(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051488
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】軒樋支持具及び軒樋支持構造
(51)【国際特許分類】
E04D 13/072 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
E04D13/072 502D
E04D13/072 502J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162209
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 政博
(57)【要約】
【課題】本発明は、軒樋支持具及びその取付構造の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、屋根の軒先板先端部に取り付けられ、軒樋を支持する軒樋支持具であって、前記軒先板先端部に取り付けられる支持具本体と、前記支持具本体の一部から該支持具本体と交差する方向に延出された縦片と、該縦片の先端部から該縦片に交差する方向に延出された横片と、該横片の先端部から前記支持具本体側に延出され、前記横片に対し回動自在に支持された縦側係止片と、該縦側係止片の先端側に形成され、前記縦側係止片の回動により前記支持具本体の上側に被着可能な延出片と、前記支持具本体に着脱自在に装着され、前記支持具本体を貫通する取付ボルトを有し、前記縦片と前記横片と前記縦側係止片の少なくとも1つが、凹溝と突条壁を有するチャンネル材からなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根の軒先板先端部に取り付けられ、軒樋を支持する軒樋支持具であって、
前記軒先板先端部に取り付けられる支持具本体と、
前記支持具本体の一部から該支持具本体と交差する方向に延出された縦片と、
該縦片の先端部から該縦片に交差する方向に延出された横片と、
該横片の先端部から前記支持具本体側に延出され、前記横片に対し回動自在に支持された縦側係止片と、
該縦側係止片の先端側に形成され、前記縦側係止片の回動により前記支持具本体の上側に被着可能な延出片と、
前記支持具本体に着脱自在に装着され、前記支持具本体を貫通する取付ボルトを有し、
前記縦片と前記横片と前記縦側係止片の少なくとも1つが、凹溝と突条壁を有するチャンネル材からなる軒樋支持具。
【請求項2】
前記横片が前記軒樋の底板に接して該底板を支持する部材であり、前記横片の上面に前記突条壁が形成され、前記突条壁の先端縁にアール部が形成された請求項1に記載の軒樋支持具。
【請求項3】
前記横片の先端部に折曲片が形成され、該折曲片が前記チャンネル材からなり、前記縦側係止片の基端部が前記チャンネル材からなり、
前記折曲片と前記縦側係止片の前記基端部が前記凹溝に前記突条壁を重ね合わせ、重ね合わせ部分を貫通した軸部材により回動自在に接合された請求項1または請求項2に記載の軒樋支持具。
【請求項4】
前記支持具本体が、前記軒先板先端部の上面側に設置される上部片と前記軒先板先端部の下面側に設置される下部片を有し、
前記上部片に当接される前記延出片の少なくとも一部が、幅方向中央部一側に突条壁を他側に凹溝を有し、該突条壁の幅方向両側に平板部を有するチャンネル材からなり、
前記下部片の少なくとも一部が、幅方向中央部一側に突条壁を他側に凹溝を有し、該突条壁の幅方向両側に平板部を有するチャンネル材からなり、
前記延出片と前記下部片が、各々の前記凹溝側どうしを前記上部片を介し対向させるとともに、
前記突条壁と前記下部片を貫通する前記取付ボルトと該取付ボルトに螺合されるナットを設えた請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の軒樋支持具。
【請求項5】
前記横片の凹溝に嵌合可能な突条壁と該突条壁の幅方向両側に形成された平板部を有するチャンネル材からなる補強板が、前記横片の下面側に着脱自在に装着された請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の軒樋支持具。
【請求項6】
屋根の軒先板先端部に取り付けられた軒樋支持具により軒樋が支持された構成であり、
前記軒樋支持具が、
前記軒先板先端部に取り付けられる支持具本体と、
前記支持具本体の一部から該支持具本体と交差する方向に延出された縦片と、
該縦片の先端部から該縦片に交差する方向に延出された横片と、
該横片の先端部から前記支持具本体側に延出され、前記横片に対し回動自在に支持された縦側係止片と、
該縦側係止片の先端側に形成され、前記縦側係止片の回動により前記支持具本体の上側に被着可能な延出片と、
前記支持具本体に着脱自在に装着され、前記支持具本体を貫通する取付ボルトを有し、
前記縦片と前記横片と前記縦側係止片の少なくとも1つが、凹溝と突条壁を有するチャンネル材からなる軒樋支持構造。
【請求項7】
前記横片が前記軒樋の底板に接して該底板を支持する部材であり、前記横片の上面に前記突条壁が形成され、前記突条壁の先端縁にアール部が形成された
請求項6に記載の軒樋支持構造。
【請求項8】
前記横片の先端部に折曲片が形成され、該折曲片が前記チャンネル材からなり、前記縦側係止片の基端部が前記チャンネル材からなり、
前記折曲片と前記縦側係止片の前記基端部が前記凹溝に前記突条壁を重ね合わせ、重ね合わせ部分を貫通した軸部材により回動自在に接合された
請求項6または請求項7に記載の軒樋支持構造。
【請求項9】
前記支持具本体が、前記軒先板先端部の上面側に設置される上部片と前記軒先板先端部の下面側に設置される下部片を有し、
