(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050787
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】天井面材と建物天井
(51)【国際特許分類】
E04B 9/04 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
E04B9/04 A
E04B9/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161070
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000130824
【氏名又は名称】株式会社サンゲツ
(71)【出願人】
【識別番号】596170848
【氏名又は名称】株式会社名古屋モウルド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】秋竹 教行
(72)【発明者】
【氏名】松本 寛人
(72)【発明者】
【氏名】坂戸 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】野倉 博
(57)【要約】
【課題】軽量かつ薄厚でありながら、うねりが生じ難く、意匠性に優れた天井面材と、この天井面材により形成される建物天井を提供すること。
【解決手段】天井下地材40に取り付けられて建物天井60を形成する、天井面材30であり、天井面材30は、面材中央10と、面材中央10の周縁の面材周縁20とを有し、面材中央10はうねり防止部11を備え、面材周縁20は、隣接する別途の天井面材30の面材周縁20が重ね合わされて相互に留め付けられるようになっており、天井面材30は、無機材料と樹脂材料とパルプ繊維とを含む材料により形成されたパルプモウルド成形品であり、パルプモウルド成形品において、無機材料が10乃至50重量%の範囲にあり、樹脂材料が3乃至50重量%の範囲にあり、パルプ繊維が20乃至80重量%の範囲にある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井下地材に取り付けられて建物天井を形成する、天井面材であって、
前記天井面材は、面材中央と、該面材中央の周縁の面材周縁とを有し、
前記面材中央は、うねり防止部を備え、
前記面材周縁は、隣接する別途の天井面材の面材周縁が重ね合わされて相互に留め付けられるようになっており、
前記天井面材は、無機材料と樹脂材料とパルプ繊維とを含む材料により形成されたパルプモウルド成形品であり、
前記パルプモウルド成形品において、前記無機材料が10乃至50重量%の範囲にあり、前記樹脂材料が3乃至50重量%の範囲にあり、前記パルプ繊維が20乃至80重量%の範囲にあることを特徴とする、天井面材。
【請求項2】
前記うねり防止部は、前記面材中央の中央が室内側へ凸の湾曲面であることを特徴とする、請求項1に記載の天井面材。
【請求項3】
前記うねり防止部は、一つもしくは複数の折り目線と該折り目線で前記面材中央が複数に分割された分割面であり、それぞれの該分割面はその中央が室内側へ凸の湾曲面であることを特徴とする、請求項1に記載の天井面材。
【請求項4】
前記うねり防止部は、一つもしくは複数の溝条と、該溝条で前記面材中央が複数に分割された分割面であることを特徴とする、請求項1に記載の天井面材。
【請求項5】
前記うねり防止部は、前記面材中央における前記面材周縁との境界ラインに沿って延設して室内側へ凸の凸条であることを特徴とする、請求項1に記載の天井面材。
【請求項6】
前記天井面材は平面視矩形であり、前記面材周縁は幅が全て同一の四つの直線部を備えており、
前記直線部の途中に留め具用の留め孔が設けられていることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の天井面材。
【請求項7】
前記天井面材は平面視矩形であり、前記面材周縁は四つの直線部を備え、少なくとも一つの該直線部は他の該直線部と幅が異なっており、
相対的に狭幅の前記直線部には、その途中位置に前記面材中央に入り込む彫り込みがあり、該彫り込みに留め具用の留め孔が設けられており、
相対的に広幅の前記直線部には、その途中位置に留め孔用の留め孔が設けられていることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の天井面材。
【請求項8】
