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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051594
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】両面粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20230404BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20230404BHJP
   C09J 123/00 20060101ALI20230404BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20230404BHJP
   C09J 133/24 20060101ALI20230404BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20230404BHJP
   E04F 13/14 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J11/08
C09J123/00
C09J133/06
C09J133/24
E04F13/08 101K
E04F13/14 102E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162407
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165021
【弁理士】
【氏名又は名称】千々松 宏
(72)【発明者】
【氏名】宮本 駿一
(72)【発明者】
【氏名】筧 鷹麿
(72)【発明者】
【氏名】福本 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】小松 裕明
【テーマコード(参考)】
2E110
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
2E110AA42
2E110AB04
2E110CA03
2E110DC23
2E110GA42Z
2E110GB01Y
2E110GB06X
2E110GB16Z
2E110GB23X
2E110GB23Y
2E110GB24Y
2E110GB42Y
2E110GB44Z
2E110GB54Y
2E110GB56Y
2E110GB62X
2E110GB62Y
2E110GB63X
2E110GB63Y
4J004AA06
4J004AA10
4J004AB01
4J004BA02
4J004CA06
4J004CB03
4J004DB03
4J004EA05
4J004FA07
4J040DA002
4J040DF031
4J040DF061
4J040DF091
4J040FA232
4J040GA07
4J040GA22
4J040JB09
4J040KA05
4J040KA13
4J040KA26
4J040KA31
4J040LA01
4J040LA02
4J040NA12
4J040PA32
(57)【要約】
【課題】低温貼り付け性と、高温での保持力を両立した両面粘着テープを提供する。
【解決手段】 構造用面材を被着体に固定させるための両面粘着テープであり、5℃の温度環境下で、傾斜角度21.5°、高さ65.1mmの斜面から転がした直径21.4mm、重さ40gの鋼球の両面粘着テープ上の移動距離に基づいて粘着性を評価するローリングボールタック試験法における鋼球の移動距離が100mm未満であり、25mm角の両面粘着テープを2枚のSUS板で挟み圧着させて、40℃で18時間養生させた試料を準備し、該試料の一方のSUS板の端部に1.5kgのおもりを吊るした状態で3時間経過させる保持力試験においてSUS板が落下しない、両面粘着テープ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造用面材を被着体に固定させるための両面粘着テープであり、
5℃の温度環境下で、傾斜角度21.5°、高さ65.1mmの斜面から転がした直径21.4mm、重さ40gの鋼球の両面粘着テープ上の移動距離に基づいて粘着性を評価するローリングボールタック試験法における鋼球の移動距離が100mm未満であり、
25mm角の両面粘着テープを2枚のSUS板で挟み圧着させて、40℃で18時間養生させた試料を準備し、該試料の一方のSUS板の端部に1.5kgのおもりを吊るした状態で3時間経過させる保持力試験においてSUS板が落下しない、両面粘着テープ。
【請求項2】
(a)アルキル基の炭素数が4~10の脂肪族(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーを100質量部、
(b)カルボキシエチルアクリレートを5~12質量部、
(c)アミド基含有モノマーを0~6質量部含む重合組成物を重合して得られるアクリル系共重合体と、
粘着付与樹脂0~30質量部
を含有するアクリル系粘着剤からなる粘着剤層を備える、請求項1に記載の両面粘着テープ。
【請求項3】
前記(c)アミド基含有モノマーがメタクリル酸エステルエチルエチレンウレアである、請求項2に記載の両面粘着テープ。
【請求項4】
前記重合性組成物がオレフィン系重合体を含有する、請求項2又は3に記載の両面粘着テープ。
【請求項5】
前記構造用面材が建築用の構造用面材である、請求項1~4のいずれかに記載の両面粘着テープ。
【請求項6】
前記構造用面材が、石膏ボード、化粧板、合板、及びセメント板からなる群から選ばれる少なくとも1種の面材である、請求項1~5のいずれかに記載の両面粘着テープ。
【請求項7】
支持体を含まない粘着剤層のみからなるノンサポートテープであり、
前記粘着剤層の厚みが300~1500μmであり、