前記上部片に当接される前記延出片の少なくとも一部が、幅方向中央部一側に突条壁を他側に凹溝を有し、該突条壁の幅方向両側に平板部を有するチャンネル材からなり、
前記下部片の少なくとも一部が、幅方向中央部一側に突条壁を他側に凹溝を有し、該突条壁の幅方向両側に平板部を有するチャンネル材からなり、
前記延出片と前記下部片が、各々の前記凹溝側どうしを前記上部片を介し対向させるとともに、
前記突条壁と前記下部片を貫通する前記取付ボルトと該取付ボルトに螺合されるナットを設えた
請求項6~請求項8のいずれか一項に記載の軒樋支持構造。
【請求項10】
前記横片の凹溝に嵌合可能な突条壁と該突条壁の幅方向両側に形成された平板部を有するチャンネル材からなる補強板が、前記横片の下面側に着脱自在に装着された請求項6~請求項9のいずれか一項に記載の軒樋支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軒樋支持具及び軒樋支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
折板屋根の軒先下に配設される軒樋を支持する支持具として、折板屋根の軒先に取り付けられる支持具本体と、該支持具本体から延出するように形成されて軒樋を支持する軒樋受け部を具備したJ型の軒樋支持具が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この軒樋支持具は、折板屋根の軒先先端部に被嵌される略コ字状の支持凹所を有する支持具本体と、該支持凹所の上片に穿設されたボルト螺入孔に螺入して軒先先端部に支持具本体を締め付け固定するためのボルトを備えている。また、支持具本体から下方に延出する縦片とこの縦片の下部から延出するように調整ボルトを介し取り付けられた横片と係止片を有するU字状の受け部を備えている。これら縦片と横片と支持片がU字状に組まれているので、これらによって軒樋を支持することができる。
特許文献1に記載の軒樋支持具は、支持具本体から下方に延出された縦片、横片、係止片によるU字状の受け部により軒樋を支持する構成である。また、横片に対しスライドピンを介し係止片を回動自在に設け、係止片を下方に回動させた場合に横片の上に軒樋を仮設置できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の軒樋支持具において、軒樋を支持するための縦片と横片と支持片は一般に複数の鋼板を組み合わせて構成されるが、軒樋には雨水の満水時、相当な重量が作用するので、適用する鋼板には満水時相当の荷重に充分耐える厚さの鋼板が採用される。
しかし、軒樋支持具は屋根の軒先に複数設置される金具であり、屋根には相当数の軒樋支持具が設置されるので、個々の軒樋支持具はできるだけ軽量かつ強度が高い構造が望まれる。
また、幅の大きい軒樋を支持する軒樋支持具は、軒樋の底面を横片で確実に支持して軒樋を支持することから、軒樋支持具と軒樋は、支持部分の取り合いに優れ、ガタツキやズレ、緩みが生じ難い構造が要求される。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑み、なされたものであって、軒樋を安定支持した上で軽量化を図ることができる軒樋支持具及び軒樋支持構造を提供することを目的とする。
また、本発明は、軒樋の底板側を確実に支持できる構造でありながら、軒樋底板との取り合わせに優れ、軒樋を支持した状態において軒樋底板に傷などを付与し難い構成の軒樋支持具及び軒樋支持構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は以下の形態を提案している。
[1]本形態に係る軒樋支持具は、屋根の軒先板先端部に取り付けられ、軒樋を支持する軒樋支持具であって、前記軒先板先端部に取り付けられる支持具本体と、前記支持具本体の一部から該支持具本体と交差する方向に延出された縦片と、該縦片の先端部から該縦片に交差する方向に延出された横片と、該横片の先端部から前記支持具本体側に延出され、前記横片に対し回動自在に支持された縦側係止片と、該縦側係止片の先端側に形成され、前記縦側係止片の回動により前記支持具本体の上側に被着可能な延出片と、前記支持具本体に着脱自在に装着され、前記支持具本体を貫通する取付ボルトを有し、前記縦片と前記横片と前記縦側係止片の少なくとも1つが、凹溝と突条壁を有するチャンネル材からなることを特徴とする。
【0008】
縦片と横片と縦側係止片の少なくとも一つが凹溝と突条壁を有するチャンネル材からなるならば、縦片と横片と縦側係止片の構造強度を高めることができ、軒樋を支持しても捻れや曲げに強い軒樋支持具を提供できる。
【0009】
「2」本形態に係る軒樋支持具において、前記横片が前記軒樋の底板に接して該底板を支持する部材であり、前記横片の上面に前記突条壁が形成され、前記突条壁の先端縁にアール部が形成された構成を採用できる。
【0010】
横片の上面側に突条壁を有することで突条壁の先端が軒樋の底板に接して軒樋の底板を支持する。この場合、突条壁の先端縁に形成されているアール部を介し突条壁が軒樋の底板に接するので、突条壁が軒樋の底板を傷付けない。
【0011】
「3」本形態に係る軒樋支持具において、前記横片の先端部に折曲片が形成され、該折曲片が前記チャンネル材からなり、前記縦側係止片の基端部が前記チャンネル材からなり、前記折曲片と前記縦側係止片の前記基端部が前記凹溝に前記突条壁を重ね合わせ、重ね合わせ部分を貫通した軸部材により回動自在に接合された構成を採用できる。
【0012】
横片の折曲片がチャンネル材からなるならば、横片の折曲片と縦側係止片の構造強度を高めることができ、横片と縦側係止片により軒樋を支持しても捻れや曲げに強い軒樋支持具を提供できる。
