基づいて、入居者P1の姿勢を判定することができる。具体的には、サーバ12は居室センサ11により取得された入居者P1の各種情報から、入居者P1が臥位、端座位、立位の3種類の姿勢のうち、どの姿勢をとっているかを判定することができる。なお、サーバ12が判定する姿勢の区分は上記3種類に限るものではなく、任意に設定することが可能である。
【0032】
サーバ12は、居室2に在室している入居者P1の姿勢が臥位であると判定した場合、ステップS103に移行する。一方、サーバ12は、居室2に在室している入居者P1の姿勢が臥位ではないと判定した場合、ステップS107に移行する。
【0033】
ステップS103において、サーバ12は、入居者P1が直前の姿勢(臥位以外の姿勢)からステップS102で判定された臥位へと移行する際の移行速度が、所定の範囲(第一範囲)外であるか否かを判定する。
【0034】
具体的には、サーバ12は入居者P1の直前の姿勢から臥位への移行速度が5m/s以上である(便宜上、以下ではこの判定条件を「条件1」と称する)か否かを判定する。ここで、一般的に、人が転倒する際の速度は5m/s以上であることが分かっている。そこで本実施形態では、入居者P1の臥位への移行速度が5m/s以上である場合には、入居者P1が転倒したものと推認している。なお、転倒を推認するための基準となる値(5m/s)は任意に変更することが可能である。
【0035】
さらにサーバ12は、ステップS103において、入居者P1の直前の姿勢から臥位への移行時間T1が普段の移行時間T2の1/2以下、又は、2倍以上である(便宜上、以下ではこの判定条件を「条件2」と称する)か否かを判定する。ここで、普段の移行時間T2とは、入居者P1の平常時(特に異常が発生していない時)に、臥位へと姿勢を移行させる際の移行時間である。サーバ12は、平常時における入居者P1の姿勢の移行時間を予め学習することで、移行時間T2を設定している。例えばサーバ12は、直近1ヶ月間における入居者P1の姿勢の移行時間の平均値を、移行時間T2として設定することが可能である。
【0036】
このように本実施形態では、平常時の移行時間T2と比べて、移行時間T1が大幅に短い、又は、長い(移行速度が大幅に速い、又は、遅い)場合には、入居者P1が意図せず転倒したものと推認している。例えば移行時間T1が移行時間T2の1/2以下である場合、入居者P1がつまずいて転倒した可能性がある。また移行時間T1が移行時間T2の2倍以上である場合、入居者P1の体調が悪化して苦しみながら転倒した可能性がある。
【0037】
サーバ12は、上記の条件1又は条件2を満たすと判定した場合、ステップS105に移行する。一方サーバ12は、上記の条件1及び条件2をいずれも満たさないと判定した場合、ステップS104に移行する。
【0038】
ステップS104において、サーバ12は、入居者P1の所定の場所での滞在時間t1が、所定の範囲(第二範囲)外であるか否かを判定する。
【0039】
具体的には、サーバ12は入居者P1がベッド以外の場所に滞在している時間(滞在時間t1)が、当該場所での普段の滞在時間t2の2倍以上であるか否かを判定する。例えばサーバ12は、入居者P1がトイレ2aに普段の滞在時間t2の2倍以上の時間滞在しているか否かを判定する。ここで、普段の滞在時間t2とは、入居者P1が平常時において当該場所に滞在すると考えられる時間である。サーバ12は、平常時における入居者P1の各場所での滞在時間を予め学習することで、滞在時間t2を設定している。
【0040】
なおサーバ12は、居室センサ11からの情報に基づいて入居者P1の場所を判断することができる。例えば居室センサ11が、トイレ2a付近で入居者P1の検知ができなくなった場合、入居者P1がトイレ2aに入ったと判断することができる。またサーバ12は、トイレ2aだけでなく、居室2内のどこ(ベッドの上、床面、窓際等)に入居者P1がいるのか判断することもできる。サーバ12は、これら種々の場所における入居者P1の滞在時間を予め学習し、各場所における滞在時間t2を設定している。例えばサーバ12は、直近1ヶ月間における入居者P1の各場所における滞在時間の平均値を、各場所における滞在時間t2として設定することが可能である。
【0041】
このように本実施形態では、平常時の滞在時間t2と比べて、滞在時間t1が大幅に長い場合には、入居者P1に何らかの異常が発生したものと推認している。例えば入居者P1のトイレ2aでの滞在時間t1が長い場合、トイレ2aにおいて入居者P1が体調不良になったり、転倒したりしている可能性がある。また入居者P1が居室2内で通常立ち止まることのない位置での滞在時間t1が長い場合、その位置で体調不良になっている可能性がある。また、ステップS103で入居者P1の姿勢に基づく転倒の判定が漏れてしまった場合には、本ステップS104の判定によって当該転倒を検知することもできる。
【0042】
なお、入居者P1がベッドで長時間滞在している場合には、入居者P1が単に就寝している可能性が高いため、ステップS104の判定においては入居者P1がベッドに滞在している場合を除外している。
【0043】
サーバ12は、ベッド以外の場所における入居者P1の滞在時間t1が普段の滞在時間t2の2倍以上であると判定した場合、ステップS105に移行する。一方サーバ12は、ベッド以外の場所における入居者P1の滞在時間t1が普段の滞在時間t2の2倍未満であると判定した場合、ステップS107に移行する。
