(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050422
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】車両前部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
B62D25/08 H
B62D25/08 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160505
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】中村 篤史
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB35
3D203BB38
3D203CA30
3D203CA35
3D203CA43
3D203CA56
3D203DA37
3D203DA68
(57)【要約】
【課題】上方から外力を受けた場合、吸気カバーが上下方向に撓むように変形し易くすることができる車両前部構造を提供する。
【解決手段】本発明にかかる車両前部構造100は、車両前部と車室とを区画するダッシュパネル106に設けられ車室内の空調ユニット119による吸気が行われる吸気部102と、ダッシュパネルに固定されカウル部123から導入された外気を吸気部に案内する流路を形成する吸気カバー104とを備え、吸気カバーは、吸気部の上方に配置され流路の上側を区画する上壁124と、上壁の車幅方向の両端から連続してダッシュパネルまで延び流路の車幅方向両側を区画する一対の側壁126、128とを有し、上壁は、一対の側壁のダッシュパネル上の縁172、190よりも車両前側まで延びて、一対の側壁の前縁174、184は、ダッシュパネルから車両前側に向かうほど上壁に近づく傾斜部176、186を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部と車室とを区画するダッシュパネルに設けられ該車室内の空調ユニットによる吸気が行われる吸気部と、
前記ダッシュパネルに固定されカウル部から前記車両前部に導入された外気を前記吸気部に案内する流路を形成する吸気カバーとを備える車両前部構造において、
前記吸気カバーは、
前記吸気部の上方に配置され前記流路の上側を区画する上壁と、
前記上壁の車幅方向の両端から連続して前記ダッシュパネルまで延び前記流路の車幅方向両側を区画する一対の側壁とを有し、
前記上壁は、前記一対の側壁の前記ダッシュパネル上の縁よりも車両前側まで延びていて、
前記一対の側壁の前縁は、
前記ダッシュパネルから車両前側に向かうほど前記上壁に近づく傾斜部を有することを特徴とする車両前部構造。
【請求項2】
前記一対の側壁の前縁はさらに、前記傾斜部の前端から連続して上方に延長され前記上壁の前端に到達する延長部を有することを特徴とする請求項1に記載の車両前部構造。
【請求項3】
前記一対の側壁の前記ダッシュパネル上の縁は、前記上壁の後端から下方に延びる後縁と、該後縁の下端から車両前側に向かうほど下降して前記前縁に連続する下縁とを含み、
前記吸気カバーはさらに、
前記一対の側壁の後縁同士を接続する後壁と、
前記上壁の後部に車幅方向にわたって形成された上方に膨出する膨出部とを有し、
前記膨出部は、
前記一対の側壁の前縁の傾斜部よりも後方の位置から後方に向かうほど上方に立ち上がる立ち上がり部と、
前記立ち上がり部に連続し前記後壁に向かうほど下方に立ち下がる立ち下り部とを有することを特徴とする請求項1または2に記載の車両前部構造。
【請求項4】
前記一対の側壁は、第1側壁および第2側壁を有し、
前記吸気カバーはさらに、前記第1側壁および前記第2側壁から車幅方向にそれぞれ張り出していて前記ダッシュパネルに所定の第1固定点および第2固定点でそれぞれ固定される第1フランジおよび第2フランジを有し、
前記第1固定点および前記第2固定点は、車両前後方向でずれた位置に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両前部構造。
【請求項5】
前記第1フランジは、前記第1側壁の下縁から延びていて、
前記第2フランジは、前記第2側壁の後縁から延びていて、
前記第2側壁の下縁は自由端であることを特徴とする請求項4に記載の車両前部構造。
【請求項6】
前記ダッシュパネルには、前記空調ユニットを固定する複数の第3固定点が設けられていて、
前記第1固定点および前記第2固定点の少なくとも一方は、前記ダッシュパネルの前記複数の第3固定点のいずれかと重ねられていることを特徴とする請求項4または5に記載の車両前部構造。
【請求項7】
前記一対の側壁の一方は、他方よりも車両前後方向の寸法が小さく、上下方向の寸法が長いことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の車両前部構造。
【請求項8】
前記吸気カバーを、前記上壁と、前記第1側壁および前記第2側壁と、前記第1フランジおよび第2フランジとにわたる断面は、上方に凸のハット形状、または、前記上壁、前記第1側壁および前記第2側壁により上方に凸であって前記第1フランジおよび前記第2フランジの少なくとも一方が前記上壁側に張り出した形状であることを特徴とする請求項4から7のいずれか1項に記載の車両前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両には一般的に、フロントガラスとフロントフードとの間に樹脂製のカウルカバーが設けられている。カウルカバーには、ダッシュパネルの後部側すなわち車室側に配置される空調ユニットに外気を取り込む吸気口が形成されている。なおダッシュパネルは、車両のパワーユニット搭載ルームと車室とを区画する。
【0003】
ダッシュパネルには、カウルカバーの吸気口から取り込んだ外気を空調ユニットに導く開口が形成されている。このダッシュパネルの開口の前部には、樹脂製の吸気カバーが設けられている。この吸気カバーは、カウルカバーの吸気口から取り込んだ外気を、ダッシュパネルの開口から空調ユニットに導くだけでなく、カウルカバーの吸気口などから浸入する雨水がダッシュパネルの開口から空調ユニットに浸入することを防止する役割を有する。
【0004】
特許文献1には、自動車の外気導入構造が記載されている。この構造は、吸気カバーとしてのダクト30を有する。ダクト30は、箱型形状を有していて、ダクト開口30aが形成された前面と、底面と、左右の側壁面30cと、左右のフランジ部とを有する。