前記面材中央に比べて前記面材周縁の厚みが薄いことを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の天井面材。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の複数の天井面材が適用され、それぞれの該天井面材の前記面材周縁には留め具用の留め孔が設けられており、隣接する該天井面材の前記面材周縁同士が重ね合わされ、重ね合わせ箇所において双方の該面材周縁にある対応した前記留め孔が位置合わせされ、前記留め具が位置合わせされた該留め孔を介して前記天井下地材に留め付けられることにより形成されていることを特徴とする、建物天井。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井面材と建物天井に関する。
【背景技術】
【0002】
建物天井は一般に、野縁等の天井下地材に対して、石膏ボード等の硬質の天井面材が取付けられることにより、形成されている。ところで、石膏ボード等の天井面材は、比較的重量があることから、地震による天井落下が課題の一つとなる。そこで、軽量な天井面材にて建物天井を形成することにより、この天井落下の課題が解消され得る。
【0003】
軽量で薄厚の天井面材としては、パルプ繊維を主原料とした混抄シート等を挙げることができ、このような天井面材を天井下地材に留め付けて建物天井を形成することにより、意匠性にも優れた建物天井となる。
【0004】
ここで、特許文献1には、中空状の空気層を構成する芯材部と、芯材部の表面と裏面に貼着された外ライナとを備えた段ボール板材の表面、裏面及び周端面を不燃性材料で被覆した天井材が提案されている。この天井材では、外ライナを形成する素材の単位面積当たりの質量が、芯材部を形成する素材の単位面積当たりの質量以上であり、天井材の少なくとも片面には、化粧紙もしくは化粧フィルムが貼着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の天井材によれば、段ボール板材を芯材とすることから軽量となり、地震時における天井落下の課題は生じない。
【0007】
ところで、上記するように、軽量かつ薄厚の天井面材を建物天井に適用する場合、天井面材の表面にうねり(波打ち)が生じ易く、このうねりに起因する陰影が目立つことにより建物天井の意匠性が逆に損なわれるといった新たな課題が懸念される。また、特許文献1に記載の天井材においても、表面に化粧紙が貼着されていることから、天井面材の表面のうねりに関する同様の課題を内包する。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、軽量かつ薄厚でありながら、うねりが生じ難く、意匠性に優れた天井面材と、この天井面材により形成される建物天井を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明による天井面材の一態様は、
天井下地材に取り付けられて建物天井を形成する、天井面材であって、
前記天井面材は、面材中央と、該面材中央の周縁の面材周縁とを有し、
前記面材中央は、うねり防止部を備え、
前記面材周縁は、隣接する別途の天井面材の面材周縁が重ね合わされて相互に留め付けられるようになっており、
前記天井面材は、無機材料と樹脂材料とパルプ繊維とを含む材料により形成されたパルプモウルド成形品であり、
前記パルプモウルド成形品において、前記無機材料が10乃至50重量%の範囲にあり、前記樹脂材料が3乃至50重量%の範囲にあり、前記パルプ繊維が20乃至80重量%の範囲にあることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、天井面材の面材中央がうねり防止部を備えていることにより、天井面材が軽量かつ薄厚であっても、うねりの発生を抑制することができ、意匠性に優れた天井面材を形成できる。さらに、天井面材がパルプモウルド成形品(パルプモールド成形品)であることにより、多様な三次元形状で薄厚の天井面材を製作することができる。また、パルプモウルド成形品において、無機材料が10乃至50重量%の範囲にあり、樹脂材料が3乃至50重量%の範囲にあり、パルプ繊維が20乃至80重量%の範囲にあることにより、十分な不燃性と、良好な加工性(成形性)と、十分な強度(剛性)をいずれも確保することができる。
【0011】
また、本発明による天井面材の他の態様において、
前記うねり防止部は、前記面材中央の中央が室内側へ凸の湾曲面であることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、うねり防止部が、面材中央の中央が室内側へ凸の湾曲面であることにより、シンプルかつ目立たない構成のうねり防止部にて面材中央のうねりを効果的に抑制することができる。
【0013】
また、本発明による天井面材の他の態様において、
