(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005167
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】噴霧装置の制御方法及び噴霧装置
(51)【国際特許分類】
B05B 12/00 20180101AFI20230111BHJP
G01N 21/53 20060101ALI20230111BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
B05B12/00 Z
G01N21/53 Z
G01N21/27 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106913
(22)【出願日】2021-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100091524
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 充夫
(72)【発明者】
【氏名】大久保 直哉
(72)【発明者】
【氏名】田端 大助
(72)【発明者】
【氏名】田近 英之
【テーマコード(参考)】
2G059
4F035
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB04
2G059CC11
2G059EE02
2G059EE13
2G059FF01
2G059FF04
2G059HH01
2G059HH02
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM03
2G059MM04
2G059MM05
4F035AA01
4F035BA22
4F035BB04
4F035BB07
4F035BB21
4F035BB35
(57)【要約】
【課題】ミストを噴霧している空間に投光部より光を照射し、散乱光を画像として取得し、画像を構成する画素の輝度値を基に空間内のミスト濃度を判定することにより、再現性良くミスト噴霧を停止する噴霧装置の制御方法及び噴霧装置を提供する。
【解決手段】ミスト噴霧部101が液体を微粒化しミスト106として噴霧し、投光部102がミスト噴霧部101よりミスト106が噴霧された空間105に光90を照射し、撮像部103が投光部102より照射された光のミスト106による散乱光91を撮像し、演算部104が撮像部103より取得した画像を構成する画素の輝度値を基に空間内のミスト濃度を算出することにより、ミスト噴霧部101より噴霧されるミスト106の噴霧を停止する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミスト噴霧部がミストの噴霧を開始し、
投光部が、前記ミスト噴霧部より前記ミストが噴霧された空間に光を照射し、
撮像部が、前記ミスト噴霧部より噴霧された前記ミストによる、前記投光部より照射された前記光の散乱光を撮像し、
演算部が、
前記撮像部より画像を取得し、画像毎に各画素の輝度値を数値化し、
前記画像を構成する全画素の輝度値から画像全体の平均輝度値を算出し、
噴霧時間に対する画像全体の平均輝度値の変化量から、各時間における画像全体の平均輝度値の変化量を算出し、
これらの変化量の絶対値を算出して比較し、
噴霧時間と画像全体の平均輝度値との変化量の絶対値との関係を基に、所定条件を満足するか否かを判定し、
前記所定条件を満足すると判定するとき、前記ミスト噴霧部より噴霧される前記ミストの噴霧を停止する信号を前記ミスト噴霧部に対して出力する、噴霧装置の制御方法。
【請求項2】
前記演算部は、前記変化量の絶対値を算出して比較し、前記所定条件を満たすか否か判定して、噴霧を停止する信号を出力する代わりに、
前記変化量の最大値を求め、
前記変化量の前記最大値から各時間における画像全体の平均輝度値の変化量の正規化を行い、
噴霧時間と正規化後の画像全体の平均輝度値の変化量との関係を基に、所定条件を満たしていれば、前記ミスト噴霧部より噴霧される前記ミストの噴霧を停止する信号を前記ミスト噴霧部に対して出力する、請求項1に記載の噴霧装置の制御方法。
【請求項3】
前記撮像部がRGBの波長をそれぞれ検知し、前記演算部で赤色成分を抽出する、請求項1又は2に記載の噴霧装置の制御方法。
【請求項4】
前記投光部が赤色光を照射する、請求項1~3のいずれか一項に記載の噴霧装置の制御方法。