前記粘着剤層の動的粘弾性装置により測定されるガラス転移温度(Tg)が-40~10℃の範囲にある、請求項1~6のいずれかに記載の両面粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープは、作業性に優れることから、養生、梱包、補修等を目的として、広く使用されている。例えば、アクリル系の粘着剤層を有する粘着テープは、耐候性、耐久性、耐熱性、透明性等の各種物性に優れているため、建築、車両、電子機器内部等において部材を固定するために広く利用されている。
【0003】
例えば特許文献1には、石膏ボードなどの構造用面材を固定する用途として好適に用いられる粘着テープとして、粘着剤層と、該粘着剤層の少なくとも一方の表面に設けられたマスキング部材とを備え、該マスキング部材が粘着剤層の表面を部分的に被覆するように設けられる、加圧接着型粘着テープが記載されている。
特許文献2には、湿潤表面及び乾燥表面の両方への速やかな貼着性、高粘着力、及び強力な接着力を備える感圧性接着剤として、重合した際のガラス転移温度が特定範囲にある(メタ)アクリレートエステルモノマー及び親水性酸性モノマー、並びに非反応性可塑剤を特定量含む感圧性接着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-065190号公報
【特許文献2】特表2017-514005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、粘着テープは石膏ボードなどの構造用面材を被着体に固定する用途に使用されることがあるが、石膏ボードなどの構造用面材は高重量であるため、例えば冬場に粘着テープにより構造用面材を固定しても、時間が経過して夏場になると構造用面材が固定した位置から大きくずれたり、落下したりするなどの不具合が発生することがある。
そこで、本発明は、低温貼り付け性と、高温での保持力を両立した両面粘着テープを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定条件下で行うローリングボールタック試験法における鋼球の移動距離が一定以下であり、かつ特定条件下で行う保持力試験において、SUS板が落下しない両面粘着テープにより、上記課題が解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。
本発明の要旨は、以下の[1]~[7]の通りである。
[1]構造用面材を被着体に固定させるための両面粘着テープであり、
5℃の温度環境下で、傾斜角度21.5°、高さ65.1mmの斜面から転がした直径21.4mm、重さ40gの鋼球の両面粘着テープ上の移動距離に基づいて粘着性を評価するローリングボールタック試験法における鋼球の移動距離が100mm未満であり、
25mm角の両面粘着テープを2枚のSUS板で挟み圧着させて、40℃で18時間養生させた試料を準備し、該試料の一方のSUS板の端部に1.5kgのおもりを吊るした状態で3時間経過させる保持力試験においてSUS板が落下しない、両面粘着テープ。
[2](a)アルキル基の炭素数が4~10の脂肪族(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーを100質量部、(b)カルボキシエチルアクリレートを5~12質量部、
(c)アミド基含有モノマーを0~6質量部含む重合組成物を重合して得られるアクリル系共重合体と、粘着付与樹脂0~30質量部を含有するアクリル系粘着剤からなる粘着剤層を備える、上記[1]に記載の両面粘着テープ。
[3]前記(c)アミド基含有モノマーがメタクリル酸エステルエチルエチレンウレアである、上記[2]に記載の両面粘着テープ。
[4]前記重合性組成物がオレフィン系重合体を含有する、上記[2]又は[3]に記載の両面粘着テープ。
[5]前記構造用面材が建築用の構造用面材である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の両面粘着テープ。
[6]前記構造用面材が、石膏ボード、化粧板、合板、及びセメント板からなる群から選ばれる少なくとも1種の面材である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の両面粘着テープ。
[7]支持体を含まない粘着剤層のみからなるノンサポートテープであり、前記粘着剤層の厚みが300~1500μmであり、前記粘着剤層の動的粘弾性装置により測定されるガラス転移温度(Tg)が-40~10℃の範囲にある、上記[1]~[6]のいずれかに記載の両面粘着テープ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、低温貼り付け性と、高温での保持力を両立した両面粘着テープを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ローリングボールタック試験を模式的に説明する図である。
図2】保持力試験を模式的に説明する図である。
図3】石膏ボードの位置ズレの評価の方法を模式的に説明する図である。
図4】石膏ボードの位置ズレの評価の方法を模式的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[両面粘着テープ]
本発明の両面粘着テープは、構造用面材を被着体に固定するための両面粘着テープであり、5℃の温度環境下で、傾斜角度21.5°、高さ65.1mmの斜面から転がした直径21.4mm、重さ40gの鋼球の両面粘着テープ上の移動距離により粘着性を評価するローリングボールタック試験法における鋼球の移動距離が100mm未満である。これに加えて、本発明の両面粘着テープは、25mm角の両面粘着テープを2枚のSUS板で挟み圧着させて、40℃で18時間養生させた試料を準備し、該試料の片側のSUS板の端部に1.5kgのおもりを吊るした状態で3時間経過させる保持力試験において、SUS板が落下しない両面粘着テープである。
【0010】
<ローリングボールタック試験法における粘着性>