【0005】
特許文献1のダクト30の底面には、ダッシュパネル10に形成された空気吸気口10aに連通する開口が形成されている。左右のフランジ部は、左右の側壁面30c各々の下方から車幅方向に延びている。またダクト30は、左右のフランジ部を介してダッシュパネル10にボルトにより固定される。これにより、ダクト30は、前面のダクト開口30aから外気を取り込んで、さらに底面の開口を介してダッシュパネル10の空気吸気口10aまで外気を導く流路を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載のダクト30は、左右の側壁面30cの下面の前側同士を底壁でつなげた枠構造となっている。このため、ダクト30は、側壁面30cの下部における車幅方向の変形が規制される。しかも側壁面30cにフランジが設けられているため、側壁面30cが車幅方向に傾斜しようとする変形も規制されてしまう。
【0008】
このため特許文献1では、上方から外力を受けたときに、ダクト30を十分に上下方向に撓ませることができず、外力の衝撃エネルギーをダクト30の変形エネルギーとして効率的に吸収することが困難となる。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑み、上方から外力を受けた場合、吸気カバーが上下方向に撓むように変形し易くすることができる車両前部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両前部構造の代表的な構成は、車両前部と車室とを区画するダッシュパネルに設けられ車室内の空調ユニットによる吸気が行われる吸気部と、ダッシュパネルに固定されカウル部から車両前部に導入された外気を吸気部に案内する流路を形成する吸気カバーとを備える車両前部構造において、吸気カバーは、吸気部の上方に配置され流路の上側を区画する上壁と、上壁の車幅方向の両端から連続してダッシュパネルまで延び流路の車幅方向両側を区画する一対の側壁とを有し、上壁は、一対の側壁のダッシュパネル上の縁よりも車両前側まで延びていて、一対の側壁の前縁は、ダッシュパネルから車両前側に向かうほど上壁に近づく傾斜部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上方から外力を受けた場合、吸気カバーが上下方向に撓むように変形し易くすることができる車両前部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例に係る車両前部構造を示す図である。
【
図3】
図1の車両前部構造の吸気カバーを示す図である。
【
図4】
図3の吸気カバーを他の方向から見た状態を示す図である。
【
図5】
図4(b)の吸気カバーの各断面を示す図である。
【
図6】
図3の吸気カバーをさらに他の方向から見た状態を示す図である。
【
図7】
図1(a)の吸気カバーに上方から外力が加わった場合を変形例とともに示す図である。
【
図8】
図5(a)の吸気カバーの他の変形例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施の形態に係る車両前部構造の代表的な構成は、車両前部と車室とを区画するダッシュパネルに設けられ車室内の空調ユニットによる吸気が行われる吸気部と、ダッシュパネルに固定されカウル部から車両前部に導入された外気を吸気部に案内する流路を形成する吸気カバーとを備える車両前部構造において、吸気カバーは、吸気部の上方に配置され流路の上側を区画する上壁と、上壁の車幅方向の両端から連続してダッシュパネルまで延び流路の車幅方向両側を区画する一対の側壁とを有し、上壁は、一対の側壁のダッシュパネル上の縁よりも車両前側まで延びていて、一対の側壁の前縁は、ダッシュパネルから車両前側に向かうほど上壁に近づく傾斜部を有することを特徴とする。
【0014】
上記構成では、吸気カバーの上壁が一対の側壁のダッシュパネル上の縁よりも車両前側まで延びて、さらに一対の側壁の前縁が傾斜部を有している。この傾斜部は、ダッシュパネルから車両前側に向かうほど上壁に近づく。このため上記構成によれば、一対の側壁がダッシュパネルを支持する支持面積を小さくすることができる。一例として、一対の側壁の前縁が傾斜部を有さず、上壁の車幅方向の両端から連続してダッシュパネルに向かって車両下方に延びる場合、一対の側壁がダッシュパネルを支持する支持面積は、上記構成に比べて大きくなってしまう。
【0015】
したがって、吸気カバーの上壁が上方から外力を受けた場合、この外力のうち上壁の前部に伝達される外力は、上壁から一対の側壁の前縁の傾斜部に沿って一対の側壁のダッシュパネルの支持面(一対の側壁下端部)に伝達される。これにより、吸気カバーの上壁の前部が局所的に下方に折れ曲がることを抑制しつつ、一対の側壁のダッシュパネルの支持面に荷重を集中させて、一対の側壁が車幅方向に傾斜するような変形を促すことができる。このようにして上記構成によれば、吸気カバーが上下方向に撓むように変形し易くすることができる。
【0016】
上記の一対の側壁の前縁はさらに、傾斜部の前端から連続して上方に延長され上壁の前端に到達する延長部を有するとよい。
【0017】
このように、一対の側壁の前縁に、傾斜部に加えて延長部を設けることにより、傾斜部と延長部で区画される領域に沿って、吸気カバーの内部に外気を導入し易くすることができる。さらに吸気カバーでは、その内部に導入された外気が傾斜部と延長部とで区画された領域の外側に逃げることがない。
【0018】
上記の一対の側壁のダッシュパネル上の縁は、上壁の後端から下方に延びる後縁と、後縁の下端から車両前側に向かうほど下降して前縁に連続する下縁とを含み、吸気カバーはさらに、一対の側壁の後縁同士を接続する後壁と、上壁の後部に車幅方向にわたって形成された上方に膨出する膨出部とを有し、膨出部は、一対の側壁の前縁の傾斜部よりも後方の位置から後方に向かうほど上方に立ち上がる立ち上がり部と、立ち上がり部に連続し後壁に向かうほど下方に立ち下がる立ち下り部とを有するとよい。
【0019】
このように吸気カバーの上壁の後部に膨出部を設けることで、吸気した外気を膨出部から後壁に沿うように導くことができる。このため吸気カバーでは、外気を効率的に吸気部に導きつつ、上方から荷重を受けたとき場合、傾斜部よりも後方に配置された立ち上がり部を起点にして、上壁が上下方向に湾曲して変形するように促すことができる。