【請求項5】
前記投光部が近赤外光を照射する、請求項1~4のいずれか一項に記載の噴霧装置の制御方法。
【請求項6】
ミストを噴霧するミスト噴霧部と、
前記ミスト噴霧部より前記ミストが噴霧された空間に光を照射する投光部と、
前記ミスト噴霧部より噴霧された前記ミストによる、前記投光部より照射された前記光の散乱光を撮像する撮像部と、
演算部とを備え、
前記演算部は、
前記撮像部より取得した画像毎に各画素の輝度値を数値化する輝度値算出部と、
前記画像を構成する全画素の輝度値から画像全体の平均輝度値を算出する平均輝度値算出部と、
噴霧時間に対する画像全体の平均輝度値の変化量から、各時間における画像全体の平均輝度値の変化量を変化量算出部で算出し、
この変化量の絶対値をデータ処理部で算出して比較し、
噴霧時間と画像全体の平均輝度値の変化量の絶対値との関係を基に、所定条件を満足するか否かを判定部で判定し、
前記所定条件を満足すると前記判定部で判定するとき、前記ミスト噴霧部より噴霧される前記ミストの噴霧を停止する信号を前記ミスト噴霧部に対して信号出力部から出力する、噴霧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミスト噴霧部よりミストを噴霧している空間に投光部より光を照射し、散乱光を画像として取得し、画像を構成する画素の輝度値を基に空間内のミスト濃度を判定することにより、再現性良くミスト噴霧を停止する噴霧装置の制御方法及び噴霧装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体を微粒化したミストを空間に噴霧し、ミスト及び空間に画像又は映像を散乱させることにより、幻想的で心地良い空間を作り出すことが可能となる。また、ミストを用いた演出は、人体又は自然との親和性も高く、近年、その利用可能性が広がっている。
【0003】
しかし、空間に浮遊するミストは、温湿度又は風などの外乱の影響を受けやすく、安定的に生成すること又は拡散を制御することは難しいため、演出に用いた場合に意図する演出が実現されないなどの課題を有する。そのため、演出空間のミスト濃度を定量化し、制御できるようにすることが期待されている。
【0004】
例えば、演出に用いるミスト濃度が安定せず、意図するような演出が実現されないということに対して、ミスト濃度を測定することで、ミスト濃度が所定の範囲となるよう制御する投影装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。その投影装置は、二流体ノズルと、投影装置側気体流路と、投影装置側液体流路と、液体圧力調整器と、気体用弁と、液体用弁と、気体供給源と、液体供給源と、ミスト濃度測定部とで、ミストを噴霧するように構成されている。また、投影装置の制御部では、投影部からスクリーンに投影される画像又は映像に基づいて、気体用弁と液体用弁とを開閉制御してミストの噴霧の開始及び停止を行い、かつ、ミスト濃度測定部からのミスト濃度の信号を受信し、受信信号に基づき気体用弁と液体用弁とを開閉制御してミスト濃度が所定の範囲となるように、ミストの噴霧の開始及び停止を行う。この投影装置を用いることにより、室内空間のミストの濃度を制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の投影装置は、ミスト濃度測定部からのミスト濃度の信号を受信し、受信信号に基づき気体用弁と液体用弁とを開閉制御してミスト濃度が所定の範囲となるように、ミストの噴霧の開始及び停止を行うことができる。
【0007】
しかし、この投影装置では、ミストが噴霧された空間に対し投光部より光を照射し、受光部で検出された散乱光の強度からミスト濃度を測定しているため、局所的なミスト濃度の影響を受けやすく、空間的に一様でない分布を持つ場合に正確なミスト濃度を測定できない、また、ミスト濃度が高い場合には受光部で検出される散乱光の経時変化が小さいといった理由から、噴霧を停止するミスト濃度が安定せず、エンタテイメントなどへの利用としては、演出の再現性に乏しいことがあった。
【0008】
本発明は、ミストを噴霧している空間に投光部より光を照射し、散乱光を画像として取得し、画像を構成する画素の輝度値を基に空間内のミスト濃度を判定することにより、局所的なミスト濃度の変化の影響を受けず、空間全体のミスト濃度を捉えることができ、再現性良くミスト噴霧を停止することができる噴霧装置の制御方法及び噴霧装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の1つの態様にかかる噴霧装置の制御方法は、