前記うねり防止部は、一つもしくは複数の折り目線と該折り目線で前記面材中央が複数に分割された分割面であり、それぞれの該分割面はその中央が室内側へ凸の湾曲面であることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、うねり防止部が、面材中央にある折り目線で複数に分割された分割面であって、分割面の中央が室内側へ凸の湾曲面であることにより、シンプルかつ目立たない構成のうねり防止部にて面材中央のうねりを効果的に抑制することができる。また、深さの浅い折り目線により各分割面がぼんやりと(淡い態様で)分割されていることから、キルティング生地のような意匠性を醸し出すことができる。
【0015】
また、本発明による天井面材の他の態様において、
前記うねり防止部は、一つもしくは複数の溝条と、該溝条で前記面材中央が複数に分割された分割面であることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、うねり防止部が、溝条によって面材中央が複数に分割された分割面であることにより、統一感があってかつコントラストのある意匠性を醸し出しながら、面材中央のうねりを効果的に抑制することができる。
【0017】
また、本発明による天井面材の他の態様において、
前記うねり防止部は、前記面材中央における前記面材周縁との境界ラインに沿って延設して室内側へ凸の凸条であることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、うねり防止部が、面材中央と面材周縁の境界ラインに沿って延設して室内側へ凸の凸条であることにより、統一感があってかつコントラストのある意匠性を醸し出しながら、面材中央のうねりを効果的に抑制することができる。
【0019】
また、本発明による天井面材の他の態様において、
前記天井面材は平面視矩形であり、前記面材周縁は幅が全て同一の四つの直線部を備えており、
前記直線部の途中に留め具用の留め孔が設けられていることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、平面視矩形の天井面材の面材周縁が、全て同一の幅を有する四つの直線部を備えていることにより、一般に野縁と野縁受けが格子状に組み付けられることによって形成される天井下地材に対する、天井面材の取り付け性が良好になる。また、面材周縁を形成する四つの直線部の幅が全て同一であることから、複数の天井面材の直線部同士を重ね合わせて天井下地材に取り付ける際に、天井面材の方向性を考慮する必要がないことからも、天井面材の良好な取り付け性に繋がる。
【0021】
ここで、平面視矩形とは、平面視が正方形と長方形の双方を含んでいる。隣接する天井面材の直線部同士が重ね合わされた際に、双方の直線部にある留め孔が位置合わせされ、位置合わせされた双方の留め孔に挿通された留め具が天井下地材に留め付けられることにより、天井面材の天井下地材への取り付け(留め付け)が行われる。
【0022】
また、本発明による天井面材の他の態様において、
前記天井面材は平面視矩形であり、前記面材周縁は四つの直線部を備え、少なくとも一つの該直線部は他の該直線部と幅が異なっており、
相対的に狭幅の前記直線部には、その途中位置に前記面材中央に入り込む彫り込みがあり、該彫り込みに留め具用の留め孔が設けられており、
相対的に広幅の前記直線部には、その途中位置に留め孔用の留め孔が設けられていることを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、平面視矩形の天井面材の面材周縁が、相対的に狭幅と広幅の計四つの直線部を備えていて、狭幅の直線部の途中位置に彫り込みがあり、彫り込みに留め具用の留め孔が設けられていることにより、狭幅の直線部によって面材中央の幅を可及的に広くすることができる。さらに、隣接する天井面材の直線部同士の重ね合わせにおいては、一方の広幅の直線部に対して他方の狭幅の直線部を重ね合わせた際に、広幅の直線部にある留め孔と狭幅の直線部の彫り込みにある留め孔を位置合わせすることができるため、位置合わせされた双方の留め孔に留め具を挿通することが可能になる。
【0024】
ここで、四つの直線部のうち、相互に直交する二つの直線部がともに広幅であり、他の相互に直交する二つの直線部が狭幅である形態を一例として挙げることができる。
【0025】
また、本発明による天井面材の他の態様において、