【0020】
上記の一対の側壁は、第1側壁および第2側壁を有し、吸気カバーはさらに、第1側壁および第2側壁から車幅方向にそれぞれ張り出していてダッシュパネルに所定の第1固定点および第2固定点でそれぞれ固定される第1フランジおよび第2フランジを有し、第1固定点および第2固定点は、車両前後方向でずれた位置に配置されているとよい。
【0021】
これにより、第1固定点および第2固定点が前後方向で異なる位置に配置されるので、吸気カバーが上方から外力を受けたときに、第1側壁または第2側壁に捩り変形を促して車幅方向に変位させ易くすることができる。
【0022】
上記の第1フランジは、第1側壁の下縁から延びていて、第2フランジは、第2側壁の後縁から延びていて、第2側壁の下縁は自由端であるとよい。
【0023】
このように、第1側壁の下縁から延びている第1フランジに第1固定点が設けられ、第2側壁の後縁から延びている第2フランジに第2固定点が設けられているが、第2側壁の下面には固定点が設けられていない。これにより、第1固定点と第2固定点の固定方向を異ならせて第1側壁または第2側壁に捩り変形を促しつつ、固定点が設けられていない第2側壁の下面を、第1側壁の下面に比べて車幅方向に変位させ易くすることができる。
【0024】
上記のダッシュパネルには、空調ユニットを固定する複数の第3固定点が設けられていて、第1固定点および第2固定点の少なくとも一方は、ダッシュパネルの複数の第3固定点のいずれかと重ねられているとよい。
【0025】
このように、第1固定点および第2固定点の少なくとも一方とダッシュパネルの第3固定点とが重ねられるため、ダッシュパネルに吸気カバーおよび空調ユニットを固定するために必要な固定点の数を減らすことができる。また、第1固定点および第2固定点の少なくとも一方と第3固定点とを重ねて所定の締結部材を貫通させて、ダッシュパネルに吸気カバーおよび空調ユニットを固定することにより、重ねられた固定点周辺の剛性を高めることができる。これにより、上記構成では、吸気カバーが外力を受けたときに固定点が変位し難くなるため、吸気カバーの上壁や一対の側壁を変形し易くすることができる。
【0026】
上記の一対の側壁の一方は、他方よりも車両前後方向の寸法が小さく、上下方向の寸法が長いとよい。
【0027】
これにより、ダッシュパネルが車幅方向中央側に向かうほど前方に湾曲するように傾斜していた場合、一対の側壁の一方が他方よりも車両前後方向の寸法が小さいため、一対の側壁をダッシュパネルの傾斜に沿って配置することができる。このため、ダッシュパネルに吸気カバーを固定した状態で、ダッシュパネル上にデッドスペースが形成されることを回避することができる。
【0028】
さらに、一対の側壁の他方が、一方に比べて車両前後方向の寸法が長く上下方向の寸法が小さいため、吸気カバーの上壁が上方から外力を受けた場合での一対の側壁の反力差を小さくして、上壁の車幅方向中心を起点に上下方向に撓み易くすることができる。
【0029】
上記の吸気カバーを、上壁と、第1側壁および第2側壁と、第1フランジおよび第2フランジとにわたる断面は、上方に凸のハット形状、または、上壁、第1側壁および第2側壁により上方に凸であって第1フランジおよび第2フランジの少なくとも一方が上壁側に張り出した形状であるとよい。
【0030】
このように吸気カバーには、底面がなく下方が開放されていて、さらに上方に凸の形状を有する。このため、吸気カバーは、上壁が上方から外力を受けたとき変形し易く、外力による衝撃エネルギーを吸収し易い。
【実施例0031】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0032】
図1は、本発明の実施例に係る車両前部構造100を示す図である。
図1(a)は、車両前部構造100を斜め前方から見た状態を示している。
図1(b)は、
図1(a)の車両前部構造100のA矢視図である。
図2は、
図1の車両前部構造100の要部を示す図である。以下各図において、車両前後方向をそれぞれ矢印Front、Back、車幅方向の左右をそれぞれ矢印Left、Right、車両上下方向をそれぞれ矢印Up、Downで例示する。
【0033】
車両前部構造100は、吸気部102と吸気カバー104とを備える。吸気部102は、ダッシュパネル106に設けられている。ダッシュパネル106は、車両前部である例えばパワーユニット搭載ルームと車室とを区画するパネルである。ダッシュパネル106は、
図1(a)の点線で示す吸気口108が形成されたベース面110と、ベース面110の車両後方に位置し車幅方向中央に向かうほど凹んだ凹部112とを有する。
【0034】
ダッシュパネル106のベース面110には、車両上方に隆起した隆起形状114が形成されている。凹部112は、縦壁116と、縦壁116の上端から車両後方に屈曲して車幅方向にわたって延びる上側壁118とを有する。
【0035】
吸気部102は、ダッシュパネル106の車両後側に位置する車室内の空調ユニット119による吸気が行われる。また吸気部102は、例えば防水壁120と基台121(
図2参照)とを有する。防水壁120は、吸気口108と吸気カバー104との間に配置され、例えばダッシュパネル106のベース面110から吸気口108の前方に車幅方向にわたって立設されている。基台121は、ダッシュパネル106の例えばベース面110よりも下方に位置し、さらにその一部がダッシュパネル106の車両後側に位置する。なお防水壁120の周囲には、
図2に示すように封止部122が配置されている。
【0036】
吸気カバー104は、例えば樹脂カバーであって、
図1(a)の鎖線で示すカウル部123からダッシュパネル106の車両前側に位置するパワーユニット搭載ルームに導入された外気を、吸気口108に案内する流路を形成する。
【0037】
吸気カバー104は、
図2(a)に示すように流路の上側を区画する上壁124と、一対の側壁である第1側壁126および第2側壁128と、連結部130と、一対の支持部132、134とを有する。第1側壁126および第2側壁128は、上壁124の車幅方向の両端から連続して、例えばダッシュパネル106のベース面110に向かって延びていて、流路の車幅方向両側を区画する。
【0038】
連結部130は、上壁124よりも下方で吸気部102の防水壁120に重ねられ、所定の締結部材136で連結されている。支持部132、124は、上壁124から延びて連結部130に接続され、連結部130を支持する。