【0044】
ステップS105において、サーバ12は、入居者P1に異常が発生したと判定する。またサーバ12は、入居者P1に異常が発生したことを報知する。具体的にはサーバ12は、端末13を用いて所定のアラートを発報する。当該アラートには、各種の情報を含むことができる。例えばアラートとして、入居者P1を識別する情報(入居者P1の氏名、居室2の番号等)、異常が発生したと考えられる場所(トイレ2a、居室2内等の区別)、異常の内容(転倒の可能性(ステップS103参照)、長時間滞在に基づく体調不良等の可能性(ステップS104参照)等の区別)等を発報することができる。アラートとしては、端末13の液晶画面への各種情報の表示や、音声による報知等を用いることができる。
【0045】
端末13からのアラートを受けたスタッフP2は、入居者P1に何らかの異常が発生したことを把握することができる。また当該スタッフP2は、アラートとして報知された各種情報に基づいて、速やかに入居者P1の元に駆けつけることができる。
【0046】
サーバ12は、ステップS105の処理を行った後、ステップS106へ移行する。
【0047】
ステップS106において、サーバ12は、入居者P1の異常に関する情報を記憶部に記憶する。このように異常に関する情報を記憶することで、当該情報を介護記録等に活用することができる。サーバ12は、ステップS106の処理を行った後、本制御フローを終了する。
【0048】
一方、ステップS101、ステップS102及びステップS104から移行したステップS107において、サーバ12は、入居者P1のバイタル情報が異常であるか否かを判定する。本実施形態では、判定の対称となるバイタル情報として、脈拍数及び呼吸数を用いている。
【0049】
ここで、サーバ12は、居室センサ11からの情報に基づいて、入居者P1のバイタル情報(脈拍数及び呼吸数)を判定することができる。具体的には、サーバ12は居室センサ11により取得された入居者P1の微小な動き(脈拍や呼吸による体表の動き)から、当該入居者P1の脈拍数及び呼吸数を判定することができる。
【0050】
サーバ12は、所定の基準に基づいて、入居者P1の脈拍数及び呼吸数が異常であるか否かを判定する。例えばサーバ12は、入居者P1の脈拍数が120回/分以上、又は、50回/分未満である場合、入居者P1の脈拍数が異常であると判定する。また例えばサーバ12は、入居者P1の呼吸数が10回/分未満、又は、30回/分以上である場合、入居者P1の呼吸数が異常であると判定する。なお、脈拍数及び呼吸数の異常を判定するための基準値は上記に限るものではなく、任意に変更することができる。例えば、平常時の入居者P1のバイタル情報を学習し、学習結果に基づいて入居者P1ごとに個別の基準値を設定することも可能である。
【0051】
サーバ12は、入居者P1のバイタル情報が異常である(脈拍数又は呼吸数の少なくとも一方が異常である)と判定した場合、ステップS105に移行する。一方サーバ12は、入居者P1のバイタル情報に異常がないと判定した場合、本制御フローを終了する。
【0052】
このようにサーバ12は、入居者P1の姿勢が臥位(転倒した姿勢)ではない場合(ステップS102でNO)や、ステップS103及びステップS104の処理で異常が検知されなかった場合には、最終的にバイタル情報をチェックする。これによって、上記処理で検知できなかった入居者P1の異常を検知することができる。なお、居室2に複数の人が在室している場合(ステップS101でNO)にも、ステップS105においてバイタル情報の異常の有無が判定される。
【0053】
以下では、
図3を用いて、上記制御フローによって検出される異常の一例について説明する。
【0054】
図3に示す例1のように、居室2において、入居者P1が5m/s以上の移行速度で歩行している状態(立位)から床に横たわった状態(臥位)に移行した場合(ステップS102でYES、ステップS103でYES)、サーバ12は入居者P1に異常が発生したと判定する(ステップS105)。
【0055】
また、
図3に示す例2のように、入居者P1が、普段の滞在時間t2の2倍以上の時間トイレ2aに滞在している場合(ステップS104でYES)、サーバ12は入居者P1に異常が発生したと判定する(ステップS105)。
【0056】
以上のように、サーバ12は、
図2に示す制御フローを繰り返し実行することで、入居者P1の異常を検知し、速やかにスタッフP2に報知することができる。
【0057】
以上の如く、本実施形態に係る異常判定システム10は、
対象者(入居者P1)の姿勢を検知する姿勢検知部(居室センサ11)と、
前記対象者の姿勢の移行速度に基づいて前記対象者の異常の有無を判定する判定部(サーバ12)と、
を具備するものである。
このように構成することにより、異常の有無の判定精度の向上を図ることができる。すなわち、姿勢の移行速度に基づいて異常の有無を判定することができるため、対象者が正常な移行速度で意図的に姿勢を変更した場合などに異常を誤検知してしまうのを防止することができる。
【0058】
また、前記判定部は、
前記対象者の姿勢が第一の姿勢(臥位以外の姿勢)から第二の姿勢(臥位)へと移行する速度が第一範囲外である場合(ステップS103でYES)、前記対象者に異常があると判定するものである。