ミスト噴霧部がミストの噴霧を開始し、
投光部が、前記ミスト噴霧部より前記ミストが噴霧された空間に光を照射し、
撮像部が、前記ミスト噴霧部より噴霧された前記ミストによる、前記投光部より照射された前記光の散乱光を撮像し、
演算部が、
前記撮像部より画像を取得し、画像毎に各画素の輝度値を数値化し、
前記画像を構成する全画素の輝度値から画像全体の平均輝度値を算出し、
噴霧時間に対する画像全体の平均輝度値の変化量から、各時間における画像全体の平均輝度値の変化量を算出し、
これらの変化量の絶対値を算出して比較し、
噴霧時間と画像全体の平均輝度値との変化量の絶対値との関係を基に、所定条件を満足するか否かを判定し、
前記所定条件を満足すると判定するとき、前記ミスト噴霧部より噴霧される前記ミストの噴霧を停止する信号を前記ミスト噴霧部に対して出力する。
【0010】
上記目的を達成するために本発明の別の1つの態様にかかる噴霧装置は、
ミストを噴霧するミスト噴霧部と、
前記ミスト噴霧部より前記ミストが噴霧された空間に光を照射する投光部と、
前記ミスト噴霧部より噴霧された前記ミストによる、前記投光部より照射された前記光の散乱光を撮像する撮像部と、
演算部とを備え、
前記演算部は、
前記撮像部より取得した画像毎に各画素の輝度値を数値化する輝度値算出部と、
前記画像を構成する全画素の輝度値から画像全体の平均輝度値を算出する平均輝度値算出部と、
噴霧時間に対する画像全体の平均輝度値の変化量から、各時間における画像全体の平均輝度値の変化量を変化量算出部で算出し、
この変化量の絶対値をデータ処理部で算出して比較し、
噴霧時間と画像全体の平均輝度値の変化量の絶対値との関係を基に、所定条件を満足するか否かを判定部で判定し、
前記所定条件を満足すると前記判定部で判定するとき、前記ミスト噴霧部より噴霧される前記ミストの噴霧を停止する信号を前記ミスト噴霧部に対して信号出力部から出力する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の前記態様によれば、ミスト噴霧部よりミストを噴霧している空間に投光部より光を照射し、散乱光を画像として取得することにより、再現性良く任意のミスト濃度でミスト噴霧を停止することができる。その結果、空間演出の自由度及び映像表現の価値の向上という大きな効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る噴霧装置の構成図
【
図2】本発明の実施の形態1に係るミスト噴霧部の構成図
【
図3】本発明の実施の形態1に係る演算部での解析処理の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に係る噴霧装置92の構成を説明する図である。
【0015】
図1において、噴霧装置92は、ミスト106の噴霧を開始及び停止するミスト噴霧部101と、ミスト106に光を照射する投光部102と、ミスト106による散乱光を画像として取得する撮像部103と、ミスト106の噴霧を停止するミスト濃度を判定する演算部104とで構成されている。
【0016】
ミスト噴霧部101は、液体及び気体の供給及び停止及び微粒化手段など、ミスト106の噴霧に必要な構成を備え、噴霧開始と停止とを行う。
【0017】
本実施の形態1のミスト噴霧部101は、一例として
図2のような構成とすることができるが、これに限定されるものではない。
【0018】
図2において、ミスト噴霧部101は、複数個の二流体ノズル201と、気体供給源202と、液体供給源203と、気体流路204と、液体流路205と、液体圧力調整器206と、気体用弁207と、液体用弁208と、制御部209と、制御配線210とで、ミスト106を噴霧するための主要部を構成している。
【0019】
1つの気体供給源202は、気体流路204を通じて、各二流体ノズル201に気体を供給する。気体の一例としては空気である。
【0020】
1つの液体供給源203は、液体流路205を通じて、各二流体ノズル201に液体を供給する。液体の一例としては水である。
【0021】
各二流体ノズル201に供給された液体と気体とは、各二流体ノズル201で混合され、液体が微粒化される。微粒化されたミスト106は、各二流体ノズル201から空間105に噴霧される。
【0022】