【0039】
吸気カバー104はさらに、
図2(b)に示すように第1側壁126および第2側壁128から車幅方向にそれぞれ張り出した第1フランジ138および第2フランジ140を有する。また、第1フランジ138および第2フランジ140には、固定孔である所定の第1固定点142および第2固定点144(
図3参照)が設けられている。さらに第1フランジ138および第2フランジ140は、ダッシュパネル106に第1固定点142および第2固定点144で所定の締結部材146、148によってそれぞれ固定されている。さらに吸気カバー105は、縦壁部149を有する。縦壁部149は、第1フランジ138の後部と第1側壁126の後部とを接続する。
【0040】
第1フランジ138は、
図2(b)に示すように第1隆起部150および第2隆起部151を有する。第1隆起部150は、ダッシュパネル106のベース面110の隆起形状114に対応して上方に隆起している。また第1フランジ138では、第1隆起部150の車幅方向外側に第1固定点142が設定されている。第2隆起部151は、第1固定点142と第1側壁126との間に位置し上下方向に隆起している。
【0041】
さらに
図1(b)に示すように、吸気カバー104の第2フランジ140と、空調ユニット119に連結された吸気部102の基台121の一部121aとがダッシュパネル106を挟んで締結部材148によって共締めされている。このとき、第2フランジ140の第2固定点144と、ダッシュパネル106に空調ユニット119を固定するために設けられた第3固定点152とが重ねられ、締結部材148が貫通している。これにより、ダッシュパネル106に吸気カバー104および空調ユニット119を固定することができる。
【0042】
図3は、
図1の車両前部構造100の吸気カバー104を示す図である。
図3(a)は、吸気カバー104を斜め下方から見た状態を示す図である。
図3(b)は、吸気カバー104の前面図である。
【0043】
吸気カバー104の連結部130は、
図3(a)に示すように一対のリブ154、156と連結面158とを有する。一対のリブ154、156は、車幅方向に離間して車両前後方向に延びていて、連結面158によって連結されている。
【0044】
一対の支持部132、134は、その間に間隙159が形成されていて、さらに一対のリブ154、156にそれぞれ接続されている。また、一対の支持部132、134および一対のリブ154、156は、車両前後方向に長手に設定されている。
【0045】
また
図3(b)に示すように、一対の支持部132、134は、連結部130から上壁124に向かうほど互いに離間するように傾斜していて、いわば逆ハの字形状に開いた状態になっている。すなわち一対の支持部132、134は、上壁124に対して垂直でない方向に延びている。
【0046】
さらに
図3(a)に示すように、一対の支持部132、134と一対のリブ154、156とのそれぞれの接続領域160、162には、周辺よりも脆弱な脆弱部164、166が形成されている。この脆弱部164、166は、車幅方向に薄肉であって車両前後方向に延びている。このため、一対の支持部132、134と一対のリブ154、156とのそれぞれの接続領域160、162は、上壁124と一対の支持部132、134との接続領域168、170よりも剛性が低くなっている。
【0047】
図4は、
図3の吸気カバー104を他の方向から見た状態を示す図である。
図4(a)は、吸気カバー104の左側面図である。
図4(b)は、吸気カバー104を左斜め上方から見た状態を示す図である。
【0048】
吸気カバー104の上壁124は、
図4(a)に示すように、側壁128のうちダッシュパネル106のベース面110に接する縁172よりも車両前側まで延びている。また側壁128の前縁174は、傾斜部176と延長部178とを有する。傾斜部176は、ダッシュパネル106のベース面110から車両前側に向かうほど上壁124に近づくように傾斜している。延長部178は、傾斜部176の前端180から連続して上方に延長され、上壁124の前端182に到達する。
【0049】
なお側壁126も同様に、
図3(a)に示すように、その前縁184に傾斜部186と延長部188とを有する。傾斜部186は、ダッシュパネル106のベース面110に接する縁190から車両前側に向かうほど上壁124に近づくように傾斜している。延長部188は、傾斜部186の前端192から連続して上方に延長され、上壁124の前端182に到達する。
【0050】
このように吸気カバー104では、一対の側壁128、126の前縁174、184に、傾斜部176、186および延長部178、188を設けている。これにより、傾斜部176、186と、延長部178、188と、ダッシュパネル106上の縁172、190と上壁124の前端182を結ぶ線B、Cとで区画される領域194、196(
図3(a)および
図4(a)参照)に沿って、吸気カバー104の内部に外気を導入しやすくすることができる。
【0051】
また吸気カバー104では、その内部に導入された外気が一対の側壁128、126の上記区画された領域194、196の外側に逃げることがない。したがって吸気カバー104では、一対の側壁128、126の上側に空気を導きやすくしつつ、下側に空気や雨水等を導き難くして、上壁124に沿って流れる空気を増やすことができる。
【0052】
また吸気カバー104では、
図4(a)に示すように側面視で延長部178と傾斜部176とが前方に凸形状となるように形成されている。これにより、延長部178と傾斜部176との接続領域すなわち傾斜部176の前端180および周辺に荷重が集中しにくくなって、上壁124の局所的な変形を抑制することができる。なお延長部188と傾斜部186も同様に前方に凸形状となるように形成されている。仮に、延長部178、188と傾斜部176、186とが後方に凹形状すなわち「くの字」形状であれば、外気を導入しにくくなり、さらに、延長部178、188と傾斜部176、186の接続点に荷重が集中して、上壁124が局所的に変形しやすくなってしまう。
【0053】
さらに側壁128のダッシュパネル106上の縁172は、
図4(b)に示すように、上壁124の後端198から下方に延びる後縁200と、下縁202とを含む。下縁202は、後縁200の下端204から車両前側に向かうほど下降して前縁174に連続する。なお側壁126も同様に、