前記面材中央に比べて前記面材周縁の厚みが薄いことを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、面材中央の厚みが相対的に厚いことにより、特にパルプモウルド成形品においてはその弾力性が増すことに起因して、意匠性がより一層良好になる。また、面材周縁の厚みが相対的に薄いことにより、面材周縁は重ね合わせ箇所となることから重ね合わせの嵩が高くなり過ぎることを抑制でき、薄いことによって面材周縁が硬くなり、平坦性が増すことで重ね合わせ性が良好になる。また、パルプモウルド成形品の場合には、特にこのような面材中央と面材周縁の双方の厚みが自在に調整された成形品を容易に製作可能になる。例えば、面材中央の厚みを1mm前後とし、面材周縁の厚みは面材中央よりも0.1~0.3mm薄い成形品とするのがよい。
【0027】
また、本発明による建物天井の一態様は、
複数の前記天井面材が適用され、それぞれの該天井面材の前記面材周縁には留め具用の留め孔が設けられており、隣接する該天井面材の前記面材周縁同士が重ね合わされ、重ね合わせ箇所において双方の該面材周縁にある対応した前記留め孔が位置合わせされ、前記留め具が位置合わせされた該留め孔を介して前記天井下地材に留め付けられることにより形成されていることを特徴とする。
【0028】
本態様によれば、本発明の複数の天井面材の面材周縁同士が重ね合わされ、相互に位置合わせされた留め孔を介して留め具にて天井下地材に留め付けられて形成されることにより、天井面材が軽量であることから地震時の落下防止性と安全性に優れ、天井面材にうねりが生じ難いことから意匠性に優れた建物天井を形成することができる。
【発明の効果】
【0029】
以上の説明から理解できるように、本発明の天井面材によれば、軽量かつ薄厚でありながら、うねりが生じ難く、意匠性に優れた天井面材を提供でき、この天井面材により形成される本発明の建物天井によれば、地震時の落下防止性と安全性に優れ、意匠性に優れた建物天井を提供できる。また、本発明の建物天井によれば、無機材料と樹脂材料とパルプ繊維とを含む材料により形成されたパルプモウルド成形品であることから、加工性(成形性)に優れ、不燃性に優れて高強度な成形品である建物天井を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】第1実施形態に係る天井面材の一例を正面側(建物天井を形成した際の室内側)から見た斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る天井面材の一例を背面側から見た斜視図である。
【
図3】
図1のIII-III矢視図であって、天井面材の一例の縦断面図である。
【
図4】第2実施形態に係る天井面材の一例を正面側から見た平面図である。
【
図5】第3実施形態に係る天井面材の一例の斜視図である。
【
図6】第4実施形態に係る天井面材の一例の斜視図である。
【
図7】第5実施形態に係る天井面材の一例の斜視図である。
【
図8】天井下地材に対して複数の第1実施形態の天井面材が留め付けられている、実施形態に係る建物天井の一部を斜め下方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、各実施形態に係る天井面材と実施形態に係る建物天井について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0032】
[第1実施形態に係る天井面材]
はじめに、
図1乃至
図3を参照して、第1実施形態に係る天井面材について説明する。ここで、
図1は、第1実施形態に係る天井面材の一例を正面側(建物天井を形成した際の室内側)から見た斜視図であり、
図2は、第1実施形態に係る天井面材の一例を背面側から見た斜視図であり、
図3は、
図1のIII-III矢視図であって、天井面材の一例の縦断面図である。
【0033】
図示する天井面材30は、平面視正方形(矩形の一例)で略箱形の面材中央10と、面材中央10の周縁にある矩形枠状の面材周縁20とを有する。
【0034】
略箱形の面材中央10は矩形枠状の面材周縁20から立ち上がり、面材中央10の広幅面は、その中央が正面側(建物天井を形成した際の室内側)へ凸の湾曲面11(うねり防止部の一例)となっている。
【0035】
面材中央10の一片の長さはt1であり、端部の高さはt2であって、例えばt1は400mm乃至700mm程度(一例として580mm)に設定でき、t2は10mm乃至30mm程度(一例として20mm)に設定できる。さらに、湾曲面11の曲率は、1/80乃至1/10程度(一例として、1/25,1/50)に設定できる。
【0036】
面材周縁20は、いずれも同一の幅t3を有する四つの直線部21により形成されており、この直線部21には、隣接する別途の天井面材30の面材周縁20の直線部21が重ね合わされるようになっている。ここで、幅t3は、10mm乃至30mm程度(一例として20mm)に設定できる。