また、横片の折曲片と縦側係止片の両方を貫通する軸部材で一体化するならば、横片の先端側において横片の折曲片に対し縦側係止片を回動自在に連結できる。よって、横片の先端側において縦側係止片を上下回動させることができ、縦側係止片を下方に回動させることで横片の側方に軒樋を通過させる空間を確保できる。この空間を利用し、横片の上に軒樋を設置することで軒樋を横片上に仮支持できる。
【0013】
「4」本形態に係る軒樋支持具において、前記支持具本体が、前記軒先板先端部の上面側に設置される上部片と前記軒先板先端部の下面側に設置される下部片を有し、前記上部片に当接される前記延出片の少なくとも一部が、幅方向中央部一側に突条壁を他側に凹溝を有し、該突条壁の幅方向両側に平板部を有するチャンネル材からなり、前記下部片の少なくとも一部が、幅方向中央部一側に突条壁を他側に凹溝を有し、該突条壁の幅方向両側に平板部を有するチャンネル材からなり、前記延出片と前記下部片が、各々の前記凹溝側どうしを前記上部片を介し対向させるとともに、前記突条壁と前記下部片を貫通する前記取付ボルトと該取付ボルトに螺合されるナットを設えた構成を採用できる。
【0014】
延出片の突条壁と下部片の突条壁を反対向きとして上部片の厚さ方向上下を挟むように延出片と下部片を設ける。これにより、延出片と上部片と下部片を貫通する取付ボルトとこれに螺合するナットで延出片と上部片と下部片を緊結すると、ガタツキやズレなどが生じ難く、高い緊結状態のままこれらを接合できる。
【0015】
「5」本形態に係る軒樋支持具において、前記横片の凹溝に嵌合可能な突条壁と該突条壁の幅方向両側に形成された平板部を有するチャンネル材からなる補強板が、前記横片の下面側に着脱自在に装着された構成を採用できる。
【0016】
補強板を設け、横片の一部を補強板で支持した構成を採用できる。補強板を軒下のどこかの部分に取り付けることで補強板により横片を介し軒樋支持具を支持した構造を採用できる。このため、ガタツキやズレなどが生じ難い軒樋支持具を提供できる。
【0017】
「6」本形態の軒樋支持構造は、屋根の軒先板先端部に取り付けられた軒樋支持具により軒樋が支持された構成であり、前記軒樋支持具が、前記軒先板先端部に取り付けられる支持具本体と、前記支持具本体の一部から該支持具本体と交差する方向に延出された縦片と、該縦片の先端部から該縦片に交差する方向に延出された横片と、該横片の先端部から前記支持具本体側に延出され、前記横片に対し回動自在に支持された縦側係止片と、該縦側係止片の先端側に形成され、前記縦側係止片の回動により前記支持具本体の上側に被着可能な延出片と、前記支持具本体に着脱自在に装着され、前記支持具本体を貫通する取付ボルトを有し、前記縦片と前記横片と前記縦側係止片の少なくとも1つが、凹溝と突条壁を有するチャンネル材からなることを特徴とする。
【0018】
縦片と横片と縦側係止片の少なくとも一つが凹溝と突条壁を有するチャンネル材からなるならば、縦片と横片と縦側係止片の構造強度を高めることができ、軒樋を支持しても捻れや曲げに強い軒樋支持構造を提供できる。
【0019】
「7」本形態の軒樋支持構造において、前記横片が前記軒樋の底板に接して該底板を支持する部材であり、前記横片が前記横片の上面側幅方向中央に突条壁を有し、該突条壁の幅方向両側に平板部を有するチャンネル材からなり、前記突条壁の先端縁にアール部が形成された構成を採用できる。
【0020】
横片の上面側に突条壁を有することで突条壁の先端が軒樋の底板に接して軒樋の底板を支持する。この場合、突条壁の先端縁に形成されているアール部を介し突条壁が軒樋の底板に接するので、軒樋を軒樋支持具により支持した構造において、突条壁の先端縁が軒樋の底板を傷付けない。
【0021】
「8」本形態の軒樋支持構造において、前記横片の先端部に折曲片が形成され、前記横片の少なくとも折曲片が幅方向中央部に突条壁を有し、該突条壁の幅方向両側に平板部を有するチャンネル材からなり、前記縦側係止片の少なくとも基端部が幅方向中央部に突条壁を有し、該突条壁の幅方向両側に平板部を有するチャンネル材からなり、前記横片の前記折曲片を構成するチャンネル材と前記縦側係止片の少なくとも基端部を構成するチャンネル材が、前記突条壁の突出側を重ね合わせ、前記突条壁どうしを貫通した軸部材で接合された構成を採用できる。
【0022】
横片の折曲片がチャンネル材からなるならば、横片の折曲片と縦側係止片の構造強度を高めることができ、横片と縦側係止片により軒樋を支持しても捻れや曲げに強い軒樋支持構造を提供できる。
また、横片の折曲片と縦側係止片の両方を貫通する軸部材で一体化するならば、横片の先端側において横片の折曲片に対し縦側係止片を回動自在に連結できる。よって、横片の先端側において縦側係止片を上下回動させることができ、縦側係止片を下方に回動させることで横片の側方に軒樋を通過させる空間を確保できる。この空間を利用し、横片の上に軒樋を設置することで軒樋を横片上に仮支持できる。
【0023】
「9」本形態の軒樋支持構造において、前記支持具本体が、軒先板先端部の上面側に設置される上部片と前記軒先板先端部の下面側に設置される下部片を有し、前記上部片に当接される前記延出片の少なくとも一部が、幅方向中央部に突条壁を有し、該突条壁の幅方向両側に平板部を有するチャンネル材からなり、前記下部片の少なくとも一部が、幅方向中央部に突条壁を有し、該突条壁の幅方向両側に平板部を有するチャンネル材からなり、 前記延出片と前記下部片が、各々の前記突条壁の内面側を前記上部片を介し対向させ、各々の前記平板部を前記上部片を介し対向させ、前記突条壁と前記下部片を貫通する前記取付ボルトと該取付ボルトに螺合されるナットが設けられた構成を採用できる。
【0024】
延出片の突条壁と下部片の突条壁を反対向きとして上部片の厚さ方向上下を挟むように延出片と下部片を設ける。これにより、延出片と上部片と下部片を貫通する取付ボルトとこれに螺合するナットで延出片と上部片と下部片を緊結すると、ガタツキやズレなどが生じ難く、高い緊結状態のままこれらを接合できる軒樋支持構造を提供できる。