本発明の両面粘着テープは、5℃の温度環境下で行うローリングボールタック試験法における鋼球の移動距離が100mm未満である。鋼球の移動距離が100mm以上であると、両面粘着テープの低温(例えば5℃)での貼り付け性が低下し、冬場など低温環境下で構造用面材を被着体に固定することが難しくなる。
両面粘着テープの低温での貼り付け性の向上の観点から、ローリングボールタック試験法における鋼球の移動距離は90mm以下であることが好ましく、80mm以下であることがより好ましく、70mm以下であることがさらに好ましい。ローリングボールタック試験法における鋼球の移動距離は、好ましくは10mm以上である。鋼球の移動距離がこれら下限値以上であると、例えば、一旦貼付した両面粘着テープを位置調整などのため必要に応じて剥離する際の作業性が向上する。
【0011】
ローリングボールタック試験法について、図1により説明する。まず、傾斜角度θが21.5°、高さ(頂点11Tまでの高さ)hが65.1mmの傾斜板11を準備する。また、両面粘着テープ12が傾斜板11の斜面と連続するように、両面粘着テープ12を傾斜面の下部に水平に配置する。次いで、直径21.4mm、重さ40gの鋼球13を準備し、この鋼球13を傾斜板11の頂点11Tから転がし、水平に置かれた両面粘着テープ12の表面(粘着面)を走らせる。このとき、両面粘着テープ12の表面を移動した鋼球13の距離dを測定し、鋼球の移動距離とする。該ローリングボールタック試験は、5℃で行うこととする。
【0012】
<保持力>
本発明の両面粘着テープは、保持力試験においてSUS板が落下しない両面粘着テープである。保持力試験においてSUS板が落下する両面粘着テープの場合、両面粘着テープの高温(例えば40℃)での凝集力が低下し、夏場などの高温環境下において、両面粘着テープにより固定されていた構造用面材が、当初の位置から大きくずれたり、落下したりするなどの不具合が生じやすくなる。
保持力試験におけるSUS板の移動距離は、両面粘着テープの高温時の保持力向上の観点から、好ましくは10mm以下であり、より好ましくは5mm以下であり、さらに好ましくは2mm以下である。
【0013】
保持力試験について、図2により説明する。まず、25mm角(縦25mm、横25mmの正方形)の両面粘着テープ22と、図2の左図に示すように厚さ1.5mm、縦70mm、横30mmの下方に穴あき部24を備えるSUS板(ステンレス板)21aと厚さ1.5mm、縦125mm、横50mmのSUS板(ステンレス板)21bを準備する。次いで、図2の右図に示すように該2枚のSUS板21a及びSUS板21bで両面粘着テープ22を挟み、SUS板21b上で2kgのローラーを2往復することで圧着させた後、40℃で18時間養生させて、試料20を作製する。そして、該試料20をSUS板21の長手方向が上下方向になるように、SUS板21bを固定し、SUS板21aの下方の穴あき部24に1.5kgのおもり23を吊るす。この状態で3時間経過させて、SUS板21aの落下の有無、SUS板21aの移動距離を評価する。SUS板21aの移動距離とは、試験開始前(おもりを吊るす前)と比較した場合のSUS板21aの3時間経過後の上下方向の移動距離を意味する。
【0014】
<組成>
本発明の両面粘着テープは、上記したローリングボールタック試験法における鋼球の移動距離を一定以下にする観点、及び保持力試験においてSUS板を落下しないようにする観点から、以下の特定のアクリル系粘着剤からなる粘着剤層を備えることが好ましい。
アクリル系粘着剤は、(a)アルキル基の炭素数が4~10の脂肪族(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー100質量部、(b)カルボキシエチルアクリレート5~12質量部、(c)アミド基含有モノマー0~6質量部含む重合組成物を重合して得られるアクリル系共重合体、及び粘着付与樹脂0~30質量部を含有するものが好ましい。
【0015】
<(a)成分>
アクリル系粘着剤に含まれるアクリル系共重合体を得るための重合組成物には、(a)アルキル基の炭素数が4~10の脂肪族(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(以下(a)成分ともいう)が含まれる。
(a)成分は、(メタ)アクリル酸と、アルキル基の炭素数が4~10の脂肪族アルコールのエステルである。(a)成分を用いることにより、アクリル系粘着剤より形成される粘着剤層のガラス転移温度を後述する所望の範囲に調整しやすくなる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」とは、アクリル酸アルキルエステル、及びメタクリル酸アルキルエステルの両方を含む概念を指すものであり、他の類似の用語も同様である。
【0016】
具体的な(a)成分としては、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、(a)成分としては、n-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレートが好ましく、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートがより好ましく、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
(a)成分は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
(a)成分由来の構成単位は、アクリル系粘着剤において主成分を構成するものであって、その含有量は、アクリル系粘着剤全量基準で一般的に30質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。このように、(a)成分の含有量を多くすると、アクリル系粘着剤に所望の粘着力を付与することが可能になる。
なお、アクリル系粘着剤における(a)成分由来の構成単位の含有量は、後述する粘着剤組成物における(a)成分の含有量と実質的に同じであるので、置き換えて表すことができる。以下で説明する(b),(d)、(e)成分など、(a)成分以外の成分も同様である。