【0037】
ここで、直線部21の幅t3は、隣接する別途の天井面材30の直線部21が重ね合わされた際の目地幅となり、面材中央10の端部の高さt2は目地深さとなる。
【0038】
面材周縁20の各直線部21の中央には不図示の留め具が挿通される留め孔22が設けられており、四つの隅角部にも同様に留め孔22が設けられている。留め孔22は、直線部21の幅の中央に設けられるのがよい。ここで、留め孔22の数や位置は、図示例に限定されない。
【0039】
また、面材中央10の厚みt4は面材周縁20の厚みt5よりも厚くなっており、面材中央の厚みt4は1mm程度(一例として0.7mm)に設定でき、面材周縁の厚みt5は厚みt4よりも0.1乃至0.3mm程度薄い厚み(一例として0.5mm)に設定できる。
【0040】
天井面材30は、パルプモウルド加工により成形されたパルプモウルド成形品であり、無機材料と樹脂材料とパルプ繊維とを含む材料により形成されている。
【0041】
パルプモウルド成形品における各素材の割合は、無機材料が10乃至50重量%の範囲にあり、樹脂材料が3乃至50重量%の範囲にあり、パルプ繊維が20乃至80重量%の範囲にある。
【0042】
まず、天井面材30がパルプモウルド成形品であることにより、多様な三次元形状で薄厚の天井面材を製作することができる。また、面材中央10の厚みt4と面材周縁20の厚みt5を、図示例のように異なる厚みに容易に製作することができる。
【0043】
パルプモウルド成形品からなる天井面材30では、面材中央10の厚みが相対的に厚いことにより、その弾力性が増すことに起因して意匠性がより一層良好になる。また、面材周縁20の厚みが相対的に薄いことにより、面材周縁20は重ね合わせ箇所となることから重ね合わせの嵩が高くなり過ぎることを抑制でき、薄いことによって面材周縁20が硬くなり、平坦性が増すことで重ね合わせ性が良好になる。
【0044】
また、パルプモウルド成形品30を形成する各材料の割合が上記数値範囲に設定されていることにより、以下の効果が奏される。
【0045】
まず、無機材料は製品の発熱量を抑制する効果があり、10重量%以上ないと十分な不燃性が得られないことから、無機材料の下限値は10重量%以上が望ましい。より詳細には、無機材料が20重量%以上あることで、十分な不燃性が保証される。一方で、無機材料が多くなり過ぎるとパルプ繊維の量が不十分となり、十分な強度の成形品とならないことから、無機材料の上限値は50重量%以下が望ましい。
【0046】
また、樹脂材料に関しては、パルプモウルド加工の際の加工性(成形性)を良好にする効果があり、その一方で、樹脂材料が多くなり過ぎると発熱量が増加し、無機材料による発熱量抑制効果が減殺されることから、3重量%を下限値とし、50重量%を上限値とするのが望ましい。
【0047】
さらに、パルプ繊維に関しては、成形品の強度(剛性)に寄与する材料であることから多いことが望ましいものの、上記する加工性や不燃性の観点から、他の無機材料と樹脂材料の各上限値と下限値との関係より、20重量%を下限値とし、80重量%を上限値とするのが望ましい。
【0048】
より具体的な成形材料としては、日本製紙株式会社製のミネルパ(登録商標)を適用することができる。ミネルパにおける無機材料には、炭酸マグネシウム(MgCO3)やハイドロタルサイト(MgCo6Al2(OH)16CO3・4H2O)、シリカ(SiO2)、硫酸バリウム(BaSO4)等、様々な材料が適用されるが、より高い不燃性もしくは難燃性の観点から水酸化アルミニウム(Al(OH)3)が好適である。いずれの無機材料ともに、加熱されることで結晶水を放出し、分解の際に二酸化炭素を放出することにより、不燃性もしくは難燃性を発現する。ミネルパは、パルプ繊維に無機材料が付着された材料であることから、成形品の不燃性と強度が得られ易い材料であることから好ましい。
【0049】
天井面材30では、面材中央10が正面側へ凸の湾曲面11を備えていることにより、軽量かつ薄厚で、パルプモウルド成形品であるにも関わらず、面材中央10に生じ得るうねりの発生を抑制することができる。このことにより、複数の天井面材30の各面材周縁20同士を重ね合わせて建物天井を形成した際に、建物天井を構成する各天井面材30にうねりが生じないことから、優れた意匠性を有する建物天井を形成することができる。
【0050】
ここで、天井面材30によれば、天井下地材を含む建物天井の重さ2kg/m2以下を実現でき、天井面材30のみでは0.5kg/m2以下を実現できる。
【0051】
また、面材中央10が正面側へ凸の湾曲面11を備えているだけであることから、シンプルな意匠性を醸し出し、万人受けし易い意匠性を備えた建物天井を形成できる。