図3(a)に示すようにダッシュパネル106上の縁190は、後縁206と下縁208とを含む。
【0054】
吸気カバー104はさらに、
図3(a)および
図3(b)に示すように、一対の側壁128、126の後縁200、206同士を接続する後壁210と、膨出部212(
図4参照)とを有する。膨出部212は、上壁124の後部に車幅方向にわたって形成された上方に膨出する部位であって、立ち上り部214と立ち下り部216とを有する。
【0055】
立ち上がり部214は、一対の側壁128、126の前縁174、184の傾斜部176、186よりも後方の位置から後方に向かうほど上方に立ち上がる。立ち下り部216は、立ち上がり部214に連続し後壁210に向かうほど下方に立ち下がる。
【0056】
さらに立ち下り部216と後壁210にはそれぞれ、
図3(b)に示す第1封止部材218と第2封止部材220が設けられている。この第1封止部材218および第2封止部材220は、立ち下り部216および後壁210とダッシュパネル106との間を封止し、これらの間から水などが浸入し、さらにダッシュパネル106の吸気口108に流れ落ちることを防止することができる。
【0057】
また
図3(a)に示すように、第1固定点142が設けられている第1フランジ138は、第1側壁126の下縁208から延びている。第2固定点144が設けられている第2フランジ140は、第2側壁128の後縁200から延びている。このため、第1固定点142および第2固定点144は、車両前後方向でずれた位置に配置されている。
【0058】
さらに吸気カバー104は、下面部222を有する。下面部222は、第2側壁128の下縁202から車幅方向に張り出し、さらに第2フランジ140から車両前側に向かって延びている。また下面部222には、固定点が設けられていない。このため、下面部222と第2側壁128の前縁174および下縁202は、自由端となる。なお
図3(b)に示す第1側壁126の前縁184も自由端となる。
【0059】
このように、吸気カバー104は、
図3(a)に示すように第1側壁126の下縁208から延びている第1フランジ138に第1固定点142が設けられ、第2側壁128の後縁200から延びている第2フランジ140に第2固定点144が設けられているが、第2側壁128に連続する下面部222には固定点が設けられていない。これにより、吸気カバー104では、第1固定点142と第2固定点144の固定方向を異ならせて第1側壁126または第2側壁128に捩り変形を促しつつ、固定点が設けられていない第2側壁128に連続する下面部222を、第1側壁126の下面すなわち第1側壁126に連続する第1フランジ138に比べて車幅方向に変位させ易くすることができる。
【0060】
このように一対の側壁128、126の前縁174、184は、ダッシュパネル106から車両前側に向かうほど上壁124に近づく傾斜部176、186を有する。そして傾斜部176、186は、ダッシュパネル106から車両前側に向かうほど上壁124に近づく。このため、一対の側壁128、126がダッシュパネル106を支持する支持面積を小さくすることができる。
【0061】
仮に、一対の側壁128、126の前縁174、184が傾斜部176、186を有さず、上壁124の車幅方向の両端から連続してダッシュパネル106のベース面110に向かって車両下方に延びる場合、一対の側壁128、126がダッシュパネル106を支持する支持面積は、上記の傾斜部176、186を有する構成に比べて大きくなってしまう。
【0062】
したがって、吸気カバー104の上壁124に上方から外力が加わった場合、この外力のうち上壁124の前端182およびその周辺を含む前部に伝達される外力は、上壁124から、一対の側壁128、126の前縁174、184の傾斜部176、186に沿って一対の側壁128、126のうちダッシュパネル106の支持面となる例えば
図3(a)に示す下縁202、208およびその周辺を含む下端部に伝達される。これにより、吸気カバー104の上壁124の前部が局所的に下方に折れ曲がることを抑制しつつ、一対の側壁128、126のダッシュパネル106の支持面に荷重を集中させて、一対の側壁128、126が車幅方向に傾斜するような変形を促すことができる。このようにして吸気カバー104を、上下方向に撓むように変形し易くすることができる。
【0063】
さらに一対の側壁128、126の前縁174、184の傾斜部176、186が自由端となっていることにより、これら傾斜部176、186を車幅方向に変位させることができる。
【0064】
図5は、
図4(b)の吸気カバー104の各断面を示す図である。
図5(a)、
図5(b)はそれぞれ、
図4(b)の吸気カバー104のD-D断面、E-E断面を示す図である。
図6は、
図3の吸気カバー104をさらに他の方向から見た状態を示す図である。
図6(a)、
図6(b)、
図6(c)はそれぞれ、吸気カバー104の下面図、上面図、後面図である。
【0065】
図5(a)に示すように、一対の支持部132、134は、連結部130の車幅方向両側にそれぞれ配置され、上壁124から連結部130に向かって互いに近づくように傾斜している。連結部130は、ダッシュパネル106のベース面110(
図1(a)参照)から上方に突出した
図2に示す吸気部102の防水壁120に重ねられ、締結部材136で連結されている。さらに
図5(b)に示すように、吸気カバー104の上壁124の立ち下り部216と後壁210にはそれぞれ、第1封止部材218と第2封止部材220が設けられている。
【0066】
これにより、吸気カバー104の後部外側とダッシュパネル102などの他の部材との隙間を各封止部材218、220で封止することができ、さらにこの場合、吸気カバー104の後部には、各封止部材218、220の反発力(反力)が作用する。この反発力は、吸気カバー104の一対の支持部132、134、連結部130さらに締結部材136を介して吸気部102に伝達される。その結果、ダッシュパネル106などの他の部材と吸気部102との連結点が少なくても、隙間を封止し易い。
【0067】
また、第2封止部材220は、第1フランジ138の後部と第1側壁126の後部とを接続する縦壁部149(
図2および
図3参照)を介して、第1フランジ138の下面、第1側壁126および後壁210に連続するように配設されていて(
図6(a)参照)、これにより、止水性を高めている。さらに吸気カバー104では、第1フランジ138が縦壁部149を介して第1側壁126の後部に連結され、さらに後壁部210を介して第2フランジ140に連結される(