【0018】
<(b)成分>
重合組成物は、(b)カルボキシエチルアクリレート(以下(b)成分ともいう)を含む。(b)成分を含むことで、低温貼り付け性と、高温での保持力を両立した両面粘着テープを得やすくなる。
(b)成分の含有量は(a)成分100質量部に対して、5~12質量部であることが好ましい。(b)成分の含有量が5質量部以上であることにより、両面粘着テープの高温での保持力が向上しやすくなる。また(b)成分の含有量が12質量部以下であることにより、両面粘着テープの低温貼り付け性が向上しやすくなる。
(b)成分の含有量は(a)成分100質量部に対して、好ましくは6~10質量部であり、より好ましくは7~10質量部である。(b)成分の含有量をこのような範囲に調整することにより、両面粘着テープの低温貼り付け性及び高温での保持力がバランス良く向上させることができる。そのため、例えば、冬場に両面粘着テープにより構造用面材を固定して、時間が経過して夏場になった場合であったしても、構造用面材の位置ずれや落下を高度に防止できる。
【0019】
<(c)成分>
重合組成物には、(c)アミド基含有モノマー(以下(c)成分ともいう)が含まれることが好ましい。(c)成分を含むことで、両面粘着テープの低温貼り付け性が向上しやすくなる。
(c)成分の含有量は(a)成分100質量部に対して、0~6質量部であることが好ましい。(c)成分の含有量を6質量部以下とすることにより、両面粘着テープの高温での保持力の低下を抑制できる。
(c)成分の含有量は(a)成分100質量部に対して、好ましくは0~6質量部であり、より好ましくは0~5質量部であり、さらに好ましくは0~3質量部である。(c)成分の含有量をこれら下限値以上とすることにより、両面粘着テープの低温貼り付け性が向上しやすくなる。また(c)成分の含有量をこれら上限値以下とすることにより、両面粘着テープの高温での保持力の低下をより抑制しやすくなる。
【0020】
(c)アミド基含有モノマーは、アミド基を有するモノマーであれば特に限定されないが、アミド基を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーであることが好ましい。ここで、本明細書においては、アミド基はアミド結合及び尿素結合の両方を含む概念を指す。
(c)アミド基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸とアミド基を有するアルコールとのエステルであることが好ましく、中でもメタクリル酸とヒドロキシエチルエチレンウレアとのエステルであるメタクリル酸エステルエチルエチレンウレアが特に好ましい。メタクリル酸エステルエチルエチレンウレアを用いることで、両面粘着テープの低温貼り付け性が向上しやすくなる。
【0021】
<(d)成分>
重合組成物は、さらに(d)オレフィン重合体((d)成分)を含むことが好ましい。(d)オレフィン重合体を含むことにより、アクリル系粘着剤と後述する粘着付与樹脂とが混ざりやすくなり、粘着性が向上しやすくなる。(d)オレフィン重合体は、片末端に重合性結合を有するオレフィン重合体であることが好ましい。なお、重合性結合は、不飽和の炭素-炭素結合を意味し、例えば不飽和二重結合が挙げられ、好ましくは(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。
(d)オレフィン重合体としては、例えば、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリオレフィンが挙げられる。なお、ポリオレフィンとは、エチレン、プロピレン、ブタン、ブタジエン、イソプレンなどの二重結合を有する脂肪族炭化水素化合物の重合体、又はその水素添加物である。
【0022】
片末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリオレフィンとしては、例えば、片末端にエポキシ基を有するポリエチレンと(メタ)アクリル酸とを反応させることにより調製された、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリエチレン等が挙げられる。また、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリブタジエン又はその水素添加物が挙げられ、その市販品として株式会社クラレ製の「L-1253」等が挙げられる。
【0023】
(d)オレフィン重合体は、その数平均分子量が好ましくは500~20000、より好ましくは1000~10000である。なお、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出すればよい。
また、アクリル系粘着剤において(d)オレフィン重合体由来の構成単位の含有量は、(a)成分由来の構成単位100質量部に対して、1~20質量部が好ましく、2~15質量部がより好ましく、4~12質量部がさらに好ましい。
【0024】
<(e)成分>
重合組成物は、さらに(e)架橋剤((e)成分)を含むことが好ましい。そして重合組成物は、上記(a)~(e)成分のすべてを含むことが好ましい。(e)架橋剤としては、ビニル基を2つ以上有するモノマーが挙げられ、好ましくは(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
具体的な(e)架橋剤としては、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトシキ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、エトシキ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロキシ化グリセリルトリアクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジアクリレート、両末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリブタジエン又はその水素添加物等が挙げられる。