【0025】
「10」本形態の軒樋支持構造において、前記横片の凹溝に嵌合可能な突条壁と該突条壁の幅方向両側に形成された平板部を有するチャンネル材からなる補強板が、前記横片の下面側に着脱自在に装着された構成を採用できる。
【0026】
補強板を設け、横片の一部を補強板で支持した軒樋支持構造を採用できる。補強板を軒下のどこかの部分に取り付けることで補強板により横片を介し軒樋支持具を支持した構造を採用できる。このため、ガタツキやズレなどが生じ難い軒樋支持構造を提供できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の軒樋支持具であれば、縦片と横片と縦側係止片の少なくとも一つが凹溝と突条壁を有するチャンネル材からなるので、縦片と横片と縦側係止片の構造強度を高めることができ、軒樋を支持しても捻れや曲げに強い軒樋支持具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明に係る第1実施形態の軒樋支持具により軒樋を支持した状態を示す部分断面図である。
【
図2】同第1実施形態の複数の軒樋支持具により軒樋を支持した状態を示す斜視図である。
【
図3】同第1実施形態の軒樋支持具により軒樋を支持した状態を示す斜視図である。
【
図4】同第1実施形態の軒樋支持具により軒樋を支持した状態を示す側面図である。
【
図5】同第1実施形態の軒樋支持具により軒樋を支持した状態を他の方向から見た斜視図である。
【
図6】同第1実施形態の軒樋支持具により軒樋を支持した状態を他の方向から見た側面図である。
【
図7】同第1実施形態の軒樋支持具により軒樋を支持した状態を示す平面図である。
【
図8】同第1実施形態の軒樋支持具に補強板を備えた場合の構成を示す部分断面図である。
【
図9】同第1実施形態の軒先支持具において突条壁と凹溝および平板部を示す横断面である。
【
図10】
図10(A)は同第1実施形態の軒先支持具の横片により軒樋の底板を支持した状態を示す説明図であり、
図10(B)は変形例の横片を備えた軒樋支持具により軒樋の底板を支持した状態を示す説明図である。
【
図11】突条壁を有していない平板状の横片により軒樋の底板を支持した状態を示す説明図である。
【
図12】平板状の折曲片と平板状の縦側係止片を重ねてボルトにより接合した状態を示す説明図である。
【
図13】同第1実施形態の軒先支持具において横片の折曲片の突条壁と縦側係止片の基端部側の突条部を重ねてボルトにより接合した状態を示す説明図である。
【
図14】突条壁を有する延出片と突条壁を有する下部片により突条壁を反対向きにして軒先板先端部を挟んだ状態を示す説明図である。
【
図15】突条壁を有する延出片と突条壁を有する下部片により突条壁を同じ向きにして軒先板先端部を挟んだ状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、
図1~
図7を参照し、本発明の第1実施形態に係る軒樋支持具及び軒樋支持構造の一例について説明する。
本実施形態に係る軒樋支持具は、例えば、折板屋根の軒先板先端部に取り付けられ、軒樋を支持するために使用される。
図1、
図2に代表して示すように、第1実施形態の軒樋支持具Aは、折板屋根Bの軒先に沿って所定の間隔をあけて複数取り付けられ、複数の軒樋支持具Aにより後述する軒樋40が支持されている。本形態で図示した折板屋根Bは、複数の山部2と複数の谷部3を交互に連続した波形の折板屋根材4からなる。本形態において山部2と谷部3はいずれも等脚台形状の輪郭を有する波形に形成されている。なお、折板屋根Bは、はぜ継ぎ式、折板重ね式、折板嵌合式等の種々の形式のものがあるが、本形態の軒樋支持具Aはいずれの形式の折板屋根にも適用することができる。
【0030】
図1、
図2に示すように、折板屋根Bの山部2の山頂部を構成する軒先板先端部2Aに軒樋支持具Aがボルト止めされている。
軒樋支持具Aは、その上部に前記軒先板先端部2Aを差し込み挿入可能な凹部5を形成する下部片6と立上片7と上部片9を備えた支持具本体10を有する。また、支持具本体10の下方に後述する縦片16、横片17、縦側係止片18、取付片22が支持具本体10とともに全体として矩形状となるように配置されている。
軒樋支持部Aが軒樋40を支持した構成の斜視図を
図3、
図5に示し、同構成の側面図を
図4、
図6に示し、同構成の底面図を
図7に示す。
【0031】
この例では下部片6の長さ方向一端側に重ねられた端部片8の一部に傾斜して下部片6から立ち上がる立上片7が形成され、この立上片7を延長するように上部片9が形成されている。下部片6と立上片7と端部片8と上部片9はいずれも同じ幅の細長い板状のチャンネル材からなる。
また、この例では下部片6において、幅方向上面中央部に凹溝6Aが形成され、凹溝6Aの両側、即ち下部片6の幅方向両側部分には平板部6Bが形成されている。また、下部片6において凹溝6Aを形成した部分の裏面側には突条壁6Dが形成されている。
図9に、突条壁6Dを形成した部分における、下部片6の横断面を上下逆に表示した状態を示す。例えば、1枚の鋼板を折り曲げ加工し、
図1では上面側(
図9では下面側)に凹溝6Aを設け、
図1では下面側(
図9では上面側)に突条壁6Dを設け、突条壁6Dの幅方向両端側に突条壁6Dより若干幅の小さい平板部6Bを設けている。
なお、この後に説明する上部縦片12、下部縦片13、横片17、縦側係止片18、取付片22の横断面形状は、いずれも
図9に示す横断面形状と類似の形状とされている。また、下部片6、上部縦片12、下部縦片13、横片17、縦側係止片18、取付片22の形状は各図に示す突条壁を1つ設けたチャンネル材の形状に限らず、突条壁を複数設けたチャンネル材の形状を採用しても良い。