図6(b)参照)。このため吸気カバー104では、第2封止部材220の反力を第1フランジ138および第2フランジ140に分散して受けることができるため、締結箇所が少なくても第2封止部材220による止水性を高めることができる。なお第2封止部材220は、第2フランジ140にわたるように配設されている(
図6(c)参照)。
【0068】
また
図5(a)に示すように、一対の支持部132、134の間に間隙159が形成されているため、吸気カバー104に上方から外力が加わった場合、一対の支持部132、134はそれぞれ、傾斜した方向により変形し易い。
【0069】
さらに
図5(b)に示すように、上壁124の後部に車幅方向にわたって上方に膨出する膨出部212を設けたので、吸気した外気(図中、矢印F参照)を膨出部212から後壁210に沿うように導くことができる。
【0070】
このため吸気カバー104では、外気を効率的に吸気部102に導きつつ、上方から荷重を受けた場合、傾斜部176、186よりも後方に配置された立ち上がり部214を起点にして、上壁124が上下方向に湾曲して変形するように促すことができる。
【0071】
また
図5(b)に示すように吸気カバー104では、上壁124の立ち上がり部214とその前方部分がなす角度θa、立ち上り部214と立ち下り部216がなす角度θb、立ち下り部216と後壁210がなす角度θcおよび後壁210とダッシュパネル106がなす角度θdがいずれも鈍角となっている。このように吸気カバー104では、角度θa、θb、θc、θdが鈍角となる形状を形成することにより、矢印Fに示すように前方から外気を導く際に空気が楕円を描くような気流を形成するため、吸気を効率的に行うことができる。さらに角度θaを120°以上にすると、前方部分に沿う空気が剥離せずに立ち上り部214に導入されやすくなり、吸気をより効率的に行うことができる。
【0072】
なお立ち上り部214は、側面視で所定の曲率半径となるように弧状に立ち上がっていてもよい。立ち下り部216、側面視で所定の曲率半径となるように弧状に立ち下がっていてもよい。
【0073】
支持部132は、
図5(b)に示すように上壁124から連結部130に向かうほど断面積が小さくなるように形成されている。なお
図3(a)に示すように支持部134も同様に上壁124から連結部130に向かうほど断面積が小さくなっている。
【0074】
これにより、吸気カバー104では、上方から外力を受けて衝撃エネルギーが支持部132、134の上方から下方に伝達される際、支持部132、134内での局所的な応力集中が発生することを回避することができる。このため、意図しない支持部132,134の変形が生じることがなく、支持部132、134は、傾斜した方向に変形することができる。
【0075】
支持部132および連結部130のリブ154は、
図5(b)に示すように下方に向かうほど前後方向の寸法が小さくなり、全体としてほぼ三角形状となっている。また
図3(a)に示す接続領域168、170には、周辺よりも脆弱な脆弱部224、226が形成されている。この脆弱部224、226は、車幅方向に薄肉であって車両前後方向に延びている。
【0076】
支持部132の接続領域160には、
図5(b)に示すように屈曲部228が形成されている。屈曲部228は、車幅方向に薄肉であって車両前後方向に延びていて、支持部132の車幅方向の変形を促す。これにより、支持部132は、変形して十分に傾斜するまでは破断しないようになる。なおこれらの各脆弱部164、166、224、226(
図3(a)参照)や屈曲部228に代えて、一対の支持部132、134の一部を車幅方向に貫通する貫通孔を設けたり、切欠きを形成したりしてもよい。
【0077】
また
図5(a)に示すように上壁124は、車幅方向で高さが異なるように傾斜して配置されている。さらに支持部132は、支持部134よりも高い位置で上壁124に接続される。これにより、一対の支持部132、134が上方から荷重を受けたとき、高い位置で上壁124に接続されている支持部132を屈曲部228で屈曲させ、さらに支持部134側に荷重を伝達することにより、一対の支持部132、134の両方に変形を促すことができる。
【0078】
ここで車両においては、車両中央側に近いほど前方から空気を導きやすくなり、その一方で車両外側に近い位置では空気が車両外側に逃げてしまう。そこで吸気カバー104では、
図6(a)に示すように膨出部212の立ち上り部214および立ち下り部216を、車両中央側(図中では右側)に向かうほど前側に位置するように傾斜させている。これにより、立ち上り部214および立ち下り部216の傾斜方向に沿って空気を導いて、ダッシュパネル108の吸気口108全体に空気を導きやすくすることができる。
【0079】
さらに
図6(a)に示すように、一対の支持部132、134は、立ち上り部214の前方側の前端位置(図中、G参照)と後方側の前端位置(図中、H参照)との間の領域230に設けられている。このようにすれば、斜めに傾斜する膨出部212を起点に吸気カバー104が湾曲する際に、上壁124の中心からずれた位置に外力が作用しても、一対の支持部132、134に外力を作用させやすくなる。
【0080】
また第1側壁126は、
図6(a)および
図6(b)に示すように第2側壁128よりも車両前後方向の寸法が小さく、
図3(b)および
図6(c)に示すように上下方向の寸法が長い。これにより、ダッシュパネル106が車幅方向中央側に向かうほど前方に湾曲するように傾斜していた場合、第1側壁126が第2側壁128よりも車両前後方向の寸法が小さいため、一対の側壁126、128をダッシュパネル106の傾斜に沿って配置することができる。このため、ダッシュパネル106に吸気カバー104を固定した状態で、ダッシュパネル106上にデッドスペースが形成されることを回避することができる。
【0081】
さらに第2側壁128が第1側壁126に比べて車両前後方向の寸法が長く上下方向の寸法が小さい。このため、吸気カバー104の上壁124に上方から外力が加わった場合での一対の側壁126、128の反力差を小さくして、上壁124の車幅方向中心を起点に上下方向に撓み易くすることができる。
【0082】
図7は、
図1(a)の吸気カバー104に上方から外力(図中、矢印I参照)が加わった場合を変形例とともに示す図である。
図7(a)および