上記した両末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリブタジエン又はその水素添加物の市販品としては、日本曹達株式会社製の「TEAI-1000」、「EA-3000」、「TE-2000」、大阪有機化学工業株式会社製の「BAC-45」等が挙げられる。
(e)架橋剤の含有量は、(a)成分100質量部に対して、好ましくは0.01~12質量部、より好ましくは0.05~7質量部、さらに好ましくは0.1~3質量部である。
【0025】
<その他のモノマー>
重合組成物は、上記した(a)~(e)成分以外のその他のモノマーを含んでいてもよい。その他のモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン等のスチレン系モノマー、アクリル酸などが挙げられる。
アクリル系粘着剤において、その他のモノマー由来の構成単位の含有量は、(a)成分由来の構成単位100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは0質量部である。
【0026】
<粘着付与樹脂>
アクリル系粘着剤は、粘着力を向上させる観点から、粘着付与樹脂を含有してもよい。粘着付与樹脂としては、水添テルペン樹脂、水添ロジン、不均化ロジン樹脂、石油樹脂等の重合阻害性の低い粘着付与樹脂が好ましい。これらの中でも、粘着付与樹脂が二重結合を多く有していると重合反応を阻害することから、水添系のものが好ましく、中でも水添石油樹脂が好ましい。
粘着付与樹脂の軟化点は、粘着剤の凝集力及び粘着力を向上させる観点から、95℃以上程度であればよいが、120℃以上のものを含むことが好ましく、例えば、95℃以上120℃未満のものと、120℃以上150℃以下のものとを併用してもよい。なお、軟化点は、JISK2207に規定される環球法により測定すればよい。
粘着付与樹脂を使用する場合において、アクリル系粘着剤における粘着付与樹脂の含有量は、(a)成分100質量部に対して、好ましくは5~40質量部、より好ましくは7~35質量部、さらに好ましくは7~30質量部、さらに好ましくは10~25質量部である。
【0027】
<微粒子>
アクリル系粘着剤は、微粒子を含有してもよい。微粒子を含有させることで、構造用面材に対する接着力、並びに、粘着剤の凝集力を向上させることができる。
微粒子としては、ガラスバルーン、シラスバルーン、及びフライアッシュバルーン等の無機質中空粒子、ポリメタクリル酸メチル、アクリロニトリル-塩化ビニリデン共重合体、ポリスチレン、及びフェノール樹脂等からなる有機質中空粒子、ガラスビーズ、シリカビーズ、及び合成雲母等の無機質微粒子、ポリアクリル酸エチル、ポリウレタン、ポリエチレン、及びポリプロピレン等の有機質微粒子が挙げられる。
アクリル系粘着剤における微粒子の含有量は、(a)成分100質量部に対して、好ましくは0.1~15質量部、より好ましくは0.5~10質量部、さらに好ましくは0.5~5質量部である。
【0028】
<その他の成分>
本発明において用いるアクリル系粘着剤は、前述した成分以外にも、可塑剤、軟化剤、顔料、染料、光重合開始剤、難燃剤等の粘着剤に従来使用されている各種の添加剤を含有してもよい。
【0029】
<粘着剤層の製造方法>
粘着剤層は、上記した重合組成物を含む粘着剤組成物に光を照射して、重合組成物を重合させることで得ることが可能である。また、粘着剤組成物は、必要に応じて上記した粘着付与樹脂、微粒子、及びその他の成分の少なくとも1種を含んでいてもよい。
より具体的に説明すると、まず、重合組成物、さらに必要に応じて配合される粘着付与樹脂、微粒子、その他の成分を、ガラス容器等の反応容器に投入して混合して、粘着剤組成物を得る。
次いで、粘着剤組成物中の溶存酸素を除去するために、一般に窒素ガス等の不活性ガスを供給して酸素をパージする。そして、粘着剤組成物を剥離シート上に塗布するか、又は、樹脂フィルム、織布、不織布等の支持体などに塗布した後、光を照射し重合組成物を重合することにより粘着剤層を得ることができる。
前記粘着剤組成物の塗布から光を照射する工程までは、不活性ガス雰囲気下、又はフィルム等により酸素が遮断された状態で行うことが好ましい。
なお、本製造方法では、各成分を混合して得た粘着剤組成物は、粘度を高くするために、剥離シート又は支持体などに塗布する前に予備重合をしてもよい。
【0030】
粘着剤組成物に光を照射する際に用いることができるランプとしては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウエーブ励起水銀灯、及びメタルハライドランプ等が挙げられる。これらの中でも、ケミカルランプが好ましい。粘着剤組成物に対して光を照射する際の光照射強度は、光重合開始剤の有無等によっても異なるが、0.1~100mW/cm2程度が好ましい。
【0031】
<両面粘着テープの構成>
本発明の両面粘着テープは、支持体と、該支持体の両面に設けられた粘着剤層とを備えるものであってもよいし、支持体を含まない粘着剤層のみからなるノンサポートテープであってもよいが、ノンサポートテープであることが好ましい。粘着剤層は、好ましくは上記したアクリル系粘着剤により形成されたものである。
粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、好ましくは300~1500μmであり、より好ましくは500~1300μmであり、さらに好ましくは600~1000μmである。粘着剤層がこのような厚みであると、両面粘着テープの保持力が向上しやすくなり、また後述するようにマスキング部材を両面粘着テープに設けて、被着体に対する位置調整を行いやすくなる。