【0052】
また、天井面材30では、面材中央10の平面視形状が正方形であること、面材周縁20を構成する各直線部21の幅t3が同じであることから、不図示の天井下地材に天井面材30を留め付けて建物天井を施工する際に、天井面材30に方向性が生じないことから、建物天井の施工性が良好になる。
【0053】
[第2実施形態に係る天井面材]
次に、
図4を参照して、第2実施形態に係る天井面材について説明する。ここで、
図4は、第2実施形態に係る天井面材の一例を正面側から見た平面図である。
【0054】
図示する天井面材30Aは、天井面材30と同じうねり防止部11を備えた面材中央10を有しているものの、幅が異なる直線部21A,21Bを備えた面材周縁20Aを有する点で天井面材30と相違する。
【0055】
図示例の面材周縁20Aは、隣接する二つの広幅の直線部21A(平面視L形の直線部)と、同様に隣接する狭幅の直線部21B(平面視L形の直線部)とを有する。
【0056】
狭幅の直線部21Bは、その長手方向の中央位置(途中位置の一例)と、狭幅の直線部21Bの隅角部(途中位置の他の例)に、面材中央10に入り込む彫り込み24が設けられ、彫り込み24に留め孔22が設けられている。広幅の直線部21Aには、その長手方向の中央位置と隅角部に留め孔22が設けられている。
【0057】
広幅の直線部21Aの幅t3は例えば20mmに設定でき、狭幅の直線部21Bの幅t6は例えば5mmに設定できる。狭幅の直線部21Bにおいて、彫り込み24までの幅t7は、広幅の直線部21Aの幅t3と同様に20mmに設定できる。
【0058】
面材周縁20Aが相対的に広幅と狭幅の計四つの直線部21A,21Bを備えていて、狭幅の直線部21Bの途中位置に彫り込み24があり、彫り込み24に留め具用の留め孔22が設けられていることにより、狭幅の直線部21Bによって面材中央10の幅を可及的に広くすることができる。
【0059】
さらに、隣接する天井面材30Aの直線部同士の重ね合わせにおいては、一方の天井面材30Aの広幅の直線部21Aに対して他方の天井面材30Aの狭幅の直線部21Bを重ね合わせた際に、広幅の直線部21Aにある留め孔22と狭幅の直線部21Bの彫り込み24にある留め孔22を位置合わせすることができるため、位置合わせされた双方の留め孔22に対して不図示の留め具を挿通することが可能になる。
【0060】
[第3実施形態に係る天井面材]
次に、
図5を参照して、第3実施形態に係る天井面材について説明する。ここで、
図5は、第3実施形態に係る天井面材の一例の斜視図である。
【0061】
図示する天井面材30Bは、
図1等に示す天井面材30と同様の面材周縁20を有するものの、天井面材30とは異なる面材中央10Aを有している。面材中央10Aは、四本の折り目線12を備え、それぞれの折り目線12により面材中央10Aが四つの平面視正方形の分割面13に分割され、それぞれの分割面13はその中央が正面側(室内側)へ凸の湾曲面となっている。ここで、天井面材30Bが、天井面材30Aと同様に幅の異なる面材周縁20Aを有していてもよい。
【0062】
天井面材30Bでは、複数(図示例は四本)の折り目線12と、各折り目線12により形成された中央が凸の湾曲面である分割面13とにより、うねり防止部が形成されて、面材中央10Aのうねりが防止される。
【0063】
また、天井面材30Bでは、深さの浅い折り目線12によって各分割面13がぼんやりと分割されていることから、キルティング生地のような意匠性を醸し出すことができる。
【0064】
[第4実施形態に係る天井面材]
次に、
図6を参照して、第4実施形態に係る天井面材について説明する。ここで、
図6は、第4実施形態に係る天井面材の一例の斜視図である。
【0065】
図示する天井面材30Cは、
図1等に示す天井面材30と同様の面材周縁20を有するものの、天井面材30とは異なる面材中央10Bを有している。面材中央10Bは、相互に直交する二本の溝条15と、二本の溝条15により四つの平面視正方形の分割面16とを有する。ここで、天井面材30Cが、天井面材30Aと同様に幅の異なる面材周縁20Aを有していてもよい。
【0066】
分割面16は平坦面であってもよいし、天井面材30Bの分割面13と同様に、その中央が正面側(室内側)へ凸の湾曲面であってもよい。
【0067】
天井面材30Cでは、複数(図示例は二本)の溝条15と、各溝条15で面材中央が複数(図示例は四つ)に分割された分割面16とにより、うねり防止部が形成されて、面材中央10Bのうねりが防止される。
【0068】
また、天井面材30Cでは、溝条15によって面材中央10Bが複数に分割された分割面16を有することにより、統一感があってかつコントラストのある意匠性を醸し出すことができる。