図7(b)は、吸気カバー104が上方かから外力を受けて変形した状態を示す図である。
図7(c)は、比較例の吸気カバー104Aが変形した状態を示す図である。
【0083】
吸気カバー104の一対の支持部132、134は、
図2に示すように連結部130を支持しつつ、上壁124に対して垂直でない方向に延びて傾斜している。したがって、吸気カバー104の流路内で吸気部102の防水壁120が連結部130によって上下方向に連結されていても、吸気カバー104の変形を促すことができる。
【0084】
すなわち吸気カバー104が上方から外力(矢印I参照)を受けた場合、支持部132、134は傾斜した方向に変形し易い。なお
図7(a)の鎖線Jは、変形する前の吸気カバー104の形状を示している。
【0085】
さらに
図3(a)に示す一対の支持部132、134と一対のリブ154、156とのそれぞれの接続領域160、162は、上壁124と一対の支持部132、134との接続領域168、170よりも剛性が低くなっている。
【0086】
これにより、吸気カバー104は、
図7(a)の矢印Iに示す外力を受けると、支持部132、134が傾斜した方向に変形しつつ、さらに側壁126、128が車幅方向に変位することにより、上壁124が下方に変形する。側壁126、128は、上側が互いに接近するように変形し(矢印K、M参照)、下側が互いに遠ざかるように変形して(矢印L、N参照)、いわばハの字形状に開くように変形する。
【0087】
そして、支持部132と連結部130のリブ154との接続領域160(
図3(a)参照)は、
図7(a)に示すように破断する。このようにして吸気カバー104では、外力を受けたときの衝撃エネルギーを、支持部132、134と連結部130との接続領域160、162が破断したり、支持部132、134およびその周辺が変形したりするエネルギーとして用いることができる。したがって吸気カバー104は、上方から外力を受けたときの衝撃を、効率的に吸収することができる。
【0088】
図7(c)に示す変形例の吸気カバー104Aは、側壁126Aから張り出した第1フランジ138Aの後側が切り欠かれ、さらに側壁128Aと第1フランジ140Aに連続する上記の下面部222を有していない点で、吸気カバー104と異なる。
【0089】
このような吸気カバー138Aであっても、支持部132、134が連結部130を支持しつつ、上壁124に対して垂直でない方向に延びて傾斜することにより、上方から外力を受けたときの衝撃を効率的に吸収することができる。
【0090】
また吸気カバー104は、
図3(b)に示すように第1フランジ138がダッシュパネル106の隆起形状114(
図1(a)参照)に対応して上方に隆起した第1隆起部150を有し、さらに第1隆起部150の車幅方向外側に第1固定点142が設定されている。
【0091】
このため吸気カバー104は、ダッシュパネル106と第1隆起部150を車幅方向に当接することができる。そして
図7(a)のように上壁124の上方から荷重を受けて、第1側壁126の下端が車幅方向外側に変位しようとするせん断力(車幅方向の荷重)が発生したとき、第1隆起部150を介して側壁126の変位をダッシュパネル106の隆起形状114で受けることができる。また、このせん断力が第1固定点142に集中することを回避することができる。
【0092】
さらに吸気カバー104では、第1固定点142と第1側壁126との間に第2隆起部151を設けることにより、上方から荷重を受けたときに第2隆起部151を車幅方向に屈曲させて、第1側壁126を車幅方向に傾斜させやすくすることができる。また第2隆起部152には複数の屈曲点が形成されているので、屈曲点に応力が集中して変形しやすい。なお第2隆起部151は、上方に膨出しているが、これに限られず、下方に膨出していてもよい。
【0093】
また
図4(b)に示すように下面部222は、第2側壁128の下縁202から車幅方向に張り出し、第2フランジ140から車両前側に向かって延びていて、さらに固定点が設けられていない。このため、下面部222は、ダッシュパネル106に対して自由端となる。これにより、上壁124の上方から荷重を受けたとき、下面部222を含む第2側壁128の周辺が撓んで荷重を吸収するため、一対の支持部132、134に荷重が集中して支持部132、134が横倒れすることを抑制することができる。
【0094】
さらに吸気カバー104の後壁210に設けられた第2封止部材220は、
図6(c)に示すように第1フランジ138まで延びて、さらに第2フランジ140から下面部222まで延びるように配置されている。これにより第2封止部材220の反発力を第1固定点142、第2固定点144で受けやすくなり、防水性が高まる。さらに上壁124の上方から荷重を受けたときに発生するせん断力を、第2封止部材220を介してダッシュパネル106の縦壁116(
図1(a)参照)に逃がすことができる。
【0095】
図8は、
図5(a)の吸気カバー104の他の変形例を模式的に示す図である。
図8(a)に示す吸気カバー104Bは、一対の支持部132、134Aが互いに平行に上壁124に対して傾斜している。このような構成であっても、上方から外力を受けた場合、支持部132、134Aが傾斜した方向に変形しやすくなるため、連結部130が防水壁120に連結されていても、吸気カバー104Bの変形を促すことができる。
【0096】
図8(b)に示す吸気カバー104Cは、一対の支持部132、134Bのうち、支持部132が上壁124に対して傾斜していて、支持部134Bが上壁124に対して垂直の方向に延びている。このような構成であっても、上方から外力を受けた場合、支持部132、134Bのうち、支持部132が傾斜した方向に変形しやすくなるため、吸気カバー104Cの変形を促すことができる。
【0097】
また上記の支持部132、134、134Aは、上壁124に対して傾斜すなわち垂直でない方向に延びているが、全体として傾斜しているのであれば、その一部に上壁124に対して垂直の方向に延びる部位すなわち垂直部を有してもよい。
【0098】
なお一対の支持部132、134、支持部132、134Aおよび支持部132、134Bは、少なくとも一方が上壁124に対して傾斜しているであれば、車幅方向に並んで配置するだけでなく、車両前後方向に並んで配置するようにしてもよい。
【0099】
また吸気カバー104は、