【0032】
下部片6と上部片9の間には一定幅の隙間が形成され、この隅間に折板屋根Bの軒先板先端部2Aがその先端を立上片7に到達するまで挿入されている。即ち、凹部5に軒先板先端部2Aが挿入されている。
【0033】
図1において下部片6と上部片9の隙間はその左端に位置する立上片7を奥側端とするので、下部片6と上部片9の隙間の右端側を凹部5の入口側と呼称する。上部片9の右端部側において隙間の入口側に位置する部分に下部片6から離れる方向に傾斜する傾斜片11が形成されている。この傾斜片11を形成した部分において、下部片6と上部片9の隙間、すなわち、凹部5の入口側の開口が拡がっているので、この入口側を介し折板屋根Bの軒先板先端部2Aを挿入する場合に傾斜片11が案内となり、軒先板先端部2Aの挿入作業が容易となる。
【0034】
図1における下部片6の右端部から下方にほぼ90°の角度で延出するように上部縦片12が延出されている(
図5、
図6参照)。上部縦片12はその幅方向中央部に凹溝12Aが形成されるとともに凹溝12Aの両側、即ち上部縦片12の幅方向両側部分には平板部12Bが形成されている。また、上部縦片12において凹溝12Aの裏面側には突条壁12Dが形成されている。上部縦片12の全体幅、溝幅、平板部幅は、下部片6の全体幅、溝幅、平板部幅とそれぞれ対応するように同等幅に形成されている。
【0035】
上部縦片12の上部側から中央部側と下部側を通過し、更に上部縦片12を下方に延長するように下部縦片13が重ねられている。下部縦片13にも凹溝13Aが形成され、平板部13B、突条壁13Dが形成されている。下部縦片13は、上部縦片12の全体幅、溝幅、平板部幅と対応する同等の全体幅、溝幅、平板部幅を有するので、上部縦片12に下部縦片13を重ね合わせることができる。
また、上部縦片12と下部縦片13は両者の重ね合わせ部分を貫通したボルト14とそれに螺合したナット15により一体化され、縦片16が形成されている。
【0036】
下部縦片13の下端部には、下部縦片13に対し90°より若干広い角度で横方向に延在する横片17が形成されている。横片17に凹溝17Aが形成され、平板部17B、突条壁17Dが形成されている。この横片17は、下部縦片13の全体幅、溝幅、平板部幅と対応する同等の全体幅、溝幅、平板部幅を有する。横片17において、突条壁17Dの先端縁にはアール部Rが形成されている。
横片17の先端部には横片17をほぼ90°外側(下側)に折り曲げた形状の短尺の折曲片17Eが形成されている。この折曲片17Eの外側に横片17と90°に近い鈍角で交差するように縦側係止片18が形成されている。この縦側係止片18は、その全長に渡り、横片17と同様に凹溝18Aと平板部18Bと突条壁18Dが形成されている。縦側係止片18の長さは先の縦片16の長さより若干短く形成されている。よって、縦側係止片18の先端部(上端部)は下部片6の一端側に近い位置まで延出されている。
【0037】
横片17の折曲片17Eに対し縦側係止片18の下端部を重ねた部分を貫通するようにボルト20とこれに螺合するナット21が設けられている。このボルト止め構造により横片17の折曲片17Eに対し縦側係止片18の下端部が回動可能かつ着脱自在に接続されている。縦側係止片18はボルト20を回動中心軸として回動自在に横片17の先端部に接続されている。ボルト20は横片17の長さ方向と平行に配置されているので、換言すると、縦側係止片18は横片17の長さ方向に沿うボルト20を回転中心軸として回転自在に支持されているとも言及できる。
なお、横片17の折曲片17Eに対し縦側係止片18の下端部を重ねた部分はボルト20とナット21によるボルト止め構造に限らず、例えば、横片17の折曲片17Eと縦側係止片18の下端部とを蝶番により接続してもよい。この場合も、縦側係止片18は蝶番を回動中心軸として回動自在に横片17の先端部に接続されている。
【0038】
折曲片17Eの突条壁17Dは、
図1に示すように平板部17Bよりも左側に突出されており、縦側係止片18の凹溝18Aは
図1に示すように右向きである。このため、縦側係止片18の凹溝18Aに折曲片17Eの突条壁17Dを挿入して折曲片17Eと縦側係止片18の基端部が重ねられ、重ね合わせた部分をボルト20が貫通し、両者が接合されている。この接合構造の一例を
図13に拡大して示す。
【0039】
縦側係止片18の上端外側には、略L字型の取付片22がその下部側で縦側係止片18の上端部外側に沿うように、その上部側で前記上部片9に沿うように設けられている。
取付片22は、その幅方向中央部に凹溝22Aを有し、凹溝22Aの幅方向両側に平板部22Bを有し、凹溝22Aの裏面側に突条壁22Dを有する。取付片22の下部側は縦側係止片18と同じように凹溝22Aと平板部22Bと突条壁22Dを有し、それらの全体幅、溝幅、平板部幅は縦側係止片18の全体幅、溝幅、平板部と同等である。このため、縦側係止片18の上端部外側に取付片22の下部側が重ね合わせて沿わせられている。
縦側係止片18の上端部外側に対し取付片22の下部側を重ね合わせた部分を貫通するようにボルト25とこれに螺合するナット26が設けられている。
【0040】
取付片22の上部側は延出片22Fとして上部片9の上側に被着されている。取付片22の上部側先端部分は平板状の上部片9の上に重ねられている。延出片22Fの部分においても取付片22と同様に凹溝22Aと平板部22Bと突条壁22Dが形成され、
図9に示す下部片6の横断面形状と同等の形状を有する。
【0041】
傾斜片11の近くであって、前記下部片6と上部片9が隙間を介し重ねられている部分に下部片6、上部片9を貫通するように各々透孔が形成され、これらの透孔を挿通するように第1の取付ボルト31が固定部材として装着されている。第1の取付ボルト31にはナット33が螺合されている。また、延出片22Fを上部片9に重ねた部分にも延出片22F、上部片9、下部片6を貫通するように各々透孔が形成され、これらの透孔を挿通するように第2の取付ボルト32が固定部材として装着されている。第2の取付ボルト32にはナット34が螺合されている。