粘着剤層のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは-40~10℃であり、より好ましくは-35~0℃であり、さらに好ましくは-30~-10℃である。粘着剤層のTgがこのような温度範囲であると、両面粘着テープの低温での貼り付け性が向上しやすくなる。ガラス転移温度は、動的粘弾性装置により測定される。
【0032】
(マスキング部材)
本発明の両面粘着テープは、マスキング部材を備えていてもよい。支持体を備える両面粘着テープの場合は、一方の粘着剤層の表面にマスキング部材を設けることが好ましく、ノンサポートテープである両面粘着テープの場合は、粘着剤層の少なくとも一方の表面にマスキング部材を設けることが好ましい。マスキング部材を備えた両面粘着テープを用いることで、被着体に対する位置調整が容易になる。
【0033】
マスキング部材を備えた両面粘着テープは以下のようにして使用することが好ましい。
まず、両面粘着テープを被着体に対して仮接着させるとよい。具体的には、両面粘着テープのマスキング部材が設けられた面を被着体に貼り合わせ、粘着剤層の表面が部分的に被着体に接触するように両面粘着テープに比較的弱い圧力を付すとよい。このとき、両面粘着テープは、マスキング部材を有することで、一旦被着体に接着させられても、容易に剥離され、位置調整を自由に行うことが可能である。
その後、貼り合わせ位置が決められると、本接着を行うとよい。本接着は、長期間にわたって両面粘着テープを被着体に接着させるために、強固に被着体に接着させることである。具体的には、両面粘着テープに、押圧などにより比較的強い圧力を加え、マスキング部材が粘着剤層内部に入り込んだ構造とすればよい。これにより、粘着剤層は、被着体に対する接触面積が大きく、かつ被着体に押さえ付けられるように接着し、両面粘着テープが被着体に強固に接着されることになる。
【0034】
マスキング部材は、微粘着性、非粘着性を有する材料で構成される。マスキング部材は、粘着剤層の表面を部分的に被覆するものであるが、好ましくは粘着剤層の表面全体の2%以上50%以下を被覆する。2%以上被覆することで、一旦被着体に貼付した粘着テープを、位置調整などのために貼り直ししやすくなる。また、50%以下とすることで、粘着剤層の過半の部分が露出することになるので、粘着テープの接着性が良好になる。また、接着性、貼り直し性などをバランスよく良好にする観点から、マスキング部材は、粘着剤層の表面全体の5%以上被覆することがより好ましく、また、より好ましくは20%未満、さらに好ましくは14%以下、よりさらに好ましくは10%以下被覆する。
【0035】
マスキング部材は、繊維を有する繊維材料から構成されることが好ましい。マスキング部材に使用される繊維材料は、一方向又は複数方向に配列された繊維を有することがより好ましい。一方向又は複数方向に配列された繊維は、長繊維、ヤーン、ストランド、フィラメントなどと呼ばれるもので、十分な長さを有する糸状部材である。また、繊維(糸状部材)は、三つ編などの組紐状のものであってもよい。各方向に配列される繊維(糸状部材)は、通常、所定の方向に沿って延在していればよい。繊維は、延在する方向において、例えば、粘着テープの長さの半分程度以上の長さを有していればよく、粘着テープと同じ長さを有していてもよい。
繊維(糸状部材)の形状は、特に限定されず、矩形、方形などの四角形状、その他の多角形状、円形、楕円形、不定形などであってもよい。また、繊維(糸状部材)は、断面の長径と短径の比が1に近いもの(例えば、2未満)のものであってもよいし、その断面の長径と短径の比が1より十分に大きい帯状のもの(例えば、2以上)であってもよい。
【0036】
マスキング部材において繊維は、少なくとも1本が引き抜き可能であることが好ましい。引き抜き可能であるとは、両面粘着テープを被着体に貼付した状態で、両面粘着テープの外周部に配置された繊維の端部を人手により引っ張ると、繊維が引き抜かれることを意味する。
このような構成によれば、両面粘着テープを被着体に貼付した後、マスキング部材の繊維の少なくとも一本を引き抜き、その後、両面粘着テープが押圧などされて、被着体に向かう圧力が加えられると、繊維が引き抜かれないときに比べて、被着体に対する粘着剤層の接着面積が大きくなる。また、繊維を引き抜くことで、繊維による反発も抑えられる。そのため、本発明では、繊維を引き抜くことで、本接着における両面粘着テープの被着体に対する接着力が向上する。
【0037】
例えば、位置調整が終わった後に、繊維の少なくとも1本を引き抜き、その後、両面粘着テープを押圧などすることで本接着させると、本接着における被着体に対する両面粘着テープの接着力が向上する。そのため、マスキング部材を設けたことによる、本接着における接着力の低下や両面粘着テープの剥がれなどを防止することが可能となる。
【0038】
マスキング部材はメッシュ材である態様も好ましい。メッシュ材は、複数本の並列される糸状部材と、複数本の糸状部材に交差するように並列された、複数本の糸状部材からなり、これらの交差部それぞれにおいて、糸状部材と糸状部材とが融着などにより接着されるとよい。交差部は、他の部位よりも厚さが大きくなる部分であり、スパイク部ともいう。メッシュ材は、スパイク部の頂点がある位置において、最も厚みが大きくなるものである。
なお、メッシュ材は、2方向それぞれに沿って並列する糸状部材によって構成されてもよいが、3方向以上の各方向それぞれに沿って並列する糸状部材によって構成されてもよい。
マスキング部材は、メッシュ材が2枚以上重ねられて形成されてもよい。メッシュ材が2枚以上重ねられる場合、各メッシュ材のスパイク部が互いに異なる位置に配置されるように重ねられるとよい。また、マスキング部材は、メッシュ材に限られず、編布、織布、組布などであってもよい。
【0039】
また、マスキング部材-粘着剤層高さ差は、位置調整を容易に行う観点から、例えば70μm以上であり、好ましくは75μm以上、より好ましくは90μm以上である。また、マスキング部材が設けられても粘着剤層の粘着力を良好に維持する観点から、上記高さ差は、300μm以下が好ましく、より好ましくは220μm以下、さらに好ましくは160μm以下である。