図5(a)に示すように上壁124と、一対の側壁126、128と、第1フランジ138および第2フランジ140に連続する下面部222とにわたる断面が、上方に凸のハット形状となっている。これに対して、
図8(c)に示す吸気カバー104Dは、上壁124、第1側壁126および第2側壁128Bにより上方に凸であって、第2側壁128Bから上壁124側に張り出した内側フランジ232を有する。
【0100】
図8(d)に示す吸気カバー104Eは、上壁124、第1側壁126Bおよび第2側壁128Bにより上方に凸であって、第1側壁126Bから上壁124側に張り出した内側フランジ234を有する。このような吸気カバー104D、104Eは、底面(下壁)がなく下方が開放されていて、さらに上方に凸の形状を有するため、上壁124に上方から外力が加わったとき変形し易く、外力による衝撃エネルギーを吸収し易い。
【0101】
上記の吸気カバー104の連結部130は、上壁124の下方に配置される吸気部102の防水壁120に連結されるようにしたが、これに限定されず、ダッシュパネル106のベース面110に連結してもよく、さらに吸気カバー104が流路の下側を区画する下壁を有する場合、連結部130は、吸気部102またはダッシュパネル106に代えて下壁に連結されてもよい。
【0102】
また吸気カバー104では、
図3(a)および
図4(a)に示すように、一対の側壁128、126の前縁174、184に設けられた傾斜部176、186および延長部178、188を含む領域194、196により、外気を導入しやすくしている。しかしこれに限定されず、側壁128、126に領域194、196を設けず、上壁124に上方から外力が加わったとき、より変形し易くなるようにしてもよい。
【0103】
さらに一対の支持部132、134は、いわば逆ハの字形状に開いた状態であるため、上方から受けた外力が、吸気カバー104の所定方向の一方側または他方側に作用した場合においても、一対の支持部132、134は、傾斜した方向に変形し易く、支持部132、134と連結部130との接続領域160、162の破断を促し易い。
【0104】
また吸気カバー104では、
図3に示すように第1固定点142および第2固定点144が車両前後方向でずれた位置に配置されていて、第2固定点144が第1固定点142よりも後側に位置している。このように第1固定点142および第2固定点144が前後方向で異なる位置に配置されるので、吸気カバー108に上方から外力が加わったときに、第1側壁126または第2側壁128に捩り変形を促して車幅方向に変位させ易くすることができる。
【0105】
さらに
図1(b)に示すように第2フランジ140の第2固定点144と、ダッシュパネル106に空調ユニット119を固定するために設けられた第3固定点152とが重ねられるため、ダッシュパネル106に吸気カバー104および空調ユニット119を固定するために必要な固定点の数を減らすことができる。
【0106】
また、第2固定点144と第3固定点152とを重ねて所定の締結部材148を貫通させて、ダッシュパネル106に吸気カバー104および空調ユニット119を固定することにより、重ねられた固定点周辺の剛性を高めることができる。これにより、吸気カバー104が外力を受けたときに重ねられた固定点が変位し難くなるため、吸気カバー104の上壁124や一対の側壁126、128を変形し易くすることができる。
【0107】
また吸気カバー104では、第1封止部材218が立ち下がり部216に設けられていて、
図5(a)に示すように一対の支持部132、134の後方側が立ち上がり部216に沿うように傾斜している。このため、第1封止部材218の反発力は、上壁部124の立ち下がり部216から立ち上がり部214に伝達される。そしてこの反発力は、立ち上がり部216に沿うように傾斜した一対の支持部132、134に確実に伝達され、さらに連結部130および締結部材136を介して吸気部102に伝達される。その結果、ダッシュパネル106などの他の部材と吸気部102との連結点が少なくても、隙間をより封止し易い。
【0108】
吸気カバー104はさらに、
図3に示す上側フランジ236と外側フランジ238、240とを有する。上側フランジ236は、上壁124の前端182(
図4(a)参照)から上方に張り出している。外側フランジ238、240は、一対の側壁126、128から車幅方向外側に張り出している。これにより、上側フランジ236および外側フランジ238、240に沿って、上壁124側および一対の側壁126、128側に外気を導きやすくすることができる。
【0109】
なお上記吸気カバー104は、外気を吸気部102に案内する流路を形成するために、ダッシュパネル106に固定されていたが、これに限られず、吸気カバー104の構成を車両に適宜設置される樹脂カバーに適用してもよい。ここで樹脂カバーは、例えば車載部品や電装部品を保護する保護カバーとして用いることができる。さらに樹脂カバーは、底壁を設けるなど、吸気カバー104と同様の構成を採用することもできる。
【0110】
ここで樹脂カバーの構成を、
図3(a)に対応させて説明する。樹脂カバーは、所定方向に離間した一対の側壁126、128と、一対の側壁126、128同士を連結する外壁としての上壁124を備え、樹脂により成形され一対の側壁126、128と上壁124により囲まれた空間を区画して車両に搭載される。
【0111】
樹脂カバーはさらに、上壁124よりも下方で所定の下方部材に連結される連結部130と、上壁124から延びて連結部130を支持する一対の支持部132、134とを有する。支持部132、134は、上壁124から連結部130に向かうほど上壁124の中央に接近するよう傾斜している。支持部132、134の連結部130側の端部は、支持部132、134の上壁124側の端部よりも剛性が低い。
【0112】
これにより、樹脂カバーの上壁124が例えば車両内側に向かって変形する外力を受けた場合、支持部132、134が傾斜した方向すなわち連結部130に向かうほど上壁124の中央に接近するよう傾斜した方向に変形し易い。このため、外力に伴う衝撃エネルギーを、支持部132、134およびその周辺が変形したり、支持部132、134の連結部130側の端部が破断したりするエネルギーとして用いることができる。したがって樹脂カバーは、上壁124が変形する外力を受けたときの衝撃を効率的に吸収することができる。
【0113】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。