【0042】
図1に示すように凹部5に軒先板先端部2Aが差し込まれた場合、軒先板先端部2Aにも前述の透孔に位置合わせするように透孔が形成されている。よって、第1の取付ボルト31は下部片6と上部片9およびそれらの間に挿入されている軒先板先端部2Aを貫通するように設けられ、第1の取付ボルト31に螺合されたナット33を締め付けることにより軒先板先端部2Aに軒樋支持具Aが固定されている。
また、第2の取付ボルト32は延出片22Fと上部片9と下部片6およびそれらの間に挿入されている軒先板先端部2Aを貫通するように設けられ、第2の取付ボルト32に螺合されたナット34を締め付けることにより軒先板先端部2Aに軒樋支持具Aが固定されている。
【0043】
図1に示す状態は折板屋根Bの軒先板先端部2Aに軒樋支持具Aを取り付けた状態を示している。
軒樋支持具Aの縦片16と横片17と縦側係止片18とで囲まれる矩形枠の内側に軒樋40が支持されている。軒樋40は底板40Aと内側板40Bと外側板40Cからなる。また、内側板40Bの上端と外側板40Cの上端には、それぞれ外向きの耳部40Eが形成されている。
図1に示すように本実施形態では、軒樋40において外側板40Cの高さが内側板40Bの高さより若干高く形成されている。
軒樋40は、一例として樹脂製かつ大型の軒樋であり、例えば、底板40Aの幅が200mmを超える大型の軒樋である。このような大型の軒樋40を支持するために軒樋支持具Aを適用することが好ましい。軒樋40において、底板40Aの幅が1.6倍になると軒樋40の流路横断面積は3倍となる。このような大型の軒樋40は雨水の満水時、雨水を含めて相当の重量となるので本実施形態のような堅牢な構成の軒樋支持具Aを適用することが望ましい。
【0044】
また、軒樋支持具Aにおいて下部縦片13の内側には、内側板40Bの上縁を抑えるための軒樋上縁係止片42が形成され、縦側係止片18の内側には、外側板40Cの上縁を抑えるための軒樋上縁係止片43が形成されている。
軒樋上縁係止片43は、縦側係止片18の内面側に接する基端部43Aと、基端部43Aの端部から基端部43A対し略直角に延出された起立片43Bと起立片43Bの先端部に起立片43Bに対し略直角に延出された延出片43Cとからなる。起立片43Bと延出片43CとからL字状の係止部43Dが構成されている。基端部43Aは、基端部43Aの中央部とそれに隣接する縦側係止片18をそれらの厚さ方向に貫通するビス(軸部材)44により回転自在に支持されている。
【0045】
基端部43Aは凹曲面板からなり、凹曲面板の中央部をそれに隣接する縦側係止片18の凹溝18A側に向けて配置され、基端部43Aの中央部を凹溝18Aの底部に接触させている。基端部43Aの幅は縦側係止片18における凹溝18Aの幅と同等程度に形成され、基端部43Aの回動時に基端部43Aの周縁と凹溝18Aの内側壁が干渉しない大きさに形成されている。従って、基端部43Aがビスを中心に回動することにより、軒樋上縁係止片43は縦側係止片18の内面側に沿って回動する。また、起立片43Bの長さ(基端部43Aを平板状に見立てた場合に基端部43Aに対し直交する方向の長さ)は、軒樋40に形成されている耳部40Eの水平方向長さより若干長く形成されている。
【0046】
軒樋上縁係止片42は、下部縦片13の内面側に接する基端部42Aと、基端部42Aの端部から基端部42A対し略直角に延出された起立片42Bと起立片42Bの先端部に起立片42Bに対し略直角に延出された延出片42Cとからなる。
起立片42Bと延出片42CとからL字状の係止部42Dが構成されている。基端部42Aは、基端部42Aの中央部とそれに隣接する下部縦片13と上部縦片12をそれらの厚さ方向に貫通するビス(軸部材)45により回転自在に支持されている。
基端部42Aは平板部42aの幅方向両端側に背の低い側壁部42bを平板部42aに対し傾斜させて設けた略コ字状に形成されている。軒樋上縁係止片42は略コ字状であるが、樹脂製であり、側壁部42bの背も低いため、側壁部42bが突条壁12Dの縁部を乗り越えるように基端部42Aを若干回動させることができる。あるいは、軒樋上縁係止片42の基端部42Aを平板状とするか、下部縦片13の内面側を平坦とするならば、軒樋上縁係止片42を回動自在に支持することができる。
【0047】
図2に示す構成の折板屋根Bに対し、軒樋支持具Aを取り付けるとともに軒樋支持具Aにより軒樋40を支持する作業工程について以下に説明する。
まず、軒樋支持具Aの凹部5に折板屋根Bの軒先板先端部2Aを挿入し、この状態で軒先板先端部2Aに形成されている透孔と下部片6と上部片9に形成されている透孔を位置合わし、これらの透孔を挿通するように第1の取付ボルト31を挿通し、第1の取付ボルト31にナット33を螺合して締め付ける。
また、ボルト20を中心として縦側係止片18を下向きに回動させて縦側係止片18と取付片22を下向きとしておく。この初期状態で横片17と縦片16により区画される収容空間は、縦側係止片18と取付片22により閉じられておらず、開放されている。
【0048】
第1の取付ボルト31とナット33を緊結することで軒樋支持具Aを軒先板先端部2Aに取り付けることができる。この状態で軒樋支持具Aの横片17上に軒樋40を設置し、仮支持状態にできる。
軒樋支持具Aは
図2に示すように軒先に複数設置される。複数設置した軒樋支持具Aに軒樋40を設置する場合、1つの軒樋40を設置後、他の軒樋40を図示略の継手を介し接合する必要がある。
この場合、