なお、マスキング部材-粘着剤層高さ差とは、マスキング部材に上記のとおりスパイク部が設けられる場合には、マスキング部材の隣接するスパイク部の頂点2点を通る断面において、スパイク部の頂点2点を結ぶ直線と、頂点2点間に存在する粘着剤層の表面との高さ差を意味する。なお、高さ差は、上記直線と、粘着剤層の表面とが最も短くなる距離を意味し、隣接するスパイク部とは、互いに最も近接するスパイク部を意味し、高さ差は3点平均で求めるとよい。ただし、高さ差は、スパイク部材がない場合には、マスキング部材の最大高さと、粘着剤層表面の高さ差を意味する。高さ差は、両面粘着テープを厚み方向に沿って切断し、デジタルマクロスコープにより観察することで測定することができる。
【0040】
<用途>
本発明の両面粘着テープは、あらゆる用途に使用可能であるが、建築用途で使用することが好ましい。建築用途で使用する場合、本発明の両面粘着テープは、支持体を含まない粘着剤層のみからなるノンサポートテープとして使用することが好ましい。
本発明の両面粘着テープは、構造用面材を被着体に固定するために使用することができる。構造用面材としては、建築用の構造用面材であることが好ましい。建築用の構造用面材は、建築用に用いられる各種面材であり、その種類は特に制限されないが、例えば、石膏ボード、化粧板、合板、セメント板、中密度繊維板(MDF)、アルミ複合板などが挙げられる。中でも、構造用面材としては、石膏ボード、化粧板、合板、及びセメント板からなる群から選ばれる少なくとも1種の面材であることが好ましい。
【0041】
また、被着体としては、特に限定されないが、例えば各種建築物の壁、柱などの下地が挙げられる。被着体としては、具体的には、コンクリート、モルタル、石膏ボード、強化石膏ボード、ALC板、スレート板等の無機材料による下地、合板、OSB、パーティクルボード等の木質材料による下地、アスファルト、EPDM、TPOなどの防水シート、ウレタンフォーム断熱材などの有機材料による下地、金属パネルなどの金属材料による下地などが挙げられる。中でも被着体としては、好ましくは、JIS A 6901に準拠した石膏ボード、強化石膏ボードである。
本発明の両面粘着テープは、上記したように、低温貼り付け性、及び高温での保持力が共に優れているため、冬場に本発明の両面粘着テープを用いて、構造用面材を被着体に固定させた後、時間が経過して夏場になったとしても、構造用面材の位置が大きくずれたり、落下したりする不具合の発生を抑制できる。
【実施例0042】
以下に本発明の実施例を説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
測定方法及び評価方法は、以下のとおりである。
【0044】
<ガラス転移温度(Tg)>
動的粘弾性装置(アイティー計測制御社製のDVA-200)を用いて、せん断モード、周波数10Hz、歪み量0.1%、昇温速度10℃/minで-100℃から100℃まで測定を行い、粘着剤層のガラス転移温度Tgを求めた。
【0045】
<ローリングボールタック試験>
ローリングボールタック試験法について、図1により説明する。まず傾斜角度θが21.5°、高さ(頂点までの高さ)hが65.1mmの傾斜板11を準備した。各実施例及び比較例で作製した両面粘着テープ12が傾斜板11の斜面と連続するように、両面粘着テープ12を傾斜面の下部に水平に配置した。次いで、直径21.4mm、重さ40gの鋼球13を準備し、この鋼球13を傾斜板11の頂点11Tから転がし、水平に置かれた両面粘着テープ12の表面(粘着面)を走らせた。このとき、両面粘着テープ12の表面を移動した鋼球13の距離d(mm)を測定し、鋼球の移動距離とした。該ローリングボールタック試験は、5℃で行った。
【0046】
<保持力試験>
保持力試験について、図2により説明する。まず、25mm角(縦25mm、横25mmの正方形)の両面粘着テープ22、及び厚さ1.5mm、縦70mm、横30mmの下方に穴あき部24を備えるSUS板(ステンレス板)21aと厚さ1.5mm、縦125mm、横50mmのSUS板(ステンレス板)21bを準備する。該2枚のSUS板21a及びSUS板21bで両面テープ22を挟み、SUS板21b上で2kgのローラーを2往復することで圧着させた後、40℃で18時間養生させて、試料20を作製した。そして、該試料20をSUS板21の長手方向が上下方向になるように、SUS板21bを固定し、SUS板21aの下方の穴あき部24に1.5kgのおもり23を吊るした。この状態で3時間経過させて、SUS板21aの落下の有無、SUS板21aの移動距離を評価した。SUS板21aの移動距離とは、試験開始前(おもりを吊るす前)と比較した場合のSUS板21aの3時間経過後の上下方向の移動距離を意味する。
【0047】
<石膏ボードの位置ズレの評価(ボードズレ)>
以下の石膏ボードを準備した。
(下地石膏ボード)
種類:JIS A 6901に規定されたGB-R
サイズ:3×6板(横910mm、縦1820mm)
厚み:12.5mm
重量:14.4kg
【0048】
(上張り石膏ボード)
(1)上張り石膏ボード1
種類:JIS A 6901に規定されたGB-R
サイズ:3×6板(横910mm、縦1820mm)
厚み:12.5mm
重量:14.1kg
表面が紙に覆われている
(2)上張り石膏ボード2
種類:JIS A 6901に規定されたGB-R-H
サイズ:3×6板(横910mm、縦1820mm)
厚み:9.5mm
重量:18.8kg
表面が紙に覆われている
【0049】
上記した、上張り石膏ボード1及び上張り石膏ボード2のそれぞれに対して、以下の実験を行った。
【0050】
石膏ボードの位置ズレの評価について、図3及び4により説明する。横20mm、縦600mmの短冊状にした両面粘着テープ32を10個準備した。そして、該10個の両面粘着テープ32を上張り石膏ボード33の表面に図3のよう貼り付け、2kgのローラーにより、600mmあたり2秒かけて圧着させた。具体的には、上張り石膏ボード33の左端部及び右端部にそれぞれ両面粘着テープ32を3個ずつ縦方向に並べて配置して貼付した。また、上張り石膏ボード33の上端部中央及び下端部中央にそれぞれ両面粘着テープ32を横方向に配置し貼付した。そして、上張り石膏ボード33の中央部に両面粘着テープ32を縦方向に2個並べて配置して貼付した。中央部に配置された2つの両面粘着テープ32は、上張り石膏ボードの中心がそれぞれの両面粘着テープの上端及び下端となるように配置させた。