各二流体ノズル201としては、圧縮気体と加圧した液体とをノズルに供給し、ノズルの内部で混合して、液体を微粒化する内部混合型のノズルを用いることができる。
【0023】
気体流路204と液体流路205としては、それぞれ、鋼管又はステンレス管などの金属配管又は樹脂チューブなどを用いることができる。
【0024】
液体圧力調整器206は、液体流路205に配置され、各二流体ノズル201に供給する液体の圧力を設定することができる。液体圧力調整器206としては、レギュレータ又はニードル弁を用いることができ、各二流体ノズル201から噴霧されるミスト106の噴霧量を設定できる。
【0025】
気体供給源202としては、例えば0.1~1.0MPaの圧力の圧縮気体を供給できるコンプレッサ又はブロワ、又は、ポンプなどを用いることができ、レギュレータ又はニードル弁などを介して所定の圧力で気体を気体流路204に供給できるものが良い。
【0026】
液体供給源203としては、例えば0.1~1.0MPaの圧力で液体を供給できるポンプを用いることができ、レギュレータ又はニードル弁などを介して所定の圧力で液体を液体流路205に供給できるものが良い。また、液体供給源203としては、圧力容器内の液体を、圧縮気体を用いて所定の圧力で加圧して、液体を供給できる加圧タンクを用いても良い。
【0027】
気体用弁207は、気体流路204上でかつ気体供給源202に最も近い二流体ノズル201と気体供給源202との間の気体流路204に設置されている。気体用弁207は、制御部209と制御配線210で接続され、制御部209からの通電及び非通電で開閉し、気体供給源202から気体流路204を介して各二流体ノズル201への気体の供給を開始及び停止する。
【0028】
液体用弁208は、液体流路205上でかつ液体供給源203に最も近い二流体ノズル201と液体供給源203との間の液体流路205に設置されている。液体用弁208は、制御部209と制御配線210で接続され、制御部209からの通電及び非通電で開閉し、液体供給源203から液体流路205を介して各二流体ノズル201への液体の供給を開始及び停止する。
【0029】
気体用弁207及び液体用弁208としては、それぞれ、二方向電磁弁を用いることができ、非通電時に弁が閉じ、かつ、通電時に弁が開くノーマルクローズのものが望ましい。
【0030】
各二流体ノズル201の噴霧の開始は、気体用弁207を開けて気体を各二流体ノズル201に供給した後に、液体用弁208を開けることにより行う。各二流体ノズル201の噴霧の停止は、液体用弁208を閉じた後に、気体用弁207を閉じることにより行う。
【0031】
制御部209は、気体用弁207及び液体用弁208に信号を出力して開閉制御することにより、ミスト106の噴霧の開始及び停止を行う。例えば、制御部209は、事前に設定された噴霧開始時間又は噴霧停止時間で、気体用弁207及び液体用弁208を開閉制御してミスト106の噴霧の開始及び停止を行う。また、別の例としては、制御部209は、演算部104からのミスト106の噴霧停止の信号を受信し、受信した信号を基に気体用弁207及び液体用弁208を開閉制御してミスト106の噴霧の停止を行うことによりミスト濃度を制御する。
【0032】
ミスト噴霧部101より噴霧されるミスト106は、重力による沈降速度が小さく空間中に長時間浮遊するという点、および、人肌に触れても濡れ感がなく不快感が小さいという点から、ザウター平均粒径で5~10μm程度のものが望ましい。
【0033】
なお、ザウター平均粒径とは、全粒子の全表面積に対する全粒子の全体積と同じ表面積対体積率を有する粒子径を指す。直径diの粒子がni個ある場合、ザウター平均粒径(D32と表記される場合が多い)は、次式で与えられる。
【0034】
D32 = Σnidi
3/Σ nidi
2
投光部102としては、LEDランプ、HID(High Intensity Discharge)ランプ、または蛍光ランプなどを用いることができる。
【0035】
また、一例として、投光部102から照射される光90は、波長640~780nm程度の赤色光を用いることができる。光90が波長より十分小さなミストに当たると、散乱光91は波長の影響を受ける、レイリー散乱を起こす。レイリー散乱では、散乱光の強さは波長が短い方が大きく、波長が長いと小さくなる。また、光90が波長より十分大きなミストに当たると、波長依存性がなくすべての波長の光が同様に散乱する、ミー散乱を起こす。ミスト噴霧部101から空間105内に噴霧されたミスト106は、ナノオーダのものからマイクロオーダーのものまで広く分布を持つため、空間105内はレイリー散乱とミー散乱がともに発生する。