図12を基に先に説明したように軒樋106の端部を持ち上げつつ既に設置した軒樋105の端部の継手108に軒樋106の端部を嵌め込む作業と同じような作業が必要となる。
【0049】
本実施形態の軒樋40にあっても、
図12を基に先に説明した場合と同様、既に設置した軒樋40の端部に図示略の継手を設置し、この継手の内面に接着剤を塗布し、この継手に対し隣接する軒樋40を持ち上げ、嵌め込む作業が必要となる。
そのためには、
図1に示す軒樋上縁係止片42、43を軒樋40の持ち上げと嵌め込み作業に支障とならないように上向きに回動させ、軒樋40に対し回避可能な向きに設置しておくことが望ましい。
設置済みの軒樋40の継手に他の軒樋40の端部を嵌め込み接合した後、縦側係止片18を上向きに回動させて縦側係止片18と取付片22を上向きとし、取付片22の先端の延出片22Fを上部片9の上に設置する。
【0050】
この後、上向きとなっている軒樋上縁係止片43を下向きに回動させて
図1に示す状態(下向き)とするならば、
図1に示すように、軒樋上縁係止片43の係止部43Dにより外側板40Cの上縁を抑えることができる。また、軒樋上縁係止片42において係止部42Dを上向きとしていた場合は、軒樋上縁係止片42を回動させて
図1に示すように係止部42Dを下向きとして、内側板40Bの上縁を抑えることができる。
【0051】
延出片22Fを上部片9の上に載置すると、取付片22と上部片9と軒先板先端部2Aと下部片6にそれぞれ形成されている透孔が位置合わせされるので、これらを挿通するように第2の取付ボルト32を通し、第2の取付ボルト32にナット34を螺合する。この後、軒樋上縁係止片43を下向きに回動させて延出片43Cを外側板40Cの内側に配置することにより、軒樋支持具Aによる軒樋40の支持ができる。
【0052】
上述した構成の軒樋支持具Aであれば、支持具本体10の凹部5に軒先板先端部2Aを挿入し、支持具本体10の上部片9と軒先板先端部2Aと下部片6を貫通する第1の取付ボルト31により軒樋支持具Aを軒先板先端部に仮止めすることができる。この状態で縦側係止片18を下向きに回動させておくならば、横片17と縦片16に沿うように軒樋40を設置し、仮支持ができる。
また、支持具本体10の凹部5に軒先板先端部2Aを挿入する作業と第1の取付ボルト31を締め付ける作業は、作業者1名でも安全かつ容易に行うことができる。
【0053】
第1の取付ボルト31により軒樋支持具Aを仮止めした状態において、軒樋支持具Aは重量物であっても安定支持可能な状態となっているので、重量物である軒樋40を横片17上に載せたとして、軒樋40が不安定になることが無い。このため作業者は高所などの作業環境の悪い場所であっても、安全かつ安心状態で軒樋40の仮支持作業ができる。
また、一端仮支持した軒樋40に継手を介し他の軒樋を接合する場合、他の軒樋の端部を仮支持状態の軒樋40に対し持ち上げて嵌め込む作業を要するが、この作業において軒樋上縁係止片42が邪魔にならない。
【0054】
また、軒樋40を仮支持した後、縦側係止片18を上向きに回動し、取付片22の先端の延出片22Fを支持具本体10の上部片9の上に被着できる。この状態から、延出片22Fと上部片9と軒先板先端部2Aと下部片6を貫通する第2の取付ボルト32とこれに螺合するナット34によりこれらを緊結すると軒樋支持具の取り付けを完了できる。
この場合、軒樋上縁係止片43が軒樋40の外側板40Cの上縁部と干渉しないように、軒樋上縁係止片43の先端側を縦側係止片18の先端よりとなるように回動させておき、延出片22Fを上部片9の上に被着後、軒樋上縁係止片43を下向きに回動させると、
図1に示すように係止部43Dで外側板40Cの上縁部を抑えることができる。
上述の構成であれば、第1の取付ボルト31と第2の取付ボルト32により、軒樋支持具Aを安定支持することができ、重量の大きな軒樋40であっても安定支持できるとともに、取り付け作業も安全かつ容易に実施できる効果がある。
【0055】
上述の構成の軒樋支持具Aであるならば、下部片6の一部と上部縦片12、下部縦片13と横片17と縦側係止片18にいずれも凹溝と突条壁を有するので、これらがいずれも捻れに強い構成を有している。よって、軒樋40が重量物であって、風や地震などに起因し軒樋40に揺れや捻れなどを生じようとしても、軒樋40を安定支持することができる堅牢な軒樋支持具Aを提供できる。
軒樋40を支持する場合、軒先板先端部2Aに第1の取付ボルト31と第2の取付ボルト32を用いて軒樋支持具Aを固定すると、縦片16の上部側と縦側係止片18の上部側に捻れ力が集中し易い。この点、縦片16の上部側は凹溝と突条壁を嵌合した上部縦片12と下部縦片13の2枚重ね構成のため、捻れに強い構造を有する。更に、縦側係止片18の上部側も凹溝と突条壁を嵌合した縦側係止片18と取付片22の2枚重ね構造のため、捻れに強い構造を有する。よって、先の軒樋支持具Aは捻れに強く、軒樋40を安定支持できる堅牢な構成を有する。
【0056】
なお、上部片9と取付片22との結合は第1の取付ボルト31とナット33によるボルト止め構造に限らず、例えば、上部片9の先端と取付片22の先端とを蝶番により接続してもよい。この場合、取付片22は蝶番を回動中心軸として回動自在に上部片9の先端部に接続されており、取付片22は、上部片9と取付片22とがなす平面上を回動するよう回転自在に支持されている。
さらに、横片17の折曲片17Eと縦側係止片18の結合も蝶番によるものとしてもよく、この場合、縦側係止片18および取付片22がそれぞれ蝶番により回動自在とされ、縦側係止片18と取付片22とは、縦側係止片18の上部と取付片22の下部を重ね合わせた部分を貫通するボルト25とこれに螺合するナット26により結合される。
【0057】
上述の軒樋支持具Aは、軒樋40の底板40Aを横片17で支持する。横片17で軒樋40の底板40Aを支えた部分を