このように構成することにより、所定の基準(第一範囲)に基づいて客観的に異常を判定することができる。
【0059】
また、前記判定部は、
前記対象者の姿勢の移行速度を予め学習することで、前記第一範囲を決定するものである。
このように構成することにより、対象者に応じて基準(第一範囲)を決定することができるため、異常の有無の判定精度の向上を図ることができる。
【0060】
また、異常判定システム10は、
前記対象者の場所を検知する場所検知部(居室センサ11)をさらに具備し、
前記判定部は、
前記対象者の所定の場所での滞在時間が第二範囲外である場合(ステップS104でYES)、前記対象者に異常があると判定するものである。
このように構成することにより、滞在時間に応じて異常を判定することができる。例えば、本来長時間滞在するはずのない場所に長時間滞在している場合、対象者に異常が発生していると判定することができる。
【0061】
また、前記判定部は、
前記対象者の所定の場所での滞在時間を予め学習することで、前記第二範囲を決定するものである。
このように構成することにより、対象者に応じて基準(第二範囲)を決定することができるため、異常の有無の判定精度の向上を図ることができる。
【0062】
また、異常判定システム10は、
前記対象者のバイタル情報を検知するバイタル情報検知部(居室センサ11)をさらに具備し、
前記判定部は、
前記対象者のバイタル情報に基づいて前記対象者の異常の有無を判定する(ステップS107)ものである。
このように構成することにより、バイタル情報に基づいて異常を判定することができる。特に本実施形態のように姿勢や滞在時間で異常が検知されなかった場合に、バイタル情報に基づいて異常の有無を判定することで、異常の検知漏れを防止することができる。
【0063】
また、異常判定システム10は、
前記対象者に異常があると判定された場合、前記対象者の異常に関する情報を記憶する記憶部(サーバ12)をさらに具備するものである。
このように構成することにより、異常に関する情報を介護記録等に活用することができる。
【0064】
なお、本実施形態に係る居室センサ11は、本発明にかかる姿勢検知部、場所検知部及びバイタル情報検知部の一実施形態である。
また、本実施形態に係るサーバ12は、本発明に係る判定部及び記憶部の実施の一形態である。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の技術的思想の範囲内で適宜の変更が可能である。
【0066】
例えば本実施形態では、異常判定システム10が高齢者施設1に設けられる例を示したが、本発明はこれに限るものではなく、種々の施設に適用することが可能である。また、本実施形態で示した居室2の構成は一例であり、例えばトイレ2aが備え付けられていない居室2や、その他の個室(浴室、脱衣室、洗面室等)が備えられた居室2等であってもよい。
【0067】
また、本実施形態では、姿勢検知部、場所検知部及びバイタル情報検知部の一例として居室センサ11(ミリ波センサ)を例示したが、本発明はこれに限るものではなく、その他種々の検知手段によって対象者の姿勢等を検知することが可能である。また、対象者の姿勢、場所、バイタル情報等を、それぞれ異なる検出手段を用いて検知することも可能である。例えば、対象者が身に着けることが可能な検出手段(ウェアラブルデバイス)を用いてバイタル情報等を検知することも可能である。
【0068】
また、本実施形態では、判定部の一例としてサーバ12(クラウドサーバ)を例示したが、本発明はこれに限るものではなく、判定部はその他種々の構成とすることも可能である。例えば、高齢者施設1に設けられたオンプレミスサーバを判定部として用いることも可能である。
【0069】
また、本実施形態で異常の判定の基準として説明した具体的な内容(ステップS103、ステップS104、ステップS107参照)は一例であり、本発明はこれに限るものではなく、基準となる具体的な数値等は任意に変更することが可能である。
【0070】
また、本実施形態で説明した制御フロー(
図2参照)は一例であり、任意に変更することが可能である。例えば、ステップS103とステップS104の順序を入れ替えることも可能である。また、ステップS103、ステップS104、ステップS107の処理のいずれかを実行しないように構成することも可能である。
【0071】
また、本実施形態では、入居者P1の姿勢が臥位になった場合(ステップS102でYES)に、姿勢や滞在時間に応じて異常を検知する(ステップS103、ステップS104)例を示したが、異常を検知する姿勢は臥位に限るものではなく、その他種々の姿勢についても異常を検知することが可能である。
【0072】
また、本実施形態では、居室2に設けられた居室センサ11が、入居者P1を検知できなくなった場合に、入居者P1がトイレ2aに入ったと判断する例を示したが、例えばトイレ2aにも居室センサ11を設けて、入居者P1を検知するように構成することも可能である。
【0073】
また、本実施形態では、バイタル情報として脈拍数及び呼吸数を用いて異常を判定する例を示したが、バイタル情報はこれに限るものではなく、その他種々の情報(血圧、体動、自立神経等)を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0074】
10 異常判定システム
11 居室センサ
12 サーバ
13 端末