【0036】
光の波長が短いと、ミスト濃度が低い状態でも散乱光の強度が高く、ミスト濃度が高くなった場合に、ミスト濃度の細かな変化を撮像部103で捉えづらい。光の波長が長いと、ミスト濃度が高くても、散乱光強度がミスト濃度の変化に応じて変化し、ミスト濃度の変化を撮像部103で精度良く捉えることができる。
【0037】
このため、投光部102から波長の長い光、例えば赤色光を照射することにより、ミスト濃度を精度良く判定することができる。ここで、精度良くとは、白色光を使用する場合と比較して、ミスト濃度の変化に対する応答性が10%程度向上することを意味する。
【0038】
また、一例として投光部102から照射される光90は、波長780~2500nm程度の近赤外光を用いることができ、投光部102としては、近赤外LEDランプなどを用いることができる。
【0039】
近赤外光は人の目で感知できないため、演出に影響を与えることなく、ミスト濃度を判定することができる。
【0040】
撮像部103は、ミスト106が噴霧された空間105に配置されており、ミスト106が噴霧された空間105に対し投光部102より光90を照射すると、ミスト106で光が散乱し、その散乱光91を撮像部103で画像として検出する。撮像部103で検出される散乱光91の強度は、空間105のミスト濃度に依存するため、撮像部103より得られた画像データを演算部104で解析することによりミスト濃度を判定することができる。
【0041】
撮像部103より得られた画像データに対して行う演算部104での解析については後述する。
【0042】
撮像部103としては、カラーフィルターを有するなど、RGBの波長をそれぞれ検知することができるCCDカメラ、又は、近赤外線カメラなどを用いることができる。
【0043】
撮像部103と投光部102との位置関係については、逆光であると投光部102より照射された光の影響が大きく、ミストによる光の拡散の影響を捉えづらいため、順光となるよう配置することが望ましい。
【0044】
演算部104は、ミスト噴霧部101に対しミスト106の噴霧を停止する信号を出力する。演算部104は撮像部103から画像データを受信し、演算部104で受信した画像データを演算部104が解析することにより、ミスト濃度を演算部104で判定し、所定のミスト濃度において噴霧停止信号を演算部104からミスト噴霧部101に出力する。
【0045】
図3及び
図4は演算部104での解析処理の一例を示すフローチャート及び演算部104の構成図である。
【0046】
演算部104は、画像データ取得部104aと、輝度値算出部104bと、平均輝度値算出部104cと、変化量算出部104dと、データ処理部104eと、判定部104fと、信号出力部104gとを備えている。
【0047】
まず、ステップS1で、撮像部103から画像データを画像データ取得部104aで受信する。
【0048】
次いで、ステップS2で、ステップS1で撮像部103より得られた画像データ毎に各画素の輝度値を輝度値算出部104bで算出する。
【0049】
次いで、ステップS3で、ステップS2で算出されかつ1つの画像を構成する全画素の輝度値から、画像全体の平均輝度値を平均輝度値算出部104cで算出する。
【0050】
次いで、ステップS4で、ステップS3で算出した画像全体の平均輝度値を基に噴霧時間に対する画像全体の平均輝度値の傾きを変化量算出部104dで算出し、各時間における画像全体の平均輝度値の変化量を変化量算出部104dで算出する。
【0051】
次いで、ステップS5で、ステップS4で算出された画像全体の平均輝度値の変化量のうちの最大値をデータ処理部104eで求め、その最大値から、各時間における画像全体の平均輝度値の変化量の正規化をデータ処理部104eで行う。
【0052】
次いで、ステップS6で、噴霧時間と正規化後の画像全体の平均輝度値の変化量の関係が事前に設定した条件を満たすか否かを判定部104fで判定する。事前に設定した条件は、一例としては正規化後の画像全体の平均輝度値の変化量が“1”を経た後に“0.2以下”になった場合に停止するという条件とする。この条件を満たすか否かを判定部104fで判定する。条件を満たしていたと判定部104fで判定する場合には、ステップS7に進み、もし、条件を満たしていないと判定部104fで判定すれば、所定のミスト濃度に達していないため、ステップS1に戻る。