図10(A)に拡大して示す。軒樋40には水勾配が設けられるため、横片17の突条壁17Dの先端縁に対し
図10(A)に示すように傾斜した状態で接するが、突条壁17Dの先端縁にアール部Rが形成されているため、軒樋40の底板40Aに傷が付くことはない。
これに対し、
図11に示すように仮に横片17’が単純な平板状であった場合、横片17’の先端縁の角部分が軒樋40の底板40Aの底面に接触することとなる。これにより、軒樋40の底板40Aを傷付けるおそれがある。
例えば、この接触は、軒樋40を設置する場合に生じるか、軒樋設置後、大雨の場合や台風などによる強風時、軒樋40に強い力が作用した場合にも生じるおそれがある。この点、上述のアール部Rを備えた横片17の構成であるならば、軒樋40の底板40Aを傷付けるおそれがない。
【0058】
図10(B)は軒樋支持具Aに設けられる横片17の変形例を示す断面図である。この変形例の横片171は、突条壁17Dの幅方向両側に突条壁17Dに対し直角に近い角度で交差する平板部17Bが形成され、突条壁17Dと左右の平板部17Bで挟まれた部分に凹溝17Aが形成されている。
本願でチャンネル材から構成する下部片6、上部縦片12、下部縦片13、横片17、縦側係止片18、取付片22は種々形状の突条壁を有する構造を採用することができ、
図10(B)に示す形状の突条壁17Dを有する構成も本願の範囲とする。
図10(B)に示す構成においても、突条壁17Dの先端側の幅方向両側にアール部Rが形成されているので、
図10(A)に示す構成と同様、軒樋40の底板40Aに傷を付けることなく軒樋40の底板40Aを支持することができる。
【0059】
また、軒樋40は樹脂製である場合、継手を用いて隣接する軒樋40の端部同士を接続するが、軒樋支持具Aの横片17へ載せた後に軒樋40をその長手方向に沿って移動させて継手へ挿入させる必要がある。このとき、底板40Aの幅が200mmを超え、特に300mm以上の軒樋40や、底板や内外側板の内部に芯材として金属板が配置されている軒樋40は、その自重により軒樋支持具Aの横片17へ載せた後の移動が困難であるが、上述のアール部Rを備えた横片17の構成であるならば、軒樋40同士を継手を用いて接続する場合の施工が行いやすく、さらに施工時に軒樋40の底板40Aを傷付けるおそれがない。
【0060】
上述の軒樋支持具Aは、横片17の折曲片17Eと縦側係止片18の基端部を
図13に示すように重ねた上で、ボルト20とナット21により接合した構造を有する。
図13に示すように折曲片17Eの突条壁17Dと縦側係止片18の基端部側の凹溝18Aを重ね合わせ、重ね合わせ部分を貫通するボルト20により接合するならば、この接合部分において軒樋支持具Aに捻れが作用してもずれ難く、軒樋40を安定支持できる堅牢な構成を有する。
これに対し、
図12に示すように仮に折曲片17E’が平板状であり、縦側係止片18の基端部も平板状である場合、ボルト20で両者を緊結したとして、縦側係止片18の基端部と折曲片17E’の接合部にズレを生じるおそれがある。ボルト20を挿通するための透孔とボルト20の間に僅ながらクリアランスが存在するので、このクリアランスの存在に起因し、クリアランスの範囲内で縦側係止片18と折曲片17Eが相対的に位置ズレや捻れを生じるおそれを有する。
【0061】
上述の軒樋支持具Aは、軒先板先端部2Aを下部片6と延出片22Fにより上下から挟持し、ボルト32により固定した構造を有する。この構造の概略を
図14に示す。なお、下部片6と延出片22Fの間には上部片9も存在しているが
図14では上部片9の記載を略している。
下部片6と延出片22Fでは、下部片6の突条壁6Dと延出片22Fの突条壁22Dを軒先板先端部2Aの厚さ方向に沿って反対向きに配向させている。換言すると、下部片6の凹溝6Aと延出片22Fの凹溝22Aを対向させ、先板先端部2Aを挟むように配置している。
図14に示すように下部片6の突条壁6Dと延出片22Fの突条壁22Dを配置し、これらをボルト32で貫通し、緊結すると、下部片6と延出片22Fで軒先板先端部2Aを強固に緊結した構造とすることができる。
これに対し、
図15に示すように仮に下部片6の突条壁6Dと延出片22Fの突条壁22Dを配置した場合、これらをボルト32とナット34により緊結したとして、ボルト32が緩み易い構造となる。
【0062】
図8は、上述の構成の軒樋支持具Aを軒先に設置する場合、補強板50を更に付加した構造を示す。補強板50は、横片17の下面側に装着される基板部50Aとその一端側に形成された折曲片50Bを有する。補強板50は、折曲片50Bを軒下の壁面側に向けてボルト51により横片17に沿って、横片17に取り付けられている。補強板50は、
図9に示す下部片6の横断面と同等の横断面を有する。
補強板50の折曲片50Bをボルト52により軒下の壁面などに固定すると、軒樋支持具Aを更に安定的に保持することができる。
また、基板部50Aの突条壁を横片17の下面側の凹溝17Aに嵌合すると、
図13を基に説明した構造と同じように、補強板50で横片17を安定支持した捻れやズレに強い構造とすることができる。
【符号の説明】
【0063】
A…軒樋支持具、B…折板屋根、2…山部、2A…軒先板先端部、3…谷部、5…凹部、6…下部片、6A…凹溝、6D…突条壁、7…立上片、9…上部片、10…支持具本体、12…上部縦片、12A…凹溝、12D…突条壁、13…下部縦片、13A…凹溝、13D…突条壁、16…縦片、17…横片、17A…凹溝、17D…突条壁、R…アール部、18…縦側係止片、18A…凹溝、18D突条壁、22…取付片、22A…凹溝、22D…突条壁、22F…延出片、22A…凹溝、31…第1の取付ボルト、32…第2の取付ボルト、40…軒樋、40A…底板、40B…内側板、40C…外側板、42、43…軒樋上縁係止片、42D、43D…係止部。