なお、上張り石膏ボート33に貼付した両面粘着テープ32の最上部(又は最下部)と、上張り石膏ボードの最上部(又は最下部)との間隔aは10~20mmである。上張り石膏ボート33に貼付した両面粘着テープ32の左端部(又は右端部)と、上張り石膏ボードの左側面(又は右側面)との間隔bは10~20mmである。なお、両面粘着テープを上張り石膏ボード33に貼り付ける際の温度は5℃とした。
次いで、両面粘着テープ32を10個貼り付けた上張り石膏ボード33を、図4左図のように、壁35に固定された下地石膏ボード31に貼り付けて積層体とした。この際、上張り石膏ボード33は、その端部が床34に接触しないように、床34から間隔をあけて貼り付けた。そして上張り石膏ボード33の上から、両面粘着テープ32が存在する部分に、2kgのローラーにより、600mmあたり4秒かけて圧着させた。なお、上張り石膏ボード33を下地石膏ボード31に貼り付ける際の温度は5℃とした。
そして、上記のとおり作製した積層体を5℃で12時間保持した後、20℃に昇温して12時間保持し、再度5℃に戻すサイクルを合計4サイクル(計4日間)行った後、40℃で10日間養生させた。
養生後における上張り石膏ボード33の位置ずれXを測定し、以下の基準で評価した。
なお、位置ずれXは、貼り付け直後の上張り石膏ボード33の上端部の位置と、養生後の上端部の位置との距離を意味する。
【0051】
(評価基準)
A:上張り石膏ボード2(重量18.8kg)を用いたときの位置ずれXが0.5mm未満であった。
B:上張り石膏ボード2(重量18.8kg)を用いたときの位置ずれXが0.5mm以上であるが、上張り石膏ボード1(重量14.1kg)を用いたときの位置ずれXが0.5mm未満であった。
C:上張り石膏ボード1及び2のいずれのボードを用いた場合でも、位置ずれXが0.5mm以上であるか又はボードが落下した。
【0052】
<実施例1>
2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)100質量部、β-カルボキシエチルアクリレート7質量部、アミド基含有モノマー1質量部、オレフィン系重合体10質量部、架橋剤2.0質量部、粘着付与樹脂10質量部、微粒子1質量部、重合開始剤0.3質量部を混合し粘着剤組成物を調製した。なお、粘着付与樹脂10質量部の内訳は、後述する水添石油樹脂(アルコンP140)5質量部と、水添石油樹脂(アルコンP100)5質量部である。
この粘着剤組成物に窒素をパージして溶存酸素を除去した。次いで、剥離シートの剥離処理面上にスペーサーを設置し、粘着剤組成物を剥離シートの剥離処理面上に塗布した。次いで、塗布した粘着剤組成物の上に、剥離処理面が粘着剤組成物に接するように、別の剥離シートを被覆した。なお、剥離シートとしては、シリコーン離型処理されたPETフィルム(厚み50μm)を使用した。
この状態で被覆側の剥離シートにおける紫外線照射強度が0.5mW/cm2となるようにケミカルランプのランプ強度を調整し、2分間紫外線を照射し、続いて紫外線照射強度が2.0mW/cm2となるようにケミカルランプのランプ強度を調整し、3分間紫外線を照射し、両面に剥離シートが貼付された粘着剤層を得た。粘着剤層の厚さは820μmであった。該粘着剤層からなる両面粘着テープを用いて各種評価を行った。
【0053】
なお、使用した原料の詳細は以下のとおりである。
β-カルボキシエチルアクリレート:ソルベイ日華株式会社製「Sipomer-β-CEAH」
アミド基含有モノマー:メタクリル酸エステルエチルエチレンウレア、ソルベイ日華株式会社製、「Sipomer WAME」
オレフィン系重合体:(メタ)アクリロイル基を片末端に有する水素化ポリブタジエン、株式会社クラレ製「L-1253」
架橋剤:日本曹達株式会社製「TEAI-1000」
粘着付与樹脂1:水添石油樹脂(軟化点140℃)、荒川化学工業株式会社製「アルコンP140」
粘着付与樹脂2:水添石油樹脂(軟化点100℃)、荒川化学工業株式会社製「アルコンP100」
重合開始剤:2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(BDK)
微粒子:3M株式会社製「グラスバブルスK25」
【0054】
<実施例2~5、比較例1~4>
粘着剤組成物に含まれる各成分の配合を表1及び2のとおり変更した以外は、実施例1と同様にして両面粘着テープを得て、各種評価を行った。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
各実施例の結果より、ローリングボールタック試験における鋼球の移動距離が100mm未満であり、かつ保持力試験においてSUS板が落下しない本発明の両面粘着テープは、石膏ボードを用いたボードズレの評価が良好であった。このことから、本発明の両面粘着テープは、低温貼り付け性と、高温での保持力が共に良好であり、冬場に両面粘着テープにより構造用面材を固定し、時間が経過して夏場になっても、構造用面材が固定した位置から大きくずれたり、落下したりするなどの不具合を抑制できることが分かった。
これに対して、各比較例の両面粘着テープは、ローリングボールタック試験における鋼球の移動距離が100mm以上であるか、又は保持力試験においてSUS板が落下するため、低温貼り付け性及び高温での保持力を両立できず、石膏ボードを用いたボードズレの評価が悪い結果となった。
【符号の説明】
【0058】
11 傾斜版
12 両面粘着テープ
13 鋼球
21 SUS板
22 両面粘着テープ
23 おもり
24 穴あき部
31 下地石膏ボード
32 両面粘着テープ
33 上張り石膏ボード
34 床
35 壁
図1
図2
図3
図4