【0053】
次いで、ステップS7で、ミスト噴霧部101に対し噴霧を停止する信号を信号出力部104gから出力する。
【0054】
なお、ステップS5で変化量の最大値を求めて正規化する代わりに、それぞれの時間での変化量の絶対値をデータ処理部104eで算出して、ステップS6で絶対値同士をデータ処理部104eで比較し、所定の条件を満足したと判定部104fで判定すれば、ステップS7に進み、もし、所定の条件を満たしていないと判定部104fで判定すれば、所定のミスト濃度に達していないため、ステップS1に戻るようにしてもよい。ここで、所定の条件の例としては、絶対値が前データと比較して小さくなった場合、又は、絶対値が前データに比べて1/2以下となった場合などが挙げられる。
【0055】
かかる構成によれば、ミスト噴霧部101を用いてミスト106を噴霧している空間105に投光部102より光90を照射し、散乱光91を画像として取得し、画像を構成する画素の輝度値を基に空間105内のミスト濃度を判定することにより、再現性良く任意のミスト濃度でミスト噴霧を停止することができる。
【0056】
言い換えれば、ミスト106を噴霧している空間105に投光部102より光90を照射し、散乱光91を画像として取得し、画像を構成する画素の輝度値を基に空間105内のミスト濃度を判定することにより、局所的なミスト濃度の変化の影響を受けず、空間全体のミスト濃度を捉えることができ、再現性良くミスト噴霧を停止することができる。
【0057】
その結果、空間演出の自由度及び映像表現の価値の向上という大きな効果を奏することができる。
【0058】
(実施の形態2)
投光部102にLEDランプ又は蛍光ランプなど可視光源を用いた場合に、演算部104で光の波長の長い成分、例えば赤色成分を抽出することにより、投光部102から赤色光を照射した場合と同様の効果が得られ、精度良くミスト濃度を判定することができる。
【0059】
このとき、演算部104は、
図3のステップS2において、撮像部103より得られた画像データの赤色成分のみを抽出する。
【0060】
以降のステップS3からステップS7においては、抽出した赤色成分のデータに対して同様の処理を行う。
【0061】
撮像部103の例としては、カラーフィルターを有するなど、RGBの波長をそれぞれ検知することができるCCDカメラなどを用いることができる。
【0062】
かかる構成によれば、ミスト噴霧部101を用いてミスト106を噴霧している空間105に投光部102より光90を照射し、散乱光91を画像として取得し、画像を構成する画素の輝度値を基に空間105内のミスト濃度を判定することにより、再現性良く任意のミスト濃度でミスト噴霧を停止することができる。その結果、空間演出の自由度及び映像表現の価値の向上という大きな効果を奏することがてきる。
【0063】
なお、前記様々な実施の形態又は変形例のうちの任意の実施の形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施の形態同士の組み合わせ又は実施例同士の組み合わせ又は実施の形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施の形態又は実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の前記態様にかかる噴霧装置の制御方法及び噴霧装置は、ミスト噴霧部よりミストを噴霧している空間に投光部より光を照射し、散乱光を画像として取得し、画像を構成する画素の輝度値を基に空間内のミスト濃度を判定することにより、再現性良く任意のミスト濃度でミスト噴霧を停止することができる。その結果、本発明の前記態様は、空間演出及び映像表現の自由度が向上することができ、アート又はエンタテイメント分野に有用である。
【符号の説明】
【0065】
90 光
91 散乱光
92 噴霧装置
101 ミスト噴霧部
102 投光部
103 撮像部
104 演算部
104a 画像データ取得部
104b 輝度値算出部
104c 平均輝度値算出部
104d 変化量算出部
104e データ処理部
104f 判定部
104g 信号出力部
105 空間
106 ミスト
201 二流体ノズル
202 気体供給源
203 液体供給源
204 気体流路
205 液体流路
206 液体圧力調整器
207 気体用弁
208 液体用弁
209 制御部
210 制御配線