【0069】
[第5実施形態に係る天井面材]
次に、
図7を参照して、第5実施形態に係る天井面材について説明する。ここで、
図7は、第5実施形態に係る天井面材の一例の斜視図である。
【0070】
図示する天井面材30Dは、
図1等に示す天井面材30と同様の面材周縁20を有するものの、天井面材30とは異なる面材中央10Cを有している。面材中央10Cは、その面材周縁20との境界ライン19に沿って延設して正面側(室内側)へ凸の凸条18を有する。ここで、天井面材30Dが、天井面材30Aと同様に幅の異なる面材周縁20Aを有していてもよい。
【0071】
天井面材30Dでは、凸条18によりうねり防止部が形成されて、面材中央10Cのうねりが防止される。また、天井面材30Dでは、面材中央10Cと面材周縁20の境界ライン19に沿って延設する凸条18により、統一感があってかつコントラストのある意匠性を醸し出すことができる。
【0072】
[実施形態に係る建物天井]
次に、
図8を参照して、実施形態に係る建物天井について説明する。ここで、
図8は、実施形態に係る建物天井の一部を斜め下方から見た図である。ここで、
図8では、
図1等に示す天井面材30を適用する形態として説明する。また、
図8では、天井下地材40も示すために、天井下地材40の全部でなく、一部に天井面材30が留め付けられている状態を示している。
【0073】
図示するように、天井下地材40は、野縁41と野縁受け42、ハンガー43、及び吊ボルト44により構成される。不図示の天井梁やデッキプレート、コンクリートスラブ等から吊ボルト44を垂下し、吊ボルト44にハンガー43を螺子止めし、このハンガー43に野縁受け42を支持させる。ここで、
図8では、図面を見易くするために、野縁受け42を支持するハンガー43と吊りボルト44の一部のみを示している。
【0074】
野縁41の各所には、留め具50の先端が留め付けられる、複数の留め付け孔14aが設けられている。
【0075】
図示するように、相互に隣接する天井面材30の面材周縁20の直線部21同士が重ね合わされ、重ね合わせ箇所において双方の直線部21にある対応した留め孔22が位置合わせされ、留め具50が位置合わせされた留め孔22を介して野縁41の留め付け孔14aに留め付けられることにより、建物天井60が形成される。
【0076】
図示する建物天井60では、複数の天井面材30の面材周縁20同士が重ね合わされ、相互に位置合わせされた留め孔22を介して留め具50にて天井下地材40に留め付けられて形成されることにより、天井面材30が軽量であることから地震時の落下防止性と安全性に優れ、天井面材30にうねりが生じ難いことから意匠性に優れた建物天井60が形成される。
【0077】
ここで、留め具50には様々な形態がある。例えば、図示例のように一本の留め具50が相互に重ね合わされた直線部21の留め孔22を介して留め付け孔14aに留め付けられる形態の他にも、野縁41に雌型スナップボタンが取り付けられ、相互に重ね合わされた直線部21の留め孔22を挿通された雄型スナップボタンが雌型スナップボタンに留め付けられる、スナップボタンが適用されてもよい。
【0078】
図示する建物天井60は、仮設建物と本設建物のいずれに適用されてもよい。仮設建物としては、屋外イベントのための仮設アリーナや、震災後において早急な施工を要する仮設住宅、仮設の宿泊施設等が挙げられる。また、本設建物としては、商業施設やレジャー施設といった大型店舗、工場、オフィスビル(のシステム天井)、医療・福祉施設、官公庁舎、ホテルや宿泊施設、教育施設等が挙げられる。
【0079】
上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、また、本発明はここで示した構成に何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0080】
10,10A,10B,10C:面材中央
11:室内側へ凸の湾曲面(湾曲面、うねり防止部)
12:折り目線
13:分割面(湾曲面)
14:うねり防止部
15:溝条
16:分割面(平坦面、湾曲面)
17:うねり防止部
18:凸条(うねり防止部)
19:境界ライン
20,20A:面材周縁
21:直線部
21A:広幅の直線部(直線部)
21B:狭幅の直線部(直線部)
22:留め孔
24:彫り込み
30,30A,30B,30C:天井面材(パルプモウルド成形品)
40:天井下地材
41:野縁(天井下地材)
41a:留め付け孔
42:野縁受け(天井下地材)
43:ハンガー(天井下地材)
44:吊りボルト(天井下地材)
45:留め孔
50:留め具
60:建物天井